Disc. 久石譲 『千と千尋の神隠し イメージアルバム』

久石譲 『千と千尋の神隠し イメージアルバム』

2001年4月4日 CD発売 TKCA-72100
2020年11月3日 LP発売 TJJA-10027

 

2001年公開 スタジオジブリ作品 映画「千と千尋の神隠し」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

 

宮崎監督の音楽イメージメモを歌詞とする歌4曲を含む全10曲を収録。う~み、おおたか静流、上條恒彦、ムッシュかまやつ、RIKKIら多彩な顔ぶれが歌唱。監督のメモが詩に近いものが増えてきたことを反映し、約半分が歌となった。2001年1~2月に制作。

 

 

インタビュー

-今回のこのアルバムの特徴は?

久石:
「ボーカルがたくさん入っているということですね。全10曲のうちの約半数が歌で、しかも宮崎さんが作詞しています。割とジブリの近況そのもののような歌詞もたくさんあるんですよね(笑)。それはやっぱり大きな特徴かな。純粋にその、アルバムとして聴けるものを目指していますね。」

-宮崎さんからは、どのようなリクエストがあったのでしょうか?

久石:
「いつもイメージポエムというか、キーになる言葉を頂いているんですが、『もののけ姫』のあたりからは、だんだん言葉だけじゃなくて、そこにこめた想いというか、ちょっと詩に近いものも頂けるようになってきまして。それを核にしてこちらでもってイマジネーションを膨らませていきました。現実の裏側にある異世界に迷い込んでしまった10歳の女の子の話でしょ。そのへんの、現実との境であるとか、そこで戸惑ってる千尋の気持ちっていうのをどう表現するかが一番重要なところでしたね。それに、絵を見ていてもアジアチックなものが多かったり、でもそれも限定的なアジアじゃなかったりしてるじゃないですか。たぶん昭和の初期だったりとか、大正時代なのかな。すごくレトロな雰囲気と今アジアが持っているパワーみたいなものが渾然としているところがあって、世界観を作るのがとても難しかったですね。音楽的にも、割とバリ島ケチャ風なものから沖縄からアジア風なものまで総動員して作ってますね。又、今まで宮崎さんの世界ではあまりやらなかった、ジャジーでメローな感じのものも作りました。そういう意味ではイメージアルバムとしては、すごく幅が広いですよね。限定していくことよりは、広がっていることを意識して作っています。」

-楽器の特徴などはありますか?

久石:
「今まで自分がやってきたものに比べれば大変カラフルですね。あがってきている詞が『神々さま』とか『油屋』とかね。宮崎さんの気持ちが強く出ているので、あえて五音階的なあるいは沖縄的な、そういうスパイスを強めにふりかけました。だからヴォーカルも純邦楽の人だったりとか、エスニックな歌を得意としている人だったりとか、とても色の濃い人を起用しています。特にかまやつさんと上條さんに唄ってもらえたのは幸せでした。一見バラバラのように聞こえながら、どこで統一をとるか、というのは難しいところでしたけど。」

-楽しみにしています。

久石:
「とにかく、本当に楽しいアルバムになっています。おそらく今頃、ジブリの皆さんは必死の思いで作業していると思いますが、僕は後ろから暖かく見守る応援団のような気持ちで作ってますから(笑)」

2001年2月12日 ワンダーステーションスタジオにて

(インタビュー ~CDライナーノーツより)

 

 

楽曲解説

1.あの日の川へ スキャット:う〜み
アルバムの1曲目を飾るのはう〜みさんの透明感あふれるスキャット。耳に残る印象的なメロディに「ぜひ歌詞を付けて!」と思うのはスタッフだけでしょうか?

2.夜が来る
映画の特報に使われた曲よりもさらにパワーアップして、忍び寄る暗闇を描いているインスト曲。なんとも不気味な雰囲気を醸し出している作品。

3.神々さま ヴォーカル:おおたか静流 合いの手:藤堂彰寛
エスニックからはじまり純邦楽や沖縄の5音階など、この曲ほどカラフルなものない。メロディを聴いてビックリ!歌詞を聴いてビックリ!!の驚きの1曲。

4.油屋 ヴォーカル:上條恒彦
力強い上條さんの唄声と監督自らによる作詞で語られる労働歌(?)。「言ってみればボクらのことを歌っているんです」と誰かがコメントしたとかしなかったとか…

5.不思議の国の住人
木管とピアノ、ティンパニーといった珍しい編成の曲。可愛らしさとおどけた感じにバッハのエチュードを思わせるような独特のメロディが加わって…一体どういう曲でしょう?

6.さみしい さみしい ヴォーカル:ムッシュかまやつ
パラリンピック以来、久しぶりの共演となったかまやつ氏。明るいメロディとかまやつ氏のアジのあるいなたい唄声が、さみしさを語る詞を一段と際立てている作品。

7.ソリチュード ヴァイオリン:鈴木理恵子 チェロ:近藤浩志
「菊次郎の夏」のサントラに参加して頂いた鈴木さんと、久石さんとはツアーで全国を駆け抜けた仲である近藤氏。この御二方による共演はアルバム内でも稀有な存在ともいえる。ヴァイオリンとチェロの奏でる美しいメロディはエレジーなのかラブソングなのか…

8.海
静かで深い海を連想させるようなインスト。久石さんのピアノソロも聴き逃せませんよ!

