Blog. 映画「東京家族」 山田洋次監督×久石譲 スペシャルトークセッション

Posted on 2014/1/21

いよいよ2014年1月25日より、山田洋次監督 最新作「小さいおうち」が公開されます。2013年に公開された山田洋次監督50周年記念作品 映画「東京家族」にて、山田洋次監督との初タッグを果たした久石譲が再び音楽を担当します。2作品続けてとなります。

映画本編も、そして映画公開に合わせて発売される「小さいおうち サウンドトラック」もいまかいまかと楽しみにしているところです。

そんな待ち遠しいなか、ちょうど約1年前に行われた「山田洋次監督×久石譲 スペシャルトークセッション」の公式レポート記事をご紹介します。

 

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この度、映画の公開を記念し、国立音楽大学の学生向けに、映画界・音楽界の第一線を走り続けている山田洋次監督、久石譲さんの2人の巨匠による、初の貴重なトークセッションが開催されました!

また、この日を楽しみに集まった250名の学生からもたくさんの質問も飛び出し、更には、久石譲さんによる『東京家族』のピアノ生演奏が行われるなど映画同様大いに盛り上がりました!

■スペシャルトークセッション概要
【日時】2013年1月25日(金)16:20~
【場所】国立音楽大学新1号館オーケストラスタジオ
【登壇者】山田洋次監督、久石譲
【ゲスト】花崎薫(チェロ演奏)
(愛知県立芸術大学准教授 元新日本フィルハーモニー交響楽団首席奏者)
【司会】津島令子

【スペシャルトークセッション内容】
<ご挨拶>
●山田洋次監督:
音楽大学はあこがれの場所です。
ここでどんな授業が行われているのか、想像するだけで夢のようです。

●久石譲さん:
今日は映像と音楽の話で、授業じゃないから興味深い話が出来ると思うから楽しみにしててね(笑)。

●MC:
映像音楽という世界へ入られたきっかけは?

●久石譲さん:
食べるためですかね(笑)
年間300本以上映画を見ていたので、一番好きな音楽と、大好きな映画の仕事ができるからかな。

●MC:
映像音楽の魅力とは?

●久石譲さん:
思い通りにいかないところですね。今でも思い通りにいかない。

●山田洋次監督:
映画が一番近い芸術は音楽かもしれないですね。演劇なんかよりも映画は音楽に近いのでは?映画音楽の学問が日本にないのが不思議なくらいです。

●MC:
ここで、本日は特別に、生演奏をお聞かせ頂きましょう。

<演奏曲>
・One Summer’s Day (『千と千尋の神隠し』より)
・東京家族 (『東京家族』より)
・Departues (『おくりびと』より)

●MC:
山田監督演奏はいかがだったでしょうか?

●山田洋次監督:
『東京家族』の画面が浮かんできました。私の中では音楽と画面が既に一緒になってしまっているようです。

●MC:
山田監督と久石さんは今回の『東京家族』で初タッグを組まれましたが、どのような感じだったのでしょうか?

●久石譲さん:
映画監督も音楽家も呼吸が合うかが大事ですね。『東京家族』はある意味重くて、素晴らしい作品。個人的にはとてもプレッシャーがありました。

●山田洋次監督:
作曲家と組んでやるのはとても大変。お見合いのようなもので、どういう人と組んでやるかというのはとても気を使う。緊張しました。

●MC:
『東京家族』では監督からはどんな指示があったのでしょうか?

●久石譲さん:
空気のような音楽、雰囲気を邪魔しないような音楽と言われていました。今回はあまりたくさんの音楽を必要としない、芝居を邪魔しないで共存出来る音楽なんだと思いました。

●山田洋次監督:
カメラだけ、演技だけ、音楽だけが素晴らしいというのではなく、映画全体でアンサンブルをつくりあげて、観客の心の中にすーっと吸い込まれていくような作品でなければいけないと思っています。

●久石譲さん:
今回は2時間半ぐらいの映画なんだけど、曲は全部で25分ぐらいしかないんです。いかにうすく書くか、でもやせすぎちゃいけない…そんな色々な工夫をしていくうちに、こんな技があるんだと、3つぐらい新しい技を発見しました。

●山田監督:
今回はいかに雰囲気を邪魔しないような音楽と思っていたのですが、でもオーケストラでないといけないと思いました。節約するととどうしても貧しくなってしまう。

●久石譲さん:
色々なテクノロジーが流行るのはいけど、ダウンロードした音楽などはあくまで情報。情報には感動がありません。映画もやっぱり映画館で見るからこそ感じるものがあると思います。

●山田洋次監督:
安っぽく感じるものは全て情報だけで成り立っている。映画は全てのショットが情感を持っていなくてはいけないと思います。

<この後、学生から山田洋次監督と久石譲さんとの間で、活発な質疑応答が行われ、イベントは大盛況のうちに幕をおろしました。>

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映画界の巨匠と映画音楽の巨匠による、とても興味深い話ばかりです。

そして、上のトークから久石譲本人も語っているように、この山田洋次監督との仕事が、それ以降(2013年以降)の作品に大きく影響してきています。

どのトーク内容かというと、

「空気のような音楽、雰囲気を邪魔しないような音楽と言われていました。~ 」
「いかにうすく書くか、でもやせすぎちゃいけない…そんな色々な工夫をしていくうちに、こんな技があるんだと、3つぐらい新しい技を発見しました。」

このあたりが2013年に携わった他の映画作品などにも影響するきっかけとなっています。宮崎駿監督 映画「風立ちぬ」も監督からの要望もあったのも事実ですが、小編成のオーケストレーションとクラシカルな音楽になっていますし、高畑勲監督 映画「かぐや姫の物語」も、ほぼ山田洋次監督と同じ思考といいますか、高畑勲監督からの要望も同じようなものでした。

「今まではどうしても映画音楽としても主張してしまう自分がいたけれど、その力みがなくなった」といつかのインタビューでも語っています。

 

さて、現在進行形の久石譲音楽に、大きな影響を与えた山田洋次監督と「東京家族」。そこからの進化形である映画「小さいおうち」がいよいよ顔を出すかと思うと楽しみです。

 

Related page:

 

東京家族 山田洋次 x 久石譲

 

Blog. DAISHI DANCE 「the ジブリ set 2」 ジブリ名曲たちのダンス・ミュージック!

Posted on 2014/1/16

2013年12月に「the ジブリ set 2」 / DAISHI DANCE がCD発売されました。異例のロング大ヒットを記録したジブリカバーの先駆け「the ジブリ set」の続編です。

2008年に発表された前作から5年です。2008年はスタジオジブリ作品 宮崎駿監督 映画「崖の上のポニョ」が公開された年です。そして、あれから5年の昨年2013年は、宮崎駿監督 映画「風立ちぬ」公開、高畑勲監督 映画「かぐや姫の物語」公開と、ジブリ巨匠の2作品が同年公開された「メモリアル・イヤー」でした。

同じ時を経て、「the ジブリ set」も1から2へ、進化して登場したわけです。ジブリ作品の名曲たちにダンス・ミュージックを融合させて、新しいサウンドへ昇華させたDAISHI DANCEは今回も健在でした。今作の注目はなんといってもオリジナル楽曲を歌ったアーティストがこのアルバムとこのアレンジ楽曲のために参加していることです。

3曲目 カントリー・ロード (JPN ver.) feat.本名陽子
映画「耳をすませば」の月島雫役で、同曲のオリジナルを歌っていた本名陽子さん。クレジットにもあるように、日本語で歌っています。

6曲目 Arrietty’s Song feat.Cecile Corbel
映画「借りぐらしのアリエッティ」で同主題歌を歌っていたセシル・コルベルも参加しています。

 

また前作「the ジブリ set」にて、映画「天空の城ラピュタ」の主題歌「君をのせて」を英語ヴァージョンで披露していたのは、久石譲の娘 麻衣でした。そして今作では、同じく「君をのせて」をなんと待望の日本語で披露しています。しかもヴォーカルアレンジもサウンドアレンジも前作英語ver.から進化しています。

 

ジブリ set 2 

the ジブリ set 2 / DAISHI DANCE

1. 君をのせて (JPN ver.) feat.麻衣 (天空の城ラピュタ)
2. やさしさに包まれたなら feat.GILLE (魔女の宅急便)
3. カントリー・ロード (JPN ver.) feat.本名陽子 (耳をすませば)
4. 風のとおり道 feat.吉田兄弟 (となりのトトロ)
5. アシタカとサン (もののけ姫)
6. Arrietty’s Song feat.Cecile Corbel (借りぐらしのアリエッティ)
7. 帰らざる日々 (Mellow mix) (紅の豚)
8. 時には昔の話を feat.COLDFEET (紅の豚)
9. ひこうき雲 feat.arvin homa aya (風立ちぬ)
10. あの夏へ (Mellow mix) (千と千尋の神隠し)
11. さよならの夏~コクリコ坂から~ feat.Lori Fine(COLDFEET) (コクリコ坂から)
12. Take Me Home, Country Roads feat.arvin homa aya, SHINJI TAKEDA (Re-Visited SAX mix)  (耳をすませば)

