Disc. 久石譲 『交響組曲 天空の城ラピュタ』 *Unreleased

2017年8月2日、「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2017」にて世界初演。

2014年から始動したスタジオジブリ交響作品化プロジェクト、第1弾「交響詩 風の谷のナウシカ」、第2弾「交響組曲 もののけ姫」につづく第3弾である。

 

交響組曲「天空の城ラピュタ」
Original Orchestration by Joe Hisaishi
Orchestration by Chad Cannon

 

久石譲コメント

最後に「天空の城ラピュタ」について。先日高畑勲監督と『かぐや姫の物語』の上映前にトークイベントをおこなったのですが、このラピュタについての話題がもっとも長かった。それだけ思い入れがあったわけです。考えてみれば宮崎監督、高畑勲プロデューサーという両巨匠に挟まれてナウシカ、ラピュタを作っていたわけですから、今考えれば恐ろしいことです。

今回すべてのラピュタに関する楽曲を聴き直し、スコアももう一度見直して、交響組曲にふさわしい楽曲を選んで構成しました。約28分の組曲ができました。

 

レビュー

ジブリ交響作品シリーズ第3弾です。どんなイントロで始まるのかなと楽しみにしていました。CD「天空の城ラピュタ シンフォニー編 大樹」から「プロローグ~出会い」をベースとした導入部になっていました。ほかにも「Gran’ma Dola」などがたっぷり聴けました。

ちょっとわかりやすく解説するのが難しいのです。

1.「交響組曲 天空の城ラピュタ」はストーリーの展開に大枠では即したラピュタ音楽のダイジェスト、いやオールハイライトのような贅沢な音楽構成になっています。

2.オーケストラ+シンセサイザーで編成され本編シーン尺にあわせた「サウンドトラック盤」からではなく、オーケストラ編成で音楽作品として制約なしに成立している「シンフォニー編」をベースにしているパートもあります。

3.2002年北米公開に合わせてリコンポーズ、リオーケストレーションされた「天空の城ラピュタ USAヴァージョン・サウンドトラック」からの楽曲やオーケストレーションがふんだんに盛り込まれています。

この大きな3つの土台があり、久石譲解説に「今回すべてのラピュタに関する楽曲を聴き直し、スコアももう一度見直して、交響組曲にふさわしい楽曲を選んで構成しました。約28分の組曲ができました。」という、巨渦に入り乱れ再構築された大迫力のラピュタの世界が姿を現していました。約28分ですか、あっという間だったな。

さて、話を冒頭に戻すと、どんなイントロからはじまるのか楽しみにしていた本作品。シンフォニー編の「プロローグ~出会い」をベースとしながらも、オープニングのクライマックスはUSA盤が踏襲されていました。どういうことかというと…USA盤では「シータが空から降ってきて飛行石が光るその瞬間」に音楽が盛り上がってバーンッ!といくようにオリジナルサントラ盤にはない数小節のタメが加筆されはさまれていますそのヴァージョンを聴くことができて超感動!86年公開ラピュタは飛行石が光る瞬間と音のピークが数秒ずれていますでも数小節をはさむほどの長い秒数ではないそうUSA盤はそこにいくまでの前半のテンポが微妙に速くなっているそして映像と音楽が見事にシンクロする最高潮へ向かうべく計算しつくされたっぷりためた(rit.)高揚感でもってこのバーンッ!とメロディが解き放たれる(息つぎしていない)…ふうっ、トランペットをフィーチャーしたW.D.O.版のクライマックスもこれが継承されています…そうお祭り状態です。

ストーリーを再現しているパートもあるので、たとえばシータを救出するシーンも、音楽ステージを見ているのか劇場スクリーンを見ているのか錯覚するほどありありと目に浮かぶわけです。そしてオリジナルサントラ盤ではオーケストラ+シンセサイザーとなっていたものが、USA盤をベースにしたフルオーケストラで聴ける、そうお祭り状態です。

USA盤は久石譲が加筆・楽曲追加してオーケストレーションも手を加えたラピュタファンにはたまらないCDです。ですが、指揮が久石譲自らによるものじゃないんです。だからちょっと淡白な印象を持っていた僕としては、シンフォニー編+USA盤が継承されフルシャッフル・パワーアップしたラピュタ完全版、久石譲指揮によってコンサートで聴けること、音源化されるであろうことに、「ここに極まる!」このひと言につきます。

はじめて耳にするオーケストレーションももちろん随所にありました。これはもうスカパー!で確認するまでは全貌を語ることができません(覚えている箇所だけしゃべってこの量か、これは大変なことになる)。

音楽作品として成立した楽曲で構成されているので、純粋にストーリの展開にそった(曲の長さとしての尺度/曲の順番)ものにはなっていません。だから「交響組曲」なんですね。振り返れば「風の谷のナウシカ」は《交響詩 Symphonic Poem》、「もののけ姫」「天空の城ラピュタ」は《交響組曲 Symphonic Suite》、シリーズ開始前でいうと「となりのトトロ」は《オーケストラストーリーズ》、「かぐや姫の物語」は《交響幻想曲 Symphonic Fantasy》などなど。このあたりの作品ごとの立ち位置というか音楽構成のコンセプトについても、いつか久石さんから聞いてみたいですね。

そうです!大切なことを忘れていました!

