Disc. 久石譲 『WORKS・I』

1997年10月15日 CD発売

交響詩曲「ナウシカ」をはじめ、
久石譲の名曲があのロンドン・フィルとの共演で一堂に!
宮崎駿・北野武・大林宣彦監督作品より厳選。
記念すべき集大成シリーズ第1作。全曲書きおろし。

 

【監督コメント】

宮崎駿
「風の谷のナウシカ」のイメージアルバムから、僕はずっと久石さんと仕事をして来た。コンビだからとか、友情でとかではなく、自分達の作品に最もふさわしい才能を探したあげく、結局、いつも久石さんにたどり着くという繰り返しだったのだ。彼は本当にいい仕事をして来たと思う。映画「もののけ姫」では、もう別格の仕上がりで、おさまりの悪いシーンの断続するフィルムを、見事に音でつづりあわせ、更に全体を高い次元に引き上げてくれた。感謝、というしかない。

北野武
映画に音楽をつける時ってさ、結局イメージのすり合わせと言うか、ものすごく感覚的、抽象的な打ち合わせの上で作業してゆく訳だから、本当に大変なんだよね。ましてオイラは音楽的な専門知識なんてほとんど無いから、こんな感じってな言い方しかできないし・・・久石さんってすごい人だよね。映像のもってるニオイを生かしてくれるんだからさ。オイラの場合は『あの夏、いちばん静かな海。』からのお付き合いなんだけど、「シンプルなメロディーの繰り返しが好きなんですよ」って言ったら、あんな凄いテーマが出来ちゃった。オイラが映画を作る時、削ぎ落としって事をいつも意識してるんだけど、音を付ける作曲家にも同じコンセプトで曲作りをお願いする訳だから、相当ワガママだよね。それでも、久石さんはそのワガママを受け容れてくれるし、それどころか、映像がぐっと前に出てくる様な曲を作ってくれる。そしてそのひとつひとつの曲は、久石さんのニオイも放ちながら、オイラの作品を結晶させる。感謝。

大林宣彦
喩えばある風景を美しいと思うのは、ぼくらが「美しい」という言葉を持つからだ。映像も音楽ももし言葉を持たなければ、もっと純粋に美しいものであるかも知れないが、残念ながらぼくらの誰もがこの言葉の呪縛から逃れることはできない。僕も譲さんも、いつも映像や音楽についてお互いの言葉で語り合うのだが、世界を美しくするのも汚すのもつまるところはぼくらの言葉自身である。
譲さんは言葉をとても大切にしてくれる音楽家の友人だ。彼の美しいメロディーは、言葉自体の持つしたたかな論理性と一つ一つの言葉の響きに寄り添うたおやかな感性とに支えられて誕生してくる。それは言葉との闘争であり共存でもある。つまりは人間的な音楽であるわけだ。
ぼくの映画の多くは独立プロの小さな自主製作だが、譲さんは度々手弁当で参加してくれた。いつも手弁当に甘えるわけにはいかないが、ここ一番という時には必ずにこにこ駆けつけてくれる。では何がここ一番かと見極めるのも言葉の覚悟であり、そんなわけでお互いの言葉への信頼がともすると危ういこの世の人の関係に、強く深い友情の絆を紡いでくれているのだろう。
ぼくらが共に創造した映画がその証しであり、だからこのアルバムはぼくの誇りでもある。

(CDライナーノーツより)

 

(1) 「Symphonic Poem “NAUSICAÄ”」

映画『風の谷のナウシカ』を組曲化した17分33秒にも及ぶ大作である。
映画本編のみならず、イメージアルバム、サウンドトラック、シンフォニー編という3作品から、映画本編では使用されなかった楽曲も含めたナウシカの壮大な世界を表現している。

パート1 ~ ティンパニの冒頭の力強い響きで一気にナウシカの世界へ引き込まれる。「風の伝説」からはじまり「ナウシカ・レクイエム」へと引き継がれる。フーガ調のメロディーの展開が奥行きと深みをましている。その後重厚な管弦楽にてレクイエムが響きわたる。

パート2 ~ 「メーヴェとコルヴェットの戦い」スリリングで高揚感のある見せ場である。その後、劇中には使用されなかったが風の谷の風景を見事に描いた「谷への道」が心地よい風を感じる悠々としたストリングスで奏でられる。再度「ナウシカ・レクイエム」の登場である。ここでは澄んだボーイ・ソプラノの歌声によって、劇中とはまたひと味違った格式高い品格へと昇華している。サントラ盤「王蟲との交流」をベースとしたアレンジである。

パート3 ~ 「鳥の人 ~エンディング」フルオーケストラによる壮大なクライマックス。コンサートの演目やアンコールとしても人気が高く、このパートのみ演奏されることも多い。