9.白い竜 ヴォーカル:RIKKI
RIKKIさんとは「醍醐寺音舞台」以来の共演。その美しい唄声と歌詞で繰り広げられる世界観は、聴く人の心を揺さぶります。

10.千尋のワルツ
曲の流れに身を任せると自然に体が動いてしまいそうな、穏やかで愛らしいワルツ。

(楽曲解説 ~ワンダーシティ・スタッフ より)

※出典元が今となってはわからないが映画および本CD制作時期にWeb公開されていた情報である

 

 

書籍「折り返し点 1997~2008」/宮崎駿・著に、『千と千尋の神隠し イメージアルバム』のためのメモ、「1.あの日の川へ」「2.白い竜」「3.夜が来る」「4.油屋」「5.神々さま」「6.海」「7.さみしい さみしい さみしい」が収載されている。これは監督から久石譲へ作品イメージを伝えるために書いたもの。イメージアルバムの曲および曲名・歌詞として生かされている。

 

 

 

 

久石譲 『千と千尋の神隠し イメージアルバム』

1. あの日の川へ 歌:う~み
2. 夜が来る
3. 神々さま 歌:おおたか静流
4. 油屋 歌:上條恒彦
5. 不思議の国の住人
6. さみしい さみしい 歌:ムッシュかまやつ
7. ソリチュード
8. 海
9. 白い竜 歌:RIKKI
10. 千尋のワルツ

作詞:宮崎駿
作曲・編曲・演奏:久石譲

プロデュース:久石譲

レコーディングスタジオ:ワンダーステーション

ゲスト・ミュージシャン:
ヴォーカル:う~み (M-1)
ヴォーカル:おおたか静流 (M-3)
ヴォーカル:藤堂彰寛 (M-3)
ヴォーカル:上條恒彦 (M-4)
ヴォーカル:西田美和 (M-4)
ヴォーカル:ムッシュかまやつ (M-6)
アコースティックギター:古川昌義 (M-6)
ヴァイオリン チェロ:近藤浩志 (M-7)
ヴァイオリン:鈴木理恵子 (M-7)
ヴォーカル:RIKKI (M-9)

 

Spirited Away Image Album

1.To the River of that Day
2.The Night is Coming
3.Gods
4.Yuya
5.People in the Wonderland
6.I’m Lonely, Lonely
7.Solitude
8.Sea
9.White Dragon
10.Waltz of Chihiro

 

Disc. 久石譲 『BROTHER オリジナル・サウンドトラック』

BROTHER

2001年1月17日 CD発売 UPCH-1033
2005年10月5日 CD発売 UPCY-9008

 

2001年公開 映画「BROTHER」
監督:北野武 音楽:久石譲 出演:ビートたけし 他

 

 

コメント

久石譲さんとのお付き合いは、自分の9作目にあたるこの『BROTHER』で、もう6作になる。考えてみれば、「音楽は久石さんに全部お任せしますよ。」なんて言っておきながら、久石さんに了解を取らずに勝手に音楽を編集してしまったり、打ち合わせと全く違うところに頂いた音楽を使ってしまったりと、随分と失礼な作業をしてしまった事もあったけれど、そんな時でも久石さんは「監督の判断は正しいですよ。」と苦笑いしながらもこれだけの作品に参加して頂いたわけで、感謝の一言に尽きる。

彼の音楽のすばらしさは、そのメロディー・ラインと構成の美しさであることは言うまでもなく、〈音楽の入っていないシーンに音楽を感じさせてくれる音像の世界〉を実現させていることであろう。

それは、自分がシーンとシーンの間を省略して、そこに観客がそれぞれ自分にとって最もふさわしいシーンをイメージしてもらえばいいといった編集上の演出を駆使して実現させている映像の世界と相まって、自分の作品のもつ〈匂い〉を、よりきわだたせることに大きく貢献して頂いていると思っている。

今回の『BROTHER』でも、その才能はいかんなく発揮され、私の〈第9作目〉というよりも、〈最新作〉にふさわしい音楽の世界がここに実現された。

ARIGATOUGOZAIMASU!

監督・北野武

(コメント ~CDライナーノートより)

 

 

〈episode 6〉
この作品では、メインテーマのリード楽器を何にするか、かなり苦労しました。武さんはリード楽器にことのほか強い拘りを持っていて、しかも自分自身がピアノをやっていることもあって、ピアノという楽器が好きなんですね。だけど久石さんのセンスとして、こっちの楽器を使ったほうがこんな広がりが出ますよという主張を返してくる。そこはある意味闘いでした。結果的に、リード楽器としてフリューゲルホルンを選択したわけですが、これは非常に大きなチャレンジだったと思います。監督自身、フリューゲルホルンという楽器は全然予想もしてなかったでしょうし。

予定調和的にピアノで奏でておけば、これといった苦労もせずに済んだとは思いますけど、この作品自体が持つ意味合いといいますか、日英合作という国際的なプロジェクトによる映画であること、ハリウッドの撮影システムを導入したことなど、新しい映画作りの結果として新しい映画が生まれるという流れに見合う試みが、音楽にも必要だったわけですね。ご覧いただいてわかるとおり、主役ビートたけしのビジュアルといいますかファッション・センスは、この「BROTHER」も「HANA-BI」も「ソナチネ」も一様なんです。別に何部作といわれるような関連した作品ではないんですけど、開襟のシャツにダークカラーのスーツ、そしてサングラスというスタイルは共通している。しかし、だから音楽もピアノで、という考えはそぐわない。内容に対する音づけという意味ではなく、新しいやり方で新しい作品が生まれるという意味合いを音楽でどう表現するかという点は、われわれにとってもそうでしたけど、久石さんにとっても大きなテーマだったと思うんです。その部分では、久石さん自身、相当悩まれたんじゃないかと思います。現に、ロスの撮影現場までお見えになって、時間が許す限り監督と話し合って、もっとも相応しい接点を探していましたから。メロディとか旋律の問題ではなく、新しさをどういった世界観で示すかということにおいて。といいつつメロディに関しても、絵面との整合性においてはかなり難しかったと思いますよ。ジャジーな要素や、半音が結構使われていることが、そのことを雄弁に語っているような気がします。

