Disc. 久石譲 『風の谷のナウシカ シンフォニー編 風の伝説』

1984年2月25日 LP カセット 発売
1984年5月25日 CD発売

1984年公開 スタジオジブリ作品 映画「風の谷のナウシカ」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

「ナウシカ」の名曲の数々を、約50名のオーケストラで再現したシンフォニー編。
シンフォニー・バージョンの制作は通常はサントラの後だが、「ナウシカ」のみはサントラ録音前の1983年11~12月に、主にイメージアルバムの曲をベースにして制作された。

このアルバムも、CDについてはしばらく経ってから新ジャケットで発売された。 ※下部ジャケット写真はCDデザイン

 

解説

人類の最終戦争があって1000年、地球には高度に発達した産業文明の遺産と歪んだ自然、そしてひとにぎりの人類が生き残った。そのような世界で、人類はどのように生きながらえ、どのような思想を持とうとするのか。再びなぞらえる人類の前史、そして繰り広げられる戦闘。人類は窮極的な最後の地球絶滅の危機を前にしてもみにくく争おうとする。そこに登場する木々を愛で虫と語り風をまねく伝説の少女ナウシカ。彼女は生きることの素朴な喜びを最も敏感に感じとれる少女として登場し、たったひとりの力でこの未来の地球を救おうとする-。

原作は「未来少年コナン」「ルパン三世・カリオストロの城」のアニメーション演出家・宮崎駿がアニメ雑誌「アニメージュ」(徳間書店)に好評連載中の(現在は中断)人気オリジナル・コミック。娯楽大作として、日常性に支配された昨今のマンガでは味わうことのできないダイナミックな世界を描き、テーマ的にも環境汚染・自然破壊・エネルギー消費など現代社会の抱える大問題とまともに対応したことで評判を呼んだ話題作である。

今回のこのCDは、「さすがの猿飛」「愛してナイト」の作曲家久石譲がその原作および宮崎駿の伝えるメッセージをもとに作ったイメージ・レコード集のシンフォニー盤である。

なおこのアニメ映画が、㈱徳間書店・㈱博報堂の製作、配給/東映㈱で’84春休みに公開され、大好評を博した。また、原作者の宮崎駿自身が脚本・監督を担当してこの映画化に取り組んだことでも注目を集めた。

(解説 ~CDライナーノーツより)

 

ナウシカへのクラい日々・遠い日々・・・ 久石譲

ナウシカ- 妙になつかしさを感じさせる響き。その名前の少女が活躍する物語は、未来の出来事であるはずなのに、ギリシア時代よりずっと前から育んだ人間のいわば手造りの歴史を感じさせます。「風のイメージなのです。ドッと吹くのではなくて山あいをスーッと抜けるような・・・」前作の時お会いした原作者の宮崎駿氏自身にもそういう素朴な手造りの人間性を感じました。

前作のシンセサイザーバージョンでは、約百数十時間スタジオにこもって、プロフィットリンドラム等を使って制作したが、その過程で一番注意した事は、いかにアコースティックで広がりのある音創りをするか、でした。そのために、ダルシマ、ケーナ、等の素朴なニュアンスを出せる楽器をブレンドしてみた。もともと民族音楽が大好き人間としては、それなりに納得ができた。

が、今回のオーケストラバージョンの話があったとき、はっきり言って悩みましたよ。それはシンセサイザーを使っていかにアコースティックで広がり・・・というコンセプトで作った楽曲をオーケストラを使ってそれをやれば、もろ当たり前の事になってしまうではりませんか!それはオモシロくないし、だいいちオーケストラなんてもう何年も書いていないから、あの恐怖の30段スコアを目の前にしたら卒倒するのではないか等々、色々言い訳を考えつつ、約2週間ピアノの前で、クラーイ生活が続きました。

んで終わって我想うに「やってよかった、コンビニエンス」 シンセのレコーディングと違ってオーケストラは、一曲一時間、約50名のメンバーはダビングなしの全員集合、どんどん録っていくのです。もうそれは大きなスタジオが小さく見えて肘を張れば隣りのバイオリンにぶつかるわ、トロンボーンのスライドをカッコよく延ばせば灰皿は飛ぶわ、ティンパニ叩けば珈琲はこぼれるわ、マイクは倒れるわ、はっきり言ってお祭りなのです。普段の一人コツコツ多重どんぶりとはエラく違うのです。興奮しましたよ。

今はトラックダウンも終わり、かなり良い音の仕上がりに満足しています。それはミキサーの大川氏を始めスタッフの皆さんの協力によるものです。

とにかく聞いてみてください。

(CDライナーノーツより)

 

音楽解説

〈風の伝説〉
一陣の風が静かに砂漠を渡っていく・・・・。地球のたそがれの時代に生きたひとりの少女があった。美しく、やさしく、熱い闘志を心に秘め、蟲とすら語りあった鳥の人、ナウシカ。ピアノの旋律がナウシカのメイン・イメージを語っていく。その心を表わすボリュームあるオーケストレーション。風は語る。彼女の物語を。そして、風は聞く人の耳に、一筋の涼感を残して吹きずさっていく。ナウシカは、まさに風のような人であったというプロローグ。この曲が全アルバムのメイン・テーマとなっていく。

