Disc. 久石譲 『ふたり サウンド・シアター・ライブラリー』

1991年4月21日 CD発売

1991年公開 映画「ふたり」
監督:大林宣彦 音楽:久石譲 出演:石田ひかり 他

 

音楽監督から 久石譲

ちょっと優しく

大林監督の声はとても魅力的だ。優しくて暖かで、モダンで、そう、男が男らしくいられた時代のカッコ良さがある。大林監督の手はとても大きい。その手でピアノも弾くし作曲もされる。そして驚くほど音楽が好きで信じられないほど音楽について詳しい。

大林監督にお会いしていると本当に楽しい。僕たちはこの都会の大人の社会で生活しているわけで、嫌なことや悲しいことが日々襲ってくる。でもそんなささくれだった心も、大林監督にお会いするとスッと身体の力が抜けて行き、少年の日の心が戻ってくる様な気がする。だから実は毎日でもお会いしたい。そうすればちょっと人に優しくなれるかも知れないから。

ある日、僕達はピアノの前に座っていた。すでにその映画のなかで使用するシューマンとモーツァルトの楽曲は録音を終えていた。そして僕が書いたメインテーマ用のデモテープを1~2回聞いた。ピアノで弾きだそうとした時には、すでに監督は歌い出されていた。それも音程一つ間違えないで。翌日、その歌詞が送られてきた。「昔人の心に、言葉、一つ生まれて・・・・」映画『ふたり』の主題歌『草の想い』が誕生したのだ。

そして僕には歌手、大林宣彦さんのデビューが当然のことに思えた。でもシャイな監督は一人で歌うのを「ウーン…」と首をひねり、問わず語りの眼差しで、僕の方を振り向いたので僕も「ウーン…」と答えた。そこで奥様でありプロデューサーである恭子さんが「ふたり」なのだから「ふたり」で歌えば、という画期的な裁定を下した。大林宣彦&フレンズが歌う『草の想い』はこうして巷間に流れることになった。

映画『ふたり』との出会いはとても幸せだった。すばらしい作品を担当できるなんて音楽家にとって最高の喜びだ。中には8分台の長さの音楽が幾つかあって難しかったのだけれども、そのハードルを越えることにかえって燃えた。

クライマックスの後で、母親が父親に語りかけるシーンがある。「あなた…」「風呂はまだ…」変ロ長調のストリングスの和音が妻であり、母親である一人の女性の台詞と絡みながら徹かに聞こえてくる。静けさと優しさと愛に満ちたシーンだ。

人が人を許しあい、あるいは認めあい、喜びも悲しみも寂しさもすべてそのまま受け入れて生きていく。ほとんど宗教的とも言えるその深さは、この映画が真の傑作であることを決定的なものとしている。

僕はこの映画を3回見る事をお薦めする。1回目は友達と、そうすれば友情の有り難さが分かり、2回目は恋人と、そうすればかけがいのないものが分かり、3回目は父親と、そうすれば誰よりもあなたを愛している人が分かる。

大林監督とお会いしていると本当に楽しい。でも、忙しい監督に毎日お会いするわけにも行かないので僕は大林さんの映画を沢山見ることにした。そうすればちょっと、人に優しくなれるかも知れないから。

Blog. 映画『ふたり』(1991) 久石譲インタビュー 劇場版パンフレットより

 