デニー役のオマー・エプスのモノローグによるこの作品のエンディングは、音楽を入れ込んだ「あの夏~」のエンディングの対極にあるといってもいいくらいのシーンで、音楽をまったくはずしてしまっている。本来は武さんのリクエストで久石さんに饒舌で分厚い情感豊かな音楽をつけていただいたんですけど、最終段階で音楽をとってしまった。もちろん音楽が気に入らなかったわけではなく、音楽は音楽として成立したんでしょうけど、作品のテーマを示す流れのうえでは、饒舌すぎたのかもしれないですね。ただそのあとエンドロールで再びメインテーマが呼び込んでいることを考えると、あの音楽のないエンディングこそ、音楽を削ぎ落としたシーンでいかに音楽を感じさせるかの典型と言えるんじゃないでしょうか。

〈サウンドトラック制作進行ノート〉
2000年3月29日 にっかつスタジオにてオールラッシュ。
2000年4月3-14日 音楽制作プリプロ~レコーディング。
2000年4月8日 監督とテーマ曲について打ち合わせ。
2000年4月14日 監督とサントラについて打ち合わせ。
2000年4月22日 墨田区トリフォニーホールにて新日本フィルの演奏で録音。
2000年4月23-25日 映画用のT/D。
2000年5月15-17日 CD用のT/D。
2000年9月27-28日 マスタリング。

(「joe hisaishi meets kitano films」CDライナーノーツより)

 

 

ロサンゼルスやメキシコの砂漠といった多国籍ムードを味わえるエキゾチックであり哀愁的なメロディーが印象的な作品。随所に聴かれるメインテーマの旋律は、フリューゲルホルンによって奏でられ世界観を際立たせている。また全編にわたってこのメインテーマのモチーフがピアノやオーケストラによって様々な表情で登場する。

本作品はほぼメインテーマ曲で成り立っているといっても過言ではないが、にも関わらず聴き通して飽きがくることがない。構成や編曲の妙もさることながら、メロディーが秀逸だからこそ。

(8)はスリリングな緊張感ある楽曲であり、コンサートでもよく演奏されている。そんな臨場感あるオーケストラ+パーカッションによる演奏は、「SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001」によるライブ音源や、「WORLD DREAMS」によるW.D.O.の迫力ある演奏でも聴くことができる。

(13)も本作品では短い楽曲となっているが、より完成された音楽作品として、「SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001」によるライブ音源や、「ENCORE」によるピアノソロとして大人な哀愁感たっぷりに聴かせてくれる。

(15)は映画では未使用のメインテーマ リミックス・ヴァージョンでありリズムの打ち込みがふんだんに盛り込まれている。

 

 

BROTHER

1. Drifter…in LAX
2. Solitude
3. Tattoo
4. Death Spiral
5. Party ~ one year later ~
6. On the shore
7. Blood brother
8. Raging men
9. Beyond the control
10. Wipe out
11. Liberation from the death
12. I love you…Aniki
13. Ballade
14. BROTHER
15. BROTHER – remix version –

Score Performed by New Japan Philharmonic
Conducted by Joe Hisaishi

Flugel Horn:Tomonao Hara
Bass:Chiharu Mikuzuki
Guitar:Jun Sumida
Percussion:Ikuo Kakehash

 

Disc. 久石譲 『ADZIDA』 *Unreleased

2000年12月2日 TV放送

 

TBS・BS-i
ドキュメンタリー番組「大アフリカ」(各話2時間)
語り:緒形拳
音楽:久石譲「ADZIDA」

12月2日 第1回「大地」出演:養老孟司
12月3日 第2回「生命(いのち)」出演:養老孟司
12月4日 第3回「ヒト」出演:小林薫
12月5日 第4回「王国」出演:久石譲
12月6日 第5回「力(パワー)」出演:山田詠美

 

 

大アフリカ 4 王国

本格ドキュメンタリー。久石譲が西アフリカへ。目指すのは、久石音楽の原点アフリカ音楽。近代以前に繁栄した文化の足跡をたどる調査行です。

番組のみどころ

久石音楽の原点を目指して、西アフリカへ。そこにはかつて、黄金とサハラ砂漠の塩の交易で栄えた王国がありました。土で作られた巨大なモスクが建つ賑やかな都市、過酷なラクダのキャラバン。アフリカの広大な地に繁栄した知られざる王国文化の足跡を辿ります。アフリカの突出した文化と現代音楽の源流となるリズムを訪ねる旅です。

撮影地 : ニジェール マリ ガーナ ほか

(BS-TBS公式サイトより)

 

2001年3月、2010年10月に再放送されている。

 

大型ドキュメンタリー「大アフリカ」シリーズの第4弾。

かつてアフリカの地には、いくつかの王国があった。その繁栄を支えていたのが「塩と金」。16世紀に大航海時代を迎えると、ヨーロッパ人がアフリカに進出し、アフリカの地に銃を持ち込み、奴隷貿易へと繋がり、王国は消えた。アフリカの民は、世界中に散らばり、彼らの音楽もまた、ともに広がった。

