Info. 2002/02/01 「淀川長治賞」「毎日映画コンクール音楽賞」受賞

<淀川長治賞を授賞!>
数々の大ヒットをはじめ、今日までに40本以上の映画音楽を手掛けてきた久石譲。最近では映画「Quartet」で監督デビューを果たしただけでなく、フランス映画「リトル・トム」(仮題)の音楽監督を務めるなど、多彩な活動が注目を浴びています。永きにわたる日本映画界への貢献とその業績が高く評価され、この度「2002年淀川長治賞」を授賞しました。これもひとえに数多くの方々の熱い御声援のおかげです。まことにありがとうございました。(詳しくは2月21日発売「ロードショー」4月号を御覧下さい) “Info. 2002/02/01 「淀川長治賞」「毎日映画コンクール音楽賞」受賞” の続きを読む

Info. 2002/01/12 [雑誌] 「PRESIDENT プレジデント 2月4日号」掲載

数多くのビジネスマンに愛読されているこの雑誌。その中の「紳士のこだわり」コーナーに久石さんが登場します。今回はチョッと変わった趣向を取り入れた久石さん、ファンの方々には必見ですよ!
雑誌名  「プレジデント」2002 2月4日号
発行所  プレジデント社
発売日  2002 1月12日(土)
定価   550円

Disc. 久石譲 『JOE HISAISHI COMPLETE Best Selection』

久石譲 JOE HISAISHI COMPLETE Best Selection

2001年12月12日 CD発売 PICL-1235
2006年3月22日 CD発売 GNCL-1054

 

このベスト盤は、『地上の楽園』『MELODY Blvd.』といったソロ・アルバムのナンバーから、映画『青春デンデケデケデケ』『魔女の宅急便』『紅の豚』『ふたり』やNHK朝の連続テレビ小説『ぴあの』のメイン・テーマまでを幅広く収録した決定版。ピアノを主体にした流麗で美しい音世界に心ゆくまで浸ることができる。

 

 

オリジナル収録アルバム

『ぴあの オリジナル・サウンドトラック Volume 1』 (1,5,15)
『ぴあの オリジナル・サウンドトラック Volume 2』 (16)
『MELODY Blvd.』 (2,3,6,8,11)
『地上の楽園』 (4,7,9,10,12,13,14)

 

 

久石譲 JOE HISAISHI COMPLETE Best Selection

1. Forenoon ~夜明け
2. Here We Are ~青春のモニュメント (映画「青春デンデケデケデケ」)
3. I Believe In You ~あなたになら (映画「水の旅人」)
4. さくらが咲いたよ
5. Path to the Lights ~希望への道
6. Hush ~木洩れ陽の路地 (映画「魔女の宅急便」)
7. HOPE
8. Two Of Us ~草の想い (映画「ふたり」)
9. Lost Paradise
10. Lonely Dreamer ~鳥のように (映画「この愛の物語」)
11. Rosso Adriatico ~真紅の翼 (映画「紅の豚」)
12. Piano (Re-Mix) ~ぴあの 「NHK朝の連続テレビ小説「ぴあの」)
13. 季節風 (Mistral)
14. The Dawn
15. Closed Fist ~閉じられた手
16. Broken Whistle ~拾いもの

All composed and arranged by Joe Hisaishi

 

Score. 『久石譲ライブラリー QUARTET カルテット ピアノ・ソロ』

2001年10月23日 発売

久石譲初の監督映画作品『カルテット』のサントラの中から、メインテーマをモチーフにしたソロ曲「…for Piano」と「Lover’s Rain」の2曲を所収。

 

久石譲オフィシャルスコア「弦楽四重奏曲集 カルテット」 [弦楽四重奏]が同時期に同出版社より発行されているので紹介しているが、本ピアノ譜は、作曲:久石譲としか記載がなく、監修・編曲に携わっているか不明ではある。

 

 

久石譲ライブラリー QUARTET カルテット ピアノ・ソロ

・・・・for Piano
Lover’s Rain

判型/頁 : 菊倍判/8頁
定価:500円+税
発行:全音楽譜出版社

 

Info. 2001/10/20 [楽譜] 久石譲 「カルテット」 オリジナル・スコア 発売

久石譲 カルテット オリジナルスコア

待望の完全オリジナル・スコア。オリジナルならではのプラスαが随所に盛り込まれています。
演奏する方も、そうでない方もファンなら絶対持っていたい1冊です。
久石譲の楽曲メモ&メインテーマの久石譲直筆スコア、撮影メモを一挙掲載。

“Info. 2001/10/20 [楽譜] 久石譲 「カルテット」 オリジナル・スコア 発売” の続きを読む

Score. 久石譲 「弦楽四重奏曲集 カルテット -オリジナル・スコア-」 [弦楽四重奏]

久石譲 カルテット オリジナルスコア

2001年10月5日 発行

待望の完全オリジナル・スコア。オリジナルならではのプラスαが随所に盛り込まれています。演奏する方も、そうでない方もファンなら絶対持っていたい1冊です。久石譲の楽曲メモ&メインテーマの久石譲直筆スコア、撮影メモを一挙掲載。

今日の日本映画を代表する音楽監督である久石譲がついに映画監督に挑戦した。タイトルは「Quartet カルテット」。弦楽四重奏団を組んだ4人の若者の挫折と再起、愛と友情を描くさわやかな青春ドラマである。本書は、映画の中で主人公たちが演奏する曲のオリジナル楽譜集。メインテーマ「Quartet g-moll」を含む弦楽四重奏作品5曲に加え、ヴァイオリン・ソロ作品1曲を収めた。映画撮影用絵コンテが書き込まれた久石譲の自筆譜も所載。ファン必携。