ふたり・音楽制作日記

1990年
5月21日:大林監督からお電話を頂き新しい音楽制作の依頼を受ける。
5月22日:台本が届く。
5月25日:大林氏の事務所PSCでの初顔合わせを行う。撮影前にいくつかのシーンに対して、音楽を作る必要があることが判明する。
6月2日:実加の弾く曲をシューマンの飛翔に決め監督にお伝えする。
6月12日:アバコスタジオにてアバコの林氏とPSC大島氏と打合せ、発表会のシーンの音楽と他のシーン用の音楽について、締め切りが7月1日に設定される。
6月16日:発表会のシーンのピアノ曲3曲を決定する。(モーツァルト・ソナタ、シューマン・ノヴェレッテ、シューマン・飛翔)
6月20日:アバコ・スタジオ302stにて18:00からピアノ3曲の録音を行う。
6月22日:大林監督からテーマ曲の「草の想い」(この時点では愛と哀しみのバラードというタイトルであった)の歌詞が届く。
6月24日:ワンダーステーション1stにて14時~21時までテーマ曲の録音。大林監督が仮歌を入れてくださる。
7月9日:ワンダーステーション1stにて13時~17時30分まで島崎和歌子さんによるテーマ曲の歌入れをする。
9月18日:ワンダーステーション1stにて13時から本編音楽制作の開始。
9月19日:ワンダーステーション1stにて13時から22時までレコーディング。
9月21日:ワンダーステーション1stにて13時から20時までレコーディング。最終的な監督との電話での打合せで全42曲に決定。
9月22日:ワンダーステーション1stにて13時から25時までレコーディング。この日は8曲作る。
9月23日:ワンダーステーション1stにて13時から25時までレコーディング。最終ロールのR-9が届く。
9月25日:テーマ曲、愛と哀しみのバラードの正式タイトルが「草の想い」となる。2番の歌詞も上がってくる。またこの曲を大林監督、久石氏のふたりで唄うということも決定。
9月26日:ワンダーステーション1stにて9時から中嶋朋子さんによるテーマ曲の歌入れ、大林監督も陣中見舞にいらっしゃる。
9月27日:ワンダーステーション1stにて13時から26時までレコーディング。
9月28日:ワンダーステーション1stにて13時から25時までレコーディング。オープニングとラストを仕上げる。
9月29日:ワンダーステーション1stにて13時から29時までレコーディング。午後8時より大林監督の唄入れ。
9月30日:ワンダーステーション1stにて13時から28時までと2stで13時~23時まで2つのスタジオを併用してトラックダウン。大林監督も駆けつけて下さる。
10月1日:ワンダーステーション1stにて13時から26時までと2stで13時~23時まで昨日同様、2つのスタジオを併用してトラックダウン。これで全作業が終了。大林さんがワイン等のお土産を持ってきて下さり、作業の終了を祝う。午前3時に全員で「草の想い」を大合唱。

(ふたり・音楽制作日記 ~リマスター盤 CDライナーノーツより)

 

 

久石譲 『ふたり オリジナル・サウンドトラック』

プロローグ
1. 風の時間 -オープニング・テーマ
2. モノクローム
すぐ近くで…
3. 北尾家の人々
4. 父と娘
5. 不意の出来事
6. 白い指先
明るい日
7. 実加と真子
8. 少女のままで
追憶
9. 別れの予感
10. 揺れるボタン
11. 姉の初恋
友だち
12. 風になって
13. いま泣いたカラスが…
14. 石段の道
15. 海の見える風景
16. 命の糸
17. 拍手の中の二人
卒業・入学
18. ふたりと二人
19. きらめきの瞬間
悪意
20. 汚された台本
21. 黒い電話
22. 震え
23. いたわり
24. 独り暮し
ミュージカル
25. 宴の光と影
26. 痛み
家族の絆
27. 淋しいひとたち
28. 失ったもの
エピローグ
29. 白いページ
30. 草の想い-ふたり・愛のテーマ

Produced by Joe Hisaishi

All Composed & Arranged by Joe Hisaishi

Recorded and Mixed at Wonder Station

「草の想い -ふたり・愛のテーマ」
作詞:大林宣彦 作曲:久石譲 歌:大林宣彦&FRIENDS

 

 

なお発売後の経過により一度廃盤となった本作品は、
2001年にワンダーランド・レコードより復刻・再販させることとなった。

ジャケットが一新されただけでなく、曲目構成も変更になっている。

ふたり 再販

1. 草の想い~ふたり・愛のテーマ~
2. 風の時間
3. モノクローム
4. 父と娘
5. 不意の出来事
6. 少女のままで
7. 別れの予感
8. 揺れるボタン
9. 姉の初恋
10. 風になって
11. 海の見える風景
12. きらめきの瞬間
13. 震え
14. いたわり
15. 独り暮し
16. 宴の光と影
17. 淋しいひとたち
18. 失ったもの
19. 白いページ

 

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