 

 

ちなみに前作はというと

DAISHI DANCE the ジブリ set サムネイル 

the ジブリ set / DAISHI DANCE

1. 天空の城ラピュタ:君をのせて feat. 麻衣
2. 千と千尋の神隠し: あの夏へ
3. となりのトトロ: 風のとおり道
4. おもひでぽろぽろ:The Rose feat. Lori Fine (COLDFEET)
5. 魔女の宅急便: 海の見える街
6. ハウルの動く城:人生のメリーゴーランド
7. 風の谷のナウシカ:ナウシカ・レクイエム
8. 風の谷のナウシカ: 風の伝説
9. もののけ姫: もののけ姫
10. 千と千尋の神隠し:いつも何度でも feat. Chieko Kinbara
11. 耳をすませば:Take Me Home Country Roads feat. arvin homa aya
12. となりのトトロ: となりのトトロ

 

 

収録曲のラインナップを見比べてみますと、

「君をのせて」 (天空の城ラピュタ)
「風のとおり道」 (となりのトトロ)
「あの夏へ」 (千と千尋の神隠し)
「Take Me Home Country Roads」 (耳をすませば) ※カントリー・ロード 英語ver.

曲目がかぶっているのが4曲ありますが、アレンジは違います。先に言ったように、「君をのせて」は日本語ver.になっていますし、「風のとおり道」はダンスビートの打ち込みと、吉田兄弟の三味線が見事にコラボしています。

今作「the ジブリ set 2」では、前作にもまして原曲の雰囲気に忠実、近いと思います。リズムが入っているからといって、原曲よりもテンポが過剰に速くなってしまっていたりということもなく、おそらくほぼ原曲に近いテンポ感・リズム感のビートになっています。

これもまたDAISHI DANCEがジブリ作品や久石譲音楽を純粋に愛している、尊敬の念を持っているからだと思います。活動ジャンルこそ違えど、若き日から、本当に久石譲ばかりを聴いていたとDAISHI DANCE本人も語っているくらい、久石譲音楽には大きく影響を受けたそうです。

「the ジブリ set 2」では、・メロディアスでドラマティックな定番のスタイル・現在進行形のダンスミュージックのトレンドを意識した“今らしさ”・新たにメロウなビート構成、3つの音楽性を織り交ぜる事でさらなる魅力を生み出すことに力を注いでいます。

 

個人的には、やっぱりラピュタの「君をのせて」は日本語で聴けて感動です。やっぱりあの日本語歌詞がいいのです。そしてその名曲を、オリジナルを超えて久石譲の愛娘、麻衣さんが歌っているというのもなんだか感慨深いものがあります。

ちなみに麻衣さんはDAISHI DANCE名義の他オリジナル・アルバムにも参加しています。そこでも久石譲作品を歌っているのですが。ヒントはトゥーランドットです。

「カントリーロード」も2ヴァージョン収録されていますが、やはり日本語詞とあの日本語の響きやテンポ感がいいですね。改めて今回聴いて、いい歌詞だな、深い歌詞、と聞き入ってしまいました。本家のオリジナル歌手:本名陽子さんも色褪せない歌声でしたし。

宮崎駿監督 最新作「風立ちぬ」の主題歌(ユーミン)もしっかり収録されています。こちらは英語ヴァージョンです。同じくユーミンの「やさしさに包まれたなら」ならも名アレンジだと思います。心が踊るようです。まさに本作のジャケット写真のような青空な気持ちになります。

 

パーティーやドライブなどには持ってこいのダンスサウンドから、ほっと心安らぐメロー・ビートまで、いろんなシーンをドラマティックにしてくれるアルバムです。

普段は久石譲以外(アレンジもの含め)ほとんど紹介しないのですが、DAISHI DANCEの「the ジブリ set」は、本当にジブリファンも久石譲ファンも納得、原曲を大切に心を込めてアレンジした、良品サウンドになっています。

 

Related page:

the ジブリ set 2

 

Blog. 久石譲 2013年 お仕事 まとめ

Posted on 2014/1/11

2013年は近年稀にみる「ジブリ・メモリアル・イヤー」でした。宮崎駿監督「風立ちぬ」公開、高畑勲監督「かぐや姫の物語」公開、そして宮崎駿監督の引退会見と。このジブリ一色に翻弄されそうな2013年ですが、久石譲ももちろん上の巨匠2作品に音楽をつけたわけです。そしてまたそれ以外にも精力的な音楽活動をしています。そんな久石譲の2013年のお仕事をまとめてみようと思います。

 

2013年1月

映画「東京家族」 監督:山田洋次 音楽:久石譲

山田洋次監督50周年記念作品にして久石譲との初タッグとなりました。
こちら ⇒ Disc. 久石譲 『東京家族 オリジナル・サウンドトラック』

同月には、国立音楽大学にてスペシャルトークセッションも開催されました。
こちら ⇒ Info. 2013/01/25 山田洋次監督×久石譲 スペシャルトークセッション

 

2013年3月

コンサート「クラブツーリズムスペシャルコンサート 久石譲オーケストラの世界」

クラシックや自身の楽曲を多数演奏しています。
こちら ⇒ Info. 2013/03/05 クラブツーリズムスペシャルコンサート 久石譲オーケストラの世界

 

2013年4月

TVドラマ「女信長」 監督:武内英樹 音楽:久石譲

かなり珍しくレアな、TVドラマへの音楽です。二夜連続放送のスペシャルドラマとして企画も音楽も力の入った作品でした。
こちら ⇒ Disc. 久石譲 『女信長 オリジナル・サウンドトラック』

コンサート「秋山和慶&佐山雅弘企画 オーケストラで楽しむ映画音楽 パート4」

秋山和慶指揮による、久石譲と佐山雅弘のピアノ競演。2台のピアノのために編曲された、久石譲コンサートでは定番の楽曲たち。どんなアレンジだったのか聴いてみたかったですね。伊右衛門 新旧テーマ音楽のアンコール付きと贅沢な内容です。

 

2013年6月

映画「奇跡のリンゴ」 監督:中村義洋 音楽:久石譲

実話と実在する主人公をテーマにしたベストセラー本の映画化です。シリアスになりすぎない、軽快な音楽タッチが大自然や愛情・夢を連想させてくれます。
こちら ⇒ Disc. 久石譲 『奇跡のリンゴ オリジナル・サウンドトラック』

映画「ラーメンより大切なもの」 監督:印南貴史 テーマ曲:久石譲

こちらはドキュメンタリー映画で、エンディングテーマ曲のみです。サウンドトラックは発売されていませんが、DVDなどでテーマ曲はじっくり堪能できます。
こちら ⇒ Disc. 久石譲 映画「ラーメンより大切なもの」 EDテーマ曲『ふるさとのメロディー』 *Unreleased

 

2013年7月

映画「風立ちぬ」 監督:宮崎駿 音楽:久石譲

スタジオジブリ作品 宮崎駿監督最新作にして最後の作品になるかもしれない映画「風立ちぬ」です。まさに夏からはジブリ一色だったわけですが、このサイトでもたくさんのことをアップしてきました。一言では語れませんので、気になるページをご覧いただければと思います。そのピックアップすらすべてではなく主要なもののみ選んでいます。
こちら ⇒ Disc. 久石譲 『風立ちぬ サウンドトラック』
こちら ⇒ Blog. スタジオジブリ 宮崎駿監督 x 久石譲 ディスコグラフィー紹介 まとめ

TV「NHKスペシャル 深海の巨大生物」 音楽:久石譲

久しぶりのNHK番組です。「驚異の小宇宙 人体」シリーズを思い出してしまいます。映画音楽なみのクオリティの高い音楽とその世界観でびっくりしたのを覚えています。イカ、サメ、とそれぞれBlu-ray&DVD化もされています。
こちら ⇒ Disc. 久石譲 『NHKスペシャル 深海の巨大生物 オリジナル・サウンドトラック』

 

