Disc. 久石譲 『久石譲 presents MUSIC FUTURE 2015』

2016年10月21日 CD発売

『久石譲 presents MUSIC FUTURE 2015』
久石譲(指揮) フューチャー・オーケストラ

久石譲が主宰するWonder Land RecordsとEXTONレーベルが夢のコラボレーション!未来へ発信する新シリーズがスタート!

現在、日本を代表する作曲家久石譲と、EXTIONによる夢のコラボレーション。久石譲が2014年に始動させ好評を博す現代の音楽のコンサート・シリーズ「ミュージック・フューチャー」より、2015年のコンサートから厳選されたライヴ・レコーディング盤です。ミニマル・ミュージックの代表的作曲家スティーヴ・ライヒ、彼に影響を受けたジョン・アダムズ、久石譲の3人の曲を収録。1970年代から現代にかけての音楽の軌跡、熱量を感じ取ることが出来るでしょう。まさに「新たなる音楽体験」を感じさせる楽曲たちです。また、日本を代表する名手たちが揃った「フューチャー・オーケストラ」の演奏も注目。難易度MAXのこれらの楽曲を、高い技術とアンサンブルで見事に芸術の高みへと昇華していきます。未来へと発信される新シリーズのスタートです。「明日のための音楽」がここにあります。

ホームページ&WEBSHOP
www.octavia.co.jp

(CD帯より)

 

解説 小沼純一

このアルバムは、久石譲によるコンサート・シリーズ「MUSIC FUTURE」の「Vol.2」(2015)で演奏された作品3つによって構成されています。

コンサート・シリーズは2014年から始まり、「Vol.1」はアルヴォ・ペルトやヘンリク・グレツキなどのヨーロッパの作品を、「Vol.2」ではアメリカ合衆国の作品を中心にプログラムが組まれました。作品は20世紀から21世紀にかけてのものが中心で、いずれも久石譲という作曲家が関心を持ち、また影響を受けた作品です。しかしかならずしもコンサートで、ライヴ演奏でふれる機会は多くありません。録音をとおして知っているだけのおとも多々あります。そうした作品を、このようなかたちでステージにのせ、聴き手の方がたにじかにふれてもらおうという試みが、「MUSIC FUTURE」です。そしてはじめて聴いたけどおもしろい、あるいは、新しい体験となった、そんなことをおもってもらえればいい、そんな意図があるようにおもえます。

アルバムでは「Vol.2」で演奏された5作品のなかから、3曲を収録しています。CDはコンサートとはまたべつの提示ができるメディアです。この選曲は、ある意味、久石譲自身がたつ位置そのものを音楽的に要約しているようにみえます。つまり、1960年代から70年代にかけてアメリカ合衆国で「ミニマル・ミュージック」と呼ばれることになる音楽が生まれる。代表的な作曲家としてスティーヴ・ライヒ(1936-)がいる。つぎの世代はライヒの音楽にふれ、こうした音楽を書いてもいいんだと、ひとつの自由さを得る。それがジョン・アダムズ(1947-)であり、久石譲(1950-)だった——。ただライヒらの音楽をただ真似しているのではなく、次世代はミニマル・ミュージックを音楽的思考の土台にしながら新たな道へと歩み始めます。ここにある3曲は、ライヒの1979/1983年から1992年、2015年と、ある音楽スタイルの軌跡が、ほぼ10年間隔で、提示されている。そんなふうにみることができるでしょう。

 

久石譲
《室内交響曲 for Electric Violin and Chamber Orchestra》

コンサート当日、前2014年にひらいた「MUSIC FUTURE Vol.1」でプログラムしたニコ・ミューリー作品でのエレクトリック・ヴァイオリンを自作でもつかってみようと考えた、と久石譲はMCで語っていました。結果的にこの楽器はとてもアメリカ的なひびきであること、それによってこのコンサートがアメリカの音楽を中心にプログラムされている、また同時に、久石譲が自身のうちのアメリカ、アメリカ音楽の影響を確認することになったのだ、とも。実質的には協奏曲(コンチェルト)であるのに、「室内交響曲」というタイトルであるのは、エドゥアール・ラロの有名な《スペイン交響曲》にならってとのことです。

