Disc. オムニバス 『スタジオジブリの歌 増補盤』

2015年11月25日 CD発売

スタジオジブリ設立30周年記念!
これ一枚でスタジオジブリの全てが分かる!

スタジオジブリ設立から30年を記念して、
ジブリ映画の楽曲を網羅した究極のアニバーサリー盤が登場!

2008年リリース、「崖の上のポニョ」までのスタジオジブリ代表作の主題歌・挿入歌を網羅したオムニバス「スタジオジブリの歌」。このアルバムに「借りぐらしのアリエッティ」「コクリコ坂から」「風立ちぬ」「かぐや姫の物語」「思い出のマーニー」の5作品を追加した、ファンには嬉しいアニバーサリー盤が高音質のHQCDとして登場。全ての世代に愛されるスタジオジブリの永久保存版として一家に一枚。

全楽曲同内容のオルゴール盤『スタジオジブリの歌オルゴール -増補盤-』も同時発売された。

 

早期購入特典:スタジオジブリ特製ポスター (全作品を1枚ポスターとして特製)

スタジオジブリの歌 特典 1

 

早期同時購入特典:スタジオジブリ復刻チラシ21枚セット(全作品劇場公開時)
(『スタジオジブリの歌-増補盤-』+『スタジオジブリの歌オルゴール -増補盤』同時購入)

24作品中「On Your Mark」のチラシは制作されておらず、「となりのトトロ」と「火垂るの墓」、「猫の恩返し」と「ギブリーズ episode2」 は公開時にそれぞれ2本立てだったため2作を1枚で制作のため、21枚セットとなっている。

スタジオジブリの歌 特典 2

 

スタジオジブリの歌 増補版

[DISC.1]
01. 風の谷のナウシカ(風の谷のナウシカ) 安田成美
02. 君をのせて(天空の城ラピュタ) 井上あずみ
03. さんぽ(となりのトトロ) 井上あずみ
04. となりのトトロ(となりのトトロ) 井上あずみ
05. はにゅうの宿(火垂るの墓) アメリータ・ガリ=クルチ
06. ルージュの伝言(魔女の宅急便) 荒井由実
07. やさしさに包まれたなら(魔女の宅急便) 荒井由実
08. 愛は花、君はその種子(おもひでぽろぽろ) 都はるみ
09. さくらんぼの実る頃(紅の豚) 加藤登紀子
10. 時には昔の話を(紅の豚) 加藤登紀子
11. 海になれたら(海がきこえる) 坂本洋子
12. アジアのこの街で(平成狸合戦ぽんぽこ) 上々颱風
13. いつでも誰かが(平成狸合戦ぽんぽこ) 上々颱風
14. カントリー・ロード(耳をすませば) 本名陽子
15. On Your Mark (On Your Mark) CHAGE and ASKA
16. もののけ姫(もののけ姫) 米良美一
17. ケ・セラ・セラ(ホーホケキョとなりの山田くん)山田家の人々ほか
18. ひとりぼっちはやめた(ホーホケキョとなりの山田くん) 矢野顕子

[DISC.2]
01. いつも何度でも(千と千尋の神隠し) 木村弓
02. 風になる(猫の恩返し) つじあやの
03. No.Woman, No Cry (ギブリーズepisode2) Tina
04. 世界の約束(ハウルの動く城) 倍賞千恵子
05. テルーの唄(ゲド戦記) 手嶌葵
06. 時の歌(ゲド戦記) 手嶌葵
07. 海のおかあさん(崖の上のポニョ) 林昌子
08. 崖の上のポニョ(崖の上のポニョ) 藤岡藤巻と大橋のぞみ
09. The Neglected Garden [荒れた庭](借りぐらしのアリエッティ) セシル・コルベル
10. Arrietty’s Song (借りぐらしのアリエッティ) セシル・コルベル
11. 夜明け~朝ごはんの歌(コクリコ坂から) 手嶌葵
12. 上を向いて歩こう(コクリコ坂から) 坂本九
13. さよならの夏~コクリコ坂から~ (コクリコ坂から) 手嶌葵
14. ひこうき雲(風立ちぬ) 荒井由実
15. いのちの記憶(かぐや姫の物語) 二階堂和美
16. わらべ唄(かぐや姫の物語)
17. 天女の歌(かぐや姫の物語)
18. Fine On The Outside (思い出のマーニー) プリシラ・アーン

HQCDリマスター音源

全56ページオールカラーブックレットつき
<ブックレット内容>全映画の●作品データ●公開当時ポスター絵柄●全曲歌詞

Disc. オムニバス 『スタジオジブリの歌オルゴール 増補盤』

2015年11月25日 CD発売

スタジオジブリ設立30年を記念したアニバーサリー盤が登場。
誰もが知ってる、口ずさめるスタジオジブリの数々の名曲を癒しのオルゴールの音色で。

2008年発売『スタジオジブリの歌 オルゴール』に、『借りぐらしのアリエッティ』『コクリコ坂から』『風立ちぬ』『かぐや姫の物語』『思い出のマーニー』の5作品を追加収録。

全楽曲同内容のオリジナル歌唱盤『スタジオジブリの歌 -増補盤-』も同時発売された。

 

早期購入特典:スタジオジブリ特製ポスター (全作品を1枚ポスターとして特製)

スタジオジブリの歌 特典 1

 

早期同時購入特典:スタジオジブリ復刻チラシ21枚セット(全作品劇場公開時)
(『スタジオジブリの歌-増補盤-』+『スタジオジブリの歌オルゴール -増補盤』同時購入)

24作品中「On Your Mark」のチラシは制作されておらず、「となりのトトロ」と「火垂るの墓」、「猫の恩返し」と「ギブリーズ episode2」 は公開時にそれぞれ2本立てだったため2作を1枚で制作のため、21枚セットとなっている。

スタジオジブリの歌 特典 2

 

スタジオジブリの歌 オルゴール 増補版

[DISC.1]
01. 風の谷のナウシカ(風の谷のナウシカ)
02. 君をのせて(天空の城ラピュタ)
03. さんぽ(となりのトトロ)
04. となりのトトロ(となりのトトロ)
05. はにゅうの宿(火垂るの墓)
06. ルージュの伝言(魔女の宅急便)
07. やさしさに包まれたなら(魔女の宅急便)
08. 愛は花、君はその種子(おもひでぽろぽろ)
09. さくらんぼの実る頃(紅の豚)
10. 時には昔の話を(紅の豚)
11. 海になれたら(海がきこえる)
12. アジアのこの街で(平成狸合戦ぽんぽこ)
13. いつでも誰かが(平成狸合戦ぽんぽこ)
14. カントリー・ロード(耳をすませば)
15. On Your Mark (On Your Mark)
16. もののけ姫(もののけ姫)
17. ケ・セラ・セラ(ホーホケキョとなりの山田くん)
18. ひとりぼっちはやめた(ホーホケキョとなりの山田くん)

[DISC.2]
01. いつも何度でも(千と千尋の紙隠し)
02. 風になる(猫の恩返し)
03. No.Woman, No Cry (ギブリーズepisode2)
04. 世界の約束(ハウルの動く城)
05. テルーの唄(ゲド戦記)
06. 時の歌(ゲド戦記)
07. 海のおかあさん(崖の上のポニョ)
08. 崖の上のポニョ(崖の上のポニョ)
09. The Neglected Garden [荒れた庭](借りぐらしのアリエッティ)
10. Arrietty’s Song (借りぐらしのアリエッティ)
11. 夜明け~朝ごはんの歌(コクリコ坂から)
12. 上を向いて歩こう(コクリコ坂から)
13. さよならの夏~コクリコ坂から~ (コクリコ坂から)
14. ひこうき雲(風立ちぬ)
15. いのちの記憶(かぐや姫の物語)
16. わらべ唄(かぐや姫の物語)
17. 天女の歌(かぐや姫の物語)
18. Fine On The Outside (思い出のマーニー)

全56ページオールカラーブックレットつき

Disc. 久石譲 『Ghibli Best Stories ジブリ・ベスト ストーリーズ』

2014年3月12日 CD発売

1984年3月11日に公開された「風の谷のナウシカ」から30年。
久石譲が再編曲した名曲達をまとめた初のジブリ・ベストセレクション!

久石譲は当初、レコード会社からの提案に「過去を振り返るのは嫌いなので作りたくなかった」と感じたそうだが、「出来上った盤を聴いてみると、これはこれで一つの世界があり、納得できた」とコメントしている。ソロアルバム用に録音してきた編曲の中から、ピアノをメインにリアレンジされた楽曲、ロンドン交響楽団が演奏した「となりのトトロ」「千と千尋の神隠し」など13曲を収録。

ジブリ映画を彩った名曲達を久石譲が再編曲・プロデュースした作品を集めたベストアルバム!
公開30周年(2014年時)を迎える『風の谷のナウシカ』から『崖の上のポニョ』まで、
初CD化音源も含めた、ジブリ映画音楽の決定盤。

 

30年という時間

僕が宮崎さんと一緒に仕事をするようになって、30年という時間が過ぎた。本当は宮崎駿監督とお呼びしなければいけないのだが、彼の明るく飾らない人柄のせいか、周りの人や僕は宮崎さん、あるいはもっと親しい人は宮さんと呼んでいる。

『風の谷のナウシカ』から最新作『風立ちぬ』まで10作品、そのひとつひとつに制作上のドラマがあり、葛藤があり、真の喜びがあった。そのエピソードを語るつもりはない。が、世界中の人たちに観ていただき、音楽を聴いていただいたということは、結果として宮崎さんの作品に少しは貢献できたものとして安堵しているし、心から感謝している。

このアルバムは、その30年間に僕のソロアルバムとして制作してきた中から、宮崎さんの映画のために書いた曲を集めたものである。ピアノを中心に、アルバムごとのコンセプトに即してリアレンジしたものなのでサウンドトラックとは違う。だが、どんな状況でも(オーケストラの演奏でも、ピアノ一台でも、あるいは街を歩いている子供の鼻歌でも)そこには宮崎さんがいて僕がいる。そのような強い楽曲を作れたのはもちろん僕の力だけではなく、多くの関わった人たち、特に鈴木敏夫さんの力がなければできなかったであろう。

過去を振り返るのは嫌いなのでこのようなベストアルバムは作りたくはなかったが、レコード会社の強い要望で(最近ソロアルバムを作っていないので)出すのを了承した。

だが、出来上がった盤を聴いてみると、これはこれで一つの世界があり、存在していいものだと納得した。多くの関係者に感謝する。彼らがいなかったらこのアルバムは存在しなかった。

そして僕はというと、ピアノの音と音の間の沈黙から30年という時間の流れにのって宮崎さんの満面の笑顔が浮かんでくるのを観てニンマリとしているのである。

久石譲 -ライナーノーツより

 

ピアノ、ミニマル、オーケストレーション
宮崎駿監督作における久石譲の音楽について

今から30年前の1984年3月11日に公開された宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』で、久石譲は映画音楽作曲家としての第一歩を踏み出した。それ以前の彼は、テリー・ライリーやスティーヴ・ライヒといったアメリカン・ミニマリズムの作曲家やドイツのクラフトワークに刺激を受けた、彼独自のミニマル・ミュージックの可能性を模索する作曲活動を地道に続けていた。ミニマル・ミュージックとは--『MKWAJU ムクワジュ』(1981)や『INFORMATION』(1982)といった彼の初期のアルバムに聴かれるように--シンプルなリズムパターンを繰り返し、時には拍をずらすことによってパルス(=拍動、脈動)の存在を聴き手に強く意識させる音楽である。アフリカやインドの伝統音楽に見られるような、音楽を最小限(=ミニマル)の構成要素から組み立てていく手法をとるので、フレーズやメロディを中心に発展してきた西洋音楽史全体に挑戦状を叩きつけることに繋がりかねない。そんな過激な姿勢を貫く日本人作曲家は、1980年代初頭の時点で久石以下ごく少数しか存在しなかったし、ましてや、それを劇映画の音楽に応用しようなどと無謀なことを考える作曲家は、世界中見渡してもほとんど存在しなかった。

そんな彼の『INFORMATION』が高畑勲監督と鈴木敏夫プロデューサーの目に留まったことで、久石は『風の谷のナウシカ』のイメージアルバムを録音することになり、結果として『風の谷のナウシカ』の本編そのものの音楽も手がけることになった。

では、実際に久石は『風の谷のナウシカ』をどのように作り上げたのか?