2013年8月

公開録画「読響シンフォニックライブ」

この月の公開録画を経て、11月にはTV放送がありました。そしてなんと言ってもこのプログラムの目玉は映画「風立ちぬ」の初披露でした。
こちら ⇒ Blog. 久石譲 TV「読響シンフォニックライブ」 風立ちぬ初披露 レビュー

 

2013年10月

ラジオ番組「UNBEATEN TRUCKS IN JAPAN ~イザベラ・バードの日本紀行」オリジナル楽曲

ラジオ番組「J-WAVE 25th Anniversary Special」企画・構成・演出・ナビゲーター:三谷幸喜 朗読:松たか子 音楽:久石譲 による全11回に及ぶ物語でした。ラジオでしか、そして今企画単発でしか聴けないのか?!と思うくらい、素晴らしい音楽でした。

 

特別展「京都 – 洛中洛外図と障壁画の美」 テーマソング:EXILE ATSUSHI & 久石譲 「懺悔」

特別展開催と世紀の異色コラボという話題性もあって、TV特番などでも特集されていました。入魂の1曲、日本の歴史や和の美しさを感じる、この秋リピードして聴き惚れた楽曲です。
こちら ⇒ Disc. EXILE ATSUSHI & 久石譲 『懺悔』

 

2013年11月

映画「かぐや姫の物語」 監督:高畑勲 音楽:久石譲

スタジオジブリ もうひとりの巨匠にして、約30年の付き合いで初タッグとなった、高畑勲監督 最新作 映画「かぐや姫の物語」です。この作品についてもたくさん書きました。とても内容濃く充実した制作過程が垣間見れます。
こちら ⇒ Disc. 久石譲 『かぐや姫の物語 サウンドトラック』
こちら ⇒ Blog. 「かぐや姫の物語」 わらべ唄 / 天女の歌 / いのちの記憶 歌詞紹介
こちら ⇒ Blog. 久石譲 「かぐや姫の物語」 インタビュー ロマンアルバムより
こちら ⇒ Blog. 久石譲 「かぐや姫の物語」 インタビュー キネマ旬報より
こちら ⇒ Blog. 久石譲 「かぐや姫の物語」 インタビュー ビジュアルガイドより
こちら ⇒ Blog. 久石譲 「かぐや姫の物語」 インタビュー 熱風より

コンサート「久石譲スペシャルオーケストラコンサート with 群馬交響楽団」

公演後、公式に演奏プラグラム詳細はアップされていませんが、大枠ではこういったプログラムだったようです。

 

TVドラマ「長谷川町子物語 ~サザエさんが生まれた日~」 監督:加藤義人 テーマ音楽:久石譲

事前に何の情報もなく、これは不意打ちでびっくりしました。スペシャルドラマとはいえ、ただでさえ珍しいTVドラマの音楽を2013年は2本も手がけたことになります。

 

2013年12月

コンサート「久石譲 第九スペシャル」 東京・大阪

2013年の締めくくりは、久石譲が初めてベートーヴェンの「第九」を指揮するコンサート。「第九」に捧げる序曲として書かれた自身の「Orbis」にはじまり、2013年を象徴する「風立ちぬ」「かぐや姫の物語」の楽曲もこのコンサート用に組曲、そしてフルオーケストラ編成用にアレンジされた貴重なコンサートです。

 

さて、簡潔にまとめただけでも、2013年はこのような1年でした。

日本映画音楽の巨匠としての認知も一般的になってきましたが、実際に日本映画界の名監督・巨匠である、山田洋次・宮崎駿・高畑勲など、これが1年間のなかに詰まっているわけですから、本当にすごいです。

そこにTV音楽や企画イベント、コンサート活動もあるわけで、同じ365日、24時間、時間は平等なのか?!と思ってしまうほど、さすが密度の濃い時間、創作活動をされているなあとただただ脱帽するばかりです。そして、2013年に発表したどの作品も、それぞれの世界観とカラーがあり、安住という言葉とは無縁な、無限の創造性と挑戦しつづける姿勢を感じます。

 

世に送り出した、発表したのが2013年という1年間のなかにこれだけあって、それを制作過程などを考慮すると、おそらく2年近く費やしているのだと思います。それぞれの作品ごとに。

今年2014年は、どんな久石譲のお仕事が見れるのか、聴けるのか楽しみです。コンサートも全国各地ツアー的なものを久々に開催してほしいですね。ここ数年は1会場のみ、1公演のみ、といった貴重さが増してしまっていますので。

新年早々には「箱根駅伝」のテーマ曲「Runner of the Spirit」で幕を明けたわけですが、この新テーマ曲は2009年の第85回箱根駅伝からですので、今年で5年目です。

 

2014年、最初のお仕事は、今月1月25日より公開の、山田洋次監督との「東京家族」につづく2作目のタッグ、映画「小さいおうち」です。

そして音楽マガジンへのコラム連載もはじまりました。

そのあたりは、こちらで随時紹介、更新しています。
こちら ⇒ 今後の作品予定 ダイジェスト版

 

2014年の新しい音楽を楽しみにしながら、まだまだ新しい2013年の音楽たちもゆっくりじっくり堪能していこうと思います。

 

久石譲 2013 まとめ

 

Blog. 「Overture -序曲-」 久石譲 新聞掲載インタビュー

Posted on 2013/12/21

2012年に発表された楽曲「Overture -序曲」、「大阪ひびきの街」誕生を記念して作曲され委嘱されたテーマ曲です。

祝典序曲にふさわしい6分に及ぶ圧巻のフルオーケストラなのですが、残念ながら記念コンサートや久石譲自身のコンサートで数回演奏されたのみでCD化はされていない未発売曲です。

2012年9月20日付の産経新聞にこの活動を題材にした久石譲インタビューが掲載されていました。

貴重な文章ですので、書き起こしです。

 

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気つけば音楽の響く街に

心が弾むような響きとおおらかな音の運び方が聴くものを未知の旅に連れ出す。

大阪市西区のオリックス劇場を中心としたマンションなどを含む街区「大阪ひびきの街」をイメージした楽曲「Overture -序曲-」を発表した。

久石 「街区をイメージする曲を依頼された時、単純に誰でも歌える曲、というわけにはいかないなと思いました。街区にはオーケストラも公演できる響きの良いホールがある。ぜひオーケストラ曲で仕上げたいと思った。」

そして今夏、オリックス劇場で日本センチュリー交響楽団を自ら指揮して初演。同時に、一般公募で集まった500人がリコーダーやバイオリン、トランペットなど思い思いの楽器を持って劇場前の公演に集まって演奏し、劇場の内外にこの新曲が鳴り響いた。

久石 「これから成長していく曲だと思います。気づいたらこの街にこの音楽が響いている、住んでいる人が親しんでいる、そんなふうになってくれたらいい。」

ジブリ映画には欠かせない存在。子供から大人まで、また国境を越えて愛される曲を送り出してきた。これまでに手がけた作品数を聞くと「知らないんだ」と笑ってスタッフに訊ねた。

久石 「数千曲あるらしいね。でも、僕の長所は全部忘れちゃうこと。全部自分の中にため込んでいたら大変なことになっちゃう。ただ、今自分が作らないといけない曲をつくってきただけですね。」

時として相反する高い音楽性と親しみやすさ。その両方を併せ持つことの難しさを常に感じてきた。

久石 「芸術家はいつでも名乗れるが、エンターテインメントの作曲家は人に支持されて初めて価値がある仕事。自分の中で芸術性とエンターテインメント性を両立させたいと常に考えてきました。」

それが久石作品の最大の魅力だ。

近年は自分の映画音楽作品と、クラシック音楽作品を取り混ぜて指揮して演奏するコンサートも積極的に行っている。

久石 「クラシックって格好いいんです。演奏家を本気にさせる力がある。だから僕の『ハウルの動く城』の音楽を聴きに来たお客さんが『ワーグナーもいいな』なんて思ってくれたらいいですね。」

指揮をすることで作曲の参考になることも多いという。

久石 「クラシックの楽譜を読み込んでみると『この第2バイオリンの音楽がいいじゃん』ということも多い。すると次の作品の楽器の扱いの参考にしたりもする。技術的にもこれからもっと勉強しなきゃと思っています。」

「Overture -序曲」は、世界中で愛される作曲家の序曲なのかもしれない。

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「芸術家はいつでも名乗れるが、エンターテインメントの作曲家は人に支持されて初めて価値がある仕事。」

この言葉がかっこいいですね。

 

Related page:

大阪ひびきの街

 

