Overtone.第41回 「ジョン・ウィリアムズ ライヴ・イン・ウィーン」を聴く

Posted on 2021/05/20

ふらいすとーんです。

映画音楽のレジェンド、ジョン・ウィリアムズです。わりと新しいCD作品から、ジョン・ウィリアムズが到達した偉業の集大成であり、かつ現在進行系でもある、そんなホットなアルバムを紹介します。4回にわたる予定、その4回目になります。

 

前回まで

 

 

黄金ディスクの誕生です!ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、クラシック音楽の歴史をそのまま体現してきたといっていい世界屈指のオーケストラと、ジョン・ウィリアムズ指揮による奇跡のコンサート。毎年「ウィーン・フィル ニューイヤー・コンサート」も開催される、あの黄金のホール音響を完全収録したものです。

 

CD帯にはこうあります。

心躍るメロディが最高の演奏で甦る!最高峰のオーケストラが本気で燃えた、白熱のライヴ映像!

世界最高のオーケストラが10年越しのラヴ・コールを実らせた奇跡のコンサート。映画音楽の神様ジョン・ウィリアムズとウィーン・フィルの全身全霊の気迫がこもった”一期一会”の演奏は聴く者全ての心を鷲掴みしに、元気と勇気を与えてくれるものです。

(CD帯より)

 

 

発売直前には、久石譲はじめ各界著名人がコメントを寄せたことでも話題は広がりました。

 

“これは素晴らしいコンサートだ。ウィーン楽友協会におけるジョン・ウィリアムズの楽曲は、誰でも知っている名曲ばかりで楽しめる。ウィーン・フィルはアメリカのオーケストラとは一味違った奥行きのある演奏で臨んでいるし、ゲストのヴァイオリニスト、アンネ=ゾフィー・ムターも若々しい演奏をしている。ジョン・ウィリアムズの楽曲はクラシック音楽のエッセンスが鏤め(ちりばめ)られており、彼がいかにクラシック音楽を愛でているかわかる。映画音楽の巨匠と世界最高峰のオーケストラの共演であるこのCD及びブルーレイは我々の財産となった。”

久石譲

 

 

結果(いまのところ)。

2020年8月に世界同時発売された本盤は、2020年度オリコン年間クラシックアルバムランキングで第1位を獲得しています。2020年、最も売れたクラシック作品となりました。その人気は日本のみならず、世界のランキングを席巻。アメリカ、イギリス、オーストラリアのクラシカル・チャートでは首位を獲得。ドイツ、オーストリアでは、ポップス・チャート10位圏内にランクイン。ストリーミング回数も1億5千万回を超え、iTunesクラシカル・アルバムチャートでは、世界15ヵ国以上で1位を記録するなど、発売から半年あまりの時点(2020.12月)ですでに快挙です。

 

 

ジョン・ウィリアムズ ライヴ・イン・ウィーン
JOHN WILLIAMS LIVE IN VIENNA

【デラックス盤(日本)】

CD
1.ネヴァーランドへの飛行 (『フック』から)
2.『未知との遭遇』から抜粋
3.悪魔のダンス (『イーストウィックの魔女たち』から)
4.地上の冒険 (『E.T.』から)
5.『ジュラシック・パーク』のテーマ
6.ダートムア、1912年 (『戦火の馬』から)
7.鮫狩り – 檻の用意!  (『ジョーズ』から)
8.マリオンのテーマ (『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』から)
9.メイン・タイトル (『スター・ウォーズ/新たなる希望』から)
10.レベリオン・イズ・リボーン (『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』から)
11.ルークとレイア (『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還』から)
12.帝国のマーチ (『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』から)
13.レイダース・マーチ (『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』から)

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 
ジョン・ウィリアムズ(指揮)
アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリン3 & 13)
録音時期:2020年1月
録音場所:ウィーン、ムジークフェラインザール
録音方式:ステレオ(デジタル/ライヴ)

[Blu-rayビデオ]
01.ネヴァーランドへの飛行 (『フック』から)
02.『未知との遭遇』から抜粋
03.ヘドウィグのテーマ (『ハリー・ポッターと賢者の石』から) ※
04.『サブリナ』のテーマ ※
05.ドニーブルーク・フェア (『遥かなる大地へ』から) ※
06.悪魔のダンス (『イーストウィックの魔女たち』から)
07.地上の冒険 (『E.T.』から)
08.『ジュラシック・パーク』のテーマ
09.ダートムア、1912年 (『戦火の馬』から)
10.鮫狩り – 檻の用意!  (『ジョーズ』から)
11.マリオンのテーマ (『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』から)
12.レベリオン・イズ・リボーン (『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』から)
13.ルークとレイア (『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還』から)
14.メイン・タイトル (『スター・ウォーズ/新たなる希望』から)
15.すてきな貴方 (『シンデレラ・リバティー/かぎりなき愛』から) ※
16.決闘 (『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』から) ※
17.追憶 (『シンドラーのリスト』から) ※
18.レイダース・マーチ (『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』から)
19.帝国のマーチ (『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』から)
ボーナス:
ジョン・ウィリアムズとアンネ=ゾフィー・ムターの対談 (約27分) ※

※ ブルーレイのみ収録

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ジョン・ウィリアムズ(指揮)
アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリン3-6 & 15-18)
収録:2020年1月 ウィーン、ムジークフェラインザールでのライヴ

 

 

パッケージ補足

◇本盤(2020年8月発売)はCD・LP・CD+Blu-ray(デラックス盤)として発売され、さらには日本盤と海外盤ではUHQCD、MQACD(ハイレゾ音源)の可否など、さまざまなタイプがあります。

◇Blu-ray映像はライヴ完全収録で、CDは全19曲から13曲が選ばれています(約74分)。収録時間の影響でしょうか。またCDは曲順が異なり、1曲終わるごとの拍手もきれいにカット、CD作品として聴いてほしいこだわりも伝わってきます。

◇完全収録されているCD+Blu-ray(デラックス盤)をおすすめします。日本盤は、音質も最新技術採用で、映像も日本語字幕付きで曲合間のジョン・ウィリアムズMCも楽しめます。もちろんジョン・ウィリアムズとムターの対談も日本語テロップ付き。

↓ここから最新情報追加↓

◆2021年2月には、2CD完全収録盤(SACDハイブリッド)と、ブルーレイ単体(デラックス盤からの分売)が発売されました。ただ・・・この2CDは映像から音楽だけを抜き出したような一体化した音像になっています。一般的に観客席から聴いたような。拍手もそのまま入っています。ステージの幾重のマイクから収録した音像は従来盤(CD・LP・CD+Blu-ray)のほうなので、やっぱりデラックス盤をおすすめします。

◆音響ファンもなやます最先端の録音技術でそれぞれパッケージ化されています。CDはどのタイプを選んだとしても、通常の音楽プレイヤー再生OKです。

 

パッケージ全ラインナップは公式サイトをご参照ください。

ユニバーサル・ミュージック・ジャパン|ジョン・ウィリアムズ
https://www.universal-music.co.jp/john-williams/discography/

 

 

ジョン・ウィリアムズが語ったこと

ムジークフェライン(ウィーン楽友協会)で偉大なウィーン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮するという特権は、私の生涯における大きな名誉となりました。有名な大ホールの音響は、伝え聞く通り素晴らしいもので、ドイツ・グラモフォンが見事に演奏を収録しました。オーケストラのあたたかい待遇と、音楽に対する輝かしい熱意にも深い感銘を受けました。世界中の音楽家と聴衆が、同じ空間で音楽の喜びを共有することが困難な現在において、今回の特別なコンサートを愛おしく振り返りながら、私が美しいウィーンで体験した喜びのいくばくかを、リスナーの皆様にお伝えすることが出来ればと願っております。

(CDライナーノーツより)

 

 

レコード芸術誌から四連発!

本盤は、クラシック音楽誌「レコード芸術 2020年9月号」〈先取り!最新盤レビュー〉コーナーでいち早く紹介されただけでなく、翌「レコード芸術 2020年10月号」の新譜月評で特選盤にも選ばれています。専門家たちのレビューも、いつにもまして跳ねるように軽やかで、まるでいちファンのような距離感がこちらにもストレートに伝わってきます。

 

 

個人的なレビューいらずの、音楽専門家たちの声をご紹介します。

 

 

先取り!最新盤レヴュー

ウィーン・フィルで聴く&観る
圧巻のジョン・ウィリアムズの世界

遂にウィーン・フィルを振るジョン・ウィリアムズ

天下のイエロー・レーベルから、ジョン・ウィリアムズが指揮した自作自演集が出る、(略)、今回のディスクで演奏しているのが、ウィーン・フィル(以下VPO)だという情報を目にした時には、さすがにびっくりした。

さて、音を聴いていこうではないか(今回はWAVファイルでの試聴)。ジョン・ウィリアムズに限らず、映画音楽の場合、サウンドトラックが映画館のスピーカーからの再生を前提にしていることもあり、オリジナル・スコアで演奏しても、音圧の面をはじめとして、どこか物足りなく感じるケースもあるのだが、当盤の1曲目に配されている《ネヴァーランドへの飛行》(『フック』から)では、シンフォニックな厚みが十分に確保されているのが好ましい。麗しいホルンの調べをはじめ、VPOのサウンドもじつにすばらしい。

ジョン・ウィリアムズのシンフォニック・スコアが備えているコルンゴルト的な味わい(さらに遡ればマーラーの第7番の終楽章)を、VPOが見事なまでに引き出しているのが圧巻だ。ムターがソロを担当したナンバーでは、その圧倒的なテクニックに加え、絶妙なフレージングと美音が耳に残ることだろう。そして、作曲者本人も絶賛したという《帝国のマーチ》(『スター・ウォーズ』から)もエキサイティングだ。

 

映像盤がつく「デラックス」はいっそうの楽しさ

なお、デラックス盤には、ブルーレイ・ビデオがプラスされ、コンサートの映像(通常盤には入っていない曲も収録)を見ることができる。ジョン・ウィリアムズが指揮台にのぼると、聴衆がスタンディング・オベーションで迎える様子や、真っ青なドレスに身を包んだムターの演奏姿に加え、VPOの楽団員がじつに満足そうに、そして、時には笑みを浮かべながらプレイしているのが確認できる。それこそ、あのムジークフェラインザールのステージには、あふれんばかりに弦楽器奏者たちがひしめき、《メイン・タイトル》(『スター・ウォーズ/新たなる希望』から)では、ウィンナ・ホルン奏者が8人も映っているカットも出てくるほどだ。なるほど、これだけの特大編成であるが故に、豊麗でシンフォニックなサウンドが、喜びをもって湧きあがってくるのだろう。老ジョン・ウィリアムズも、じつに幸せそうに指揮をしている。ここは、ぜひとも、デラックス盤をお勧めしたいと思う。

満津岡信育

(「レコード芸術 2020年9月号 Vol.69 No.840」より 抜粋)

 

 

特選盤

まちがいなく今年最高の話題盤だろう。今年1月、ウィーン・フィルはジョン・ウィリアムズを指揮台に招き、彼の作品ばかりによる演奏会を行なった。当盤はその模様を収める。演奏は最高の一言だ。ウィーン・フィルの輝かしい響きとのびやかな歌いぶりは、ウィリアムズの音楽と予想以上にぴったりで、ハリウッドの映画音楽が目指した理想のサウンドはこれだったのではないかとさえ感じる。ウィーン・フィルはこれまで夏の野外コンサートで『スター・ウォーズ』や『ハリー・ポッター』を演奏したことがあるが、比べものにならない。8曲(CDでは2曲)で独奏を務めるムターも興が乗っている。なお、このアルバムには複数のヴァージョンがあるが、もし買えるなら、ブルーレイ(映像)ディスクの入ったデラックス・エディションを強くお薦めする。CDより6曲も多いし、前島秀国氏の愛情あふれる解説も読めるし、曲間のウィリアムズの話も、短いが面白いし、なにより楽員や聴衆やウィリアムズ自身の笑顔が見られる。彼らの幸せそうな顔を見ていると、近年、20世紀音楽のレパートリー拡大やHIPの普及によってやや存在感の低下していたウィーン・フィルにとって、彼らがもっとも得意とするロマン派から20世紀前半あたりまでのクラシックを随所で参照するウィリアムズの音楽との出会いは、今後、彼らが進むべき道のひとつを示唆する歴史的なできごととなったのではないかとさえ感じた。

 

[録音評]

ステージ上のオーケストラから若干離れたところから見ているサウンド・ステージ。ホール自体の響きの魅力も含めてジョン・ウィリアムズの世界が音色的な深みを獲得。ステージ上の前後の距離感もきちんと見えてくるがさすがにマルチ・マイクで音数の多さの豪華絢爛なこと。ソロ・ヴァイオリンは若干のトリミング感はあるがオーケストラとの一体感も失っていない。CDでもいい録音だが、デコードして聴くとさらに空間の広がりがあり、現場の空気感が見事に再現されている。いい意味で金のかかった録音。

(「レコード芸術 2020年10月号 Vol.69 No.841」より 抜粋)

 

 

さらに(三発目)、翌「レコード芸術 2020年11月号 Vol.67 No.842」連載「View point」(音楽評論家二人が毎月一枚のディスクを取り上げて語りあうコーナー)では、6ページにわたってその魅力についてクラシックな視点で多角度的に語られています。ボリュームがすぎるため、ぜひ本誌を手にとってみてください。

そうして(四発目)、本盤は「レコード芸術」誌が主催する日本で最も権威のあるクラシック音楽賞「2020年度第58回レコード・アカデミー賞」において「特別部門 企画・制作賞」を受賞し高い評価を得ています。

 

 

オススメは溢れる。

夢のコンサートは、夢のディスクになった。黄金の輝きは、世界中の音楽ファンも黄金の笑顔に輝かせた。もうお祭り状態なんだけれど、イベント感に終わらない高い芸術性の到達点。どれほど言葉をついやすよりも、至福の音楽を浴びることで感じること。オススメしたい言葉や気持ちは溢れるばかり、行き着く先は、聴いて!の三文字になってしまいます。

 

 

ドイツグラモフォン公式チャンネルには、いくつか公式動画が公開されています。

 

John Williams & Vienna Philharmonic – Williams: Theme from “Jurassic Park”

ふくよかなホルン、壮観でしなやかな演奏。ウィーン・フィルの美質を輝かせるかのような作品です。ブラームス交響曲の、あのホルン名旋律や重厚な弦楽旋律にも引けを取りません。

 

John Williams & Wiener Philharmoniker – “Main Title” from “Star Wars: A New Hope”

純粋にシンフォニックなオーケストラ作品であり、ライト・モチーフなどの手法はワーグナーにも通じます。映画登場人物たちを象徴する旋律たちが、次々と奏であいながら、壮大な宇宙の物語を表現しています。果てのない宇宙空間が広がっているような、大きな音楽空間です。

 

Marion’s Theme (From “Indiana Jones and the Raiders of the Lost Ark”)

極上のシルクのようなストリングスにうっとりです。やわらかく、なめらかで、つやのある弦楽器の音色に、透明感のある木管楽器。珠玉の宝石のようです。

 

John Williams & Vienna Philharmonic feat. Anne-Sophie Mutter – “Hedwig’s Theme” From “Harry Potter”

クラシック音楽でいう「トランスクリプション(編曲)」の手法で、新たな可能性を示してくれた曲です。パガニーニやリストにもつながる超絶技巧を追求したコンサート・ピースと呼べるものに昇華していて、ムターのパフォーマンスは圧巻です。

CDには収録されなかった6曲は、すべてムター共演曲です。前年『アクロス・ザ・スターズ ~ジョン・ウィリアムズ傑作選』CDに、ウィーン・フィルではないですがセッション録音されすべて収録されています。コンサートからCDへの収録時間の調整で、優先順位からなくなく除外されたものと思われます。

ムターとウィリアムズがつくりあげたCD作品が先にあったからこそ、ウィーン・フィルとの歴史的コンサートで実現できた、ムタープログラムが華を添えるというスペシャルな演出ができたことはたしかです。

 

John Williams & Vienna Philharmonic – Williams: “Devil’s Dance” from “The Witches of Eastwick”

このムター共演曲は、『アクロス・ザ・スターズ ~ジョン・ウィリアムズ傑作選』発売時にはない、本盤CDに収録された世界初録音です。冒頭から1分間の緊張感にみちた無伴奏のヴァイオリン独奏は、もう映画音楽とは思えないほどです。アクロバティックな技術を、美麗にエモーショナルに聴かせるムターは、音楽のむずかしさではなく、音楽の魅力や楽しめる表現力で魅せてくれます。

 

John Williams & Vienna Philharmonic – Williams: Imperial March (from “Star Wars”)

from ドイツ・グラモフォン公式YouTube

ほとんど原曲から不変なこの楽曲は、最初からフル・オーケストラを前提にした楽曲であった証です。ウィーン・フィルの金管楽器奏者たちたっての希望でプログラムに追加されアンコールで披露されました。ジョン・ウィリアムズも「これまでで最高の演奏のひとつ」と語ったほど渾身の演奏です。

曲がはじまってからすぐに反応する、観客たちの最高潮に達したボルテージもすごいです。映像では熱気そのままに伝わってきますが、CD盤ではきれいに観客側の音はすべてカットされています。この曲だけでなく、全曲にいえることですが、曲が終わるごとに拍手喝采の起こったコンサート。曲終結部に起こる食い気味な拍手も歓声も、すべてきれいにカットされています。臨場感はライヴ音響そのままに、楽器ごとの音を細かく拾うマイクで、CD作品としても聴いてほしいこだわりを極めた、感嘆のため息がもれます。

ライブ会場の観客のリアクションを見ながら、まるで自分も観客の一員になれたような感覚になります。祝祭ムードに包まれたコンサートは、映像からも音楽からもきらびやかな喜びや幸せが舞っているようです。こんなにも心揺さぶられる、自然と笑顔になる、エネルギーが湧きあがってくる。コンサートは現代文化の宝物です。

 

 

ドイツ・グラモフォン公式チャンネルには、上の映像盤からの公式動画だけでなく、CD盤全13曲の公式音源も公開されていると思います。

また、CDライナーノーツは一曲ごとに充実した楽曲解説になっています。久石譲CD作品でもおなじみ前島秀国さんによる音楽的解説と、映画シーンから見た視点なども盛り込まれ、とても深く紐解いた分析になっています。ぜひ手にとってみてください。

 

 

「ウィーン・フィル ニューイヤー・コンサート」のジョン・ウィリアムズ映画音楽版といっていいほどです。ウィーンにゆかりのある曲たちで構成されたニューイヤー・コンサートと同じように、映画音楽のみでプログラムされた演奏会。そんななかでも、有名どころのメインテーマを並べたわけではない、短い曲を抜群の選曲と流れで配置し、飽きさせないフルコースのように仕立てられています。このあたりの曲と曲の流れるようなテンポ感もニューイヤー・コンサートに近いです。『E.T.』や『シンドラーのリスト』からの曲は、曲の後半ではじめてメインテーマが登場するなど、主題曲からではない再現部のような構成をもった楽曲が選ばれていて、あとから追いかけてくる感動があります。夢のテーマパークを、フリーパスで心おきなく楽しんだような幸せなコンサートです。

 

現代の大衆娯楽と伝統的な芸術のひとつの到達点。「カルミナ・ブラーナ」(カール・オルフ)だって、当時の大衆文化や世俗習慣を大いに盛り込んだ作品として誕生し、今ではクラシック音楽演奏会で人気のある作品になっています。現代の大衆娯楽である映画、その映画音楽のなかには伝統的な芸術であるオーケストラ作品として独立できる楽曲がある。オーケストラの魅力を伝えることのできる作品に、これはポップス寄りだとかこれは邪道だとか、、ジャンルの先入観や境界はもういらない。ジョン・ウィリアムズ×ウィーン・フィルの歴史的な公演は、そのことを力強く高らかに宣誓してくれました。

 

 

ジョン・ウィリアムズのCD作品は、年代ごとにいろいろなコンセプト盤やベスト盤が刻まれてきました。僕も同じ歩みで聴いてきたCDも多いなか、いくつか聴きなおしながら、今おすすめしたい4枚のディスクを4回にわたって紹介してきました。それぞれしっかりとしたカラーやコンセプトのあるアルバムです。ぜひゆっくり選んで聴いてみてください。

それではまた。

 

reverb.
この奇跡のコンサートは、COVID-19前夜の2020年1月開催でした。

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

このコーナーでは、もっと気軽にコメントやメッセージをお待ちしています。響きはじめの部屋 コンタクトフォーム または 下の”コメントする” からどうぞ♪

 

Overtone.第40回 「アクロス・ザ・スターズ ~ジョン・ウィリアムズ傑作選」を聴く

Posted on 2021/04/20

ふらいすとーんです。

映画音楽のレジェンド、ジョン・ウィリアムズです。わりと新しいCD作品から、ジョン・ウィリアムズが到達した偉業の集大成であり、かつ現在進行系でもある、そんなホットなアルバムを紹介します。4回にわたる予定、前回につづいてその3回目になります。

 

前回まで

 

 

奇跡のコラボレーション!世界的ヴァイオリニストのムターによるジョン・ウィリアムズ作品集です。あの名曲たちが、さらにエモーショナルに美麗に響きわたります。僕は、このCDを聴いたときに、そうか!こんな遺しかたもあったのか!こんな甦りかたもあったのか! と新しい可能性を感じ強烈な衝撃をうけました。

 

ポイントは3つです。

  • 作曲家によるソリストのための編曲版
  • 高い技術を必要とする音楽作品の完成度
  • 演奏会レパートリーとして定着へ

 

 

アクロス・ザ・スターズ~ジョン・ウィリアムズ傑作選(SHM-CD)日本盤(全12曲)

 

ACROSS THE STARS -DELUXE EDITION- (CD+DVD) import(全17曲)