(メーカー・インフォメーションより)

 

 

究極のスタイル
久石譲

弦楽四重奏は無駄をすべて削ぎ落とした究極の形態であると思う。重音(じゅうおん)奏法があるとはいえ、基本的には4つの楽器で奏でる、というところから非常にシンプルで、かつ作曲家の技量をもっとも問われるスタイルである、というのがカルテットだと思う。

作曲家にとって、弦楽四重奏とは何か。まず、作曲家が勉強をはじめたときには、皆”和声学”という学問から入る。どうやって和音というものが出来るのかという和声学の形態は、基本的にはソプラノ・アルト・テノール・バスという4つの声部から成る4声体を基準に音楽を作る。

弦楽四重奏もまた、同じ形式である。作曲家にとっては、最初に学ぶ4声体から始まり、4声体で終わる、といえるほど究極の形態がカルテット、弦楽四重奏であると思う。

たとえば、ベートーヴェンもある時期、スタイルを少しずつ変えていくが、まず新しい試みをピアノ・ソナタで作曲する、そして次にそれを発展させて、オーケストラ曲いわゆるシンフォニーに拡大して、その時期の自分のスタイルを確立し、そして最後に必ず弦楽四重奏曲を書いている。ピアノでまずチャレンジし、オケで拡大、最後にカルテットでその時期をまとめる、という繰り返しによって、自分の音楽のアプローチというものに、必ず区切りをつけていっている。

そのくらいベートーヴェンにとっても弦楽四重奏というものは、非常に重い存在で、あくまでも無駄のない形態の中で、自分のスタイルを結晶させていった。

したがって、作曲家にとって弦楽四重奏に最後に行き着くことは、それが無駄を削ぎ落とした本当のエッセンスのような究極の形態であるから、という気がする。

 

カルテットというのはある時期から、いわゆる”現代音楽”としての世界観というものはあるのだけれども、広く一般の人に聴いてもらう音楽を、作曲家がup to dateで、今日的に書かなくなってしまった。そのような状況もあり、今回のオリジナル・スコア出版により、できるだけ多くの人に演奏してもらいたいと考えている。

演奏するにあたっての注意点としては、やはりリズムでしょうね。各楽曲によって、細かい注意点は異なるが、トータルで言うと、リズムと音色。自分たちの持っている音色と楽曲が要求する音色をきちんと弾きわけられると、より良くなるのではないかと思う。

 

1.Quartet g-moll
ぎりぎりの調性のところで、調性がはっきりする前にどんどんキーを変えていったり、あるいは全く無調の部分があったり、という楽曲であることから、まず音程、自分たちは何の調を弾いているのか、その辺りをしっかり頭に入れながら弾く、そして中間部の激しい部分も含めて、リズムをきっちりと、ジャストなビート感をまず体に入れてから練習すると、すごく良くなるのではないかと思う。

この楽曲は、覚えやすく、またテンションが高まるようなメロディを作りつつ、高度なカルテットの技法にのっとって、より複雑さを出していっている。たとえば白鳥のように、表面では優雅だが裏(水中)ではそうではないといったところだろうか。…それは表には決して見えない、というように。映画では、父が息子に贈ったというシーンで、親が子を想う感じを出している。

 

2.Black Wall
映画の中では、”マレーヴィッチ・ウォルハイム”という著名な作曲家の有名な楽曲、という設定。(因みに、この作曲家の名前は、美術の分野でのミニマル作家の名前を組み合わせた。)

不協和音を使用するのは映画音楽としてはタブーなのかもしれないが、何かぴりっとした感じが欲しかった。

 

3.Student Quartet
映画では、モーツァルトの有名なディヴェルティメントでいく予定だったが、自分の楽曲以外はどうかと思ったことと、映像には合わないと感じた。

ディヴェルティメントを意識して、誰もが”青春”っぽく感じる、イタリアン・メロディラインらしい楽曲に仕上げた。

 

4.Melody Road
『となりのトトロ』『HANA-BI』『Kids Return』を基本にしたサービス的楽曲。映画で、全曲新曲が流れていても楽しくないし、久石の楽曲が好きな人であればとても馴染み深いと思ったので。映画の中では思わず子供たちが振り向くところの音楽で、変化していく気持ちも表している。

 

5.浜辺のQuartet
メインテーマのアレンジである。主人公の明夫と智子の恋愛感情を、音で表現したロマンティックな楽曲。

 

6.パッサカリア
オーディションのシーンで、主人公・明夫が演奏する楽曲。パガニーニのカプリース24番をベースに作曲した。パガニーニに捧げるオマージュ、といったところだろうか。

(楽譜 寄稿より)

 

 

 

弦楽四重奏曲集 カルテット
JOE HISAISHI QUARTET

久石譲 カルテット オリジナルスコア

[収録曲]
Quartet g-moll
Black Wall
Student Quartet
Melody Road
浜辺のカルテット
パッサカリア

A4版
発行:全音楽譜出版社
スコア60ページ+パート譜(第一ヴァイオリン・第二ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ)各16ページ

 

 

◎音源は久石譲『Quartet カルテット オリジナル・サウンドトラック』に収録されています。

QUARTET カルテット

 

久石譲 『カルテット DVD』

 

 

