Blog. 久石譲 「もののけ姫」 インタビュー 劇場用パンフレット(1997)より

Posted on 2015/8/17

1997年公開 スタジオジブリ作品 宮崎駿監督
映画『もののけ姫』

2013年4月より創刊した「文春ジブリ文庫 ジブリの教科書シリーズ」。それぞれの映画作品を詳しく知るための解説本として、豪華執筆陣が深く作品の世界を解説しています。

そんな書き下ろしもあったり、過去のインタビュー掲載などの情報をまとめ、再編集しているのがこのシリーズです。映画公開前後の新聞や、関連本など、散らばった秘話たちを、作品ごとにまとめたものになります。

 

そのような企画ですので、もちろんそこには久石譲のインタビューも収められています。過去「ジブリの教科書 シリーズ」においては、映画公開と同年発売の「ロマンアルバム」という書籍での、久石譲音楽インタビューが再録されていることが多かったのですが、「ジブリの教科書10 もののけ姫」においては、「もののけ姫 ロマンアルバム」からではなく、「映画もののけ姫 劇場用パンフレット」からのインタビュー編集となっています。

ロマンアルバムでのインタビュー内容はこちら
⇒ Blog. 久石譲 「もののけ姫」 インタビュー ロマンアルバムより

同じようにこちらも1995-1997年音楽制作当時の貴重なインタビューになっています。

 

 

オーケストラをベースに非常に骨太な世界を望んだんです。

-まず、久石さんがこの作品について最初に宮崎監督からお話を伺った時に感じられた印象から伺いたいのですが。

久石:
「『なぜ今の時代に宮崎さんがこの作品を作るのか』という、作る重みをすごく感じました。あれだけの戦闘シーンや凄惨シーンを正面きって宮崎さんが描かれたのは初めてですしね。『21世紀にはもう夢も希望もないけれども、真剣に生きなければならない。とにかく今は現実を受け入れて、前向きに生きろ』という宮崎さんからの強いメッセージがこの作品の中にあるんじゃないかと思いました」

-そのような作品メッセージに対して、どのような音楽作りを考えられましたか?

久石:
「この映画の件で、初めて宮崎さんとお話した時に、直感的に今回、一番ベースになるのはオーケストラだろうと感じました。ですから二管編成の、66人によるオーケストラに、ほとんど全ての曲に入ってもらい、そこにエスニックな民族楽器と、隠し味的な電気楽器系をプラスするという形で作っていきました。こんなに大編成でやったのは、宮崎作品では初めてですよ。つまり非常に骨太の世界を望んだんです」

-今回、作品が日本を舞台にしているということで、音楽的にも日本的なものを取り入れたのでしょうか。

久石:
「自分にとって日本は非常に大切な要素だったので、もちろん積極的に取り入れました。ただ琵琶や尺八のように、その音がした瞬間に侍が出てきそうな音は極力引っ込めて、本当に音楽の骨格の中での日本的なものを相当意識して、五音音階と言いますか、西洋的なコード進行よりは、むしろアイルランド民謡に近い感じのものをベースに置きました」

-戦闘シーンの音楽作りについては。

久石:
「極力『これが戦闘シーンだ』というようなものは避けましたね。戦闘シーンの後で、そうならざるを得ないんだというような心境を歌うというような方向に考えて、レクイエムのように心情を表現するために音楽があるという考えを基本に作りました」

-この作品の音楽的構成についてはいかがですか。

久石:
「本当はワンテーマで押し切れればよかったんですけど、二つのテーマ曲を要所要所にちりばめた形で構成しました」

-そのテーマ曲についてですが。

久石:
「一つは米良(美一)さんが歌った『もののけ姫』という曲から発生したバリエーションで、あの曲を器楽的に構成したものです」

-米良さんが歌われた曲はどういう風に作られたのですか。

久石:
「毎回、イメージアルバムを作る時に、作曲の手がかりになるような言葉を宮崎さんから頂くんです。その中の一つに、あの曲の詩のような言葉があったんです。宮崎さん本人は、きっと詩のつもりで書かれたわけではないと思うんですが、僕がこれは曲になるんじゃないかと思って、”歌”として仕上げたものです」