[CD]
1. レイのテーマ  – 『スター・ウォーズ /フォースの覚醒』から
2. ヨーダのテーマ  -『スター・ウォーズ /帝国の逆襲』から
3. ヘドウィグのテーマ  -『ハリー・ポッターと賢者の石』から
4. アクロス・ザ・スターズ  -『スター・ウォーズ /クローンの攻撃』から
5. ドニーブルーク・フェア  -『遥かなる大地へ』から
6. さゆりのテーマ  -『SAYURI』から
7. 追憶  -『シンドラーのリスト』から *
8. 夜の旅路  -『ドラキュラ』から
9. サブリナのテーマ  -『サブリナ』から
10. 決闘  -『タンタンの冒険 /ユニコーン号の秘密』から
11. レイア姫のテーマ  -『スター・ウォーズ /新たなる希望』から *
12. 会長さんのワルツ  -『SAYURI』から *
13. ルークとレイア  -『スター・ウォーズ /ジェダイの帰還』から
14. すてきな貴方  -『シンデレラ・リバティー /かぎりなき愛』から
15. シンドラーのリストのテーマ  -『シンドラーのリスト』から
16. Markings  –  J.ウィリアムズがムターのために作曲した新曲 (世界初録音) *
17. 平和への祈り  -『ミュンヘン』から *

*デラックス盤CD用 ボーナストラック (only import)

 

[DVD]
アンネ=ゾフィー・ムター&ジョン・ウィリアムズ インタビュー

アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)
ロサンゼルス・レコーディング・アーツ・オーケストラ
ジョン・ウィリアムズ(指揮)

録音時期:2019年4月
録音場所:ロサンゼルス
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)

 

[CD]
1.Rey’s Theme – from STAR WARS: THE FORCE AWAKENS
2.Yoda’s Theme – from STAR WARS: THE EMPIRE STRIKES BACK
3.Hedwig’s Theme – from HARRY POTTER AND THE PHILOSOPHER’S STONE
4.Across the Stars (Love Theme) – from STAR WARS: ATTACK OF THE CLONES
5.Donnybrook Fair – from FAR AND AWAY
6.Sayuri’s Theme – from MEMOIRS OF A GEISHA
7.Remembrances – from SCHINDLER’S LIST *
8.Night Journeys – from DRACULA
9.Theme – from SABRINA
10.The Duel – from THE ADVENTURES OF TINTIN: THE SECRET OF THE UNICORN
11.Princess Leia’s Theme – from STAR WARS: A NEW HOPE *
12.The Chairman’s Waltz – from MEMOIRS OF A GEISHA *
13.Luke and Leia – from STAR WARS: RETURN OF THE JEDI
14.Nice to Be Around – from CINDERELLA LIBERTY
15.Theme – from SCHINDLER’S LIST
16.Markings for solo violin, strings and harp (Dedicated to Anne Sophie Mutter) *
17.A Prayer for Peace – from MUNICH

*Bonus tracks

ANNE-SOPHIE MUTTER violin
 THE RECORDING ARTS ORCHESTRA OF LOS ANGELES
JOHN WILLIAMS conductor

[DVD]
Anne-Sophie Mutter in conversation with John Williams

 

 

日本盤はSHM-CD仕様になっていますが全12曲です。海外盤は全17曲と5曲多いうえに、ふたりの対談DVD付きです(日本語字幕なし)。

 

 

ジョン・ウィリアムズの代表曲たち『スーパーマン』『ジュラシック・パーク』『E.T.』などのメインテーマは、ここにはありません。それらは、ファンファーレ的であり、金管楽器が高らかに鳴り響くことが持ち味です。本作には、ヴァイオリンとオーケストラの組み合わせが映える選曲がなされています。また女性キャラクターのために書かれたテーマ曲など、恒例なベストアルバム的選曲では決してお見かけできないラインナップに、きっと新しいめぐり逢いがあります。

 

 

ジョン・ウィリアムズが語ったこと

「私は、彼女が確立した素晴らしいキャリアに、ささやかながら何らかの貢献が出来るかもしれないと喜びを感じ、同時にやりがいのある仕事だと感じた」

「今回のムターとの録音は、インスピレーションに溢れた仕事でした。彼女は予想もしない新しい演奏で、すでに親しまれてきたテーマ曲の数々に新たな生命を吹き込み、作曲家としての私に大きな喜びを与えてくれました」

「ムターは、ヴァイオリンという楽器であらゆる時代の名曲を演奏し続けてきました。その楽器で私の作品が演奏されるのは、この上ない名誉です」

「長年なじんできたテーマの中からいくつか選び、編曲しましたが、それをヴァイオリンで演奏すると、今までと異なるエモーショナルな体験が得られるのです」

from CDライナーノーツ

 

 

本盤は、クラシック音楽誌「レコード芸術 2019年10月号」〈先取り!最新盤レビュー〉コーナーでいち早く紹介されただけでなく、翌「レコード芸術 2019年11月号」の新譜月評で特選盤にも選ばれています。世界的ヴァイオリニストの録音とあらば注目されることはもちろんです。しかし、だからといってクラシック音楽たちと並列して高い評価を受けるとは限りません。映画音楽が芸術性を高めた音楽作品へと昇華されたからこそです。

 

 

個人的なレビューいらずの、音楽専門家たちの声をご紹介します。

 

 

先取り!最新盤レビュー

作曲家自身の編曲によるムターのための「傑作選」

ムターの申し出で実現した新しい映画音楽の姿

アンネ=ゾフィー・ムターが、ジョン・ウィリアムズの作品を録音したというニュースを目にして、筆者は、「え?そうなの?」と驚いた一人である。ところが、当盤のブックレットによれば、ムターは、ジョン・ウィリアムズの音楽の大ファンで、「彼の担当した映画を映画館に観に行き、音楽の中でヴァイオリンやチェロが用いられていると、『私も弾きたい!』といつも思います。そしてついに、彼自身の素晴らしい編曲で、有名なテーマ曲を全部弾けるようになったのです」という言葉が掲載されている。しかも、ムターの方から、アルバムを作りたいと申し出たということである。

当盤は、ジョン・ウィリアムズの映画音楽から12曲がセレクトされているが、《シンドラーのリスト》のように、もともとヴァイオリン独奏を用いて書いた楽曲(既存の編曲を一部用いたものもあり)以外は、作曲者本人が新たに編曲した点も重要である。美しいメロディを、単にヴァイオリンに割り振って、イージー・リスニング的に聞かせていくアプローチとは正反対に、ヴァイオリンという楽器が備えている表現力を活かしながら、原曲が持っているイメージをさらに広げることに成功しているのである。

 

ムターなればこそ可能な華麗かつ強靭な表現

1曲目の《レイのテーマ》から、ムターの美音を活かしつつ、重音奏法を盛り込み、シンフォニックな高揚感も効果的だ。3曲目の《ヘドウィグのテーマ》は、ロマン派のヴィルトゥオーゾ型の演奏会用変奏曲のようになっている点も興味深い。映画『ハリー・ポッター』の世界観を写し出すように、重厚でありながら、神秘的な響きが取り込まれている。カデンツァでは、日常世界からの逸脱を示すように、呪縛力に富んだ音楽となり、ムターが集中力あふれる熱演を展開している。

6曲目の《さゆりのテーマ》は、日本を舞台にした映画『SAYURI』のメイン・テーマであり、原曲では、ヨーヨー・マが演奏していた楽曲だ。当盤では、それをヴァイオリン用に改編しているが、胡弓のようなグリッサンドを活用し、平均律を逸脱して、東洋的な雰囲気を醸し出す箇所をはじめ、G線上で朗々と歌い抜いていく場面の美しさが圧巻だ。

9曲目の《決闘》は、映画『タンタンの冒険/ユニコーン号の冒険』のエンドロールが原曲で、前島秀国氏の解説によれば、1930年代にハリウッドで量産された剣戟映画へのオマージュとして作曲されたそうだが、無伴奏で弾く箇所は、ルトスワフスキやペンデレツキを演奏したムターだからこそ可能な峻烈な表現に加え、微妙な音程の取り方など、じつに刺激的な演奏が収録されている。もちろん、それだけではなく、当アルバムでは、ある時は明るく美麗な音で美しい旋律を歌い抜き、またある時は強靭な響きを発するなど、ムターの変幻自在な表現力が光っている。ジョン・ウィリアムズの編曲譜も充実している。ヴァイオリンの細かなテクニックに関しては、ムターとの打ち合わせの成果が活かされているに違いない。オーケストラは71名編成とのこと。映画音楽ファンはもとより、クラシック音楽ファンにも、声を大にしてお薦めしたい一枚だ。

満津岡信育

(「レコード芸術 2019年10月号 Vol.68 No.829」より)

 

 

特選盤

秀抜なアイディアが実を結んだと言おうか、夢の顔合わせから予想を超える結果が生み出されたと言おうか。一見コマーシャルな”売り物アルバム”のように見えながら、実はスーパーマン同士が心を寄せ合っての丹精から生み出された、きわめて高度な、しかも喜びに満ちた奏楽が、当アルバムを彩っているのだ。要は、アメリカ映画音楽界の巨匠ジョン・ウィリアムズが、現代のカリスマ的ヴァイオリニスト、アンネ=ゾフィー・ムターのために──というより、彼女と共に演奏するために──『スター・ウォーズ』『ハリー・ポッター』ほかアメリカ名画の数々に寄せた自分の楽曲を改めてヴァイオリン・ソロとオーケストラのために編曲し、自分は指揮棒をとって、共に録音したアルバムがこれなのだ。

(以下、省略)

 

ムターによるジョン・ウィリアムズの映画音楽集。当盤の前島秀国氏の解説によれば、ウィリアムズが自作の映画音楽だけを、特定のソリストのために編曲したアルバムはこれが初めてなのだという。指揮はもちろん、ウィリアムズ自身、オーケストラはハリウッド映画専門のオーケストラ、ロサンジェス・レコーディング・アーツ・オーケストラ。収録作品映画『スター・ウォーズ』『ハリー・ポッター』『シンドラーのリスト』などだが、日本を舞台にした『SAYURI』のテーマ曲なども。編曲といっても、どの曲もかなり凝った内容になっていて、ヴァイオリンとオーケストラによるシンフォニックな幻想曲風作品や変奏曲に仕立てられていて聴き応えがある。ムターはさすがにすばらしい。1曲目の〈レイのテーマ〉から艶やかな音色で豊かなヴィブラートで奏でられるフレーズはどれもが明るい気品に輝いていて、名旋律をゴージャスに彩る。〈ヨーダのテーマ〉もそうだが、フレージングの見事なこと。ときに心震え、ときに地平線の彼方まで飛んでいく。美しくかたちの整った音だけではない。〈ヘドウィグのテーマ〉ではファンタジー豊かに実に多様な音色で豊かな幻想味を出しているし、『シンドラーのリスト』の〈テーマ〉でも「泣き」の入った掠れた音色と情感の籠ったフレージングで、セッションを訪れたスピルバーグを感動させたというが、それも頷ける。ムターのヴァイオリンの豪奢な音色と卓越した表現力の賜物だろう。

(「レコード芸術 2019年11月号 Vol.68 No.830」より)

 

 

ここまで言われたら、もう何も言うことはない。

音楽通たちも絶賛したアルバムです。とにかくすごい!ということは伝わると思います。レコーディングは5日間におよぶ充実したセッション録音です。パフォーマンスも録音技術も完成度を極めています。あとは、曲を聴きながら、曲ごとに上の解説と照らし合わせながら、読んだり聴いたりしてもらえると、よりぐっと染みわたってくると思います。僕は、個人的に、専門的解説に際して、そういう解釈するんだとか、そういうところに注目するんだとか、そういう表現するんだとか、自分にはない視点や発見があるからおもしろいです。そういったこともあって、少し長いですが原文ままに紹介させてもらいました。

 

 

作曲家によるソリストのための編曲版

メロディをヴァイオリン用にアレンジした、イージーリスニング的なものではありません。ヴァイオリンという楽器の表現力や可能性を最大限に追求した編曲版たちです。それは、例えば、久石譲作品でいえば「Untitled Music」や映画音楽からは「ヴァイオリンとオーケストラのための「私は貝になりたい」」などが浮かんできます。

ヴァイオリンを独奏楽器にするということは、ヴァイオリンが映えるためのオーケストレーションを施し、カデンツァなどを盛り込みながら小協奏曲のように構成する。クラシック音楽の方法論を実践できる作曲家、それがジョン・ウィリアムズであり久石譲です。

本盤を聴いて、そうか!久石譲音楽もまだまだいろいろなかたちで遺すことができる!甦ることができる! そう思いました。スタジオジブリ作品の交響組曲化は進んでいますが、また異なるベクトルで、ソリストのための作品集という切り口もある。

 

‘I’d Rather be a Shellfish’ for Violin and Orchestra (Live In Tokyo / 2014)

from Joe Hisaishi Official

 

 

 

高い技術を必要とする音楽作品の完成度

そうやって新しい生命を吹き込まれた作品は、決して安易なアレンジものではない、正統な音楽作品として完成度を誇っています。本盤の公式音源から1曲紹介します。「ハリー・ポッター」ふんだんなヴィルトゥオーゾ(超絶技巧)や、華麗なカデンツァも配置された変奏曲です。ヴァイオリンの奏法も重奏からピッツィカートまで多彩に、いろいろな音色で魅せてくれます。速いパッセージを縦横無尽に弾きこなし、かすれた音から圧のかかった音、はたまた弦と弓が当たって音色になる瞬間の音まで。魔術的な編曲と演奏は、ヴァイオリンの魅力を存分に楽しむことができます。

 

Hedwig’s Theme (From “Harry Potter And The Philosopher’s Stone” / Audio)

from Anne-Sophie Mutter VEVO official YouTube

 

原曲のイメージからは、次元の異なる昇華です。美しいメロディと磨き抜かれた技巧。エンターテインメントとしての大衆性と高度な芸術性の結晶です。

本盤を聴いて、そうか!久石譲音楽もまだまだいろいろなかたちで遺すことができる!甦ることができる! そう思いました。『魔女の宅急便 組曲』から「おかあさんのホウキ」、WDOコンサートマスターによるヴァイオリン・ソロは、うっとり魅了されます。こちらは、組曲からの抜粋になりますけれど、スタジオジブリ音楽/映画音楽/テレビ・CM音楽と、久石譲音楽には無限の可能性があります。

 

Symphonic Suite “Kiki’s Delivery Service” : Mother’s Broom (Live In Japan / 2019)

from Joe Hisaishi Official

 

 

 

楽器かわってこんな曲も。トランペットをフィーチャーした「天空の城ラピュタ」WDO版も人気です。

 

Castle in the Sky

 

 

演奏会のレパートリーとして定着へ

これだけ音楽性の高い楽曲であれば、演奏会にも引っ張りだこです。スコア出版されれば(譜面の提供環境が整えば)、レパートリーの殿堂入りまちがいなしです。本盤ジョン・ウィリアムズ傑作選は、それほどにスコアの要望や演奏の需要は高いと思います。一定期間はムターに独占的機会があるのかもしれませんが、一般にスコア化された日には、ますます演奏機会は世界に広がります。

本盤を聴いて、そうか!久石譲音楽もまだまだいろいろなかたちで遺すことができる!甦ることができる! そう思いました。久石譲の数ある名曲たちも、久石譲の手によって、いろいろな編曲版がのこされたなら。オーケストラ、アンサンブル、ソリストを迎えて。本格的な音楽構成だからこそ、一流演奏家たちも喜ぶレパートリーへとなっていきます。そして、演奏版の種類と演奏機会はかけ算となり、私たち聴衆は、溢れるほどにさまざまなに、楽しむことができるようになります。

 

 

Remembrances (From “Schindler’s List”)

こんなに素晴らしい曲が、デラックス版(輸入盤)にしか収録されていないなんて。後半の「シンドラーのリスト」メロディのヴァイオリン独奏は涙ものです。

 

 

ムター公式YouTubeには、本盤全12曲の公式音源が公開されています。ムター公式やドイツ・グラモフォン公式とあわせれば、デラックス版に収録されている追加5曲も聴くことできると思います。うまく英語曲名で探してみてください。

 

ACROSS THE STARS – John Williams & Anne-Sophie Mutter (Official Audio) playlist 12 songs

https://www.youtube.com/watch?v=bmBE6_gCTww&list=PLYS8O7ZO9o2NbFsids6tC5y98PDXKuBsi&index=1

 

また、CDライナーノーツのほうは、一曲ごとに充実した楽曲解説になっています。久石譲CD作品でもおなじみ前島秀国さんによる音楽的解説です。原曲との違い(旋律楽器・構成)も具体的に、映画で使われたシーン解説も含めてファン必読です。

 

 

 

DVD映像の抜粋からなる公式トレーラー動画では、レコーディング風景をまじえたインタビューを見ることができます。

Across the Stars” – Anne-Sophie Mutter and John Williams (Trailer)(約6分)

 

 

ヨーダのTシャツを着て録音に臨んだムター、チャーミングです。

 

 

現代に高い人気と、高い影響力と、高い評価を誇る、そんな二人のコラボレーション。クラシック音楽ファン、ヴァイオリンファン、映画音楽ファン、そんなすべてのファンに捧げる名盤です。きっとこれから先もずっとずっと愛聴されていくでしょう。

前回紹介した「ジョン・ウィリアムズ・セレブレーション」と並んで、今回紹介した「アクロス・ザ・スターズ」は、映画音楽が21世紀のクラシックになることへの力強い宣誓のようです。そして、・・・そうか!久石譲音楽もまだまだいろいろなかたちで遺すことができる!甦ることができる! そう思いました。それが一番言いたかった。

 

 

おまけ

これまたジョン・ウィリアムズが、世界的ヴァイオリニストのイツァーク・パールマンのために、自作以外の映画音楽からもセレクトしアレンジを施した作品集『シネマ・セレナーデ』(1996)です。往年名作たちから選曲されています。この一曲のクレジットを見ただけでも奇跡です。演奏も奇跡です。

13.「ニュー・シネマ・パラダイス」より愛のテーマ
演奏:イツァーク・パールマン
作曲:エンニオ・モリコーネ
編曲:ジョン・ウィリアムズ

指揮:ジョン・ウィリアムズ
演奏:ピッツバーグ交響楽団

 

それではまた。

 

reverb.
ムターとの共演はウィーンフィルとの共演にもつながっていきます♪

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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Overtone.第39回 「ジョン・ウィリアムズ・セレブレーション」を聴く

Posted on 2021/03/20

ふらいすとーんです。

映画音楽のレジェンド、ジョン・ウィリアムズです。わりと新しいCD作品から、ジョン・ウィリアムズが到達した偉業の集大成であり、かつ現在進行系でもある、そんなホットなアルバムを紹介します。4回にわたる予定、前回につづいてその2回目になります。

 

前回まで

 

 

ジョン・ウィリアムズ傑作集といえる収録曲たちは、2CDのボリュームです。若手人気指揮者ドゥダメルによって、ゴージャスなサウンドに心躍ります。本盤は、2019年1月コンサートのライヴ録音で、アンコールまで収録した完全盤でのリリース。ジョン・ウィリアムズの代表作を網羅した作品集になっています。

 

 

ジョン・ウィリアムズ・セレブレーション
ドゥダメル/ロサンゼルス・フィルハーモニック(2019)

CELEBRATING JOHN WILLIAMS
LOS ANGELES PHILHARMONIC・GUSTAVO DUDAMEL

CD 1

1. オリンピック・ファンファーレとテーマ
2.『未知との遭遇』から抜粋
3.『ジョーズ』から 鮫狩り/檻の用意!
4.『ハリー・ポッターと賢者の石』から ヘドウィグのテーマ
5.『ハリー・ポッターと秘密の部屋』から 不死鳥フォークス
6.『ハリー・ポッターと賢者の石』から ハリーの不思議な世界
7.『シンドラーのリスト』から テーマ
8.『E.T.』から 地上の冒険
9.『フック』から ネヴァーランドへの旅立ち

CD 2

1.『ジュラシック・パーク』から テーマ
2.『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』から オートバイとオーケストラのスケルツォ
3.『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』から マリオンのテーマ
4.『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』から レイダース・マーチ
5.『SAYURI』から さゆりのテーマ
6.『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』から 帝国のマーチ(ダース・ベイダーのテーマ)
7.『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』から ヨーダのテーマ
8.『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』から 王座の間とエンドタイトル
9.『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』から アダージョ
10.『スーパーマン』から マーチ

グスターボ・ドゥダメル 指揮
ロサンゼルス・フィルハーモニック

録音:2019年1月24-27日 ウォルト・ディズニー・コンサート・ホール〈ライヴ〉

 

 

曲名を見ただけで、いくつかはメロディが自然に浮かんでくる。いろいろなオススメポイントを書いていきたいところです。でも、その必要はないかもしれません。本盤は、クラシック音楽誌「レコード芸術 2019年5月号」で、堂々とクラシックCD盤たちと並んで紹介されていただけでなく、なんと特選盤にも選ばれました。クラシック音楽界やクラシック音楽専門家から見ても、熱い視線で話題となり太鼓判な一枚として選ばれた、そんな王道作品です。

 

 