西アフリカ・ガーナの音楽のカギを握るのが「12/8・3/16」。ガーナの人びとは、この2つのリズムを組み合わせて演奏するという。そして、作曲家・久石譲は、そこにジャズの源があるのではないかと考え、西アフリカ・ガーナを訪れる。

(2010年再放送時 番組紹介内容より)

 

 

西アフリカに向かう久石さんが目指すものは、長年求めてきた”アフリカ音楽”の源流。学生時代に出会った1枚の楽譜「ADZIDA DANCE(アジダ・ダンス)」を見てみたい、という思いから、この番組出演の話が現実のものとなりました。久石さんがアフリカで訪れるマリ王国やガーナでは、”黄金”と”サハラの塩”を巡る塩金交易によって華やかな黒人王国が形成されていました。それらの人々の生活に密着してきた音楽の存在を、実際に訪れ触れることで、久石さんにとっての『音楽の源』に迫ります。ふだん見ることができない久石さんの素顔が覗けそうです。

出来上がったテーマ曲がまたすばらしい…!「ADZIDA DANCE」をベースに作曲されたこのテーマ曲、とても聴きやすく、つい口ずさんでしまいそうなメロディ。雄大なアフリカの大地を想像させます。

(久石譲ファンクラブ会報 NEWS WONDER2 No.37 より抜粋)

 

 

メインテーマは様々なパーカッションで始まり、民族音楽をベースとしたメロディが民族音楽的女性の声で歌われる。ミニマルではなく盛り上がりふくめてしっかりとしたメロディと展開をもった躍動感のある楽曲。シンセサイザー音源によって活き活きと鼓動する。番組オープニングとエンディングでフルサイズ流れ、本編中には少しアレンジを変えた(おそらくリズムだけを外すなど)いくつかのバリエーションも流れる。

本編音楽も、ミニマルと民族音楽をうまくミックスさせたような音楽が多い。リズム系はっきりとしたものから、幻想的な緩やかなものまで。すべてシンセサイザーによるもので、マリンバ系、オルガン系、シンセストリングス系、シンセヴォイス系、ラテンパーカッション系など、久石譲の得意とする音作りによるもの。1~2分尺の楽曲が多い。『人体』シリーズや『RAKUEN』のような世界観や音作りをイメージする。

ただし、JASRACデータベースではBGMとして他作曲家も登録されており(吉野裕司、三宅一徳)、番組のための音楽すべてが久石譲によるものではないかもしれない。「ADZIDA」と名付けらたメインテーマは間違いなく久石譲によるものであり、本編音楽の多くは久石譲を思わせる楽曲を聴くことができる。

 

 

 

Score. 『久石譲 ピアノ・コレクション』

2000年10月30日 発行

久石譲監修によるピアノ曲集。編曲は他者によるもの。オリジナルアルバム『PIANO STORIES II ~The Wind of Life~』『NOSTALGIA ~PIANO STORIES III』からの全楽曲を収めたピアノ譜。

 

【補足】

当時は公式スコア[オリジナル・エディション]という位置づけがまだなかった。久石譲監修ではあるが他者の編曲による(当時はそれが主流だった)。ただし、CD作品のマッチングとして同時期に楽譜出版されたもの、また楽譜表紙(装丁)がCDジャケットデザインに準ずるもの、制作協力クレジットされ公式コンサートパンフレットや媒体でも紹介されていたもの、これらを監修・公認(準公式)楽譜として紹介している。

 

 

久石譲 / ピアノ・コレクション

[PIANO STORIES II ~The Wind of Life]
Friends (トヨタ自動車 CROWN “MAJESTA” CM曲)
Sunday (NHK “日曜美術館” テーマ曲)
Asian Dream Song (長野パラリンピック冬季競技大会テーマ曲)
Angel Springs (サントリーウイスキー “山崎 -山紫水明編” CM曲)
Kids Return (映画 “キッズ・リターン” テーマ曲)
Highlander
Rain Garden
White Night
Les Aventuriers
The Wind of Life

Transcripted by Shiori Aoyama

 

[NOSTALGIA ~PIANO STORIES III~]
Nostalgia (サントリーウイスキー “山崎” CM曲)
旅情
Cinema Nostalgia (日本テレビ系 “金曜ロードショー” オープニング・テーマ)
il porco rosso (映画 “紅の豚” より)
Cassanova
太陽がいっぱい
HANA-BI (映画 “HANA-BI” メインテーマ)
バビロンの丘
la pioggia (映画 “時雨の記” メインテーマ)
Nocturne

Transcripted by Tadaomi Idogawa

 

監修:久石譲
協力:株式会社ワンダーシティ
定価:1,600円+税
発行:株式会社ドレミ楽譜出版社

 

Score. 『久石譲 サントラ・ベスト・コレクション』

2000年8月30日 発行

久石譲監修によるピアノ曲集。編曲は他者によるもの。久石譲が手がけた数々の映画音楽のなかからメインテーマや主要曲を集めたピアノ譜。

 

【補足】

当時は公式スコア[オリジナル・エディション]という位置づけがまだなかった。久石譲監修ではあるが他者の編曲による(当時はそれが主流だった)。ただし、CD作品のマッチングとして同時期に楽譜出版されたもの、また楽譜表紙(装丁)がCDジャケットデザインに準ずるもの、制作協力クレジットされ公式コンサートパンフレットや媒体でも紹介されていたもの、これらを監修・公認(準公式)楽譜として紹介している。