2024.04 追記

 

Disc. 久石譲 『LE PETIT POUCET』

Le Petit Poucet (プセの冒険 真紅の魔法靴) オリジナル・サウンドトラック

2001年10月9日 CD発売 014 934-2 ※輸入盤のみ

 

2001年仏公開 映画「Le Petit Poucet」(邦題:プセの冒険 真紅の魔法靴)
監督:Olivier Dahan(オリヴィエ・ダアン) 音楽:久石譲 joe hisaishi

 

 

「全体のサウンドの設計からいうと、〈日本〉をすごく出しました。和太鼓だったり尺八だったり……宮崎監督をはじめ、日本の監督は尺八を使うとすごく嫌がるんですよね。『尺八の音』とイメージを限定してしまうから、と。でも、フランス人には全然関係ないことなので、逆に前面に出したんですよ。そのほうが自分にとってリアリティがあるということもありますが、もうひとつはドメスティックなほうがかえってインターナショナルに通用する。要するに日本やアジアの風土に根ざした音楽を掘り下げた状態で提示すれば、それは世界中で通用するはずなんです」

Blog. 「PREMIERE プレミア 日本版 October 2001 No.42」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

 

Le Petit Poucet (プセの冒険 真紅の魔法靴) オリジナル・サウンドトラック

1. La lunan brille pour toi (Version Edit) (vocal:Vanessa Paradis)
2. Le Petit Poucet (Main theme)
3. La forȇt de Rose
4. L’attaque des pillards
5. Sur le chemin de cailloux blancs
6. Perdus
7. Les pièccs d’or
8. Aux loups!
9. La maison rouge
10. A la table de l’Ogre
11. Le jardin secret
12. L’Ogre
13. La forȇt rouge
14. Entre l’Ogre et la falaise
15. Le duel
16. Le messager de la Reine
17. “La lune brille pour toi” (Générique de fin) (vocal:Vanessa Paradis)

「La lune brille pour toi」
作詞:Olivier Dahan 作曲:Joe Hisaishi

Musique Originale Composée et Arrangée par Joe Hisaishi

Musiciens
Piano:Joe Hisaishi
Orchestre:Paris Philharmonic Otchestra

and Shakuhachi , Flute et Kena , Latin Percussion , Luth

Orchestrations:
Joe Hisaishi
Kazunori Miyake
Jun Nagao

Enregistrements:Studios Guillaume Tell
Mixage:Roland Guillotel

 

Little Tom Thumb
(United States, 2001) 016 968-2

1.Close Your Eyes
2.Little Tom Thumb (Main Theme)
3.Rose’s Forest 
4.The Pillagers Attack 
5.On The Road Of White Stones
6.Lost 
7.The Golden Coins 
8.Wolves! 
9.The Red House 
10.At The Ogre’s Dinner
11.The Private Secrets
12.The Ogre
13.The Red Forest 
14.Between The Ogre And The Cliff 
15.The duel
16.The Queen messenger
17.Close Your Eyes (Ending Theme Song) 
18.”La Lune Brille pour Toi” (Bonus track)

 

Disc. 久石譲 『三鷹の森ジブリ美術館 Original BGM』 *Unreleased

久石譲 三鷹の森ジブリ美術館

2001年10月1日 開館

 

2001年開館の三鷹の森ジブリ美術館。その館内BGM用、展示室用BGMとして作曲され寄与された楽曲。「動きはじめの部屋」などで流れるオリジナルBGMでピアノ曲やオルゴール風の小曲。

ジブリ美術館 映像展示室「土星座」にて短編映画本編上演前に流れる過去短編作品プロモーション映像にも久石譲が献呈した音楽が使われている。BGMのいずれかが該当するのか別楽曲なのかは不明である。

 

 

2001年「Musica del Museo」(ジブリ美術館オリジナルBGM1)
美術館展示室「動きはじめの部屋」BGM

MDGP-1001 Not for Sale

ジブリ美術館 BGM 非売品 ジブリ美術館 BGM 非売品 2

2001年「ムゼオ虫」(ジブリの森のえいがサウンドロゴ)
美術館で上映される短編アニメーション映画のオープニング用

2006年「Birthday 15+ (Musica del Museo Seconda Parte)」(ジブリ美術館オリジナルBGM2)
宮崎駿監督65歳の誕生日にプレゼント

2008年「La neve è rimossa (Musica del Museo Terzo Parte)」(ジブリ美術館オリジナルBGM3)
宮崎駿監督67歳の誕生日にプレゼント
副題は「雪解け」 同曲名は「雪がとける」という意味のイタリア語

2008年「クマのうちの歌」(作詞:宮崎駿 作曲:久石譲)
ジブリ社内保育園「3匹の熊の家」の園歌

2009年「Wave (Musica del Museo Quarto Parte)」(ジブリ美術館オリジナルBGM4)
宮崎駿監督68歳の誕生日にプレゼント

2010年「Stormy Sea of Spring」(ジブリ美術館オリジナルBMG5)
宮崎駿監督69歳の誕生日にプレゼント

2015年「祈りのうた for Piano」(ジブリ美術館オリジナルBGM6)
宮崎駿監督74歳の誕生日にプレゼント

2017年「小さな曲」(ジブリ美術館オリジナルBGM7)
宮崎駿監督76歳の誕生日にプレゼント

2018年「The Bird Seeing The Bridge」(ジブリ美術館オリジナルBGM8)
宮崎駿監督77歳の誕生日にプレゼント

 

