Blog. 「クラシック プレミアム クラシック プレミアム 43 ~ラヴェル~」(CDマガジン) レビュー

Posted on 2015/8/31

クラシックプレミアム第43巻は、ラヴェルです。

【収録曲】
ピアノ協奏曲 ト長調
サンソン・フランソワ(ピアノ)
アンドレ・クリュイタンス指揮
パリ音楽院管弦楽団
録音/1959年

《亡き王女のためのパヴァーヌ》
《水の戯れ》
サンソン・フランソワ(ピアノ)
録音/1967年

《ラ・ヴァルス》
《ボレロ》
アンドレ・クリュイタンス指揮
パリ音楽院管弦楽団
録音/1961年

 

「久石譲の音楽的日乗」第42回は、
和音が音楽にもたらしたもの

まだまだ深い音楽講義はつづきます。ラストスパートといったところでしょうか。今回は和音の歴史について。

一部抜粋してご紹介します。

話の展開上、なかなか一部抜粋が難しい内容でしたため、今回はほぼ網羅しています予めご了承ください。

 

「クラウディオ・モンテヴェルディというイタリアの作曲家がいる。16~17世紀にかけて活躍した人なのだが、現代でも比較的演奏される機会があり、歴史上重要な作曲家の1人だと僕は思っている。ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者でもあった。この楽器は16~18世紀によく使われた楽器で、擦弦楽器である。ヴァイオリンを鈍くしたような音色で、風情がありヨーロッパの大理石の壁に馴染む音、と言ったら多少イメージを感じてもらえるだろうか。ただ弾き方はチェロのように縦にかまえるのでヴァイオリン属とは全く別系列であると言われている。以前、中国映画でこの楽器を使ってスタジオで録音したが(なんで中国映画にヴィオラ・ダ・ガンバか? という疑問を感じる方もいると思われるが、長くなるので説明は省略)、音が小さくすぐピッチが悪くなるので、演奏よりもチューニングに時間がかかった記憶がある。だが、間違いなくヴァイオリンと同一視するべきではないと思った。」

「それはさておき、1607年、モンテヴェルディのオペラ《オルフェオ》が初演された。もちろんギリシャ神話のあのオルフェオとエウリディーチェの話である。このオペラは今も取り上げられることはあるので、是非観てほしいのだが、その中に〈天上のバラ〉というアリアがある。主人公オルフェオが愛する妻エウリディーチェを讃える喜びのアリアである。一聴してすぐわかるのは、ここでは明確なメロディーラインとそれを伴奏するハープなどの和音がしっかりあることだ。つまりポリフォニー音楽のような横に動くモティーフがいくつか組み合わされるのではなく、一つのメロディーを和音が伴奏するといった形態で、当時としてはそれまでにない音楽だった。もちろん彼が創始したのではない。大勢の作曲家がその時代に同じ方法を採用していたのは言うまでもない。」

「ハーモニー(ホモフォニー)音楽の時代が到来したのである。構造はいたって簡単、明確な旋律にわかりやすい歌詞、それを器楽奏者が伴奏するのだから(モノディ様式というらしい)、聴き手にとっても理解しやすい。僕はDVDで観たのだが、音楽が輝いており、屈折してなく、音楽の可能性を心から信じていた時代だったと思われる。DVD自体は当然近年に撮影されたものなのだが、オーケストラ・ピットの奏者が当時を思わせる服装で演奏していて、何かとても華やいだ気分になれた。いつか演奏してみたいと思ったのだが、《オルフェオ》では作曲家の各声部への楽器指定が徹底しており(その前は即興的に集まった奏者が演奏することが多かった)、そういう意味では最初の本格的にオーケストレーションされた作品だったかもしれない。」

「このホモフォニー音楽の意味は横に動く各声部の関係よりも、和音自体の進行が音楽をリードしていくことにある。その約束事は16世紀に確立された機能和声である。ドとソの表の5度とドと下のファの裏の5度が重要だと前に書いたが、この倍音からできたトライアングルが機能和声でも重要になる。それぞれの音を基音とした三和音(根音の3度上と5度上の音)の進行が音楽を決定する。」

「その①I-V-I(ド-ソ-ド)。これは学校などの朝礼で起立、礼、着席というときによく使う和音進行である。あれ?今の時代そんなことをする学校はあるのだろうか? まあいいや、次、その②I-IV-I(ド-ファ-ド)。これは教会などで最後にアーメンという時に使う和音進行で別名アーメン終止とも言われている。その③I-IV-V-I(ド-ファ-ソ-ド)。これは今の時代のポップスやジャズを含めた調性音楽の大半を占めている和音進行と言っても過言ではない。もちろんそれぞれの代理和音があるのでもっと複雑だが、考え方(基本)は同じだ。」

「そしてその要は長音階と短音階である。ポリフォニー音楽の時代に主流だった旋法はほぼこの長・短音階に集約され、機能和声は生まれた。この長音階と短音階からできる三和音をよく見ると構成音のうちドとソは同じである。違いは真ん中の3度の音ミである。このミがそのままか、半音下がるミ♭(フラット)かで、和音の性格がまるで変わる。長三和音と短三和音というのだが、身近にある楽器で弾いてみていただきたい。ドミソは明るい、そしてドミ♭ソは暗い。これに異論のある方は・・・かなり個性的であると僕は認定します(笑)。」

「ここで重要なのは音楽に感情が持ち込まれたということである。明るい、暗いと感じる和音が音楽の発展とともに、歓喜を表現したり、暗い悲しみを表現できるようになる。バロック、古典派、ロマン派、そして後期ロマン派時代へと時空を経るにつけ、音楽はよりエモーショナルなものへと変貌していき、機能和声自体がもはや機能しなくなるのだが、今はまだそれに言及しない。さて最後に具体的な話、ミが329Hz、ミの♭が311Hzでその差はわずか18Hz!この差が音楽を大きく変えたのだ。」

 

クラシックプレミアム 43 ラヴェル

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