 

 

久石譲/サントラ・ベスト・コレクション

映画『川の流れのように』より
ふれあい・I
ときめき
The River

映画『はつ恋』より
時は流れて
願い桜
はつ恋

映画『菊次郎の夏』より
Summer
The Rain (Piano&Violin&Cello)
Summer Road

映画『HANA-BI』より
HANA-BI

映画『時雨の記』より
la pioggia

映画『パラサイト・イヴ』より
EVE

映画『女ざかり』より
The Waltz

映画『あの夏、いちばん静かな海。』より
Silent Love ~Main Theme~
Melody of Love

映画『ふたり』より
風の時間
草の想い

映画『仔鹿物語』より
Dear’s Wind

映画『タスマニア物語』より
Tasmania Story

映画『NASA -未来から落ちてきた男-』より
As Time Passes

映画『カンバック』より
Next Win

映画『春の鐘』より
Spring Powder

映画『釣りバカ日誌2』より
Dairy

映画『水の旅人 -侍KIDS』より
水の旅人

監修:久石譲
協力:株式会社ワンダーシティ
編曲:青山しおり
定価:1,500円+税
発行:株式会社ドレミ楽譜出版社

 

Disc. 久石譲 『Shoot The Violist ~ヴィオリストを撃て~』

久石譲 『Shot The Violist〜ヴィオリストを撃て〜』

2000年5月17日 CD発売 POCH-1928

 

久石譲アンサンブルにイギリスの弦楽四重奏団 バラネスク・カルテットを迎え、それぞれの音の融合が生み出すミニマル・ミュージックをベースにした、スピード感リズム感溢れる演奏。世紀末に向けて書き下ろした新曲を含むファースト・アルバム。※

(メーカーインフォメーションより)

 

※本作品は発表時”久石譲アンサンブル”名義となっていたためファースト・アルバムと記されている

 

 

DEAD Suite

今回このコンサートのために書いた新曲「DEAD Suite」は、僕がクラシック、現代音楽の世界から離れて19年ぶりに書き上げた楽曲だ。DEAD-英語音名で言う「レ・ミ・ラ・レ」をモティーフにして作曲された楽曲だ。いささかポップスのフィールドを逸脱したかもしれないが、20代後半にポップスの世界に転向して以来初めての本格的な現代音楽作品になる。リズムが移り変わり、不協和音ぎりぎりのところで構成されたこの楽曲は、音楽家として生きてきた、自分のアイデンティティーのための曲である。

なぜ今まで音楽をやってきたのか? を問いつめながら、今世紀末のひとつの区切りとして僕にとって通らなくてはいけない道、なくてはならない楽曲となった。最終的には4曲から成り立つ組曲を考えているが、今回のコンサートえ披露できるのはその内の2曲までになる。後は来年書き足そうと思っている。

(「久石譲 PIANO STORIES ’99 Ensemble Night with Balanescu Quartet」 コンサート・パンフレットより)

 

 

「今年に入って、イギリスのバラネスク・カルテットという弦楽四重奏団を呼んで『Shoot The Violist』というソロアルバムを出したんです。これで非常に吹っ切れましてね。ああ、自分の代表作ができたなって。20代とか大学を出るところでね、こういう作曲家になりたいって思っていたことを20年かけて完成させたっていう感じかな。「ピアニストを撃て」という映画に掛けたタイトルなんだけれど、カルテットというのはヴァイオリンやチェロと違って、ヴィオラっていちばん埋もれがちになるんですね。カルテットの中では、弱者なんです。その弱者を撃てっていう反意語で使っていたものが、現実では17歳の子供がキレて弱者をねらってる。時代の最も悪い雰囲気を警鐘のように捉えられたアルバムになったなあって。これを作ったことで、自分の中で何かが吹っ切れましたよね。去年辺りまでクラシックなアプローチを極めてたりしたんですけれど、このままこの道を走るのかどうかすごく悩んだんですね。で、結果はそうじゃない道を選んだ。つまり巨匠じゃない道を歩んでいると(笑)。それがすごくよかったな、と。」

「僕がいまいるポジションというのは、クラシックの前衛芸術家という立場ではないですね。あくまで町中の音楽、つまりポップス。自分のソロアルバムを買ってもらう、一般に映画で見てもらうというのが自分の原点だから、自分が完成されていくっていうことよりも、自分と社会の関係の方が大切なんですね。今みんなが生きていて苦しんでいることを反映できないような曲を書き出したときには終わりだなって、いつも思っているから。そういう自分の生き方を踏まえたINGで動いてるっていう自分が確認できたことがうれしいってことかな。それにスタンスに余裕ができましたよね。音楽を作る上で、あるいは映画の音楽を作る上で何が必要で、自分に何が欠けているのか、それがすごく分かるようになってきたということですね。」

Blog. 「キネマ旬報 2000年7月上旬 夏の特別号 No.1311」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

 

アルバムタイトルは、映画「ピアニストを撃て」からきている。今回のアルバムのジャケットに『あなたは今、ピストルを持っている。そのピストルには2発の銃弾が込められていて、あなたは撃つことができる。目の前に3人の男がいる。サダム・フセイン、アドルフ・ヒットラー、ヴィオラ奏者…。さてあなたは誰を撃てば良いでしょうか?』というメッセージがある。

