Score. 久石譲 「Single Track Music 1 for 4 Saxophones and Percussion」 [スコア]

2015年10月1日 発行

《Single Track Music 1》(2014/2015)は、浜松市の吹奏楽イベント「バンド維新」の委嘱によって作曲された同名の吹奏楽曲(2015年2月22日にアクトシティ浜松で初演)を、作曲者自身がサクソフォン四重奏と打楽器のアンサンブル版として書き直したもの。演奏時間は約6分。

曲は、単音から24音まで増殖する単旋律がユニゾンで演奏され、その中のある音が高音や低音に置き換わることによって別のフレーズが浮かび上がるという、シンプルな構造によって作られています。あくまでもモノフォニックなアプローチによって、ミニマル・ミュージック特有のズレや変化の発生を試みた作品であり、鉄道の“単線”を意味する「Single Track」という題名もそれに由来している。

初演は2015年9月24日、よみうり大手町ホールで催された久石譲プレゼンツ「ミュージック・フューチャー Vol.2」において、林田和之(S.Sax)・田村真寛(A.Sax)・浅見祐衣(T.Sax)・荻島良太(B.Sax)・和田光世(Perc.)の演奏によって行われた。

 

Single Track Music 1 for 4 Saxophones and Percussion

アメリカン・ミニマル・ミュージックの作曲家たち、特にスティーヴ・ライヒはミニマル特有のズレ(とそこから生まれる変化のプロセス)を生み出すため、バッハ以来おなじみのポリフォニック(多声音楽的)な書法、具体的にはカノンのような手法で声部を重ね合わせる実験を試みたが、本作において久石は、そうしたポリフォニックな手法に頼らず、あくまでも単旋律のユニゾンにこだわりながらズレを生み出す試みにチャレンジしている。つまり多声という”複線”を走るのではなく、あくまでもユニゾンという”単線”を走り続けるわけだ。鉄道の”単線”を意味する《Single Track》という曲名はそこに由来しているが、その際、フレーズ内の音が高音や低音に配置されることで生まれる別のフレーズは、車窓から見えるビルの窓ガラスや川の水面に映る自分の反射した姿(の変形)と考えると、分かりやすいかもしれない。

本盤に収録された演奏において、パーカッショニストがヴィブラフォンを演奏するセクションから中間部となるが、そこに聴かれる和音らしき響きは、あくまでもフレーズの持続音(サステイン)が伸びた結果生まれたものであって、決して意図したものではないという。喩えて言うならば山間部を走る列車の走行音や警笛がこだまし、それが偶発的なハーモニーを生み出すようなものである。

ユニゾンのフレーズの音が時間軸上でズラされることで生まれるさまざまな音風景は--久石は本作を鉄道の標題音楽として書いているわけではないが--車窓から見える多種多様な光景が自分の中のさまざまな記憶を呼び起こしていく、そんな自由連想的な聴き方をリスナーに許容している。最初のユニゾンのフレーズが、民謡のようにもジャズのようにも、あるいはわらべ唄のようにも聴こえてくる面白さ。そういう面白さを実現するためには、最初のフレーズが思わず口ずさみたくなるような親しみやすさを持ちながら、同時に高度な可塑性に耐えうる可能性を潜在的に秘めていなけれなならない。こういうフレーズは、ポップスフィールドで感性を徹底的に鍛え上げられた、久石のような作曲家でなければ絶対に書けないフレーズだと思う。そういう意味で本作は、久石のポストクラシカル的な在り方をこれまでになく明瞭に示した楽曲と言えるだろう。

(CDライナーノーツ 楽曲解説より)

 

 

JOE HISAISHI
SINGLE TRACK MUSIC 1
FOR 4 SAXOPHONES AND PERCUSSION

久石譲
Single Track Music 1 サクソフォン四重奏と打楽器

フルスコア(パート譜別売)
28ページ
菊倍判(227×303mm)
定価:1,700円(税別)
注文番号: SJH 008
ISBN: 978-4-89066-178-7
ISMN: M-65001-256-0
JAN: 1923073017005
出版社: Schott Music Tokyo

公式ページ:ショット・ミュージック 久石譲 Single Track

[参考作品]

Minima_Rhythm II Disc. 久石譲 『Minima_Rhythm II ミニマリズム 2』

 

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