Blog. 「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ 5」より ATSUSHI x 久石譲 エピソード

Posted on 2016/10/23

2007年のスタートから、足かけ10年。大ロングラン中の人気番組「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ」(TOKYO FM含む全国38局ネット)から、ベスト・オブ・ベスト回を厳選して単行本化したのが書籍「ジブリ汗まみれ」です。その最新刊・第5巻(2016年3月刊行)のご紹介です。

 

本著に収められたエピソードその目次は、

▼第5巻収録 豪華ゲスト
○庵野秀明(監督・プロデューサー)+樋口真嗣(監督)「特撮の灯よ、永遠に…! <特撮博物館>開催秘話」[ポッドキャスト未配信]
○坂本美雨(ミュージシャン)「わたしと 父母と 音楽と」
○太田光(タレント)「拝任! 『かぐや姫』の特命コピーライター」
○吉岡秀隆(俳優)「ジブリ作品が、ぼくを助けてくれた」
○堅田真人(モバイル研究家)+依田謙一(日本テレビ)「携帯事情の最前線 ウェアラブルからインプラントへ」
○三浦しをん(作家)「『神去なあなあ日常』 小説と映画のあいだ」
○EXILE ATSUSHI(アーティスト)「伝えたい歌、日本のこころ」
○橋口亮輔(映画監督)+リリー・フランキー(アーティスト・俳優)「小豆島で語りあったこと」
○斎藤環(精神科医)+川上量生(カドカワ代表取締役社長)「ヤンキー vs. オタク —この日本的なるもの」
○追想・菅原文太(鈴木敏夫による“ひとり語り”)

 

ジブリネタ・久石譲ネタはもとより、さまざまな分野のバラエティ豊かなトーク満載で、見識が深まり毎号楽しみに読んでいます。この最新刊も、各ゲストを迎えてのエピソードそれぞれに、書き残したいことはたくさんある、目からウロコなお話が盛りだくさんでした。

久石譲ファンサイトということなので、そのなかから久石譲に関連するエピソードをご紹介します。抜粋になりますので、もしさらに深掘りしたい方、興味を持たれた方は、ぜひ本を手にとってみてください。

 

 

Guest 7
EXILE ATSUSHI 「伝えたい歌、日本のこころ」

日本の歴史からわかること

~略~

ATSUSHI:
「そうですね・・・。EXILEとしてのステージの時は、どっちかというとエンターテインメントで、バーンと派手は演出が多いので。ソロのツアーでは、わりと静かな曲も歌います。あと、この前、久石さんとご一緒させていただいたので・・・」

鈴木:
「そうですってね。さっきの奥さんも知ってたんですよ、そのことを(笑)。」

ATSUSHI:
「〈懺悔〉という曲なんですけど、ちょうど宮崎駿さんが引退を発表された日(2013年9月1日発表、6日引退会見)に、その曲のミックスダウンをしていて。久石さんは、宮崎さんと30年ぐらい一緒にやってきた仲間なので、やっぱりちょっと傷心されてる感じがありましたね。」

鈴木:
「あの日ですか!・・・ぼく、その日に、久石さんに2回電話をもらったんですよ。じゃあ、その作業の合い間を縫っての電話だったんですね。それで、最初は「引退にびっくりした」という話で、しばらくおいて、「何とか撤回できないのか」と・・・(笑)。」

ATSUSHI:
「ああ、そうおっしゃってたんですね? 相当ショックだったみたいですね、やっぱり。」

-あの曲(〈懺悔〉)は、詞よりも曲が先にあったんですか?

ATSUSHI:
「あれは、日本テレビが催した、「洛中洛外図」という大昔の何枚もの屏風を展示する記念式典というか、展覧会のためのテーマ曲だったんです。それでぼくも、一緒に行かせていただき、見たんですが——やっぱりそお屏風には、当時の”発注主”がいて、たとえば、徳川家と豊臣家の勢力図みたいなものが上手と下手みたいに描かれていたり、深い意味が込められている。日本人の民族性というか、当時の生活が描いてあったり。そういうものを見て、久石さんがインスピレーションを得て作られたメロディーをぼくに下さって、ぼくも、歌詞の案を先にメモしておいたんですけど、それに合わせて作詞させていただきました。