特選盤

ドゥダメルは、「ジョン・ウィリアムズは現代のモーツァルトだ」というほど、彼の大ファンなのだという。そのドゥダメルが、ロサンゼルス・フィルとともに、今年87歳を迎えたこの大作曲家の名曲の数々を演奏したアルバムだ。今年1月のライヴ録音だが、3月には東京でも同様のプログラムによる演奏会が行われたので、聴かれた方も多いだろう。ドゥダメルは、ウィリアムズの作品をしばしば取り上げており、2015年末に公開された『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』では、オープニング及びエンディング・テーマの指揮も担当していた。なお、ドゥダメルは2014年にも同様のコンサートを行なっていて、これはブルーレイ/DVDが出ている。作曲者本人やパールマンの出演したそちらも良かったが、曲目の豪華さでは今回の方が上だ。とにかく、スピルバーグ作品を中心に、誰もが知っている名作の、誰もが聴いたことのある名旋律がずらりと並ぶ。あらためて、ジョン・ウィリアムズの業績の桁外れの大きさを実感させられる。近現代のクラシック音楽のさまざまな語法を自由自在に使い、それでいて誰の心も揺さぶる力のある彼の音楽には、どこか魔術的な魅力がある。演奏は非の打ちどころがない。輝かしく澄んだサウンド、シャープで生き生きとしたリズム、そして迫力とスピード感。いわゆるクラシックの指揮者とオーケストラが映画音楽を演奏したアルバムは結構あるが、これはその究極の形だろう。

[録音評]
かなりの大編成による演奏のようであるが、聴こえて来る感じは広いステージのイメージではなく、むしろサウンドトラックのようなスタジオ収録風である。ロス五輪をはじめ、懐かしい名画からの聞き憶えのある曲ばかりだから、自然と頭の中に映像が浮かんでくる。映画館で聞いた迫力ある効果音的な打楽器の重低音や金属音がここでも同じように再現されている。

(「レコード芸術 2019.5月号 Vol.68 No.824」より)

 

 

レコード芸術評をもとに補足です。

2019年1月ロサンゼルス・フィルハーモニック創立100周年記念シーズンのハイライト(2018/2019)としてコンサート開催されました。3月21日、オーケストラもプログラムもそのままに日本公演を果たしています。そのときの「シンドラーのリスト」ヴァイオリン・ソリストは三浦文彰さん。日本公演の模様は、5月5日にTV放送(NHKEテレ)され反響を呼び、時期をおいて再放送もされました。

 

 

21世紀のクラシック ~指揮者~

グスターボ・ドゥダメルは、ロサンゼルス・フィルハーモニックの音楽監督も務め、「ウィーンフィル・ニューイヤーコンサート2017」の指揮も務めるなど、今最も注目されている指揮者の一人です。また、ジョン・アダムズがドゥダメルのために作品を書き下ろしたりと、古典作品だけでなく現代作品にも鋭い感覚をもっています。

ジョン・ウィリアムズとの交流も深く、映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』でのOP/ED曲の指揮はジョン・ウィリアムズたっての希望だったというエピソードもあります。そのほか、ディズニー映画『くるみ割り人形と秘密の王国』(作曲:ジェームズ・ニュートン・ハワード)のサウンドトラック録音指揮を務めていたり、エンターテインメントでも活躍の場は広いです。

クラシック音楽も現代作品もこなせる感覚の新しさ。複雑な構成やリズムも得意とするソリッドなアプローチも特徴です。ジョン・ウィリアムズへのリスペクトも強く、本盤でも決してポップスな指揮はしていません。ドゥダメルが選曲したというプログラムは、まるでジョン・ウィリアムズの作品群をひとつの大きな交響曲として構成しているような、そんな意気込みや気概をひしひしと感じます。

 

 

 

久石譲がドゥダメルについて語ったこと。

『音楽する日乗』の「ドゥダメルの演奏会を聴いて」「指揮者のような生活」項にてたっぷり語られています。演奏会で聴いたプログラム感想(マーラー:交響曲第6番、ドヴォルザーク《新世界》ほか)、オーケストラのアプローチ特徴や対向配置のこと、ほか。久石譲指揮や久石譲コンサートにも通じる反映されている、久石譲の指向性がとてもよく伝わってきます。ぜひ手にとってみてください。

 

 

 

21世紀のクラシック ~オーケストラ~

ロサンゼルス・フィルハーモニックは、映画『スター・ウォーズ』シリーズ(1980’s)のサウンドトラック録音を担当するなど、古くから映画音楽やジョン・ウィリアムズ作品ともゆかりのあるオーケストラです。

本盤も、大編成オーケストラです。3管編成、ホルン8、トランペット5など、マーラー作品にも負けないほどの大きさで、ダイナミックに迫ってきます。また、ドゥダメルは対向配置をとっているのも特徴で、ほとんどのクラシック公演でも録音でも、オーケストラは対向配置です。久石譲も対向配置です。

映画音楽名曲集コンサートのような、ポップス・コンサートには決してなっていない。ポップス・オーケストラのように、ドラム・ギター・ベースがリズムを刻むこともありません。純粋なオーケストラの編成で、クラシック音楽と同じように至極の音楽空間が広がっています。

本公演から1曲だけコンサート動画がアップロードされていました。圧巻の大編成!対向配置!パフォーマンス!ぜひ堪能してください。

 

LA Phil & Gustavo Dudamel – Williams: Theme from “Jurassic Park” (Live at Walt Disney Concert Hall)

from ドイツ・グラモフォン公式YouTube

 

 

対向配置の特徴やその魅力については、ここでも少し語っています。もし興味あったらどうぞ。

 

 

21世紀のクラシック ~プログラム I~

ジョン・ウィリアムズの作品を集めるということは、アメリカ音楽史プログラムです。ハリウッド映画=アメリカ(たとえ映画がアメリカを描いていなくても、映画産業の象徴としてのハリウッド)。映画を巡る旅は、音楽を巡る旅であり、アメリカ音楽史を巡る旅にもなります。これまでに、ガーシュウィン「ラプソディ・イン・ブルー」や、バーンスタイン「ウエスト・サイド物語」が演奏会でプログラム定番曲となってきたように、これからは、同じアメリカ人作曲家のジョン・ウィリアムズ作品が、新しいレパートリーとなっていきそうな予感です。

あまりにもキャッチーなメロディは、あまりにもエンターテインメントな盛り上がりかたは、クラシック音楽と並列にはできない、そぐわない。そんな傾向もまだまだ根強い昨今です。でも、モーツァルトだって、誰でも口ずさめるキャッチーなメロディもあれば、清らかで純粋なハーモニーで直球いってる作品もたくさんあります。

本盤の収録曲はすべて、映画公開終了後にジョン・ウィリアムズ自ら演奏会用に編曲したものです。サウンドトラックからそのまま引っ張り出すと、曲の一部しか聴けないとか、フェードアウトして終わるとか、演奏会では披露できない曲もあります。それらを、もっと音楽的に発展させたり、音楽作品として独立できるよう再構成したものです。ジョン・ウィリアムズ作品は、公式スコアが普及しているおかげもあってか、多くの演奏機会に恵まれ定着してきた曲たちです。

 

 

21世紀のクラシック ~プログラム II~

ドゥダメルは、ジョン・ウィリアムズの数ある名曲たちから、ベストアルバム的にプログラムしているわけではありません。《フライング・テーマ》《空への憧れ》《自由への夢》をテーマにおき、『ハリー・ポッター』『E.T.』『フック』『スーパーマン』の飛翔テーマを含めた大きなプログラム構成になっています。

久石譲に置き換えたら。演奏会用に再構成すること、公式スコアとしてかたちに残すことは、並行して行われています。これまでに手がけてきた数多くの映画・TV音楽から、《海》をテーマにプログラムを組むこともできるようになるかもしれません。スタジオジブリ映画・ジブリ交響作品から《フライング・テーマ》を象徴する楽曲たちを選んで、作品を超えてプログラムすることもできるようになるかもしれません。

音楽作品(再構成・スコア)としてきちんと残すということは、未来のクラシックになるためにとても大切なことです。それを今かたちにしている、そんななかに僕らは聴衆として一緒に歩んでいる。そんな気もしてきませんか?

 

 

Out To Sea / The Shark Cage Fugue (From “Jaws” / Live At Walt Disney Concert Hall, Los Angeles / 2019) · Los Angeles Philharmonic · Gustavo Dudamel

from ロサンゼルス・フィルハーモニック LA Phil 公式YouTube

 

ドゥダメルの指揮は、きっちり縦のラインのそろった、ソリッドなリズム表現です。ジョン・ウィリアムズ本人の指揮のほうが横揺れしているかもしれません。それほどに、律儀に正確に忠実に、スコアと向き合い具現化しているアプローチです。

映画『ジョーズ』の音楽といえば、あの恐怖がじわじわと迫ってくるような曲がポピュラーですが、こんな音楽もあったんだと新鮮さのある曲です。バロック音楽のフーガのような精緻な声部が折り重なり、まるで陽気で軽やかな海賊映画のようです。

 

 

ロサンゼルス・フィルハーモニック公式YouTubeには、本盤全19曲の公式音源が公開されています。ライブ音源ながら、スタジオ収録のような引き締まった音像です。CD2枚組のボリュームと練られたプログラム構成は、聴きごたえたっぷりです。

 

Celebrating John Williams (Official Audio) playlist 19 songs

https://www.youtube.com/watch?v=uHWIbM2NGOE&list=OLAK5uy_ll6sgiqDqqf99gUOws2nl–OF3RMPF8nI

 

また、CDライナーノーツのほうは、一曲ごとに充実した楽曲解説になっています。久石譲CD作品でもおなじみ前島秀国さんによる音楽的解説と、映画シーンから見た視点なども盛り込まれ、とても深く紐解いた分析になっています。ぜひ手にとってみてください。

 

 

 

「ジョン・ウィリアムズ・セレブレーション」このアルバムの最大の功績は、ジョン・ウィリアムズ音楽を、21世紀のクラシック作品として花開かせたことだと思います。この第一歩は、やがて未来への大きな布石となっていくだろう、大きな分岐点となっていきそうです。

それではまた。

 

reverb.
昔ジョン・ウィリアムズ ファンクラブにも入会していました♪

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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Overtone.第38回 「ジョン・ウィリアムズ・プレイズ・スピルバーグ」を聴く

Posted on 2021/02/20

ふらいすとーんです。

映画音楽の巨匠ジョン・ウィリアムズです。2017年、生誕85周年を記念して企画されたディスク「ジョン・ウィリアムズ・プレイズ・スピルバーグ」です。スティーヴン・スピルバーグ監督とのコンビ(43年間の交流と27本の作品)から、選りすぐりの曲をすべて新アレンジ・新スタジオ録音、ジョン・ウィリアムズ自ら指揮したアルバムです。

 

このアルバム、すごくいい!

おすすめしたい理由は2つあります。ひとつは、音がいい。ひとつは、聴き逃していた名曲たちです。収録曲だけ見たなら、なかなか手にとらない一枚かもしれません。自信をもっておすすめします。

 

音がいい

音がいい。サウンドトラック盤よりもダイレクトに解放された音像がそこにはあります。耳が喜ぶ楽器たちの生の音がします。

ハリウッド映画音楽ってフィルターかかってる?!音質が抑制されてる?! そんなことを思うときがあります。マイルドな音像仕上がりといえば聞こえはいいですが、どうも薄い膜が一枚あるような印象を受ける。端的に言えば、楽器そのもののからの音がダイレクトに響かない。ざくざく強く摩擦する弦楽器も、突き抜けて破裂するような金管楽器も、息を吹き込む風圧の木管楽器も。まるでそのままだと粗いからと、少しヤスリをかけたようなまろやかなミキシングになっている。

ジョン・ウィリアムズの手がけた『ハリー・ポッター』や、近年フィナーレを迎えた『スター・ウォーズ』の新作音楽も、そのほか多くのハリウッド超大作に同じような音像を感じていまうときがあります。ずっと鳴りっぱなしのハリウッド映画音楽だから?音も丸くしてる?、、、これはハリウッドでは主流な音響の仕上げ方なのかな? 久石譲音楽や邦画サウンドトラックではあまり感じないことです。

そこへきての本アルバムです。音楽作品として新アレンジ・新録音したというだけでも、期待は高まりますが、一曲目からそのダイレクトな楽器音に感動します。特に、ハリウッド映画音楽といえば、フルオーケストラのなかでも、金管楽器たちの咆哮が魅力です。ファンファーレ的ホーンセクションは定番ものです。ここに収録された楽曲たちは、音楽構成として映像から解放されただけでなく、音像としてもなんの遠慮もいらないほど解放的に響きわたります。

 

聴き逃していた名曲たち

わりと新しめのスピルバーグ作品から選ばれています。それは、スピルバーグ作品集の3枚目にあたるからです。

スピルバーグ×ウィリアムズのコラボレーションによる作品集は、過去2枚リリースされています。本作同様、サウンドトラック盤からのセレクトではない、本人指揮・新録音されたもので、演奏はいずれもボストン・ポップスです。そちらのほうに『ジョーズ』『未知との遭遇』『レイダース』『E.T.』『インディ・ジョーンズ』『ジュラシックパーク』『シンドラーのリスト』等、世界中で大ヒットした映画から収録されています。(『スピルバーグの世界』1991CD/『スピルバーグ・スクリーン・ミュージック・ベスト Williams on Williams』1995CD)

あえて、過去2枚のウィークポイントをあげるとすれば、サントラ盤と変わらない1990年代の音質であり、サントラ盤と変わらない同アレンジで録音だけが新しい。コンサート用に書き直されたものではない。ボストン・ポップスの音でとおして聴きたいファンにはうれしいディスクです。

3枚目に当たる本作は、演奏会用に再構成されたもの、より大胆で自由な多楽章に飛躍したもの、サウンドトラック盤よりも解放された高音質。収録曲だけを眺めてみると、いくぶん馴染みのないラインナップに見えますが、そんな心配を見事に裏切ってくれます。そこには、今も変わらぬ最高に豊かで実りの多いコラボレーションの結晶たちが、自信に満ち輝きながら待っています。

 

 

ジョン・ウィリアムズ・プレイズ・スピルバーグ(2017)

The Spielberg/Williams Collaboration Part III

 

※日本独自企画2枚組
(Blu-spec CD2+DVD)

DISC1(CD)
01. マットの冒険~『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』(2008)
02. アフリカよ、涙を拭いて~『アミスタッド』(1997)
03. BFG~『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』(2016)
04. 何人に対しても悪意を抱かず~『リンカーン』(2012)
05. 決闘~『タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密』(2011)
06. 新たな始まり~『マイノリティ・リポート』(2002)
ー アルト・サックスとオーケストラのための逃奏曲~『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』(2002)
07. 第1楽章《包囲》
08. 第2楽章《揺れる心》
09. 第3楽章《歓喜の飛翔》
10. マリオンのテーマ~『レイダース 失われたアーク《聖櫃》』(1981)
11. 戦没者への讃歌~『プライベート・ライアン』(1998)
12. 1912年、ダートムア~『戦火の馬』(2011)
13. ヴィクターの物語~『ターミナル』(2004)
14. 平和への祈り~『ミュンヘン』(2005)
15. 移民と建築~『アンフィニッシュト・ジャーニー』(1999)
16. 何人に対しても悪意を抱かず[オルタネイト・ヴァージョン]~『リンカーン』(2012)

1.The Adventures Of Mutt  “Indiana Jones And The Kingdom Of The Crystal Skull”
2.Dry Your Tears, Africa  “Amistrad”
3.The BFG  “The BFG”
4.With Malice Toward None  “Lincoln”
5.The Duel  “The Adventures Of Tintin”
6.A New Beginning  “Minority Report”
7.Escapades For Alto Saxophone And Orchestra Movement 1:Closing In  “Catch Me If You Can”
8.Escapades For Alto Saxophone And Orchestra Movement 2:Reflections  “Catch Me If You Can”
9.Escapades For Alto Saxophone And Orchestra Movement 3:Joy Ride  “Catch Me If You Can”
10.Marion’s Theme  “Raiders Of The Lost Ark”
11.Hymn To The Fallen  “Saving Private Ryan”
12.Dartmoor, 1912  “War Horse”
13.Viktor’s Tale  “The Terminal”
14.Prayer For Peace  “Munich”
15.Immigration And Building  “The Unfinished Journey”
16.With Malice Toward None (Alternate Version)  “Lincoln”

指揮、作曲:ジョン・ウィリアムズ
演奏:レコーディング・アーツ・オーケストラ・オブ・ロサンゼルス
録音:2016年9月~10月

DISC2(DVD)
スペシャル・ドキュメンタリー映像(2016年10月撮影)

スピルバーグとウィリアムズの対談/レコーディング風景
日本語字幕付 approx.24min

 

 

※世界発売4枚組「JOHN WILLIAMS・STEVEN SPIELBERG THE ULTIMATE COLLECTION」(3CD+DVD)から、最新盤のDISC3と日本語字幕付DVDとして発売。DISC1・2は上にも書いた過去作品(1991・1995)です。

 

 

 

公式チャンネルSony Soundtracks VEVO には、本作から3曲ほどセレクトされた公式音源が公開されています。くわえて、DVD収録されているレコーディング風景+インタビューの動画もいくつかの曲でトリミング公開されています。それらをまじえながら。

 

01. マットの冒険~『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』(2008)

一曲目から音がいい!よく鳴ってる!インディ・ジョーンズのあのメロディがモチーフとして散りばめられて、あらるゆところで顔を出す愉快な一曲。勢いある序曲のような迫力です。

(search for “Indiana Jones and the Kingdom of the Crystal Skull – The Adventures of Mutt (John Williams – 2008)”)

(*以下、くすぐる好奇心すぐに音源聴いてみたい人は、英語曲名で検索すると便利かも、サントラver.も本アルバムver.もヒットしやすくなるかも)

 

02. アフリカよ、涙を拭いて~『アミスタッド』(1997)

いかなるテーマの映画でも、本格的な音楽をつくりあげてしまうジョン・ウィリアムズ。本盤のために編成されたオーケストラ95名と合唱120名はレコーディング風景動画でも見ることできます。この曲を聴きながら、、『ライオン・キング』や南の島を題材にしたディズニー映画なんかをふと思い出し、、そういえばジョン・ウィリアムズってディズニー映画やったことないよね、、たぶん。

John Williams – Dry Your Tears, Afrika from “Amistad” (Pseudo Video)

John Williams – Dry Your Tears, Afrika from “Amistad” (Behind the Scenes)

 

03. BFG~『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』(2016)

『ハリー・ポッター』にも負けないファンタジー音楽に心躍ります。ストリングスが大きく羽ばたいたり、フルートが自由に駆けまわったり、スリリンズな緊迫シーンもはさみながら、映画本編ダイジェストのような約7分作品に。思わず映画見ました、思わずサウンドトラック聴きました。こんな作品あるなんて知らなかった。

 

04. 何人に対しても悪意を抱かず~『リンカーン』(2012)

サウンドトラックでは2分に満たないメインテーマ、かつ、ストリングス・メインだったもの。新アレンジでは約5分構成、メロディにトランペットをフィーチャーしています。沁みます。アメリカを象徴する音=トランペット、みたいなイメージを築いた感のあるジョン・ウィリアムズ。『JFK』『プライベート・ライアン』の主題曲でも、気高い旋律を悠々と奏するトランペットは、アメリカの誇りすら感じます。またメロディだけを抜き取るとちょっと牧歌的だったりするところも、郷愁感を刺激するのかもしれません。

 

ー アルト・サックスとオーケストラのための逃奏曲~『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』(2002)
07. 第1楽章《包囲》
08. 第2楽章《揺れる心》
09. 第3楽章《歓喜の飛翔》

本作のハイライト約16分の大作です。アルト・サックス、ビブラフォン、ベースにそれぞれゲスト・プレーヤーを迎え、JAZZYで華やかなザ・アメリカンです。フィーチャーされた楽器たちはカデンツァのような独奏パートもふんだんに盛り込まれ、かなりかっこいい、とにかく楽しい作品です。

どうしても聴いてほしい、探しました。公式楽譜もあるということかな、同じ構成で演奏されたコンサートから。アメリカ音楽=『ウエスト・サイド物語』と定着した演目もありますね。この作品は、演奏会に腕利きプレーヤーたちを招集し、新定番のアメリカン・プログラムになっていける作品。そんな未来を感じます。映像でみるとソリストたちの活躍も光ります。聴いてしまったら、アメリカ夢見心地。

John Williams – Catch Me If You Can, conducted by Andrzej Kucybała

 

 

ここで唐突に久石譲。新たにサックスパートが書き加えられた2015年版『The End of the World for Vocalists and Orchestra』 II. Grace of the St. Paul も印象的です。

 

II. Grace of the St. Paul
“楽章名はグラウンド・ゼロに近いセント・ポール教会(9.11発生時、多くの負傷者が担ぎ込まれた)に由来する。冒頭で演奏されるチェロ独奏の痛切な哀歌が中近東風の楽想に発展し、人々の苦しみや祈りを表現していく。このセクションが感情の高まりを見せた後、サクソフォン・ソロが一種のカデンツァのように鳴り響き、ニューヨークの都会を彷彿とさせるジャジーなセクションに移行する。そのセクションで繰り返し聴こえてくる不思議な信号音は、テロ現場やセント・ポール教会に駆けつける緊急車両のサイレンのドップラー効果を表現したものである。”(楽曲解説より)

 

 

10. マリオンのテーマ~『レイダース 失われたアーク《聖櫃》』(1981)

この新アレンジ版は、以降のコンサート定番曲になっていきます。ウィーン・フィルとの世紀の共演(2019)でもプログラムされました。その話はまたいつか。

John Williams – Marion’s Theme from “Raiders of the Lost Ark” (Pseudo Video)

John Williams – Marion’s Theme from “Raiders of the Lost Ark” (Behind the Scenes)

 

11. 戦没者への讃歌~『プライベート・ライアン』(1998)

あっ、ここで出てきた『プライベート・ライアン』。『リンカーン』で話したことです。アメリカを象徴するような音=トランペット、崇高で厳粛な佇まい、胸に手をあてる誇りと気高さ。愛国心と郷愁感を包みこむ旋律。ジョン・ウィリアムズの3大アメリカン・トランペット・メロディ(と勝手に呼んでいる)、一番好きなのは『JFK』です。

John Williams – Hymn to the Fallen from “Saving Private Ryan” (Pseudo Video)

John Williams – Hymn to the Fallen from “Saving Private Ryan” (Behind the Scenes)

from SonySoundtracksVEVO YouTube

 