〈戦闘〉
進撃する軍団や巨大なメカニック、集団のイメージ。雄々しいだけでなく、哀しみ、苦戦、その中から立ちあがっていく戦隊と情感のあふれるダイナミックな曲が続いていく。その中で押しよせる打楽器の激しいリズムが戦闘のイメージをもりあげる。曲は静かなリズム感へ進み、勝利と平安の予感が。進撃の高まりをリズミカルにもう一度くりかえし、戦いは終局や向かう。

〈はるかな地へ〉
静かに砂漠を歩く旅人・・・やがて、その旅人の心の中にわきあがる人々が群れつどい、平和と笑いがうずまく村のイメージ。民族歌的なメロディが広がっていくその心と、さらに大空を静かに飛翔していくナウシカのイメージがだぶっていく。戦うナウシカや人々の心のよりどころである、人々の住む村を予感させ、曲はもりあがっていく。曲全体のバックに、進む旅人の心の躍動が感じられ待ちうける見知らぬ土地への想いがあふれていく。ラストは、眼前にその土地が現われ、まるで朝焼けの中にうかびあがるような鐘のイメージでしめくくられる。

〈腐海〉
りん光発する腐海、ふきだす胞子、異形の者の住む世界-そのオドロオドロしたイメージ、蟲たちのリズム感のイメージが続く。次第に力強く広がっていく生命力のイメージ。リズムの中に、チカチカと光るりん光の処理が印象的。しかし、やがて異形のメロディーの中に、次第に清浄な、汚染された地球を清浄化する生命力があふれていることを、曲が変わり印象づけてゆく。この腐海と人間の折りあいをどうつけていくのか。このキーワードがナウシカであることは言うまでもないだろう。曲は明るさの予感を感じさせ、クロージングしていく。

〈メーヴェ〉
大空を駆けるメーヴェ。雲海をぬけ、視界が一気に広がっていく解放感。メーヴェに乗るナウシカのはずむ表情が手に取るように判るオープニングである。小気味よいメーヴェの飛翔ぶりのイメージが浮かびあがってくる。飛べ!ナウシカ。その自由な心のままに! 前から後ろから上から下から、アップに、ロングに大空を飛ぶメーヴェを空中撮影でとらえるようなリズミカルなビートが印象的。大空をかける主人公の飛翔に、人間の自由をオーバーラップさせる宮崎アニメならではのイメージ曲。

〈巨神兵〉
不気味な導入部-何か異形の、巨大な存在がそこにいる実感。それは次第に力を取り戻そうとしている。不気味なもりあがり。メカニカルな、あくまでも非人間的な作動のイメージ。巨神兵は、その作動を開始する。悪魔の心臓に炎が戻り、目が光をおび、腕が静かに上がり始める。起き上がり、動き始める巨神兵-いかなる者も止めることができない悪魔の復活を感じさせるパワフルなメロディーが続く。かつて地球を7日間で破壊しつくした悪魔の兵器、巨神兵-その破壊のリズム感は再び世界をのみこんでいくのか!? 『動』のイメージの後は、巨神兵の『静』のイメージ曲が続く。それは、腐海の中に残骸となって立ちつくす巨神兵のムクロのイメージか。もうこの悪魔の牙も地球には届かない。巨神兵でさえ悠久の時の流れの前には無力なのか。今はただ腐海の景色の一部として、眠るだけである・・・・。眠る兵士の魂をかなでるメロディーで終幕となる。

〈風の谷のナウシカ〉
風の伝説の導入部から、「風の谷のナウシカ」のメロディーへと入ってゆく。弦楽器と木管楽器の情感あふれるメロディーがナウシカのすがすがしさとその心情をあますことなく伝えていく。

〈遠い日々〉
A面の”はるかな地へ”と同じリズムが静かにかなでられていく。その”はるかな地へ”とは、”平安なる地、理想郷”であることは明らかで、その平和のリズム感が、牧歌的な民族歌調のメロディーの中でくりかえしくりかえし、大きくなっていく。いよいよ、シンフォニー「風の谷のナウシカ」も終幕まぢかである。

〈谷への道〉
弦楽器のメドレーが、終曲を形作り、人間の、人々の、私たちの物語を伝える。風の谷とは、明日の人類の姿であると同時に、永遠に生きる”人間”の住み家である。あらゆる人々に門を開く風の谷。そこには暴力ではなく、やさしさが、生きていく力強さがあり、あふれる人々の喜びと哀しみ、人生がある。これこそナウシカの、我々の住む場所である。第1曲の”風の伝説”をくりかえし、ここにシンフォニー「風の谷のナウシカ」は終っていく。

解説/池田憲章

(音楽解説 ~CDライナーノーツより)

 

風の谷のナウシカ シンフォニー編 LP

(LPジャケット)

 

久石譲 『風の谷のナウシカ シンフォニー編 風の伝説』

1. 風の伝説
2. 戦闘
3. はるかな地へ・・・
4. 腐海
5. メーヴェ
6. 巨神兵〜トルメキア軍〜クシャナ殿下
7. 風の谷のナウシカ
8. 遠い日々
9. 谷への道

PRODUCED BY MASRU ARAKAWA, JOE HISAISHI

COMPOSED AND ORCHESTRATION BY JOE HISAISHI

SONG BY
JOE HISAISHI
HARUOMI HOSONO (M-7)

MUSIC PERFORMED BY T.J.C ORCHESTRA

RECORDING AT HITOKUCHI ZAKA STUDIO
ALBUM CORDINATION BY WONDER CITY I.N.C

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