Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2014」 コンサート・パンフレットより

Posted on 2014/08/21

2014年開催「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2014」
コンサートパンフレットより楽曲解説など。

 

久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ 2014

[公演期間]WDO 2014 表紙
2014/8/9,10

[公演回数]
2公演(東京・サントリーホール / 東京・すみだトリフォニーホール)

[編成]
指揮・ピアノ:久石譲
管弦楽:新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ
バラライカ/マンドリン:青山忠
バヤン/アコーディオン:水野弘文(9日) 大田智美(10日)
ギター:千代正行

[曲目]
久石譲:交響ファンタジー「かぐや姫の物語」 ※世界初演

[鎮魂の時]
ペンデレツキ:広島の犠牲者に捧げる哀歌
バッハ:G線上のアリア
久石 譲:ヴァイオリンとオーケストラのための「私は貝になりたい」

Intermission -休憩-

久石 譲:バラライカ、バヤン、ギターと小オーケストラのための「風立ちぬ」第2組曲 ※日本初演
久石譲:小さいおうち ※世界初演

[Melodies]
久石譲:水の旅人
久石譲:Kiki’s Delivery Service for Orchestra ※日本初演
久石譲:World Dreams

—アンコール—-
One Summer’s Day
風の谷のナウシカ

 

JOE HISAISHI & WORLD DREAM ORCHESTRA 2014

【曲目解説】

1 交響ファンタジー「かぐや姫の物語」 (世界初演)
『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』でプロデューサーを務めた高畑勲監督が、旧知の久石に初めてスコアを依頼した記念すべき作品。今回初演される曲は、本編の主要曲をかぐや姫の視点で繋げ、オーケストラ作品として書き改めたもの。木管が演奏する「なよたけのテーマ」と高畑監督が作曲した「わらべ唄」を対位法的に扱う〈はじまり〉の後、〈光り〉のセクションをはさみ、東洋的な曲想が特徴的な〈生きる喜び〉の音楽へ。その後、3拍子のピアノが〈春のめぐり〉の音楽を導入するが、曲想が一転し、前衛的な語法を用いた暗い〈絶望〉に変わる。再び木管が「なよたけのテーマ」を演奏すると、オーケストラが〈飛翔〉の音楽を高らかに演奏し、久石エスニックの真骨頂〈天上の音楽〉へと続く。最後の〈月〉では「なよたけのテーマ」「わらべ唄」など主要テーマが再現し、幕となる。

 

2 広島の犠牲者に捧げる哀歌
ポーランドの作曲家クシシュトフ・ペンデレツキ(1933-)が1960年に作曲した現代音楽の古典的名作。弦楽器がさまざまな音程を密集的に鳴らすトーン・クラスター(音塊)技法が特に有名で、指揮者用総譜ではパートが真っ黒に塗りつぶされている。もともとは演奏時間をそのまま曲名にした《哀歌、8分26秒》というタイトルが付けられていたが、実演を聴いた作曲者本人がトーン・クラスターの効果に衝撃を受け、何か特定の悲劇の犠牲者に曲を捧げたいと発案。当時ペンデレツキと親交のあった作曲家・松下眞一の助言を受け、広島の原爆犠牲者に曲を捧げたという逸話がある。

 

3 G線上のアリア
原曲はヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685-1750)がケーテンの宮廷楽長を務めていた時期に作曲した《管弦楽組曲》の第3番「エール(アリア)」。19世紀、ヴァイオリンのG線(第4線)だけで演奏できる編曲がなされたことから、《G線上のアリア》の名で親しまれるようになった。魂を浄化するような美しい旋律を持つゆえ、追悼行事などで演奏されることも多い。

 

4 ヴァイオリンとオーケストラのための「私は貝になりたい」
太平洋戦争に従軍した心優しい理髪師・清水豊松が米軍捕虜殺害の容疑で逮捕され、BC級戦犯として死刑に処せられる不条理の悲劇を描いた、橋本忍脚本の4度目の映像化作品。曲の冒頭で独奏ヴァイオリンがワルツ主題を導入する〈メインテーマ〉の後、ヴァイオリンが狂おしい重音奏法を駆使する〈判決〉の激しい中間部をはさみ、再びワルツ主題が再現する三部形式で構成されている。