「君をのせて」が久石譲ピアノでフルコーラス堪能できます。しっとりとしたピアノをオーケストラが優しく寄り添うイメージ。これはもう抜粋してアンコールピースなど聴ける機会をふやしてほしい、そう思ってやまないラピュタの結晶です。そしてクライマックス「天空の城ラピュタ」ダイナミックなオーケストラサウンドへつづいていきます。ここのティンパニもかっこよかった!どっしりと根をおろした大樹。

Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2017」 コンサート・レポート より抜粋)

 

 

2017.11.10 追記

スカパー!放送後レビュー追記。

交響組曲「天空の城ラピュタ」について

ようやくその全貌をつかむきっかけができましたので、しっかり紐解いていきたいと思います。思っていた以上にほぼ映画本編ストーリーに沿ったパート構成になっていました。おそらくコンサートで聴いたときには、あ、この楽曲はイメージアルバムだな、これはUSA盤だな、と頭の記憶が入り乱れていたので、ストーリーに関係なく音楽的に再構成した度合いが強いのかなと思ってしまっていました。

この傾向から「サウンドトラック盤」を基にして、便宜上楽曲パート名もサントラ楽曲名に準ずるかたちで整理しました。そして「サウンドトラック」「シンフォニー編」「USA盤サウンドトラック」のそれぞれどの楽曲にあたるかを挙げ、交響組曲版の音楽構成・オーケストレーションに近いものに下線をしました。

 

 

交響組曲「天空の城ラピュタ」

O:『天空の城ラピュタ サウンドトラック 飛行石の謎』
S:『天空の城ラピュタ シンフォニー編 大樹』
U:『Castle in the Sky ~天空の城ラピュタ・USAヴァージョン・サウンドトラック~』

A. 空から降ってきた少女
O:1.空から降ってきた少女
S:1.プロローグ~出会い ※前半
U:2.The Girl Who Fell from the sky (Main Theme) ※後半

B. 愉快なケンカ(~追跡)
O:3.愉快なケンカ(~追跡)
S:6.大活劇
U:7.A Street Brawl 8.The Chase ※オーケストレーション

C. ゴンドアの思い出
O:4.ゴンドアの思い出
S:4.ゴンドア(母に抱かれて)
U:9.Floating with the Crystal 10. Memories of Gondoa

D. 失意のパズー
O:5.失意のパズー
S:4.ゴンドア(母に抱かれて)
U:12.Disheartened Pazu

E. ロボット兵(復活~救出)
O:6.ロボット兵(復活~救出)
U:13.Robot Soldiers 〜Resurrection – Rescue〜

F. タイガーモス号にて
O:9.タイガーモス号にて
S:2.Gran’ma Dola
U:14.Dola and the Pirates

G. 天空の城ラピュタ
O:12.天空の城ラピュタ ※後半部
S:8.時間(とき)の城
U:18.The Forgotten Robot Soldier

H. 君をのせて
*「サウンドトラック盤」に準ずれば「11.月光の雲海」「13.ラピュタの崩壊 (合唱/杉並児童合唱団)」「14.君をのせて (歌/井上あずみ)」で聴かれるメインテーマ。(USA盤「15. Confessions in the Moonlight」「22. The Destruction of Laputa (Choral Version)」)交響組曲の構成と並べてみたときに、ここは久石譲ピアノをフィーチャーした「君をのせて」交響組曲版スペシャルパート、と、思っています。

I. 天空の城ラピュタ
O:12.天空の城ラピュタ ※前半部
S:5.大いなる伝説
U:23.The Eternal Tree of Life

 

 

2018.5.7 追記

2018年5月開催「JOE HISAISHI IN CONCERT」にて香港初演。その際のコンサート・パンフレットに収められた楽曲解説。

 

Castle in the Sky は1986年に製作された映画で宮崎さんとのコラボレーションは2回目の作品です。プロデューサーは「ナウシカ」に続いて高畑勳氏でした。考えてみれば両巨匠に挟まれて作っていたわけですから、今考えれば大変恐ろしいことです(笑)。

主題歌の「君をのせて」は多くの人々に歌われ、親しまれ作曲者としては嬉しい限りです。31年後の2017年、僕と新日本フィルハーモニーが主催 する World Dream Orchestra のコンサートのために交響組曲として再構成しました。

その際にすべての楽曲を聴き直し、スコアももう一度見直しました。原作の持つ夢への挑戦と冒険活劇的な要素を活かしたとても楽しい約28分の組曲ができました。

曲目解説:久石 譲

(JOE HISAISHI IN CONCERT コンサート・パンフレット より)

 

 

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