Disc. 久石譲 『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック 2 』

2010年11月17日 CD発売

2009年から2011年まで足掛け3年にわたって放送されたNHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」
原作は司馬遼太郎の同名小説「坂の上の雲」
2009年第1部 2010年第2部 2011年第3部 全13回
その3年間にわたって放送された全3部の音楽を担当。

 

司馬遼太郎の長編小説を原作とするスペシャルドラマ「坂の上の雲」。日本のテレビ史上これまでにないスケールを目指しNHKが総力を挙げて取り組んでいるスペシャルドラマである。音楽を手掛けるのは日本を代表するコンポーザー久石譲。

本作は「ドラマ第1部」使用曲より第1弾サントラ未収録曲と「ドラマ第2部」のために録音された新曲をまとめて一挙収録した豪華盤。視聴者の皆様からの多くのお問い合わせ・リクエストを頂いた「少年の国」などの楽曲も収録。

壮大なスケール感。希望に満ちた旋律。坂の上の雲に向かってひたすらに歩み続けた明治人の世界が鮮やかによみがえるオリジナル・サウンドトラック。

 

生みの苦しみ、生みの喜び

スペシャルドラマ「坂の上の雲」は3年間におよぶ撮影、そして3年に亘る放送と、これまでの規格に収まらない番組だ。この文章を書いている時点で、この番組のプロジェクトを立ち上げてからすでに8年になる。プロジェクトを進行させてゆく面白さと裏腹に、継続させてゆくつらさも常に付きまとう。新しいことに挑戦してゆくときのある種の熱気のようなものをバネに「エイヤッ」と走り出しても、ゴールは遥か先で到底視界には入らず、そして途中棄権も許されないマラソンを走っている感じだ。しかし、短距離走よりマラソンの利点も多く、それだけ準備も撮影も周到にできる。番組をご覧いただいた方には、その質の高さを実感いただけたのではないかと自負している。

このマラソンを走る「面白さ」と「つらさ」を感じているのは私だけではなく、この番組に携わっている全てのスタッフや出演者が感じているのではないかと思う。ご本人に直接聞いたことはないが、音楽を担当していただいている久石譲さんも、同じ感覚を持っているのではないか、と勝手に想像している。

ドラマの第1部はいわば「青春編」だった。日本が国際社会という舞台に初めて立ち、主人公たちがそれぞれの道を歩き始めるというストーリーだった。第2部は「友情編」である。ロシアとの関係が緊張を増し、ついに開戦となるなか、秋山真之の二人の親友、正岡子規と広瀬武夫が壮絶な最期を遂げる。兄の好古はロシアや清国の、本来は対決するはずの人々と親交を結んでゆく。子規や広瀬の死は音楽的にも大きなテーマだし、ロシアを音楽でどう表現するのかなど、久石さんのマラソンコースの上で、難所だったに違いない。

そしてメインテーマだ。ドラマは3部構成であり、しかも3年に亘って放送する。物語は激しく展開し、時代は変わり、見ている人たちも作っている私たちも変わってゆく。ならばメインテーマも変わっていったらどうだろうか。そう思っていたのは私だけではなく、久石さんも同じだったようだ。しかし、英国の歌姫のイメージを踏襲しながら、違和感なく新しいヴァージョンを創り出すのはかなりの難産だった。けれど、森麻季さんの歌声と久石さんの手腕で素晴しい曲に仕上がった。

これがマラソンの面白さかな、と思っている。

2010年11月

NHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」
チーフ・プロデューサー 藤澤浩一

(CDライナーノーツより)

 

 

この「オリジナル・サウンドトラック 2 」は第1部未収録楽曲となる(1)~(12)と第2部新録音楽曲となる(14)~(24)で構成されている。(13)は「オリジナル・サウンドトラック 1」(以下 サントラ1)にも収録されているため、Bonus track となっている。

主題歌でありメインテーマの『Stand Alone』は、「サントラ1」の4ヴァージョンとは別に、(5)にて、ヴァイオリンとチェロの掛け合いにハープの上品な伴奏という悠々な1曲となっている。

第2部で主題歌を歌っているのは、森麻季(24)。オーケストラアレンジは、第1部で歌ったサラ・ブライトマンのそれと同じだが、歌声が変わるだけで、また違った印象と息吹を与えてくれる佳曲。

第1部の未収録楽曲からは、(1) (2) (12)が、若者たちの青春を象徴した、希望に満ちた、豪快かつ軽快な楽曲。(3)は「サントラ1」の『(3)旅立ち』をモチーフにした吹奏楽アレンジになっていたり、(4)は「サントラ1」の『(5)青春』をモチーフにコミカルなタッチになっている。(6)は全3部で随所に聴くことができる、いわば「坂の上の雲」作品におけるレクイエムのよう。トランペットの優しくも高揚な音色が、明治という時代の様々な出来事や人々の感情を、何も語らずも一気に飲み込んでしまう、包みこんでしまう、そういう楽曲。

この曲以後、後半の第1部未収録楽曲からは、戦争や国際社会といった時代の渦に流されていく重厚な楽曲たちが並ぶ。

第2部の新録音楽曲からは、(17) (18) (19)など、この時代の混沌さを重厚に表現している。一方では(15) (16) (21)など、人々の感情を叙情的に美しくも儚く表現している。第2部はいわば「友情編」となっていて(制作サイド)、主人公たちのそれぞれの道や親友の死、またロシアや清とった国際社会が舞台になっていることからも垣間見える。それは(14)や(22)からも象徴され伝わってくる一貫した緊張感が凝縮されている。

「第1部」 「オリジナル・サウンドトラック 1 」とは、また別の世界観を堪能できる1枚。

 

久石譲 『坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック 2 』

第1部:未収録楽曲より
1. 少年の国
2. ガキ大将!真之
3. 奇跡の時
4. 悪ガキ行進曲
5. Stand Alone for Violin & Violoncello
6. 疵 (キズ)
7. 偵察
8. 狼煙 (ノロシ)
9. 破局の始まり
10. 終の住処 (ツイノスミカ)
11. 少年の国 for Woodwinds & Strings
12. 広瀬 ~快活な人物~
13. Stand Alone with Piano / サラ・ブライトマン×久石 譲 Bonus track
第2部:新録音楽曲より
14. 若き精鋭たち
15. 真之と季子
16. 律 ~愛と悲しみ~
17. 強国ロシア
18. アリアズナ
19. 列強と日本
20. 奸計 (カンケイ)
21. 慕情
22. 開戦への決意
23. 広瀬の最期
24. Stand Alone 歌/森麻季(ソプラノ)

音楽/久石譲
指揮/久石譲 演奏/東京ニューシティ管弦楽団
指揮/外山雄三 演奏/NHK交響楽団 (M-24)

All Music Composed, Arranged and Produced by Joe Hisaishi

Piano by 久石譲 (M13,M24)

Recorded at NHK CR-506, CR-509, Nemo Studios (M13)
Mixed at NHK CP-604, CR-506, NHK出版宇田川スタジオ (M24), Nemo Studios (M13)

 

コメントする/To Comment