Info. 2025/09/21 [ラジオ] NHK-FM「ブラボー!オーケストラ」音楽監督就任!久石譲と日本センチュリー交響楽団 放送決定

Posted on 2025/09/14

ブラボー!オーケストラ

音楽監督就任!久石譲と日本センチュリー交響楽団

[NHK-FM] 2025年09月21日 午後7:25 〜 午後8:25 (1時間0分) “Info. 2025/09/21 [ラジオ] NHK-FM「ブラボー!オーケストラ」音楽監督就任!久石譲と日本センチュリー交響楽団 放送決定” の続きを読む

Overtone.第106回 「JOE HISAISHI SPECIAL CONCERT 祈りのうた2025」コンサート・レポート by ふじかさん

Posted on 2025/09/09

2025年8月23~27日開催「JOE HISAISHI SPECIAL CONCERT 祈りのうた2025」コンサートツアーです。4月から日本センチュリー交響楽団の音楽監督に就いています。「音楽監督就任披露演奏会」として愛知・大阪・兵庫・東京の4都市を巡りました。

今回ご紹介するのは、久石譲夏の3大コンサート完全制覇のふじかさんです。最後まで気迫と充実の漲るレポートはさすがです。作品ごとに音楽のイメージも浮かぶし、さらに音楽的情景や物語まで鮮明に浮かび上がってきます。今回いつもより少し提出が遅かったのですが、、いやいや時間とエネルギーを捧げただけのことはある濃密さです。コンサートに行ってレポートを書く、夏の自由研究は大きな花丸3つ達成ですね。ぜひお楽しみください。

 

 

Joe Hisaishi Special Concert 祈りのうた 2025
日本センチュリー交響楽団 音楽監督就任披露演奏会

[公演期間]  
2025/08/23 – 2025/08/27

[公演回数]
4公演
8/23 愛知・愛知県芸術劇場 コンサートホール
8/25 大阪・フェスティバルホール
8/26 兵庫・兵庫県立芸術文化センター KOBELCO 大ホール
8/27 東京・東京オペラシティ コンサートホール

[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:日本センチュリー交響楽団
ヴォーカル:テオ・ブレックマン
合唱:東京混声合唱団

[曲目]
スティーヴ・ライヒ:砂漠の音楽 *Chamber version with brass *日本初演

—-intermission—-
久石譲:祈りのうた(映画『君たちはどう生きるか』より)
久石譲:The End of the World

—-encore—-
Ask me why (Pf.Solo)(大阪・東京)
One Summer’s Day (Pf.Solo)(兵庫)
World Dreams for Mixed Chorus and Orchestra

[参考作品]

 君たちはどう生きるか サウンドトラック 久石 The End of The World LP o

 

 

Joe Hisaishi Special Concert 祈りのうた 2025
日本センチュリー交響楽団 音楽監督就任披露演奏会 東京公演 コンサートレポート

 

ツアー最終公演 8月27日の東京公演の模様をレポートさせて頂きます。

2025年8月27日 東京オペラシティコンサートホール 19:00開演

 

夏の3大コンサート、最後を飾るツアーは”祈りのうた”ツアーになります。日本センチュリー交響楽団の音楽監督就任を祝うツアーですが、8月23日からわずか5日間で4公演回るというなかなかハードな日程だったと思います。

プログラムは昨年のFOCの流れもありつつ、その1週間前にイギリスでのコンサートの内容も踏まえつつという構成でしたが、今の時代に対する強い久石さんからのメッセージも込められたとても内容の濃いコンサートとなりました。演奏は一番迫力があったんじゃないか?と思う本当に充実の内容でした。

オペラシティでの久石さんのコンサートは、自分が行った中では、2022年のFOC Vol.4以来となりました。

チケットもぎりを通過し、ホール内に入ると、ステージには割と小さめな編成での椅子がセッティングされていました。19:00少し過ぎたところで合唱隊が登壇、その後オケの楽団の一部の奏者が登場し、チューニングへ。その後久石さんがいつものように笑顔で登場しました。

 

・Steve Reich『砂漠の音楽 Chamber version with brass』

昨年のFOCのコンサートには行っていなかったのですが、公演の写真を見るととても大きな編成で演奏をされていたこの楽曲です。しかし今回はタイトルにあるようにチェンバーバージョン。室内楽編成といっても大きさは様々なのでストリングスの人数が少し減ったくらいの編成かな…?と個人的には思っていましたが、今回あまりにの編成の小ささにびっくりしました。

まるでMFでのフューチャーバンド編成を少し大きくしたような人数構成で、様子が全く様変わりしていました。ブラス隊はステージの上手側にまとめられ、鍵盤隊は下手側ギリギリに配置。コーラスは下手側の奥にブラス隊と当たらない位置くらいまで。こんなに小さいのに、あの壮大な曲を演奏できるのかな…?と思いましたが、いざ演奏が始まるとびっくりするくらいの迫力で響き渡りました。ピアノ、マリンバ、弦楽、コーラスと刻みの音が段階的に増えていき、目眩くミニマルの世界へ出発です。

「ⅰ-fast」では導入部が終わり、コーラスが外れて楽器隊のみの演奏になると、久石さんの楽曲のような感覚になります。『Orbis』や『sinfonìa』『Deep Ocean』、いずれもライヒを初めとする現代の作曲家達の音楽に久石さん自身もインスパイアされて曲が作られ続けている様子も伺えます。

「ⅱ-moderate」では木管とコーラス、パーカッションの軽快な絡みが美しく、「ⅲA-slow」では時計の秒針のように聴こえてくるマリンバを始めとする打楽器隊に、合いそうで合わず徐々にズレていく弦楽の旋律が心地よかったです。

