Disc. 久石譲 『NHKスペシャルドラマ 坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック 3 』

久石譲 『坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック 3 』

2011年11月9日 CD発売 TOCT-28020

 

司馬遼太郎の長編小説を原作とするスペシャルドラマ「坂の上の雲」。日本のテレビ史上これまでにないスケールを目指しNHKが総力を挙げて取り組んできたスペシャルドラマである。音楽を手掛けるのは日本を代表するコンポーザー久石譲。

本作は「ドラマ第3部」のために録音された新曲と「ドラマ第1部・第2部」使用曲より第1弾・第2弾サントラ未収録曲をまとめて一挙収録した豪華盤。視聴者の皆様から人気の高い「Stand Alone」の新ヴァージョンも収録。

壮大なスケール感。希望に満ちた旋律。坂の上の雲に向かってひたすらに歩み続けた明治人の世界が鮮やかによみがえるオリジナル・サウンドトラック。

(メーカーインフォメーションより)

 

 

寄稿

曲が自分を追い越していきました。

身体を通過して、物語を通過して、知らないうちに久石さんの音楽が物語の高揚感とか、もしくは後味みたいなものを先導している形になっていました。

一言でいえば頼もしいというか、守られているというか。ドラマの撮影中「Stand Alone」にそんな不思議な力を感じていました。

本木雅弘

(NHK BS「ザ☆スター」インタビューより談話抜粋・一部加筆修正)

(CDライナーノーツより)

 

 

久石譲さんのマジック

スペシャルドラマ「坂の上の雲」第3部は戦争を描いている。映像では砲煙が立ち込め、激しく土煙が舞い上がる。銃口からは火花が散り、何隻もの軍艦が波しぶきを立てながらターンしてゆく。戦争の映像を作るために、制作現場も戦争のようになっている。最新の映像合成技術は凄まじく、リアルな戦場の映像を作り出してゆく。しかしドラマ制作の手間が減った訳ではない。コンピューターのキーを叩けば映像が生み出されるものではなく、結局は手作業だ。多くのスタッフが精魂込めて作業している。職人仕事の積み重ねで映像ができてゆく。この10年間で、撮影から放送にいたるドラマの制作環境はデジタルへと変わったが、やることは変わらない。デジタルを使ったアナログな作業だ。議論と試行と失敗とを積み重ね、現場から番組が生まれる。

音楽も同じであると思う。久石譲さんとわれわれスタッフが議論を積み重ね、できるだけ音楽イメージを共有しようとする。音楽という言葉にならないものについて話し合っている現場は、傍からはかなり滑稽に見えるかもしれない。しかし、音楽が生まれる端緒はそういう現場である。

議論の場における、われわれのある種滑稽な言葉と未完成の映像が、久石さんのもとに残される。そこからは久石さんの作曲家としての孤独な作業だ。ドラマは大勢のスタッフと出演者の共同作業によって作られるが、その中でも孤独な仕事を強いられるのが脚本家と作曲家である。しかし、その孤独な仕事から生み出されるものは素晴らしい。脚本家の原稿の一行が迫真の映像となり、作曲家のスコアは大編成のオーケストラが奏でる美しい音響となる。

第3部の音楽では、ひとつだけわがままを言った。メインテーマである「Stand Alone」を麻衣さんに歌ってほしいということである。麻衣さんは久石さんの娘さんで、3年前に「Stand Alone」のデモを聴いたときに歌っていたのが麻衣さんだった。そのときの鮮烈な印象が忘れられず、是非にとお願いした。

新しい「Stand Alone」を聴いたとき、「鎮魂の祈り」と「未来への希望」という言葉が浮かんだ。このドラマの締め括りにふさわしい音楽になった。ひとつの曲がドラマの各部ごとに変貌を遂げたというだけでなく、この3年間の社会の変化を敏感に反映しているように感じる。久石さんのマジックである。

2011年9月

NHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」
チーフ・プロデューサー 藤澤浩一

(CDライナーノーツより)

 

 

この「オリジナル・サウンドトラック 3 」は第3部新録音楽曲となる(1)~(13)と、第1部未収録楽曲となる(14)~(16)、第2部未収録楽曲となる(19)~(21)に、ボーナス・トラックの(20) (21)で構成されている。

(20)は「オリジナル・サウンドトラック 1」(以下 サントラ1)「オリジナル・サウンドトラック2」(以下 サントラ2)にも収録されている。

主題歌でありメインテーマの『Stand Alone』は、「サントラ1」「サントラ2」の既発6ヴァージョンとは別に、(16)にて、クラリネットとグロッケンシュピールによる温かい優しいメロディーになっている。

第3部で主題歌を歌っているのは、麻衣(13)。オーケストレーションも「サントラ1」「サントラ2」から変更されていて、新ヴァージョンに。混声合唱も入り、より透明感のある1曲となっている。

第3部の新録音楽曲からは、(1)は「サントラ1」の『(10)激動』とメインテーマ『Stand Alone』をモチーフにした序章、(2)は「サントラ1」の『(2)時代の風』をモチーフにするなど、第1-2部の流れをくみながらも、第3部はまさに戦争が描かれているだけあって、(6) (8) (11)は鳥肌が立つほどの勇壮な楽曲になっている。

第1部の未収録楽曲からは、「サントラ1」の『(3)旅立ち』をモチーフに、よりやさしい響きになっている(15)や、第2部の未収録楽曲からは、本編でも印象的に使用されていた(19)などが新たに加わっている。

そしてほんとにボーナスな1曲に仕上がっているのが、ボーナス・トラックの(21)。11分半にも及ぶ大曲となっていて、曲名からもわかるように、「坂の上の雲」の世界を凝縮した組曲『Saka No Ue No Kumo』。メインテーマ『Stand Alone』を軸に、核となる数曲を織り交ぜた一大叙情詩となっている。

 

 

 

久石譲 『坂の上の雲 オリジナル・サウンドトラック 3 』

第3部:新録音楽曲より
1. 第三部 序章
2. 孤影悄然
3. 大地と命と
4. 煉獄と浄罪
5. 二人の将
6. 絶望の砦 ~二〇三高地二起ツ~
7. 海と命と
8. 天気晴朗ナレドモ波高シ
9. AIR
10. 運命の死地
11. 日本海海戦
12. 終曲
13. Stand Alone / 久石譲×麻衣
第1部:未収録楽曲より
14. 少年の国 III
15. 夢
16. Stand Alone for Clarinet & Glockenspiel
第2部:未収録楽曲より
17. 大英帝国のテーマ
18. 獣たちの宴
19. 赤い花
ボーナス・トラック
20. Stand Alone with Piano / サラ・ブライトマン×久石譲
21. Saka No Ue No Kumo