Blog. 世界的トランペット奏者 ティム・モリソン ハリウッドからジブリまで

Posted on 2013/12/13

久石譲作品で初めて知ることになった、トランペット奏者 ティム・モリソンさん。

その作品というのは、「イメージ交響組曲 ハウルの動く城」での「Cave of Mind」という曲です。これがトランペットの音かと思ってしまうほど、抒情性と澄んだ音色なんです。誰もが想像するトランペットと言えば、管楽器のなかでも、とても勢いのある音、鳴り響くブラスを想像するかと思います。

でも、この曲でのトランペットの音は、優しくて深く包み込んでくれる音色です。

後にこの曲は映画「ハウルの動く城」でもクライマックスにかけて印象的に使われています。宮崎駿監督もこの曲を気に入り、映画本編で使うことはもちろん、イメージアルバムから本編用にアレンジされ直す同曲について、トランペットはティム・モリソンさんがいい、と強く希望されたそうです。

「ハウルの動く城 サウンドトラック」では、「星をのんだ少年」として生まれ変わっています。

ティム・モリソンさんのトランペットのために書かれた曲じゃないかと思うくらいの名曲です。もしこれがティム・モリソンさんでなければ、だいぶん違う印象になるでしょうし、もっといえばトランペットが旋律を奏でることはなくなってたかもしれない、と思うくらいです。

 

※訂正
ここまでの記事で、上記Tp奏者はティム・モリソンさんではなく、一連のCD音源での奏者は、チェコ・フィルハーモニーのミロスラフ・ケイマルさんでした。お詫びして訂正いたします。詳細は下記リンクにて掲載しています。(2014.11月現在)
⇒ Blog. 久石譲 「ハウルの動く城」 インタビュー ロマンアルバムより

 

 

そして、その他の久石譲との作品でいえば、久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラでの活動が有名です。

「WORLD DREAMS」という、ワールド・ドリーム・オーケストラの記念すべき第1作のなかでも、ティム・モリソンさんは、「Cave of Mind」だけでなく、「天空の城ラピュタ」などでも、そのステキなトランペット・ソロを聴かせてくれています。

「WORLD DREAMS」に収録されている「天空の城ラピュタ」は、久石譲自身がティム・モリソンさんのためにアレンジしなおしたというくらいですから、あのパズーのトランペット「ハトと少年」のメロディーも堪能できます。そして、メインテーマでもトランペットが旋律を奏で、「ハトと少年」の旋律と絡み合いながら、壮大なクライマックスをむかえるという、渾身の楽曲です。

そんなCDだけでも凄みを感じる演奏ですが、「W.D.O」というDVDでは、ワールド・ドリーム・オーケストラのコンサートが収録されています。もちろんトランペット奏者はティム・モリソンさん、CDを超えるかも!?な迫力と臨場感です。

とここまでが、前置きのつもりだったんですが、すっかり熱が入って長くなってしまいました。

ティム・モリソンさんのことを調べていたら、またまた知らなかった事実を発見しました。ハリウッド映画音楽でも引っ張りだこなんですね。スティーブン・スピルバーグ監督とのタッグで有名な作曲家ジョン・ウィリアムズ。その数多い作品のなかでも、ティム・モリソンさんのトランペットがフィーチャーされている作品が多々。

『7月4日に生まれて』 『JFK』 『アミスタッド』 『プライベート・ライアン』 etc…

誰もが一度は観たことのある映画だと思います。ほかにもJ.ウィリアムズはオリンピック曲「サモン・ザ・ヒーロー」を発表していますが、それもティム・モリソンさんに捧げた楽曲らしいです。

特に個人的には映画「JFK」の映画と映画音楽が昔から大好きでした。なので、まさか時を経てここでこういうつながりがあるとは!と自分でびっくりしてしまいました。

元ボストン交響楽団首席奏者であり、現在はフリーランス奏者として、アメリカ内外の楽団と、演奏活動や指導活動も行っているそうです。まさに、ハリウッドからジブリまで、花形ソリストであり、数々の名ソロを残しているわけです。

ティム・モリソンさんのCDを探したのですが…やはりご本人名義では発表されていないようですね。上記のようなハリウッド映画サウンドトラックだけがヒットします。いつか1枚の作品として、あの名演奏がたっぷり聴けたら、すごく贅沢だと思います。

・・・

と思ったら!1枚だけ見つけることができました!

「After Hours」 / Tim Morrison [import]

輸入盤でのみ入手できるということですが、どうもスタンダード曲をJAZZやボサ・ノヴァでしっとり聴かせている作品のようです。i-tunesでも試聴/購入できるようでした。

またじっくり聴く機会があればご紹介したいと思います。「Alfie」「枯葉」「サマータイム」など好きな曲もたっぷり収録されていますし。ジブリ作品~ハリウッド映画~ジャズ までとトランペットで楽しい音楽数珠つなぎになりました。

 

ティム・モリソン

 

Blog. 「World Dream Orchestra 2004」 コンサート・パンフレットより

Posted on 2013/12/11

2004年開催「World Dream Orchestra 2004」コンサート・ツアー。

久石譲が新日本フィルハーモニー交響楽団と、「久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ(W.D.O.)」を立ち上げた記念すべき年であり、ここから始動したコンサートツアーです。

このオケの発足にあたり、テーマ曲「World Dreams」も書き下ろし、コンセプトをふまえたCD第1作目も発表し、さらにはプログラムA・Bという2種類の演目を引き下げてのツアー開催。

これだけでもこのプロジェクトにかける並々ならぬ想いが伝わってきますが、ツアー会場にて販売された公式パンフレットではさらに濃厚なメッセージが凝縮されています。

 

World Dream Orchestra 2004

[公演期間]
2004/07/19 – 2004/08/01

[公演回数]
全国8公演
7/19 宮城・宮城県民ホール A
7/20 栃木・栃木県総合文化センター B
7/22 東京・サントリーホール A
7/24 山梨・韮崎市文化ホール B
7/26 神奈川・横浜みなとみらいホール A
7/27 東京・すみだトリフォニーホール B
7/30 愛知・愛知県芸術劇場コンサートホール A
8/1 大阪・大阪城公園内 西の丸庭園 Special Program

[編成]
指揮:久石譲
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
トランペット:ティム・モリソン

[曲目]
ProgramA(宮城/サントリー/神奈川/愛知)
World Dreams
[Mr.Miyazaki vs Mr.S.Spielberg and Mr.G.Lucas]
STAR WARS (J.ウィリアムズ)
シンドラーのリスト (J.ウィリアムズ)
風の谷のナウシカ(風の伝説) (久石譲)
暁の誘惑 (イメージ交響組曲「ハウルの動く城」より) (久石譲)
E.T. (J.ウィリアムズ)
天空の城ラピュタ (久石譲)

[Hard Boild Orchestra]
007 Rhapsody (J.バリー)
The Pink Panther (H.マンシーニ)
風のささやき (M.ルグラン)
Iron Side (Q.ジョーンズ)
China Town (J.ゴールドスミス)
Rasing Men (久石譲)
HANA-BI (久石譲)
Mission Impossible (L.シフリン)

Cave of Mind (イメージ交響組曲「ハウルの動く城」より) (久石譲)

—–アンコール—–
タヒチ・トロット(映画「Tea for two」より) (ショスタコーヴィチ)
Summer
となりのトトロ

 

ProgramB(栃木/山梨/すみだ)
World Dreams
[ロシアより愛をこめて〜Classic Composer for Cinema〜]
ジャズ組曲 第2番〜ワルツ〜 (ショスタコーヴィチ)
タヒチ・トロット(映画「Tea for two」より) (ショスタコーヴィチ)
ロミオとジュリエット (プロコフィエフ)

[Fantasy Trumpet]
天空の城ラピュタ (久石譲)
アミスタッド (J.ウィリアムズ)
Cave of Mind (イメージ交響組曲「ハウルの動く城」より) (久石譲)

[Hard Boild Orchestra]
007 Rhapsody (J.バリー)
The Pink Panther (H.マンシーニ)
風のささやき (M.ルグラン)
Iron Side (Q.ジョーンズ)
China Town (J.ゴールドスミス)
Rasing Men (久石譲)
HANA-BI (久石譲)
Mission Impossible (L.シフリン)

STAR WARS (J.ウィリアムズ)

—–アンコール—–
風の谷のナウシカ(風の伝説)
Summer
となりのトトロ

 

 

『World Dreams』をめぐって
新日本フィルハーモニー交響楽団 安江正也氏(企画制作担当)と共に語る

-「ワールド・ドリーム・オーケストラ」という、久石さんと新日本フィルとの共同プロジェクトがスタートしました。今回のツアーは記念すべきデビュー・コンサートになりますね。