 

三鷹の森ジブリ美術館でしか聴けない楽曲でCD化もされていない。

 

2008年の『久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~』のコンサートにて開演前のBGMとしても流れていた(「Musica del Museo」「Birthday 15+」「La neve è rimossa」の3曲)。コンサートのアンコールなどで「Wave」は演奏している。

 

「Musica del Museo」
北野武監督『Dolls オリジナル・サウンドトラック』収録の「感 -FEEL-」という曲にどことなく似た雰囲気が漂う、穏やかなピアノ曲。メロディアスなはっきりとしたメロディーではなく、叙情的なコードが展開していく。

「Wave」
16音符が冒頭から終盤まで流れるように展開していく。こちらも一度聴いたらその空気感が離れないとても印象的なピアノ曲。まるでフィルムやセル画の1コマ1コマをつないで流れていくような、16音符の1粒1粒が流れては織り重なっていき、ストーリーの起承転結を奏でている。聴けば聴くほどに感情の揺れも表現しているようなドラマチックな楽曲である。

「Stormy Sea of Spring」
未聴だが、ジブリ美術館スタッフブログには、「波を思わせるようなゆったりとしたピアノの調べ」とあった。

「祈りのうた for Piano」
久石譲初のホーリー・ミニマリズムのようなシンプルな三和音を使った楽曲。

 

 

2002年三鷹の森ジブリ美術館の企画展示「天空の城ラピュタと空想科学の機械達展」のために制作された映像作品の音楽を手がけている。

 

 

 

2015.8.5 追記

ついに音源化!
「WAVE」「祈りのうた for Piano」を収録したCD作品

Minima_Rhythm II

 

 

2018.1.9 追記

「三鷹の森ジブリ美術館」を訪ねて。「動きはじめの部屋(The Beginning of Movement)」展示室で流れる音楽について。現在は午前と午後ふたつの曲を流している。午前中聴いた曲は初めて聴くもので、バッハのピアノ曲のような流れる旋律が織りなす美しいピアノ曲。スタッフの人に尋ねたら「午前は少し爽やかなものがいいかなと思いこちらを流すようになりました」とのこと。まさに朝のゆったりとした時間にぴったりな曲。久石譲が宮崎駿監督の誕生日に献呈している曲のひとつを使用している。曲名不明、制作年不明。午後は、2001年開館以来おなじみの「Musica del Museo」(ジブリ美術館オリジナルBGM1)が流れている。こちらは「動きはじめの部屋」展示室のために書き下ろされた楽曲。

ほぼ毎年一曲ずつ宮崎駿監督にプレゼントしている慣例ピアノ曲だが、公表されておらずこの年はプレゼントしたのか?曲名は?などは、都度の情報や久石譲インタビューから推しはかるしかない。いつの日かその詳細情報がすべて公になり、また三鷹の森ジブリ美術館BGM集としてCD化されることを切望している。

 

 

 

久石譲 三鷹の森ジブリ美術館

 

Disc. 久石譲 『Quartet カルテット オリジナル・サウンドトラック』

QUARTET カルテット

2001年9月27日 CD発売 UPCH-1105
2005年10月5日 CD発売 UPCY-9009

 

2001年公開 映画「Quartet」
監督:久石譲 音楽:久石譲 出演:袴田吉彦 桜井幸子 他

 

久石譲 第1回監督作品
日本初の本格的音楽映画、劇中使用曲フル・バージョン収録
ボーナス・トラックにリミックス・バージョン収録

 

 

曲目解説 by JOE HISAISHI

1.Main Theme
メイン・テーマに、プログラミングによるリズムを加えた楽曲です。エンディングのアイディアとしては、幾つかの方法が考えられましたが、青春映画の希望的要素を込めたアレンジにしました。

2.Student Quartet
この映画の音楽に関しては、当初メイン・テーマ以外は既存のクラシック曲を使って完成させる予定でした。しかし、制作を進めていくうちに、自分の映画の中で、僕以外の人が作った曲が鳴ることに違和感を覚え始めて…。聞いてもらえばわかるように、この曲は本当ならモーツァルトの「ディヴェルティメント」をイメージしていましたので、それに近い雰囲気で書き上げました。途中、主人公の苦悩を音楽で語る意味で、イタリア映画の音楽っぽい、メロディアスで泣かせるフレーズを封入しています。そうしたところに、単なるモーツァルト風楽曲にはしないぞというこだわりを感じてもらえたら嬉しいですね。

3.パッサカリア
劇中、明夫(袴田)がオーディションで弾くソロの曲です。「Student Quartet」の場合と同様に、本当なら「カプリース24」という、パガニーニのバイオリン・ソロの曲を使いたかった箇所なので、この作風を下敷きにしてそのフォーマットにのっとって、新たに自分で作ってみました。なぜ「カプリース24」をイメージしたかといえば、メロディもよくポピュラリティがありつつ、激しさも備えている。バイオリニストとしてのビルティオーゾといいますか、テクニカルな部分も相当に要求する楽曲ですから。いうなれば、パガニーニに捧げるオマージュのようなものです。