なぜヴィオラなのか。アンサンブルでもオーケストラでもなかなか目立たない存在だが、とても重要な楽器で、ヴィオラがしっかりしているオーケストラは素晴らしいものになる。そんなヴィオラにも目を向けてもらいたいと”ヴィオリストを撃て”というタイトルにした、と久石譲は当時語っている。

 

 

 

久石譲 『Shoot The Violist〜ヴィオリストを撃て〜』

1. 794BDH
2. KIDS RETURN (映画「キッズ・リターン」より)
3. DA・MA・SHI・絵
4. DEAD Suite [d.e.a.d.]
5. DEAD Suite [愛の歌]
6. TWO OF US (映画「ふたり」より)
7. MKWAJU
8. LEMORE
9. TIRA-RIN
10. Summer (映画「菊次郎の夏」より)

Produced by JOE HISAISHI

All Composed and arranged by JOE HISAISHI

Joe Hisaishi Ensemble members:
Joe Hisaishi:Piano
Balanescu Quartet
Jun Sato:Bass
Hirofumi Kinjo:Woodwind
Masamiki Takano:Woodwind
Momoko Kamiya:Marimba
Marie Ohishi:Marimba & Percussion

Recorded at Sound City , Wonder Station

Recording & Mixing engineer: Masayoshi Okawa
Assistant engineers: Nobushige Mashiko (Sound City)
Hiroyuki Akita (Wonder Station Inc.)
Technical engineer: Suminobu Hamada (Wonder Station Inc.)
Editor: Hiroya Ishihara (Wonder Station Inc.)
Mastering engineer: Shigeki Fujino (Universal Music K.K.)

 

Shoot the Violist

1.794BDH
2.KIDS RETURN
3.DA-MA-SHI-E
4.DEAD Suite (d.e.a.d.)
5.DEAD Suite (Love Song)
6.TWO OF US
7.MKWAJU
8.LEMORE
9.TIRA-RIN
10.Summer

 

Disc. 久石譲 『川の流れのように オリジナル・サウンドトラック』

久石譲 『川の流れのように』

2000年4月29日 CD発売 COCP-30887
2000年4月29日 CT発売

 

2000年公開 映画「川の流れのように」
監督:秋元康 音楽:久石譲 出演:森光子 田中邦衛 他

 

 

「川の流れのように 2000」美空ひばり

2000年3月1日 CDS発売 CODA-1816
2000年3月1日 CTS発売 COSA-1434

川の流れのように 2000

1. 川の流れのように 2000
作詩:秋元康 作曲:見岳章 編曲:久石譲
演奏:新日本フィルハーモニー交響楽団 ピアノ:久石譲
2. 川の流れのように
作詩:秋元康 作曲:見岳章 編曲:宇崎孝路
3. 川の流れのように 2000 (オリジナル・カラオケ)
4. 川の流れのように (オリジナル・カラオケ)

封入特典:「川の流れのように」オリジナル版メロディー譜

 

シングル発売されたこちらの楽曲では、オリジナル・サウンドトラック収録盤とは異なるアレンジで、プログラミングされたリズムパートがある。本編エンドクレジットで流れた劇場版(サントラ盤)は、このリズムパーカッションを抜いたものであり、その他オーケストラによる伴奏は同一である。なおカップリングには、原曲オリジナル版が収録されている。

 

 

映画「川の流れのように」音楽制作を終えて

この映画音楽では制作にあたって注意したことが2つあります。美空ひばりさんというたいへんな天才と共演すること。もうひとつは秋元康監督が表現したいであろう老人達の世界観をどうだすか、この2つの点に最も注意をはらいました。最初の点については、すでにお亡くなりになった人と自分がどう関わるのか、それが大きなポイントでした。その時に閃いたのは、10年くらい前だとマルチ録音をしているはずだと、美空ひばりさんのボーカル・パートを抜き出して、それとこの映画の世界観に合う新しいアレンジをする。現在、美空ひばりさんと共演する新しい美空ひばりの「川の流れのように」を作ることが浮かんだわけです。もうひとつは、秋元監督が表現しようとした老人達の世界観について。海辺の小さな漁港で、もう必要とされない老人達が、実は最も知恵をもっていて生き生きと生きている。年齢が若い、あるいは年をとっているというところに問題があるのではない。長い間生きてきて、そこにはいつでも青春があるわけで、その時空を越えて人々は生きていく。そんな人間の根元的な声にしたいという思いをこめて、ブルガリアン・ボイスを起用しました。青春の時間というのが一瞬ではなく永遠であるということを音楽的に表現しようと思いました。

久石譲

(CDライナーノーツより)

 

 

久石さんを見ててプロだなと思うのは、音のこぼし方ですね。カットが変わった時の音のこぼし方。普通は、一つのシーンで音楽を入れるとすると、そのシーンとともに音楽は終わるじゃないですか。例えば次は外に出て車に乗るシーンだとしたら、そこには別の音楽が、あるいは車の騒音を入れるとか。でも久石さんはそこへ微妙に前の音楽を落とす。そうすることによって、絵がなめらかになるし、言葉は終わっているんだけど音楽が続いているから余韻が残るんですよね。またはせつなさが残ったり。(秋元康)