久石:
新日本フィルさんとは、本当に長いおつきあいになります。宮崎作品をはじめとして、大事なオーケストラ作品はずっと一緒にやらせてもらってきましたから。

安江:
スタートにあたって、久石さんにはこのオーケストラのテーマ曲、『World Dreams』を書き下ろしていただきました。作曲家が曲を書くということは特別なことですから、我々にとって大変に光栄なことでした。この曲には、ここにしかないアイデンティティ、自分たち固有のものという意識があります。まさに、自分たちの曲として、からだの一部のように演奏する曲です。それは、オーケストラという演奏団体がなかなか与えられる機会のない、幸せなことなんです。

久石:
以前にやはりツアーで東北6県を一緒に回ったりする中で、団員の人たちと食事を共にしたりしながら、自然発生的に「何かできたらいいね」という話が出てきて、それがきっかけになりました。だから、本当の始めのところから、お互いに考えを出し合って詰めていくという形でここに至ったということだね。

 

-そしてアルバム「World Dreams」が完成し、このコンサートツアーが実現したわけですよね。

安江:
実際、『World Dreams』の録音にはすごく時間をかけました。演奏するたびに「もっと何かあるんじゃないか」と、久石さんと団員とのディスカッションも尽きることはなかった。それはもう、音楽家以外の何人たりともそこには入れないという密度の濃さでした。皆でテイクを聴いて、皆でディスカッションして、それで100人が揃ってひとつになった。それはオケの側も嬉しかったですね。もちろん生みの苦しみもあるわけですけど、充実感が違う。最初から最後まで関わることができて、共に創り上げる手応えを感じています。

 

-楽曲の持つ音楽的なパワーが、演奏者の心を動かし、それを聴く人の心をも動かすのでしょうね。

久石:
そうなるといいね。それにしても、こんな大変なプログラム、8回ももつのかな(笑)。

安江:
ハハハハ、いやあ、オケもかなりの体力勝負であることは確かです。

-それほどの真剣勝負、そしてチャレンジということですね。コンサートは生き物。一期一会の今日だけの演奏に期待しています。

 

 

INTERVIEW

ここから発信するもの
このプロジェクト誕生のきっかけ、コンサートにかける思い、今回のプログラムのもつ意味合いを、自らここで語り尽くした。

 

これは僕のコンサートでもなく、
新日本フィルのコンサートでもない。

「ワールド・ドリーム・オーケストラ」-。それは漠然と付けた名称だったのだが、そでにその名前自体がコンセプトそのものになっている。新日本フィルと僕との共同プロジェクトとして、新たに誕生したオーケストラだ。

新日本フィルは、これまでも大事な節目ごとに一緒に演奏してきた、いわば僕にとってのホーム。オーケストラの音を思い浮かべる時、頭の中にはいつも新日本フィルの音がある。弦の音、管の音、僕にとって基準になっているのは新日本フィルの音だ。それくらい自分の中でも大切だし、互いに築いてきた信頼関係の上に、このプロジェクトが成り立っていることを実感する。

それは、僕のコンサートでもなく、また新日本フィルのコンサートでもない。二つが一つになって、別の新しいユニットを創る。それを何かいい形で世に出したいというお互いの思いが、ワールド・ドリーム・オーケストラとなって実現した。

ワールド・ドリーム・オーケストラを無理にカテゴライズしてしまえば、ベースになっているのは、いわゆるポップス・オーケストラ。あくまでも強引に、ひとことで言ってしまうならばそうだ。けれども僕自身は、ポップス・オーケストラというものにまったく興味はない。

というのは、どんなエンターテイメントであっても、聴く人には何かひとつ得てもらいたい、聴く人にきちんと何か残したい、と考えるからだ。だからポップス・オーケストラではなく、またクラシック・コンサートのオーケストラでもなく、さらにはただ1度で終わりというのではないものをやりたかった。僕も新日本フィルも、お互いに「やった」という満足感を得られなければ、やる意味はない。それには、CDを創り、ツアーも組んで、きちんとしたプロジェクトとして、まったく新しい形を立ちあげなければならなかったのだ。

世界中にはいい曲が山ほどある。それを僕のフィルターを通して、オーケストラ作品として完成させ、世に出していく。それがこのオーケストラの一番大きなテーマだ。

 

パート譜ごしに人生を見てる演奏者を
まるごと受け止めるのが指揮者

ワールド・ドリーム・オーケストラでは、自分の曲以外の楽曲もたくさん取り上げる。自分で書いた曲を自分で弾くのなら、それは自分のコンサートでやればいいことだ。その違いを明確にするため、僕の主体はピアノではなく、指揮になる。ただし、自分がアレンジするのだから、自分の考えている世界ではある。それをオーケストラと話し合いながら、共同プロジェクトという前提のもとに創ってきた。

僕はアレンジは基本的にやらない人間だ。作曲家だから人の曲には興味がない。でも、「ハードボイルド・オーケストラ」をはじめとした今回のプログラムでも明らかなように、僕が楽曲を選び、並べ、アレンジすることによって、個々の楽曲は組曲としての存在を持ってくる。そうしてきちんとした作品にしていくことで、初めて発表できるものになるのだ。たぶんこの手法は、自分のやり方としても今後も定着していくだろう。

取り上げる曲のオリジナルは全部がとても短い。長くてせいぜい2分半だ。それをひとつの楽曲として聴ける分量にするために、それぞれの楽曲のメロディやリズムのエッセンスを素に、僕のオリジナル部分を組み立てていく。アレンジといっても半分以上はオリジナルだ。僕にとってはたぶん、アレンジは翻訳みたいなもの。外国語の作品が日本語になる段階で翻訳家の個性が反映されるのと同じように、人の楽曲なんだけれども、こうしてひとつの組曲のようにすることで、そこに自分の作曲家としての意図が出てくるわけだ。

その意図は、弦だったり管だったりのパート譜を通じてメンバーに伝えられる。オーケストラのメンバーは、パート譜ごしに人生を見ている。パート譜ごしに、この作曲家の実力はこうだ、これなら信用して付いて行こう、と考えている。つまりパート譜の向こうには、演奏者の人生がある。そういう意味では指揮者は100人の人生を受け止めるようなものだ。とてもじゃないが、いいかげんな気持ちでスコアを書くなんてできない。そういう、人を受け止める自分ってのがいる。それはすごく大事なことだ。そういう中で、オーケストラの可能性もどんどん試すし、オーケストラからもいろんなアイデアを聞きながらやっていく。曲を提供する人、演奏する人、というのではない、新しい関係がそこに生まれる。

 

僕にとっての夢、Dreamは
自分が変われるための起爆剤

「夢」とは何だろう。夢は夢でしかなく、叶わないもの、実現しないもの、だと思っている。

夢というとなんだか美しくイメージするけれど、現実は全然甘くなくて、だから「夢」なんだと思う。実現可能なものなら「目標」になるはずだから。しかし、夢とついた瞬間から、叶わないものを掲げることになる。決して叶うことではないけれど、基本的にはありえないことだけれど、叶わないからこそ、それに向けて努力する。それが力の素、ここで言うところの「Dream」なのだ。

言ってみればそれは、自分を変えるための起爆剤。昨日と同じ自分であってはならないと思うんだったら、どんなに大変でも自分で自分を変えていかなければならない。その時の原動力が夢だ。

一生は決して長くはない。自分にやれる可能性がある限り、チャレンジし続けなければならない。

今、世界のシステムが壊れかけている。それを目の当たりにしながら、いったい自分は何ができるのだろうかと思う。僕は作曲なのだから、音楽を通して「人間って何なんだ」ということを自分なりに考えていくしかないだろう。若いころはもっと違うことを考えていたと思うけれど、音楽は何ができるのかということを、作曲家として今は一番やらなければならないと思う。

もし、このコンサートに夢のような時間を期待して来た人がいたとしたら、それは違う。ここで何かを掴みたい、感動を味わいたい、勇気を得たいという人、つまり、何かを求めている人に向かって、僕はいつも書いているような気がする。それはコンサートでも同じだ。

長く僕のコンサートに来てくれている人達は、毎回、僕が変わっていくことで、活動の姿を確認しているのだと思う。だからこそ評価は厳しい。このワールド・ドリーム・オーケストラも、居心地のいい、ちょっとセレブな時間を過ごすところ、では決してない。それはプログラム自体がすでに表現している。演奏する側も必死でやるから、聴く側もしっかり味わってくれ、と、そういう関係を築きたい。そこに手応えを感じたお客さんは、きっとまた来年も来てくれるだろう。そして僕達は、またガラッと変わる。

ハードルはだんだん高くなるものだ。

(「World Dream Orchestra 2004」コンサート・パンフレット より)