【関連作品】
久石譲 『風の谷のナウシカ イメージアルバム 鳥の人』
Disc. 久石譲 『風の谷のナウシカ イメージアルバム 鳥の人・・・』

久石譲 『風の谷のナウシカ シンフォニー編 風の伝説』
Disc. 久石譲 『風の谷のナウシカ シンフォニー編 風の伝説』

久石譲 『風の谷のナウシカ サウンドトラック』
Disc. 久石譲 『風の谷のナウシカ サウントドラック はるかな地へ・・・』

久石譲『Symphonic Best Selection』
Disc. 久石譲 『Symphonic Best Selection』

久石譲 『空想美術館』 2003 LIVE BEST
Disc. 久石譲 『空想美術館 2003 LIVE BEST』

久石譲 『W.D.O.』 DVD
Disc. 久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ 『W.D.O.』

久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~ DVD
Disc. 久石譲 『久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~ 』

久石譲 『THE BEST OF CINEMA MUSIC』
Disc. 久石譲 『The Best of Cinema Music』

 

(2) 「FOR YOU」

映画『水の旅人 -侍KIDS』より主題歌「あなたになら…」
フルオーケストラによるインストゥルメンタル。

メインテーマ「水の旅人」とならんで人気のある楽曲である。
メロディーメーカーとしての久石譲の実力が結晶した作品ともいえる。

フルートやヴァイオリンなど、ソロ楽器が優美に旋律をうたい、
その楽曲のもつ透明感をひきたてた上品なアレンジが施されている。

後半の転調によりより華やかに壮大な愛を奏でている。

サントラ盤でも「夢を叶えて」というタイトルにて近いアレンジで収録されている。

【関連作品】
久石譲 『水の旅人 オリジナル・サウンドトラック』
Disc. 久石譲 『水の旅人 -侍KIDS- オリジナル・サウンドトラック』

 

(3) 「SONATINE」

映画『ソナチネ』よりメインテーマ。

オリジナル版は、ピアノの短いモチーフによる繰り返しとシンセサイザー、パーカッションが絡み合うなんともエキゾチックな楽曲である。

これを8分にも及ぶ大作に仕立ててしまう。オーケストラを駆使し、緊張感あるドラマティックなオーケストレーション。短い旋律の繰り返しからここまでの世界観を築き上げる手腕に唸ってしまう。

本作品において、いい意味で裏切られた意欲的な力作である。

【関連作品】
久石譲 『Sonatine ソナチネ』
Disc. 久石譲 『Sonatine ソナチネ』

 

(4) 「TANGO X.T.C.」

映画『はるか、ノスタルジィ』にて「出会い ~追憶のX.T.C.~」という原曲にて誕生。

その後自身のオリジナル・アルバム『MY LOST CITY』にて「TANGO X.T.C.」という楽曲へと完成版をみた作品。オリジナル版では久石譲がこだわったというバンドネオンによるノスタルジックな響きが印象的であった。

ここではバンドネオンを排除しフルオーケストラ作品へと試みている。テンポもややゆっくりになり艶やかさがましている。後半にはドラムやウッドベースも加わり、実験的なオーケストレーションのなか大人なJAZZYな世界を漂わせている。

【関連作品】
My Lost City
Disc. 久石譲 『My Lost City』

久石譲『Symphonic Best Selection』
Disc. 久石譲 『Symphonic Best Selection』

久石譲 『WORKS2』
Disc. 久石譲 『WORKS II Orchestra Nights』

久石譲 『はるか、ノスタルジィ』
Disc. 久石譲 『はるか、ノスタルジィ サウンド・シアター・ライブラリー』

 

(5) 「TWO OF US」

映画『ふたり』の主題歌として大林宣彦監督x久石譲によるデュエットソングという伝説的楽曲。
「草の想い -ふたり・愛のテーマ」というタイトルにてシングル化もされている。

また「TANGO X.T.C.」同様にオリジナル・アルバム『MY LOST CITY』にて自身のレパートリーとなるインストゥルメンタル作品へと昇華させている。

【関連作品】
My Lost City
Disc. 久石譲 『My Lost City』

久石譲 『ふたり オリジナル・サウンドトラック』
Disc. 久石譲 『ふたり サウンド・シアター・ライブラリー』

久石譲 『Shoot The Violist〜ヴィオリストを撃て〜』
Disc. 久石譲 『Shoot The Violist ~ヴィオリストを撃て~』

 

(6) 「MADNESS」

映画『紅の豚』本編にも使用され、コンサートやアンコールでも定番曲。

この作品実はオリジナル・アルバム『MY LOST CITY』に収録されるものとして先につくられている。

映画製作中であった宮崎駿監督が先に完成していた『MY LOST CITY』を聴いて気に入り使用されることになった。

その逸話は有名である。

 