音楽/久石譲
指揮/外山雄三 演奏/NHK交響楽団 (M11,M13,M21)
指揮/久石譲 演奏/東京ニューシティ管弦楽団

All Music Composed and Produced by 久石譲

Piano by 久石譲
Vocal by 麻衣 (M9,M13)
Chorus by 栗友会合唱団 (M13,M18)

Orchestrated by 山下康介 宮野幸子 久石譲

Recorded at NHK CR-506, CR-509 (M11,M13,M21) Nemo Studios (M20)
Mixed at NHK CP-604, CR-506

 

Disc. 久石譲 『The Best of Cinema Music』

久石譲 『THE BEST OF CINEMA MUSIC』

2011年9月7日 CD発売 UMCK-1404

 

2011年6月9日東京国際フォーラムにて開催された「久石譲 3.11 東日本大震災チャリティー・コンサート」を収録したライブ音源。スタジオジブリ作品、北野武監督作品など自作の映画楽曲を中心に演奏。舞台上に大スクリーンを設置し、映像と音楽によって作品世界を演出。スクリーンに映し出される名場面とオーケストラによるテーマ曲たちの競演。

 

 

もう今は夢を語るときではない
- 東日本大震災に寄せて -

久石譲

(CDライナーノーツ および コンサート・パンフレット 同掲載)

 

 

”ぼくたちのストーリー”を語り始めた久石さんの音楽

「オーケストラは社会の鏡(An orchestra is a reflection of society)」という言葉がある。オーケストラは弦楽器、管楽器、打楽器など、個性溢れるさまざまな楽器が集まり、共に手を携え、ひとつのハーモニー(調和)を生み出していく。では、オーケストラの楽器が欠けたらどうするか? 例えば、オーケストラが海外公演をする際、手荷物の不着なので楽器が届かなかった場合には、現地のオーケストラが手を差し伸べ、楽器を貸し出すのが普通である。ぼくたちが生きる現実社会についても、同じことがあてはまる。今回の東日本大震災において、”日本という名のオーケストラ”は本当に多くの支援-あたたかいメッセージや義援金など-を世界中から受け取った。だから、震災で楽器を失った子供たちのために、久石さんが楽器購入支援のチャリティーコンサートをオーケストラと共に(ここが重要だ。その気になれば、ピアノ一台でもチャリティーコンサートは出来るのだから)開催するというニュースを知った時、映画音楽とクラシックの演奏活動を通じてオーケストラと日常的に接している久石さんならではの、とても素晴しいアイディアだと思った。子供たちに再び楽器を与えることは、音楽の喜びを取り戻すだけでなく、アンサンブルをすることの大切さを通じて-それがバンドであれ、吹奏楽であれ、オーケストラであれ-子供たちが社会というものを意識していく、強力な手段のひとつとなるからだ。

しかも久石さんは、今回のコンサートを単なる”自選ベスト”にはしなかった。3年前の武道館コンサートの時のように、舞台上に大スクリーンを設置し、映画と音楽が生み出す相乗効果-それこそが映画音楽の真の醍醐味である-を生の形で再現しようとしたのだ。幸運にもぼくは6月9日の東京公演を見ることができたが、『風の谷のナウシカ』~《風の伝説》のティンパニの強打で始まった約2時間のコンサートは、とても感慨深く、また新鮮な驚きに満ち溢れていた。映像付きの再演は困難と思われていた『THE GENERAL(キートンの大列車強盗)』の優雅なワルツが、白塗りのキートンの無表情と共に再び聴けたのは望外の喜びだったし、『Let the Bullets Fly(譲子弾飛)』の勇壮なマーチが、ダイナミックな銃撃戦の映像と共に演奏されるのを聴けば、一刻も早く本編を見たくなるのが人情というものである。

だが、コンサートはそれだけでは終わらなかった。

驚くべきことに、久石さんが指揮する音楽と、スクリーンに映し出された名場面の数々は、単に映画音楽の魅力と楽しさを伝えるだけでなく、映画の本編とは別の”もうひとつのストーリー”を語り始めたのである。

『風の谷のナウシカ』-暴走する王蟲の大群に呑みこまれたナウシカと、彼女に再生の力を与える《遠い日々》の清らかなコーラス。

『もののけ姫』-技術のために森を切り崩した傲慢な人間に襲いかかる、《タタリ神》の凶暴な和太鼓とホルンの咆哮。

『菊次郎の夏』-健気に生きていく天涯孤独の少年を温かく見守る、《Summer》の軽やかなピアノのメロディ。

『Brother』-閉塞した現状の中で怒りを爆発させるような、《Raging Men》の荒々しいパーカッション。

『Kids Return』-「俺たち、もう終わっちゃったのかなあ」「馬鹿野郎、まだ始まっちゃいねえよ」というラストのセリフと共に始まる、躍動感溢れるミニマルビート……。

そう、このコンサートで演奏された曲たちは、震災を体験した”ぼくたちのストーリー”を語り始めていたのだ。社会の鏡たるオーケストラが、映画という鏡を通じて”今ここにある現実”を映し始めたのである。

そのことに気づいた瞬間、ぼくはとてつもなく大きな衝撃を受けた。これまで30年近くに渡ってリアルタイムで親しみ、熟知してきたはずの久石さんの映画音楽が、全く違って聴こえ始めたからだ。「音楽は、あらゆる哲学や知識よりも高度な啓示である」とはベートーヴェンの言葉だが、この日演奏された曲たちは”今ここにある現実”を改めて目の前に突きつけたという点で、まさにひとつの啓示だった。ある人はそれを「既視感」と呼ぶかもしれないし、別の人はそれを「現実とのシンクロ」と表現するかもしれない。いずれにせよ、久石さんの指揮する音楽とスクリーン上に映し出された映像は、エンタテインメントという名の現実逃避から遠く離れ、”日本という名のオーケストラ”が置かれた現状を、ぼくたちに必死に認識させようとしていた。

コンサートの終わり近く、久石さんはソプラノの林正子さんと共に『悪人』~《Your Story》を演奏し、久石さんが被災地で撮影してきた生々しい写真をスクリーン上に映し出した。

What we both long a place, sweet home
If I could un-wine the time and stay with you
僕たちが求めるもの、それは安らげる安堵の場
もっと側にいたい、時計の針を戻せるのなら

この歌詞が歌われた瞬間、《Your Story》は映画音楽という枠を越え、”ぼくたちのストーリー”と完全に同化した。その場に居合わせた聴衆のすべてが、《Your Story》に込められた痛切な想いを”My Story”として受け止めたのである。おそらく、ポーランドでも大阪でもパリでも北京でも、聴衆の気持ちは同じだったはずだ。