4.Black Wall (Strings Quartet)
マレーヴィッチ・ウォルハイムという著名作曲家が作った有名なクラシック作品で、なおかつ弦楽四重奏であり、オーケストラの定番曲でもあるという設定です。これはよくあることで、「展覧会の絵」も元々はピアノ曲だったものが、オーケストラにもなっているのと似たスタイルです。本来、青春映画では、こういう現代音楽調の不協和音の楽曲を使うのは、楽曲がやたらと小難しくなりがちなので、かなりの冒険ではあります。ある意味これが、(映画の)最初から最後までを引っ張っているといってもいいくらい。そういう音楽家としての勝負曲として書いた作品です。ちなみに作曲家名は、絵画界のミニマル・アーティストの”~・マレーヴィッチ”という人と”~・ウォルハイム”という人の名前を組み合わせて作った架空の作曲家名です。

5.浜辺のカルテット
これはメイン・テーマをさらに極力シンプルに、緩やかなテンポでアレンジしたものです。主人公の明夫(袴田吉彦)と智子(桜井幸子)の恋愛感情も音楽だけで表現できるんじゃないかと思って、映画では全般的にラブ・シーンを排除してきました。だけど、二人の気持ちが徐々に接近していく様子や、バラバラだった4人が少しずつ心を通わせていくニュアンスはどうしても必要でしたので、この音楽に託してみました。

6.Melody Road (My Neighbor TOTORO~HANA-BI~KIDS RETURN)
「となりのトトロ」「HANA-BI」「キッズ・リターン」のメドレーです。僕が映画をやるということのサービス・カットでしょうか(笑)。ある程度僕の音楽が好きな人ならば、たぶん馴染みがある楽曲だろうという観点で選んだ楽曲群ですね。技術にこだわる人間が目指す音楽から、気持ちの音楽へと切り替わっていく過程や様子を感じ取ってもらえるといいんですが。

7.DA・MA・SHI・絵 (Sax Quartet)
ストーリーの中では、主人公たちがコンクールを受けている際に別のアンサンブルが演奏しているシーンの楽曲です。これもコンクール曲であるという前提ですから、構成が複雑であることと、なおかつミニマル音楽をずっとやり続けてきた自分の個人的な思い入れも込めて選曲しました。そういう意味では、僕にとって重要な曲の一つといえます。イギリスの弦楽四重奏団”バラネスク・カルテット”を迎えて昨年リリースした『Shoot The Violist』というアルバムにも入っている曲です。

8.Lover’s Rain
この映画では唯一のBGMです。つまり、ほかの楽曲はすべて、絵(映画)の中で誰かが演奏したり、周りで誰かが弾いているという状況下で奏でられていますから、いわゆる映画音楽というのがこの映画にはほとんど存在しない。唯一書いたのがこの曲。自分としては相当画期的なことをやっているつもりではあります。

9.冬の夢
僕の『My Lost City』というソロ・アルバムの中に収録されている作品です。ここでは映画にも出演している久木田薫さん自身が弾いてます。主人公の一人・愛ちゃん(久木田)が音楽の深さを知るきっかけとなる曲ですね。これまで随分いろいろな曲をチェロのために書いてきましたが、これが最も好きな曲のひとつです。

10.・・・・for Piano
映画の中では使っていない、メイン・テーマのピアノ・ソロ・バージョンで、このCDに収録するために急遽演奏した曲です。映画「Quartet」のサントラ盤でありつつも、僕のソロ・アルバムとしての側面もあるCDですから、どうしてもピアノのソロでテーマを弾いてほしいというリクエストがありまして…。実際、僕はこういう感じの楽曲を、過去に出したソロ・アルバムを含めてもほとんど弾いていませんので、今までの自分のピアノ・スタイルとは違った世界にチャレンジしてみたいという感覚が強かったですね。

11.Black Wall (Orchestra)
track 4のオーケストラ・バージョン。映画では、オーケストラのコンサート・マスターとしてバイオリンを弾く明夫(袴田)と、その一方で明夫の到着を待つカルテットのメンバーという、クライマックスにつながる重要なシーンでずっと流れる曲です。同じ曲ですが、カルテットでは繊細さが強調され、オーケストラでの演奏ではダイナミックさが増し、荘厳な感じに響いています。

12.Quartet g-moll
本来映画音楽としては、見てくれた人が映画館を出た後にも口ずさめるようなメロディがベストな形といえます。音楽とともに映画のシーンが浮かんでくるような…。その場合のメロディは極力シンプルなほうがいいわけです。ただこれは、映画の中ではコンクールで演奏する曲でもあり、コンクールを受ける楽曲であるからには、テクニック的にもカルテットとしての機能を存分に引き出している作品でなければならない。すると必然的に、映画音楽としてのシンプルさと、アンサンブルの奥行きや音楽的な内容の深さ、難しさの両方を兼ね備えた、非常に高度な音楽にならざるを得ない。そうした大きな矛盾といいますか、相反する要素を融合させる取り組みをしました。

13.Main Theme -Remix
※ボーナス・トラックとして収録

(曲目解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

そもそも”カルテット”とは?

