Disc. 久石譲 『魔女の宅急便 イメージアルバム』

1989年4月10日 CD カセット 発売

1989年公開 スタジオジブリ作品 映画「魔女の宅急便」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

それ自体が作品として成立するイメージアルバムをまず作り、サントラ制作に生かすという方法も本作で4回目。今回も充実した内容となった。「なんとなくヨーロッパ、どこか地中海あたり・・・」をイメージしながらこのアルバムは制作されている。

 

イメージアルバムとは
映画制作段階で、その作品の世界観からイメージして作られた楽曲のこと。ゆえに映画本編で使用される劇中音楽とは異なり、それはサウンドトラックに収録される。

映画をつくるうえで、音楽面でのイメージボードや絵コンテにあたるもの、それがイメージアルバムと言っていいだろう。

監督からの解説やキーワード・絵をもとに、イメージを最大限ふくらませて、音楽だけでその世界を表現しようとするジブリ映画では恒例の試み。このイメージアルバムがあるからこそ、監督と作曲者は、ラフスケッチ(曲)をもとに、映画本編のどこにどのモチーフの曲を使うかという、共通言語(音楽)で制作を進めることができる。

だからこそ、スタジオジブリ作品 宮崎駿監督の映画、そして久石譲による音楽は、どの作品もその音楽世界の完成度も高く、作品に一役も二役もかっている。

ちなみに、この過程で当然ながら、イメージアルバムから、
・曲の構成やアレンジが大幅に変更になるもの
・映画本編では使用されない未使用曲
・映画ストーリーに合わせて曲名が変更になる

こういった過程を経て、サウンドトラックに劇中音楽として、新しい息吹が吹き込まれている。ゆえに、そういった意味においても、イメージアルバムとは、映像がまだできあがる前に、音楽だけでその作品の世界観を表現した、原石のようなもの。

久石譲の場合、もちろんイメージアルバムからの未使用曲もあるが、イメージアルバム段階からの曲のクオリティーも高く、サウンドトラックと聴きくらべても、すぐにどの曲か連想できるほど、そのメロディーはイメージアルバムの時点でほぼ完成しているところがすごい。

変更になっているのは編曲や長さくらいのアレンジである。サウンドトラックでは、本編ストーリーに合わせて、音楽の尺(長さ)が変わってきたり、カット割りに合わせての編曲やフェードアウトなど、1曲まるまる聴くことはできない。

イメージアルバムにおいては、1曲1曲が音楽として構成されているため、1曲あたり4-5分、かつイントロからエンディングまで起承転結に富んでいる。これはイメージアルバム製作段階では、まだ映像ができていないことが多く、そのカット割りや映像シーンの長さもわからないという点ももちろんあるが、それゆえに1曲ごとの音楽完成型として表現されている。

イメージアルバムでは、その楽器編成も自由なため、ある意味では映画とは違った広がりや奥ゆきのある世界観を楽しむことができる。

 

こういった予備知識をもとに、イメージアルバムを聴いていくと、より一層ひとつの音楽作品として楽しめるだけでなく、いかに貴重で贅沢なアルバムであるか、ということがわかる。

映画は完成された本編が作品化されて親しまれるが、音楽においては、イメージアルバムとサウンドトラックなど、いろんな側面から作品の世界観を自由に楽しみ、それぞれのイメージをふくらませることができる。

 

イメージアルバムとは、の説明をもとにすすめる。

本作品「魔女の宅急便 イメージアルバム」から、「魔女の宅急便 サウンドトラック」への変化。
曲名をイメージアルバム → サウンドトラック の順番で明記。

  • かあさんのホウキ / 木漏れ日の路地 → 旅立ち / オソノさんのたのみ事…
  • ナンパ通り → 海の見える街(後半) / 大忙しのキキ
  • 町の夜 → 傷心のキキ
  • 元気になれそう → 仕事はじめ
  • 風の丘 → 海の見える街(前半) / おじいさんのデッキブラシ ※モチーフとして
  • リリーとジジ → 身代わりジジ
  • トンボさん → プロペラ自転車
  • 世界って広いわ → 晴れた日に… / 空飛ぶ宅急便 / ウルスラの小屋へ / デッキブラシでランデブー
  • パン屋さんの窓 → パン屋の手伝い

*サウンドトラックへ収録されなかった未使用曲:渚のデイト / 突風

 

こう並べてみるとわかりやすい。

そして曲名タイトルだけを見比べても、アレンジや長さこそ編曲されているものの、どのシーンで使われるべくイメージ作曲されたのかが明確である。そのくらい曲名タイトルがどちらも似ているというか、同じシーンや登場人物をかんたんに連想することができる。

「イメージアルバムの時点ではこのつもりだったけれど、映画本編では全く違う場面やシーン・キャラクターに使われた」というようなミスマッチは起こっていないことがよくわかる。イメージアルバムの時点で、”どのシーンにどんな曲を”ということを、監督と作曲者が入念に打ち合わせをしていることがわかる。

そして、映画本編での未使用曲が2曲しかないのも、イメージアルバムの時点で、それだけ音楽による世界観の完成度が高いことがわかる。未使用となった「渚のデイト」と「突風」もどちらも『魔女の宅急便』の世界観を表現した貴重な曲。

 

映像の絵コンテにあたる、ラフスケッチな音楽集ということで、シンセサイザーをメインに奏でられている。なかにはヴァイオリンの生楽器や、ギター、パーカッションなども登場し、そのヨーロッパ的な雰囲気を表現した楽器たちは、そのままサウンドトラックにも反映されている。

映画本編用の作り込みやオーケストレーションがされていない原石的楽曲だけに、シンプルなシンセサイザー・アレンジでありながら、そのメロディーたちが際立っていて、生き生きと、そして印象的に響いてくる。

 

ちなみに、このイメージアルバムからサウンドトラックへの曲変化をもとに、サウンドトラックのトラックリストを見ると、また別の視点で楽しめる。

それは、イメージアルバムの時点では存在しなかった楽曲、つまりは映画本編のシーンのために新しく書き下ろされた曲、それがどのシーンのどの曲なのかがよくわかる。

上記のイメージアルバム→サウンドトラックへの比較リストのなかで、曲名のあがっていない「サウンドトラック」収録楽曲である。

イメージアルバムとサウンドトラック、いろいろな楽しみ方ができる。

 

 

魔女の宅急便 イメージアルバム

1. かあさんのホウキ
2. ナンパ通り
3. 町の夜
4. 元気になれそう
5. 渚のデイト
6. 風の丘
7. トンボさん
8. リリーとジジ
9. 世界って広いわ
10. パン屋さんの窓
11. 突風
12. 木洩れ陽の路地

 

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