 

【Program Note】

Aプロ、Bプロ、ともに、僕自身がとても楽しいと思って組んだプログラムだ。
ここに、ワールド・ドリーム・オーケストラの全貌が表れている。
今回の演奏曲目について語っておこう(インタビューより構成)。

 

World Dreams
これは、ワールド・ドリーム・オーケストラのテーマ曲。このオーケストラのアイデンティティを象徴する曲といってもいい。もともと祝典序曲のような曲を創ろうと思っていた。シンプルで朗々と唄う、メロディを主体とした曲。メジャーで、ある種、国歌のような拡張あるメロディで、あまり感情に訴えるものではないもの。ストーンと潔い曲を書きたかった。

以前、『Asian Dream Song』という曲を書いた。今回は『World Dreams』だ。じゃあ、アジアの夢が世界の夢になったのかというと、そんなことはない。情報技術の飛躍的な進歩によって、世界はどんどん小さくなって、地域になってきている。同時に世界全体のシステムというものが壊れ始めている。しかし、これが世界の夢だったのか? 世界中の人々の夢は何だったのか? こんな世界を人々は望んではいなかったはずだ。音楽家としてできることは何なのか。僕は憑かれたように作曲した。

この曲が、聴く人のささくれ立った感情を少しでも和らげ、そして「まあ、いいか、明日もまた頑張ろう」と思ってくれたら…。そんな気持ちを代表しているようなのがこの曲だ。

曲ができて、3管編成のフルオーケストラのスコアにまとめるまで1週間ほど。それはちょっと「自分は何かに書かされているんじゃないか」と思うくらいの速さだった。

 

Hard Boiled Orchestra
これはまるで「夏場のラーメン」とも言える組曲のようなもの。暑い夏に、これまた暑苦しいブラスセクションが大汗かいて鳴らしまくる。何とも男らしいコンセプトだ。今回のツアーは、ワールド・ドリーム・オーケストラのデビュー・コンサート。このオケが何者なのかをわかってもらいたい。それも、頭ではなく、皮膚でわかってもらいたいのだ。そのためには演奏者も必死で力を出し切るスリリングな楽曲を演る必要がある。「男の生きざま」を描いた映画であるのと同時に、オーケストラとしての機能を最大限に引き出せる曲ばかりを選んだ。トータルで男っぽい選曲になっている。

007 Rhapsody
僕にとっての007シリーズは、ショーン・コネリーに尽きる。ここでやる「007のテーマ」「ロシアより愛をこめて」「ゴールドフィンガー」は、ショーン・コネリーの一番いい時期の作品だ。また、全作を通じて音楽的にもメロディ的にも強いのはこの3作。オーケストラで演奏するということは、言葉(歌詞)がなくなるわけだから、その分メロディのしっかりした曲がいい。この3曲がベストだ。

The Pink Panther
ヘンリー・マンシーニのこの作品は、ワンフレーズ聴いただけで何の曲かはっきりわかる、とても個性的な曲。これほどユーモアがあって、しかもしっかり創られている曲は少ないので、これはのちのち、我々にとっても大事な曲になっていくと思う。だからぜひやりたかった。ところで、この曲はたいがい、ブラス・サウンドが中心になる。しかし今回は、「隠し味」とも言える、弦のちょっと色っぽい音がすごく重要な要素。それがたぶん、僕のアレンジの特色になるだろう。

Iron Side
テレビで部分的に使われることが多くて、そういうイメージが強いが、とてもいい曲だ。「鬼警部アイアンサイド」のテーマで、創ったのはクインシー・ジョーンズ。僕はクインシー・ジョーンズが好きでよく聴いてるけど、いつも羨ましいと思うのは、彼がソウル・ミュージックやブルースといったブラック・コンテンポラリーの原点をちゃんと持っていて、いつでもそこに帰ることができるということ。そんな彼の曲の中でも、これはとても洗練された楽曲。いろんなものが凝縮している曲だ。

Mission Impossible
あまりにも有名な、「スパイ大作戦」のテーマ曲。この曲を創ったラロ・シフリンも大好きな作曲家だ。変型のはずなのに、心地いい5拍子。このリズムの凄さが、オーケストラのダイナミック・レンジを表現するのにぴったりだ。「ハードボイルド・オーケストラ」のシメの曲としてもピッタリではないか?

風のささやき
映画「華麗なる賭け」のテーマ。これを選んだのは、映画よりもミシェル・ルグランの作品だから。彼にはクラシックの要素があり、ジャズにも精通していて、楽曲がとても機能的にできている。それでいて、変に情緒に流れない。有名な2小節のフレーズがほとんど変わらずにずっと続くこの曲は、フランス人である彼のハリウッド・デビューの曲だ。全世界を相手にしようって時に、彼は敢えて、このような機能的で情緒に流れない曲を持ってきた。これは大チャレンジだと思う。しかも、「このコード進行しかありえない」って時に、メロディは違うところにいって、不協和音になってしまう。この曲については、アレンジは10通りくらい書いたと思う。一番苦労した曲だ。木管と弦だけという非常にシンプルな形態をとったが、決して楽ではないこの曲で、CDでもオーケストラが素晴らしい演奏をしている。

China Town
同名の映画は1930年代を舞台にした、情ない探偵の話で、僕の大好きな映画。主演のジャック・ニコルソンも好きな俳優だ。曲はジェリー・ゴールドスミス。この曲のテーマが頭にこびりついていたので、今回、ティムさんというトランペット奏者を得て、どうしてもこの曲を入れたいと思った。ティムさんのジャジーな雰囲気も素晴らしい。その演奏からは、音楽性の幅の広さがわかる。

Raging Men
HANA-BI
北野武監督の映画「BROTHER」の中で使った曲。エネルギーの塊みたいな曲なので、オーケストラのパーカッションとブラスの激しさを聴いてもらいたい。『HANA-BI』は、マイ・フェイバリット・ソングのひとつ。今回はヴァイオリンをフィーチャーしている。これまでとは違った魅力を感じてほしい。

 

Fantasy Trumpet

天空の城ラピュタ
これは、ティム・モリソンさんが吹くことを想定して、彼のためにアレンジした。これまで何度もやってきた曲だけれども、ティムさんという演奏家を得て、新日本フィルと共に演奏するというところで、改めてアレンジした。今までの印象とは違う曲になっている。ティムさんは本当に音楽性豊かな演奏家。大いに期待してほしい。

アミスタッド
ジョン・ウィリアムズの曲で、オリジナルもティムさんが吹いている。これは、いわばティム・モリソンさんの名刺替わり。

Cave of Mind
ここでもティムさんの豊かな音楽性が充分に発揮される。こうして一緒にツアーを回れることは大きな喜びだ。

 

Mr.H.Miyazaki vs Mr.S.Spielberg and Mr.G.Lucas
日本の映画とアメリカの映画という中で、それぞれの持っている映画の違い、あるいは共通点から、それぞれの良さが浮き上がったら、と思い組んだプログラム。指揮者・久石譲が『STAR WARS』をどう料理するか、というところに興味を持っている人もいると聞く。それなら、と組んでみた。『シンドラーのリスト』もとても好きな曲。日本人の作曲家、アメリカの作曲家、それぞれの映画の差など、違いも出てくるだろうが、両方が浮き立って、聴く人が納得するようなものができたらと思う。ところで、映画作品の中から言葉やシーンだけを部分的に取り出してもまったく意味はない。それが前後と繋がった時、それぞれのシーンの意味が出てくる。それと同じように、それぞれがまったく違う映画のために創られた別の作品であるにもかかわらず、それを組み立て、構成することで、楽曲が本来持っていた意味プラスアルファの、コンサートでの意味が出てくる。そこを聴いてほしいし、楽しみたいと思う。結果はやってみなくてはわからない。が、しかし、何かありそうな気がする。だから面白いし、これもまたチャレンジだ。

 

ロシアより愛をこめて ~Classic Composer for Cinema
クラシックの楽曲も、別の曲との組み合わせによって、まったく別の曲に聞こえてくる可能性がある。「こんなに聴きやすい曲だったのか」と感じることもあるかもしれない。この、ワールド・ドリーム・オーケストラが、そういったクラシックの作品との出会いの場になれれば、という思いもある。

ジャズ組曲第2番 ワルツ (ショスタコーヴィチ)
僕が今年、最もはまった曲。映画「アイズ ワイド シャット」の曲だけれど、とにかく見事にはまっている。他人の曲で、今年一番好きになった曲はこれだ。

ロミオとジュリエット (プロコフィエフ)
この曲は、ひとつひとつ挙げられないほど、多くの映画に使われている。複雑なテクスチュアというよりも、素朴な、強いメロディの楽曲。