でも、久石さんは、震災の悲劇を嘆き悲しむだけでコンサートを終わらせなかった、「ともに生きること」の大切さを高らかに歌い上げた『もののけ姫』~《アシタカとサン》のコーラス。土の中から芽を出したドングリの大樹そのままに、明るく壮大な響きを奏でた『となりのトトロ』のオーケストラ。ぼくにはそれが、これから”日本という名のオーケストラ”が鳴らしていくべき”復興のシンフォニー”の序奏のように思えてならなかった。

ぼくは、このコンサートを一生忘れないだろう。

前島秀国(サウンド&ヴィジュアル・ライター)

(CDライナーノーツより)

 

 

本作はライブ音源なので、スタジオ録音されたもの、本作の楽曲構成に近い過去参考CD/DVDを中心に解説。

(1) NAUSICAÄ (映画『風の谷のナウシカ』より)
オープニング「風の伝説」~レクイエム~メーヴェとコルベットの戦い~遠い日々~鳥の人
約10分に及ぶ壮大な組曲。「久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~」(DVD&Blu-ray)と同構成。ライブ映像音源。「WORKS I」17分にも及ぶ交響詩全3部として収録。本作はここからのダイジェスト版に相当する。

(2) Princess Mononoke (映画『もののけ姫』より)
アシタカせっき~タタリ神~もののけ姫(Vo:林正子)
約8分に及ぶ組曲。本作では主題歌『もののけ姫』が英語歌詞になっている。「久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~」(DVD&Blu-lay)と同構成。ライブ映像音源。日本語歌詞。「真夏の夜の悪夢」同構成ライブ音源。主題歌『もののけ姫』はオーケストラ・インストゥルメンル。「交響組曲 もののけ姫」メドレーとなった3曲の各々オーケストラスコアをチェコ・フィルの演奏にて。「WORKS II ~Orchestra Nights~」「交響組曲 もののけ姫」の同構成各曲ライブ音源。

(3) THE GENERAL (映画『THE GENERAL(キートンの大列車追跡)』より)
「WORKS III」Movement1~Movement5 として組曲で構成。本作ではメインテーマを中心に抜粋。

(4) Raging Men (映画『Brother』より)
「WORLD DREAMS」新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラの演奏。「SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001」同構成ライブ音源。

(5) HANA-BI (映画『HANA-BI』より)
「WORKS II ~Orchestra Nights~」同構成ライブ音源。「WORLD DREAMS」ピアノが編成から外れた違った表情豊かなフルオーケストラ。

(6) Kids Return (映画『Kids Return』より)
「SUPER ORCHESTRA NIGHT 2001」同構成ライブ音源。

(7) Let The Bullets Fly (映画『譲子弾飛』より)
初フルオーケストラ。

(8) Howl’s Moving Castle (映画『ハウルの動く城』より)
Symphonic Variation 「Merry-go-round」~Cave of Mind
約11分に及ぶ組曲。「久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~」(DVD&Blu-lay)と同構成。ライブ映像音源。「WORKS III」原型となる約14分の組曲を新日本フィルの演奏にて。

(9) One Summer’s Day (映画『千と千尋の神隠し』より)
「メロディフォニー」ロンドン交響楽団の演奏。「久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~」(DVD&Blu-lay) 平原綾香(Vo) 本作と「メロディフォニー」では、ピアノをメインにしたしっとりと聴かせるオーケストラ・アレンジ。

(10) Summer (映画『菊次郎の夏』より)
「メロディフォニー」ロンドン交響楽団の演奏。「空想美術館」ライブ音源。

(11) Villain (映画『悪人』より)
初フルオーケストラ。約11分に及ぶ組曲、映画のストーリー展開に沿って構成。クライマックスの主題歌『Your Story』ヴォーカルはソプラノ歌手:林正子。「悪人 オリジナル・サウンドトラック」では福原美穂がヴォーカル担当。

(12) Ashitaka and San (映画『もののけ姫』より)
本作でも日本語歌詞合唱。「久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~」(DVD&Blu-lay)と同構成。ライブ映像音源。「交響組曲 もののけ姫」「WORKS II ~Orchestra Nights~」 (2)同様参照。

(13) My Neighbour TOTORO (映画『となりのトトロ』より)
本作では主題歌『となりのトトロ』のみを英語歌詞合唱。

「久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~」(DVD&Blu-lay)風のとおり道~さんぽ withコーラス~となりのトトロ withコーラス メドレー。こちらではもちろん『さんぽ』『となりのトトロ』日本語歌詞合唱。

「オーケストラストーリーズ となりのトトロ」映画『となりのトトロ』のすべての楽曲をオーケストラアレンジした作品。『風のとおり道』もフルオーケストラにて聴くことができる。オープニング/エンディング曲『さんぽ』『となりのトトロ』はオーケストラ・インストゥルメンタル。『さんぽ』においては、オーケストラの楽器紹介をかねた構成になっていて1番を木管楽器、2番を金管楽器、3番を弦楽器、4番を弦楽器、そして最後に全員フルオーケストラで、という趣向のある1曲になっている。

「メロディフォニー」主題歌『となりのトトロ』のみをロンドン交響楽団による演奏にて。コーラスなしのオーケストラ・インストゥルメンタル。(「オーケストラストーリーズ となりのトトロ」収録同曲と同構成)

 

このチャリティーコンサートは、東京・大阪・パリ・北京にて公演されている。プログラムはほぼ同じと思うが、本作に収録されていない楽曲ももちろんある。

そのなかでも映画『崖の上のポニョ』からの組曲『Ponyo on the Cliff by the Sea』。本作に収録されたジブリ作品は、「久石譲 in 武道館 ~宮崎アニメと共に歩んだ25年間~」(DVD&Blu-lay)でのそれに近いが、組曲『Ponyo on the Cliff by the Sea』においてはかなり変更、進化している。組曲となる曲目構成も変更されていて、より緻密でダイナミクスなオーケストレーションになっている。クライマックスを飾る主題歌『崖の上のポニョ』もオーケストラがメロディーを奏でていて、サビは英語歌詞のコーラスにて大合唱となっている。収録されなかったのが非常に残念、ぜひ別の機会にでもCD/DVD化してほしい。

このチャリティーコンサート公演と本作CDの収益は東日本大震災で楽器を失った子供たちのために寄付されている。

 

 

 

 

なお、CD帯裏にはこのような記載がありCD発売当時Web閲覧することができた。

「久石譲3.11 チャリティーコンサート」で上映した久石譲監修による東日本大震災へ寄せたメッセージ映像の一部を期間限定特設サイトで公開しております。詳細は商品にてご確認下さい。

 

 

 

久石譲 『THE BEST OF CINEMA MUSIC』

1.NAUSICAÄ (映画『風の谷のナウシカ』より)
2.Princess Mononoke (映画『もののけ姫』より)
3.THE GENERAL (映画『THE GENERAL(キートンの大列車追跡)』より)
4.Raging Men (映画『Brother』より)
5.HANA-BI (映画『HANA-BI』より)
6.Kids Return (映画『Kids Return』より)
7.Let The Bullets Fly (映画『譲子弾飛』より)
8.Howl’s Moving Castle (映画『ハウルの動く城』より)
9.One Summer’s Day (映画『千と千尋の神隠し』より)
10.Summer (映画『菊次郎の夏』より)
11.Villain (映画『悪人』より)
12.Ashitaka and San (映画『もののけ姫』より)
13.My Neighbour TOTORO (映画『となりのトトロ』より)

All Music Composed, Conducted & Produced by Joe Hisaishi
Piano by Joe Hisaishi

Orchestra:Tokyo New City Orchestra , Kansai Philharmonic Orchestra
Soprano:Masako Hayashi 2. 11.