でも、音楽家としての信頼というんですかね・・・お任せして、最初に上がってきた時、すごく難しいメロディーだったんですけど、「とにかく久石さんだし、文句言わずにやってみよう」と。すごく難しかったけど、作詞をして、歌った時に、「ああ、やっぱりすごいな。こうなるんだ」と——自分ではイメージできないところまで行っているというか、信頼してやってみた良かったなと思いましたね。

その「洛中洛外図」を見て、昔から芸術作品というものは、ある思いがあって残されているんだなあと。その屏風にも、何か意図があって、発注主がいて、そして、今に残されている・・・。見ると、人間は、ずーっと同じことを繰り返しているんです。争いもするし、平和を願って篳篥(ひちりき)を吹いてた人たちの”昔”は、もう消えてしまったのか、とか。人間は同じ過ちを繰り返しているなと感じたし、作詞をしていて「これって、懺悔なんだな」と思い、〈懺悔〉というタイトルにさせていただいたんです。

その屏風には、喧嘩をはやし立てるお坊さんや、不倫をしに行く女性の姿や、お花見の帰りに酔っぱらってる集団が描かれていて、結局、やってることは今と変わらない。昔のことはどうしてもちょっと美化して捉えるけれども、昔はけっこう自由に芸術をやっていたんだなあ、とも思いましたね。」

鈴木:
「いつごろのものなんですか? 「洛中洛外図」って。

ATSUSHI:
「室町時代から始まり、江戸時代まで描かれていたそうです。」

鈴木:
「室町なんですよねえ・・・日本のすべてが変わったのは。今、”家族”というものがあるじゃないですか。お父さん、お母さん、子供がいて、一つの家族を構成している。それ、室町時代に始まってるんですね。」

~略~

「やりたいことをやる」ことの是非

~略~

鈴木:
「だけど、この前、東京ドームのコンサートを初めて拝見して、思い知らされましたよね。最初から最後まで、目が離せない。やっぱり面白かったんだもの。何が良かったかというと、自分たちのことよりも、お客さんのことを考えていらした。そこらへんが、宮崎駿の考えかたにも通じるというか・・・。彼もね、そりゃ自分でやりたいこともあるんでしょうけど、それより先に、「今のお客さんって、何を観たがっているんだろう?」って、そっちですよ。」

ATSUSHI:
「宮崎さんって、そうなんですね?」

鈴木:
「はたから見ると好きなことやってきたように見えるかもしれないけど、しかし、誤解を恐れずに言っちゃうと——彼は、自分の好きなものは一本もやっていない。」

-そうなんですか!?

鈴木:
「そうですよ。だから、さっきの屏風の話じゃないけど、ぼくなんか、発注主なんですよ。「次、これをやってください」って。そうすると、だいたい二つ返事で引き受けてくれる。で、「今、この題材で何をやるとお客さんが満足してくれるだろう?」って、まず、先にそれですよ。彼が他の監督と一番違うのはそこで、非常に職業的にやる。だから引退の時に、「これからは好きなことやります」って言ったわけです。だって、一回もやってないんだもん、大げさに言うと。

変な言いかただけどね・・・もし、彼が好きなことだけやっていたら、30年ももたないですよね。いつもいつも、「お客さんが何を求めているか」。それを探るのが、彼がやってきたことなんです。」

ASTUSHI:
「なるほど、そうなんですね・・・。ぼくにとってのEXILEも、今おっしゃったことに近くて、自分自身のために作詞とかパフォーマンスをやったことは、あまりないですね。グループのため、お客さんのためというのが、やっぱり一番にある。」

鈴木:
「さっき、美空ひばりさんの話が出たけど、昔は、歌手のバックには、プロデューサーがいて、ディレクターがいて、「この歌手に、次、何を歌わせようか」と考える。その時、彼らが考えるのは、お客さんのことですよね。歌手本人の希望うんぬんではなく、「これを歌え」と。それでうまくいくかどうか、でしょ? そういう時代のやりかたって、もう一度見直すべきじゃないかなという気がする。エンターテインメントというのは、やっぱり、需要と供給の関係の上に成り立っているから、ひとりよがりになっちゃダメでしょう。

いい機会だから、ちょっと話ちゃうと——宮さん(宮崎駿)は、引退のあと好きなことをやると言いながら、いざとなると、「何をやったらいいんだろう」と思っていますよね。」

ASTUSHI:
「長年、お客さんのためにやることによって、好きなことが変わってきちゃってるから、「本当にやりたいことって何だっけ?」という感じなんでしょうね。」

鈴木:
「そうそう。そのとおり!」

-そうなると、逆に、自分がただやりたいことだけをやっても、楽しくないんじゃないですか?