まず彼は、ピアノという楽器でメインテーマ--《風の伝説》の曲名で知られている--のメロディを導入する。当時の一般的な観客が予想し、期待したであろうヴォーカルを一切用いることなく、である。しかも、そのメロディの冒頭部分は、当時のポップスのトレンドに真っ向から対抗するように、コード進行をほとんど変えず、ストイックに提示される。そして本編の物語が進むにつれ、久石はシタールのようなインドの民族楽器から後期ロマン派風のオーケストラにいたるまで、死力を尽くしてありったけの音色を投入するのだ。実験的なミニマル・ミュージックと商業用の映画音楽という、ある意味で対極的な二項対立の狭間に立たされた久石は、自己のアイデンティティを殺すことなく、ギリギリのところで壮大な音楽ドラマを書き上げてみせた。そうした彼のストイックな音楽的姿勢が、ナウシカというヒロインの壮絶な生きざまに重なって聴こえたのは、著者ひとりだけではないだろう。そして、その後30年にわたって彼が書き続けることになる宮崎作品の音楽の原型が、『風の谷のナウシカ』の中にすべて含まれていると言っても過言ではないのだ。

メロディの導入にあたり、演奏家としての久石の力量が遺憾なく発揮されるピアノ(1)。音楽の構成要素を最小限まで切り詰めていくミニマル的な手法(2)。そして、多種多様な楽器やアンサンブルを駆使していくオーケストレーションの多様性(3)。『風の谷のナウシカ』の音楽を特徴づけるこれら3つの要素は、時には単独の形で、時には三位一体の形で、宮崎作品の重要なエッセンスを表現していくことになる。そのエッセンスが何かと問われれば、おそらく次のように要約することが出来るだろう。

久石自身の演奏楽器である(1)のピアノは、メロディを生み出す母体となることで、物語における叙情的な要素--とりわけ宮崎作品のヒロインたち--を強調する役割を果たす。これに対し(2)のミニマル的な手法は、リズムパターンを剥き出しにする場合に、根源的な生命(力)の存在--『となりのトトロ』の雨中のバス停の場面が有名--を示すことが多い。そして(3)のオーケストレーションの多様性は--フランス印象派を思わせるダイナミックな三管編成を駆使した『崖の上のポニョ』が端的に示しているように--宮崎監督の世界観の確立に貢献する役割を果たす。仮に(1)のピアノを”女性的”な要素、(3)のオーケストレーションを”男性的”な要素、(2)のミニマルを久石自身の”生命”、と読み替えてみるならば、少し飛躍があるかもしれないが、このように結論づけることも出来るだろう。すなわち宮崎作品における久石の音楽は、(1)ピアノという”ヒロイン”の”君をのせて”、(3)オーケストレーション(オーケストラ)という”ヒーロー”が奏でていく、(2)ミニマルという”生命”から生まれたドラマなのだ。

そのドラマにおいて、特にヒロインが恋に落ちる時、彼女たちがピアノのメロディと共に登場するのは決して偶然ではない。謎の少年・ハクに惹かれる『千と千尋の神隠し』の千尋。魔法使いハウルを愛し続ける『ハウルの動く城』のソフィー。身を削って夫・二郎への愛を貫く『風立ちぬ』の菜穂子。彼女たちの存在感が大きくなるにつれ、メロドラマ的な要素が物語に占める割合も大きくなっていく。ここで想起しておきたいのは、そもそもメロドラマという言葉が古代ギリシャ語の「メロス(歌)」と「ドラマ(劇)」を語源としているという点である。そうした根源的な意味において、久石のピアノのメロディは”ヒロイン”という女性的な要素と結びついていると見るべきだ。つまり、宮崎作品におけるメロドラマとは、文字通り「歌(メロディ)による劇(ドラマ)」なのである。

本盤『ジブリ・ベスト ストーリーズ』には、久石が宮崎作品のために書いた楽曲をソロアルバム用にアレンジし直した演奏が収録されているが、サントラのアレンジに比較的近いものもあれば、アルバムのコンセプトに沿って大胆にアレンジし直されたものもある。ここで是非とも確認しておきたいのは、そもそも久石の映画音楽は--映画公開以前に録音されたイメージアルバムの中で表現されているように--先に触れたようなエッセンスを直接的に表現するところから作曲がスタートしているという点だ。個々の場面に後付けする伴奏とは、発想の出発点が根本的に違う。別の言い方をすれば、映像と音楽は協調関係(対位法的な対立関係を含む)を結ぶことはあっても、主従関係に陥ることはない。つまり、音楽が特定の映像に縛られないので、映画が完成した後も、さらに音楽が発展する余地が残されている。と同時に、それらの楽曲が映画とは異なる文脈でアレンジされることで、サントラを聴くだけでは判らなかった潜在的な意味が浮かび上がってくる。だからこそ、彼が宮崎作品の音楽をリアレンジし、演奏する必然性が生まれてくるのだ。

以下の楽曲解説は、そうしたリアレンジの文脈も知っていただきたく、敢えてCDをの収録順とは異なり、出典元となったソロアルバムの録音年代順でお読みいただくことにした。そのほうが、本編とは異なる世界観を表現したオーケストレーションの醍醐味と、アーティストとしての久石が辿った30年の変遷が、明瞭に浮かび上がってくるからである。

 

『Piano Stories』(1988)より
4.The Wind Forest
6.Fantasia (for NAUSICAÄ)

ミニマル作曲家・久石が、旋律作曲家としての自己を強く意識し始めた時期のアルバム。ミニマル風の前奏の後、日本音階のメロディが続く《The Wind Forest》(風のとおり道)は、その意味で極めて象徴的な楽曲と言えるだろう。一方の《Fantasia (for NAUSICAÄ)》は、先に触れた《風の伝説》を幻想曲としてリアレンジしたもの。久石が著者に語ったところによれば、この時期の彼のピアノのタッチは、高校時代から敬愛するジャズ・ピアニスト、マル・ウォルドロンの影響を強く受けていたという。

『NOSTALGIA ~PIANO STORIES III~』(1998)より
7.il porco rosso

イタリア・モデナで録音された『NOSTALGIA ~PIANO STORIES III~』は、『紅の豚』で描かれたアドリア海の陽光と青空を久石に懐古させる、注目すべき成果をもたらした。イメージアルバムの段階で《マルコとジーナ》というタイトルが付けられていた《il porco rosso》(帰らざる日々)は、後半部分にストリングスを加えることで、原曲以上にノスタルジックなジャズへと生まれ変わり、ホテル・アドリアーノに漂う”大人のロマン”を優雅に演出している。

『WORKS II』(1999)より
11.もののけ姫

宮崎作品のサントラ録音で初めて常設の交響楽団(東京シティ・フィル)を起用した『もののけ姫』以後、久石は大編成を用いた演奏に意欲を燃やし始める(その論理的な帰結が、2000年から始める彼の指揮活動だ)。有名なヴォーカル盤では、ケーナや篳篥といった民族楽器を隠し味として使っていたが、この東京シティ・フィルのライヴではそれらを排除し、伝統的なオーケストラサウンドの枠内で『もののけ姫』の世界観を再現している。

『ENCORE』(2002)より
12.アシタカとサン

久石初の全曲ピアノソロアルバム『ENCORE』は、マイクの設置場所にミリ単位までこだわった入魂作。”破壊された世界の再生”を描く、『もののけ姫』の重要なラストにおいて、久石はそれまで鳴り続けていたオーケストラを止め、シンプルなピアノだけで希望のメロディを奏でてみせた。その意味では《風の伝説》と対をなす楽曲と言えるかもしれない。

『Castle in the Sky』(2002)より
3.Confessions in the Moonlight

『天空の城ラピュタ』の北米版のために、久石が本編全体のスコアをリアレンジ・追加作曲し、シアトルの教会で録音した演奏から。オリジナル版の電子楽器を排除し、豊かなオーケストラサウンドにこだわって宮崎作品の世界観を再構築していくという点では、先に触れた《もののけ姫》の方法論の発展と見ることも可能だ。冒険活劇といえば長調の明るいメインテーマ、というハリウッド的な常識に真っ向から反旗を翻すように、『天空の城ラピュタ』のメインテーマ《君をのせて》は変ホ短調で書かれている。その表現の奥深さを示した例のひとつが、飛行船の上でシータがパズーに不安を打ち明ける場面の《Confessions in the Moonlight》(月光の雲海)だ。空間の響きを活かした久石のピアノソロが、オリジナル版以上に《君をのせて》の旋律をしっとりと浮かび上がらせている。

『空想美術館』(2003)より
5.谷への道

フルオーケストラとチェロ九重奏の演奏を交互に並べた野心作『空想美術館』収録の《谷への道》は、もともと『風の谷のナウシカ』イメージアルバムのために作曲された楽曲。のちにチェロ独奏を前提とした《ナウシカ組曲》の第5楽章に組み込まれた。独奏部分だけでなく、伴奏部分まですべてチェロの音色に統一するという発想は、作曲家ヴィラ=ロボスの《ブラジル風バッハ第5番》チェロ八重奏の先例を彷彿とさせるだけでなく、ミニマル作曲家ライヒのカウンターポイントシリーズ(チェロ9声部で書かれた《チェロ・カウンターポイント》など)にも通じるところがある。なおかつ、ここでのチェロ九重奏の大らかな響きは、『風の谷のナウシカ』の豊かな世界観と何ら矛盾をきたしていないのだ。

『Piano Stories Best ’88-’08』(2008)より
10.人生のメリーゴーランド -Piano Solo Ver.-

『ハウルの動く城』は、スコアのほぼすべてをワルツ主題とその変奏だけで押し通す久石の音楽設計が、そのまま宮崎監督の演出意図を表現したユニークな作品。ここに聴かれる演奏では、前半がワルツのテーマ、後半にその変奏を聴くことが出来るが、ヒロインのソフィーも同様に--ハウルへの変わらぬ恋心を抱きながら、18歳から90歳まで年齢が変化し続けるという点で--”主題と変奏”というべきキャラクターなのだ。

『Another Piano Stories ~The End of the World~』(2009)より
8.Ponyo on the Cliff by the Sea

『崖の上のポニョ』公開後にピアノ、チェロ12本、コントラバス、マリンバ、打楽器、ハープ2本という編成によるツアーと連動して録音されたアルバムから。伝統的な管弦楽法からは絶対に思いつかない発想だが、チェロのピツィカートとマリンバの倍音が生み出すユーモラスな響きは、不思議とポニョのイメージに合う。宮崎作品のエッセンスを的確な音色で表現していく、久石のオーケストレーションの凄さが現れた演奏のひとつ。

