Disc. 久石譲 『Quartet カルテット オリジナル・サウンドトラック』

2001年9月27日 CD発売

2001年公開 映画「Quartet」
監督:久石譲 音楽:久石譲 出演:袴田吉彦 桜井幸子 他

久石譲 第1回監督作品
日本初の本格的音楽映画、劇中使用曲フル・バージョン収録
ボーナス・トラックにリミックス・バージョン収録

 

「音楽が主役になっている、ということ。物語に音楽がからんでいるとか、主人公が音楽家というだけでは音楽映画にはなりません。音楽がドラマとからんでクライマックスに向かっていくような映画を、私は音楽映画と呼ぶことにしています」

「整理すると、音楽とストーリーが密接にかかわっていること、音楽が台詞の代わりになりえていること、この2点に集約されます」

Blog. 「ディレクターズマガジン 2001年11月号」 久石譲 インタビュー内容 より抜粋)

 

 

曲目解説 by JOE HISAISHI

1.Main Theme
メイン・テーマに、プログラミングによるリズムを加えた楽曲です。エンディングのアイディアとしては、幾つかの方法が考えられましたが、青春映画の希望的要素を込めたアレンジにしました。

2.Student Quartet
この映画の音楽に関しては、当初メイン・テーマ以外は既存のクラシック曲を使って完成させる予定でした。しかし、制作を進めていくうちに、自分の映画の中で、僕以外の人が作った曲が鳴ることに違和感を覚え始めて…。聞いてもらえばわかるように、この曲は本当ならモーツァルトの「ディヴェルティメント」をイメージしていましたので、それに近い雰囲気で書き上げました。途中、主人公の苦悩を音楽で語る意味で、イタリア映画の音楽っぽい、メロディアスで泣かせるフレーズを封入しています。そうしたところに、単なるモーツァルト風楽曲にはしないぞというこだわりを感じてもらえたら嬉しいですね。

3.パッサカリア
劇中、明夫(袴田)がオーディションで弾くソロの曲です。「Student Quartet」の場合と同様に、本当なら「カプリース24」という、パガニーニのバイオリン・ソロの曲を使いたかった箇所なので、この作風を下敷きにしてそのフォーマットにのっとって、新たに自分で作ってみました。なぜ「カプリース24」をイメージしたかといえば、メロディもよくポピュラリティがありつつ、激しさも備えている。バイオリニストとしてのビルティオーゾといいますか、テクニカルな部分も相当に要求する楽曲ですから。いうなれば、パガニーニに捧げるオマージュのようなものです。

4.Black Wall (Strings Quartet)
マレーヴィッチ・ウォルハイムという著名作曲家が作った有名なクラシック作品で、なおかつ弦楽四重奏であり、オーケストラの定番曲でもあるという設定です。これはよくあることで、「展覧会の絵」も元々はピアノ曲だったものが、オーケストラにもなっているのと似たスタイルです。本来、青春映画では、こういう現代音楽調の不協和音の楽曲を使うのは、楽曲がやたらと小難しくなりがちなので、かなりの冒険ではあります。ある意味これが、(映画の)最初から最後までを引っ張っているといってもいいくらい。そういう音楽家としての勝負曲として書いた作品です。ちなみに作曲家名は、絵画界のミニマル・アーティストの”~・マレーヴィッチ”という人と”~・ウォルハイム”という人の名前を組み合わせて作った架空の作曲家名です。

5.浜辺のカルテット
これはメイン・テーマをさらに極力シンプルに、緩やかなテンポでアレンジしたものです。主人公の明夫(袴田吉彦)と智子(桜井幸子)の恋愛感情も音楽だけで表現できるんじゃないかと思って、映画では全般的にラブ・シーンを排除してきました。だけど、二人の気持ちが徐々に接近していく様子や、バラバラだった4人が少しずつ心を通わせていくニュアンスはどうしても必要でしたので、この音楽に託してみました。

6.Melody Road (My Neighbor TOTORO~HANA-BI~KIDS RETURN)
「となりのトトロ」「HANA-BI」「キッズ・リターン」のメドレーです。僕が映画をやるということのサービス・カットでしょうか(笑)。ある程度僕の音楽が好きな人ならば、たぶん馴染みがある楽曲だろうという観点で選んだ楽曲群ですね。技術にこだわる人間が目指す音楽から、気持ちの音楽へと切り替わっていく過程や様子を感じ取ってもらえるといいんですが。