カルテット(英語表記で quartet)とは、広義で四重奏(唱)のこと。四重奏曲を指すこともある。『新音楽辞典』(音楽之友社刊)には「4個の独奏楽器による室内楽重奏。弦楽四重奏が基本的で、(中略)ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロにピアノ四重奏、木管をひとつ加えたフルート四重奏、オーボエ四重奏、木管、金管、ホルン、サクソフォーン四重奏その他各種の編成がある」と記されている。今日まで続く弦楽四重奏曲の基本様式を確立したのはフランツ・ジョゼフ・ハイドン(1732~1809)という説がもっぱらである。その醍醐味は様々だが、劇中で三浦友和扮する青山助教授わいく「アンサンブルの中でも弦楽四重奏ってのは、余分なものをすべて削ぎ落とした究極の形態だ。演奏家としての力量がこれほどはっきり表れるものはない」とのこと。幼少の頃バイオリンをたしなんでいた久石自身の弦楽四重奏に対する考え方としてとらえてもいいだろう。

Blog. 映画『Quartet カルテット』(2001)監督・音楽:久石譲 劇場用パンフレットより 抜粋)

 

 

「撮影は去年に終えていてね。劇中、袴田(吉彦)君扮する主人公の台詞で『音楽ってそれほどのものなんですか?』っていうのがある。この一言を音楽家である僕が言わせるのは、自分では結構強烈な挑戦だった。多分この一言を撮りたくて映画を作ったんだなと、今は思っている。”音楽を作る”ことと”生きる”ことの関係性を何らかの形にしてみたかったのではないかな。音楽は自分では未だ模索の最中だし『Quartet』も、その明確な答えとは成り得ていないけれど、リアリティという点ではなかなかの仕上がりだよ」

Blog. 「SWITCH スイッチ JULY 2001 Vol.19 No.16」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「まず音楽映画とはどういうものか、明確な定期をしておかなければいけないと思いました。ドンパチがあればギャング映画、音楽があれば音楽映画というふうに考えれば、実際どのジャンルを見ても明確な定義など存在しないんです。そこで自分が考える音楽映画とは、まず第1に音楽自体がストーリーの展開と強く絡んでいなくてはいけない。第2に、せりふの代わりに音楽で半分ぐらいは表現してしまう。つまり、(音楽で)見る側にイマジネーションを広げてもらう。この2点を明確にして自分のスタンスをとろうというのが演出の根底にあったんです」

Blog. 「PREMIERE プレミア 日本版 October 2001 No.42」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「音楽が主役になっている、ということ。物語に音楽がからんでいるとか、主人公が音楽家というだけでは音楽映画にはなりません。音楽がドラマとからんでクライマックスに向かっていくような映画を、私は音楽映画と呼ぶことにしています」

「整理すると、音楽とストーリーが密接にかかわっていること、音楽が台詞の代わりになりえていること、この2点に集約されます」

Blog. 「ディレクターズマガジン 2001年11月号」 久石譲 インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「主人公が、お父さんが家を崩壊させてまでカルテットに打ち込んだことに対して、「音楽ってそれほどのもんですか」っていうシーンがあるんですよ。観ていると、すっと流れちゃう場面かもしれないけど、音楽家である僕が監督しながら、この台詞をいわせるっていうのは、すごく重いんですよね」

「あります、正直いえば。こんなに全部を犠牲にして…。たとえば、この2日間すさまじい指揮をしました。その前は籠もりきりで一日10数時間、譜面を書いてます。そのまた前は、2ヵ月間籠もってレコーディング。1年間、ピアノにさわってないのに、ピアノをダビングするなんてことまで起きてくる。まったくよくやってますよね。何のためにやってるんだろうって、ふと思うことがあるんです。「音楽ってそれほどのもんですか」。この台詞をいわせるために、僕はこの映画を撮ったんじゃないかという気がしてます」

Blog. 「月刊ピアノ 2001年7月号」映画『Quartet』 久石譲 インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「全体の半分弱くらいが音楽シーンで、時間軸に固定されますから、構成自体は難しくなかったんです。でも、セリフの投げ合いで感情を引っ張りすぎると音楽シーンのパワーがなくなっちゃうから、芝居は極力抑える、カメラは引くって決めてましたね。そういう意味では、北野監督的なやり方だったんですよ。過剰に説明をせずに、どこまで引いて見せるかという意味ではね。武さんは僕が映画を撮るというのを知っていたんです。あるとき一緒にご飯を食べていて、武さんが大杉漣さんに話をしていたんですよ。”ラーメンをおいしく撮る方法って、いかに本当においしいかと見えるようなカットを撮らなくちゃいけないんだよ。たいがいの監督がしくじるのは、いかにうまいかという内容を説明しちゃうから。トンコツ味でとか昆布のダシでとかさ、そうするとトンコツが嫌いな人はそれを聞いた瞬間、半分引いちゃうんだよな”って。大杉さんに話をするフリをして、たぶん僕に言ってくれたんだと思う。それがすごく残っていて、大変なヒントをいただきましたよね」

「この映画、2回観た人の反応がいいんですよ。芝居や何かを全部言葉でやっていると2回観たいとはあまり思わないですよね。でも、音楽は2度聴いても嫌にならない。その音楽が今回、セリフ代わりになってますね。リピートに耐える映画になったかと思うと、とてもうれしいですね」

Blog. 「DVDビデオ・ぴあ 2001年10月号」 映画『Quartet』久石譲 インタビュー内容 より抜粋)

 

 

 

 

 

 

映画公開当時、ファンクラブ限定で映画前売券販売企画があった。その特典として『CD付 Quartet プロモーションツール』が前売券と一緒に届けられている。また一般劇場前売券でも、”プレミアムCD付前売券”発売があった。数量限定、東京・大阪・名古屋・福岡・札幌の指定された複数映画館が対象。

(ファンクラブ会報 NEWS WONDER2 No.39 より要約)

 

 

 

 

 

 