9.海のおかあさん(CD初収録)

『崖の上のポニョ』本編では1コーラスしか聴くことの出来なかったオープニング主題歌を、今回初めて2コーラスのフルヴァージョンで収録したもの。”母なる大地”ならぬ”母なる大海”と読むことができるグラン・マンマーレは”母性”そのものというべき存在である。それを表現するため、久石はクラシックのソプラノ歌手(林正子)を起用した。彼女が歌うベルカントの豊かな声量は、”母性”の象徴であると同時に、広大な海の象徴でもある。

『Melodyphony』(2010)より
1.One Summer’s Day
2.Kiki’s Delivery Service
13.My Neighbour TOTORO

2009年のアルバム『Minima_Rhythm』に続き、久石がロンドン交響楽団を指揮したアルバムから。《One Summer’s Day》(あの夏へ)と《Kiki’s Delivery Service》(海の見える街)は、それまでの日常と異なる世界--『千と千尋の神隠し』の場合は湯屋の町、『魔女の宅急便』の場合は大都会コリコ--に足を踏み入れようとするヒロインが、そこはかとなく感じる期待と不安を表現しているという点で、対をなす2曲と言えるかもしれない。しかも、《Kiki’s Delivery Service》のリアレンジでは久石のピアノソロがメロディをくっきりと演奏しており、《One Summer’s Day》のニュアンスに富んだピアノソロと見事な対照を生み出している。

そして《My Neighbour TOTORO》(となりのトトロ)は、組曲《オーケストラストーリーズ 「となりのトトロ」》の終曲を演奏したもの。近年はクラシックの古典曲を積極的に指揮している久石にとって、ロンドン響での録音は大きな意味があった。ロンドン響はクラシックの超一流オケである以上に、ライヒやジョン・アダムズといったミニマル作曲家の演奏で比類なき能力を発揮するオケなのだ(つまり、世界で一番ミニマルを理解しているオケ)。《My Neighbour TOTORO》のコーダ部分に聴かれる圧倒的な歓喜の音楽は、ミニマル・ミュージックの作曲家、宮崎作品の作曲家、そしてクラシックの指揮者という久石の3つの側面が統合された、ひとつの到達点なのである。(文中敬称略)

前島 秀国(サウンド&ヴィジュアル・ライター) -ライナーノーツ・楽曲解説より

 

ジブリ・ベスト ストーリーズ 久石譲 収録曲

1. One Summer’s Day (千と千尋の神隠し)
2. Kiki’s Delivery Service (魔女の宅急便)
3. Confessions in the Moonlight (天空の城ラピュタ)
4. The Wind Forest (となりのトトロ)
5. 谷への道 (風の谷のナウシカ)
6. Fantasia (for NAUSICAÄ) (風の谷のナウシカ)
7. il porco rosso (紅の豚)
8. Ponyo on the Cliff by the Sea (崖の上のポニョ)
9. 海のおかあさん 歌 / 林 正子 (崖の上のポニョ) *初CD化
10. 人生のメリーゴーランド -Piano Solo Ver.- (ハウルの動く城)
11. もののけ姫 (もののけ姫)
12. アシタカとサン (もののけ姫)
13. My Neighbour TOTORO (となりのトトロ)

■初回プレス分のみ「スリーブケース」仕様

 

[選曲CD作品]

久石譲 piano stories
『Piano Stories』(1988年)

4.The Wind Forest 6.Fantasia (for NAUSICAÄ)

 

久石譲 PIANO STORIES 3
『NOSTALGIA ~PIANO STORIES III~』(1998年)

7.il porco rosso

 

久石譲 WORKS2
『WORKS II Orchestra Nights』(1999年)

11.もののけ姫

 

久石譲 ENCORE
『ENCORE』(2002年)

12.アシタカとサン

 

久石譲 Castle in the sky 天空の城ラピュタ・USAヴァージョン
『Castle in the sky ~天空の城ラピュタ・USAヴァージョン・サウンドトラック~』(2002年)

3.Confessions in the Moonlight

 

久石譲 空想美術館 2003 LIVE BEST
『空想美術館 ~2003 LIVE BEST~』(2003年)

5.谷への道

 

久石譲 『Piano Stories Best ’88-’08』
『Piano Stories Best ’88-’08』(2008年)

10.人生のメリーゴーランド -Piano Solo Ver.-

 

久石譲 Another Piano Stories
『Another Piano Stories ~The End of the World~』(2009年)

8.Ponyo on the Cliff by the Sea

 

久石譲 メロディフォニー
『Melodyphony メロディフォニー』(2010年)

1.One Summer’s Day 2.Kiki’s Delivery Service
13.My Neighbour TOTORO

 

Related page:

 

Disc. 久石譲 『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック 総集編』

久石譲 『坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック 総集編』

2012年2月22日 CD発売

司馬遼太郎の長編小説を原作とするスペシャルドラマ「坂の上の雲」。
日本のテレビ史上これまでにないスケールを目指しNHKが総力を挙げて取り組んだスペシャルドラマである。音楽を手掛けたのは日本を代表するコンポーザー久石譲。

本作は2009-2011年に発表されたサウンドトラック3作品より第1・2・3部の番組メインテーマを一挙収録&人気の高い楽曲を中心に収録した総集編。

壮大なスケール感。希望に満ちた旋律。坂の上の雲に向かってひらすらに歩み続けた明治人の世界が鮮やかによみがえるオリジナル・サウンドトラック。

 

『坂の上の雲』の音楽

スペシャルドラマ『坂の上の雲』の音楽担当の話が来たのはもう7、8年前になります。司馬遼太郎さんの原作が大好きでしたから、ぜひ担当したいとお引き受けしました。

『坂の上の雲』についてはトータルで約80曲作りました。自分ではテレビドラマというより映画音楽として考えて作りました。通常のテレビドラマの音楽は1分とか1分半などの短い曲をたくさん作るようですが、僕は3分前後の曲を多く書いたので、実質膨大な量になりました。今回の作品は現代音楽からメロディアスな音楽まで、自分が作ってきたすべてを総動員して力を入れて作りました。今は3年間の放送を終えてとても嬉しい気持ちです。

最も重要だったのはやはりメインテーマです。番組の顔に相当するメインテーマをどう作るのか一番時間をかけて悩みました。

明治という時代には前体制が壊れて新しい体制に向かっていく楽天主義的な夢がたくさんある。そういう世界観を描きたい。最初にスコットランドやアイルランドの民謡が頭に浮かびました。素朴でどこか懐かしい。いつまでも心に残るような。そんなテーマ曲が書けないかと思いました。

そしてこれだけスケール感あるドラマなら音楽はシンプルにしたい。特にメインになる曲はどこまでシンプルにできるかにこだわりました。また、この物語は「英雄物語」ではなく、一生懸命生きた人間が巨大な戦争に巻き込まれていく話です。歴史の重要な1ページを描くには品格のある音楽を、しかもドラマティックすぎずに描かなくてはいけない。結果として誕生した曲がメインテーマ「Stand Alone」でした。そしてこれだけシンプルだったら、ぜひ皆さんに歌っていただきたいと思い、映画『おくりびと』の脚本家、小山薫堂さんの詞を得て”歌”にしました。

考えてみると、小学校の教科書には「蛍の光」「ロンドンデリーの歌」といったスコットランドやアイルランドの民謡が載っています。江戸から明治に時代が変わるとき、イギリス文化が取り入れられました。そして音楽教育のベースにもそういった音楽があったんです。僕たちは小さい頃からそういった音楽で育っているんですね。意識していなかったのですが、スコットランド民謡のような曲を書こうと思ったこと、最初にイギリス人歌手であるサラ・ブライトマンを起用しようと思ったこと、『坂の上の雲』の音楽を作るにあたってすべてが”イギリス”に向いていました。自分の中にある”イギリス”は『坂の上の雲』の音楽を作らせた大きな要因の一つでした。

昨年震災が起こりました。モノを創る人間として大変大きな衝撃がありました。何を目指して作っていけばよいのか、みんな分からなくなってきています。また、21世紀に入ってから今までの価値観ではやっていけないという事実に直面しています。そんな中、今回の音楽にかけて言うなら大事なのは”Stand Alone”という境地ではないかと感じています。

”Stand Alone”とは独りで立つということ。個人主義ではなく、自分は孤独で独りである、と認識すること。そうすれば人にやさしくすることも、人と力を合わせることも喜びに感じる。僕は最近、「目ざせ、Stand Alone」ということを懸命に考えています。

久石譲

(本原稿は2011年12月3日大阪府東大阪市:司馬遼太郎記念館/特別講演会「坂の上の雲と音楽」より談話を一部抜粋・加筆して再構成したものです)

(CDライナーノーツより)

 

「音の光」

知人から、時々こんなことを言われる。
「Stand Aloneというタイトルが、まず素晴らしいですね」

実はこのタイトルは僕がつけたものではない。作曲者の久石譲から曲をいただいたとき、すでに「Stand Alone」という素敵なタイトルがつけられていた。

久石さんの曲を聴く前に、まず脚本を読むことにした。イメージを膨らませて、言葉の欠片をできるだけたくさん頭の中に並べ、すでに出来上がっている曲とお見合いさせようと思ったからだ。

しかし、物語は壮大過ぎた。人間の尺度で話は紡がれるが、それは国、やがては時代のスケールで語られる。この世界観をそのまま歌にするのはとても難しい。それでも、時を経ても色褪せることのない普遍的な楽曲にしたい、と思った。

言葉に行き詰まってしまった時、初めて楽曲を聴いた。背筋をピンと伸ばし、誰もいない仕事場で大きく深呼吸して、CDプレイヤーのプレイボタンを押したのを覚えている。

それから先、どういう想いのもとにこの詞が完成したかは、あえて伏せておくことにしよう。ドラマの主題歌として皆さんがそれぞれのイメージを抱いている今、その誕生秘話を語るなんて野暮な話だ。

ただ…、ひとつだけ明かすとするならば、僕の頭の中にはずっと「光」のイメージがあった。闇の中にいる人たちにとって、この歌が「光のような存在」になればいいと思った。

光を一方的に求めているだけでは何も始まらない。人間ひとりひとりが自分なりの光を見つけ出し、それを仲間と共有したときはじめて、私たちは大きな光に照らされるのである。

そう、「Stand Alone」とは、音の光。もしこの楽曲が、あなたの心を照らすささやかな光になっているとするならば、僕がこれ以上語ることは何もない。

小山薫堂

(CDライナーノーツより)

 

 

第1部から第3部までの
「NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック」
「NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック 2 」
「NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック 3 」

この計3枚のCD作品よりそれぞれの主要なテーマ曲&人気の高い楽曲を中心に収録した総集編。とにかくこの「坂の上の雲」作品において、曲数が多い。3年にわたって放送とはいえ全13回。司馬遼太郎の原作も全8巻という超大作だけあって、時代の経過やストーリー展開とともに、そのシーンに合わせて新しく書き下ろされた楽曲がそれだけ多いということ。

ジブリ作品にも制作段階から数年費やすものはもちろんある。そしてそれはイメージアルバムやサウンドトラック、その後の交響組曲などに発展していく。

この「坂の上の雲」という作品においては、そういう企画でもなく、本編中に使用された楽曲のみで構成されたサウンドトラックが全3部放送に伴い全3枚のCD作品として発売されている。