Recorded at
Tokyo International Forum Hall A (June 9, 2011)
Osaka-jo Hall (June 18, 2011)

 

Disc. 久石譲 『JOE HISAISHI CLASSICS 4 』

JOE HISAISHI CLASSICS vol.4

2011年9月7日 CD発売 WRCT-2004

 

「久石譲 クラシックス・シリーズ」第4弾

生命のリズム、あふれるエネルギー、今ここに「運命」の扉が開かれる!

 

 

久石さんが指揮したベートーヴェンと藤澤守作品について

2011年2月11日、ある演奏会で偶然姿をお見かけした久石さんから、のちに《5th Dimension》と名付けられることになる新作の構想を伺った。「久石譲 Classics Vol.3」に《運命》がプログラミングされていることから、おそらく《運命》のリズム構造を土台にした作品になるだろう、というお話に僕はとても興奮し、4月の世界初演を心待ちにしていた。そのちょうど1ヶ月後、東日本大震災が日本を襲った──。

そして4月9日、久石さんは予定通り演奏会を開催し、《5th Dimension》とベートーヴェンの交響曲を指揮した。いつまた起こるやも知れぬ余震の恐怖。計画停電と節電と原発事故を口実に、文字通り灯火管制を敷いたように演奏会をキャンセルし続ける首都圏の音楽界。そうした異様の状況下でも──いや、そういう状況だからこそ──音楽家は音楽家としての責務を果たすべき、というのが久石さんの考えだった。その強い意志は、ベートーヴェンの書いた絶対音楽(Absolute Music)の楽譜の能う限り忠実たらんとした、久石さんの指揮にも色濃く反映している。

絶対音楽とは、久石さんが普段手がけているエンタテインメント音楽と異なり、ある特定のドラマや情景を標題的に表現したものではない。音楽の論理そのものに美を求め、価値を見出す音楽である。その論理とは、本盤に収められたベートーヴェンの交響曲の場合、粘り強く繰り返されていくリズムの集積体だ。《運命》の全曲にちりばめられた「ンタタタ・ター」の運命リズム。あるいは《第7番》第1楽章に聴かれる、「タータタ・タータタ」の付点リズム。それらひとつひとつの”小石”がコツコツと積み上げられた結果、最終的に築き上げられる大伽藍が、すなわちベートーヴェンの絶対音楽なのである。久石さんは、そのリズムの”小石”をどれひとつも疎かにせず、また、積み重ねの過程から注意を逸らすような恣意的なテンポ設定をとることもなく、忍耐強く丁寧に鳴らしていく。当然だろう。久石さんが長年手がけてきたミニマル・ミュージックは、何にも増してリズムの反復を大切に扱い、そこから生まれる”生命”の萌芽をムクワジュ(タマリンド)の大樹にまで育て上げていく音楽である。その成長の過程を、久石さんはベートーヴェンの絶対音楽の論理の中にも見出しているのだ。繰り返すが、絶対音楽は何か特定の事象や感情を具体的に表現したものではない。しかし、久石さんはベートーヴェンの絶対音楽の論理に徹底的にこだわることで、これからの復興における日本人の”精神”の在り方までも示唆し得るということを、逆説的に表現したのである。

その久石さんが本名の藤澤守名義で作曲した絶対音楽《5th Dimension》は、これまで久石さんが書いたミニマル・ミュージックを遥かに凌ぐ凝縮度をもって書かれた作品だった。かつてシェーンベルクがウェーベルンを評した言葉「このような集中力は、むやみに愚痴を口にしないような精神においてのみ、見出し得る」を彷彿とさせる凝縮度。その凝縮度こそが、実はベートーヴェンが「ンタタタ・ター」のリズムに仮託した《運命》の”精神”に他ならないのだ。

前島秀国(サウンド&ヴィジュアル・ライター)

(CDライナーノーツより)

 

 

藤澤守/フィフスディメンション

今回の”久石譲 Classics Vol.3”でベートーヴェンを演奏することが決まり、ここで発表する新曲は何にしようかと考えたとき、やはりベートーヴェンをベースにしたミニマル曲にしようと思った。

つい先日、知人からジョン・アダムズという僕と同じミニマルのスタイルで管弦楽曲もたくさん書いているアメリカの作曲家がベートーヴェンをモチーフにした新作を発表すると聞いてすごく驚いた。時代の先端にいる世界を代表する作曲家が偶然にも同じ題材のミニマル作品を作ろうとしていたことがとても嬉しかった反面、とてつもなく大きなプレシャーにもなった。これは相当頑張らないといけないぞ、と。

僕はまず、ベートーヴェンの作品は非常にシステマティックに作られているので、ロマン派の情緒的なものや情景描写といった感性の部分よりもその構築性を題材にすることを最初のアイデアとした。しかし、何かのフレーズを選んでミニマル的に展開していくというにはあまりに個性が強過ぎる。なかなかアイデアと現実を一致させることが出来ずにいたのですが、それでもやはり自分の中で圧倒的にインパクトがあったのは、あまりにも有名過ぎるあの「運命」だったので、これを題材にしようと決心した。

次に、第5番の「5」という数字をキーワードに、全体を5つのパートに分けた5部構成にしようと。そこから試行錯誤を繰り返し、スケッチを書き足していく中で、コラージュの手法を用いながら、この曲の持つリズム、調性、音列の3つの要素を使うことを考えた。ところが、これらがなかなか有機的に結合しない。一体何が出来上がるのか全く予想がつかなかったけど、結果的にそれらを成立させたのは他でもない、あの「運命」のリズムだった。

それから、ベートーヴェンにはものすごく強力な構成美がある反面、非常に強いエモーショナルな部分があるということ。感情だけに流されるでもなく、論理的な理性の構造だけでもない。そこが成り立っているという次元がベートーヴェンの凄まじいところで、人間が破壊されてしまうかもしれないギリギリのところで作っている。自分にとっても、エモーショナルな部分と論理性をどれ程までに高く激しいレベルでぶつけ合えるかがテーマになった。そういったせめぎ合いをしながら作曲している最中に今回の震災があったので、それはやはり大きく影響している。より感情的になっているというか、論理性の部分はもう破たんしてもいいのではないかというまでに。音が持っているエネルギーや運動性といった瞬間的にその曲が要求していく自然な方向へ自分も一緒に行ってしまおうと思ったわけである。

