Blog. 「オールタイム・ベスト 映画遺産 映画音楽篇 」 【映画音楽とミニマルミュージック】 コラム紹介

Posted on 2015/1/31

2010年4月2日発売 ムック(書籍)
キネ旬ムック キネマ旬報特別編集 「オールタイム・ベスト 映画遺産 映画音楽篇」

映画情報誌としても有名なキネマ旬報の特別編集版ムックです。「オールタイム・ベスト 映画遺産200 《外国映画篇》」「オールタイム・ベスト 映画遺産200  《日本映画篇》」というそれぞれの書籍と同様に別枠で1冊にまとめられたのが「オールタイム・ベスト 映画遺産200 映画音楽篇」です。

300ページにおよぶ映画音楽年鑑のようになっています。

  • 映画音楽が心に残る映画 1位~20位紹介
  • ジャンル別映画音楽ベスト10
  • 心に残る映画歌曲・テーマ曲ベスト
  • 好きな映画音楽作曲家ベスト
  • 映画音楽の歴史

目次からの一部抜粋だけでもこういった感じです。この中の8ページに及ぶ久石譲インタビューは別頁にて紹介しています。

こちら ⇒ Blog. 「オールタイム・ベスト 映画遺産 映画音楽篇 」(キネ旬ムック) 久石譲 インタビュー内容

 

ここでは別の角度から読み解いていきます。

コラム「映画音楽の歴史」

1. サイレント期~トーキー初期の映画音楽
映画音楽にサイレントは存在しない

2. サイレントからトーキーに至る日本映画
音楽と映像をめぐる二分法とそのあいだの豊かな濃淡の歴史

3. ハリウッド黄金期の作曲家たち
世界各地に出自を持つ才人たちが切磋琢磨した黄金の40~50年代

4. ヨーロッパ映画の戦後時代
人脈を核に復興へと向かっていった戦後ヨーロッパの映画音楽

5. アメリカン・ニュー・シネマとフランス・ヌーヴェル・ヴァーグ
映画音楽を変革したふたつの時代

6. ミュージカル映画の作曲家たち
舞台から映画へ、映画から舞台へ、その華やかな往来

7. バーンスティン、ゴールドスミス、ウィリアムズが作った時代
映画黄金期の終焉と入れ替わりに新時代を拓いた3人の作曲家

8.映画音楽におけるミニマリズムの影響
実験映画から娯楽大作に至るミニマリズムの系譜

9.ディズニーがこだわり続けた”音楽映画”
「蒸気船ウィリー」からアラン・メンケンまで

10. 現代ハリウッドの潮流
ジマーとその一派が席巻する現代 そして次代の映画音楽は?

 

 

映画が誕生したと言われている1895年から現在に至る約110年以上を映画音楽を軸に順を追って歴史を刻んでいるコラムです。その中から、直接久石譲のインタビュー等ではないですが関連性のある題。

8.映画音楽におけるミニマリズムの影響
実験映画から娯楽大作に至るミニマリズムの系譜

映画音楽とミニマル・ミュージックについて。このコラムをご紹介します。

 

映画音楽の歴史 8.映画音楽におけるミニマリズムの影響
実験映画から娯楽大作に至るミニマリズムの系譜

本稿で扱うミニマリズム(ミニマルミュージック)とは、主として1960年代にスティーヴ・ライヒ、テリー・ライリー、フィリップ・グラスらが始めた、短い音形やパターンを反復する音楽とその手法を言う。この用語は「ピアノ・レッスン」(93)の作曲家マイケル・ナイマンが68年に初めて音楽の分野に導入し、その後70年代に入ってから、前記3人に影響を受けた音楽や、その亜流まで広く指すようになった。

映画音楽におけるミニマリズムの影響を振り返る前に、ライヒとグラスが活動初期に実験映画と関わりを持ち、それらが彼らの音楽語法を開拓する契機となったことは、是非とも確認しておきたい事実である。前者は、サンフランシスコの実験作家バート・ネルソンの「Plastic Haircut」(63)ほか2本の短編でテープ音楽を用いたサウンドトラックを手がけ、それがテープループの無限反復でカノン(輪唱)を生み出すライヒ独特の反復技法の発見に繋がった。その後、サンフランシスコの映画作家/編集者のウォルター・マーチがライヒの技法に注目し、「THX – 1138」(71、テレビ放映)の音響編集でテープループを用いたサウンドコラージュを手がけるが、ライヒの直接的影響が確認できる商業映画としては、おそらくこれが最初の例であろう。一方のグラスは、パリ留学中にシタール奏者ラヴィ・シャンカールが音楽を手がけた「チャパクァ」(66)の譜面作成と演奏に携わるが、そこで学んだインド音楽の伝統的な演奏法にヒントを得て、西洋的な拍節構造に頼らず、音符の増減に基づく反復(加算・減算構造)で音楽を後世する手法を編み出した。