「ⅲB-moderate」でのコーラスの短い単語が次々と繰り返しながら折り重なっていく様子には『かぐや姫の物語〜女性三部合唱のための〜』や『I want talk to you』に近い響きの印象も。ここのセクションを中間部として、ここからは今まで演奏した順番を折り返し、遡りながら演奏していきます。

再び「ⅲA-slow」と同様な構成の「「ⅲC-slow」に入りますが、途中グリッサンドのような音で警告のサイレンが響き渡ります。時計の秒針のような打楽器のサウンドとサイレン音が絡み合うと、世界の終わりへのカウントダウンのような印象を受けました。後半の『The End of the World』にも繋がるテーマです。

「ⅳ-moderate」「ⅴ-fast」と楽曲が戻ってくると、同じ曲なのに聴こえ方が異なる印象を受けるとともに、現在へ戻って来れたような安心感も感じました。終盤は徐々に音が高くなりながら、薄くなっていき、静かに消えていくようにして楽曲は幕を閉じました。

およそ45分間、楽章の切れ間もなく、ノンストップで演奏し続けた久石さん、オケ、合唱隊の集中力には圧倒されました。何度かのカーテンコールののちに前半は終わりました。

 

休憩

 

休憩中に大規模な舞台転換が行われていました。弦は14型の久石さんのコンサートではよくある大きめの編成に。中央には久石さんが弾くピアノが設置され、木管・金管・打楽器奏者、そして合唱隊とステージは奏者で埋め尽くされました。

久石さんが登場してすぐにピアノ向かうと、演奏までのタメの時間も短く、直ぐにチューブラーベルに指示を飛ばしていました。

 

・Joe Hisaishi『祈りのうた』

ここからは2015年のWDOを踏まえたプログラムで久石さんの曲で演奏が続いていきます。まずはこの『祈りのうた』から。

チューブラーベルの弔いの鐘の音が3回鳴るところから始まります。プログラム後半はチューブラーベルの鐘の響きが曲毎に意味を変えながら鳴り続けていきます。その響きを感じ取るのも一つの注目ポイントです。

鐘の音に続き、久石さんが単音でAmのコードを展開しながら紡いでいきます。こんなにもステージには奏者がいるのに、そこに響くのはピアノの単音のみ。ピアノのユニゾンも美しく、遠くまで伸びていきます。単音なのに、ピアノの音なのに、徐々に鐘のように聴こえてくる不思議な旋律。

最初のモチーフを弾き終わると、再び鐘の音が鳴ります。その後、次のモチーフが現れると弦楽四重奏がピアノ音に加わってきます。7度の和音が悲痛な叫びのようにも聴こえてきます。転調後の新たなモチーフも引き続き7度の和音が全体を構成しています。弦楽全体が鳴り響き、そこにチューブラーベルの悲しい追悼の鐘が鳴り響きました。

ここの響きは2015年WDOの時も思いましたが、言葉では形容し難いくらい悲しく、重くたく、でも美しく。全身の鳥肌が立ちました。

再び冒頭のAmのコードのモチーフが伴奏付きで演奏され、それに徐々にストリングが加わってきます。盛り上がりはしますが、嗚咽するようなくらい悲しく、重たい足取りのコーダへ。弔いの鐘が最後まで鳴り響き、静かに曲は終わりました。

今回、構成は若干短くなっており、フルサイズだと、A-A2-B-C-A3という構成になっていますが、今回はA2のパートが抜けて、少しスリムな長さになっていました。

 

曲の雰囲気に圧倒されたのか、会場からは拍手もなく、久石さんもお辞儀をして中断することもなく、間髪入れずそのまま指揮台へと向かいました。

 

 

・Joe Hisaishi『The End of the World』

 『I.Collapse』

前曲で弔いの鐘から一変、力強い警告の鐘が冒頭から鳴りづづけます。初めから熱量たっぷりの激しい演奏で、鬼気迫る迫力に圧倒されました。力強い金管の音色に続き、炸裂する打楽器、雪崩れ込むように響き渡る弦楽の旋律。どこか楽観的な木管の旋律と入れ替わるようになり続ける警告の鐘。どんどんと膨張し続ける不安感を煽るように音量も徐々に上がっていくいき、ホール内も揺れているような錯覚に。ダダダダダダという、本当に物事が崩れ去っていくような下がっていく音形が現れた後、曲のピークへ。パニック状態のような緊張に包まれます。コーダ部は警告の鐘が段々とリットしていき、止まるようなスピードで終わります。

 

 『Ⅱ.Grace of the St.Paul』

冒頭からチェロソロで悲しく、祈りを込めたような旋律がゆったりとステージから聴こえてきます。音源よりも溜めもたっぷり。旋律の後ろで太鼓も静かに聴こえてきます。徐々に冒頭の旋律に他の楽器が増えていき、どうしようもない漂流感が漂います。突如聴こえてきるサックスのソロ。中間部はジャジーな響きに1楽章から提示されている警告のリズムが所々に顔を出していく展開へ。再度、冒頭で流れたチェロのメロディが今度は、弦楽4重奏が中心に再現します。

その後、再度ジャジーなパートへ移行します。低音楽器のウォーキングベースに、不安感を煽る旋律に、鳴り響く救急車のサイレンのような信号音。ここでは久石さんも指揮棒を振るのをやめて、スイングに身体を委ねている感じがとてもかっこよかったです。でもこの2楽章は改めて生で聴くと、カオスそのもの。どこかで祈りや悲しみがあっても、日常は続き、でも危機もすぐに隣り合わせ。まさしく今この世の中の不安感を凝縮したような2楽章でした。弦楽だけの重たい旋律のパートが続き、行くあてもなく彷徨い続けるような不安定感のまま、消え入るように終わりました。