タヒチ・トロット (ショスタコーヴィチ)
「二人でお茶を」という映画の曲。それを実は、ショスタコーヴィチ自身がアレンジしている。ショスタコーヴィチは本当のエンターティメントを知り抜いた人だ、ということがよくわかる。この曲もオケにとって、決して簡単ではない。なぜなら非常に音が薄い。それでいて豊かに仕上げなければならない。ある種、点描主義のような、各楽器の音色が浮き立つ楽曲で、一人一人の技量も問われる。しかし、オーケストラの色彩感を出せる曲。これもチャレンジだ。

(【Program Note】 同コンサート・パンフレットより)

 

 

このコンサートに寄せた言葉が2004年。あれから2011年の東日本大震災を経て、今は2013年。

夢 自分を変える 可能性 チャレンジ 自分は何ができるか 人間って何なんだ etc

このパンフレットに出てくる久石譲の言葉は、時代の変化に対しても普遍的だと思います。そして、音楽家が発した言葉、音楽好きが受け止める言葉としてだけでなく、『自分の人生を生きていく』という意味でも、大きなテーマだと思いました。

なので、改めて読み返し共感した思いから、原文をそのままに忠実に書き起こしをしました。音楽をつくる、音楽を奏でる、音楽を聴く、音楽を体感する、そうして響きあう思い。究極には「なくても生きていける」音楽というものに、それ以上に「なくてはならない」音楽という自分のなかの意味を見出だせる言葉のように思います。

一言、やっぱり一流のプロはかっこいいですね!

こちら ⇒ ワールド・ドリーム・オーケストラ 作品ライブラリー

 

wdo パンフレット

 

Blog. 久石譲 祝63歳!! HAPPY BIRTHDAY

Posted on 2013/12/6

久石譲さん、誕生日おめでとうございます!

1950年12月6日生まれ 今年で63歳です。
見えないですね。

容姿ももちろんですが、創作意欲のオーラといいますか、また数々新しく生み出される作品に触れ聴いていても、安住という言葉とは無縁な、無限の創造性と挑戦しつづける姿勢を感じます。

 

2013年は近年希に見るメモリアル・イヤーでした。

  • 1月 映画「東京家族」 監督:山田洋次 音楽:久石譲
  • 3月 コンサート「クラブツーリズムスペシャルコンサート 久石譲オーケストラの世界」
  • 4月 TVドラマ「女信長」 監督:武内英樹 音楽:久石譲
  • 4月 コンサート「秋山和慶&佐山雅弘企画 オーケストラで楽しむ映画音楽 パート4」
  • 6月 映画「奇跡のリンゴ」 監督:中村義洋 音楽:久石譲
  • 6月 映画「ラーメンより大切なもの」 監督:印南貴史 テーマ曲:久石譲
  • 7月 映画「風立ちぬ」 監督:宮崎駿 音楽:久石譲
  • 7月 TV「NHKスペシャル 深海の巨大生物」 音楽:久石譲
  • 8月 公開録画「読響シンフォニックライブ」
  • 10月 ラジオ番組「UNBEATEN TRUCKS IN JAPAN ~イザベラ・バードの日本紀行」オリジナル楽曲
  • 10月 特別展「京都 – 洛中洛外図と障壁画の美」 テーマソング:EXILE ATSUSHI & 久石譲 「懺悔」
  • 11月 映画「かぐや姫の物語」 監督:高畑勲 音楽:久石譲
  • 11月 コンサート「久石譲スペシャルオーケストラコンサート with 群馬交響楽団」
  • 12月 コンサート「久石譲 第九スペシャル」 東京・大阪

 

山田洋次監督との初タッグ 映画「東京家族」に始まったかと思えば、宮崎駿監督 映画「風立ちぬ」では宮崎駿監督の引退会見もあり、一方では高畑勲監督との初タッグ 映画「かぐや姫の物語」の音楽監督など、名監督との映画音楽の仕事が目白押しでした。その合間にコンサート公演もあり、年末には「第九」も控えていますから、その活動はとどまるところを知らないですよね。

ただただ脱帽です。尊敬します。そして極上の音楽たちと一緒に生活できる幸せを感じています。

 

そういえば、誕生日にちなんだ楽曲ってあったかなと思って紐解いてみました。

久石譲 『PIANO STORIES 4 FREEDOM』
「Birthday」
『FREEDOM PIANO STORIES 4』 収録

タイトルからも “まさに誕生日” なこの曲は、ピアノと室内楽が心地よい響きです。シンプルなメロディーに、温かさもあり、無垢なかわいらしさを感じます。

 

久石譲 NHKスペシャル 驚異の小宇宙 人体III〜遺伝子・DNA サウンドトラックVol.1 Gene
「A Gift From Parents」
『驚異の小宇宙 人体III ~遺伝子・DNA サウンドトラック Vol.1 Gene』 収録

隠れた名曲だと思うのですが、とても優しくやわらかい楽曲です。ピアノとストリングスの悠々とした調べが、母なるぬくもりを感じさせてくれます。

 

久石譲 NHKスペシャル 驚異の小宇宙 人体 Vol.1
「BIRTH ~生命の歓び~」
『驚異の小宇宙・人体 THE UNIVERSE WITHIN サウンドトラック Vol.1』 収録

1989年のNHK人体シリーズの第1作からです。シンセサイザーとオーケストラの融合と、壮大なメロディーが印象的です。今聴いても色褪せることのない響きを感じます。

 

久石譲 WORLD DREAMS
「WORLD DREAMS」
久石譲&新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ 『WORLD DREAMS』 収録

国歌のような格調あるメロディーで、まさに祝典序曲です。

 

久石譲 坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック 1
「Stand Alone for Orchestra」
『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック』 収録

主題歌でもありメインテーマでもある、至高の音楽。”凛と立つ” 姿が象徴的です。

 

 

このくらいでしょうか。タイトルや曲名にこだわらなければ、誕生日にふさわしい曲はもっとたくさんあると思います。

ちなみに、久石譲から宮崎駿監督へ。宮崎駿監督の誕生日に楽曲が寄与されています。そしてそれは三鷹の森ジブリ美術館の館内BGM用として献呈されています。

こちら ⇒ 久石譲 三鷹の森ジブリ美術館 展示室音楽 *Unreleased

三鷹の森ジブリ美術館でしか聴くことのできない5曲ですので、もしこれから行かれる方は、そのあたりも楽しんでみてください。

もしかしたら、おそらく、今日のような誕生日でさえ、創作活動を、お仕事をされているのかもしれませんね。これからも素敵な音楽を届けてくれるのを楽しみにしています。

 

久石譲 第九

 

Blog. 「真正面から取り組んだ『もののけ姫』」 久石譲 TVインタビュー

Posted on 2013/12/4

平成10年3月6日 NHK 「トップランナー」に久石譲がTV出演したときのインタビューを文字にまとめた書籍を見ていました。

今から15年前ですから、久石譲のお仕事としては、「長野パラリンピック冬季大会 総合プロデューサー」や、宮崎駿監督作品 映画「もののけ姫」、北野武監督作品 映画「HANA-BI」などの時代です。大きくこのあたりの3つの仕事を軸に当時のインタビューなのですが、「もののけ姫」の話は興味深いものがありました。

1984年「風の谷のナウシカ」以来、宮崎駿監督作品の音楽を手がけてきたなか、1992年「紅の豚」から5年ぶりの作品となったのが1997年「もののけ姫」です。「もののけ姫」では、わずか1分半の曲に2週間を費やすほど音づくりに悩むことがあったんだそうです。

 

久石譲の「NHK トップランナー」TV出演の約半年前に同番組に登場した宮崎駿監督は、映画「もののけ姫」の音楽に関して、こう語っていたことが紹介されています。

「久石さんも本当に今度はよくやったと思います。いや、これは宣伝のために言うんじゃないんです。今まで僕はエンディングにはいつも絵を入れていたんですけど、今回の内容は絵を入れたくないなと思ったもんですから、『もののけ姫』のエンディングは幕にただローリングで字がぞろぞろ並ぶんですね。そこに音楽が、米良さんの歌がもう一回きちんと入って、それから久石さんのメインテーマが流れるんです。これはやっぱりきちんと聴くに値する音楽になったなと思いますね。ですから、名前なんか見なくてもいいですから(笑)、目をつぶっていただいてもけっこうですから、その音楽だけはそのまま座って聴いて欲しいなと。これは本当にそう思います。こんなことを言うと怒られますけど(笑)、ちょっと僕は久石さんを見直したって感じがあるんです。」