メインテーマをはじめとしたいつくかの主要テーマをモチーフにしたものもあるが、それ故ではない、シーンごとの全く新しいテーマ曲の多さが、この総集編からもわかる。

現に久石譲本人もこう語っている。
「約80曲つくった。今回の作品は現代音楽からメロディアスな音楽まで、自分が作ってきたすべてを総動員して力を入れて作った」

もちろんこの総集編にもれてしまった名曲たちもこの作品にはたくさんある。でも考えてみれば、計何十時間にも及ぶこの大作を仮に2時間TVドラマ総集編にしたところでやはり同じこと。視聴者によってはお気に入りの名シーンがカットされてしまうこともある。作品の世界観とバランス、時間の制約からはしょうがない。それはこの「オリジナル・サウンドトラック 総集編」でも同じことが言える。

とにかく「オリジナル・サウンドトラック」1-3のどのCD1枚をとっても、この「オリジナル・サウンドトラック 総集編」であっても、「坂の上の雲」の世界観を、壮大なスケール感で感じとれることは間違いない。

「NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック」からは(1)~(6)
「NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック 2 」からは(7)~(11)
「NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック 3 」からは(12)~(16)
がそれぞれ収録されている。

第1部から第3部までそれぞれに使用された主題歌 『Stand Alone』もサラ・ブライトマン(6) / 森麻季(11) / 麻衣(16) とすべて収録されている。

さらには「オリジナル・サウンドトラック 3」に収録されていたボーナス・トラック(17)の約11分の壮大な組曲までと、計77分にも及ぶ贅沢な総集編となっている。

 

久石譲 『坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック 総集編』

1. Stand Alone for Orchestra
2. 時代の風
3. 旅立ち
4. 青春
5. Human Love
6. Stand Alone (Vocalise)  / サラ・ブライトマン×久石 譲
7. 少年の国
8. アリアズナ
9. 終の住処
10. 広瀬の最期
11. Stand Alone 歌/森麻季(ソプラノ)
12. 第三部 序章
13. 絶望の砦 ~二〇三高地ニ起ツ~
14. 天気晴朗ナレドモ波高シ
15. 日本海海戦
16. Stand Alone / 久石譲×麻衣
ボーナス・トラック
17. Saka No Ue No Kumo

音楽/久石譲
指揮/外山雄三 演奏/NHK交響楽団 (M1-6,M11,M15-17)
指揮久石譲 演奏/東京ニューシティ管弦楽団 (M7-10,M12-14)

All Music Composed and Produced by 久石譲

Piano by 久石譲 (M6,M11)

Orchestrated by 山下康介 宮野幸子 久石譲

Recorded at
NHK CR-506, CR-509 (M1-6,M11,M15-17)
Nemo studios (M6)

Mixed at NHK CP-604, CR-506

 

Disc. 久石譲 『The Best of Cinema Music』

久石譲 『THE BEST OF CINEMA MUSIC』

2011年9月7日 CD発売

2011年6月9日東京国際フォーラムにて開催された「久石譲 3.11 東日本大震災チャリティー・コンサート」を収録したライブ音源。スタジオジブリ作品、北野武監督作品など自作の映画楽曲を中心に演奏。舞台上に大スクリーンを設置し、映像と音楽によって作品世界を演出。スクリーンに映し出される名場面とオーケストラによるテーマ曲たちの競演。

 

もう今は夢を語るときではない
- 東日本大震災に寄せて -

久石譲

⇒ Blog. 「久石譲 3.11 チャリティーコンサート」(2011) コンサート・プログラムより

(CDライナーノーツ および コンサート・パンフレット 同掲載)

 

”ぼくたちのストーリー”を語り始めた久石さんの音楽

「オーケストラは社会の鏡(An orchestra is a reflection of society)」という言葉がある。オーケストラは弦楽器、管楽器、打楽器など、個性溢れるさまざまな楽器が集まり、共に手を携え、ひとつのハーモニー(調和)を生み出していく。では、オーケストラの楽器が欠けたらどうするか? 例えば、オーケストラが海外公演をする際、手荷物の不着なので楽器が届かなかった場合には、現地のオーケストラが手を差し伸べ、楽器を貸し出すのが普通である。ぼくたちが生きる現実社会についても、同じことがあてはまる。今回の東日本大震災において、”日本という名のオーケストラ”は本当に多くの支援-あたたかいメッセージや義援金など-を世界中から受け取った。だから、震災で楽器を失った子供たちのために、久石さんが楽器購入支援のチャリティーコンサートをオーケストラと共に(ここが重要だ。その気になれば、ピアノ一台でもチャリティーコンサートは出来るのだから)開催するというニュースを知った時、映画音楽とクラシックの演奏活動を通じてオーケストラと日常的に接している久石さんならではの、とても素晴しいアイディアだと思った。子供たちに再び楽器を与えることは、音楽の喜びを取り戻すだけでなく、アンサンブルをすることの大切さを通じて-それがバンドであれ、吹奏楽であれ、オーケストラであれ-子供たちが社会というものを意識していく、強力な手段のひとつとなるからだ。

しかも久石さんは、今回のコンサートを単なる”自選ベスト”にはしなかった。3年前の武道館コンサートの時のように、舞台上に大スクリーンを設置し、映画と音楽が生み出す相乗効果-それこそが映画音楽の真の醍醐味である-を生の形で再現しようとしたのだ。幸運にもぼくは6月9日の東京公演を見ることができたが、『風の谷のナウシカ』~《風の伝説》のティンパニの強打で始まった約2時間のコンサートは、とても感慨深く、また新鮮な驚きに満ち溢れていた。映像付きの再演は困難と思われていた『THE GENERAL(キートンの大列車強盗)』の優雅なワルツが、白塗りのキートンの無表情と共に再び聴けたのは望外の喜びだったし、『Let the Bullets Fly(譲子弾飛)』の勇壮なマーチが、ダイナミックな銃撃戦の映像と共に演奏されるのを聴けば、一刻も早く本編を見たくなるのが人情というものである。

だが、コンサートはそれだけでは終わらなかった。

驚くべきことに、久石さんが指揮する音楽と、スクリーンに映し出された名場面の数々は、単に映画音楽の魅力と楽しさを伝えるだけでなく、映画の本編とは別の”もうひとつのストーリー”を語り始めたのである。

『風の谷のナウシカ』-暴走する王蟲の大群に呑みこまれたナウシカと、彼女に再生の力を与える《遠い日々》の清らかなコーラス。

『もののけ姫』-技術のために森を切り崩した傲慢な人間に襲いかかる、《タタリ神》の凶暴な和太鼓とホルンの咆哮。

『菊次郎の夏』-健気に生きていく天涯孤独の少年を温かく見守る、《Summer》の軽やかなピアノのメロディ。

『Brother』-閉塞した現状の中で怒りを爆発させるような、《Raging Men》の荒々しいパーカッション。

『Kids Return』-「俺たち、もう終わっちゃったのかなあ」「馬鹿野郎、まだ始まっちゃいねえよ」というラストのセリフと共に始まる、躍動感溢れるミニマルビート・・・・。

そう、このコンサートで演奏された曲たちは、震災を体験した”ぼくたちのストーリー”を語り始めていたのだ。社会の鏡たるオーケストラが、映画という鏡を通じて”今ここにある現実”を映し始めたのである。

そのことに気づいた瞬間、ぼくはとてつもなく大きな衝撃を受けた。これまで30年近くに渡ってリアルタイムで親しみ、熟知してきたはずの久石さんの映画音楽が、全く違って聴こえ始めたからだ。「音楽は、あらゆる哲学や知識よりも高度な啓示である」とはベートーヴェンの言葉だが、この日演奏された曲たちは”今ここにある現実”を改めて目の前に突きつけたという点で、まさにひとつの啓示だった。ある人はそれを「既視感」と呼ぶかもしれないし、別の人はそれを「現実とのシンクロ」と表現するかもしれない。いずれにせよ、久石さんの指揮する音楽とスクリーン上に映し出された映像は、エンタテインメントという名の現実逃避から遠く離れ、”日本という名のオーケストラ”が置かれた現状を、ぼくたちに必死に認識させようとしていた。

コンサートの終わり近く、久石さんはソプラノの林正子さんと共に『悪人』~《Your Story》を演奏し、久石さんが被災地で撮影してきた生々しい写真をスクリーン上に映し出した。

What we both long a place, sweet home
If I could un-wine the time and stay with you
僕たちが求めるもの、それは安らげる安堵の場
もっと側にいたい、時計の針を戻せるのなら

この歌詞が歌われた瞬間、《Your Story》は映画音楽という枠を越え、”ぼくたちのストーリー”と完全に同化した。その場に居合わせた聴衆のすべてが、《Your Story》に込められた痛切な想いを”My Story”として受け止めたのである。おそらく、ポーランドでも大阪でおパリでも北京でも、聴衆の気持ちは同じだったはずだ。

でも、久石さんは、震災の悲劇を嘆き悲しむだけでコンサートを終わらせなかった、「ともに生きること」の大切さを高らかに歌い上げた『もののけ姫』~《アシタカとサン》のコーラス。土の中から芽を出したドングリの大樹そのままに、明るく壮大な響きを奏でた『となりのトトロ』のオーケストラ。ぼくにはそれが、これから”日本という名のオーケストラ”が鳴らしていくべき”復興のシンフォニー”の序奏のように思えてならなかった。

ぼくは、このコンサートを一生忘れないだろう。

前島秀国(サウンド&ヴィジュアル・ライター)

(CDライナーノーツより)

 

 

本作はライブ音源なので、
スタジオ録音されたもの、本作の楽曲構成に近い過去参考CD/DVDを中心に解説。

(1) NAUSICAÄ (映画『風の谷のナウシカ』より)
オープニング「風の伝説」 ~レクイエム~メーヴェとコルベットの戦い~遠い日々~鳥の人
約10分に及ぶ壮大な組曲。「久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~」(DVD&Blu-ray)と同構成。ライブ映像音源。「WORKS I」 17分にも及ぶ交響詩全3部として収録。本作はここからのダイジェスト版に相当する。

(2) Princess Mononoke (映画『もののけ姫』より)
アシタカせっき~タタリ神~もののけ姫(Vo:林正子)
約8分に及ぶ組曲。本作では主題歌『もののけ姫』が英語歌詞になっている。「久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~」(DVD&Blu-lay)と同構成。ライブ映像音源。日本語歌詞。「真夏の夜の悪夢」 同構成ライブ音源。主題歌『もののけ姫』はオーケストラ・インストゥルメンル。「交響組曲 もののけ姫」 メドレーとなった3曲の各々オーケストラスコアをチェコ・フィルの演奏にて。「WORKS II ~Orchestra Nights~」 「交響組曲 もののけ姫」の同構成各曲ライブ音源。

(3) THE GENERAL (映画『THE GENERAL(キートンの大列車追跡)』より)
「WORKS III」 Movement1~Movement5 として組曲で構成。本作ではメインテーマを中心に抜粋。

(4) Raging Men (映画『Brother』より)
「WORLD DREAMS」 新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラの演奏。「SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001」 同構成ライブ音源。

(5) HANA-BI (映画『HANA-BI』より)
「WORKS II ~Orchestra Nights~」 同構成ライブ音源。「WORLD DREAMS」 ピアノが編成から外れた違った表情豊かなフルオーケストラ。