ほかにも、5.『タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密』楽しい冒険音楽とハラハラドキドキ臨場感、13.『ターミナル』クラリネットが自由に跳躍、14.『ミュンヘン』重厚な弦楽が美しい、15.『アンフィニッシュト・ジャーニー』ファンファーレ金管楽器の大活躍。この音楽構成にこの最高音質あり、録音してくれてありがとう!と叫びたくなるアルバムです。

 

 

ジョン・ウィリアムズが語ったこと

■映画音楽の仕事の魅力について

「音楽を書くチャンスを与えられること、かな。もし映画が成功すれば、何万、何百万もの観客がその音楽を聴くことになる。より多くの人が楽しんでくれれば、より大きな喜びになるからね。このことは作曲家にとって今世紀でも新しいことのひとつだ。今世紀初めには千人、2千人だった観客が、今では世界中の人が対象になっているんだ」

■理想的な映画音楽について

「理論でいえば、音楽それ自体がしっかりしたメロディーを持ち、さらに覚えやすい要素を持っているものだろう。言い換えるなら、個性的で覚えやすく、音楽自体が力強いものということになる」と述べており、旋律への配慮の一方で「テクスチュア(構造)やトーンカラー(音色)を考えることはとても重要なこと」とも加える。

(CDライナーノーツより 一部抜粋)

 

 

久石譲がジョン・ウィリアムズ音楽について語ったこと

”「何なに風に書いてください、と頼まれると、すぐお断りしますね。たとえば、ジョン・ウィリアムズ風に勇壮なオーケストラ・・・・・じゃジョン・ウィリアムズに頼めば・・・・・となっちゃうわけですよ。僕がやることじゃない。余談になりますけど、ジョン・ウィリアムズの曲はどれを聞いても同じだ、という風に良く言われますけど、それはまったくナンセンスな話なんですね。つまり、彼ほど音楽的な教養も、程度も高い人になると、あれ風、これ風に書こうと思えば簡単なんですよ。だけど、あれほどあからさまに『スター・ウォーズ』と『スーパーマン』のテーマが似ちゃうのは、あれが彼の突き詰めたスタイルだから変えられないわけですよ。次元さえ下げればどんなものでも書けるんです。だけど、自分が世界で認知されている音というものは、一つしかないんです。大作であればあるほど、自分を出しきれば出しきるほど、似てくるもんなんです」”

 

深いお話です。これ、1987年のインタビューなんです。当時からいち早くジョン・ウィリアムズの魅力とその本質を見抜いていた! そんな決定的証拠になります。その後も、けっこういろいろな機会に語っています。上に抜粋した同旨を別の言葉でかみくだいていたりと、多角的に発言の真意をつかみやすくなる、とても興味深いです。こちらにまとめています。

 

 

本作録音のあと。

29本目のコラボレーションとなった新作映画『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(2017)。これがなぜか、今回の流れに反して、サントラ盤の音がいい。鳴りのいいダイレクトな音しています。

実話をもとにしたもので、サウンドトラックも40分ほど、音楽の出番は控えめです。このために編成された76人オーケストラながら、ハリウッドらしい音の厚みもまた控えめです。

CDライナーノーツには、”同音型や律動の反復による劇的緊迫の創出”、”これみよがしな旋律美は差しこまれない”、”実にストイックな仕事”、などというキーワードが並んでいますが、この言葉のピースたちで十分に言い表している、そんな作品です。

 

The Court’s Decision And End Credits (“The Post” Soundtrack)(約11分)

エンドロール楽曲11分と長いですが、これは本編の主要楽曲たちをつなげているからです。アレンジもエンドロール用に書き直されていて、紹介するのにわかりやすい。

4:10~6:00
「ラシドレ」とか「シドレミ」とか、横並びする4つの音が基本音型になっています。このシンプルな音型が強弱や厚みをともないながら緊張感増していきます(4:30~)。音型の間隔がタイトになり、金管楽器も重厚にプラスされます(5:05~)。つかのまクールダウン、木管楽器に音型を引き継ぎ(5:15~)、ダイナミクスの十分なバネで大きく展開ピークを迎えます(5:30~)。

7:10~9:00
なんとも極上サスペンスな極小音型。最初だけ登場するようにみえますが、主役が管楽器に移ってからも後ろにまわり(7:40~)、高音弦楽器が大きなメロディを奏でるときも低音弦楽器で刻みつづけ(7:47~)、大きく開ける展開になっても通奏パターンは保たれ(8:03~)。最後にまた第1主題を再現します(8:45~)。

 

えーっ!ジョン・ウィリアムズでもこんな音楽書くんだ! それでいて、ちゃんとジョン・ウィリアムズしてる! そんなふたつの感想をもってしまう。作家性の垣間見える珍しい立ち位置の楽曲、好きです。クラシック音楽でいえば、ベートーヴェン:交響曲 第5番《運命》第1楽章が「ダダダダーン」のモチーフで構築されているのと同じ手法ですよね。そのピンポイント版というか、手法のひとつを抜き出したわかりやすさみたいなものがあります。

 

 

近年の映画音楽の傾向。

これは個人の解釈です。旋律美のメインテーマとそのバリエーションという方法論は少し影をひそめ、同音型の反復手法やそこからの変化・発展という方法論に、ますますシフトしてきているように感じます。もちろん旋律タイプも音型タイプも昔からあるものですが、その比重やバランスが変わってきているように感じる。

ミニマル・ミュージック主流とも、ポスト・ミニマルとも言わないけれど、明らかにモチーフ主体の音楽構成が増えてきています。『ファンタスティック・ビースト』の映画音楽もそうですし、日本ではまだ少ないかもしれないけれど、海外TVドラマ音楽(欧米・アジア)などでも強く感じます。

少し前までは、この手法がなんちゃってミニマルみたいで、あまり好きではありませでした。とりあえず、通奏低音のように鳴っているBGMや場繋ぎ音楽みたいで。でも、『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』のジョン・ウィリアムズのように、一線を画して本格的につくりあげている人はいるしいたし、この手法をメインとした映画音楽作曲家たちの点在は、若い世代へも着実に増えてきているように思います。

同音型の反復手法やそこからの変化・発展という方法論。言い換えると、モチーフ、小さいメロディ、限られた一つの素材、短い旋律のパターン、これらを変化させること・展開させていくこと。久石譲の映画音楽ではおなじみのことです。いや、むしろ何十年も前からその手法をリードしてきた人のひとりです。久石譲の”幹をつくる”音楽たちが、次の世代の作曲家たちの”花”へとなろうとしているような気がしてきます。そういう視点で、いろいろな国の、いろいろなサウンドトラック盤にふれてみるとおもしろいです。

 

 

話を、音がいい、に戻して。

久石譲さんです。

2001年に指揮者デビューを果たして以降、オリジナルアルバムもサウンドトラックも久石譲指揮によるものが多くを占めています。サントラ音楽であっても、映像のために音質を犠牲にすることはありません。すべての録音でプロデュース、トラックダウンの仕上げまできっちり監修しています。

ここで、条件の近いもの(オーケストラメインの編成・ホール録音)として、『千と千尋の神隠し』を聴いてみます。サウンドトラック盤も交響組曲盤も、どちらも臨場感あるダイナミックな音像が広がっています。

2001年に指揮者デビューを果たして以降、、そう書きました。ここは結構なポイントになりそうです。なぜなら、指揮者久石譲として研ぎ澄まされていくということは、音楽収録にもおのずと反映されてくるからです。そこには、指揮者の耳、指揮台で耳にする音、ダイレクトに録音される。今、聴いている久石譲音楽たちは、指揮台で久石譲が耳にしていたものに限りなく近い音、指揮台で楽器ごとバランスや立体的な音配置を納得した音、指揮者のもとへ集まってくる音圧を感じた音、それをそのままバーチャル体感することができている。そんな言い方もできるかもしれませんね。

もしそう言えるのなら。『交響組曲 風の谷のナウシカ』(2016)や『交響組曲 天空の城ラピュタ』(2018)は、1980年代から時代を経て、新たに久石譲による指揮はもちろん、新たに指揮台バーチャルな音質的価値を獲得した録音の登場となった。そんな言い方もできるかもしれませんね。

 

久石譲 『千と千尋の神隠し サウンドトラック』

 

 

 

監督と作曲家の運命的な出会い。ジョン・ウィリアムズ自身が指揮した、スピルバーグ映画がなければ作曲しなかった、生まれることのなかったかもしれない名曲の数々。輝けるコラボレーションの軌跡を集大成したアルバム「ジョン・ウィリアムズ・プレイズ・スピルバーグ」です。どんどんいい音にふれていきましょう!

それではまた。

 

reverb.
次のコラボレーションは映画『インディ・ジョーンズ 5』(2022予定)です♪

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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Overtone.第37回 ピーター・ガブリエルを聴く

Posted on 2020/01/20

ふらいすとーんです。

”1990年代後半の久石さんインタビューに「ピーター・ガブリエルよく聴いている」ってあったけど、きっと今も聴いてるよね。Scratch My Back (2010)、New Blood (2011)”

・・・こんな感じでさらっとツイート、2枚のアルバムジャケット写真と一緒に。そうやって流れるように終わろうと思った。140文字のつぶやきではなく、Overtoneに記すことにしたのは、公式音源がすべてそろっていたからです。公式音源のおかげで一緒に聴いてもらえる。テンポよくいければいいなと思います。

 

ピーター・ガブリエル(Peter Gabriel)、イギリス出身、ロックバンド「ジェネシス」の初代ボーカリストとして有名になり、ソロ転向後も活躍している現役アーティストです。9枚のスタジオ・アルバム、3枚のライブ・アルバム、4枚のサウンド・トラックなど、独特で多彩な創作活動をしています。そして、それらすべての楽曲が公式YouTubeチャンネルにて公開されています。

 

 

まずは軽くウォーミングアップ。

 

No Self Control

Lead A Normal Life

from Peter Gabriel 3: Melt (1980)

2曲ともミニマル・エッセンス溢れるマリンバが印象的です。

 

The Rhythm Of The Heat

San Jacinto

from Peter Gabriel 4: Security (1982)

「The Rhythm Of The Heat」重みのある低音シンセサイザーにラストは執拗なアフリカン・パーカッション。「San Jacinto」にんまりミニマル全開な伴奏とエスニックな曲想がやがて大きく広がり、ポップスの自由さを感じます。

 

Red Rain

from So (1986)

硬質なシンセサイザー音色と、アタック感の強いベースやドラミング。あの時代を象徴するような(いまの時代には出せないのかな?!)独特なグルーヴ感。

 

ここまで紹介した曲は、オリジナル・ソロアルバム(スタジオ・アルバム)からです。のちにベストアルバム『Hit』(2003)にも収録された曲ばかりです。公式チャンネルでは、再生リストから聴きたいアルバムを選んでいろいろ聴くことできます。

 

サウンドトラックから。

 

At Night

Slow Marimbas

from Birdy バーディ (1984)

「At Night」霧がかったようなシンセサイザーの世界、大林宣彦監督作品の映画サウンドトラックや、NHK人体シリーズの音楽などを連想させるようです。「Slow Marimbas」ワールド・ミュージックの普及にも力を注いだアーティスト。自身のボーカル曲にもエッセンス盛り込まれていますし、インストゥルメンタル楽曲書き下ろしたサウンドトラックたちには、とりわけ色濃くエスニックな旋律やアフリカのリズムなどが見られます。いちロックアーティストの枠を超えた音楽づくりです。この雰囲気好きだなあ、そんな久石譲ファンもいるかな。

 

 

ピーター・ガブリエル1980年代でした。

同じように1980-1990年代の久石譲作品にも通じるものがあるように感じます。上の楽曲たちを聴きながら、久石さんのいろいろな曲が浮かんだ人もいるかもしれません。こんな音色の使い方あったな、エッセンスや味つけがクロスオーバーしている、そんな聴き方もできて楽しいです。ルーツというか、、その時代のなか作家たちの共鳴性と言いたいところです。

 

 

ちょっと長い引用です。

”僕が大学生の時にテリー・ライリーの「A Rainbow in Curved Air」を聴いた時に、もうすごいショック受けて3日間ぐらい寝込んじゃって。それまでは不協和音とか現代曲を書いてて、そこでミニマルの洗礼を受けて。ところが人間そんなに変われないんですよ。最初のミニマルっぽい曲を書くのに最低3年かかったかな。それでも全然曲になってないんですよ。20代はほとんど挫折、いろんなコンサートで曲を発表するんですが全然かたちにならない。当時のコンサートは作曲家が4~5人集まって曲を持ちあって個展を開くんですよ。客席ははっきりと隙間だらけなんですよ。塊が5つぐらいあって、ここはあいつの親戚、ここはうちの親戚、そういう感じなわけで(笑)。向上心もあって燃えてたんだけど、その仲間が集まって話してると、相手を論破することに専念しだすわけですよ。いかに自分の理論武装が正しいか。でも、そのことと出てる音が違うだろうおまえたち!っていうのがだんだん強くなってきた。その世界は何をしたいのかって思うようになってきて。その時にふっとポップスのフィールドを見たんですよ。そしたらイギリスのロキシー・ミュージックとかあって。フィル・マンザネラとかブライアン・イーノとかね。ロックなのにミニマルのパターンの要素をうまく取り入れている。みんな楽しそうにやってるわけよ、あっちいいなあと思ってね。その時にタンジェリン・ドリームだとかマイク・オールドフィールドの「チューブラー・ベルズ」だとか、これはのちに映画「エクソシスト」のメインテーマになる、全部そういうパターン的なもの。これらがドーンと出たときに、もういいやと、芸術家であることをやめた。ポップスフィールドにいくって決めて、まずはソロアルバム作ろうと。そうすると現代音楽にいた時の自分ががんじがらめになって自分の思い通りのものが一つも書けなかったのが、ポップス・フィールドに行った瞬間書いた曲のほうがよっぽど前衛的だったんですよ。なんかね、その瞬間吹っ切れて。それは「ナウシカ」よりもずっと前だったんですけれど、そこから20年・30年ずっとポップス・フィールドに本籍を置きながら音楽をやってきたわけです。”

Blog. NHK FM 「今日は一日”久石譲”三昧」 番組内容 -トーク編- より抜粋)

*このあとトークは、”今は本籍をクラシックに戻して”という話に流れていきます

 

久石さんが影響を受けてきた音楽たちをテーマに語られたもの。

 

久石譲ディスコグラフィ

 

 

時は流れて2010年。

カバー集かつ純粋なオーケストラ編成でつくったアルバム「Scratch My Back」。全曲原曲知らないし(僕は)、おそらくポピュラーな曲を集めたのではないだろう、意欲的で斬新なコンセプト。

かなり本格的な一枚です。ポップスをオーケストラにアレンジしてみました的な安直なものではない、前衛的で現代的な、聴けば聴くほど味がしみ出てくる、そんなアルバムです。原曲を知らないぶん先入観なく楽しめます。オリジナル版と聴き比べてみるともっと広がるかもしれません。

 

Scratch My Back (2010)

01. Heroes (Original Artist: David Bowie)
02. The Boy In The Bubble (Original Artist: Paul Simon)
03. Mirrorball (Original Artist: Elbow)
04. Flume (Original Artist: Bon Iver)
05. Listening Wind (Original Artit: Talking Heads)
06. The Power Of The Heart (Original Artist: Lou Reed)
07. My Body Is A Cage (Original Artist: Arcade Fire)
08. The Book Of Love (Original Artist: The Magnetic Fields)
09. I Think It’s Gonna Rain Today (Original Artist: Randy Newman)
10. Apres Moi (Original Artist: Regina Spektor)
11. Philadelphia (Original Artist: Neil Young)
12. Street Spirit (Fade Out) (Original Artist: Radiohead)

 

 

1. Heroes

全曲ギターやドラムは排除されていますが、リズム感はしっかりオーケストラ楽器が担っています。通奏でベースラインがあるわけでもなく(2:40~)、このあたりもポップスオーケストラになっていない妙技です。また弦の刻みも単調にならないよう微細に変化しています。1曲目に配置されたこの曲で、アルバムの本気度は先制パンチOKです。

 

3.Mirrorball

細い線と鋭利感を演出してる冒頭からの高音弦楽器の伴奏。静パートは速いパッセージの伴奏音型へと変化していき緩急をともないながらダイナミックに展開していきます。

 

5.Listening Wind

第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、すべて旋律が異なる。ハモリでもなく、つかのまユニゾンするくらいで、一曲とおして独自の性格をもった声部がそれぞれに割り当てられています。いやあ、こんなことしなくても、そこまでしなくても、ポップスとしてはちゃんと成立するのに…ついついいらぬ労いの言葉をかけたくなる。ここまでするからこそ深みと味わいは単純でなくなり、足腰のつよいくり返し聴くに耐えうる曲に。ホンモノ志向すごい。

 

 

ほかにも、「7.My Body Is A Cage」映画のワンシーンから抜け出たような緊張感をまとった曲、「8.The Book of Love」「11.Philadelphia」エンドロールで映画の余韻を優しく包みこんでくれそうなメロディのきれいな曲、「10.Apres Moi」オペラのようなドラマティックさに魅了される曲。

 

公式アルバム再生リスト
https://www.youtube.com/watch?v=LsvuipGq2ns&list=OLAK5uy_kpqglluQOJ54ENN27uiEkWD3KfoDpgLQ8&index=1

 

 

翌2011年。

前作からの流れを受け継いだオーケストラ編成による、今度は自身の楽曲たち、新たな解釈に挑んだセルフカバー・アルバムです。こちらも前衛的・現代的なオーケストレーションはお見事、コンセプト・アルバムとしての完成度は高い。2CD Deluxe Editionには、オーケストラのみのバックトラックがDisc2にパッケージされています(公式YouTubeにはない…オケサウンド好きにはたまらないDisc2)。本作品はその後ライヴ盤もCD/DVDなどで発売されています。

 

New Blood (2011)

01. Rhythm of the Heat
02. Downside Up (featuring Melanie Gabriel)
03. San Jacinto
04. Intruder
05. Wallflower
06. In Your Eyes
07. Mercy Street
08. Red Rain
09. Darkness
10. Don’t Give Up (featuring Ane Brun)
11. Digging in the Dirt
12. The Nest That Sailed the Sky
13. A Quiet Moment
14. Solsbury Hill

 

 

1.The Rhythm of the Heat

1980年代楽曲でも紹介した曲です。オリジナル版「重みのある低音シンセサイザーにラストは執拗なアフリカン・パーカッション」と書きました。オーケストラ版の後半はすごいです(3:50~)。パーカッションの連打はなくなり、新しいパートが書き加えられています。これがなんとも前衛的で最先端いってます。もしこの箇所を気に入ってもらえたなら、久石譲オリジナル・シンフォニーや「久石譲 presents MUSIC FUTURE」コンサートで取り上げられる作品たちもきっと楽しめると思います。

前作カバー集にひき続き、本作の編曲を手がけるジョン・メカトーフは、”スティーヴ・ライヒ、アルヴォ・ペルト、ストラヴィンスキーなどを指向している”ようで(from ライナーノーツ)、なるほど現代音楽にも通じる響きだし、ミニマル・ミュージックにも通じる特徴があるわけですね。とにかく圧巻のモダン・リズミックです。

 

Peter Gabriel – New Blood – The Rhythm of the Heat(約4分)

インタビューとレコーディング風景のメイキング動画です。まるでクラシックの現代作品を録音しているような緊張感です。本作のために編成された約50人規模のオーケストラです。ピッコロの雄叫びなんて、もう久石譲作品『The End of the World』をひっぱり出して聴きたくなってきます(3:05~)。

 

3.San Jacinto

1980年代楽曲でも紹介した曲です。オリジナル版「にんまりミニマル全開な伴奏とエスニックな曲想がやがて大きく広がり」と書きました。シンセサイザーによるミニマル音型たちがオーケストラではどうなるのか? 久石譲ファンならきっとイメージできますよね。イントロからピアノ、マリンバ、ピッツィカート、そして木管楽器たちをカラフルに使い分けながら、豊富なミニマル・フレーズたちで彩られています。ただの反復ではない、次々に新しいミニマル音型たちを生み出しながら、常に変化し進んでいく曲です。

 

6.In Your Eyes

オリジナル版はさわやかなポップスですが、オーケストラ版とのコントラストがわかりやすい。原曲Bメロで登場するギターの伴奏パターン(1:06~)と、その流れで変化するサビのギターの伴奏パターン(1:35~)。これが、オーケストラ版では主軸となりイントロから堂々と鳴り響いています。乾いたギターのリフで爽やか脇役くんが、弦楽器の大きく揺れるような力強い表現で主役へと躍りでた。”君のまなざしに”という曲タイトル、キュートなポップス曲から、心の息吹や鼓動を感じる広がりのある曲へと昇華しているようです。

 

8.Red Rain

1980年代楽曲でも紹介した曲です。オリジナル版「硬質なシンセサイザー音色と、アタック感の強いベースやドラミング。あの時代を象徴するような(いまの時代には出せないのかな)独特なグルーヴ感。」と書きました。

力強い躍動感と推進力をもった曲です。この曲は、リズム的オーケストレーションのお手本のようです。ドラムはもちろんリズムパーカッションを使っていません。低音に必要な太鼓と少しのシェイカーは登場しますが、スネアがタッタタ・タッタタ軽快にリズムを先導することもありません。

本アルバムのなかでもリード曲に相当するような、キャッチーでポップな仕上がりにはなっていますが、リズムパーカッションなしという封じ手を、見事に超えてみせたリズム的オーケストレーションのお手本。各楽器に散りばめられたリズム感あるフレーズたちがビートを感じさせ、緩急うねるようなグルーヴ感を絶えず生みだします。あの手この手で、これでもかこれでもかと、次々にリズムモチーフを紡ぎだし、ヒートアップする熱量でラストまで突き進みます。