 

なんとも映画音楽を讃える言葉としては、本当にうれしいですよね。監督自らですから。

そしてこの「もののけ姫」の製作段階から、宮崎駿監督の作品に対する熱意に圧倒され、”もう逃げ道はない 本当に正面から取り組んだ”と久石譲は語っています。これは誤解のないように、普段はあえて引いたスタンスのほうが気負いなくいい仕事ができる場合が多いなか、「もののけ姫」に関しては一気にその熱意に巻き込まれてしまった、ということだそうです。

 

そういえば、ほかにもこの番組内で、久石譲の音楽的ルーツとも言える、現代音楽に没頭していた時期や、ミニマル・ミュージックについても語られています。今でこそミニマル・ミュージックはとてもいろんな音楽に浸透していて、久石譲だけでなく、その他作曲家や、POPSのアレンジの中にも取り入れられています。この当時はまだ新鮮でしたね。

ミニマル・ミュージックとは、1964年にアメリカから始まった現代音楽で不協和音を鳴らす音楽フィールドの中でも、一番前衛の手法として始まったもので、短いフレーズやリズムをわずかに変化させながら、繰り返し演奏する反復音楽です。

その現代音楽のフィールドから、ポップスやCM音楽などのエンターテインメント音楽に移ってからまもなく「風の谷のナウシカ」の運命的な宮崎駿 x 久石譲 コンビが誕生するわけですが。

それでも、「風の谷のナウシカ」の劇中音楽もミニマル・ミュージックが色濃く反映されていますし、当時久石譲が手がけた高級車や化粧品のCM音楽では、ミニマルの手法が持ち込まれています。おそらくミニマル・ミュージックを導入することで、商品やCMの高級感を演出する手法は、久石譲が最初だったと思います。

その当時のCM音楽をコンパイルした作品が「CURVED MUSIC」です。

 

ちょっと話がそれてしまいました。

映画「もののけ姫」公開当時は、『今回もいい音楽だな~』なんてのんきに聴いていたのですが、この「もののけ姫」の映画音楽が、久石譲の分岐点になったと言われる方は、ちらほらいらっしゃるようなんです。そんなことを目にしたり耳にしたことが過去に数回あります。

そしてちょうど今日、12月4日、
映画「もののけ姫」待望のブルーレイDVD発売です。

これを機会にまた「もののけ姫」の映画と音楽を、堪能してみたいと思います。

 

related page:

 

NHKトップランナー 久石譲

 

Blog. 「かぐや姫の物語」 わらべ唄 / 天女の歌 / いのちの記憶 歌詞紹介

Posted on 2013/11/28

スタジオジブリ作品 高畑勲監督 最新作「かぐや姫の物語」。主題歌「いのちの記憶」は二階堂和美さんの澄んだ歌声が印象的です。そして映画本編で印象的に使われている「わらべ唄」と「天女の歌」は、なんと高畑勲監督自身の作詞・作曲です。

映画音楽は高畑勲監督と初タッグとなる久石譲によるものですが、この「わらべ唄」と久石譲作曲の琴をはじめとした旋律が見事に融合しています。サウンドトラックは上記すべての劇中音楽/主題歌が収録されていますのでそのあたりもじっくりと聴きどころです。

そしてサウンドトラック・ライナーノーツに、歌曲の歌詞が掲載されていますので「わらべ唄」「天女の歌」「いのちの記憶」 それぞれをご紹介します。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
わらべ唄(原詞)
作詞:高畑勲 坂口理子 作曲:高畑勲

まわれ まわれ まわれよ 水車まわれ
まわって お日さん 呼んでこい
まわって お日さん 呼んでこい
鳥 虫 けもの 草 木 花
春 夏 秋 冬 連れてこい
春 夏 秋 冬 連れてこい

まわれ まわれ まわれよ 水車まわれ
まわって お日さん 呼んでこい
まわって お日さん 呼んでこい
鳥 虫 けもの 草 木 花
咲いて 実って 散ったとて
生まれて 育って 死んだとて
風が吹き 雨が降り 水車まわり
せんぐり いのちが よみがえる
せんぐり いのちが よみがえる

 

天女の歌
作詞:高畑勲 坂口理子 作曲:高畑勲

まわれ めぐれ めぐれよ 遥かなときよ
めぐって 心を 呼びかえせ
めぐって 心を 呼びかえせ
鳥 虫 けもの 草 木 花
人の情けを はぐくみて
まつとしきかば 今かへりこむ

 

いのちの記憶
作詞・作曲・唄:二階堂和美

あなたに触れた よろこびが
深く 深く
このからだの 端々に
しみ込んでゆく

ずっと 遠く
なにも わからなくなっても
たとえ このいのちが
終わる時が来ても

いまのすべては
過去のすべて
必ず また会える
懐かしい場所で

あなたがくれた ぬくもりが
深く 深く
今 遥かな時を越え
充ち渡ってく

じっと 心に
灯す情熱の炎も
そっと 傷をさする
悲しみの淵にも

いまのすべては
未来の希望
必ず 憶えてる
懐かしい場所で

いまのすべては
過去のすべて
必ず また会える
懐かしい場所で

いまのすべては
未来の希望
必ず 憶えてる
いのちの記憶で

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ちなみに、「わらべ唄」の歌詞にある「せんぐり」とは、京ことばで【次々に 順番に 順繰り】という意味だそうです。

「天女の歌」の歌詞にある「まつとしきかば 今かへりこむ」は、百人一首 中納言行平の句にも登場します。映画本編でも台詞としてありました。【本当にあなたが待っていてくれるなら、すぐにでもここへ帰ってきます】と。

どの曲も歌詞にもメロディーにも日本の美しい響きを感じます。

 

《《《 速報 》》》 2015.1.21
Disc. 久石譲・高畑勲 『かぐや姫の物語 ~女声三部合唱のための~』

 

Related page:

 

かぐや姫の物語 サウンドトラック

かぐや姫の物語 いのちの記憶

かぐや姫の物語 わらべ唄

 

Blog. 久石譲 オルゴールのシンフォニーできらめく冬を

Posted on 2013/11/23

2010年7月、久石譲作曲の映画音楽やCMソングをオルゴールやオルガンで演奏する特別展「久石譲。記憶の扉。~オルゴールが紡ぐノスタルジー~」が神戸市灘区のオルゴールミュージアム「ホール・オブ・ホールズ六甲」で開催されていました。

高さ5メートル、幅8メートルの日本最大級の自動演奏オルガンや、金属の円盤が回転することで音が出る「ディスクオルゴール」を使い、久石譲のCM音楽 / 映画音楽 / ジブリ音楽 が演奏披露されていたようです。

オルゴールの音色が紡ぎだす、情感溢れる久石譲の作品世界を楽むことができたこの特別展ですが、実は公式サイトにてその演奏を今でも聴くことができます。

幾度となく公式サイトYoutubeで聴いたことがありました。夏の催事だけあって、涼しげでいいなーと思って聴いていたのですが、改めてこの季節に聴いてみると、また感じ方も変わっていいなと思ったのでご紹介します。

 

映画「となりのトトロ」より「となりのトトロ」~映画「紅の豚」より「アドリアの海へ」~
映画「千と千尋の神隠し」より「ふたたび」 メドレー

 

サントリー緑茶伊右衛門CM音楽「Oriental Wind」

公式サイトYoutubeより

 

オルゴールらしい響きがステキです。どの曲も原曲とはまた違った印象を与えてくれます。これから冬に向かって寒くなります。クリスマスを演出する街やイルミネーション。そして冬ならではのピンと張った透明感のある空気。寒さと一緒に、こういったきらめいた風景やあたたかいぬくもり。

そんなこれからの季節にもピッタリなオルゴール・シンフォニーです。

 

ほかにも公式サイトでは、
映画「崖の上のポニョ」より「崖の上のポニョ」
映画「あの夏、いちばん静かな海。」より「SILENT LOVE」
映画「菊次郎の夏」より「Summer」~映画「魔女の宅急便」より「海の見える街」
などどれも有名な久石譲作品を貴重なオルゴールやオルガン演奏で楽しめます。

公式サイト〉〉六甲山ポータルサイト ROKKOUSAN.COM
「Sumeer」「Oriental Wind」「Silent Love」など5曲の演奏映像を視聴可能

 

ぜひのぞいてみてください。

寒い季節だからこそ、ワクワクしたいですね、あったまりたいですね。ぬくもりある家のなかで、子供たちと一緒に、恋人と寄り添いながら、そんなあったかい冬を迎えれますように。

 

六甲オルゴールミュージアム