(6) Kids Return (映画『Kids Return』より)
「SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001」 同構成ライブ音源。

(7) Let The Bullets Fly (映画『譲子弾飛』より)
初フルオーケストラ。

(8) Howl’s Moving Castle (映画『ハウルの動く城』より)
Symphonic Variation 「Merry-go-round」~Cave of Mind
約11分に及ぶ組曲。「久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~」(DVD&Blu-lay)と同構成。ライブ映像音源。「WORKS III」 原型となる約14分の組曲を新日本フィルの演奏にて。

(9) One Summer’s Day (映画『千と千尋の神隠し』より)
「メロディフォニー」 ロンドン交響楽団の演奏。「久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~」(DVD&Blu-lay) 平原綾香(Vo) 本作と「メロディフォニー」では、ピアノをメインにしたしっとりと聴かせるオーケストラ・アレンジ。

(10) Summer (映画『菊次郎の夏』より)
「メロディフォニー」 ロンドン交響楽団の演奏。「空想美術館」 ライブ音源。

(11) Villain (映画『悪人』より)
初フルオーケストラ。約11分に及ぶ組曲、映画のストーリー展開に沿って構成。クライマックスの主題歌『Your Story』ヴォーカルはソプラノ歌手:林正子。「悪人 オリジナル・サウンドトラック」では福原美穂がヴォーカル担当。

(12) Ashitaka and San (映画『もののけ姫』より)
本作でも日本語歌詞合唱。「久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~」(DVD&Blu-lay)と同構成。ライブ映像音源。「交響組曲 もののけ姫」 「WORKS II ~Orchestra Nights~」  (2)同様参照。

(13) My Neighbour TOTORO (映画『となりのトトロ』より)
本作では主題歌『となりのトトロ』のみを英語歌詞合唱。

「久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~」(DVD&Blu-lay)
風のとおり道~さんぽ withコーラス~となりのトトロ withコーラス メドレー。こちらではもちろん『さんぽ』『となりのトトロ』日本語歌詞合唱。

「オーケストラストーリーズ となりのトトロ」
映画『となりのトトロ』のすべての楽曲をオーケストラアレンジした作品。『風のとおり道』もフルオーケストラにて聴くことができる。オープニング/エンディング曲『さんぽ』『となりのトトロ』はオーケストラ・インストゥルメンタル。『さんぽ』においては、オーケストラの楽器紹介をかねた構成になっていて1番を木管楽器、2番を金管楽器、3番を弦楽器、4番を弦楽器、そして最後に全員フルオーケストラで、という趣向のある1曲になっている。

「メロディフォニー」
主題歌『となりのトトロ』のみをロンドン交響楽団による演奏にて。コーラスなしのオーケストラ・インストゥルメンタル。(「オーケストラストーリーズ となりのトトロ」収録同曲と同構成)

このチャリティーコンサートは、東京・大阪・パリ・北京にて公演されている。プログラムはほぼ同じと思うが、本作に収録されていない楽曲ももちろんある。

そのなかでも映画『崖の上のポニョ』からの組曲『Ponyo on the Cliff by the Sea』。本作に収録されたジブリ作品は、「久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~」(DVD&Blu-lay)でのそれに近いが、組曲『Ponyo on the Cliff by the Sea』においてはかなり変更、進化している。組曲となる曲目構成も変更されていて、より緻密でダイナミクスなオーケストレーションになっている。クライマックスを飾る主題歌『崖の上のポニョ』もオーケストラがメロディーを奏でていて、サビは英語歌詞のコーラスにて大合唱となっている。収録されなかったのが非常に残念、ぜひ別の機会にでもCD/DVD化してほしい。

このチャリティーコンサート公演と本作CDの収益は東日本大震災で楽器を失った子供たちのために寄付されている。

 

 

久石譲 『THE BEST OF CINEMA MUSIC』

1.NAUSICAÄ (映画『風の谷のナウシカ』より)
2.Princess Mononoke (映画『もののけ姫』より)
3.THE GENERAL (映画『THE GENERAL(キートンの大列車追跡)』より)
4.Raging Men (映画『Brother』より)
5.HANA-BI (映画『HANA-BI』より)
6.Kids Return (映画『Kids Return』より)
7.Let The Bullets Fly (映画『譲子弾飛』より)
8.Howl’s Moving Castle (映画『ハウルの動く城』より)
9.One Summer’s Day (映画『千と千尋の神隠し』より)
10.Summer (映画『菊次郎の夏』より)
11.Villain (映画『悪人』より)
12.Ashitaka and San (映画『もののけ姫』より)
13.My Neighbour TOTORO (映画『となりのトトロ』より)

All Music Composed, Conducted & Produced by Joe Hisaishi
Piano by Joe Hisaishi

Orchestra:Tokyo New City Orchestra , Kansai Philharmonic Orchestra
Soprano:Masako Hayashi 2. 11.

Recorded at
Tokyo International Forum Hall A (June 9, 2011)
Osaka-jo Hall (June 18, 2011)

 

Disc. 久石譲 『Melodyphony メロディフォニー ~Best of JOE HISAISHI〜』

久石譲 『メロディフォニー』

2010年10月27日 CD発売

アンケートで上位に選ばれた曲を中心にセレクトした、ベスト・アルバム。

一般アンケートで上位に選ばれた楽曲を中心に 「誰もが知っている久石譲メロディー」 を久石譲の指揮・ピアノと世界最高峰のオーケストラ、ロンドン交響楽団の演奏で贈るベストアルバム。

 

Joe Hisaishi “Melodyphony” に寄せて

スピーカーからオープニングを飾る「Water Traveller」が流れ出してすぐに僕はその見事なオーケストレーションに唸らされた。以前から映画音楽からCM音楽、自身のアルバム、それにコンーサト活動、イベント制作に至るまで驚くべき仕事量をどれも高いクオリティでこなしてきた久石譲は3年ほど前からさらにそのレベルを上げ、創作活動を拡大、かつ加速させている感があるが、聴き進めていくうちに『Melodyphony』と題されたこの新作には久石譲の音楽を創ることの喜びと自信がみなぎっているとはっきりと思った。

同じロンドン交響楽団とロンドンのアビー・ロード・スタジオでレコーディングされた『ミニマリズム』が深い森のような、とても入り組んだ構造を持ち、神秘的ともいえる雰囲気を漂わせていたのに対し、この『Melodyphony』はこれまでに本当に多くの人に感動と夢を与えてきた久石メロディが大きな客船や帆船になり、大海原を航海していうりょうな印象を受ける作品。完成したばかりのCDと一緒に手元に届けられたDVDにはロンドン交響楽団とのレコーディング風景とともにインタビューも収録されていたが、「2度目であるということもあって非常にいい協調する関係ができ、去年よりもお互いに理解しあえた。1回目より2回目、2回目より3回目とうまくいってれば、音楽の上でもすごくコミュニケーションがとれる。ほぼ去年と同じメンバーの人たちがマリンバとかすごく難しいところがあるとか、去年と同じとか、デジャ・ヴとか言ってけっこう楽しみながら演奏してたから自分が書いている音楽のスタイルが理解してもらえたっていうのがある」と満足気に話す久石譲のロンドン交響楽団についてのコメントは何故彼が多忙なスケジュールをさいてロンドンまで出かけ、ロンドン交響楽団と一緒にレコーディングするのかの解答にもなっていると思う。

そして「こういうセッションのレコーディングっていうのは、1曲1時間半ぐらいであげていかなきゃならないんですけど、それにしては音符の数とか難易度は非常に高い。でも、そのレベルをこなしてしまうというロンドン交響楽団の奥深さというか、弦はどんな高い所であってもヒリヒリはしてこないし、豊かで下まで響いている音を作ってくれる。それからホルンも含めて難しいものを難しいように演奏するのではなく、音楽的に表現する。やはりこの辺で世界最高峰のオケなんだなとすごく思いました。」というコメント。このコメントはそのままメロディとシンフォニーという言葉の造語である『Melodyphony』というアルバムの魅力、聴きどころを言い当ててもいる。

「難しいものを難しいように演奏るのではなく、音楽的に表現する」という言葉は作曲家、編曲家、ピアニスト、プロデューサーという肩書きに数年前から指揮者という肩書も加わり、昨年にはクラシックの指揮者デビューまで果たしてしまった久石譲の作り出す作品全てに共通する魅力であり、久石譲がアルバムのレコーディング・エンジニアであるピーター・コービンも口にしていた通り”Special Musician”であることの大きなポイントでもあるが、音楽の構築力ということでは世界でも有数のアーティストではないだろうか。

軽い思いつきや簡単なひらめきなどから生まれた音楽とは全く次元が違う、十分に練り上げられ、精密な作業を続けた結果として高みに位置している久石譲の音楽。この『Melodyphony』制作の動機についても「昨年『ミニマリズム』ってアルバムを作って、長い間の夢だったミニマル・ミュージックが出来上がったんですが、同時に自分がやってきたメロディアスなオーケストラを録りたいと思っていたんです。ミニマリズムは出来たけれど、その作家性の部分と、メロディ・メイカーというか、メロディを作っていく自分というのを両方出したい。それを昨年ここでレコーディングが終わった時から思っていて、年が明けてこれはやはり両方あって自分ではないかという思いがどんどん強くなった。ミニマリズムっていうのはミニマルとリズムという言葉の合成語だったんだけど、今回はメロディとシンフォニックなオーケストラ、メロディとシンフォニー、これが合体することでメロディフォニーっていうアルバムを作る、これで全て自分が表現できる、そう思えた」と話しているが、その思い、発想は完璧かつ理想的な形で1枚のCDに結実している。

「昔の作品はもっと編成が小さかったので、それを今回用に直したりすることと、映像音楽として書いた曲はそのままになっていてコンサート・ピースとしては完成させていないものが多かったので、それを今回まとめて作品として聴けるようにすることを考えた。例えば『坂の上の雲』もものすごい量があるわけですよ。それを11~2分にきっちり作品としてまとめる。あるいは『魔女の宅急便』、個人的には1回もレコーディングしていない。武道館で演ったりはしたけれど、CDとしてはないので、今回きちんと弦とピアノでやるとか、そういうことで今、現在としてのメロディとシンフォニック・オーケストラが一番合体する方法、それを一番気をつけました。ただ選ぶ段階で、インターネットなどでみなさんに投票してもらって、何が聴きたいのか、それも参考にして上位に入っているものはほとんど網羅しましたね」という言葉はそれをはっきりと裏付けているし、今やオーケストラを自由自在に操る才能ということでは、かけがえのない音楽家になっているのではないだろうか。ピーター・コービンが口にしていた”Best musician in the World”という言葉もとても現実味をおびている。

僕はこの『Melodyphony』を聴くときに、久石譲がクラシックの指揮者デビューを果たした記念すべきアルバム「JOE HISAISHI CLASSICS 1 ドヴォルザーク 交響曲第9番 《新世界より》/シューベルト 交響曲第7番 《未完成》」のライヴ録音の際に語った「ドヴォルザークはチェコの偉大な作曲家だ。彼は今でいう最も優れたキャッチーな作曲家だろう。スコアを追っていくとよくわかるのだが、とても緻密に、色々なモチーフ(音型)を散りばめ、沢山構築している。ところが、幸か不幸か、あまりにもメロディがキャッチーすぎるため、我々はその裏側に隠された彼の緻密さになかなか気づくことができないのである」という言葉の”ドヴォルザーク”をそのまま”久石譲”に置きかえると、久石ワールドを聴き手に十分に堪能させながら新しいアプローチや様々な仕掛けをしているこのアルバムの”凄さ”がわかることをつけ加えておきたい。「シューベルトの一番わかりやすい天才的な部分は、ハーモニー感覚の凄さだ。普通は、ある調からある調に移るには正当な手続きを踏んで新たなキーに転調するように書くのだが、シューベルトはたった一音で次の調に自然に転調してしまう。これほどの天才は他に見たことがない」という言葉もそこにつながっていく。