 

Peter Gabriel – Red Rain Recording at Air(約2分)

レコーディング風景のメイキング動画では、オーケストラのバックトラック収録にスポットを当てていて、ボーカルなしでもかっこいい曲だと証明してしまった。

 

 

ほかにも、「2.Downside Up」チャーミングで愛らしい曲想でリズム・トラップ輝いている曲、「4.Intruder」エキゾチックで野性的な曲想はストラヴィンスキーゆずりな曲、「11.Digging In the Dirt」スリリングうねる伴奏音型で楽しませてくれる曲、「14.Solsbury Hill」ポップスのオーケストラアレンジの典型わかりやすく楽しい曲。

 

 

Peter Gabriel New Blood Interview(約9分)

少し長めのメイキング動画では、ほかの曲のレコーディング風景やインタビューも登場します。

 

公式アルバム再生リスト
https://www.youtube.com/watch?v=lj35-VCN1jo&list=OLAK5uy_mtci60K44D1iJprGVB4QT68E6P3Rcb9dg

 

 

久石さんは過去UKロックに慣れ親しんできたことを書籍やインタビューで語っています。飛び出すアーティストもジャンルも幅広くさまざまです。

いきなりクラシックを聴くよりも、こういった方向からオーケストラを楽しむのもまたひとつ。いきなりストラヴィンスキーなどの近代クラシックを聴くよりも、こういった方向から現代的な響きやアプローチを体感してみるのもまたひとつ。とっつきやすくて助かった、第一印象でつまずかずにすんだ。軽いジャブからうけてみる。そんなこともあります。

好きなアーティストから飛び出すキーワードに触れてみることは、聴くこちら側にも幅をもたせてくれます。バックボーンを旅する楽しみがあります。今回紹介したような楽曲たちも一度聴いてみるか聴かないかでは、ゼロかイチの違い。久石譲音楽の聴こえ方や楽しみ方にも、新しい感動や広がりを運んでくれるかもしれませんよ。

なぜ久石譲音楽にはリズムを感じるか? 今回のピーター・ガブリエル音楽を紐解くことは、そのヒントにもなりそうです。オーケストラの音色を使って、こんなにもリズムを感じさせる旋律・モチーフ、奏法のアプローチ、失速しない推進力をもった音楽構成。いつもなら《緻密なオーケストレーション、凝ったつくり込み》、こんな言葉たちで表現していることも、具体的に解き明かせそうなカギがあります。今回は、いつか記したいと思っていることへの前進する一歩です。

 

 

おまけ。

ピーター・ガブリエルとディープ・フォレスト。後者は1990年代久石譲LIVEでも共演しています。そんな久石譲つながりのアーティストの化学反応は、踊れー!(Long Versionです)

 

While The Earth Sleeps – Peter Gabriel & Deep Forest

 

 

”1990年代後半の久石さんインタビューに「ピーター・ガブリエルよく聴いている」ってあったけど、きっと今も聴いてるよね。Scratch My Back (2010)、New Blood (2011)”

それではまた。

 

reverb.
YさんKさんに感謝を込めて♪

 

 

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Overtone.第36回 オーロラ管弦楽団を聴く Listen to Aurora Orchestra

Posted on 2020/11/12

ふらいすとーんです。

好きなアーティストを日々追いかけていると、いろいろなものがくっついてくることがあります。そして、偶然か必然か、つながりと発見にびっくりすることがあります。

マックス・リヒターという作曲家を追っかけています。オリジナルアルバム、映画サウンドトラック、さまざまな企画やコラボレーション。そうしていくと、あるアーティストのために書き下ろした作品なんかは、マックス・リヒター名義ではないアルバムに収録されたりします。1曲のためにアルバム1枚買うのか!?、そんなささやかならぬ葛藤もありますが、買います。なぜ、マックス・リヒターは新曲を提供したのか。コラボレーションのコンセプトやアーティスト性は、全体から聴いていかないとつかめないこともあると思っています。

 

  • マックス・リヒター
  • モーツァルト交響曲の現代的アプローチ
  • ニコ・ミューリー
  • 久石譲FOCコンサート
  • 久石譲MFコンサート

 

こういったピースが、グルグルつながっていく流れを、なるべくサクサクご紹介していきます。

 

 

”2020年、マックス・リヒターが、とあるオーケストラのために、新曲を書き下ろした。”

これがすべてのきっかけです。

以下、引用します。

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世界で最もクリエイティヴなオーケストラのDGデビュー盤!

近年、急激に存在感を増しているオーロラ管弦楽団は、並外れた音楽家により構成された卓越した室内オーケストラであり、非常に高いクオリティで感動的な演奏をするばかりでなく、先駆的で斬新な様々な手法で豊かな音楽体験を提供している世界で最もクリエイティヴなオーケストラ。

『ミュージック・オブ・スフィアーズ(天球の音楽)』は、惑星の動きが、宇宙の調和(ハーモニー)を生み出すという古代ギリシャの数学的な概念に基づいています。当アルバムのために特別に委嘱されたマックス・リヒターの新作『ジャーニー(CP1919)』は、最初に発見されたパルサー「CP1919」に触発されて作曲されました(注:パルサーはパルス状の可視光線、電波、X線などを発生する天体で、超新星爆発後に残った中性子星と考えられています)。 この作品は、古代ギリシャの天文学者が惑星の軌道を説明するために使用した数学的な比率によって支配されたリズムを使用して、オーロラ管弦楽団が暗譜で演奏することも取り入れて作曲されています。

出典:HMV|コロン&オーロラ管/モーツァルト:交響曲第41番『ジュピター』、他
https://www.hmv.co.jp/news/article/2007271007/

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マックス・リヒター作曲「ジャーニー(CP1919)」の説明文は、なんとも難解な印象を受けますが、約9分半の作品、とっても神秘的で浮遊的、心とからだの瞑想っといった感じです。落ちつきます。弦楽合奏とシンセサイザー低音、複数のパターン・モチーフが交錯します。マックス・リヒター公式にティーザー動画が公開されています。

 

Max Richter – Journey (CP 1919) Teaser (約1分)

from Max Richter Music YouTube

 

ここまでなら、マックス・リヒターのコレクションとして終わりますが、このアルバムはそれだけではありませんでした。

 

 

メインとして収録された「モーツァルト:交響曲 第41番 ハ長調 K.551《ジュピター》」を聴いてびっくりしました。久石譲FOC(フューチャー・オーケストラ・クラシックス)が演奏してるのか!? と思うほど、キレッキレのモーツァルト。古典クラシック音楽の最高峰ともいわれる交響曲、こんなに現代的な演奏が聴けるなんて。堂々として風格のある往年の名盤たちとは一線を画する、風の吹き抜けるような響き。久石譲FOCのベートーヴェン交響曲やブラームス交響曲と同じような印象をうけます。

その後見つけた2つの公式動画で、さらに納得しました。

 

Mozart’s Jupiter Symphony from memory – Aurora Orchestra (約2分半)

from Aurora Orchestra YouTueb

 

立奏スタイル、室内オーケストラ編成(規模の小さいオーケストラ)。さらに、彼らは交響曲を暗譜、アルバムはセッション録音です。

 

 

Aurora Orchestra – ‘Music of the Spheres’ Trailer (約5分半)

from ドイツ・グラモフォン公式YouTube

 

トレーラー動画のほうは、アルバム収録曲すべて紹介され、そこにはマックス・リヒターやニコ・ミューリーまでも登場します。ニコ・ミューリーという作曲家は、このオーロラ管弦楽団と深いつながりがあり、本作では一曲編曲を担当してます。

 

 

『ミュージック・オブ・スフィアーズ(天球の音楽)』/オーロラ管弦楽団 (2020)

【収録情報】
1. モーツァルト:交響曲第41番ハ長調 K.551『ジュピター』
2. マックス・リヒター: ジャーニー(CP1919)
3. ダウランド/ニコ・ミューリー編:時は立ち止まり
4. アデス:ヴァイオリン協奏曲 Op.24『同心の道』
5. デヴィッド・ボウイ/ジョン・バーバー編:火星の生活

 ペッカ・クーシスト(ヴァイオリン:4)
 イェスティン・デイヴィス(カウンターテナー:3)
 サム・スワロー(ピアノ、ヴォーカル:5)
 オーロラ管弦楽団
 ニコラス・コロン(指揮)

 

Music of the Spheres / Aurora Orchestra (2020)

1 Mozart: Symphony No. 41 in C Major, K. 551 “Jupiter” – 1. Allegro vivace 11:29
2 Mozart: Symphony No. 41 in C Major, K. 551 “Jupiter” – 2. Andante cantabile 10:17
3 Mozart: Symphony No. 41 in C Major, K. 551 “Jupiter” – 3. Menuetto. Allegretto. Trio 4:10
4 Mozart: Symphony No. 41 in C Major, K. 551 “Jupiter” – 4. Molto allegro 8:21
5 Richter: Journey (CP1919) 9:31
6 Dowland: Third Booke of Songs, 1603 – 2. Time Stands Still (Arr. Muhly) 3:42
7 Adès: Violin Concerto “Concentric Paths” – 1. Rings 3:53
8 Adès: Violin Concerto “Concentric Paths” – 2. Paths 9:57
9 Adès: Violin Concerto “Concentric Paths” – 3. Rounds 4:39
10 Bowie: Life on Mars? (Arr. Barber) 3:41

Deutsche Grammophon (DG)

 

 

久石譲は、2016年から新しい取り組みとして、ベートーヴェン交響曲を演奏・録音し、2019年度第57回レコード・アカデミー賞特別部門特別賞を受賞するなど、指揮者としてもさらなる注目を集めています。そして2019年からはブラームス交響曲を演奏・録音するプロジェクトがスタートしています。ブラームスからは、立奏スタイルを採用しています。それぞれ詳しいことは、紐解いてみてください。

 

 

 

 

オーロラ管弦楽団の過去作を見てみると、ニコ・ミューリー名義のアルバムで録音を残しています。マックス・リヒター同様、オーロラ管弦楽団が作曲家に委嘱したその作品は「Seeing Is Believing」。

実はこの曲、久石譲の新しいコンサートシリーズ「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.1」コンサート(2014)で披露された、エレクトリック・ヴァイオリンをフィーチャーした約25分の作品です。

さらには、翌年「久石譲 presents MUSIC FUTURE Vol.2」コンサートで、久石譲は触発されたようにエレクトリック・ヴァイオリンをフィーチャーした作品を新たに書き下ろし初演しました。また同プログラムでは「ジョン・アダムズ:室内交響曲」も披露していますが、オーロラ管弦楽団も同作を録音・演奏しています。

 

すごいつながりかたですね!

ちょっと整理しますね。

 

Seeing Is Believing / Nico Muhly (2011)

 

「ニコ・ミューリー:Seeing Is Believing」や「ジョン・アダムズ:室内交響曲」をプログラムした2011年コンサート公式動画。

Nico Muhly: Seeing is Believing (約1時間)

from Aurora Orchestra YouTube

 

「久石譲:エレクトリック・ヴァイオリンと室内オーケストラのための 室内交響曲」、「ジョン・アダムズ:室内交響曲」収録

 

「久石譲:エレクトリック・ヴァイオリンと室内オーケストラのための 室内交響曲」抜粋、2015年コンサート公式動画。

Joe Hisaishi : Chamber Symphony (selections) (約8分)

from Joe Hisaishi Official YouTube

 

 

すごいつながりかたですね!

久石譲がオーロラ管弦楽団の音楽活動をなぞっている、もちろんそんなことではありません。大切なのは、《現代(いま)の音楽》を発信する、演奏する、というスタンスが共鳴していることです。だからこそ、偶然か必然か、つながってくるものがある。

もうひとつ大きなポイントは、久石譲もオーロラ管弦楽団も、古典クラシック音楽も現代音楽も、どちらも並べて演奏・録音しているというところです。言い換えれば、現代的アプローチで古典作品も現代作品も演奏している。この共通点からくる、音楽的表現や響きは大きいと思います。

だから、オーロラ管弦楽団のモーツァルト交響曲を聴いて、久石譲FOCが演奏しているのかと思うくらいな印象をうけ、それは同時に、もし久石譲FOCがモーツァルト交響曲を演奏したらこうなるんだろうなあという、想像する楽しみ方すらあります。

 

  • マックス・リヒター
  • モーツァルト交響曲の現代的アプローチ
  • ニコ・ミューリー
  • 久石譲FOCコンサート
  • 久石譲MFコンサート

 

グルグルつながることが、サクサク伝わったならうれしいです。

 

 

オーロラ管弦楽団は、コロナ禍の今、2020年9月に再開されたイギリスBBCプロムスでの無観客演奏で「ベートーヴェン 交響曲 第7番」を披露。少数精鋭な室内オーケストラ編成と立奏スタイル、さらに距離を大きくとったステージながら、躍動した大迫力な演奏に驚きます。

 

Aurora Orchestra performs Beethoven 7 at the BBC Proms (約1分半)

from Aurora Orchestra YouTueb

 

 

また、ロンドンのキングス・クロス駅での屋外演奏も。日本でも、少しずつオーケストラの演奏活動がいろんな場所で増えていったらいいですね。

 

First symphony since lockdown at Kings Cross (約2分)

from Aurora Orchestra YouTueb

 

 

なんでイギリス音楽って、聴いてすぐイギリスってわかっちゃうんだろう。気品漂い、はたまた、牧歌的な香り。1枚とおして心地よい。けっこうお気に入りの、とっておきのアルバムです。オーロラ管弦楽団を紐解いているなかで、みつけた宝物です。

 

Introit: The Music of Gerald Finzi / Aurora Orchestra (2016)

 

 

久石さんの音楽も、どこかアイルランド的だったりしますよね。久石メロディを感じさせるというよりは、なんだかDNA的におちつくような安心感。

たとえば1曲目♪

Finzi: Lo, the full, final sacrifice, Op.26 – Amen (Instrumental) (約2分半)

 

フィンジというイギリス作曲家の楽曲を集めているアルバムです。おそらく合唱曲などを器楽版にしたものもあるのかな、きれいで親しみやすい旋律にうっとりします。もし気に入ったら1枚とおして聴いてみてください。おすすめです。

 

・・・

いろいろとフィンジを聴きあさっていったら。この曲、なんと14分近くある合唱曲のエンディングにだけ聴けるひと旋律を器楽版にアレンジしたものだったんです。オーロラ管弦楽団の選曲とセンスが光ります。原曲は下、13:10-。

 

Lo, the Full, Final Sacrifice, Op. 26 (約14分)

 

ほかにも。

オーロラ管弦楽団のインストゥルメンタル版。

Finzi: Clear and gentle stream, Op.17, No.4 (Instrumental) (約4分半)

 

原曲の合唱版。

7 Partsongs, Op. 17: 7 Unaccompanied Partsongs, Op. 17: No. 4. Clear and gentle stream (約4分)

 

とまらなくなるので、フィンジについては、またいつか。原曲2曲と少し聴き比べてもらっただけでも、オーロラ管弦楽団のこのフィンジアルバム「Introit: The Music of Gerald Finzi / Aurora Orchestra (2016)」のおすすめ度が伝わるなら、うれしいです。

 

 

最後に。

2020年12月23日開催予定「久石譲コンサート 2020 in ザ・シンフォニーホール」では、モーツァルト:交響曲第41番ハ長調K.551「ジュピター」がプログラムされています。日本センチュリー交響楽団との共演です。久石譲FOCの編成とは異なりますが、指揮者久石譲のアプローチは、オーロラ管弦楽団に近いものではないかと期待できます。

ぜひ楽しく予習したい人は、『ミュージック・オブ・スフィアーズ(天球の音楽)』/オーロラ管弦楽団 (2020)を手にとってみてください。

ぜひ楽しく予習したい人は、オーロラ管弦楽団のステージ動画もどうぞ。約1時間におよぶこの動画では、楽しいレクチャーコーナーが演奏前にあって(11:00-)、第4楽章のモーツァルトの天才的な交錯するモチーフたち、その聴きどころをわかりやすく分解して、やさしく紹介してくれます(13:00-23:00)。こんなふうになってるんだあ、楽しいです。2016年のパフォーマンスですが、2020年10月つい先日に公式公開されたホヤホヤです。

 

Mozart’s Jupiter from memory at the BBC Proms – Aurora Orchestra – Complete performance (約1時間)

from Aurora Orchestra YouTueb

 

 

 

 

それではまた。

 

reverb.
今回紹介したのは、オーロラ管弦楽団のアルバム2枚です♪

 

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

このコーナーでは、もっと気軽にコメントやメッセージをお待ちしています。響きはじめの部屋 コンタクトフォーム または 下の”コメントする” からどうぞ♪

 

Overtone.第35回 久石譲を短歌で詠む 100

Posted on 2020/09/27

ふらいすとーんです。

久石譲を短歌で詠む、気ままにツイートしていたものが百首たまりました。ちょうど年号が平成から令和に変わった、2019年5月から始めたものです。なぜ短歌? 久石譲短歌のルール? 短歌のおもしろさ、そんなことも記します。

まずは気楽に、つたない短歌を眺めてもらって、曲が思い浮かんだり、共感できたり、そんなものがひとつでもあったならうれしいです。

 

 

久石譲を短歌で詠む

行ったこと見たこともない宇宙(そら)や深海(うみ)
誘う音楽僕らは自由だ

踊るよう笑顔で楽しく指揮をする
のせられるオケ肩弾む客

あなたの手指揮棒にぎるペン走らす
そしてピアノに触れる手好きだ

タクト振る風をあやつるように見え
風を味方につけた音たち

コンサート一期一会の音出逢い
一期一会のファン出逢い

コンポーザー、プロデューサーに、マエストロ
真の肩書き久石譲

ドからド狭い少ない、でも僕ら
十二の音で羽を持つのだ

LinksとOrbis好きと言うファンは
広さと深さ測るものさし

コンサート曲知ってる僕らこそ
拍手最初に力強くね

おでかけの準備するメモ先頭に
プレイリスト作成とある

 

十一

ピアノ弾く人の通るステップに
Summerを弾けるようになりたい

ここ行きたい!ではない順番
この曲が映るところ!と選ぶ場所

これ勝る宣伝効果ないほどに
音楽:久石譲の威力よ

令和という新たな時代になりました
生まれくる曲綴るDiary

春告げる満開憧憬SakuraTour
早咲き遅咲き待ちわびし土地

新緑に”五月の村”を聴きながら
ビル風からも土草のにおい

世界ツアー日本公演こっちにも
どこでもドアがあっても足りぬ

アジアの夢世界の夢のそのさきに
日本の夢を五輪で聴きたい

マリンバのごとく会話が弾むとき
豊かな倍音アンサンブルだ

いざ試験自転車駆けるゴング鳴る
“KidsReturn”聴き会場乗りこむ

 

二十一

朝日課願かけ占いおまじない
いいことあるかな曲の神さま

急いでる朝の支度にコマーシャル
十五秒分奪取キメこむ

温泉の効能いっしょに染み入るね
湯あがり涼み薫る”Oriental Wind”(いえもん)

音楽を言葉にかえる難しさ
言葉にならない想い音にのせ

イヤホンで密封して聴く快感と
スピーカー越しふるえゆらぐ音

もう少しがんばってみる
音楽に背中押されて心ほぐれる

演奏会前のめりかぶるブラボー!は
気持ちわかるけどオフサイドかなあ

演奏会観客総立ちスタオベも
はじめはひとりふたりの動から

ファン歴を天秤にかけ間合いとる
いま好きです。そっちが大切

作曲も演奏会も切れ目なく
ファンつづけれることのうれしさ

 

三十一

時間軸・空間軸と君は言う
僕にとっては宇宙のようだ

衣食住生きていくのに不可欠なことに
僕はそれを加える

負けるなよ希望はあると君は言う
音楽にのせ国籍すら越え

紋どころ目に入らぬかとかざされて
音楽:久石譲とよみふす

伊右衛門はんえらいたくさんCM版
いつか盤にもしておくれやす

運動会かけっこ行進表彰台
盛り上がりそう二ノ国サントラ

夢に希望癒しやすらぎ鼓舞勇気
一日一錠、一日一譲

紫陽花と雨粒とけあう”la pioggia”(しぐれのき)
梅雨なきイタリア和心はこぶ

アジサイに雨やどりするかたつむり
出番まちたるホルン奏者

雨音とアンサンブルする部屋のなか
ただよう残響うるおう空気

 

四十一

三要素メロディリズムにハーモニー
どれをとってもあなたとわかる

あの曲がなければ出会わぬ人たちと
今こうやってつながっています

『深海』に『Deep Ocean』果てしない
『海獣の子供』海がひろがる

降りそそぐ雨照りつける陽のごとく
からだいっぱい浴びる音楽

コンビニのスイーツ数回ガマンして
ほしかった曲美味しくいただく

陽あたりよい窓辺に置いたサボテンに
ナウシカ聴かせ喜ぶようみえ

「今キテる最近ハマってるんだよね」
わかるニンマリどうぞ深みへ

生きものに命吹きこみ
背景に重力あたえ映像生きる

メロディと神秘和音に包まれて
心のトゲがやわらかくなる

陽あたりよい窓辺に置いたサボテンに
ナウシカ聴かせ喜ぶようみえ

 

五十一

休日の洗濯日和の昼下がり
“星の湖(うみ)へ”でうとうと気分

思い立つ”この世界の片隅に”
今年の盆は会いに行こうと

あの彼方立ちのぼる白ラピュタ雲
さがす夏の日空への憧れ

私しか知らない秘密の小屋ありて
“神秘なる絵”と向きあう時間

わたしにも脈々流れる血と誇り
気づかせたのは”アシタカせっ記”