QUARTET カルテット

1. Main Theme
2. Student Quartet
3. パッサカリア
4. Black Wall (Strings Quartet)
5. 浜辺のカルテット
6. Melody Road
(My Neighbor TOTORO〜HANA-BI〜KIDS RETURN)
7. DA・MA・SHI・絵 (Sax Quartet)
8. Lover’s Rain
9. 冬の夢
10. ・・・・for Piano
11. Black Wall (Orchestra)
12. Quartet g-moll
13. Main Theme -Remix

all composed, arranged and produced by joe hisaishi

Piano:JOE HISAISHI

Conductor:KIM HONG JE

Musicians
Balanescu Quartet:
ALEXSANDER BALANESCU:1st Violin
FENELLA BERTON:2nd Violin
CHRIS PITSILLIDES:Viola
NICK HOLLAND:Violin Cello (M-2,3,4,5,6,12)

YUICHIRO GOTO GROUP (M-1,8,9)
IKUO KAKEHASHI (M-1)
NEW JAPAN PHILHARMONIC (M-11)
kAORU KUKITA (M-9)
Vivi SAXPHONE ENSAMBLE (M-7)

Orchestration:KAZUNORI MIYAKE

Recording Studios:
WONDER STATION
AVACO CREATIVE STUDIOS
ANGEL STUDIO (LONDON)

 

Disc. V.A. 『久石譲 セレクテッド カルテット・クラシックス』

久石譲セレクテッド・カルテット・クラシックス

2001年9月27日 CD発売 UCCG-3247

 

初監督作品 映画「カルテット」の公開にちなみ久石譲が自らセレクトした弦楽四重奏曲のコンピレーション・アルバム

 

 

「カルテット」はクラシック音楽のエッセンス

『カルテット』という映画を作るに当たって約1年がかりで脚本を練り、弦楽四重奏を目指す若者の話なので、同時にカルテットの楽曲をすごく調べたんです。モーツァルト、ベートーヴェンなどのCD、スコアも手に入れて調べていきましたが、映画自体では音楽家としての自分の色を出すために結果としてどれも使用しませんでした。けれどもラヴェルのカルテットであったりとか、名曲がたくさんあって、その時の経験から「カルテット・クラシックス」として皆様にも聴いてほしいと思ったのが、このアルバムを企画した理由です。

音楽を志した頃から、弦楽四重奏というものは当然あるべきスタイルとして頭にありました。カルテットというのは、基本的にはクラシック音楽のエッセンスだという気持ちがすごく強いんです。例えばベートーヴェンの作曲の仕方を見ていても、それぞれの時期、時代にまずピアノ・ソナタで新しい方法にチャレンジする、それをオーケストラでうんと拡大してその時期の自分のスタイルを確立して、最後に必ず弦楽四重奏を書くんですよ。それによってある時代の自分の音楽のアプローチというものに必ず区切りをつけていきます。ピアノでまずチャレンジ、オケで拡大、最後にカルテットでその時期をまとめるという繰り返しです。

ベートーヴェンにとってカルテットはどのくらいの重さがあったんだろうか、と作曲家として考えることがよくありました。我々が作曲を勉強する時に和声学という勉強をします。和声学はソプラノ、アルト、テナー、バスという4声体を基準にして音楽を作るんです。そうすると実は弦楽四重奏はそれと全く同じ形式になってしまう。つまり、作曲をやる上で最初に学ぶ形態が発展したものが弦楽四重奏なんだなというのが僕の根底の考え方です。したがって、作曲家にとって弦楽四重奏に最後に行き着くというのは、それが無駄をすべて削ぎ落とした本当のエッセンスのような究極の形態であるからという気がします。

久石譲

(CDライナーノーツより)

 

 

【楽曲解説】

1.シューベルト:弦楽四重奏曲 第13番 イ短調 D.804 《ロザムンデ》 ~第2楽章
F.P.シューベルト(1797-1828)は、未完成作品を含めて全部で15曲の弦楽四重奏曲を残しているが、1824年に作曲されたこの第13番は、第2楽章に劇音楽《ロザムンデ》の間奏曲の旋律が流用されていることによって名高い作品である。そしてアンダンテのその第2楽章は、自由なロンド形式による緩徐楽章であり、ロザムンデの主題の反復から優美でやわらかい美しさが醸し出されている。

2.ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲 《糸杉》 ~第1曲「君に対する私の愛情は」
A.ドヴォルザーク(1841-1904)は、1865年に全18曲から成る歌曲集《糸杉》を作曲したが、弦楽四重奏のための《糸杉》は、作曲者自身がそこからピック・アップした12曲を弦楽四重奏のために1887年に編曲したものであり、ロマンティックで詩的な性格の小品集といった内容を呈している。そして、このアルバムに収められている「君に対する私の愛情は」は、その第1曲にあたるものである。

3.ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調 ~第2楽章
M.ラヴェル(1875-1937)は、弦楽四重奏曲を1曲しか残していないが、27歳の彼の筆から生まれたこの1曲は、この作曲家の名声を不動のものにした傑作である他、彼の才能の全貌が具体化した最初の作品と目される注目作でもある。アセ・ヴィフートレ・リトメの第2楽章は、3部形式によるスケルツォ楽章であり、トリオの部分では、主部の2つの主題を素材にして多彩な展開が繰り広げられる。

4.チャイコフスキー:弦楽四重奏曲 第1番 ニ長調 作品11 ~第2楽章 (アンダンテ・カンタービレ)
P.I.チャイコフスキー(1840-1893)は、全部で3曲の完成された弦楽四重奏曲を残しているが、1871年に完成されたこの第1番は、それを聴いたトルストイが第2楽章の美しさに涙を流したと伝えられている作品である。「アンダンテ・カンタービレ」の名で単独でも有名になっているその第2楽章は、自由な形式による緩徐楽章であり、ロシア的で綿々とした抒情美がまさに限りない名場面になっている。