演奏が止み、会場内も静まりかえっていました。しばしの沈黙ののちに、ボーカルのテオ・ブレックマンさんが静かにステージに登場しました。

 

 『Ⅲ.D.e.a.d』

2005年発表の『DEAD組曲』からリコンポーズされ『The End of the World』に組み込まれた異色の経歴を持つ第3楽章。原曲の多層的で重厚的で悲壮感たっぷりの雰囲気はそのままに声楽パートが新たに加えられ、『The End of the World』では緩徐楽章的な役割も果たしていると思います。

2015年WDOではカウンターテナー、2024年ではソプラノ、そして今回はボーカルという新たな声質での披露となりました。この声の選び方は、久石さんも模索し続けているような気がします。

今回、ボーカルとしてジャズシンガーの方を起用した理由は久石さん自身もしっかりとした意図もあると思いますが、個人的に聴いた感想としては、2022年のWDOで披露された『My Lost City組曲』でメインの旋律がバンドネオンで奏でられてことにより、よりリアルな聴こえ方になった感じに近いものを思いました。

カウンターテナーのような普段聴き慣れないような声ではなく、ソプラノのように高らかに歌い上げるようでもなく、今の生きる人のリアルな想いをボーカルに閉じ込めた感じがします。その予感は後述する第5楽章でより強く感じます。絶望の中、しとしとと呟くように歌われる旋律に終始感動していました。

 

 『ⅳ.Beyond the World』

ミニマル的なパルスのリズムに重厚なハーモニー、半拍ずつずれていくような変拍子、でもメロディアスな要素も感じられる4楽章。制作年の近さから『Oribs』『Links』に通ずるものもあると思います。不安と混沌から生きることへ意志へと転換を提示するとても大事な楽章です。中盤からコーラスが歌い上げる歌詞に今回の公演の久石さんの想いがぎっしりと詰まっている気がします。

後半にかけては1楽章、2楽章で示されていた警告の鐘の音が再び姿を現し、それに負けじと前に進んでいく人々のエネルギーを合唱隊の旋律と歌詞から感じます。盛り上がりがピークを迎えた後、警告の鐘が静かに響き渡る中、5楽章へと続いていきます。

 

 Recomposed by Joe Hisaishi:『The End of the World』

今回、この公演にいく数日前に、親しい友人がこの曲の和訳をしてくれました。その和訳がとても好きで、何度も読み返した上でこの楽曲を聴くと歌詞の切なさがより一層沁み渡りました。

2015年版よりコーラスパートも加筆されており、より美しいシンフォニックな響きに進化しており、さらに感動。前半は、ボーカルのテオさんが優しく語りかけるように、その美しい旋律を情感たっぷりに歌い上げます。その後、後半にコーラスが朗々とメロディーを歌い上げるところでうるうるしてしまいました。

1楽章から響き続けた警告の鐘もこの楽章では優しい一筋の希望の鐘の音色の聴こえてくるのも必聴ポイント。終盤では打楽器の大きなトレモロが会場を揺らすほど大きく炸裂します。これは新たな世界へ向かう旅立ちの合図なのか、それとも新たな火種の合図なのか…?鐘の音が静かに何度か響き渡り、静かに曲が終わりました。

 

客席からは緊張の糸が解けたような大きな拍手、歓声もあったと思います。何度かのカーテンコールが行われ、そしてこちらも恒例となっている各セクション奏者の紹介と拍手が行われました。そして久石さんもカーテンコールを終えたのち、ピアノへと向かいました。

 

Encore

『Ask me why』

今回はピアノソロにて。冒頭のGのコードが響いた瞬間の会場からの声にならない声の雰囲気が忘れられません。構成は今までのピアノソロで演奏してきたものより、少し短めで最後のサビが無くなったショートバージョン。サントラ版の『Ask me why(眞人の決意)』を少し長くしたような感じでした。

ここまで重厚なプログラムを演奏してきて、この曲で久石さんから「さぁ、あなたはどう生きていきますか?」というメッセージもあったような気がしますし、「あなたたちはもう実はどうするか決まっているんじゃないですか?」という確認にも捉えることができました。

サプライズのピアノソロに会場も酔いしれていました。個人的には久石さんの演奏動画といえば、2003年のEtudeツアーのコンサート映像です。今回その収録が行われたオペラシティコンサートホールで久石さんの生演奏が聴けたことは感無量でした。

 

『World Dreams for Mixed Chorus and Orchestra』

最後のアンコールは渾身のこの曲で。このプログラムの最後の最後にこの曲は本当に感動でいっぱいです。この曲も同時多発テロがきっかけで制作された一つ。2011年には歌詞も加えられ、より楽曲のクオリティが一段と上がった気がします。

今回は本当に歌詞が沁みました。数年前まではコロナ渦で不自由な生活での希望の光に聴こえていたこの曲が、今では昨今の世界情勢を憂い、少しでも前を向いて進んでいく応援歌のような存在にも感じます。

”哀しみにつまずけば 自由が見える 歓びの灯が消えても 共に歩き続けよう”この歌詞が本当に心に刺さりました。ジブリコンサートでの『アシタカとサン』も共通のことを歌っているところにもこの夏のコンサートの共通性も感じてしまいます。

最後は希望の鐘の音が高らかに鳴り響き、この圧巻のコンサートの幕が閉じました。

一瞬の沈黙ののちに炸裂する拍手の音、ここから一気に観客がスタンディングオーべションへ。割れんばかりの拍手喝采の中、久石さんは笑顔で弦楽の主要メンバーと握手を交わし、何度かのカーテンコールで熱狂の渦のままステージを後にされました。

 

 