くもりなき眼(まなこ)でまっすぐ駈けるとき
“旅立ち-西へ-“勇壮ふるえ

春とけてうるおう景色に”The Rain”聴き
“Summer”の調べ夏もそこまで

落ちてきてほしい呼吸と間でもって
ピアノの音がふと降りてくる

気まぐれにシャッフル選ぶは”帰る家”
湯婆婆みなで大当たり!とな

淡い青”Silent Love”その音は
とても静かに近づいてくる

 

六十一

立奏は活き活きと跳ね群れ泳ぐ
大きい小さい魚と楽器

花ひらく瞬間みつめる子どもの目
おはよう”Summer”ひまわり笑う

速弾きに超絶技巧のメカニック
想い伝えるテクニックと差異

コンサートいつかは聴きたい名曲に
尺玉花火”この空の花”

人間(ひと)と樹(き)の”アシタカとサン”かかわりと
この限りある一刻(ひととき)を想う

たくさんの音からひとつを聴くことと
ひとつの音からたくさんを聴く

夏休み冒険のとき少年の
“タスマニア物語”にのせて

風物詩あれもこれもと胸弾む
“Summer”といっしょに夏をさがして

いつの日かジブリツィクルス
4日間交響組曲全作披露

“あの夏へ”この夏のことふり返り
思い出かさねる夏の終わりに

 

七十一

空ちかく流れとどまるラピュタ雲
黄昏赤く燃ゆるしずかに

封開けてケースひろげるCDと
学期始めに開く教科書

大切な思い出ずっと忘れない
あの曲聴けばあのときの自分

ふるさとに納税する習慣(こと)根づくよう
好きなオケにも寄付する文化

聴いてきた年月(としつき)盤に遺るなら
立派な年輪たしかに刻まる

時代ごと地層が変化するように
聴こえ感じる風合い変わる

夢のなか未知の新曲聴いたとき
砂漠のオアシスごとき渇望

ゆっくりと背中あずけて音楽に
心のずれをチューニングする

自分でも気づかずにもつ悲しみを
あふれださせる音楽がある

いっぱいの空気を吸ってまっさらの
あたらしい朝”始まりの朝”

 

八十一

衣替え秋の気配に誘われて
聴く音楽も装いあらた

風うけて涼しくいこうよ空みあげ
MELODY Blvd.(ブルーバード)サウンド

星空にスーパームーンの映るとき
憑かれたようにETUDE聴く夜

上弦と下弦の月のあじわいと
高弦低弦チェロの響きと

進化するスマホカメラの解像度
ジブリ交響作品もまた

“おくりびと”ピアノとチェロに誘われて
草原をなでる風のたちの声

身体ごと昔の記憶で温める
“Nostalgia”と明日のぬくもり

コロコロロ靴に当たったどんぐりに
“小さなオバケ”も聞こえてきたよ

“星の歌”宇宙のまばたきほどの時間
永遠(とわ)に廻れよ うたいたい旋律(うた)

音楽が人の数だけ街歩く
喜怒哀楽をポケットしのばせ

 

九十一

キラキラがこぼれてしまわないように
“White Night”イルミネーション

歩き指揮・運転中のながら指揮
たいへん危険となっております

賑やかに宴愉しみ湯につかる
“神さま達”と迎える正月

一瞬の風が心に舞ったとき
“空中散歩”ハウルのワルツ

「寒いね」と私が言えば「寒いね」と
温めかえす冬の音楽

コンサートむかう靴音 弾む呼吸
胸の鼓動のポリリズム鳴る

首もとをやさしく包みこむように
あったかマフラー冬の五線紙

首もとの顔をうずめる心地よさ
あったかマフラー冬の五線紙

並木道やさしい空になでる風
そして聴こえる秋の旋律

結局ね久石さんの音楽が
好きな自分が好きってなるよね

 

 

なぜ短歌をはじめたのか?

言葉遊びを楽しみたかったからです。限られた文字数のなかで、久石譲音楽の魅力をどう表現できるのか、それが出発点です。僕は、どうしても書きだすと文章が長くなってしまうタイプです。時間を置いて添削もするのですが、読んだ人には「ここいらないよね」と思う文章も、書いた本人はわからない、名残惜しい。だから、言葉遊びを使ったトレーニングをしようと。

久石さんのインタビューに「音楽的な主張が強くなって、複雑な方向にいきそうなとき、シンプルなワルツの力をかりる」といった発言があります。それと並べるなんておこがましいですが、気分は同じと思わせてください。ワルツの三拍子という制限と枠、短歌の三十一文字という制限と枠。制限は、ときに手法の一部になることがあります。

言葉さがしをしたかった。自分の言葉ってキャパ狭いです。いつも使う言葉、同じ表現に偏ってしまいがち。表現力を磨きたいとまで高い志はないにしても、使ったことのない言葉をさがす、自分の言葉の引き出しをふやす。それには短歌がうってつけだと思いました。文字数が限られているから、そこにおさまる言葉を必死に見つけようとします。あっ、これだとはみ出す、これだと足りない、これならおさまる。そんな小さな小さな積み重ねがキャパを広げてくれたなら。久石譲コンサートレビューや久石譲CDレビューも、もっと伝わるような表現豊かなものになってくれたなら。修行はつづくよ。

 

久石譲短歌のルール?

正式な短歌にならって、季語のようなルールをつくろう。必ず、〈音楽にまつわる言葉やキーワードを入れる〉/〈曲名やアルバム名を入れる〉。どちらかを満たせばOKとしました。・・・そして数ヶ月したころ気づきました。季語のルールは俳句(五七五)だけ、短歌(五七五七七七)は季語いらないと。まあ、”音語”ルールには影響しないことです。音楽にまつわる言葉を見つけるだけでも楽しいですね。

曲を聴きながら思ったこと、思い出をふり返りながら思ったこと。具体的な日常の一場面を連想させるもの、抽象的な思いのようなもの、季節も一緒に連想させるもの。なかなかに楽しいですよ。

 

リズムを味わう

短歌をはじめてから、ふだんの生活のなかで、気に入った言葉の文字数を数えてしまうことが増えました。五文字や七文字なら、短歌に使えばポンとおさまるとか、四文字や六文字なら、うーんどう組み合わせられるかなあとか。同じように三十一文字のなかでどう区切るのか。これがパズルみたいで結構ハマります。

 

五|七|五|七|七

型どおりにきれいに区切ることもできます。たまに、おもしろいおさまり方をしてくれるものが浮かぶとうれしいです。

 

五|七五|七|七

キラキラが|こぼれてしまわないように
“White Night”|イルミネーション

五|七|五|七七

歩き指揮・|運転中の|ながら指揮
たいへん危険となっております

 

こんなふうに言葉としてつながってしまうことでリズムが面白くなる。短歌はリズムで味わうものでもあるんだなあ。そして句の区切り方の変化って、音楽的に言うとシンコペーションみたいですよね。強拍と弱拍の変化、アクセントの移動で、独特のリズム感がうまれるように。言葉も拍子(句)どおりの規則正しいリズムもあれば、変化球で独特なグルーヴ感がうまれることもある。そんな気もしてとても楽しんでいます。

 

 

ピアノ弾く人の通るステップに
Summerを弾けるようになりたい

句で区切ると

ピアノ弾く|人の通る|ステップに
Summerを弾ける|ようになりたい

意味で区切ると

ピアノ弾く人の|通るステップに
Summerを|弾けるようになりたい

 

おもしろいですよね。

 

短歌は”いま”を詠む

短歌に言葉少なに託すこと。そのときの思い、その瞬間のこと、いまここ、を詠むものです。それは日記のようですし、140文字のツイートのようです。短歌は、そこに31文字というルールがあるだけ。少ない文字数ともいえるけれど、きっちり文字数を使い切らないともいけない。この範囲のなかで、なにをどう詠めるか。過去に思い馳せて詠むものもあると思います。それでも、詠んでいる(想っている)ことは”いま”です。常に、”いま”を起点としています。

詠み人は、その短歌をつくったときの光景や感情や季節をしっかりと覚えていたりするものです。なんとなくわかる、なぜあのときあの短歌をつくったのか。自分の”いま”を短くささやかに一首ごと綴っていく、そんな記憶のあたため方も素敵だと思いませんか。

 

色彩豊かに

8色の絵の具で描く世界。限られた色で趣向を凝らし表現する世界。一方で、もっと手持ちの絵の具がふえたなら。200色の絵の具で描く世界。色彩豊かに、イマジネーション豊かに、伝わるものも豊かに。

手持ちの言葉がふえたなら。表現豊かに、コミュニケーション豊かに。『言葉は武器になる』『言葉は人をつくる』よく言われます。なにかを目指して精進するわけじゃなくても、言葉の引き出しをふやすことは、シンプルに感情を豊かにすることにつながります。

「感動した」の一言も、「心の底にあるマグマが一気に爆発した」、「僕はそのとき確実に数センチは宙に浮いていたと思う」、「新しい風が吹き込んできて、僕のなかの新しい扉を開いてしまった」なんて。

これ、言った人は言葉と一緒に体感している、そんな自分をイメージしていますよね、きっと。シンプルに、自分に合う、自分の好きな言葉を磨いていきたい。人として豊かな人に、ちょっとずつでも前進したい。

 

 

次の「久石譲を短歌で詠む 100」がいつかまたできますように。もし、おもしろそうかもと思ってくれたら、ツイッターのハッシュタグ #久石譲を短歌で詠む で一緒に詠みましょう!

それではまた。

 

reverb.
a tanka; a traditional Japanese poem containing five lines of 5, 7, 5, 7 and 7 syllables, respectively, for a total of 31.

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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Overtone.第34回 久石譲ベストアルバム「Dream Songs: The Essential Joe Hisaishi」を聴く

Posted on 2020/08/13

ふらいすとーんです。

久石譲ベストアルバム『Dream Songs: The Essential Joe Hisaishi』が2020年2月に世界同日リリースされました。初めての世界共通盤、さらにストリーミングリリース、新たにミュージックビデオ公開など、これまでの活動集大成のような永久保存盤です。そして、ここからまた次の世界発信に向けて動き出す予感すら、記念すべき一枚です。

 

久しぶりに一曲一曲ゆっくり聴きました。ファンにとっても節目のような心持ちで、初めて聴いたときのあの感動や、懐かしさ、新しく抱く感情もあったりしながら、久石譲音楽と共に歩んできた時間に思い馳せる、そんなベスト盤です。

コンサートでプログラムされるときを除いて、昔の曲について振り返ること、今感じること、今記すこと。いい機会だと思って、このベスト発売当時ツイッターに一曲ごとコメントしていきました。今回はそれをまとめたものです。一般的な楽曲解説にはなっていないので、ぜひオリジナル盤やベスト盤のライナーノーツなどで、詳しくは紐解いてもらえたらなと思います。

 

いちファンが語るその曲のこと(魅力・思い出・解説)です。あなたが思うその曲のこと(魅力・思い出・解説)と少しでも共感することがあったならうれしいです。ツイートしたそのままをご紹介します。

 

久石譲の約40年間の名曲たち。

久石譲と歩んできたファンも40年・30年・20年・10年。

これから歩みはじめるファン。

ぐるぐる螺旋のように上昇気流にのって。

それは広がり、膨らみ、溢れ、つながり。

このベストアルバムは ” for ALL FANS”。

 

全体

DISC1はオーケストラを中心に、DISC2はピアノやアンサンブルを中心にまとめられています。宮崎駿監督・北野武監督の映画作品を軸にTV・CM音楽まで。ちゃんと聴いてみようかな、そんな人には涙モノです。オリジナル盤より音質も向上しているのでオススメ満点な永久保存盤!

往年ファンのみなさま。新鮮味はありません。でも音質は向上しております。さて、僕はこう思います。レコード会社の都合や予算からではない、世界リリースという大きな意味のある一枚です。応援してきたその人は、そういう人になったんだ。そんな証ですね。受け取りましょう。

オリジナル盤とゆっくり聴きくらべ。ファンにとっても節目のような心もち。『Melodyphony』からの曲は、より音がくっきりになった印象です。全曲ボリュームレベルきれいに統一コントロール、とおして聴いてもまったく古い新しい凹凸は感じない。1988-2016リリースCDから。

たとえば、”The Wind of Life”はオリジナル盤でレベル超えて音割れしてる箇所あるけれど(3:17-,4:00-)、『Piano Stories Best』でそこはキレイになっていて、もちろんベスト盤でもキレイな音質を引き継いでいます。CD盤愛聴、Apple音質やハイレゾ音源は未開拓です。

 

DISC 1

One Summer’s Day
淡い曲だと思った。でもそこに秘められたもの、奥ゆかしさ。時間とともに輝きをましていった曲。ハープ、グロッケン、弦トレモノの舞う光を反射したような音像(2:16-)も、よりくっきりきらめいている。

Kiki’s Delivery Service
おしゃれにドレスアップしたキキがまぶしい。ヴァイオリン・ソロやチェロ・ソロ、一歩前に出たように輪郭がさらに浮き立ち(3:19-)かけあう立体的空間がのびやかに広がっている。

Summer
日本の夏。夏休み。なつかしい夏。戻れない夏。楽しみな夏。この曲には聴いた人の数だけの”わたしの夏”がある。イントロからのピッチカートはこじんまりとかたまらず、高低豊かな弦たちでふくらみ(-1:07)、木管楽器たちの戯れ(3:14-)もみずみずしい。

il porco rosso
ジブリコンサート(世界ツアー中)をベースにストリングスを加えた短縮版。『Melody Blvd.』のサックス版もいい、『PIANO STORIES III』のフリューゲルホルン版もいい、コンサートでしか聴けない久石譲ピアノソロ版もいい。カッコイイとは、こういうことさ!

Madness
この曲を聴きにコンサートを楽しみにしていた時代がある。ソロ作品から提供するかたちとなったこの曲。スタジオジブリ作品に、久石譲の作家性が色濃く反映されるという巡りあわせ。それは、長いジブリ史のなかで大きな価値をもってくると思う。

Water Traveller
大きなメロディ、独特なハーモニーの流れ、咆哮する金管楽器、大きな水しぶきのようなシンバルやドラ。この曲を気に入って類型を見つけようと思ってもなかなか探せない。もし映画のためじゃなかったら、きっと壮大な序曲として絶対的ポジションにある曲。

Oriental Wind
口あたりがいいだけじゃのこらない。消えていくCM音楽はたくさんある。ふと手のとまる印象的なメロディに、現代的アプローチを盛りこみアート性を高めた音楽作品になっているからこそ、今でものこっている曲。○鷹じゃなくて伊右衛門です。

Silent Love
寄せては返す波と、短いサインの紡ぐ以心伝心。唯一、サントラからのオリジナル収録。『WORKS・I』にも壮大なフルオケ版はあるけれど、今ならまたちがったオーケストラ版や室内楽版を聴かせてくれそうな、そんな期待をしてしまう曲。

Departures
チェロの音域は人の声に近いという。チェロが歌っている、語っている。人が歌うように語るように。いや、言葉にならないこと想いをチェロが代弁しているのかもしれない。おくる人おくられる人の魂のふるえ。胸をつくものがある。

ハープ、マリンバなどの打楽器たちの隠し味がすごく効いているさまがよくわかる。ベスト盤を聴いて新鮮な感動だった。この曲だけじゃなく『メロディフォニー』から収録された曲たちは、ほんとみずみずしい鮮度あがっている。音質向上に感謝です。

“PRINCESS MONONOKE” Suite
久石譲が日本人作曲家であることに、そして同じ日本人であることに、喜びと誇り胸抱くのは、”Summer”よりも”Oriental Wind”よりも、この『もののけ姫』の音楽かもしれない。そこにはたしかなDNAの受け継がれがある。むしだしのドメスティック。

The Procession of Celestial Beings
高畑勲×久石譲のタッグでしか生まれなかった曲。監督からのオーダーを見事に結晶してみせた曲。竹取物語のひとつの答えがここにある。ふたりの作品コラボレーションがひとつだけでもあるかないか、あるという歴史的足跡は大きいと思う。

My Neighbour TOTORO
このオーケストラ版は誕生したときから完璧だった。オーケストラの魅力、ピアノの魅力、トトロの魅力、とびきり溢れてる。もっとこうしたほうが、そんな必要のない、誕生したときのまま。それから約20年。驚異的。

ずっと気になってたけど。ベストアルバムを公式見解とするなら、曲名のときは”Neighbour”(イギリス英語)になってて、作品名のときは”Neighbor”(アメリカ英語)になってる。でもまだ、コンサートプログラムとかごっちゃになってるの多い。その心は?

 

DISC 2

Ballade
こんな演奏を聴かせてくれるバーがあったなら。現実から隠れた光をおさえた空間と、お酒でゆっくりきれいに洗い流してくれる時間。そして少しタフになって、少しやさしくなってお店を出ていく。不純物だらけの日常を濾過するとき。

KIDS RETURN
サントラのシンセサイザー版は覚醒させる。フルオーケストラ版は解放させる。このアンサンブル版は青春の鋭利さやトゲをえぐってくる。挑発的に、痛々しいほどまっすぐに。表情もコロコロ変わる。そしてどのバージョンにも清々しい疾走感がある。

Asian Dream Song
歌曲版サビのないこちら原型。羽生結弦選手のおかげで新たな生命とファンを獲得した幸福な曲。そのスポーツとこの曲に共通するのは、芯の強さと芸術性の高み。いつまでも輝きを失わない。”View of Silence”も収録してほしかったですね。

羽生結弦選手「Hope&Legacy」”View of Silence”。『PRETENDER』CD収録曲ですが、2001年福島「うつくしま未来博」上映作品『4 MOVEMENT』(監督:久石譲)でも使われた曲。この曲には東日本大震災、東北への想いが込めれているのかも。”Asian Dream Song”はスケート始めた頃と夢。象徴的な2曲にのせて。

Birthday
名は体を表す。曲名がそうだから誕生日をイメージさせるのか。純粋無垢なメロディの調べがほわほわ温かさをイメージさせるのか。生まれてきた命への、そして幾度巡ってくる誕生記念日への祝福の曲。スイートな曲。

Innocent
いろいろなCDに、いろいろなバージョンで、いろいろな曲名で収録されている「君をのせて」。器楽版は”Innocent”、歌曲版は”Carrying You”となっているのも象徴的。数ある久石メロディのひとつのタイプ、初期からの原石、イノセントなメロディ。

Fantasia
シンプルなピアノ版を聴いても、そのスケールの大きさは伝わる。限られたハーモニーで紡ぐ壮大なメロディは、絵画的でもあり宇宙的でもある。これがアニメーション映画につけられた音楽か、過去・現在・近未来、時間をのみこむ旋律。ここからすべてがはじまった。

「風の伝説」をベースとしながらも、「遠い日々」もモチーフ(3:40-)や「ナウシカ・レクイエム」からも(4:30-)織りこまれたピアノ幻想曲。”Symphonic Poem NAUSICAA 2015″ [The End of the World収録]の4:00-,7:00-などで登場しています。

HANA-BI
HANA-BIとは生と死。刹那にエモーショナルにピアノは語る。すごく離れたものでもなく、隣り合わせでもなく、ひとつの表裏かもしれない。光と影。メロディをささえる重い低音が、生と死のたしかな存在感に胸を燃やす。咲くこと、散ること。

The Wind Forest
現代人が感じる日本の原風景。体験してきたこと、童心、ぬくもりのある光景。ふしぎと古さを感じさせない、昭和・平成・令和、世代を超えてつながる珠玉のメロディ。

Angel Springs
The Wind of Life
『Piano Stories II』は一緒に過ごした時間の一番長いアルバムかもしれない。毎日、365日。少しだけでも曲がらずに育ってこれたなら、感謝しなくちゃ。そういう一枚があるだけで、思い出は甘く切なくいつでも輝く。

Nostalgia
十代にもノスタルジーはある。年代ごとにその質感は変わっていく。昔の記憶で心と体を温める。郷愁たっぷり、ひたりたいときだってある。夕陽のようなぬくもりは、明日への熱源になっていく。

Spring
Summerの姉妹曲。それはタイトルだけじゃない。[ラレミファ(ミーレレー)]の”Summer”と、[ラファソラ(ミーレレー)]の”Spring”。ニ長調の同じモチーフから変奏された姉妹曲。軽やかで爽やかなふたつ。AutumnやWinterは?と待ちこがれた時代がなつかしい。

Ashitaka and San
エバーグリーンな曲。防ぎたかった破壊がある。防げなかった破壊がある。そこから学んだこともある。でも、失われたものの大きさを忘れてはいけない。どんな状況でも鎮魂の祈りを、どんな状況でも希望の願いを。そこからしかほんとうの再生はうまれない。

『銀河鉄道の夜』親和性のある楽曲ひとつ。宮沢賢治に造詣の深い宮崎駿・高畑勲 両監督。先に完成されたその曲を聴いて、とても気に入ったんじゃないかな、同じ空気感や雰囲気でとお願いしたんじゃないかな。真実はわからない。ひとつの空想です。

Ponyo on the Cliff by the Sea
すべての楽器が音をはじいて弾く、音符の粒たちがぷちぷちかわいく跳ねあう。ベストアルバムを聴きながら、ハッとよぎった。「あら、わたし達はもともと泡から生まれたのよ。」グランマンマーレの台詞。音の粒、泡、生命。

Cinema Nostalgia
古きよき映画の時代。それはサイレント映画か、白黒映画か、映写機まわすおじさんのいた時代か。僕らにはわからない。けれど、音楽が運んでくれる佇まい・味わい・香りは、あの時代を感じることができる。心のフィルムに焼きつける。

Merry-Go-Round
回転木馬のアップダウンと、長調と短調の交互する旋律。人生山あり谷あり、一喜一憂。メリーゴーランドから眺める景色は、まるで自分が世界の中心のように廻る廻る。踊るワルツ。宮崎駿監督が命名した”人生のメリーゴランド” タイトルもすごい!曲もすごい!