5.ハイドン:弦楽四重奏曲 第77番 ハ長調 Hob.III:77 (作品76-3) 《皇帝》 ~第2楽章
1796年に作曲されたこの第77番は、F.J.ハイドン(1732-1809)の弦楽四重奏曲のなかでも最もポピュラーなものであり、そこでは、第2楽章の主題にハイドンが作曲した旧オーストリア国家「皇帝讃歌」が流用されている。そして、ポーコ・アダージョ・カンタービレのその第2楽章は、変奏曲形式による緩徐楽章であり、有名な皇帝の主題と4つの変奏から構成されている。

6. モーツァルト:弦楽四重奏曲 第17番 変ロ長調 K.458 《狩》 ~第1楽章
全6曲から成る「ハイドン・セット」は、W.A.モーツァルト(1756-1791)の弦楽四重奏曲を代表する傑作であるが、その第4曲にあたるこの「狩」は、1784年9月9日に完成されたものであり、第1楽章の第1主題が狩の時のラッパを連想させることから、「狩」と呼ばれるようになった。そして、アレグロ・ヴィヴァーチェ・アッサイの第1楽章は、第1主題に強い独立性が与えられたハイドン風のソナタ形式による楽章である。

7.ボロディン:弦楽四重奏曲 第2番 ニ長調 ~第3楽章 (夜想曲)
ロシア国民楽派の五人組の1人であるA.P.ボロディン(1833-1887)は、全部で2曲の弦楽四重奏曲を残しているが、1881年に作曲されたこの第2番は、そのなかでも特に演奏される機会の多い傑作であり、情緒豊かで色彩感に富んだ作品になっている。そして、ボロディンのノットゥルノ(夜想曲)として単独でも広く親しまれているアンダンテの第2楽章は、綿々と歌われる甘美な旋律がたまらなく美しい緩徐楽章である。

8.プッチーニ:弦楽四重奏のための 《菊》
イタリア歌劇を代表する大作曲家の1人であるG.プッチーニ(1858-1924)は、歌劇を中心にした創作活動を続けながらも先輩のヴェルディとは異なり、数は決して多くはないもののオーケストラ曲や室内楽曲の作曲にも手を染めている。そして、1892年に作曲されたこの「菊」は、繊細で可憐な抒情美が光彩を放っている作品であり、まさに菊のイメージを連想させるような音楽になっている。この作品では、本来は弦楽四重奏のために書かれているが、弦楽オーケストラのためにも編曲されている。

9.ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調 作品10 ~第1楽章
C.A.ドビュッシー(1862-1918)は、弦楽四重奏曲を1曲しか残していないが、1893年に完成をみたその弦楽四重奏曲は、印象派音楽の確立と発展を担うドビュッシーの試みが見事に結実した作品であり、非現実的な官能美やファンタジーが豊かに息づいている傑作になっている。アニメ・エ・トレ・デジテの第1楽章は、ソナタ形式による楽章であるが、定石に束縛されない自由な創意が大きな成果を実現させている。

10.ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第13番 変ロ長調 作品130 ~第5楽章
L.V.ベートーヴェン(1770-1827)後期の弦楽四重奏曲は、幽玄で深遠な表現を特色とした晩年のこの大作曲家ならではの傑作として名高いが、そのなかの1つであるこの第13番は、1825年に完成された6楽章制による異例の弦楽四重奏曲である。そして、カヴァティーナ、アダージョ・モルト・エスプレッシーヴォのその第5楽章は、3部形式による緩徐楽章であり、作曲者自身が会心の作と述べた静かで叙情的な音楽である。

柴田龍一

(楽曲解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

久石譲セレクテッド・カルテット・クラシックス

1. 弦楽四重奏曲 第13番 イ短調 D.804 《ロザムンデ》 ~第2楽章 (シューベルト)
2. 弦楽四重奏曲 《糸杉》 ~第1曲「君に対する私の愛情は」 (ドヴォルザーク)
3. 弦楽四重奏曲 ヘ長調 ~第2楽章 (ラヴェル)
4. 弦楽四重奏曲 第1番 ニ長調 作品11 ~第2楽章 (アンダンテ・カンタービレ) (チャイコフスキー)
5. 弦楽四重奏曲 第77番 ハ長調 Hob.III:77 (作品76-3) 《皇帝》 ~第2楽章 (ハイドン)
6. 弦楽四重奏曲 第17番 変ロ長調 K.458 《狩》 ~第1楽章 (モーツァルト)
7. 弦楽四重奏曲 第2番 ニ長調 ~第3楽章 (夜想曲) (ボロディン)
8. 弦楽四重奏のための 《菊》 (プッチーニ)
9. 弦楽四重奏曲 ト短調 作品10 ~第1楽章 (ドビュッシー)
10. 弦楽四重奏曲 第13番 変ロ長調 作品130 ~第5楽章 (ベートーヴェン)

演奏:
ハーゲン弦楽四重奏団 1. 2. 8.
ラサール弦楽四重奏団 3. 9. 10.
アマデウス弦楽四重奏団 4. 5. 6.
ドロルツ弦楽四重奏団 7

録音:1968年-1993年

DIGITAL RECORDING:1. 2. 5. 6. 8.