夏の3大コンサート、全て終えました。本命は7月のサントリー公演でしたが、満足度はこの”祈りのうたツアー”だったかもしれません。

久石さんは常々「音楽家は音楽で伝えればいい」とおっしゃってきています。その言葉通り、音楽で想いをぶつけてきた今回のプログラムに圧倒されました。そして2014年のWDO2期の始動時のインタビューで「もう戦前なんですよ」という言葉も残しています。

ここ数年は世界も混迷を極め、不安定な時代をずっと彷徨っています。でも自分自身を見失わずに前を向いていこうというポジティブなメッセージに本当に救われる気がします。

戦後80年という節目を追悼したり、振り返ったりするわけではなく、今を生きる私たちへの前向きなメッセージを込めた”祈りのうたツアー”。それらの想いをたっぷり浴びた2時間半のコンサート。本当に幸せで、考える時間でもあり、前を向く時間でもあったと思います。

この3大コンサートの中で共通して『Ask me why』が演奏されたことも特筆できる点で、ただ想いを提示するだけではなく、問いかけをしてきたのもただのエンターティメントのコンサートだけで終わらせたくない久石さんの想いも感じました。「アーティメント」の意思が伝わったきたこの夏のコンサートたちでした。

余談ですが、80年前の8月27日は連合国軍の日本進駐が開始された日のようです。Recomposed by Joe Hisaishi:『The End of the World』の終盤で提示される打楽器のトレモロは、その日の新たな歴史の1ページを示した音も込められているのかもしれませんね。

明日からも力強く日々を生きていこうと思いを新たにコンサートホールを後にしました。

 

2025年9月8日 ふじか

 

photos by ふじか

https://x.com/fujica_30k

 

あまりの濃密さにまず3回読みました。コンサートで体感したエネルギーがそのまま言葉のエネルギーになっていてすごいです。この夏だけで3つのレポートを書くというのは、ルンルンだけでは書けない大変さがありますよね。それは同じく3つのレポートをリンク紹介させてもらっているショーさんや、今年初めて2つのレポートを送っていただいたthuruさん、そして海外からでも配信や来韓コンサートをレポートしてくれるtendoさんもそうですね。この夏もたくさんのコンサート模様を伝えてもらって音楽の魅力を発信してもらってありがとうございます。

一人一人の感想を読ませてもらうたびに共感や気づきの連続です。ふじかさんのレポートも作品ごとに僕もそう思う!と共感するところがあったり、The End of the World第2楽章は、まさに自分も今回改めてそのカオス感や末恐ろしさを感じたりしたから、こうやって言葉にしてくれて感謝!と思ったり。コンサートから受け取ったメッセージも同じように感じた人はいると思いますが、ちょっとしたニュアンスはやっぱり一人一人のものだから一言でも二言でも言葉にするとすっと入ってきます。

ふじかさんをして「本命は7月のサントリー公演でしたが、満足度はこの”祈りのうたツアー”だったかもしれません」と言わしめた〈祈りのうた2025〉です。それはもちろんレポートからも伝わってくるし、読んだ人からも共感の声があがるかもしれませんね。とにかく今年の夏の3大コンサートはスペシャル!スペシャル!スペシャル!だった。今年の年末にまたみんなのコンサート・レポートを振り返ってみても、これから先どこかで2025年夏のコンサートを振り返ってみたときも、感想は一緒、スペシャル!スペシャル!スペシャル!だった。

 

 

 

 

みんなのコンサート・レポート

 

 

 

「行った人の数だけ、感想があり感動がある」

久石譲ファンサイト 響きはじめの部屋では、久石譲コンサートのレポートや感想をどしどしお待ちしています。どうぞお気軽に、ちょっとした日記をつけるような心持ちで、思い出を残してみませんか。

 

コンサートについて語りたいそう願うのは、ほかならぬ私もまた誰かにコンサートや音楽の魅力を教えてもらった一人だからです。

 

 

みんなのコンサート・レポート、ぜひお楽しみください。

 

 

reverb.
コンサートに行って音楽の経験値は上がる。そのうえ音楽を言葉にする経験値、感想を言葉にする経験値もアップするってすごくないですか!

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

このコーナーでは、もっと気軽にコメントやメッセージをお待ちしています。響きはじめの部屋 コンタクトフォーム または 下の”コメントする” からどうぞ♪

 

Blog. 「JOE HISAISHI SPECIAL CONCERT 祈りのうた2025」コンサート・レポート

Posted on 2025/09/07

2025年8月23~27日開催「JOE HISAISHI SPECIAL CONCERT 祈りのうた2025」コンサートツアーです。4月から日本センチュリー交響楽団の音楽監督に就いています。「音楽監督就任披露演奏会」として愛知・大阪・兵庫・東京の4都市を巡りました。

プログラムはスティーヴ・ライヒ作品から久石譲作品まで濃厚です。「就任記念」というお祝いムードではない「就任披露」、戦後80年の今年にふさわしい渾身と気迫の演奏会は全公演とも満員御礼&スタンディングオベーションで熱狂的でした。

 

 

Joe Hisaishi Special Concert 祈りのうた 2025
日本センチュリー交響楽団 音楽監督就任披露演奏会

[公演期間]  
2025/08/23 – 2025/08/27

[公演回数]
4公演
8/23 愛知・愛知県芸術劇場 コンサートホール
8/25 大阪・フェスティバルホール
8/26 兵庫・兵庫県立芸術文化センター KOBELCO 大ホール
8/27 東京・東京オペラシティ コンサートホール

[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:日本センチュリー交響楽団
ヴォーカル:テオ・ブレックマン
合唱:東京混声合唱団

[曲目]
スティーヴ・ライヒ:砂漠の音楽 *Chamber version with brass *日本初演

—-intermission—-
久石譲:祈りのうた(映画『君たちはどう生きるか』より)
久石譲:The End of the World

—-encore—-
Ask me why (Pf.Solo)(大阪・東京)
One Summer’s Day (Pf.Solo)(兵庫)
World Dreams for Mixed Chorus and Orchestra