 

 

DISC 1
1. One Summer’s Day 映画『千と千尋の神隠し』より
2. Kiki’s Delivery Service 映画『魔女の宅急便』より
3. Summer 映画『菊次郎の夏』より
4. il porco rosso 映画『紅の豚』より
5. Madness 映画『紅の豚』より
6. Water Traveller 映画『水の旅人 侍KIDS』より
7. Oriental Wind サントリー緑茶『伊右衛門』CMソング
8. Silent Love 映画『あの夏、いちばん静かな海。』より
9. Departures 映画『おくりびと』より
10. “PRINCESS MONONOKE” Suite 映画『もののけ姫』より
11. The Procession of Celestial Beings 映画『かぐや姫の物語』より
12. My Neighbour TOTORO 映画『となりのトトロ』より

DISC 2
1. Ballade 映画『BROTHER』より
2. KIDS RETURN 映画『KIDS RETURN』より
3. Asian Dream Song 1998年「長野冬季パラリンピック」テーマソング
4. Birthday
5. Innocent 映画『天空の城ラピュタ』より
6. Fantasia (for Nausicaä)  映画『風の谷のナウシカ』より
7. HANA-BI 映画『HANA-BI』より
8. The Wind Forest  映画『となりのトトロ』より
9. Angel Springs サントリー「山崎」CMソング
10. Nostalgia サントリー「山崎」CMソング
11. Spring ベネッセコーポレーション「進研ゼミ」CMソング
12. The Wind of Life
13. Ashitaka and San 映画『もののけ姫』より
14. Ponyo on the Cliff by the Sea 映画『崖の上のポニョ』より
15. Cinema Nostalgia 日本テレビ系「金曜ロードショー」オープニング・テーマ曲
16. Merry-Go-Round 映画『ハウルの動く城』より

 

 

 

 

そして、久石譲ベストアルバム『Dream Songs: The Essential Joe Hisaishi』発売とともに、新たに制作され公開されたMusic Videoたち。

 

Joe Hisaishi – One Summer’s Day

 

Joe Hisaishi – Summer

 

Joe Hisaishi – Nostalgia

 

Joe Hisaishi – My Neighbour TOTORO

from Joe Hisaishi Official YouTube

 

 

オリジナル・リリース

DISC 1
Track.1,2,3,6,7,9,12
Disc. 久石譲 『Melodyphony メロディフォニー ~Best of JOE HISAISHI〜』

Track.4,5
Disc. 久石譲 & 新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ 『The End of the World』

Track.8
Disc. 久石譲 『THE BEST COLLECTION presented by Wonderland Records』

Track.10
Disc. 久石譲 & 新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ 『真夏の夜の悪夢』

Track.11
Disc. 久石譲 『WORKS IV -Dream of W.D.O.-』 *抜粋

DISC2
Track.1,7,13
Disc. 久石譲 『ENCORE』

Track.2
Disc. 久石譲 『Shoot The Violist ~ヴィオリストを撃て~』

Track.3,9,12
Disc. 久石譲 『PIANO STORIES II ~The Wind of Life』

Track.4,11,16
Disc. 久石譲 『FREEDOM PIANO STORIES 4』

Track.5,6,8
Disc. 久石譲 『Piano Stories』

Track.10,15
Disc. 久石譲 『NOSTALGIA ~PIANO STORIES III~』

Track.14
Disc. 久石譲 『Another Piano Stories ~The End of the World~』

 

Also included in
DISC2 Track.5,6,8,9,12,15
Disc. 久石譲 『Piano Stories Best ’88-’08』

DISC1 Track.1,2,12 & DISC2 Track. 6,8,13,14
Disc. 久石譲 『Ghibli Best Stories ジブリ・ベスト ストーリーズ』

 

 

 

世界盤をベースに、デザイン・円盤・英文ブックレットすべて共通です。国内盤は対訳ライナーノーツが封入されています。洋楽アーティストの日本盤に追加でブックレットが入っているのと同じ、世界仕様です。各国盤にも対訳がついてくるんだと思います。

サブスク解禁で久石譲音楽が手軽に聴けるようになりました。海外ファンも公式音源を迷うことなく探せて聴けるようになりました。海外コンサート会場でも文句なしにおすすめできる、ワールドワイド・ベスト。これは総決算・到達点ではなく、新しいはじまりの第一歩です、たぶん。

それではまた。

 

reverb.
次の世界リリースはオリジナルアルバムか、第二弾ベストアルバムか♪

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

このコーナーでは、もっと気軽にコメントやメッセージをお待ちしています。響きはじめの部屋 コンタクトフォーム または 下の”コメントする” からどうぞ♪

 

Overtone.第33回 雑音ノート ~倍音をつくれますか?~

Posted on 2020/05/17

ふらいすとーんです。

今回テーマはありません。

メモのように、ひとり言のように。

今思っていることを、サクッと、ポンッと、ランダムに。

 

コメント、Twitter・Facebookでも、

なにかご意見ありましたらお気軽にお待ちしています♪

 

WDO

2019年夏に書いたこと。

”今後の久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラについて。

久石さんはパンフレットで「第2期の区切り」と語っています。2004年~2011年の第1期、2014年~2019年の第2期。ここからは個人の推測です。来年はTOKYO2020オリンピック開催です。交通機関や宿泊施設などの影響も大きく都心でのイベント規制などもあるのかもしれません。ちょうど例年のW.D.O.開催時期とも重なります。2022年公開目指して製作が進められている宮崎駿監督の最新作『君たちはどう生きるか』。(同年には愛知県『ジブリパーク』開業予定もある。)そんな外的要因と、久石さんのこれから先に向けて思うところ、、来年はおそらく、数年の小休止になるのかもしれませんね。”

Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2019」コンサート・レポート より抜粋)

 

 

2020年WDOは開催されないだろうと思っていました。上に書いたとおりです。開催期間のイベント自粛要請は文化・スポーツ・学校など各方面事前に出されていました。人の集中と移動、交通の混雑、宿泊施設の混雑、会場の確保など。五輪中は五輪イベントに集中したい。そんな思惑が見え隠れしていました。少なくとも例年のように夏WDO開催はないだろうと。がんばって東京以外ではコンサート・ツアーできるかもしれない。でも、東京公演のないWDOって、ちょっと想像できませんよね。

新型コロナウイルスの影響で五輪は2021年夏開催予定されています。オリンピック・パラリンピックに向けていろいろな準備調整がまた始まります。そして、同じようにまた、あらゆるイベントの同時期自粛要請が出ることになるんだろうと思います。

もちろん、久石さんは2019年に語った時点で、もっとほかの理由や思うところもあって、1年?数年?WDO休止することを決めているのかもしれない。

2020年春から夏にかけての久石譲コンサートは、国内公演も海外公演もほぼ延期、来年に日程調整されています。オーケストラのスケジュールもあるので、音楽イベントは1~2年先まで予定をみます。単発ならフットワーク軽く運良くすべりこめるかもですが、ツアーや海外公演はまた別の事情も発生します。

さて、次のWDOはいつ?

冬ツアーもいいですね。

(新型コロナウイルスの継続的影響や五輪開催には…ふれません)

 

 

こんなとき

コンサート開催できない。じゃあ、レコーディングでもしますか! とはいかないですね。3密です。各オーケストラ団体も公演はおろか、リハーサルすらできない。3密です。会場にお客さんが集まる以前に、オーケストラはステージであれスタジオであれ、密閉空間・密集状態・密接状態での演奏です。演奏にあわせて呼吸も深く大きくなるし、管楽器は息を吹き込む楽器です。人数が減った室内楽やアンサンブルでも状況は同じです。まいった。

 

 

こんなとき

新しいレコーディングはできませんが、過去の未発売音源、CD化されていない曲たちを発表しよう! そんな企画をすすめることはできますね。新しい書籍化の企画とか、新しいスコア化の企画とか。どうでしょう。第2弾の世界ベスト盤の企画もすすんでいるかもですね。どうでしょう。

エンタメ界からの仕事はあったのかな?新しい映画音楽やTV・CM音楽とか。それもまた、撮影スケジュールなんかに影響も出てくる話でしょうし。どうでしょう。

久石さんは、オリジナル新作を書き下ろしたりしているでしょうか。どうでしょう。

今発表したい作品があったとしてもレコーディングできない、今聴かせたい作品があったとしても演奏会を開けない。でも、僕らはいつかのそのときを信じて希望をもって待つ!

 

 

ジブリコンサート

世界ツアー中のコンサートも、来年へ持ち越された公演たち。ヨーロッパ・アメリカを廻り、アジアを廻り、日本凱旋公演。きっとそんな数年越しの大プロジェクトなんだろうと楽しみに信じています。日本凱旋のときには、2008年武道館コンサートからさらにパワーアップ! 宮崎駿監督最新作もプログラムされるのかもしれない!

会場規模を考えると、都心のみ公演かもしれない。そんな予定かもしれない。なんとかがんばって、1~2万人動員規模の各地方公演まで広げてほしい。2020年2月のメルボルン公演のように野外コンサートだったら、日本でもたくさんの人が集まれるかもしれない。元気に楽しみに待ちたい!

 

 

ネクスト・ジブリコンサート

新型コロナウイルスに世界が打ち勝った日には。スタジオジブリ交響組曲シリーズでツアーを廻るのはどうでしょう。関東は「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」、東北は「となりのトトロ」「魔女の宅急便」、関西は「紅の豚」「もののけ姫」のように。順番に当てはめただけでも、なかなかの充実度です。久石譲オリジナル作品も組み込める時間枠もありますね。

本家本元、WDOコンサートで新日本フィルと廻るのもいいですね。はたまた、全国津々浦々、その地域をくまなく廻れるように、地方オーケストラと廻るのもいいですね。地域ごとのオーケストラと地域ごとのプログラムなら、オーケストラの負担もぐっと減る。久石さんの負担はぐっと数倍にもなるけれど。。そうやって、全国のオーケストラ団体や会場施設が活き活きするなら、音楽がつくりだすパワーは無限です。

 

 

質問箱

最近ツイッターの質問箱なるものが気になっています。ファンサイトのアカウントで質問箱開設しようかなあ。ここに久石譲にまつわる質問を受け付けて、答える。答えるんだけど、僕じゃわからないこともたくさんあるから、「誰か答えてー」と投げる。誰かが答えてくれる。

Yahoo知恵袋のようなものですね。でも、それと違うのは、いい塩梅で匿名性が希薄になる。ツイッターのやりとりだから、相互にアカウント(ツイッター上の人となり)がわかっている。無責任な、強い口調で吐き捨てるような、攻撃的な回答をする人はいないでしょ? ファン同士の親切心で交流できるんじゃないかなあ。

あっ、質問者は匿名、誰かわからないのか。でも、ファンサイトのアカウントで回答、もしくは回答を投げたものに、親切な人がリプライで回答したらいいですよね?ちがうのかな?

ファンサイトのフォロワー数は1500くらい。だから、そんなに活発な質問回答のキャッチボールはないんじゃないかあ、緩やかなペースと環境でできるんじゃないかなあ、と思っています。そして、どこかのタイミングでQ&Aとしてたまったものを、ファンサイトによいしょと置いてしまう。カテゴライズできるなら整理する。そうすれば、未来の質問者のためにも、いい道案内になるんじゃないかなあ。

どんな質問があるのは想像できないですけれど。たとえば「最近久石さんのファンになりました。どのCDから聴いたらいいですか?」とその回答。たとえば「この曲がすごく好きです。そこからほかのおすすめはありますか?」とその回答。「コンサートに行くときの服装は?」とその回答。「ミニマルってなんですか?」とその回答。「この曲の、久石さんがコンサートで弾いてるの同じ楽譜はありますか?」とその回答。あんまり思いつかない。軽いものも、コアなものも、いろんなことが飛び交うと、楽しいし気づくこともあるのかなあ。

ファンひとりひとりにファンとしての歴史があります。歩んできたなかで、当たり前になってしまっていること、空気のように知っていること。誰かから質問されて、知らない人もいるんだ(知らなかった過去の自分をはっと思い出す)、そういうのってどんどん増えていきますよね。

いらないかな? あってうれしい人いるかな? ファンサイトにBBSや掲示板は常設しないです。気軽になんでも書きこめるコミュニケーションツールというよりも、目的がはっきりした(質問と回答)コミュニケーションになって、それぞれのファン交流も広がるかもしれないし、いいんじゃないかなあと、楽観的に思っています。

質問があるまる場所、質問に答えてくれる場所、それが響きはじめの部屋のなかのスペースにある。そんなイメージです。

どう思いますか?

 

 

アンケート

『メロディフォニー』久石譲ベストアルバム発売当時、事前に曲のファン投票企画がありました。そういうイメージ。『メロディフォニー2』があるならこの曲をオーケストラ・レコーディングしてほしい! そんなファン投票ページがあってもいいなあ、と思っています。

期限のない常設、ファンによる人気曲アンケート。新しい曲が発表されれば、候補も追加されていく。集計結果(途中集計)もいつでも見れるもの。あの曲そんなに人気あるんだあ、これ聴いたことなかったから聴いてみようかなあ、とか誰が見ても楽しめますよね。

ファンの意思とかリアクションがかたちとなったものだし、伝えることができるし、なんか風通しよくていいなあ。

ただ、このアンケート企画はずっと思っているんですけど、思っているだけ。いかんせん、どういうツールを使ったらいいのか、ウェブのプログラミングを依頼するとか、まったくわからんのです。簡単に使えそうで、イメージにかなうツールがなかなか見つからない。

もしこんなファンの人気曲が、巡り巡って久石さんサイドに伝わったとしたら。WOW! コンサートの演目に影響したり、CD収録曲に影響したり、もしかすると『メロディフォニー2』の発売きっかけになったりでもしたら! ファンたちで動かした歴史だ。そんなことにもなるかもしれません。なんてね。

どう思いますか?

 

 

 

 

上の画像は、当時オフィシャルサイトで募っていたリクエストページです。3つまでチェック入れて投票できる。リストにない場合は枠内に書きこめる。シンプルでわかりやすいですよね。

こういうのでいいんです。ただ、これは送信するタイプです。リクエストを送って、その集計結果は後日開示してもらわないとわからない。

僕が希望しているやり方は、投票して、かつ集計結果もリアルタイムで見れるもの。投票しなくても、集計状況が誰でも見れるもの。オープンなアンケートページです。

いや・・・

そこにこだわらなくてもいいかあ。リアルタイムで見れることに。ここにこだわるとツールが見つからない。もしできないなら、同じようにリクエストを送信して、吸いこまれる一般的なタイプでもいいです。その場合、アンケートの途中経過(集計結果)の更新は、月1くらいになるとは思いますけれど。今こんな感じですよと。それでもいいかあ。・・・

どう思いますか?

 

 

おわりに

とりとめもなく記しました。読みづらさ、お許しください。僕の目標として、Overtoneしたいことや特集としてまとめたいことなんかも宿題で抱えながら。だいたいがとろい人、だから、なんでもかんでも手をつけられないし、ゆっくりコツコツしかできない。

質問箱もアンケートも、空想でおわるほう可能性のほうが高い。今は強くそう思っています。胸張って言うことじゃないですね。期待しないでください。期待するような話じゃなかったかもしれないですね。

 

ただ、なんか反応があるとうれしいなあ!

 

なにかのきっかけになるかもしれないと、

今思っていることを、サクッと、ポンッと、ランダムに。

それではまた。

 

reverb.
Overtoneの画像に使っている下の3つの波形は、ある3つの楽器の倍音波形です♪

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

このコーナーでは、もっと気軽にコメントやメッセージをお待ちしています。響きはじめの部屋 コンタクトフォーム または 下の”コメントする” からどうぞ♪

 

Overtone.第32回 Textsに寄せて ~雑文集ノススメ~

Posted on 2020/04/27

ふらいすとーんです。

このたび「Texts」ページができました。久石譲があらゆる媒体で発信したインタビューを一覧リスト化したものです。雑誌・新聞・Webなどで「久石譲が語ったこと Joe Hisaishi Interview」。

ファンサイトを運営するにあたり、ある時期からこれまでの雑誌インタビューを整理したり、切り抜きファイリングしたり、持っていなかったものを入手したり、知らなかった掲載情報を調べなおしたり。手元のコレクションを整理整頓するのと並行して、ファンサイト内でも内容紹介してきたものたくさんあります。

数年かかりました。ここでようやくひと区切り、まとめてきたものをインデックスしてご紹介しようと「Texts」です。

 

Texts

 

 

一覧リストにするにあたってどう並べようか。スタジオジブリ作品など映画ごとにまとめたほうがいいのか、CD作品ごとにまとめたほうがいいのか。そのほうが見る人も目的をもって探しやすいかもしれない。でも、ひとつの雑誌インタビューのなかで語られていることは、そのときの映画のことCDのこと重層的です。だったらと、シンプルに年代順に並べることにしました。そして、大見出しも載せることで、どういう内容について語られているのか、内容を開く前に目安にしてもらえるかもしれないと。

年代順に並べるメリットはあります。音楽担当したあの映画、リリースされたCDやその他音楽活動。いつの出来事なのか年表はわかっている、その年あたりに標準をしぼって探してもらたなら、何か語っていることがあるかもしれない、ないかもしれない。わかりやすいものさしになります。

 

なぜやるのか?

ぜひこちらをご覧いただけたら幸いです。

 

雑文集ノススメ

あらゆる時期に、あらゆる媒体に、あらゆる分野のことを語っている久石譲。これら色とりどりのインタビューたちが、いつの日か一冊の本にまとめられたらいいなあと思っています。これまでの久石譲著書の特色は、ある時期の音楽活動に深く切りこんで記録したエッセイのようなもの、雑誌連載から書籍化されたもの、対談、これらが中心です。つまりそこには、時間軸や内容軸としてテーマがあります。それは局所的な狭義的な範囲でもって凝縮されている、本にもまとめやすい。

ある作家や作曲家のなかには、点として雑誌や新聞で発表してきた掲載物を、無造作にまとめたようなインタビュー集、いわば雑文集のようなかたちで出版されたものがあります。僕は、久石譲著書のなかにも、こういった性格のものがあってもいいんじゃないか、いやむしろ、あってしかりじゃないかくらい思っています。

思っている理由をすすめていきます。

 

◇インタビューのよさ

なんといっても、その時々の濃く深い内容が語られています。それが映画の音楽制作なのか、オリジナルアルバムなのか、コンサートなのか。いずれも、そのときの旬な話題について非常に高い鮮度で語られています。ホット=記憶が新しい、時間をおいて振り返ったときには語らないようなこと忘れてしまうようなことも、リアルタイムの濃密さがそこにはあります。

インタビュアーをおかずに久石譲だけが語っているタイプもあります。インタビュアーの質問に答えるタイプもあります。前者が語りたいことを語るなら、後者は聞きたいことを語らせる。また、インタビュアーが聞き手に徹していたとしても、必要な合いの手や質問を得ることによって、よりわかりやすく読者に届くようにかみくだかれる、インタビューという空間の魅力です。

そこで語られるテーマも、発信元メディアの特性を生かしたものもあります。音楽話はもちろんビジネスに置き換えれることだったり、切り口のバリエーション豊富です。

 

 

少しだけ選んだものをご紹介します。

 

「感性に頼って書く人間はダメですね。2~3年は書けるかもしれないけれど、何十年もそれで走っていくわけにはいきません。自分が感覚だと思っているものの95%くらいは、言葉で解明できるものなんです。最後の5%に行き着いたら、はじめて感覚や感性を使っていい。しかし、いまは多くの人が出だしから感覚や感性が大事だという。それだけでやっているのは、僕に言わせると甘い。ムードでつくるのでなく、極力自分が生みだすものを客観視するために、物事を論理的に見る必要があります。」

Blog. 久石譲 『WORKS IV』 発売記念インタビュー リアルサウンドより 抜粋)

 

 

「例えば、2時間の映画を手がける場合、1本につき30数曲、ややシリアスな作品で曲数を減らしても15~16曲を書かなければなりません。それらの曲を本編のどの部分に付けるのか。いわば、音楽が流れない沈黙の部分も含めた、2時間の交響曲を書くようなものです。メインテーマがひとつ、サブテーマが複数あるとして、それらのテーマをどのように配置していくか。同じテーマを悲劇的に使ったり、軽く流したりする場合も、画面と呼吸を合わせていかなければならない。それらをすべて構成し、組み立て、全体のスコアをどう設計していくか。その95パーセントは、テクニックで決まります」

Blog. 「オールタイム・ベスト 映画遺産 映画音楽篇 」(キネ旬ムック) 久石譲 インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「でも、そのことが良い音楽を作る決定的な要素になったんですね。全部で8トラックしかないということは、ハイハットとキックとスネアを使って、ベースを入れて、キーボードが4声だったらもう終わり。すると、そこで工夫が必要になってくるんです。当時、FAIRLIGHTのシーケンサーを使わせたら、僕は絶対に世界一うまかったと思いますよ(笑)。壮大な音を8つの音だけで、いかに作り上げるかということを考えることが、ものすごい訓練になり、その感覚は現在に至るまでずっと続いています。今のように、1チャンネルだけで幾らでも音が出るような環境でやっていると、90%以上は無駄な音を入れてしまっていると思いますよ。ああいうふうに音楽を作っていては、感性は育たない。必要なのは、いかに無駄な音を使わず、しかも色彩豊かに作り上げるかという訓練だと思います」

Blog. 「キーボードマガジン Keyboard Magazine 1999年8月号」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 


これ、好きな話です。当時読んだときよりも今のほうがよく響いてくる。1980年代初期シンセサイザーでの作曲活動がメインだった久石譲です。8つの音(チャンネル)だけで音楽を成立させるという訓練は、つきつめれば、フルオーケストラ作品を弦楽合奏や弦楽四重奏という限られた声部に置き換えることができるということ。フルオーケストラが30~40チャンネルあるとしたら、弦楽四重奏は4チャンネル(ヴァイオリン×2,ヴィオラ,チェロ)です。音楽編成を変幻自在に拡大・縮小して再構成する久石譲の技は、こういった時代の経験のなかで磨かれてきた。もっとさかのぼれば、源流にクラシック音楽の教養があったからこそです。なかなかに深いお話だと思います。