あと、現代の交響楽曲における打楽器、特に僕の場合はミニマル的要素となるハープ、グロッケン、マリンバ、チェレスタといった辺りは欠かせないんだけど、今回はベートーヴェンの編成に準じるということで打楽器・鍵盤楽器類は一切使わず、なんとティンパニだけ。参った! という感じで、この禁じ手は堪えましたね。一番の得意技を使えないってことだから。

名義を本名の藤澤守にした理由は、作品を書く時にどうしても久石譲としてエンタテインメント音楽を作っていることを引きずってしまう、だから今回はそれをはっきりと「違う」と。もちろん同じ一人の人間だから別人格になるわけじゃないけど、聴いてくれる人を大事にし過ぎて言いたいことを言い切れなかった分、藤澤守でやるからにはまず作品をどう作るかということに集中し、そこに音楽がるならその音楽が求めることをきちんと形にしていこうという、自分の中での区切りとして。

結果的には、今まで作ってきた中で一番激しい作品になったのではないかと思う。出来上がったばかりでまだ音を出してみないとわからないけれど、とにかくチャレンジした。エンディングにかけて作り込んでいったところはやはり今の状況ととてもリンクしている気がするのでその辺りを聴いていただきたいし、もしかしたら半分以上の観客が受け入れないかもしれない、という覚悟もある。それでも今この時期だから、自分のフィルターを通して発信された音を作曲家として真摯に受け止め、自分に嘘がないように作ったのは事実、かな。

2011年4月 久石譲 談

(CDライナーノーツより)

 

 

【楽曲解説】

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン/交響曲第5番 ハ短調 作品67 《運命》

実は、交響曲第5番が休符で始まることはご存知だろうか。強拍(頭)におかれた休符で瞬時に溜められたエネルギーが、3音の連打と3度の下行ではじけるように解放される。いきなりユニゾンで「ンタタタター、ンタタタター」とくる衝撃的な開始はあまりにも有名だが、このような不安定な始まり方はまだ当時の常識にはなかった。まとまった旋律ではなく断片的な動機が提示され、その「運命動機」は第1楽章内だけで何百回も徹底的に使われ、さらには全楽章において重要なファクターとして用いられる。結果、交響曲は初めて全楽章を有機的に統合することに成功したのである。交響曲様式史上の一大転換点となる革新とも言えよう。

作品の愛称「運命」は、晩年の秘書アントン・シンドラーのベートーヴェン伝に由来する。ベートーヴェンは曲の冒頭について、「斯くの如く運命は戸をたたく」と彼に説明したというのである。一般にシンドラーの記述はそのまま信頼することはできないのだが、これほどまでに広く受け入れられてきた逸話も稀だろう。ただし、日本以外ではそれほど当たり前に「運命」とは呼ばれていない。

1804年頃よりスケッチを開始。1808年12月22日、アン・デア・ヴィーン劇場で行われたベートーヴェン演奏会にて、作曲家自身の指揮により「第6番」として演奏された。

第1楽章 アレグロ・コン・ブリオ(速く活発に)ハ短調 2/4拍子 ソナタ形式
交響曲主題としては前代未聞の動機によって開始される。この動機が直接間接的に後続楽章にも用いられる。第2主題部は古典的な定石通りの平行長調をとるが、この主題部の引き金になっているのも「運命動機」である。

第2楽章 アンダンテ・コン・モート(動きをつけて歩くような速さで)変イ長調 3/8拍子
アダージョではなく動きのあるアンダンテを設定しているのは、この楽章が歌謡三部形式による抒情楽章ではなく、変奏技法によって展開されるソナタ形式をとっているからでもあろう。低弦部に「運命動機」のリズム・ヴァリアンテが置かれている。

第3楽章 アレグロ(快速に、急速に)ハ短調 3/4拍子
終楽章への移行楽段を末尾に備えた複合三部形式によるスケルツォ楽章となっている。チェロとコントラバスの独立的な楽器用法がひとつの理想的頂点に達している。また、4楽章へ接続する長大なクレッシェンドも当時としては異例な用法であった。「運命動機」が楽章を通していたる所に聴かれる。

第4楽章 アレグロ(快速に、急速に)ハ長調 4/4拍子
確かに勝利を示すかのような力強く明るい行進曲調の主題呈示に始まる。ピッコロ、コントラファゴット、トロンボーンがこの楽章の中で初めて登場してくる。伝統的な交響曲において珍しい楽器の参入は、フランス革命音楽(軍楽、救出オペラ)からの影響も考えられる。これらの楽器は交響曲ではこの作品が初めてではないが、この作品をきっかけとして、19世紀の交響曲で頻繁に使われるようになった。最も古い楽器の一つであるトロンボーンは古典派時代までは専ら教会所属の神聖な楽器として宗教音楽そして例外的に劇音楽だけに使われていたが、ベートーヴェンは大胆にもこの楽器を世俗音楽である交響曲の中に用いたのである。

 

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン/交響曲第7番 イ長調 作品92

第5番・第6番の完成からベートーヴェンが次の交響曲を完成させるまでに4年ほど経っている。ナポレオン率いるフランス軍の第二次ウィーン占領などの影響も考えられるが、1800年に第1番を完成させて以来ほとんど毎年のように交響曲の創作を続けてきたベートーヴェンが、1809年と1810年の2年間はスケッチさえも書かず全くの空白期を迎えていた。しかし、創造力が枯渇したのではなく、新しい語法の可能性について模索していたのである。

短い動機を展開して全曲を有機的に統合するという手法を極めたベートーヴェンは、もう一度「旋律性」を見直し、主題をある程度まとまったカンタービレな旋律形として維持することを試みる。一方で、交響曲としての力動性や構築性そして何よりも重要な緊張感を得るため「リズム動機法」を用いた。この楽曲は、ワーグナーが「舞踏のアポテオーゼ(神格化)」と評したように、全曲にわたってリズムが主要要素で、緩徐楽章さえも比較的テンポが速くリズミカルであり、楽章ごとに特徴ある魅力的なリズムで構成されている。

献呈はフリース伯に。また、ピアノ独奏用編曲がロシア皇后に捧げられている。初演は1813年12月8日にハーナウ戦役に従軍した傷病兵のための義援金調達慈善演奏会という名目でウィーン大学講堂にて行われた。