商業映画の音楽に進出した最初のミニマリストは、ドラマ「眼を閉じて」(71)とホラー「バイオスパン/暗黒の実験」(76、ビデオ公開)を手がけたテリー・ライリーである。ドローンの持続とリズムパターンの反復、それにインド楽器の使用に、ライリーらしいミニマリズムを聴くことができる。

しかしながら、ミニマリズムは、上述の3人のミニマリストが映画音楽に直接その影響をもたらしたというより、ミニマリストから何らかの影響を受けたプログレッシヴロックが、映画と関わることで、ミニマリズムの影響を間接的に伝えていったと言う方が、より事態を正確に表わしている。その最も顕著な例が、マイク・オールドフィールドのアルバム『チューブラー・ベルズ』をテーマ曲に転用した「エクソシスト」(73)であろう。「ひたひたと反復を繰り返すミニマリズム = ホラー映画」という連想を一般観客に植え付けた『チューブラー・ベルズ』は、実のところ、オールドフィールドの作曲意図を全く考慮せず選曲されたものに過ぎない。ただし、彼自身は「キリング・フィールド」(84)のプノンペン陥落場面でミニマリズムに基づく音楽を書いており、ヘリコプターのローター音を周期的なパルス音に用いた斬新なアプローチが効果を上げている。

ホラー映画の文脈でミニマリズムの影響をはっきり公言した例としては、イタリアのプログレバンド、ゴブリン(特にキーボード担当のクラウディオ・シモネッティ)が広く知られている。「サスペリア2」(75)から、すでに『チューブラー・ベルズ』を媒体にしたミニマリズムの影響を見ることができるが、より露骨なのは「サスペリア」(77)のスコアだろう。その中の『エレーナー・マルコス』なる楽曲で、ゴブリンは69年のグラスの作品『似た動きの音楽』を無断編曲している。

映画音楽におけるミニマリズムの影響が顕在化した最初の国は、おそらくイギリスであろう。その大きな要因として、ライヒやグラスと直接的な交流があった英国人作曲家マイケル・ナイマンとブライアン・イーノの存在が挙げられる。ナイマンはピーター・グリーナウェイ監督とコンビを組んで「VERTICAL FEATURES REMAKE」(78)ほかの実験映画を手がけ、映像と音楽双方からミニマルという概念を定義し直そうとした試みが重要である。ナイマンはグリーナウェイとの共同作業と通じ、当初の彼の研究対象であったパーセルほかバロック音楽に見られるグラウンドバス(低音主題)の技法を、ミニマリズムの文脈で再発見することになった。これに対し、イーノはミニマリズムから一定の影響を受けつつも、彼が生み出したアンビエントミュージック(とその思想)を映画音楽に導入しようと試みた。78年のイーノのアルバム『ミュージック・フォー・フィルムズ』は、一種のストックミュージックとして作られたもので、グリーナウェイの「VERTICAL~」ほか、イーノが作曲者としてクレジットされた「エゴン・シーレ」(80)などで実際に使用されている。

ナイマンの「英国式庭園殺人事件」(82)やグラスの「コヤニスカッティ」(83)が商業映画として公開され、ミニマリズムの作曲家だった久石譲が「風の谷のナウシカ」(84)を手がけた頃から、ミニマリズムに基づく映画音楽は徐々に市民権を得るようになったと言ってよい。有名なところでは、坂本龍一の「戦場のメリークリスマス」(83)の『バタヴィア』がミニマリズムに基づいている。

近年では、現代作曲家ドン(ドナルド)・デイヴィスが手がけた「マトリックス」(99)と2本の続編が重要である。ここでデイヴィスは、彼が影響を受けたポストミニマリズムの作曲家ジョン・アダムズの方法論を応用し、巨大な編成のオーケストラで反復音形を拡大する実験を行っている。

ジョン・ウィリアムズの「A.I.」(01)やハンス・ジマーとジェームズ・ニュートン・ハワードの共作「ダークナイト」(08)などのスコアに見られるように、今やミニマリズムは映画音楽の製作現場における一種の共通言語となった感がある。だが、日本のテレビ選曲担当者がライヒの楽曲を日夜垂れ流している現実が象徴しているように、テンプトラック(仮音源)製作の段階で安易に選曲されたミニマリズムの楽曲が映画音楽に画一化をもたらす現況のひとつのなっているのも、事実である。

(キネ旬ムック キネマ旬報特別編集 「オールタイム・ベスト 映画遺産 映画音楽篇」 より 書き起こし)

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