[参考作品]

 君たちはどう生きるか サウンドトラック 久石 The End of The World LP o

 

 

まずは会場で配られたプログラム冊子からご紹介します。

 

 

ご来場の皆さん、作曲家で指揮もする久石譲です。

「祈りのうた2025」と題した今回のツアーは戦後80年としてのメモリアルなものになっています。日本人である僕の”The End of the World”は2001年の9.11をテーマにしていて、アメリカ人であるSteve Reichの”The Desert Music”は日本に落とされた原爆の実験場の砂漠がタイトルの意味になっています。普段は論理的な構造を好む僕でも「縁」を強く感じます。他に”祈りのうた”も用意しています。

また2025年から日本センチュリー交響楽団の音楽監督に就任することになりました。古典から現代曲まで幅広く演奏し、楽しい痛快なオーケストラとして団員と協力して活動していく所存です。

皆様に楽しんでいただけると幸いです。

2025年 夏
久石譲

(「JOE HISAISHI SPECIAL CONCERT 祈りのうた2025」コンサート・パンフレットより)

 

 

 

ここからはレビューになります。

 

会場で配布されたプログラムには「スティーヴ・ライヒ:砂漠の音楽」の楽曲解説2ページ/歌詞・日本語訳詞4ページ(サウンド&ヴィジュアル・ライター 前島秀国氏 筆)と、「久石譲:祈りのうた」~「久石譲:The End of the World」の楽曲解説2ページ/歌詞・日本語訳詞2ページ(サウンド&ヴィジュアル・ライター 前島秀国氏 筆)が収められた充実した内容になっています。最新アルバム『Joe Hisaishi Conducts』のフィジカル盤(2026年3月27日発売予定/デジタル:2025年8月8日発売)が出た時にはブックレットにそのまま掲載されてほしいくらいの超重要ナビゲーターです。

スティーヴ・ライヒ作品については同じ前島秀国さんによるコラム、久石譲作品についても同じ前島秀国さんによるCDライナーノーツにも同旨たっぷり掲載されています。ぜひご参考ください。

 

出典:ミニマリスト久石譲がスティーヴ・ライヒの大作“砂漠の音楽”日本初演を担う意義とは? | Mikiki by TOWER RECORDS
https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/38133

 

 

 

久石譲×日本センチュリー交響楽団

その共演歴は約15年以上になります。2008年太王四神記イベント、2012年大阪ひびきの街コンサート、2013年第九スペシャルコンサート、そして2015年,2017年,2019年ジルベスターコンサートなどがあります。2021年には日本センチュリー交響楽団の首席客演指揮者に就任し、それから毎年のように定期演奏会/特別演奏会に登場することになります。大阪を拠点とした関西エリアで精力的にコンサートを開催、2024年にはマカオ公演も実現しました。演奏会プログラムは古典作品への新しいアプローチ、現代作曲家の作品、そして自作品という3つの軸で、常に新しい観客を取り込みながら満員御礼の大盛況です。

2025年4月に日本センチュリー交響楽団の音楽監督に就任しました。プロの常設オーケストラの音楽監督に就くのは初です。就任について「1度はオーケストラと深く関わる仕事をしてみたいと思っていました。たくさんのお客様に受け入れられた上で高い音楽性を維持できるよう努めます。」とコメントしています。任期は3年です。楽団の年間プログラムや中長期的な音楽戦略などに関わりながら、演奏会への出演もこれまで以上に増える予定とのことで期待です。

音楽監督就任1年目の2025/2026シーズンでは、全ての定期演奏会でベートーヴェン交響曲と現代の音楽を組み合わせるプログラムになっています。また親子で楽しめるファミリーコンサートや、小編成アンサンブルで最先端の音楽を届ける「Joe Hisaishi presents MUSIC FUTURE with JCSO」など多彩なコンサートが開催されます。

 

 

これから!まだ間に合う!

 

 

久石譲は今シーズン自ら指揮する定期演奏会でコンサートマスターを松浦奈々さんの一人に固定しています。これについて「1回目で最高の音は出し切れない。数回、演奏することで高いレベルに到達できる」と狙いを語っています。

日本センチュリー交響楽団は約50人の小規模編成です。久石譲は「スポーツカーみたいで、スピード感と切れ味が売り。世界の潮流もそうだ。一人でも多くの観客の心をつかみたい」と意気込みを語っています。室内オーケストラでアンサンブルを磨くスタイルは久石譲 FUTURE ORCHESTRA CLASSICS(FOC)とも共通していますね。

 

 

さていよいよ。

〈JOE HISAISHI SPECIAL CONCERT 祈りのうた2025〉プログラムは、戦後80年を迎えた今年、原爆をもテーマにした「スティーヴ・ライヒ:砂漠の音楽」、9.11に影響を受けた「久石譲:The End of the World」、太平洋戦争の中を生きた映画『君たちはどう生きるか』から「祈りのうた」の三作品です。ここからひとつの大きな〈祈り〉をテーマにしていると感じます。

決して優しくはないプログラムですから、普段のSNSなら「何かわからなかったけどすごかった」みたいな感想も目にしていいはずなのに、今回はコンサートの満足感と納得感を投稿したものがとても目立ちましたね。とりわけ、本演からアンコールまでのプログラムの大きな流れやテーマに感嘆したり、しっかり受け止めている声はとても多かったです。