第1楽章 ポコ・ソステヌート(やや音を保って)4/4拍子~ヴィヴァーチェ(活発に速く)イ長調 6/8拍子
序奏付きのソナタ形式。序奏の終盤からヴィヴァーチェ6/8拍子のリズム動機を暗示的に示し、木管楽器が反復するリズム動機の中からフルートのソロによって第1主題が抜け出してくる。繰り返し反復される付点のリズム動機が、楽章内を通して支配する。

第2楽章 アレグレット(やや速く)イ短調 2/4拍子
大きな複合三部形式。変奏曲やフガートの技法なども加えられている。美しく和声的な第1主題も、葬送風の行進曲リズムの反復により構築されている。中間部はイ長調に転調。その性格は明るくなるも、低弦などによってリズム動機の断片は持続され、そのまま再現部に継続される。

第3楽章 プレスト-アッサイ・メノ・プレスト(急速に-より急速に)ヘ長調 3/4拍子
律動的で快活なスケルツォと、アッサイ・メノ・プレスト(ニ長調3/4拍子)のトリオを持つ。トリオはオーストリアに伝わる巡礼歌からの引用という。トリオは2度現れ、A-B-A-B-Aのロンド形式に近い。このトリオをニ短調で書くことによって、主調イ長調終楽章への伏線を作っている。

第4楽章 アレグロ・コン・ブリオ(快活に速く)イ長調 2/4拍子
熱狂的なフィナーレ。強烈なリズム打撃による導入を受けて、アイルランド民謡から採られたという第1主題が呈示される。ロンド的性格を持つソナタ形式。コーダ部ではバス・オスティナート上に凄絶なまでの緊迫感が築かれ、やはり冒頭で呈示したリズム動機で饗宴を締めくくる。

(楽曲解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

 

2014年、台湾コンサートにて改訂初演された。

「自作の《フィフス・ディメンション》は、ベートーヴェンの《運命》のリズム動機(有名なダダダダー)と音程を音列化し、ミニマル楽曲として作ろうとしたのだが、作曲していた最中に東日本大震災がおこり、それが影響したのか激しい不協和音とエモーショナルなリズムに満ちていて演奏がとても難しい。今回はさらに手を加えてより完成度を上げたのだが、難易度も計り知れないほど上がった。指揮していた僕が「この作曲家だけはやりたくない!」と何度も思った、本当に。」

 

 

 

(1)は、久石譲が本名の藤澤守名義で作曲した「5th  Dimension」。ベートーヴェンの第5番『運命』をベースに11分に及ぶミニマル・ミュージックを展開。エンターテイメント音楽の久石譲とは一線を画し、求められる音楽ではなく、純粋な作曲家として、絶対音楽・現代音楽を発表するかたちでの本名名義。

その作曲中であった2011年3月11日に東日本大震災が日本を襲い、それでもなお同年4月9日の演奏会にて世界初演。震災が大きく作品に影響しているとも本人は語っている。

 

 

 

JOE HISAISHI CLASSICS vol.4

Mamoru Fujisawa 5th Dimension
1. 藤澤守 / フィフス ディメンション
Beethoven Symphony No.5 in C minor Op.67
ベートーヴェン / 交響曲第5番 ハ短調 作品67 「運命」
2. I.ALLEGRO CON BRIO
3. II.ANDANTE CON MOTO
4. III.ALLEGRO
5. IV.ALLEGRO
Beethoven Symphony No.7 in A major Op.92
ベートーヴェン / 交響曲第7番 イ長調 作品92
6. I.POCO SOSTENUTO -VIVACE
7. II.ALLEGRETTO
8. III.PRESTO- ASSAI MENO PRESTO
9. IV.ALLEGRO CON BRIO

指揮:久石譲
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
録音:2011年4月9日 東京・サントリーホール

 

Disc. 久石譲 『交響曲 第1番 (第1楽章)』 *Unreleased

2011年9月7日 世界初演

 

「久石譲 Classics vol.4」コンサートにて世界初演された。久石譲(藤澤守名義)による現代音楽の交響曲第1番。第1楽章のみの未完作品となっている。

同公演前の久石譲曰く、「当初、全3楽章20-25分ほどの曲を考えていたが、第3楽章のスケッチに入った途端、第4楽章まで必要と感じ」時間的なこともあり、第1楽章のみの初演となった。

 

冒頭からミニマル要素を取り入れた変拍子の第1楽章。パッカーションも鳴り響く大編成の楽曲。メロディーや旋律を聴かせるモティーフよりも、実験的要素を盛り込んだ前衛的な作品。

交響曲 第1番 第1楽章は、コンサート1回のみの演奏。また全楽章は未完である。さらに全楽章完成後、この第1楽章も書き直される予定から、コンサートでのこの演奏は最初で最後の演奏となっている。

 

藤澤守名義では、さきに「久石譲 Classics vo.3」でも披露された「5th Dimension」という作品がある。ベートーヴェンの第5番『運命』をベースに11分に及ぶミニマル・ミュージックが展開される現代音楽である。それ以降、もしくは同時期に書かれたであろう交響曲第1番は、これもまた同じく東日本大震災後、3.11の影響を色濃く受けた作品であろう。「Fifth Dimension」は、『JOE HISAISHI CLASSICS 4』CD作品に収録されている。

 

 

 

2016.7. 追記

2016年7月29日「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2016」にて、「THE EAST LAND SYMPHONY」という作品に発展する。すでに発表していた「交響曲第1番第1楽章」が、大作「THE EAST LAND SYMPHONY」の第1楽章:1. The East Land に改作される。

 

2017.8 追記

そのライブ音源はミニマリズム・シリーズ第3弾としてCD化され収録される。

 

 

Disc. 久石譲 『JOE HISAISHI CLASSICS 3 』

久石譲 『JOE HISAISHI CLASSICS 3 』

2011年8月3日 CD発売 WRCT-2003

 

「久石譲 クラシックス・シリーズ」第3弾

音楽家 久石譲が作曲家・演奏家としてではなく
指揮者として新しい視点とアプローチでクラシック音楽に挑んだ
選りすぐりのクラシック名曲集。

 

 

初めてでも聴きやすい、クラシク珠玉の名曲集!

