Blog. 「ショパン CHOPIN’ 1991年3月号」久石譲インタビュー内容

Posted on 2017/08/01

音楽誌「ショパン」1991年3月号に掲載された久石譲インタビューです。内容は同時期に発売されたばかりのオリジナル・ソロアルバム「I AM」についてです。制作過程の記憶が新しいとても貴重なインタビューです。

 

 

風の流れを感じさせる

この2月22日に発売される東芝EMIソロ移籍の第1弾アルバムのタイトルは『I AM』。今までに自分のやってきたものの代表作にしよう、これこそ久石譲——This is HISAISHI JOE——といった意味で、名づけた。

彼の名をポピュラーにしたのは、おそらく宮崎駿のアニメーション映画「風の谷のナウシカ」の音楽だろう。それ以後、宮崎さんお映画の音は彼が手がけている。その他昨年は「タスマニア物語」、今年はこの4月公開の「仔鹿物語」。だが今回の作品は、そういったフル・オーケストラの音楽から離れて、よりシンプルなピアノとストリングスを中心とした作品に仕上がっている。

「ストリングスはロンドン・シンフォニーとロンドン・フィルのメンバーに協力してもらいました。ロンドンの——特に弦の音は、僕の求めている音に合うんです。録音はアビィ・ロード・スタジオ。あそこはね、ルーム・エコーが非常にいいんですよ。ピアノのパートは日本で録音しました。ピアノはベーゼンドルファー・インペリアル。低音部分にこだわってみたので」

今後のアルバムでは、”ピアニスト・久石譲”という部分を追求してみたのだという。だがもう少し、よく聴いてみて欲しい。さり気ないフレーズの中に、”アレンジャー・久石譲”の小憎らしいまでの閃きが見えてくる。

「結構ね、難しいことやってるんですよ。普通だったら使わないような手法とか。でもさすがに向こうの人たちはその意図をわかってくれて、のってやってくれた。イギリス人のユーモアというか、あけっぴろげなアメリカとはまた違って、楽しい共同作業になりました」

久石さんのサウンド——というとやはり注目するのがメロディだ。耳に心地よく、覚えやすく、ついつい口ずさんでしまう。そのメロディに絡み、隠れ、時には主導権を握るリズムは、異国的であり、そしてどこか懐かしい気持ちさえ呼び起こす。「風の流れを感じさせる音楽家」だという。しかしその風は、砂と岩の間を吹き淀む乾いた赤道の風ではなくて、旅行記を記すように、草原の羊の群を追い、沢を走り、砂を巻いて吹き抜ける季節風なのだろう。そこに留まらず、でもすべてを見霽(はる)かし、孕んでいる。

久石譲の”代表作”『I AM』。あなたも、風の流れを感じて欲しい。

文:渡邉さゆり

(音楽誌「ショパン 1991年3月号」より)

 

 

 

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