その音楽性の幅広さと完成度の高さ。僕は今回の『Melodyphony』を初めて聴いた時、一体この人はどこまで飛翔していくのだろうかと思わされたが、「サントリー 1万人の第九」の25周年記念序曲として2007年に作曲された「Orbis」はメロディとシンフォニー・オーケストラの合体に、さらに現代音楽の要素が大胆に盛り込まれた久石譲ならではの作品に仕上がっていることも最後につけ加えておきたい。

『ミニマリズム』にも参加していたロンドンでは由緒ある合唱団、London Voicesとパイプオルガンを加えて出来上がった華やかな祝典序曲。ラテン語の”Orbis”には”環”や”輪”などの意味もあり、本人は生命の起源となる水の小さな水泡が繋がって、やがて大きな環となるようなイメージで作ったようだが、それはミニマル・ミュージックに対する久石譲の思いそのものでもあり、もし図形で表すとすると、この曲が『ミニマリズム』をつなぐポイントになると思う。

久石譲自身が『Melodyphony』の核になっていると感じているというのも納得できる。DVDの中で久石譲は「ひとつひとつの仕事を区切りにしながら挑戦して解消し、次のことを考えていく・・・」という言葉も口にしていたが、『Melodyphony』はその姿勢が見事に反映したアルバムであり、これからもその歩みは決して止まることがないだろう。その歩みを追いかけることは今や僕の楽しみになっている。

2010年夏 箱根にて 立川直樹

(CDライナーノーツより 抜粋転載)

 

『ミニマリズム』 『メロディフォニー』 久石譲インタビュー内容(Web/DVD収録)

音楽業界では、世界で最高峰の機材を英国人たちが作っているんですよ。「ロード・オブ・ザ・リング」も「ハリー・ポッター」も、サウンド・トラックはロンドンで録音していますよね。ハリウッド映画だって、一番大事な音楽はほとんどロンドンで録ってるんですよ。すると、やはりここは世界で一番良い音楽環境ということになる。ロンドンでのレコーディングを続けていると、そのレベルを絶えず意識させられます。

ロンドン交響楽団とは、15年くらい前に、「水の旅人 侍KIDS」という映画のテーマ音楽を録ったんですね。また昨年には、前作となる「ミニマリズム」の録音も行いました。日本以外で音楽を表現できる場として、ロンドンでの活動がまた復活したというのがうれしいですね。

私には、大きな夢が2つありました。一つは、芸術家としての自分が追い求める、ミニマル・ミュージックをテーマとしたアルバムを完成させること。この目標は、昨年の時点で「ミニマリズム」というアルバムを完成させることで実現しました。ただそれだけではなくてもう一つ、これもやはり自分が長年続けてきた映画音楽やテレビ・ドラマのサウンド・トラックに代表されるメロディアスな音楽を、オーケストラを使って録りたいと去年からずっと思っていたんですよ。つまり、作家としての自分と、メロディー・メーカーとしての自分の両方を生かしたいというか。去年の「ミニマリズム」の録音時に書いていたノートを引っくり返してみると、両方の種類の音楽についてのメモを残しているんですね。年が明けて考えてみて、やはりこれは両方あってこそ自分の姿ではないか、と強く思うようになって。「ミニマリズム」と「メロディーフォニー」の2つを持って、自分をすべて表現できるという気持ちです。

レコーディングでこちらに来る直前まで編曲作業などを行っていたので、ピアノを触る時間が1日に1時間もなかったんですよ。ピアノは間違いなく練習量が比例してくる楽器ですから。通常だと1日7、8時間は練習するのに、今回は1時間くらいしかできなかった。

3日間にわたってオーケストラとのレコーディングがあり、その後に迎えたピアノ演奏の収録の日は、朝から別の録音作業を始めて、午後は50人くらいのコーラスを指揮して、疲労もピーク。それからピアノの演奏をするのは少し厳しいんじゃないかと思っていたんですが、その中でも実は起きていたんで。限界を超えているときは、変に休まない。確か夜中に4時間くらいぶっ通しでピアノを弾いてました。疲れているときは、ピークを超したらひたすら集中する。休まずにもうひたすらそこに向かったのが、良い結果になったのではないかと思いますね。

もっと完成されたものを考えたい、もっとレベルの高いものをという思いはいつも根底にはあるのですが、結局はディテールの積み重ねなんですよ。一つひとつの仕事を区切りにしながら、一個一個調整をしていく。指揮者としてもきちんとしたものができるようになりたい。もちろん作曲家としても。そういうようなことを僕は考えちゃいますね。

Blog. 久石譲 「ミニマリズム」「メロディフォニー」 Webインタビュー内容

 

【楽曲解説】

1. Water Traveller
1993年、大林宣彦監督の映画『水の旅人 ~侍KIDS』よりメインテーマ。身長約17センチの水の精霊と主人公の少年の交流を描いた末谷真澄原作の『雨の旅人』を映画化したSFXファンタジー映画。サウンドトラック収録も、ロンドン交響楽団の演奏で行った。当時のオリジナル楽譜のホルン6本の編成を甦らせ、壮大な世界観が見事再現されている。

2. Oriental Wind
2004年より放映中のサントリー緑茶・京都福寿園「伊右衛門」CM曲。今やお茶の間でお馴染みとなった美しい旋律は、黄河のようなアジアの大河の悠々とした流れをイメージしてつくられた。朗々とした格調高い優雅なメロディの裏では、繊細なリズムや激しいパッセージの複雑な内声部が繰り広げられ、より深い味わいを加えている。

3. Kiki’s Delivery Service
1989年、宮崎駿監督の映画『魔女の宅急便』より。「海の見える街」を本アルバムのために、ピアノとヴァイオリン、弦楽オーケストラを主体に書き下ろした楽曲。愛くるしさいっぱいの軽やかなリズムと可憐なメロディ、中間部の大人びたジャジーな曲調は、大人へと成長をとげる魔女の子・キキのように、様々な表情を魅せてくれる。

4. Saka No Ue No Kumo
NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』より。司馬遼太郎の同名長編小説をもとに映像化され、2009年より足掛け3年間にわたり放映。明治時代の過渡期を生きた人々を描く壮大なスケールの物語。重厚なオーケストレーションは日本の五音階と西洋のモダンな音階を融合させ、独自の世界観を引き出している。”凛として立つ”美しき姿をイメージしたというメインテーマ「Stand Alone」を含む、「時代の風」「蹉跌」「戦争の悲劇」の4つのテーマを組曲形式で再構築した。

5. Departures
2008年、米国アカデミー賞外国語映画賞に輝いた滝田洋二郎監督作品、映画『おくりびと』のサウンドトラックより、メインテーマを含む複数の主要テーマを組曲として書き直した。元チェリストの主人公が納棺師になる設定から、チェロをメインに据える楽曲の構想が練られた。楽器の特性を最大限に活かしたメロディは、時には優しく、時には激しく、時折コミカルさも覗かせながら、心の揺れ動きを表現している。

6. Summer
1999年に公開された北野武監督の映画『菊次郎の夏』より、メインテーマ「Summer」。軽快な弦のピッツィカートからはじまる冒頭部と、中間部の美しいピアノの旋律が印象的な楽曲は、ひと夏の冒険を描いた映画の世界を爽やかにうたいあげている。トヨタ「カローラ」のCMでも起用された楽曲。

7. Orbis
「サントリー 1万人の第九」の25周年記念委嘱曲として2007年制作。初演時には、大阪城ホールとサントリーホールとを衛星中継で同時演奏し話題を呼んだ。パイプオルガンとオーケストラ、1万人の合唱から成る華やかな祝典序曲を、フルオーケストラ用に書き直した。散文的なキーワードを組み込んだ歌詞を世界有数の合唱団London Voicesが歌う。生命の起源となる水の小さな水泡が繋がって、やがて大きな環となる・・・。Orbisとはラテン語で「環」「輪」などの意。

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「Orbis」 ~混声合唱、オルガンとオーケストラのための~
曲名はラテン語で”環”や”繋がり”を意味します。2007年の「サントリー1万人の第九」のために作曲した序曲で、サントリーホールのパイプオルガンと大阪城ホールを二元中継で”繋ぐ”という発想から生まれました。祝典序曲的な華やかな性格と、水面に落ちた水滴が波紋の”環”を広げていくようなイメージを意識しながら作曲しています。歌詞に関しては、ベートーヴェンの《第九》と同じように、いくつかのキーワードとなる言葉を配置し、その言葉の持つアクセントが音楽的要素として器楽の中でどこまで利用できるか、という点に比重を置きました。”声楽曲”のように歌詞の意味内容を深く追求していく音楽とは異なります。言葉として選んだ「レティーシア/歓喜」や「パラディウス/天国」といったラテン語は、結果的にベートーヴェンが《第九》のために選んだ歌詞と近い内容になっていますね。作曲の発想としては、音楽をフレーズごとに組み立てていくのではなく、拍が1拍ずつズレていくミニマル・ミュージックの手法を用いているので、演奏が大変難しい作品です。

「Orbis」ラテン語のキーワード

・Orbis = 環 ・Laetitia = 喜び ・Anima = 魂 ・Sonus, Sonitus =音 ・Paradisus = 天国
・Jubilatio = 歓喜 ・Sol = 太陽 ・Rosa = 薔薇 ・Aqua = 水 ・Caritas, Fraternitatis = 兄弟愛
・Mundus = 世界 ・Victoria = 勝利 ・Amicus = 友人

Blog. 「久石譲 第九スペシャル」 コンサート・プログラムより
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8. One Summer’s Day
2001年公開、宮崎駿監督の映画『千と千尋の神隠し』より「あの夏へ」。神々の住まう不思議な世界に迷い込んでしまった10歳の少女・千尋が、湯屋「油屋」で下働きしながら次第に生きる力を取り戻していく物語。郷愁をかきたてる美しいメロディと、ピアノをフィーチャーした繊細なオーケストレーションは秀逸。

9. My Neighbour TOTORO
1988年の宮崎駿監督作品、映画『となりのトトロ』より、エンディングテーマ曲「となりのトトロ」。父親とともに郊外に引っ越してきたサツキとメイの幼い姉妹が、森で不思議な生き物・トトロと出会う。心躍るファンタジーの要素をふんだんに取り入れたアレンジとシンプルなメロディは、久石譲の代表作の一つ。

(【楽曲解説】 ~CDライナーノーツより)

 

【補足】
DVD収録内容について

本作品より選ばれた楽曲のレコーディング映像を編集したものである。またドキュメンタリーなどとは違い、レコーディング映像中心で楽曲も省略されたり途中で終わることなく一曲通して聴くことができるのもありがたい。CDと同じように音楽だけが響いている。CD同様に楽曲を楽しみ、かつパートごとに映し出される楽器や奏者を映像で楽しむことによって、臨場感や緊張感が伝わりより深く作品を味わうことができる。