 

5 バラライカ、バヤン、ギターと小オーケストラのための「風立ちぬ」第2組曲 (日本初演)
太平洋戦争前夜、戦闘機開発に従事する堀越二郎と妻・菜穂子が懸命に生きる姿を描いた、宮崎駿監督作品『風立ちぬ』より。本日演奏される《第2組曲》(今年5月台湾にて初演)は、昨年12月に世界初演された《小組曲》と異なり、ストーリーの流れに縛られることなく主要曲を音楽的に再構成したもの。バラライカ、バヤン(ロシアのアコーディオン)、ギターが主人公の遙かなる旅情を表現した「旅路のテーマ」と、久石のピアノが凛としたヒロインを表現した「菜穂子のテーマ」の2つを中心に据えた、ロンド形式による夫婦愛の組曲と見ることも出来る。全曲の構成は〈旅路(夢中飛行)〉、〈菜穂子(出会い)〉、勇壮な行進曲〈カプローニ(設計家の夢)〉、ミニマル的な推進力に溢れた〈隼班〉と〈隼〉、〈旅路(結婚)〉、関東大震災で逃げ惑う人々を描いた〈避難〉、〈菜穂子(会いたくて)〉、カストルプと共に日支事変を憂う二郎の許に菜穂子発熱の報が届く場面の〈カストルプ(魔の山)〉、〈菜穂子(めぐりあい)〉、〈旅路(夢の王国)〉となっている。

 

6 小さいおうち (世界初演)
『東京家族』に続き、久石が山田洋次監督作のスコアを担当した第2作。激動の昭和を生き抜いた元女中・タキの回想録に綴られた中流家庭の奥方・時子の道ならぬ恋と、彼女たちの運命を狂わせた太平洋戦争と東京大空襲の悲劇を描く。本日初演されるヴァージョンはギター、アコーディオン、マンドリンを使用して作品化し、楽器編成的にも時代背景的にも『風立ちぬ』との関連を強調している。前半はタキが象徴する激動の昭和を表現した「運命のテーマ」、後半は昭和ロマンへの憧れを表現した「時子のワルツ」で構成されている。

 

7 水の旅人
一寸法師を思わせる水の精・墨江少名彦と小学生・悟の友情と冒険を描いた、大林宣彦監督のSFX大作。サントラ演奏を担当したロンドン交響楽団を意識して作曲した大編成の勇壮なテーマ曲は、大河の如く滔々と溢れる数々のメロディと相まって、その後の久石の演奏会に欠かせない人気曲のひとつに。

 

8 Kiki’s Delivery Service for Orchestra (日本初演)
魔女の見習い・キキが宅急便で生計を立てながら、逞しく成長していく姿を描いた宮崎駿監督『魔女の宅急便』から、キキが大都会コリコを初めて訪れるシーンの音楽〈海の見える街〉を演奏会用にアレンジしたもの。本日使用される新ヴァージョン(今年1月台湾にて初演)は、管弦楽のみお演奏でメロディを優雅に表現し、よりクラシカルな味わいを深めている。

 

9 World Dreams
2004年、久石と新日本フィルがW.D.O.を立ち上げた際に書き下ろした、W.D.O.のテーマ曲。「作曲している時、僕の頭を過っていた映像は9.11のビルに突っ込む飛行機、アフガン、イラクの逃げまどう一般の人々や子供たちだった。『何で……』そんな思いの中、静かで優しく語りかけ、しかもマイナーではなくある種、国歌のような格調のあるメロディが頭を過った」。
久石とW.D.O.が願ってやまない”平和”という世界の夢(ワールド・ドリーム)を込めたメロディがそこにある。

TEXT:前島秀国 (サウンド&ヴィジュアル・ライター)

(「久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ 2014」コンサート・パンフレット より)

 

なお、同パンフレット内の久石譲インタビューは下記掲載しています。

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WDO 2014 表紙

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