Blog. 雑誌「CDジャーナル 2015年11月号」久石譲 インタビュー内容

Posted on 2015/11/14

10月20日発売 雑誌「CDジャーナル 2015年11月号」に掲載された久石譲インタビュー内容です。

これからの予定も少し垣間見れる内容です。

WDO2015CD化決定!
読響シンフォニックライブのTV放送予定!

どちらも詳細はこの段階では未確定となっています。今年後半の活動から、来年以降の展望を楽しく想像、期待したくなるようなインタビューです。

 

自分の原点と”内なるアメリカ”をめぐって
取材・文/前島秀国

久石譲の破竹の勢いが止まらない。8月は最新アルバム『ミニマリズム 2』リリースと同時に、新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラとのツアーを全国6ヵ所で開催し、「Symphonic Poem “NAUSICCÄ” 2015」を世界初演(CD化決定。詳細は後日発表)。9月は久石自身がセレクトした現代の優れた音楽を紹介する”Music Future Vol.2”を開催し、新作「Single Track Music 1」(サクソフォン四重奏+打楽器版)と「室内交響曲」を世界初演。10月は『題名のない音楽会』5代目司会者・五嶋龍のために書き下ろした新テーマ曲「Untitled Music」のオンエア開始と、新作「コントラバス協奏曲」(日本テレビ委嘱作品、読響シンフォニックライブで2016年1月放送予定)の世界初演。そして年末12月には混声合唱、オルガン、管弦楽のための「Orbis」新ヴァージョン初演を含む”久石譲 第九スペシャル 2015”開催と、目にも留まらぬ速さで作曲/演奏活動に打ち込んでいる。

 

音楽に入りやすいこと、身近に感じてもらうこと

まずは、久石の原点であるミニマル・ミュージックをアルバム・コンセプトに据えた『ミニマリズム 2』について。小編成の室内楽で密度を高めた本作には、久石のソロ・ピアノ曲「WAVE」と「祈りのうた」が収録されているのも、ファンにはたまらないポイントだ。

「2曲とも宮崎駿監督の誕生祝いとして書いた作品です。〈WAVE〉(2009年作曲)は”メロディ”と”ミニマル”という2つの要素をシンプルな形で結びつけた曲ですが、当初収録を予定していたピアノ・ソロアルバムがなかなか完成せず、リリースの機会を逸してしまいました。一方の〈祈りのうた〉(2015年作曲)は、戦後70年の節目を意識して書いた曲。以前から音数(おとかず)の少ない、内省的な作品を書きたいと思っていたのですが、これもなかなか機会に恵まれなくて。ところがここ数年、ペルトやグレツキの作品を(指揮者/ピアニストとして)演奏したことで、ホーリー・ミニマリズムと呼ばれる彼らのスタイルから刺激を受けました。”なるほど、できるだけ切り詰めた要素で作曲していくには、こういう方法もあるのか”と」

『ミニマリズム 2』収録の「Single Track Music 1」は、単音から24音まで増殖していく音列をユニゾンだけで演奏しながら、ヴァーチャル的にミニマル特有のズレを感じさせる新しい手法にチャレンジしている。

「基本的にはリズム中心の作品ですが、リズムというわかりやすい要素を作曲のベースに置くことで、聴き手の拒否反応を無くすことができます。つまり書く側が8分の7のような変拍子を使い、複雑な音の並べ方を試みたとしても、聴く側はリズムの勢いで音楽に入っていけるので、トータルとしては縁遠いものではなくなる。音楽に入りやすいこと、身近に感じてもらうことが、いま、自分の中でもっとも重視している要素なんです」

そこには、いち早くミニマル・ミュージックの演奏・紹介に取り組んできた、久石自身の体験が色濃く反映されているという。

「70年代から80年代にかけて、多くの演奏者がライヒ、グラス、ライリー、ヤングという4人のミニマリストの作品を何らかの形で体験しました。演奏したことがない人は、ほとんどいないと言ってもいいくらい。ただし、ほとんどの場合、みんな嫌気がさしてミニマルから離れてしまった。その気持ちは、よくわかります。今回、”Music Future Vol.2”でライヒの〈エイト・ラインズ〉を指揮しましたが、譜面を見ると自分でも嫌になりますよ。”こんなの弾くなんて、冗談じゃない”みたいな(笑)。ライヒの場合、モーダルなジャズ、コード進行というのが発想のベースに必ずあります。それを、寝食を共にするような共同体の中で少しずつ変化をつけながら、音楽を作り上げていくというのが彼の方法論なので、3~4回のリハーサルで演奏すること自体、無理があるんです。演奏者の心が入りにくい。30年前、もしも的確に指導できる人間がいれば、ミニマルと聞いただけで演奏者が溜息を洩らすような、現在の状況にはならなかったでしょう。ミニマルに欠点があるとすれば、おそらくそれが最大の欠点です。作曲家が演奏者の生理を考慮し、譜面の書き方を見直して欠点を克服していかなければなりません」

 

”ニューヨークの夜”のような世界観

”Music Future Vol.2”で久石が紹介したブライス・デスナーの弦楽四重奏曲「Aheym」(日本初演)や、ジョン・アダムズの「室内交響曲」(久石が指揮)には、そうした欠点を克服していく姿勢が感じられるという。

「デスナーの曲に聴かれるCマイナーのコード感、あれはクラシック専門の作曲家には書けないでしょうね。ロックやそのほかの音楽のエネルギーを取り込み、クラシックの書き方を勉強し直した人間でないと書けない強さがある。アダムズに関しては、リズムをわかりやすく刻むことで聴きやすい音楽を作っていますが、じつは3つか4つの雑多な要素を同時に盛り込んでいる。そうしたカオスのような多様性が、彼らアメリカの作曲家たちが持つ強みだと思うんです」

同じ”Music Future Vol.2”で世界初演された久石の新作「室内交響曲」にも、じつは”アメリカ”という要素が濃厚に現れている。

「昨年の”Music Future Vol.1”で、6弦エレクトリック・ヴァイオリンを独奏楽器に用いたニコ・ミューリーの〈Seeing Is Believing〉を指揮したのが、作曲のきっかけです。せっかくこの楽器に出会ったのだから、ひとつ自分でも曲を書いてみようと。ところが、これは予想外だったのですが、あの電気的なサウンドは間違いなく”アメリカ”ですね。気が付いたらロック・ギターのようなディストーションを使ってみたり、スコアの中にサクソフォンもフィーチャーしたりしていました。そうすると、自然と”ニューヨークの夜”のような世界観になっていく。そこで、はたと気が付いた。今回の”Music Future Vol.2”はライヒ、アダムズ、デスナー、自分の曲と、完全に”オール・アメリカン”ではないかと。これほど見事なコンセプトでプログラムが統一されているとは、自分でも驚きました」

現在作曲中の最新作「コントラバス協奏曲」も、同様に”アメリカ”が重要なキーワードになるという。

「コントラバスを独奏楽器としてイメージしてみた時、真っ先に思い浮かぶのがロン・カーターのようなジャズ・ベーシストなんですよ。そうすると、これも当然”アメリカ”になってくる。よくよく考えてみると、今年の作曲活動のポイントは、じつは”自分の内なるアメリカ”を確認し直すことだったのかと。それが必然的な流れならば構わないし、結果的に良い作品が生まれればいい。チェロ協奏曲の延長として作曲しても面白くないですから。これはすごく面白い曲に仕上がると思いますよ。期待してください」

(雑誌「CDジャーナル 2015年11月号」より 書き起こし)

 

CDジャーナル 2015年11月号

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