Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2015」 コンサート・パンフレットより

Posted on 2015/8/14

Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2015」 コンサート・レポート にて公演詳細、演奏プログラム、アンコール、楽曲解説は公開しています。

ここでは同コンサート公式パンフレットより、久石譲のインタビュー内容をご紹介します。上述楽曲解説は前島秀国さんの筆によるものですが、このインタビューでは久石譲による各楽曲のことが語られており、あわせて読むとより深く味わうことができます。

 

INTERVEW

-久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ(W.D.O.)として8年ぶりの全国ツアーがいよいよスタートします。今回はプログラムの前半を中心に「祈り」をテーマにしていますがその理由は?

久石:
今年で終戦から70周年を迎えますが、僕は今の時代を”戦前”だと感じているところがあります。言い換えれば今は日本人として足元を見つめなきゃいけない時。そういう状況を踏まえたとき、祈りをテーマにしたいと思いました。21世紀に入ってからも世界中でいろんなことが起こっていますが、その根源として、互いの違いを際立たせている状況がすごく気になっています。違いを見出すことでお互いをより認め合うのではなく、距離を置き、時には憎しみ合ってしまっている。

-その思いを反映するかのように1曲目は《祈りのうた》。

久石:
毎年正月、三鷹の森ジブリ美術館で使うために宮崎(駿)さんに曲を贈っているのですが、今年出来たのがこれだったんです。昨年、ヘンリク・グレツキやアルヴォ・ペルトに代表されるような教会旋法を使ったホーリー・ミニマリズムを演奏してきた影響もあり、シンプルでありながらエモーショナルであることを追求したくなっていたんです。人間は前進しようとするとより複雑なものを求めがちですが、あえてシンプルにいきたかった。そうして出来上がったら自然と《祈りのうた》というタイトルが浮かびました。

-次に演奏する《The End of the World》は2008年に初めて発表したものを進化させ、楽章を増やしていますね。

久石:
この曲を作った直接的なきっかけは2001年に起こったアメリカ同時多発テロです。ニューヨークの世界貿易センタービルに飛行機が突っ込んだ映像をずっと自分の中で引きずっていて、グラウンド・ゼロを訪れたりする中で確実に世界の有り様が変わったのを感じていました。それが今に通じているところがあると思い、今回のツアーで演奏しようと思ったわけですが、もともとの3楽章に加え、さらに深いところに入っていけるような《D.e.a.d》という楽章を加えました。以前書いた《DEAD for Strings , Perc. , Harp and Piano》という組曲が《The End of the World》と通じる部分があったので、《DEAD》の第2楽章の弦楽曲をもとに新たに楽章を加え、全体を再構築しました。

-《The End of the World》は冒頭から鳴る鐘の音が印象的です。

久石:
鐘の音はまさに警鐘を意味しています。全楽章であのフレーズを通奏していますが、象徴しているのはいわば”地上の音”。それに対して入ってくる声は、人間を俯瞰で見るような目線です。地上にいる人間の業に対し、遠くから「どうなっていくんだろう」という問いかけをしているんです。

-前半の最後にはスキータ・デイヴィスのヒット曲でもある同名曲《The End of the World》も登場します。

久石:
この曲が最後にくることによって《The End of the World》を全部で5楽章と捉えられるような構成にしたいと思いました。”あなたがいなければ世界が終わる”というラブソングですが、”あなた”を”あなたたち”と解釈することもできて、そう考えるとこれは人類に対するラブソングでもある。だからといってそこにあるのは救いじゃないかもしれない。冒頭で示した鐘の音による旋律も入ってくるし、不協和音も漂っている。それをどう感じてもらえるかがポイントになってくると思います。

-後半は20分にわたる《Symphonic Poem “NAUSICCÄ” 2015》から始まります。

久石:
オーケストラでのコンサートをずいぶんやってきましたが、映画音楽を演奏しようとすると一部分になってしまうことが多かったので、大きな作品として聴いてもらえるものを作りたいという思いがずっとありました。「風の谷のナウシカ」の組曲は以前に「WORKS I」というアルバムを作った時に、ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団の演奏で録音したバージョンがあったのですが、それをベースに映画で使われているものを継承しながらさらにスケールアップさせようと思って取り組みました。ただ、いざやり始めてみると大変。映画自体が破壊と再生というテーマを持っていて、前半のプログラムと通じているところが多く、精神的に苦労しました。

これを機会に宮崎さんの作品を交響組曲として表現していくプロジェクトを始められたらと思っています。世界中のオーケストラから演奏したいという要望もありますし、今後続けられれば嬉しい。ただ、僕は毎回のコンサートを「これが最後」という気持ちで臨んでいるので、今回きちんと成功してやっと次が見えてくるんだと思います。

-その後プログラムは《il porco rosso》~《Madness》から《Dream More》と続きます。

久石:
《il porco rosso》~《Madness》も含めて、前半と後半で別のアプローチのように見えますが、コンサートとして聴いたときに一つの流れがあって、そのテーマの中で楽しんでもらうということをすごく大切に考えています。重いテーマであっても、音楽を聴きに来た満足感というのはとても大事にしたいと思っています。《Dream More》はもともとCM曲ですが、最近の僕の傾向を反映してソリッドな作りのオーケストラ曲になりました。演奏が難しい曲ですが、今からどうなるか楽しみですね。

-いつもこのコンサートでやる《World Dreams》がプログラムに見当たらないですね。

久石:
そうなんです。もしかしたら、とだけ言っておきます(笑)

-今回は8月6日「原爆の日」に広島での公演もあります。

久石:
広島は日本にとっても世界にとっても平和の原点(中心)になる場所。そして平和になるために我々は哲学が必要です。昨年のW.D.O.で鎮魂をテーマにペンデレツキの《広島の犠牲者に捧げる哀歌》を演奏しましたが、空襲を想起させるような激しい曲でした。今回はもっと心の問題として捉えたいと思い、祈りをテーマにしています。戦後70年、広島は少なくとも経済的な面では飛躍的に復興したかもしれません。ビルもたくさん建った。しかし、人の気持ちはそれについていっているのだろうかという思いがあります。人間を取り巻く”形”をいくら進化させても、その精神は昔から良くも悪くも人類は進化していないはずです。最終日は東日本大震災から復興の途にある仙台でもコンサートをやります。中途半端に「大変ですね」と投げかけるのではなく、特別な思いを抱えながらもっと普通に接するような気持ちで臨みたい。今年ツアーを始めるにあたって、メモを記したんです。それは《The End of the World》の第3楽章の元になっていますが、内容は「私の幸せはあなたの幸せ あなたの幸せは私の幸せ 私の悲しみはあなたの悲しみ あなたの悲しみは私の悲しみ」というフレーズ。そういうコンサートになれば嬉しいですね。

2015.7.25 ワンダーシティにて 聞き手:依田謙一

(「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2015」 公式パンフレットより)

 

2014年に3年ぶりの復活を果たしたW.D.O.。その流れを継承しつつも、「鎮魂」から「祈り」へと一歩推し進めたW.D.O.2015。同時に昨年とは異なり久石譲作品だけでテーマを完結させた今回は、とりわけ並々ならぬ想いがあったのではないかと思っています。

久石譲の芸術性が深く刻まれた第1部から、大衆性をさらに進化させて解き放たれた第2部、そしてアンコールをふくめて一貫した大きなテーマと流れ。

来年以降の久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラは開催されるのか?現時点では未知数ですが、期待が膨らまずにはいられない、そんな「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2015」でした。

 

下記、コンサート・レポートもぜひご参照ください。

9月23日 WOWOWでのコンサート放映は必見!必聴です!

 

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