例えば秋元監督と『川の流れのように』という映画をやる。これは確かにいい話で、老人たちももっと元気が出る。そこでいい話だからいい音楽を書こうと普通は思いますよね。いいメロディーを書いて心温まる音楽を作ろうと。でもそうすると監督の視線と一緒になりすぎてしまって、単になぞるだけじゃないかと考えてしまうんです。例えば映画の冒頭のシーン、主人公が伊豆に何十年ぶりかに帰ってきた。そこに、いかにも帰ってきましたという美しくせつない音楽をつけてしまうと、全体のトーンがベタベタになってしまうんじゃないかと思うんです。台本を読んだ時から考えていたんですが、ブルガリアン・ヴォイスを使ってみたらどうだろうかというアイデアが浮かんだ。いったいどこの国の音楽だろうと観た人が不思議に思うような。ただそのまま使うと、よくありがちな奇を衒ったものになってしまう。それでオーケストラとブルガリアン・ヴォイスをミックスした。ある種のミスマッチなものは絶対ダイナミックに広がっていくし、もう一カ所ポイントになるものを使えば全体の音楽的な筋は通るんじゃないかと思った。まあ秋元さんとやらせてもらってるからこそ、そういうアイデアが出てくるんですけどね。(久石譲)

いや、それはプロの技ですよ。ブルガリアン・ヴォイスから嵐のシーンのオーケストレーションまで幅が広い。ブルガリアン・ヴォイスだけのアイデアを出せる人はブルガリアン・ヴォイスのテイストで最後までいっちゃうんですね。そうすると今度は映像と音楽が分離してしまう。それにしてもラッシュの音がない時に比べて数百倍良かったです。(秋元康)

日本映画としては本当にお金を出してもらったんですよ。ホールでオーケストラをきっちり録れるなんてまずないですから。これだけの規模でできたからこそなんです。(久石譲)

オーケストラというと、それだけの人数と楽器を集めて、ホールまで借りるのは、すごくお金がかかる。だから大抵みんな打ち込みでやるんですけど、久石さんがホールでモニータに映像を流して同時に録ろうとおっしゃった。すごく贅沢ですよ。アメリカではそういうシステムが整っているけど、日本ではなかなかできない。(秋元康)

設備が整ったところで録るわけではないので、レコーディング機材を全部運び込まなくてはいけなくて、ものすごく大変なんです。しかもいろいろトラブルがあるし。(久石譲)

我々も、いつもああいうことができると思ってはいけないんですね。(秋元康)

でもこの先デジタルになったら、もっとああいうやり方の重要性が出てきますよ。ホールのアンビエントがそのまま再現されるから、とても奥行きが深くなる。(久石譲)

迷ってたのは、ラストまで「川の流れのように」の曲を出していないんですよね。途中で一回インストで流して前振りを作ったほうがいいのかとずっと考えていた。でも結局やめた理由は、曲が始まった瞬間に観客が「川の流れのように」だと気づいて予定調和になってしまうから。ラッシュを観た時、出さなくて良かったと思いました。その分、森光子さんのツーハーフ、そしてラストのひばりさんの歌が生きた。(久石譲)

Blog. 「秋元康大全 97%」(SWITCH/2000)秋元康×久石譲 対談内容 より抜粋)

 

 

 

久石譲 『川の流れのように』

1. Village Song(ブルガリアン・ソング)
2. Memories
3. ふれあい・I
4. 記憶の扉
5. ときめき
6. Old Fishermans
7. グラフィティ
8. ふれあい・II
9. 残された時間
10. Memories ~refrain~
11. The River
12. A Storm
13. Voice of the Sea(ブルガリアン・ソング)
14. 時は流れて
15. The River ~別れ~
16. 川の流れのように2000 (エンディング) 歌:美空ひばり

音楽:久石譲
演奏:新日本フィルハーモニー交響楽団
収録ホール:大田区民ホール・アプリコ 大ホール

ゲスト・ミュージシャン
Vocal:おおたか静流 Ikuko

 

Disc. 久石譲 『小さな駅で降りる』 *Unreleased

2000年4月12日 TV放送

 

テレビ東京開局記念番組 山田太一ドラマスペシャル「小さな駅で降りる」
音楽:久石譲 上田聡 出演:中村雅俊 樋口可南子 堤真一 他

 

 

単発放送ドラマで、その後TV再放送された機会はあったが、DVD化およびサウンドトラック盤などは発売されていない。また久石譲作品においても、どのアルバムにもオリジナル版およびリアレンジ版含め収録されていない幻の作品となっている。

 

以下は、音楽制作当時の久石譲オフィシャルサイト日記より、参照することができる貴重な情報である。

 

 

  • メインテーマはアコースティックピアノのシンプルなメロディが基本になり、オーボエやリズムが入ることによりバリエーションが創られる。
  • 「小さな駅で降りる」制作2日目。今日はサスペンス風のテーマとそのバリエーションが創られる。
  • 「小さな駅で降りる」トラックダウン。テレビ東京のスタッフも駆けつけ、26曲に及ぶトラックダウンが行われる。基本的にはテーマとバリエーションなので、テーマのバランスがとれれば後はスムーズにいくはずだったのだが…。気が付けば夜中の2時になっていた。

(2000.3月)

 

 

山田太一 小さな駅で降りる

 

Disc. 久石譲 『はつ恋 オリジナル・サウンドトラック』

はつ恋 オリジナル・サウンドトラック

2000年3月23日 CD発売 POCH-1918
2005年10月5日 CD発売 UPCY-9007

 

2000年公開 映画「はつ恋」
監督:篠原哲雄 音楽:久石譲 出演:田中麗奈 他

 

 