それからオーケストラ+合唱という圧倒的なパワーです。ステージ後方にずらっと並ぶほどの大所帯でもない約27人の混声合唱でしたが、オーケストラとのバランスも素晴らしく合唱の力に心揺さぶられました。あまり語れる機会もないからはっきり言いたい。久石譲のオーケストレーションの凄さはもうたくさんの人がわかってる。合唱の声部の緻密さや構成もかなり凄い。オーケストラでメロディにたくさんの対旋律やフレーズが交錯するのと同じようなことが合唱でも起こっている。ハモったりするだけじゃない、メロディと内声で層のように歌っているだけじゃない。そう思っているから、ステージの大迫力の合唱も立体的に響いてきて堪能しきりです。

 

 

スティーヴ・ライヒ:砂漠の音楽 *Chamber version with brass

スティーヴ・ライヒといえばミニマル・ミュージックを代表する作曲家の一人です。世界中でたくさんの作品が演奏されていますが、1984年のこの作品はあまりの規模の大きさと難しさからこれまで日本では演奏されていませんでした。日本初演を飾ったのは「久石譲 FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.7」コンサート(2024)です。オーケストラと合唱の約150人という大編成でオリジナル版が披露されました。

本公演では「金管付き室内オーケストラ版」がこれまた日本初演されました。ショット・ミュージックの総譜案内には《ライヒ/ピアソン:砂漠の音楽 ― 金管付き室内楽版 ― 増幅(アンプリファイ)された10の声、縮小オーケストラと金管のための(Boosey & Hawkes)》とあるとおりでこの表記が全てを言い当てているように思います。アラン・ピアソンによる編曲版で、より演奏会でプログラムしやすい編成規模になっています。

僕は、ほぼ中央寄りの一列目で鑑賞したため(座席運に感謝!)、舞台奥の楽器編成がうまくわかりませんでした。オリジナル版も3つのグループに分かれる弦楽セクションですが、室内楽版は3つのカルテットと2人のコントラバスという極めて削ぎ落とされたゾクゾクする編成でした。そのほか、オリジナル版と共通する2人のティンパニ、2台のピアノ+4台のキーボード、本演では27人による混声合唱などとなっていました。

こじんまりとしたものをイメージしますか? 全くもってです。より鋭くなった各楽器や各パートの音はゾクゾクする音像でした。そしてブラスがとても効いていた。素晴らしかったです。圧倒的に飲み込まれる感覚はオリジナル版と同じです。さらにスコアを見るように明瞭に聴こえてくる楽器たちは、アンサンブルフリークにはたまらないものです。弦楽3つのグループも各首席奏者がそれぞれ引っ張っていてしびれました。打楽器だけで10人もいることも、パーカッションフリークにはたまらないものです。本演と同じか近い演奏はCD録音や演奏会動画などでも探すことができます。

 

 

〈JOE HISAISHI SPECIAL CONCERT 祈りのうた2025〉プログラムの「砂漠の音楽」と「The End of the World」は、今年8月BBCプロムスでもロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団との共演で演奏されました。久石譲初出演です!それに関連して公開されたインタビュー動画では、「砂漠の音楽」についてスティーヴ・ライヒさんから「第二次世界大戦後80年に原爆を作った国の作曲家が書いた曲を、落とされた国の作曲家・指揮者が演奏する。これはとてもある種の縁があるというか意味のあることではないか。運命を感じる」とメッセージをもらったと語っています。

久石譲コンサートでは、これまでにスティーヴ・ライヒ作品から「エイト・ラインズ」「クラッピング・ミュージック」「シティ・ライフ」「デュエット」を演奏しています。2024-2025年夏には「砂漠の音楽」、そして今年10月には「18人の音楽家のための音楽」がMUSIC FUTURE Vol.12で予定されています。この作品もライヒ代表作のひとつで「砂漠の音楽」と同じ手法で書かれていることも大きな特徴です。演奏者18人の精鋭アンサンブルに期待です。

 

次いつ聴けるかわからない大作「砂漠の音楽」です。2024年日本初演のオリジナル版のライヴ音源が音源化されたばかり!聴くたびに走馬灯のようによみがえってくる録音芸術はうれしい。そして久石譲ファンでいることがいろいろな作品に豊かに出会えてうれしい。

 

 

 

ー休憩ー

 

 

久石譲:祈りのうた(映画『君たちはどう生きるか』より)

2015年1月5日宮崎駿監督の誕生日に贈られたピアノ曲です。久石譲は「東日本大震災の影響も受けて、祈りとしての分散和音だけで作った曲」とも語っています。三鷹の森ジブリ美術館の展示室用音楽としても使用されるピアノ版は『Minima_Rhythm II』に収録されています。

2015年、戦後70年となった年のWDO2015コンサートでピアノ+弦楽合奏+チューブラー・ベルズ版(『The End of the World』収録)が世界初演されました。映画『君たちはどう生きるか』の「祈りのうた(産屋)」はこのバージョンが元になっています。

コンサートホールに響く水を打ったようなピアノの音は、神聖な空気につくり出します。本演では序盤の繰り返しがカットされていたと思います。冒頭から終結まで聴こえるチューブラーベルズも、様々な想いが倍音となって胸に響きます。祈りや黙とうを捧げる時間を音楽のかたちにしたようなこの曲、大切な一曲です。

 

あっと驚くことに、演奏後の緊張感を保ったまま次のプログラムは続けて演奏されました。

 

久石譲:The End of the World

I. Collapse
II. Grace of the St.Paul
III. D.e.a.d *
IV. Beyond the World ◇
Recomposed by Joe Hisaishi: The End of the World *◇

*ヴォーカル ◇合唱 

2007年にニューヨークの9.11跡地を訪問したことがきっかけとなって作曲された作品です。2008年に全3楽章の組曲が誕生し、その後スタンダードナンバー「The End of the World」と自作品『DEAD』の第2楽章〈The Abyss~深淵を臨く者は・・・・~〉を組み込みながら、こちらも戦後70年にあたる2015年に全5楽章が初演されました。約40分からなる交響作品です。