7.DA・MA・SHI・絵 (Sax Quartet)
ストーリーの中では、主人公たちがコンクールを受けている際に別のアンサンブルが演奏しているシーンの楽曲です。これもコンクール曲であるという前提ですから、構成が複雑であることと、なおかつミニマル音楽をずっとやり続けてきた自分の個人的な思い入れも込めて選曲しました。そういう意味では、僕にとって重要な曲の一つといえます。イギリスの弦楽四重奏団”バラネスク・カルテット”を迎えて昨年リリースした『Shoot The Violist』というアルバムにも入っている曲です。

8.Lover’s Rain
この映画では唯一のBGMです。つまり、ほかの楽曲はすべて、絵(映画)の中で誰かが演奏したり、周りで誰かが弾いているという状況下で奏でられていますから、いわゆる映画音楽というのがこの映画にはほとんど存在しない。唯一書いたのがこの曲。自分としては相当画期的なことをやっているつもりではあります。

9.冬の夢
僕の『My Lost City』というソロ・アルバムの中に収録されている作品です。ここでは映画にも出演している久木田薫さん自身が弾いてます。主人公の一人・愛ちゃん(久木田)が音楽の深さを知るきっかけとなる曲ですね。これまで随分いろいろな曲をチェロのために書いてきましたが、これが最も好きな曲のひとつです。

10.・・・・for Piano
映画の中では使っていない、メイン・テーマのピアノ・ソロ・バージョンで、このCDに収録するために急遽演奏した曲です。映画「Quartet」のサントラ盤でありつつも、僕のソロ・アルバムとしての側面もあるCDですから、どうしてもピアノのソロでテーマを弾いてほしいというリクエストがありまして…。実際、僕はこういう感じの楽曲を、過去に出したソロ・アルバムを含めてもほとんど弾いていませんので、今までの自分のピアノ・スタイルとは違った世界にチャレンジしてみたいという感覚が強かったですね。

11.Black Wall (Orchestra)
track 4のオーケストラ・バージョン。映画では、オーケストラのコンサート・マスターとしてバイオリンを弾く明夫(袴田)と、その一方で明夫の到着を待つカルテットのメンバーという、クライマックスにつながる重要なシーンでずっと流れる曲です。同じ曲ですが、カルテットでは繊細さが強調され、オーケストラでの演奏ではダイナミックさが増し、荘厳な感じに響いています。

12.Quartet g-moll
本来映画音楽としては、見てくれた人が映画館を出た後にも口ずさめるようなメロディがベストな形といえます。音楽とともに映画のシーンが浮かんでくるような…。その場合のメロディは極力シンプルなほうがいいわけです。ただこれは、映画の中ではコンクールで演奏する曲でもあり、コンクールを受ける楽曲であるからには、テクニック的にもカルテットとしての機能を存分に引き出している作品でなければならない。すると必然的に、映画音楽としてのシンプルさと、アンサンブルの奥行きや音楽的な内容の深さ、難しさの両方を兼ね備えた、非常に高度な音楽にならざるを得ない。そうした大きな矛盾といいますか、相反する要素を融合させる取り組みをしました。

13.Main Theme -Remix
※ボーナス・トラックとして収録

(曲目解説 ~CDライナーノーツより)

 

QUARTET カルテット

1. Main Theme
2. Student Quartet
3. パッサカリア
4. Black Wall (Strings Quartet)
5. 浜辺のカルテット
6. Melody Road
(My Neighbor TOTORO〜HANA-BI〜KIDS RETURN)
7. DA・MA・SHI・絵 (Sax Quartet)
8. Lover’s Rain
9. 冬の夢
10. ・・・・for Piano
11. Black Wall (Orchestra)
12. Quartet g-moll
13. Main Theme -Remix

all composed, arranged and produced by joe hisaishi

Piano:JOE HISAISHI

Conductor:KIM HONG JE

Musicians
Balanescu Quartet:
ALEXSANDER BALANESCU:1st Violin
FENELLA BERTON:2nd Violin
CHRIS PITSILLIDES:Viola
NICK HOLLAND:Violin Cello (M-2,3,4,5,6,12)

YUICHIRO GOTO GROUP (M-1,8,9)
IKUO KAKEHASHI (M-1)
NEW JAPAN PHILHARMONIC (M-11)
kAORU KUKITA (M-9)
Vivi SAXPHONE ENSAMBLE (M-7)

Orchestration:KAZUNORI MIYAKE

Recording Studios:
WONDER STATION
AVACO CREATIVE STUDIOS
ANGEL STUDIO (LONDON)

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