ここで用いられているエレクトリック・ヴァイオリンはすこし特殊で、6弦からなっています。通常のヴァイオリンより低い音域が可能で、また、操作によってエレクトリック・ギターのようなひびきがだせるのが特徴です。エレクトリック・ギターをそのままオーケストラと共演させると、ときに両者のサウンドが調和しないことがあります。しかし、このエレクトリック・ヴァイオリンはアコースティックなところとエレクトリックなところを両方を持つハイブリットな性格によって、またさらにサクソフォンの音色の強調によって、「室内交響曲」を一歩拡張しています。

全体は急-緩-急の3楽章をとります。エレクトリック・ヴァイオリンは室内オーケストラのひびきを外からまわりこむかたちをとることが多く、またアンサンブルのなかではサクソフォンが時折クローズアップされます。特に第3楽章半ばからあとのところでしょうか、こまかい音型がゆきかうなかで息のながいサクソフォンの線は、そこに注目するなら、先のライヒやアダムズとは異なったものとして聴けるかもしれません。

 

スティーヴ・ライヒ
《エイト・ラインズ》

もともとオクテット(八重奏曲)というタイトルで1979年に発表されましたが、後により演奏しやすいかたちに手を加え、1983年に改訂、現在は《エイト・ラインズ》として知られています。全体が5つの部分に分かれたり、とか、70年代半ばくらいにライヒが学んでいたユダヤ教の唱法の影が落ちていたり、とか分析的なことはいろいろあります。ありますけれど、そんなことよりこの5拍子の途切れることないビート感、ドライヴ感をこそ、体感すべきでしょう。そして、2台のピアノそれぞれの短く上下するフレーズ、木管楽器のメロディックなフレーズ、弦楽器の息の長いフレーズ、それぞれどこに耳の視点(聴点?)を置くかで、音楽の聴こえ方が変わってくる、聴き方による音楽の変化をこそ知っていただければとおもいます。

 

ジョン・アダムズ
《室内交響曲》

1992年に作曲、翌年1月作曲者自身の指揮でオランダのデンハーグで初演された作品です。

オーストリア出身で、20世紀の音楽を大きく前進させ、「12音音楽」を創始した作曲家、アルノルト・シェーンベルク(1874-1951)に《室内交響曲》作品9という20世紀初頭の名作があるのですが、その楽器編成をもとにしながら、金管楽器と打楽器、サンプラーを加えてより現代的なサウンドをつくりだしています。またシェーンベルクが単一楽章であるのに対し、アダムズは3つの楽章(古典的な急-緩-急)に分け、また各楽章にサブタイトル——〈雑種のアリア〉〈バスの歩行を伴うアリア〉〈ロードランナー〉——をつけてもいます。

アダムズ自身はこんなことを言っています。曰く、シェーンベルクのスコアを読んでいたとき、隣の部屋では当時7歳の息子が1950年代カートゥーン(アニメーション)をテレヴィでみていた。そのがちゃがちゃどたばたした音が整然としたスコアにオーヴァーラップしてきたのだ、と。コンサートで久石譲は「おもちゃ箱をひっくりかえしたような」と語っていましたが、打楽器のリズムやリズムと一体化した音色は、管楽器や原画機の複雑な音のうごきがありながら、しっかり聴き手をつなぎとめてゆきます。

ちなみにアダムズは2007年に《室内交響曲の息子(Son of Chamber Symphony)というのも作曲していて、ちょっと紛らわしいので、ご注意のほど。

(こぬま・じゅんいち)

(解説 ~CDライナーノーツより)

 

フューチャー・オーケストラ
Future Orchestra

2014年、久石譲のかけ声によりスタートしたコンサート・シリーズ「MUSIC FUTURE」から誕生した室内オーケストラ。現代的なサウンドと高い技術を要するプログラミングにあわせ、日本を代表する精鋭メンバーで構成される。

”現代に書かれた優れた音楽を紹介する”という野心的なコンセプトのもと、久石譲の世界初演作のみならず、2014年の「Vol.1」ではヘンリク・グレツキやアルヴォ・ペルト、ニコ・ミューリーを、2015年の「Vol.2」ではスティーヴ・ライヒ、ジョン・アダムズ、ブライス・デスナーの作品を演奏し、好評を博した。”新しい音楽”を体験させてくれる先鋭的な室内オーケストラである。