ATSUSHI:
「誰からも反応がないって思うと、やりたくなくなっちゃうんですよね。」

鈴木:
「結局、宮崎駿が、今何をやってるかというと——三鷹の森ジブリ美術館の展示替えが、毎年5月にるんですが、それを、目の色を変えてやっている。それで、ジブリが作った保育園の子供たちに楽しんでもらいたいと、去年からやってるんですけど、正月を越えて、「もう、どうしたらいいかわからない」って。ものすごく一生懸命やっていて、ある意味では、映画を作るよりも頑張ってる。「こんなことを頑張るんだったら、映画を作ってよ」と言いたいぐらいなんですけど(笑)、彼にとっては、お客さんの顔が見えてるんですよ、その子たちが喜んでくれなかったらダメと。~略~」

~以下略~

2014年3月11日収録 れんが屋/4月8日・5月13日放送分に、元音源より追加、再構成。

(書籍「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ 5」 より)

 

 

当エピソードの半分も抜粋していません、話はあらゆる方面に展開し、ジブリのこと・EXILEのこと、多岐にわたっています。

個人的には、久石譲が宮崎駿監督の引退を耳にしたその日が「懺悔 EXILE ATSUSHI x 久石譲」のミックスダウンの日ということだけでも、感慨深い思いで同曲を聴き返してしまいました。映画「風立ちぬ」製作期間中、うすうすは感じていたことかもしれませんが、いざ公になったときの衝撃はやはり第三者には測りかねるものが存在するのだろうと思います。

芸術とは、芸術作品とは、作家とは。時代性や作家性もふまえて語られた対談はとても興味深いものがありました。村上春樹さんのエッセイなどを読んでいても、久石譲にも通じるのかなあ、同じようなこと思っているのかなあ、と置き換えてみることもるのですが、それはまた別の機会にご紹介できたらと思っています。

このあたりの「久石譲考察」については、ちょうど今年の5-6月にかけて深く掘り下げて記しました。共通項もあるような気もしますので、ご興味のある方はぜひ。

こちら⇒Blog. 次のステージを展開する久石譲 -2013年からの傾向と対策- 1
こちら⇒Blog. 次のステージを展開する久石譲 -2013年からの傾向と対策- 2
こちら⇒Blog. 次のステージを展開する久石譲 -2013年からの傾向と対策- 3

 

本書よりご紹介した楽曲「懺悔」にまるわる楽曲解説やエピソードなどは下記ご参照ください。

こちら⇒Disc. EXILE ATSUSHI & 久石譲 『懺悔』
こちら⇒Blog. 「NHK SWITCH インタビュー 達人達 久石譲 x 吉岡徳仁」 番組内容紹介

EXILE ATSUSHI 久石譲 懺悔 通常盤

 

最後に。

この秋読んだ本に、「ジブリの仲間たち」(鈴木敏夫)[2016.6刊行]、「もう一つの「バルス」 -宮崎駿と『天空の城ラピュタ』の時代-」(木原浩勝)[2016.10刊行]などもあります。前著は、今、宮崎駿監督が何に取り組んでいるか、リアルタイムな情報を垣間見ることができます。

後著は、2016年今年が「ラピュラ公開30周年」にあたり、当時の制作現場がまぶしく記されています。かなりトリビア的な情報も多く、ジブリファン・ラピュタファンには、たまらない一冊になると思います。当時スタジオジブリでこの作品を一緒に作っていた人だからこそ語れる秘話満載です。おそらく蔵出しな情報ばかりで、鈴木敏夫・宮崎駿・高畑勲 各著書はほぼ読んでいる身としても、初めて知ることが多く驚きと感動の連続で一気に読み切りました。

私のふわっと感想よりも、Amazonレビューなんかを見ていただければ、手にとりたくなること間違いナシです。(リンク貼っていません検索されてください)

 

ジブリの仲間たち 鈴木敏夫 もう一つのバルス

 

秋の夜長に、ぜひ1冊手にとってみてください。久石譲を聴きながら♪

ジブリ汗まみれ5 鈴木敏夫

 

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