-もう一つのテーマ曲は。

久石:
「イメージアルバムの1曲目の『アシタカせっ記』という曲です。『幸せは来ないかもしれないけど、自分から生きろ』というような、のたうちまわっている登場人物たちを俯瞰して見ているような音楽として、映画の冒頭とラストに流れています。そうなると、この曲の方が本当のメインテーマとしての重みを持っていると僕は思いますね」

-最後に、ずっと宮崎監督の作品音楽を担当されてきて、久石さんがご覧になった宮崎監督の印象をお聞かせください。

久石:
「宮崎さんと僕の関係は、地方の大店の跡取り息子と、都会に出て遊んでいる次男坊という感じかな(笑)。僕にとっての宮崎さんという人は、自分の生き方の手本みたいな人。例えば僕は、綺麗な曲を書きたくて音楽をやっているわけじゃないんです。『じゃあなぜ曲を書いているのか』と考えた時に、宮崎さんの、自分はエンターテインメントであって、自分が作った映画を見おわった後に、何かちょっと残るものがあってほしいっていうスタンスは、ものを作る人間にとっての原点で、僕が常に曲を作りながら考えていることなんです。それを宮崎さんは作品の中に理想的な形で、実際に描かれているんです。

それともうひとつは、宮崎さんの人間としての生き方ですね。宮崎さんがいろんなところで発言されているものを読むと、この人は本当に世界を思い、日本を思い、自分を思い、あるいは自分の周りのジブリの若いスタッフを養うとか、いろんなことを抱え込んで、のたうち回っているのがよく分かるんですよね。それでいながら精神的には子供のままの純粋さを全然失っていない。そういう宮崎さんの姿を見ていると、『なるほど、こうやって生きる方法があるのか』と教えられたような気がするんです。」

(劇場用パンフレット(1997年) および ジブリの教科書10 もののけ姫 より)

 

2015年7月10日 発売

ジブリの教科書10『もののけ姫』 目次

ナビゲーター・福岡伸一
『もののけ姫』の生態史観

Part1
映画『もののけ姫』誕生
スタジオジブリ物語 未曾有の大作『もののけ姫』
鈴木敏夫 知恵と度胸の大博打! 未曾有の「もののけ」大作戦
宮崎 駿 荒ぶる神々と人間の戦い ~この映画の狙い~
宮崎 駿イメージボードコレクション

Part2
『もののけ姫』の制作現場
[原作・脚本・監督] 宮崎 駿
海外の記者が宮崎駿監督に問う、『もののけ姫』への四十四の質問
[作画監督] 安藤雅司
宮崎監督の隣で仕事がやれたというのは僕にとってとても勉強になりました。
[美術] 山本二三×田中直哉×武重洋二×黒田 聡×男鹿和雄
宮崎さんのイメージを絵にするのが僕らの仕事
[CG・撮影]
菅野嘉則×百瀬義行×片塰(かたあま)満則×井上雅史×奥井 敦
新技術(デジタル)の導入でセルアニメーションの表現法が広がった。
[音楽] 久石 譲
オーケストラをベースに、非常に骨太な世界を望んだんです。
出演者コメント
松田洋治(アシタカ)/石田ゆり子(サン)/田中裕子(エボシ)
小林 薫(ジコ坊)/西村雅彦(甲六)/上條恒彦(ゴンザ)
美輪明宏(モロ)/森 光子(ヒイさま)/森繁久彌(乙事主)
島本須美(トキ)/佐藤 允(タタリ神)/名古屋 章(牛飼い)
映画公開当時の掲載記事を再録!

from overseas
ニール・ゲイマン
フォルムを見て真の比類なき映画だと感じ、
ぜひ参加したいと 思ったのです。

Part3
作品の背景を読み解く
・viewpoint・宇野常寛
「生きろ。」と言われてウザいと感じた人のための『もののけ姫』の読み方
荻原規子 二人の女の板ばさみ
小松和彦 森の神殺しとその呪い 森をめぐる想像力の源泉をさぐる
永田 紅 生命力の輪郭からあふれ出たもの
小口雅史 北方の民=エミシ・エゾの世界の実像と『もののけ姫』
網野善彦 「自然」と「人間」、二つの聖地が衝突する悲劇
大塚英志『もののけ姫』解題

出典一覧
映画クレジット
宮崎 駿プロフィール

 

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