Disc. 久石譲 『菊次郎の夏 サウンドトラック』

1999年5月26日 CD発売

1999年公開 映画「菊次郎の夏」
監督:北野武 音楽:久石譲 出演:ビートたけし 他

 

〈episode 5〉
ピアノの音色とわかりやすいシンプルな旋律の繰り返しという、音楽の核の部分のイメージは、武さんも久石さんも一致していました。音楽を発注する際に、武さんがいちばん具体的に発言した作品ですね。ウィンダムヒルのジョージ・ウィンストンが手がけた「オータム」に代表される季節を扱った曲を例に出して、今回はこういう世界観が欲しいんだと意思表示していたことを思い出します。その点においては珍しい例ですね。どちらかといえば、いつもは”お任せ”で、イメージを具体的に伝えるということは少ないんですけど、撮影を始めた当初からそのイメージは口にしていましたから、よほどのこだわりがあったんでしょう。結果、シンプルでなおかつ流れてきた瞬間夏を連想させるとてもキャッチーなメロディを含む、有無をいわせないくらい見事なサウンド・メイクをしていただきましたから、本人の満足度もかなり高かったと思います。

〈サウンドトラック制作進行ノート〉
1998年10月6日 ワンダーステーション代々木スタジオにてレコーディング開始。
1998年10月7-10,12,21-23日 レコーディング作業。
1998年10月21日 ポリグラムスタジオにてオーケストラ・レコーディング。
1999年2月2-4日 ワンダーステーション六本木スタジオにてT/D。

(「joe hisaishi meets kitano films」CDライナーノーツより)

 

 

北野武さんの作品では、「あの夏、いちばん静かな海」から音楽を担当させていただいていますが、あの映画のときに北野さんと話したのは「通常音楽を入れるところは一切抜きましょう」ということ。例えば、盛り上がるシーンだからといって、盛り上げるための音楽を入れるのはやめましょうと。そういうのってすごく北野さんらしいところだと思うのですが、いわゆる劇伴的なものは本人が望んでいませんし、必要もないんですよ。

「菊次郎の夏」でも、メロディアスだけど絶対ベタベタした感じにならないように心がけました。北野さんの映画は、とにかく立ち振る舞いがすごくきれいで品があるんです。だから、音楽も下品になったり、表現しすぎてはいけない。それが、最も大切にしなければならないところでしょうね。「菊次郎の夏」に関しては、北野さんから「リリカルなピアノものでいきたい」というリクエストがあったんです。最初は、こんなにギャグの多い映画なのにいいのかな?と思ったんですが、実際にやってみたら、ギャグの中に、人間の孤独とか寂しさみたいなものが表現できた。もちろん、北野さんはそれを最初から狙っていたわけで「やっぱりこの人は天才だな」って思いましたね。

そして、北野さんのすごい点は、やはり個性的だということに尽きるでしょう。特に、海外での評価は絶大ですが、それはなぜかというと、個性があるからですよ。独特の映像美、たくさんの要素を入れない、ムダのない引き算のような絵作り……それが、あそこまで徹底できる人って、世界に何人もいません。ものすごく強い意志が必要なんだと思うのですが、北野さんはそれをやり抜いている。本当にすさまじい作業であり、ある意味、周囲のだれよりも孤独だと思うのですが、それをやり抜く意志の強さは本当に素晴らしい。だからこそ、”世界の北野武”なんでしょうね。

Blog. 「キーボードマガジン Keyboard Magazine 1999年8月号」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

菊次郎の夏 サウンドトラック

1. Summer
2. Going Out
3. Mad Summer
4. Night Mare
5. Kindness
6. The Rain
7. Real Eyes
8. Angel Bell
9. Two Hearts
10. Mother
11. River Side
12. Summer Road

All music composed, arranged, produced & performed by 久石譲

Guest Musicians:
潘寅林ストリングス(Strings)
鈴木理恵子(Violin Solo)
諸岡由美子(Cello solo)

Recording Studio:ワンダーステーション、ポリグラム・スタジオ

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