2009年よりクラシックコンサートの指揮者として本格的な活動を開始した久石譲。このアルバムシリーズは、久石がクラシック指揮者として演奏したオーケストラのコンサートをライブ録音し、会場の感動をそのままに、アルバム化したものである。

久石が感じたクラシックの素晴らしさを、作曲家独自の解釈で、指揮者として表現することによって多くの人と共有したい。本アルバムには、そんな熱い想いが詰め込まれている。

クラシックに久石が新しい生命を吹き込み、聴く者を久石ワールドに連れ込むであろう。そして、作曲家だからこそわかる偉人達の作品の凄さを、クラシック愛好家にはもちろんのこと、クラシック初心者にもわかりやすく、豊富な経験と知識をもとに新鮮な感覚をもって、存分に魅力を届けてくれるコンセプチュアルなアルバムである。

 

 

寄稿

それまで僕が久石さんへ抱いていた印象は、どちらかというとクールで物静かなイメージだった。しかし2008年2月、僕らの楽曲『ワンダフルワールド』のレコーディングでフルオーケストラにタクトを振るその姿を間近で見て僕の心は一変する。演奏が始まる30分前、久石さんはスタジオの片隅で一人ストレッチを始めた。これから音楽を奏でるというよりは、何かの競技を始めるかの様に入念に。壇上に立ち演奏が始まった。オーケストラの音が響き渡る。それはまるで巨大な生命体のような音のうねりを、久石さんは時に激しく、時に静かに、一瞬の気を抜くことなくまとめあげていく。全身が震え、胸が熱くなった。コンサートでもないのに演奏が終わるとスタジオ中に拍手が巻き起こった。久石さんはそれこそ何かの競技が終わったかのように汗だくで、清々しい少年のような顔で微笑んでいた。綿密に構築され、しなやかに流れていく旋律の奥底にはいつも、久石さんの真摯な音楽に向き合う無骨な情熱を感じます。アルバムを聴きながら目を閉じると、あの日と同じように想いを込めてタクトを振る久石さんが浮かんできました。

北川悠仁(ゆず)

(寄稿 ~CDライナーノーツより)

 

 

【楽曲解説】

ロッシーニ/歌劇「ウィリアム・テル」序曲

ロッシーニは初期ロマン派に属する作曲家で、19世紀の前半を通じて全ヨーロッパのオペラ界の王者のような人気作曲家であった。彼がヨーロッパ各地にまき起こしたつむじ風は、ベートーヴェンの存在さえ影のうすいものにしたといわれている。ロッシーニの最後のオペラ作品「ウィリアム・テル」は、ゲーテと並んでドイツ最大の詩人とされているシルレルの劇にもとづいて、フランス人ド・ジュイがオペラ向きに脚色した台本に作曲したものである。オペラ全曲初演、1829年8月3日、パリ・オペラ座。

第1部「夜明け」アンダンテ、ホ短調、3/4拍子
チェロの5重奏を主体にして、チェロの残部とコントラバス、ティンパニのみで静かにアルプス山間の夜明けを画いたものである。始めはチェロの独奏で、間に他の4本のチェロが答えるように奏す。つづいてホ長調になり、コントラバス、チェロの残部のピトカートの伴奏にのり、やわらかな旋律を歌う。旋律のとぎれたところへ、ティンパニが次の嵐を思わせるかのようにきかせる。その後またもとのやわらかな旋律を奏しつづけて、始めのチェロ独奏のモティーフを変化しつつ第1部(夜明け)を終っていく。

第2部「嵐」アレグロ、2/2拍子
初めに弦楽器によって嵐の来襲を示す疾風の描写があり、やがて全管弦楽器により凄まじい暴風雨が到来する。この激しい嵐がしだいに遠ざかって、ティンパニの遠雷とフルートの名残の雨だれのような独奏にて次の第3部に移る。

第3部「牧歌」アンダンティーノ、ト長調、3/8拍子
嵐はやみアルプスの山々の頂に白く光る雪の峰は、晴れ渡った青空とともに平和で自由なスイスの前途を祝福しているかのようであり、この自由な牧歌が遠くの山々にこだまする。嵐の静まったあとに平和な牧歌が歌われる。田園に吹きならす牧笛の音がイングリッシュ・ホルンの独奏で、これにからむフルートの技巧的なオブリガードが全体に美しい効果をあげている。この主題を今一度、音をかえして奏し第2の主題に入る。

第4部「スイス独立軍の行進」アレグロ・ビバーチェ、ホ長調、2/4拍子
スイスに平和をもたらした独立軍の行進と勝利の賛歌である。トランペットの勢いのよいファンファーレ的な独奏に導かれて、全管楽器の合奏が序奏を奏し終わると華やかできざむようなリズムで弦楽群、クラリネット、ファゴット、ホルンにて行進曲を歌いはじめる。終結部は全管弦楽器によりクライマックスをつくりながら前に出てきた主題を少しずつ変化させて民衆の限りない喜びを歌い、最高潮の興奮にわきこの序曲の最大のクライマックスに入る。GPのあと最終結までのところはまさに最高潮に達し興奮と歓喜にあふれる終結部で、まことにベルリオーズが「4つの部分による交響曲といってもふさわしい」と賞賛したいほどの壮麗で調子の高い序曲である。

 

チャイコフスキー/バレエ組曲「くるみ割り人形」作品71a

チャイコフスキーはロシア生まれの作曲家である。ドイツ系ロマン派、フランス系ロマン派、そしてロシアの音楽からそれぞれ影響を受けており、特にブラームスの時代まで相容れなかった二つのロマン派を融合させたような作風は、当時のドイツやフランスの作曲家には見られないものである。作品は実に多岐にわたるが、とりわけ後期の交響曲・バレエ音楽・協奏曲などが特に愛好されている。

《くるみ割り人形》はチャイコフスキーのバレエ音楽最後の作品になる。ドイツ・ロマン主義の作家ホフマンの『くるみ割り人形とねずみの王』が原拠だが、バレエの直接の原典はデュマのフランス語版『くるみ割り人形』をベースにし、プティパが台本をまとめている。当時、ロシア音楽協会から新作の演奏会を急に依頼されたが、新作を手掛ける時間もなく作曲中のバレエ「くるみ割り人形」から8曲を選んで、組曲「くるみ割り人形」作品71aとしてバレエより先に発表した。

組曲初演/1892年3月19日
ペテルブルグのロシア音楽協会演奏会
バレエ初演/1892年12月17日
サンクトペテルブルグ/マリンスキー劇場

バレエそのものは少女クララが見たクリスマス・イヴの夢。くるみ割り人形とお菓子の国、それにすてきなプリンスとのラブ・ロマンス。いたって楽しいおとぎバレエでもある。

1.小序曲 Overture Miniature
展開部を省いた小ソナタ形式。行進曲的だが、甘美な幻想的な輝きを持つ。弦楽器によるひそやかに弾むような主題で始まり、第2主題は弦のピチカートの上に流れるようなカンタービレが歌われる。この2つの主題が繰り返されて第1幕へ。

2.行進曲 March
第1幕で子供たちが入って来る音楽。無邪気な快活な主題がトランペットとホルンとクラリネットで奏され、弦に引きつがれ次第にいろいろな楽器で繰り広げられて行く。全曲の中でもきわめて有名な曲。