「嬉しかったのは、宮崎さんが舞台を1920年代の末に設定してこの映画を作り、そのことをまったく知らない状態で、僕も1920年代にこだわって『My Lost City』を作っていたことだ。およそ10歳、ワンジェネレーション離れている宮崎さんと僕が、同じ時期に、同じ時代のことを想定しながら、自分のいちばん大切なものを同時に作っていた。そのことにとても運命的なものを感じた。同じ時代を想定して作ったせいもあるだろう、宮崎さん自身も、僕の『My Lost City』をとても気に入ってくれた。「あの曲が全部欲しい、全部『紅の豚』に欲しい」と言っていたほどだ。事実、オープニングの曲は、『My Lost City』の「1920~Age of Illusion」を想定したものを書いて欲しいという依頼で作ったし、壊れた飛行機をもう一回作り直して、細い運河から飛び立つシーンは、『My Lost City』の「狂気」をそのまま使っている。」

(映画『紅の豚』 宮崎駿監督が久石譲に渡した詩の世界)

「「My Lost City」というアルバムは、米国の小説家、スコット・フィッツジェラルドをテーマにしているんですが、彼の活躍した1920年代は世界大恐慌が来る直前の時期。「My Lost City」を制作した当時の日本のバブルの雰囲気とあまりにも合っていたので、ちょっと警鐘の意味も込めていたんです。「日本も、いつまでも浮かれていると大変になるよ」と思って。たまたま同時期に制作していた「紅の豚」のイメージアルバムも、1920年代がテーマ。それで宮崎さんに両方お送りしたら「My Lost City」をとても気に入られて「イメージアルバムと「My Lost City」を、取り替えてください」っておっしゃったんですよ(笑)。「飛行艇が飛び立つ場面で、どうしても《Madness》を使いたい」と。」

Blog. 久石譲 「ナウシカ」から「ポニョ」までを語る

 

映画本編では「狂気 ~飛翔~」としてショート・バージョンが使用され、『MY LOST CITY』のオリジナル版、そして本作品ではフルオーケストラを最大限に活かした一番ダイナミックなバージョンとなっている。

【関連作品】
My Lost City
Disc. 久石譲 『My Lost City』

久石譲 『紅の豚 サウンドトラック』
Disc. 久石譲 『紅の豚 サウンドトラック』

久石譲 『WORKS2』
Disc. 久石譲 『WORKS II Orchestra Nights』

久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~ DVD
Disc. 久石譲 『久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~ 』

 

(7) 「SILENT LOVE」

映画『あの夏、いちばん静かな海。』にて印象的なメインテーマ曲。

シンプルなメロディーの繰り返し。寄せては返す波のような冒頭の旋律から静かにそして煌めくようなオーケストレーション。オリジナル版のコーラスとシンセサイザーによる切なさを、ひときわ彩り豊かにドラマティックに昇華している。後半の転調もあいまって感情の高まりはおさえることができない。

繊細で美しいメロディー、涙腺を刺激する。

久石譲の巧みなオーケストレーションによって、シンプルなモチーフであっても聞き飽きさせることのない技はさすがだが、「SONATINE」しかり、そのカギとなる数小節のシンプルなメロディーの力があってこそでもある。

本作品のクライマックスにふさわしい、至極の名曲である。

【関連作品】
久石譲 『あの夏、いちばん静かな海。』
Disc. 久石譲 『あの夏、いちばん静かな海 』

 

本作品「WORKS I」は、久石譲が満を持して過去の映画作品として送り出した名曲たちをフルオーケストラへと昇華させた「WORKS」シリーズの記念すべき第1作目である。

この作品の前に、フルオーケストラ作品をつくりあげるという新境地に挑み、久石譲音楽活動における大きな分岐点となった映画『もののけ姫』。この作品を経て1年後に実ったのがこの『WORKS I』である。

「WORKS」シリーズはこの後つづいていく。
その時折の映画作品やCM音楽などを、オーケストラを主体とした音楽作品に再構築したものとして。
大衆性(エンターテイメント)と芸術性(アーティスト)を両立させた久石譲の真骨頂として。

「WORKS」シリーズは、久石譲によるシンフォニーの結晶である。

 

Blog. 久石譲 「WORKS・I」 レコーディング日誌 (1997コンサートパンフレットより)

 

久石譲 『WOKKS1』

『風の谷のナウシカ』(宮崎駿監督 1984)より
1. Symphonic Poem “NAUSICAÄ”
-1 Part I
-2 Part II
-3 Part III
『水の旅人-侍Kids』(大林宣彦監督 1993)より
2. FOR YOU
『Sonatine』(北野武監督 1993)より
3. SONATINE
『はるか、ノスタルジィ』(大林宣彦監督 1992)より
4. TANGO X.T.C.
『ふたり』(大林宣彦監督 1992)より
5. TWO OF US
『紅の豚』(宮崎駿監督 1992)より
6. MADNESS
『あの夏、いちばん静かな海。』(北野武監督 1991)より
7. SILENT LOVE

久石譲 (ピアノ)
ニック・イングマン指揮
ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団
リアム・オッケーン(ボーイ・ソプラノ) - 1.

All composed and arranged by JOE  HISAISHI

Produced by JOE HISAISHI

recorded at Air Studios (LONDON) and Wonder Station (TOKYO)
recorded at August 1997

コメントする/To Comment