 

 

「難しかったんだよね。それまでガッチリとコンセプトを組んできたんだけれど、最後の最後で自分を信じた感覚的な決断をしたということです。あの弦の書き方って異常に特殊なんです。普通は例えば8・6・4・4・2とだんだん小さくなりますね。それを8・6・6・6・2と低域が大きい形にしてある。なおかつディヴィージで全部デパートに分けたりして……。チェロなんかまともにユニゾンしているところなんて一箇所もないですよ。ここまで徹底的に書いたことは今までない。結果として想像以上のものになってしまって、ピアノより弦が主張してる……ヤバイ……と(笑)。」

Blog. 「キネマ旬報 1996年11月上旬特別号 No.1205」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 


これは『Piano Stories II』のお話です。ちょっと聴き方が変わりますよね。ほかにも、たくさんのインタビューのなかには音楽制作の貴重な過程、録音や収録に使われた専門的な機材のことも話題にのぼったりします。手元にあるインタビューをすべて読み返し、各CD作品ページで必要な情報(インタビュー内容)はあわせて紹介しています。気が向いたら、好きなCD、気になるCDの”Disc.”ページものぞいてみてください。今まで知らなかったエピソードが、そこにあるかもしれない、ないかもしれない。

 

 

「コントラバス・コンチェルトやエレクトリック・ヴァイオリンなどのソロ楽器を持つ曲を書くときは、いつも楽器を買うんですよ。コントラバスのときも買って、響きを体感するために毎日作曲の前に15分くらい弾いていましたね。だから今回もバンドネオンを買おうとしたけど、売ってないんです!もう作ってないですし。それで三浦くんに相談したら、お持ちの楽器の中の一つを貸していただくことになって。それを毎日弾いてたんですけどね、弾いたって言ってもまあ、びっくりしました。こうやって引っ張ってレ~って鳴ってるのに、押したらミになっちゃうんだよ!違うんだよね。往復で違うんだ音!みたいな! キーの配列もまるで規則性がない。これじゃ覚えられない……。でも逆に、このバンドネオンだからこそ(配列のおかげで)音の跳躍ができるというのがわかってきた。裏技を使えばなんとかなるんじゃないかみたいな。ということがあって、あとは信頼して書くしかなかった。」

Blog. 「LATINA ラティーナ 2018年1月号」 久石譲 × 三浦一馬 対談内容 より抜粋)

 

 

「小学校の音楽の授業で習うことですけど、音楽の中には”メロディー”と”ハーモニー”と”リズム”という三要素があるんです。僕らが音楽を作る上でも重要なのはこの三要素なんですよ。今回、メインテーマの”メロディー”が非常にシンプルで分かりやすいので、”リズム”や”ハーモニー”が相当複雑な構成になっても成立するんです。そこは良かったところですね。この曲の良さは、”ポ~ニョポ~ニョポニョさかなのこ”という最初の部分のメロディーですべて分かってしまうところ。そのメロディーを認識させるために4小節とか8小節とか必要としないですから。1フレーズだけで分かるので、どんな場面でも使えるんです。すごく悲しい感じにもできるし、すごく快活にもできるから、いくつでもバリエーションが作れるんです。メインテーマのアレンジを変えて使うという方法は、前作の『ハウルの動く城』の経験が生きましたね。今回、『崖の上のポニョ』でも徹底的にアレンジを変えました。使い回しは一つもありませんよ」

「音楽を入れるのに楽なところは一つもありません。その中でも悩んだところは、宗介が”リサ!リサ!”って叫ぶ場面と、その後のおばあちゃんたちがいる”ひまわりの家”が水没している場面ですね。ひまわりの家の場面には音楽が必要だと思ったんですが、そうすると宗介のシーンには音楽が入れられないなって。2つの連続する場面のどちらにも音楽が入っていたら”音楽ベッタリ”な感じになってしまいますからね。僕も宮崎さんも悩んだんですけど、宗介のシーンには音楽は要らないという話になりました。ところが、作っていくうちに、”やっぱりこれだとおかしい”っていうふうに思えてきたので、宗介のところにも音楽を入れることにしたんです。でも、ひまわりの家の部分がフルオーケストラなので、違いが出せるように宗介のところはピアノ一本で入れることに。いやぁ、うまくいきましたね。惜しいのは、僕のピアノがちょっと強かったことかな。オケの録音の後にとったので、ちょっと力が入り過ぎたみたいです(笑)」

Blog. 「別冊カドカワ 総力特集 崖の上のポニョ featuring スタジオジブリ」(2008) 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 


ジブリ音楽に関しては、一番インタビューの質量ともに豊富かもしれません。映画ごとにたくさんのエピソードがあります。こういうのを読むだけでも、ファンはワクワクうれしいですよね。どれどれ「28.宗介のなみだ」聴きなおしてみようか、なるほど言われてみれば、愛着ますなあ、なんてことも。

 

 

「そうなんです。音楽としてつまらなくて、それが実は「劇伴」というやつなんですが、そんな単体で聴いたらつまらないものを何となく流しておくみたいな、そんな音楽なんてつけちゃマズイですよ。映画の音楽をやったことがある作曲家にね、「久石さん、映画の音楽って安いでしょう」って言いにくる人がいるんです。そのとき「あ、ごめん、俺、恐らく日本の映画の4、5本くらいの音楽予算がないとやらないから、決して安くないよ」って、はっきり言いますよね。「これはぜひ久石さんの音楽が欲しい。でも予算がなくて」なんてさ、それで役者の衣装に費用をかけたりするとさ、「こらっ」って、思うじゃないですか。だったら衣装の一つや二つ削って、音楽予算を作ればいいじゃないかと。例えば「内容さえよければ、どんなに低予算でも私はやります」っていえば、それは70点の回答なんだけれど、それって逃げてる言葉なんです。自分をカヴァーしているだけ。「安いものは基本的にやりません」って言う方が誠意があると思う。」

-それは久石さんを追い込み発言ではありますが、映画音楽ってお金が必要なんだという認識にもつながりますし、当然いい音楽を作るにはお金がいる。

久石:
「いります。シンセで後ろにちょこっと流しておこうという話でなければ、やはりちゃんとお金をかけなければいけない。もし僕が安いギャラで引き受けてしまったら、後に続く連中がもっと安くなってしまう。だれかが突っ張って言っていかないと、ほかの連中がもっとかわいそうになってしまう。自分が置かれた立場を考えると、責任感というものが少しは芽生えましたね。そういう意味では発言の場を作って、機会のあるごとに言っていかないと、日本の映画が豊かにならない気がするんですよ。自分自身がやりやすくなるためにも環境を作っていかなければいけないんです。」

Blog. 「キネマ旬報 2000年7月上旬 夏の特別号 No.1311」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 


こんな久石さんも好きです。そしてちゃんと芯がある。

 

 

「この次は絶対にクリアーにしようと、絶えず線になって反省して、さらに理想的な高い完成度の…、ここが難しいんですけどね。完成度が高ければいい音楽になるかというと、ものすごく立派な譜面を書いたからってそうはならない。むしろちょっと粗っぽく書いて、なんだかなあっていうときのほうが、人々に与えるインパクトが大きいケースもありますからね。実のところ、音楽がまだわからない。だからたぶん、10年後もそういうことに悩みながら、『いい音楽をどう創ろうか』と考えていくんじゃないかと思います」

Blog. 「MUSICA NOVA ムジカノーヴァ 2007年3月号」久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「結局、クオリティを上げるのは努力しかないんですよ。一にも努力、二にも努力。自分が納得するまで、これでいいと思うまでやり続けるしかない。それだけです。だから絶えず不安です。書けなくなるんじゃなうかとか、今回は本当にできるのかとか、いつも不安を抱えている。でも、そうするとどこかでアドレナリンがぶわっと出て、意欲が湧き上がってくれる。それで仕事をなんとか乗り切ってる。かっこいいことなんか何もない。いつもギリギリ。でも仕事って、そういうものじゃないですか。のた打ち回れば、のた打ち回っただけ少しはよくなるだろう。そう信じて、最後の最後まで粘り続けられるかどうか。それで作品の質は決まるのだと思う」

Blog. 「GOETHE ゲーテ 2013年7月号」映画『奇跡のリンゴ』久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「久石さんとは同じ時代を生きてきたと思う」。宮崎が語る。「作るに値する映画はいつの時代にもあるだろうという仮説のもとにやってきました。そのたんびにいっしょにやろうと。ここまで来たら最後までいっしょにやると思う。彼の音楽はぼくの通俗性と合っているんですよ。彼の音楽の持ち味は”少年のペーソス”です。それは彼のミニマルの底流にもあるし、『ナウシカ』のときからあった。映画によって隠したり、ちょっと出したり、うんと乾いて見せたり。手を替え品を替えやりながら生き残ってきた人だから、そう簡単に手札を見せるわけがない。でも”少年のペーソス”はずっと変わっていない。そこがたぶんぼくと共通している」

Blog. 久石譲 雑誌「AERA」(2010.11.1号 No.48) インタビュー より抜粋)

 

 

◇対談のよさ

これまでに各界著名人と対談しています。その魅力をひと言でいえば、対談で起こる化学反応な話題の広がりです。プロのインタビュアー(音楽や各業界に精通している人)であれば、こんなことは聞かないよなあ、でも!読者としては聞いてくれてありがとう!な話。思いもよらない切り口や質問がとんでくる。キャッチボールが豪球になっていったり、あるいはラフなゆるい空気になったからこそ生まれる会話。積極的には語ったことないんだけど、聞くなら答えるよ、そんなナイストス!の応酬も対談の面白さです。

インタビューに答えるための、もちろんプロモーションの側面も担った、準備された回答はぐっと減ります。その場、その時、空気、一期一会。これらの貴重な話は、この相手だから聞けたこと、このタイミングだから語られたこと、会話が生きもののように躍動感あるものになっています。

 

 

少しだけ選んだものをご紹介します。

 

秋元:
僕らはよくいろんな方とコラボレーションをするじゃないですか。ドラマでも映画でも悲しいメロディーというと、普通の音楽監督というのは聴いただけで悲しい曲を書いてきてくれる。でも驚かないんですよ。脚本でも音楽監督でも役者でも、やっぱり一緒にやった人が自分が投げたアイデア以上ものもを返してくれて、お互い驚きあいながら作っていかないとダメなんですよね。今回はそこが非常におもしろかった。日活の会議室で初めてブルガリアン・ヴォイスを聴いた日、久石さんが曲を流す前に「いっちゃっていいですか?」と訊ねられて、曲を聴いたら本当にいっちゃってた(笑)。すごくいいなあと思った。作詞でもそうなんですけど、どこまで奇を衒っていいかを判断するのは難しいんですよ。ただ奇を衒ってるだけだと単なる企画もの、イロモノになっちゃう。だから微妙に奇を衒っている新しさ、そこが一番難しいんですよね。

久石:
単に奇を衒うというのはできるんだけど、それがどう主題に関わってくるかですね。それができたのはやはり秋元さんに対する信頼です。受け止めてもらえるというのがあったので。こちらが窮屈にならずに持っているアイデアをぶつけられたんです。

秋元:
いや、それはプロの技ですよ。ブルガリアン・ヴォイスから嵐のシーンのオーケストレーションまで幅が広い。ブルガリアン・ヴォイスだけのアイデアを出せる人はブルガリアン・ヴォイスのテイストで最後までいっちゃうんですね。そうすると今度は映像と音楽が分離してしまう。それにしてもラッシュの音がない時に比べて数百倍良かったです。

久石:
日本映画としては本当にお金を出してもらったんですよ。ホールでオーケストラをきっちり録れるなんてまずないですから。これだけの規模でできたからこそなんです。

秋元:
オーケストラというと、それだけの人数と楽器を集めて、ホールまで借りるのは、すごくお金がかかる。だから大抵みんな打ち込みでやるんですけど、久石さんがホールでモニータに映像を流して同時に録ろうとおっしゃった。すごく贅沢ですよ。アメリカではそういうシステムが整っているけど、日本ではなかなかできない。

久石:
設備が整ったところで録るわけではないので、レコーディング機材を全部運び込まなくてはいけなくて、ものすごく大変なんです。しかもいろいろトラブルがあるし。

秋元:
我々も、いつもああいうことができると思ってはいけないんですね。

久石:
でもこの先デジタルになったら、もっとああいうやり方の重要性が出てきますよ。ホールのアンビエントがそのまま再現されるから、とても奥行きが深くなる。

Blog. 「秋元康大全 97%」(SWITCH/2000)秋元康×久石譲 対談内容 より抜粋)

 

 

 

久石:
ものをつくる場所というのはこだわりますよね。雰囲気的にものをつくれる環境を選びます。レコーディングスタジオに入るとミュージシャンやスタッフなど人も大勢いますし、作業場ですね。今日もこの取材後にスタジオに移動してCM音楽のレコーディングをするのですが、完成させた譜面を持ってスタジオに入ります。やはり曲づくりの場所とは分けています。演奏しないことにはレコーディングにならないので、レコーディングする場所としてそこはきちんと分けています。

稲越:
その場でアレンジとかして違ってきたりするのですか?

久石:
僕はスタジオに入ってしまったらもうまったく変えません。

稲越:
えっ、変えないんだ……

久石:
レコーディングは誰よりも早いと驚かれます。二日間のレコーディングを予定していても、たいてい一日目で半分以上の曲数を録ってしまいますから。一日の場合も、二一時までスタジオを借りていたとしても、一八時、一八時半には終わってしまうことが多いです。このあいだ久しぶりにスケジュールの組み方の問題もあり、遅くなることがありましたけど、これなんかは例外です。

Blog. 「CUE+ 穹+ (きゅうぷらす) Vol.12」(2007) 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

 

冨田:
「いや、ほんとうにぼくらの仕事は肉体労働だよ。やっとこの頃、どうにか自分でコントロールできるようになってきたけど。久石さんなんか、いまが死ぬほど忙しいでしょう? 仕事がいろいろな方向へ拡がっているものね。すごく興味を持って見させていただいているんですよ」

久石:
「いやいや、ボクにとっては、一瞬のうちに響きやサウンドが聴き手の耳を惹きつけてしまうという冨田さんの仕事がいつも一番気になってきたものなんです」

Blog. 「CDジャーナル 2002年4月号」 冨田勲 vs 久石譲 対談内容 より抜粋)

 

 

 

林:
「坂の上の雲」のテーマ音楽が聞こえると、意味もなく悲しくなるんですけど、雲の向こうに壮大な世界が広がっていくような気がして。あの音楽を聴いただけで、みんな胸がキュッとなるんじゃないですかね。

久石:
それはすごく嬉しいです。ああいう大型のドラマになると、大河ドラマのオープニングみたいに、「ジャジャジャ~ン!」という派手な音楽で出るのがふつうなんでしょうけれども、僕、そうはしたくなかったんです。あれだけの大作なんだから、その精神を受け止めるような、バラード的なもののほうがあの世界観が出るんじゃないかと思ったんです。

~中略~

久石:
映画の音楽だとかをしばらくやってると、飽きちゃうんです。「これでいいのかな」と思うと、逆に完全に作品風に振っちゃって。そうすると今度は独りよがりになりがちなんです。あっちでぶつかり、こっちでぶつかり、の繰り返しですね。

林:
團伊玖磨さんみたい。團さんは大作を書く一方で、シンプルで、みんなが好きな「ぞうさん」もお書きになっていて、懐の深さが似てますね。

久石:
「ぞうさん」は、まど・みちおさん作詞で、あれは名曲ですね。ああいうシンプルな曲ほど難しいんです。「♪ぞーうさん ぞーうさん おーはながながいのね……」って、言葉のカーブとメロディーカーブが一致してるんですよ。

林:
ほおー、そこまで考えたことなかったです。「♪歩こう 歩こう……」(「となりのトトロ」の主題歌)もカーブが合ってますよね。

久石:
合わせてます。ポニョ(「崖の上のポニョ」)もそうですね。

Blog. 「週刊朝日 5000号記念 2010年3月26日増大号」久石譲×林真理子 対談内容 より抜粋)

 

 

 

淳:
僕は宮崎監督が久石さんの楽曲に合わせて物語を作ってる部分もあるんじゃないかって思ってるんですが、その辺はどうですか? 「その曲ができたなら、こういう演出にしていこう」って。だって音楽があまりにも作品にマッチしてますもん!

久石:
それはたぶんないと思います。確かに早い時期にイメージアルバムを作って、それを宮崎さんがお聴きになってるっていうのは聞きますけど、非常にピュアに絵コンテをしっかり描かれる方だから。

Blog. 「月刊サーカス CIRCUS 2012年4月号」FACTORY_A 久石譲×田村淳 対談内容 より抜粋)

 

 

ほかにも、鈴木光司さん、飯島愛さん、そして対談本もある養老孟司さんとは、共著以後に2~3回ほど雑誌をとおして対談しています。

 

 

◇本としてまとめることが大切

スタジオジブリ関連本はたくさんあります。そのなかに、宮崎駿監督・高畑勲監督のインタビューをあつめたものも、きっちり歴史をのこすように出版されています。

鈴木敏夫プロデューサーは、こう語っています。

”以前、高畑勲・宮崎駿がいろんな媒体で書き散らかした文章、話したインタビューを、年代順にまとめた本があると便利だと思い、それぞれ一冊にまとめました。文庫も複数の出版社からばらばらに出ているんじゃなくて、一社でやってもらえないかなと”

 

Overtone.第27回 「映像から音を削る 武満徹 映画エッセイ集/武満徹 著」を読む ~ウソとマコト I~ で題材にしたこの本も、巻末に《初出一覧》がぎっしり掲載されています。○○○○年○月○日○○新聞、○○○○年○○雑誌○○月号というように。もしこういった編集作業をへた書籍化がなければ、今読むことはできなかったでしょう。

 

 

◇久石譲論 本ノススメ

宮崎駿も、高畑勲も、北野武も、武満徹も、ほかにもたくさんのプロフェッショナル。映画界、音楽界、スポーツ界。自らのの著書とならんで、そこには研究本があります。”宮崎駿論”は国内にとどまらず海外専門家によっても多数執筆されています。解説・分析・批評・論考・攻略・研究・専門・特集、どんな言葉を使ってもいいです、そういった類の書物。深く切りこんだタイプのものは、そんな視点や考察もあるのかと楽しく驚かされますし、クロノジカルにまとめたタイプのものは、まさに年代記、歴史の足跡を紐解く充実度があります。

 

でも、久石譲の音楽活動について、

そういった本はない。

ずっと不思議だったんです。

なんでないんだろう?

あるとき、ひとつの答えを得た。

 

それは、歴史的資料の絶対数が少ないからじゃないか。歴史的資料を本という単語に置き換えてもいいです。研究したいにも、分析したいにも、資料が少なければできません。どういう制作過程だったのか、当時の環境や志向性は、その時にどんなことを語っていたのか。可能なかぎり集めて広げて、自分なりの論考にまとめていく。

音楽という特性についても。音楽を聴いただけで語るなら、それは解説こそできても、深く鋭い研究はできません。もし仮に、音楽という素材だけで扱うにしても、そこには必ずスコアが必要になります。いくらプロの音楽評論家といえど、聴いたものだけで分析して語れというのは、とても難しい。

宮崎駿監督の著書は11冊あります(対談・インタビュー・共著も含む)。さらに、「ジブリの教科書 シリーズ」のように、各作品で本をまとめたものにも、製作当時のインタビューは収録されています。付随する製作スタッフ(原画・動画・色彩・声優・プロデューサーなど)の話から、浮かび上がってくることもあります。そして「イメージボード集」や「絵コンテ集」、これが映画をつくるための設計図になります。このような重層的な歴史的資料の充実と提示こそ、今なお論考を活発化させ深めさせている要因のひとつだとしたら。

スコアは音楽をつくるための設計図です。ベートーヴェンの音楽を専門的に分析するなら、そこには片手にスコア、片手に資料を準備して臨みますよね、たぶん。音楽評論家は、そこから新しい見方や解釈を得て、議論を深め、音楽と一緒に歴史的価値を引き継いでいく。ここは大切! それが指揮者や演奏者だったらどうでしょう。そこには片手にスコア、片手に資料を準備して臨みますよね、たぶん。深い理解を求め、新しい視点を模索し、”今”という時代に照らし合わせて表現豊かに奏でられる。長く演奏され聴きつがれる音楽になる。

 

僕は、ひとつの答えとしてそう導きました。

 

すべてを包括できてはいないけれど、ひとつの要因として、少しは当たっているような気がしています。つまるところ、僕が強く希求しているのは、「新しい聴き方」のサンプルの提示です。こういう聴き方もある、こういう背景がわかるともっとおもしろく聴けるよ。個性豊かな解釈の集合体が、よりその音楽を重層的に魅力あるものにするように。自分にはない音楽の聴き方、うけとり方を、もっともっと浴びたい。すごいな久石譲!と唸りたい。

日本映画音楽界のひとつの時代を築いてきた久石譲、日本現代作曲家として作品を発表しつづけてきた久石譲。次世代の音楽家たちに影響をあたえ、その血肉や遺伝子のようなものは、確実に音にも方法論にも見受けられることもあります。久石譲ファンであること、久石譲音楽を聴いて育ったこと、そう公言する作曲家は日本ではもちろん、海外作曲家からのリスペストを耳にすることも。

そんな輝かしい久石譲の軌跡をまとめた本が、バラエティ豊かな”久石譲論”書物たちが、久石譲著書と久石譲楽譜の横に並んで置かれている光景。ちっとも不思議なことじゃないですよね。

 

それではまた。

 

reverb.
久石譲インタビュー集と久石譲論の2タイプの書籍化希望のお話でした。

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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