2025年8月BBCプロムスでも演奏された作品です。久石譲はそのインタビュー動画でスタンダードナンバー「The End of the World」について「”あなたに愛されてなかったら世界は終わる”というラブソングだったんですが、この場合の一人称のラブソングの”あなたに”を”あなたがたに”とかそう捉えていったときに、これってとても大きい人類の曲になるんじゃないかと思って」と語っています。

今年はこの作品を最新アルバム『Joe Hisaishi Conducts』とBBCプロムスのライブラジオそして本公演で聴くことができて、それぞれのパフォーマンスを楽しめるという贅沢さでした。ヴォーカルはマイクを使用していましたが、テオ・ブレックマンさんの歌唱法を聴けばそれもまた納得です。独特なスモーキーな声色は、とても繊細に濃淡にフレーズを歌い分けていました。光や希望というよりも、今のこの世界の悲痛さのほうをより感じました。

日本センチュリー交響楽団の演奏も素晴らしかった。勢いがすごかった!全員野球ならぬ全員演奏といった結束力と集中力が伝わってきました。僕はわりと欲しがるわがままさで何でもコンサート音源化してくださいと言いがちなタイプなんですけれど、この演奏はそれとはまた違う感覚でした。録音にはそぐわないライヴらしい演奏、ほんとそうで勢いとそのパワーは体感することでしか味わえない高揚感がありました。こんな生演奏が聴けるなら録音されなくてもウェルカムだよ!!みたいな手放し感ですね。鼓膜が震えるほどの合唱のエネルギーもすごかった。録音には収まり切れない快演をたっぷり浴びました。9月にはまたピッツバーグ交響楽団と共演予定になっています。世界中で響きわたる大作です。

 

 

The End of the Worldの変遷

久石譲 『Another Piano Stories』

3楽章からなる特殊編成版とスタンダードナンバーは久石譲が歌唱しています。

 

久石譲 『ミニマリズム』

3楽章のオーケストラ版となって合唱パートも加わりました。

 

「d.e.a.d」楽章が組み込まれスタンダードナンバーまでの全5楽章になりました。

 

2015年版ですが第2,5楽章などで新たにアップデートしています。詳しくはFOCvol.7コンサートレポートをご覧ください。

 

さらに言うと、本公演および直前にBBCプロムスで演奏された『The End of the World』は、これまた「Recomposed by Joe Hisaishi: The End of the World」で新たな修正を聴くことができました。『Joe Hisaishi Conducts』収録の2024年ライヴ版までは、歌詞を歌う後半パートから合唱が登場しますが、今回は前半からコーラスのハーモニーが書き加えられていました。まだまだ底の知れない進化をつづける作品です。

 

 

ーアンコールー

 

君たちはどう生きるか
Ask me why (大阪・東京)

久石譲によるピアノソロです。〈祈りのうた2025〉では少し曲尺が短くなっていました。1コーラス~間奏と行ってAメロに戻ってきますが、そのAメロ終わりでrit.して、次のサビには進まずに一気にアウトロの最終和音へと飛びます。アンコールサイズとしては、もしかしたらこれから定着していくバージョンになるのかもしれませんね。

 

あの夏へ(兵庫)

会場ごとにアンコール曲を変えてくるなんてうれしい!久しい!大好き! この曲を聴けた人たちもまたうっとりだったでしょうね。

〈久石譲&ロイヤル・フィル スペシャルツアー 2025 オーケストラ・コンサート〉でも披露されたこの曲は、そのコンサートレポートでは、2001年7月20日公開『千と千尋の神隠し』、その2ヶ月後に起こった9.11米同時多発テロについて少し触れました。

「あの夏へ/One Summer’s Day」「ある夏の日」という言い方もできますね。”One Day”は”ある日”ですけれど、過去と未来、両方の「いつか」を表すことができます。未来にしか使えない”Someday”の「いつか(いつになるか分からないけれど)」は遠い未来または不確かや不特定なニュアンスになるのに対して、”One Day”は「いつか(必ず)」という確信や強い願いや意志を込めたニュアンスになります。

「あの夏へ/One Summer’s Day」は、過去のあの夏へ想いを馳せることもできる。そして未来のあの夏へと強く思い描くこともできる。そこへ向かって行く意志や引き寄せる努力、つまり未来へ祈ることもできる曲だと思うのです。久石譲がこの曲をとりわけ好んでいることには、そういった時空を超えたテーマもあるのではないか(My one answer)と思っています。

 

組曲「World Dreams」第一楽章
World Dreams for Mixed Chorus and Orchestra

2004年に久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ(WDO)のテーマとして書き下ろされた楽曲です。その後、時代の変化とともに楽曲の位置づけも変化していきました。今ではWDOの枠を超えて様々なコンサートで演奏され、海外オケとの共演機会も増えている楽曲です。歌詞をつけた合唱版が初披露されたのは2011年東日本大震災が起こった年の10月です。この版は合唱のためのキーになっているほか、オーケストレーションも混声合唱の各声部と呼応するようになっています。

本公演の「The End of the World」と同じく9.11を強く意識した楽曲でもあります。原版、合唱版、組曲版、ライヴ音源を含めて複数のアルバムに収録されています。その全ての楽曲解説ページで久石譲のメッセージは紹介されています。

”「作曲している時、僕の頭を過っていた映像は9.11のビルに突っ込む飛行機、アフガン、イラクの逃げまどう一般の人々や子供たちだった。『何で・・・・』そんな思いの中、静かで優しく語りかけ、しかもマイナーではなくある種、国家のような格調のあるメロディーが頭を過った」”(CDライナーノーツより)