インタビューに関しては本作品ライナーノーツでの楽曲解説や久石譲インタビューと重複内容も多く、言葉として文章として参考にされたい。

また久石譲インタビューの前に、レコーディング・エンジニアであるピーター・コービンのインタビューも収められている。ここではその内容を一部抜粋して紹介する。海外からみた久石譲、世界屈指の一流音楽家たちからみた久石譲を垣間見ることができる貴重な証言である。

 

「彼は完成された音楽家です。作曲家としてももちろん尊敬していますし、オーケストラにとっては、実際に作曲する指揮者と共に演奏する事が最も幸せな事なのです。言語の違いはあるけれど、コミュニケーションも問題なく、オーケストラの中でも尊敬されています。自分の音楽を誰よりも把握しているし、具体的な指揮をしているからです。リズムとメロディーを通じて、明確な指揮をしていると感じます。」

「去年収録した『ミニマリズム』と今回のアルバムの違いは、前回はリズムが特徴的でしたが、今回のアルバムではメロディーが中心になっています。楽曲から映像が想像できる美しいメロディーが存在しています。映像的なメロディーは、彼の卓越した感性と技術から成るものです。メロディーとリズムを絶妙に組み合わせるのが上手いのです。」

(ピーター・コービン DVD収録インタビューより 書き起こし)

 

久石譲 『メロディフォニー』

1. Water Traveller (映画『水の旅人』メインテーマ)
2. Oriental Wind (サントリー緑茶「伊右衛門」CM)
3. Kiki’s Delivery Service (映画『魔女の宅急便』より「海の見える街」)
4. Saka No Ue No Kumo (NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』より)
5. Departures (映画『おくりびと』より)
6. Summer (映画『菊次郎の夏』メインテーマ / トヨタ・カローラCM)
7. Orbis (サントリー「1万人の第九」25回記念序曲 委嘱作品)
8. One Summer’s Day (映画『千と千尋の神隠し』より「あの夏へ」)
9. My Neighbor TOTORO (映画『となりのトトロ』より「となりのトトロ」)

指揮・ピアノ:久石譲
演奏:ロンドン交響楽団 London Symphony Orchestra
コーラス:ロンドン・ヴォイシズ London Voices 7.

録音:アビーロード・スタジオ(ロンドン・イギリス)

 

初回限定盤
レコーディング映像とインタビューを収録したDVD付豪華デジパック仕様

《初回限定盤DVD》 (メロディフォニー映像)
Melodyphony Recording Video
・Departures
・One Summer’s Day
・Kiki’s Delivery Service
・Interview

 

【初回限定盤A】
CD2+DVD
CD ~「Melodyphony」 / 「Minima_Rhythm」
DVD ~「Melodyphony映像」「Minima_Rhythm映像」
※「Minima_Rhythm」CDおよびDVD内容は同作品初回限定盤に同じ
スペシャル・ブックレット

【初回限定盤B】
CD+DVD
CD ~「Melodyphony」
DVD ~「Melodyphony映像」「Minima_Rhythm映像」
※「Minima_Rhythm」CDおよびDVD内容は同作品初回限定盤に同じ

【通常版】
CD
CD ~「Melodyphony」

 

Score. 久石譲 「メロディフォニー -オリジナル・スコア-」 [スコア]
久石譲が全曲を編曲、監修した作曲家自身によるオフィシャルスコア。久石の映画音楽の楽譜がオーケストラ・スコアの形で公表されることは、これまでほとんどありませんでした。久石サウンドの秘密を探る絶好の楽譜となっています。

 

Disc. 久石譲 『久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~』

久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~ DVD

2009年7月3日 DVD / Blu-ray発売

~ナウシカからポニョまで 宮崎アニメと共に歩んだ25年間~
久石譲×宮崎駿 25年の軌跡のコンサート
『久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~』

 

2008年8月4日,5日 日本武道館

作曲・指揮・ピアノ:久石譲
管弦楽:新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ
合唱:栗友会合唱団、東京少年少女合唱隊、一般公募コーラス隊
マーチングバンド:京華女子中学高等学校マーチングバンド部、中央区立日本橋中学校吹奏楽部、
川崎市立橘高等学校吹奏楽部、川崎市立高津高等学校吹奏楽部
ゲストヴォーカリスト:藤岡藤巻と大橋のぞみ、林正子、平原綾香、麻衣

 

2008年夏、日本武道館で開催されたコンサート「久石譲 in 武道館」を全曲収録。
久石譲が音楽を手がけた、宮崎駿監督作品『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』『となりのトトロ』『魔女の宅急便』『紅の豚』『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』『ハウルの動く城』『崖の上のポニョ』の名曲30曲余りを、アンコールまで含めて全曲収録。

200名の大オーケストラ、800人の大合唱団、160人のマーチングバンド、そして素晴らしいゲストヴォーカリストと、総勢1160人もの超大規模編成による演奏と、巨大スクリーンに映し出される宮崎アニメが織りなすスペクタクルな世界を完全収録。

 

久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~ DVD

 

曲目

『風の谷のナウシカ』
オープニング「風の伝説」
ナウシカ・レクイエム
メーヴェとコルベットの戦い
ナウシカ・レクイエム(遠い日々)
鳥の人

『もののけ姫』
アシタカせっ記
タタリ神
もののけ姫

『魔女の宅急便』
海の見える街
傷心のキキ
かあさんのホウキ

『崖の上のポニョ』
深海牧場
海のおかあさん
波の魚のポニョ
フジモトのテーマ
ひまわりの家の輪舞曲(ロンド)
母の愛
いもうと達の活躍〜母と海の讃歌
崖の上のポニョ

『天空の城ラピュタ』
ハトと少年
君をのせて
大樹

『紅の豚』
帰らざる日々

『ハウルの動く城』
Symphonic Variation “Merry-go-round”(交響変奏曲「人生のメリーゴーランド」)
Cave of Mind
“Merry-go-round” (人生のメリーゴーランド)

『千と千尋の神隠し』
あの夏へ vocal version 「いのちの名前」
ふたたび

『となりのトトロ』
風のとおり道
さんぽ
となりのトトロ

—–アンコール—–
Madness (「紅の豚」より)
アシタカとサン (「もののけ姫」より)

 

構成・演出:久石譲

except アレンジ:
長生 淳 (「天空の城ラピュタ」「ふたたび」)
山下康介 (「崖の上のポニョ」)
宮野幸子 (「魔女の宅急便」)

 

【特典映像】
●メイキング
コンサートの舞台裏にカメラが密着。リハーサル風景などを久石譲ほかのインタビューを交えて綴る。

●スクリーン・アニメ
武道館の巨大スクリーンに映し出された宮崎アニメの名シーン。その”スクリーン・アニメ”のうち5作品7曲分をコンサートの演奏に合わせてそのまま収録。

風の谷のナウシカ・・・メーヴェとコルベットの戦い~ナウシカ・レクイエム(遠い日々)
もののけ姫・・・タタリ神
魔女の宅急便・・・傷心のキキ~かあさんのホウキ
紅の豚・・・帰らざる日々
ハウルの動く城・・・Cave of Mind

 

制作:NHKエンタープライズ

Disc. オムニバス 『スタジオジブリの歌』

スタジオジブリの歌

2008年11月26日 CD発売

「風の谷のナウシカ」から「崖の上のポニョ」まで
スタジオジブリ19作品の主題歌・挿入歌全26曲を網羅した主題歌全集

スタジオジブリの歌

ディスク:1
1. 風の谷のナウシカ(風の谷のナウシカ) / 安田成美
2. 君をのせて(天空の城ラピュタ) / 井上あずみ
3. さんぽ(となりのトトロ) / 井上あずみ
4. となりのトトロ(となりのトトロ) / 井上あずみ
5. はにゅうの宿(火垂るの墓) / アメリータ・ガリ=クルチ
6. ルージュの伝言(魔女の宅急便) / 荒井由実
7. やさしさに包まれたなら(魔女の宅急便) / 荒井由実
8. 愛は花、君はその種子(おもひでぽろぽろ) / 都はるみ
9. さくらんぼの実る頃(紅の豚) / 加藤登紀子
10. 時には昔の話を(紅の豚) / 加藤登紀子
11. 海になれたら(海がきこえる) / 坂本洋子
12. アジアのこの街で(平成狸合戦ぽんぽこ) / 上々颱風
13. いつでも誰かが(平成狸合戦ぽんぽこ) / 上々颱風

ディスク:2
1. カントリー・ロード(耳をすませば) / 本名陽子
2. On Your Mark (On Your Mark) / CHAGE&ASKA
3. もののけ姫(もののけ姫) / 米良美一
4. ケ・セラ・セラ(ホーホケキョ となりの山田くん) / 山田家の人々ほか
5. ひとりぼっちはやめた(ホーホケキョ となりの山田くん) / 矢野顕子
6. いつも何度でも(千と千尋の神隠し) / 木村弓
7. 風になる(猫の恩返し) / つじあやの
8. No Woman, No Cry(ギブリーズepisode2) / Tina
9. 世界の約束(ハウルの動く城) / 倍賞千恵子
10. テルーの唄(ゲド戦記) / 手嶌葵
11. 時の歌(ゲド戦記) / 手嶌葵
12. 海のおかあさん(崖の上のポニョ)/ 林正子
13. 崖の上のポニョ(崖の上のポニョ / 藤岡藤巻と大橋のぞみ

 

Disc. オムニバス 『スタジオジブリの歌 オルゴール』

スタジオジブリの歌 オルゴール

2008年11月26日 CD発売

「風の谷のナウシカ」から「崖の上のポニョ」までスタジオジブリ19作品の
主題歌・挿入歌全26曲を網羅したオルゴール集

スタジオジブリの歌 オルゴール

ディスク:1
1. 風の谷のナウシカ::風の谷のナウシカ
2. 天空の城ラピュタ::君をのせて
3. となりのトトロ::さんぽ
4. となりのトトロ::となりのトトロ
5. 火垂るの墓::はにゅうの宿
6. 魔女の宅急便::ルージュの伝言
7. 魔女の宅急便::やさしさに包まれたなら
8. おもひでぽろぽろ::愛は花、君はその種子
9. 紅の豚::さくらんぼの実る頃
10. 紅の豚::時には昔の話を
11. 海がきこえる::海になれたら
12. 平成狸合戦ぽんぽこ::アジアのこの街で
13. 平成狸合戦ぽんぽこ::いつでも誰かが

ディスク:2
1. 耳をすませば::カントリー・ロード
2. On Your Mark::On Your Mark
3. もののけ姫::もののけ姫
4. ホーホケキョ となりの山田くん::ケ・セラ・セラ
5. ホーホケキョ となりの山田くん::ひとりぼっちはやめた
6. 千と千尋の神隠し::いつも何度でも
7. 猫の恩返し::風になる
8. ギブリーズ episode2::No Woman,No Cry
9. ハウルの動く城::世界の約束
10. ゲド戦記::テルーの唄
11. ゲド戦記::時の歌
12. 崖の上のポニョ::海のおかあさん
13. 崖の上のポニョ::崖の上のポニョ

 

Disc. 久石譲 『Piano Stories Best ’88-’08』

久石譲 『Piano Stories Best ’88-’08』

2008年4月16日 CD発売

’88年に第一弾をリリースして以来 Piano Stories シリーズの4枚から、久石譲が自らセレクトした本格ベストアルバム。

映画、CM、ジブリ作品等に使われた名曲の数々がピアノ&ストリングスによるアレンジでより美しく輝きを放つ。久石譲の入門編としても親しみやすく、ファンの間でも名盤として評価の高い作品。