「はい。でも、いろいろ話をお聞きしているうちにとてもいい内容だったので、楽曲一曲だけ提供するより、スタンスとして映画全体に関わりたいと思うようになった。僕は仕事を音楽監督という立場でお引き受けするようにしてるんです。どうしても、このご時世だと、いろいろなタイアップがついたりして、なぜかわからないけれどエンディングになると変な歌が流れたりする(笑)。でも、それはテレビに任せておけばいい。映画を作品として完成させるためには僕はそういうことは望まない。だから、『はつ恋』でも映画の中で流れる音楽は全て責任を持つという音楽監督という立場でお引き受けしました。」

「主人公が17~18歳という設定だと2つの方向性が考えられるんです。一つは北野(武)監督の『キッズ・リターン』のような動的な感じ。そういう映画だとリズムを強調する。もう一つは『はつ恋』のような優しいイメージ。17~18歳の女の子の揺れる気持ちを出したかった。それで篠原(哲雄)監督と話し合ってシンプルな感じで行こうと。『はつ恋』って小粒だけどキラリとしたいい映画ですから、最初からピアノと分厚くない弦の世界で作るのが一番いいなと思ったんです。そういったイメージはとても作りやすい映画でした。」

「あのシーン、トータルで6分あるんです。「ここは全部音楽入れて下さい」っていわれた時はちょっとめげましたが、あそこはもう、一番力をいれました。もちろん全部力いれてるんですけどね(笑)。あの6分の中で麗奈さんが真田さんの部屋から外に出て、ふっと見上げるシーン。あの麗奈さんの顔はベストショットだと思います。僕は女優さんの演技を見ていて、一番気になるのが目の強さなんです。俳優の存在感ってつまるところ目じゃないかなと思う。あのシーンの麗奈さんの目、存在感がとても強い。」

Blog. 「Title タイトル 創刊 2000年5月号」 久石譲 × 田中麗奈 対談内容 より抜粋)

 

 

 

はつ恋 オリジナル・サウンドトラック

1. Prologue〜Spring Rain
2. 手紙
3. Challenge
4. 桜の木の下で
5. 時は流れて
6. Spring Rain
7. 秘密
8. Mother’s love
9. おもいで
10. 時は流れて II
11. はつ恋
12. 再会
13. 願い桜
14. Portrait of Family
15. Epilogue〜はつ恋

All Music composed, arranged and produced by Joe Hisaishi

Pf:Joe Hisaishi
Strings:Yuichiro Goto Group
Fl:Takashi Asahi
Ob:Masakazu Ishibashi
Cla:Masashi Togame
Fag:Johsuke Ohata

Recording Studios:Kawaguchiko Studio , Wonder City

 

Score. 『久石譲 サウンドトラック「人体」ベスト・セレクション』

1999年12月30日 発行

久石譲監修によるピアノ曲集。編曲は他者によるもの。久石譲が手がけた「NHK 驚異の小宇宙・人体」シリーズ I ~ III からセレクトされたピアノ・ソロ譜。

 

【補足】

当時は公式スコア[オリジナル・エディション]という位置づけがまだなかった。久石譲監修ではあるが他者の編曲による(当時はそれが主流だった)。ただし、CD作品のマッチングとして同時期に楽譜出版されたもの、また楽譜表紙(装丁)がCDジャケットデザインに準ずるもの、制作協力クレジットされ公式コンサートパンフレットや媒体でも紹介されていたもの、これらを監修・公認(準公式)楽譜として紹介している。

 

 

久石譲 サウンドトラック「人体」ベスト・セレクション

■『驚異の小宇宙・人体』サウンドトラック vol.1~2より
THE INNERS ~遥かなる時間(とき)の彼方へ~ (Opening Theme-Synthesizer Version)
TOUR IN CELL ~ミクロの戦士たち~
FANTASY ~かくも壮大なる小宇宙~
MYSTERIOUS LOVE ~ひと・そして・愛~
TRANSIENT LIFE ~うたかたの夢~
BIRTH ~生命(いのち)の歓び~
THE INNERS ~遥かなる時間(とき)の彼方へ~ (Ending Theme-Orchestra Version)
THE ORIGIN OF SPECIES ~35億年の結晶~
STRANGER ~かくも果てしなき未知の世界へ~
DÉJÀVU ~わればかりかく思うにや~
ONE NIGHT DREAM ~千億光年の夢物語~
THE INNERS ~遥かなる時間(とき)の彼方へ~ (Violin Version) [ヴァイオリン・ソロ&ピアノ伴奏]

■『驚異の小宇宙・人体II/脳と心』サウンドトラック vol.1~2より
PRINCIPLE OF LOVE ~やさしさの芽生え~
IMAGINATION FACTORY ~魔術師たちの部屋~
BRAIN&MIND ~未知の秘境へのいざない~ [ピアノ弾き語り]
EMOTION ~永遠の春~
COMPASSION ~はぐくまれた命~
DREAM OF GAEA ~懐かしき時夢~
FLASHOVER ~この一瞬にこめた想い~
PROCESS OF EVOLUTION ~運命の万華鏡~

■『驚異の小宇宙・人体III/遺伝子・DNA』サウンドトラック vol.1~2より
History
Wonderful Life
A Gift From Parents
Gene (Piano)
遥かなる時を超えて (Another Version)

監修:久石譲
協力:株式会社ワンダーシティ/NHK/ポリドール株式会社
編曲・採譜:青山しおり
定価:1,400円+税
発行:株式会社ドレミ楽譜出版社