 

 

本演からアンコールまで、大きなテーマとストーリーを持ったプログラムは圧巻でした。「砂漠の音楽」から「World Dreams」までオーケストラと合唱の巨大なエネルギーは圧倒的でした。作品ごとに響くチューブラーベルズも、警鐘、弔鐘、鎮魂の鐘、そして希望の鐘。

アンコールの会場掲示も注目すべきかもしれません。「Ask me why」ではなく「君たちはどう生きるか」とまさに言葉とおりに聴衆に投げかけています。「World Dreams for Mixed Chorus and Orchestra」ではなく「組曲 第一楽章」とまたここから始まるんだということを強く示唆しているようにも感じました。(本来の組曲版は合唱編成はありません)

 

大阪

兵庫

from SNS (ご提供いただきありがとうございます)

 

 

祈り

祈りとは決意です。広辞苑によると、日本語の「祈り」の語源には「生きる(い)ことを宣(の)る」つまり「自分の意志を宣言すること」の意味があるそうです(詳しくは検索!)。そう考えていくと、「平和の祈り」とは平和を願うことはもちろん、自身の平和への意志を宣言しそれを実現するための具体的な行動を伴う決意表明とも言えます(詳しくは検索!)。なんだかスケールが大きい話にも聞こえますね。でもたぶんそんなこともないです。

日常的なニュースを目にすれば、簡単に人を傷つけてもいい、簡単に人を殺してもいいと思っている人は確かにいるとわかります。それが個人なのか団体なのか国なのか、その数の大きさや影響の大きさが問題なのか、日々さまざまな争いごとは起こっています。じゃあ自分はどうすると自問自答。まずは自分が周囲の人と争いを起こさないように努力する、何かが起きた時は歩み寄り平和的解決へ努力する、この半径3メートルの世界からまた始めたいと気持ちを新たにしました。

戦後80年は、再び戦争に向かわせなかった先人たちの意志と努力のおかげでもあります。次は戦後100年、いや戦後100年を迎えられるかは自分たちにかかっているのかもしれません。まったく無関係ではいられないのは確かだと思うとちょっと身震いちょっと怖い。

2025年夏、久石譲3大コンサート〈スタジオジブリ フィルムコンサート ツアーファイナル〉〈オーケストラ・コンサート〉〈祈りのうた2025〉その全てのプログラムで演奏されたのは『君たちはどう生きるか』(Ask me why/祈りのうた)です。久石譲は音楽をとおして、多彩なプログラムをとおして自分はこう思うけどあなたはどう思う?と問いかけたのだと思います。そうして、これから”君たちはどう生きるか”と返された大切な夏でした。「Ask me why(〇〇の決意)」、〇〇に久石譲コンサート2025に足を運んだ人数分一人一人の名前が入ったら、それはきっととてつもない祈りのエネルギーになる。音楽は無力じゃないし、音楽家に「音楽は無力だ」とは言わせたくはない。音楽に力を持たせられるのもまた聴く人だ、と前向きな希望も持ちました。祈り、そしてさらに一歩踏み出して決意、心震える夏でした。

 

 

 

”音楽は世界を変えられるわけではないし、戦争を止めることもできません。ただ、音楽には人間を人間たらしめる重要な価値があり、(平和のために)できることがある。僕はそう信じています。”(久石譲)

Info. 2025/01/01 [新聞] 「戦後80年 音楽で問う 作曲家・久石譲さん【平和をつなぐ】」(岐阜新聞ほか) より抜粋)

 

 

 

みんなのコンサート・レポート

もう48回目の久石譲コンサートレポートになるんですね。ずっと追いかけててずっと記していてすごいです。SNSでも紹介させてもらったときに「Lv.48の着眼点で楽しいタメになる!!」と何気なしに書いていたら、そこから周りの久石譲ファンの皆さんの自身のレベル投稿が始まっておもしろかったですね。僕もレベル見たんですけれど3回計算して3回とも違ったのでその間をとることにしました(テキトー)。Lv.64でした。行ったことを忘れてるものもあるし、行った気になってるものもあるし、最近では配信で見たものを参戦したつもりになんて注意しないと記憶の改ざんが勃発しています。

回数もいいけど、行くたびにレベルアップしてる感じがいいですよね。音楽の経験値は上がるし豊かになります。あなたはレベルいくつですか? どんな値だったにしろ、きっとわかった瞬間ちょっとした充実した気持ちになると思いますよ。

 

久石譲夏の3大コンサート完全制覇のふじかさんです。最後まで気迫と充実の漲るレポートはさすがです。作品ごとに僕もそう思う!と共感するところがあったり、The End of the World第2楽章は、まさに自分も今回改めてそのカオス感や末恐ろしさを感じたりしたから、こうやって言葉にしてくれて感謝!と思ったり。コンサートから受け取ったメッセージも同じように感じた人はいると思いますが、ちょっとしたニュアンスはやっぱり一人一人のものだから一言でも二言でも言葉にするとすっと入ってきます。

 

 

リハーサル風景

from 久石譲コンサート2025公式X(Twitter)
https://x.com/joehisaishi2025

 

 

ほか

from テオ・ブレックマンInstagram
https://www.instagram.com/theobleckmann/

 

 

公演風景

愛知公演

大阪公演

兵庫公演

東京公演

from 久石譲コンサート2025公式X(Twitter)
https://x.com/joehisaishi2025

 

ほか

公演風景動画(砂漠の音楽)もあります

from 久石譲本人公式インスタグラム
https://www.instagram.com/joehisaishi_composer/

 

 

from 東京混声合唱団公式(Twitter)
https://x.com/TokyoKonsei

 

 

バックステージ

ほか

from テオ・ブレックマンInstagram

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

 

 

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