 

久石譲 『PIANO STORIES BEST ’88-’08』 に寄せて

この『Piano Stories Best ’88-’08』に収録された楽曲は、久石が折に触れて発表してきたソロ・アルバム・シリーズ『PIANO STORIES』全4枚の中からセレクションされた楽曲と、ピアノ・ソロとしては今回が初収録となる未発表音源「人生のメリーゴーランド」を加えた構成となっている。1枚目のアルバム『Piano Stories』が発表されたのが1988年だから、今年でちょうど20年。その20年という時間の流れの中で、久石という音楽家が歩んできた「Histories=歴史」つまり「His Story=彼(久石)の物語」が語られてきたのであり、また、彼の音楽に接し続けてきた我々自身の「歴史=物語」が語られてきたわけである。

このアルバムに収録されている楽曲の多くは、これまで久石が手がけてきた映像音楽(映画音楽やCM、テレビ音楽)の代表作を中心に、久石自身がソロ・アルバム用にアレンジし直した=ピアノで語り直したものである。だからといって、これが単なる久石の「映像音楽集」というかというと、実はそうではない。いささか逆説めいた言い方になるが、久石の音楽は映像音楽であって、映像音楽ではないのである。このことを、少し細かく見てみたい。

宮崎作品での方法論が典型なのだが、久石は具体的な映像を見る前から音楽的構想を組み立てていく作曲家である。誤解を恐れずに書けば、久石は特定の”映像”に音楽を付けているわけではない。「僕の映画音楽の作り方というのは、監督の作りたい世界を根底に置いて、そこからイメージを組み立てていく」という久石の言葉に端的に表れているように、あくまでも久石は映画やテレビ番組の”世界観”に音楽を付けているのである。だからこそ、作品の世界観を出発点として生まれた音楽を、繰り返しアレンジする自由も生まれてくる。

久石にとって、映像作品の完成は、即、音楽の完成とはならない。現代音楽の用語を用いれば、久石の映像音楽は常に”ワーク・イン・プログレス”なのである。ソロ・アルバム『PIANO STORIES』のシリーズは、ある映像の世界観をきっかけにして生まれた久石の音楽を「ピアノで語り直した物語」なのだ。

言うまでもなく、ピアノは作曲家・久石譲のアイデンティティと密接に結びついている、きわめて特権的な楽器である。例えば『風の谷のナウシカ』のメインテーマとして知られる《風の伝説》、すなわち[04]「Fantasia (for NAUSICAÄ)」を聴いてみていただきたい。ここに収められたのはピアノ・ソロ・ヴァージョンによる演奏だが、映画本編のサウンドトラック盤の演奏でも、あるいは映画完成前に作られたイメージアルバムの演奏でも、《風の伝説》の主題は常にピアノで演奏されている。つまり、『ナウシカ』という作品の世界観-主人公ナウシカの凛とした面持ち、彼女の勇気ある姿勢など-の核心(ハート)を音楽で表現する時に、ピアノに自己を託す作曲家であることを意味する。ピアノという楽器は、久石自身の核心(ハート)でもあるのだ。

そのことを非常に象徴的に表した例として、もうひとつ、『ハウルの動く城』のメインテーマである[13]「人生のメリーゴーランド」を挙げてみよう。本編をご覧になったリスナーならご存知だと思うが、『ハウルの動く城』ではほぼ全編にわたり《人生のメリーゴーランド》の主題が繰り返し登場する(スコア全体が一種の変奏曲と言っても過言ではない)。本編の冒頭シーン、《人生のメリーゴーランド》は久石のピアノ・ソロで2回繰り返して演奏されるが、そのシーンの登場人物の会話から、我々観客はハウルが他人の心臓を取ってしまう魔法使いであること、すなわちハウルにとって心臓(ハート)が重要であることを知る。映画の中で最後にピアノ・ソロが登場するのは、ハウルが心臓(ハート)を取り戻す場面であり、そこで演奏される楽曲は本編冒頭の音楽と全く同じである(変奏曲の最後に主題が回帰する手法に似ている)。つまり《人生のメリーゴーランド》が流れる冒頭シーンは、物語的にも音楽的にも”主題提示部”の役割を果たしており、『ハウル』本編で展開される物語と音楽は、この主題を用いた”変奏曲”に他ならない。こうした作曲手法は、バッハやベートーヴェンがピアノ(鍵盤楽器)のために書いた変奏曲の方法論と、実は何ら変わるところがないのだ。さらに『ハウル』全体の音楽を注意深く聴いてみると、《人生のメリーゴーランド》の演奏にピアノが使用される箇所は、ヒロインのソフィーがハウルに抱く恋愛感情を表現した場面に限定されていることがわかる。《人生のメリーゴーランド》は、ピアノという楽器で演奏されることで”愛のテーマ”の役割も果たしているわけだ。ハウルがソフィーの恋愛感情によって心臓(ハート)を取り戻すこと。これこそが『ハウルの動く城』という作品の核心(ハート)的テーマに他ならない。その最も重要なテーマを、久石はピアノという楽器に託していたのである。

このような奇跡的な作曲を可能にしたのは、繰り返すまでもないが、ピアノという楽器が、久石のアイデンティティの根幹に関わる核心(ハート)的楽器だからである。そうしたことを頭の片隅に置きながら、この『Piano Stories Best ’88-’08』に耳を傾けていただきたい。久石譲という音楽家の核心(ハート)が、彼のピアノ演奏同様、いささかも曇ることのないタッチで、明確に語られていることに気づくはずだ。

2008年3月 前島秀国

(寄稿文 CDライナーノーツより)

 

【楽曲解説】

01. The Wind of Life
『PIANO STORIES II』に収録。ポップス・メロディの作曲家としても、久石が第一線の才能を有していることを示した好例である。

02. Ikaros -2008 Remix-
『PIANO STORIES 4』に収録。ブラームスのピアノ音楽に通じる重厚さと、躍動感溢れるミニマルのパルスの対比が絶妙である。2008年再ミックス音源。

03. HANA-BI
『PIANO STORIES III』に収録。北野武監督『HANA-BI』メインテーマ。ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞など、この作品と縁の深いイタリアで録音された演奏である。イタリアならではのストリングスの色合いが、楽曲の風格を高めることに貢献している。

04. Fantasia (for NAUSICAÄ)
『Piano Stories』に収録。宮崎駿監督『風の谷のナウシカ』のメインテーマ《風の伝説》に基づく。

05. Oriental Wind -2008 Remix-
『PIANO STORIES 4』に収録。サントリー緑茶「伊右衛門」CMソング。”和”のテイストを基調としながら、久石自身のルーツであるミニマル的な要素や新ウィーン楽派風のストリングス・アレンジも顔を覗かせる。2008年再ミックス音源。

06. Innocent
『Piano Stories』に収録。宮崎駿監督『天空の城ラピュタ』のメインテーマ《空から降ってきた少女》のソロ・ピアノ・ヴァージョン。

07. Angel Springs
『PIANO STORIES II』に収録。サントリー「山崎」CMソング。冒頭のチェロとピアノの絡みが美しい。希望に満ち溢れた楽曲。

08. il porco rosso
『PIANO STORIES III』に収録。宮崎駿監督『紅の豚』メインテーマで、同映画のサウンドトラック盤に収録された《帰らざる日々》をさらにジャジーにアレンジしたもの。作品の舞台はアドリア海周辺という設定だったが、そのアドリア海に面したイタリアでの録音である。

09. The Wind Forest
『Piano Stories』に収録。宮崎駿監督『となりのトトロ』の《風のとおり道》が原曲。冒頭のミニマル風の音型が小さき生命の存在をユーモラスに表現し、東洋的なメロディが森の大らかな生命を謳い上げる。

10. Cinema Nostalgia
『PIANO STORIES III』に収録。日本テレビ系「金曜ロードショー」オープニングテーマ。久石の敬愛するニーノ・ロータにオマージュを捧げたような、クラシカルな佇まいが美しい。

11. Kids Return
『PIANO STORIES II』に収録。北野武監督『キッズ・リターン』メインテーマをピアノ+弦楽四重奏、すなわちピアノ五重奏曲の形で演奏したもの。

12. A Summer’s Day
『Piano Stories』に収録。ミニマル・ミュージックの先駆者的作曲家として知られる、エリック・サティの楽曲を彷彿とさせるピアノ曲。

13. 人生のメリーゴーランド -Piano Solo Ver.-
『PIANO STORIES 4』にオーケストラ伴奏のアレンジ版が収録されていたが、ここに聴かれるピアノ・ソロ・ヴァージョンはそれとは別に収録されたもので、本盤が初出となる。宮崎駿監督『ハウルの動く城』のメインテーマ。

text by 前島秀国

(楽曲解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

この作品全体を通してシンプルなアコースティック感が心地いい。エンターテイメント音楽としての大衆性と芸術性を両立させた音楽たち。どの曲も映画やCMから解放されたひとつの音楽作品としてリアレンジされ成立している。

(4) (6) (9) のような「ナウシカ」「ラピュタ」「トトロ」の壮大なオーケストラの世界をピアノひとつでドラマチックに色鮮やかに表現している。

一方で(8)の「紅の豚」では、ピアノ&ストリングにトランペット・ベース・ドラムが加わり、よりJAZZYに、大人の雰囲気たっぷりにしっとりと聴かせている。

北野武監督作品の(3) (11)でも、映画スクリーンの枠から独立した、アコースティックサウンドでありながら、よりエモーショナルでパッション豊かな演奏が。その他CM音楽たちも、一度は聴いたことがある印象的なメロディー。

「PIANO STORIES 4」に収録されていた(2) (5) はリミックスされ、より音の広がりと深みがある。

本作品のためのだけに収録されたボーナス・トラックとも言える、未発表音源(13)の「ハウル」は、ピアノ・ソロでの華やかで上品なワルツが舞う。

参考までに、本作品に収録されたオリジナル作品を補足。入門編として手にとった方に、次の作品に触れ音の世界を広げるきっかけになれれば。

「Piano Stories」 ・・ (4) (6) (9) (12)
「Piano Stories II ~The Wind of Life」 ・・ (1) (7) (11)
「NOSTALGIA ~PIANO STORIES III~」 ・・ (3) (8) (10)
「FREEDOM PIANO STORIES 4」 ・・ (2) (5)

 

久石譲 『Piano Stories Best ’88-’08』

1. The Wind of Life
2. Ikaros -2008 Remix- (東ハト「キャラメルコーン」CMソング)
3. HANA-BI (映画『HANA-BI』より)
4. Fantasia (for NAUSICAÄ) (映画『風の谷のナウシカ』より)
5. Oriental Wind -2008 Remix- (サントリー緑茶「伊右衛門」CMソング)
6. Innocent (映画『天空の城ラピュタ』より)
7. Angel Springs (サントリー「山崎」CMソング)
8. il porco rosso (映画『紅の豚』より)
9. The Wind Forest (映画『となりのトトロ』より)
10. Cinema Nostalgia (日本テレビ系「金曜ロードショー」オープニングテーマ)
11. Kids Return (映画『キッズ・リターン』より)
12. A Summer’s Day
13. 人生のメリーゴーランド -Piano Solo Ver.- (映画『ハウルの動く城』より) ※未発表音源

All Music Composed , Arranged and Produced by Joe Hisaishi

Piano by Joe Hisaishi (except Track-08 Backing Piano by Masahiro Sayama)