(CDライナー・ノーツ より)

 

 

「ミュージック・フューチャー Vol.2」のために書き下ろされた室内交響曲。6弦エレクトリック・ヴァイオリンをフィーチャーし、全3楽章で構成された作品(約30分)。

第1楽章の冒頭から衝撃が走る。まさにエレクトリック(電子的)な響き。ペダル式エフェクター/フットコントローラーを駆使して、音を歪ませるディストーションを利かせたり、それはまさにロックのよう。さらにはルーパーと言われる、今演奏したプレイをその場でループ演奏させる機能も使い、ループさせたフレーズに新しい旋律を重ねていくという技法も。これがヴァイオリンの音か、ヴァイオリンの演奏かと常識を覆される。エレクトリック・ヴァイオリンはひずませた音色のなかにもヴァイオリンならではの艶やかさがあるから不思議。尖った音色のなかにも心地よさをかねそなえた響き。ソロ奏者のすぐ後ろに置かれたギターアンプから響く硬質なヴァイオリンとアコーステックな管弦楽の音色とが、違和感なく絡みあう一体感を演出。

耳に残りやすい親しみやすい旋律やモティーフがある作品ではないが、そこは”調性とリズム”を重んじるだけあって、魅惑的な世界へと惹き込まれる。途中、管楽器奏者たちが、楽器からマウスピースだけを外し、口にくわえて吹くというおもしろい一面も。歌っているのか吹いているのか、声なのか音なのか、そんな演出も。

第3楽章ではリズム動機も際立っていて、例えば初期作品の「MKWAJU」収録楽曲たちを思わせるような、音が1つずつ増えていく減っていく、1音ずつズレていくというミニマル的要素もふんだんに盛り込まれ、クライマックスへと盛り上がっていく。

たとえば「DA・MA・SHI・絵」や「MKWAJU」という楽曲は、全体がリズムによって構成されている”動”なのだが、「室内交響曲 for Electric Violin and Chamber Orchestra」で新たに魅せた久石譲のミニマル的手法は、”動”だけで突き進むのではなく、”静”パートもあり、緩急とメリハリがそこに生まれている。そのためより一層”動”パート(ミニマルなリズム動機)が浮き彫りになってくる、そんな新しい境地を開拓した作品ではないか。

ソロ奏者にとってはエレクトリック・ヴァイオリンを手(弦/弓)で足(フットコントローラー/エフェクター)で操るという難易度の高い演奏を求められる作品である。エレクトリック・ヴァイオリンという独奏楽器を主役にすえた実験的要素の強い斬新な野心作となっている。

 

 

久石譲 Presents MUSIC FUTURE 2015 CD

久石譲
Joe Hisaishi (1950-)
エレクトリック・ヴァイオリンと室内オーケストラのための 室内交響曲 (2015)
Chamber symphony for Electric Violin and Chamber Orchestra
1. Mov.1
2. Mov.2
3. Mov.3

スティーヴ・ライヒ
Steve Reich (1936-)
4.エイト・ラインズ (1983) Eight Lines

ジョン・アダムズ
John Adams (1947-)
室内交響曲 (1992)
Chamber Symphony
5. 1 Mongrel Airs
6. 2 Aria with Walking Bass
7. 3 Roadrunner

久石譲(指揮)
フューチャー・オーケストラ
2015年9月24、25日 よみうり大手町ホールにてライヴ録音

Conducted by Joe Hisaishi
Performed by Future Orchestra
Live Recording at Yomiuri Otemachi Hall, Tokyo, 24, 25 Sep. 2015

Produced by Joe Hisaishi
Recording & Mixing Engineer:Tomoyoshi Ezaki
Assistant Engineer:Takeshi Muramatsu
Mixed at EXTON Studio, Tokyo
Mastering Engineer:Shigeki Fujino (UNIVERSAL MUSIC)
Cover Design:Yusaku Fukuda

and more…

 

Related Page:

 

コメントする/To Comment