3.こんぺい糖の精の踊り Dance of the Sugar Plum Fairy
第2幕で城の女王の踊りである。彼女は物柔らかなチェレスタの響きを中心とする幻想的な音楽に乗って光りつつ踊る。チェレスタの輝かしい音色とバスクラリネットの低いフシが印象的である。終わり方が組曲版と全曲版では違っている。

※チェレスタは1886年にパリのミュステルが発明したものだが、チャイコフスキーは1891年の旅行の時パリでこれを見て早速ここに使った。しかしこの楽器がまだ普及していないので、楽譜にはピアノで奏してもよいと記してある。

4.ロシアの踊り(トレパーク) Russian Dance (Trepak)
夢のお城でチョコレートの精が踊る。モルトヴィヴァーチェという指定どおり非常に活気のる曲。力強いメロディが第1ヴァイオリンによって繰り返される。後半はテンポを上げ、嵐のようなアッチェレランドで一気に曲が終わる。

5.アラビアの踊り Arabian Dance
コーヒーの精の踊り。東洋風のキャラクターダンス。もとグルジアの子守唄。チェロとヴィオラがこの調の主音と属音とを重ねて全曲にわたる低属音を8分音符で単調に聞かせている。旋律はクラリネットからヴァイオリンへと進み、さらにバスーン、弦、クラリネット、フルート、弦と動いて間を縫うタンブリンの弱い響きが魅力を持つ。甘い、ものうい、モヤのような東洋的な曲である。

6.中国の踊り Chinese Dance
お茶の精の踊り。バスーンと弦のピッチカートとの単調なリズムに乗って、フルートが高い音で駈け廻りながら叫ぶ。弦楽器によるピッチカートが中国風の味を出している。

7.あし笛の踊り Dance of the Mirlitons
玩具の笛の踊り。低い弦のピッチカートの慌しいリズムの上にフルートの三重奏が跳ね廻るような旋律を出し、やがてトランペットが急ぎ足で華やかに行進曲風な感じを出し、再びフルート三重奏の跳ね廻る調べに入って終わる。

8.花のワルツ Waltz of the Flowers
全曲中もっとも華やかで有名な曲。あらゆる花が舞い出し玩具もお菓子も一緒に踊る。木管とホルンによる序奏に続いてハープのカデンツァ。これに続くワルツ主部はロンド形式になっている。

 

ストラヴィンスキー/バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)

ストラヴィンスキーはロシアの作曲家である。生涯に、原始主義、新古典主義、セリー主義と作風を次々に変え続けたことで知られ「カメレオン」というあだ名をつけられるほど創作の分野は多岐にわたった。さまざまな分野で多くの作品を残しているが、その中でも初期に作曲された3つのバレエ音楽(『火の鳥』、『ペトルーシュカ』、『春の祭典』)が名高く、特に原始主義時代の代表作『春の祭典』は、20世紀の最高傑作と言われている。また作曲家としてのみならず、指揮者、ピアニストとしても幅広く活動した。20世紀を代表する作曲家の1人として知られ、20世紀の芸術に広く影響を及ぼした音楽家の1人である。

オーケストラ作品ではリムスキー=コルサコフ仕込みの管弦楽法が遺憾なく発揮され、さらにそこから一歩踏み込んだ表現力を実現することに成功している。これらの作品によってベルリオーズやラヴェル、師のリムスキー=コルサコフなどと並び称される色彩派のオーケストレーションの巨匠としても知られるに至っている。

「火の鳥」はロシアの民話に基づく1幕2場のバレエ音楽およびそれに基づくバレエ作品。音楽はリムスキー=コルサコフに献呈された。オリジナルのバレエ音楽と3種類の組曲(1910年版・1919年版・1945年版)があり、オーケストレーションが大幅に異なる。組曲版では一部曲名が異なる部分もある。元々はディアギレフからリャードフに依頼されたのだが作曲がはかどらなかったために無名の新人ストラヴィンスキーに白羽の矢がたった。振付師ミハイル・フォーキンと台本を練り、1909年から1910年にかけて約半年で火の鳥の音楽を作曲した。1910年6月25日パリ・オペラ座にてガブリエル・ピエルネの指揮によって初演される。この初演は画期的な成功となり、一夜のうちに彼はスター作曲家として認知された。

バレエとしても人気があり、初演後も多くのバレエ団で再演が行われている。

組曲(1919年版)は、手ごろな管弦楽の編成と規模から実演では最も演奏機会の多い版である。「魔王カスチェイの凶悪な踊り」での有名なトロンボーンのグリッサンドはこのバージョンで導入された。一般的な二管編成になり、打楽器が減らされている。チェレスタは必須ではなく「子守歌」のピアノパートに「またはチェレスタ」の注釈が添えられている。

1.序奏 Introduction
不死の魔王カスチェイの庭園。大太鼓の弱いトレモロに乗って、弱音器をつけたチェロとコントラバスがゆっくりとした不気味な音形を弾き始める。物語があける前の夜の情景である。

2.火の鳥とその踊り The Firebird and Its Dance
幕が上がるとカスチェイの住む魔法の庭園、琥珀色に輝くリンゴの木が茂り、弦のトリルで鳥の羽音を模した音楽で美しい火の鳥が現れ「火の鳥とその踊り」が始まる。

3.火の鳥のヴァリアシオン Variation Of The Firebird
王子イワンは木陰に隠れてその様子を窺いやがて火の鳥を捕らえるが、火の鳥の命乞いに応じる。喜んだ火の鳥は不思議な力を持った自らの羽根を王子に送った。

4.王女たちのロンド (ホロヴォード) The Princesses’ Rondo
イワン王子の迷い込んだ庭園には、カスチェイに囚われた13人の乙女たちがとらえられていた。ハープの伴奏でオーボエで奏でられるロマンあふれる旋律は、ロシア民謡による乙女たちの踊りである。王子は彼女たちを助けようとするが、逆に捕らえられてしまう。しかし手に入れた火の鳥の羽のため、魔王の魔法はかからない。

5.魔王カスチェイの凶悪な踊り Infernal Dance Of King Kashchei
やがて火の鳥が現れ、王子に襲いかかろうとするカスチェイ一党を自らの魔法で強制的に踊らせ始める。凶暴で迫力に満ちたこの難曲は、魔王カスチェイの凶悪な踊りである。踊りはどんどんエスカレートしていき、一党は限界に達してバタバタとその場に倒れていく。

6.子守歌 Lullaby
踊り疲れたカスチェイ一党に火の鳥は、ファゴットで歌われる「子守歌」で彼らを眠らせてしまう。やがてカスチェイは目を覚ますが、イワン王子は魔王の魂入りのたまごを見つけて破壊し、魔王及びその一党を消し去った。

7.終曲 Finale
弦のトレモロに乗ってホルンが主題を吹く。魔法の庭園に平和が戻り、乙女たちは自由の身になり、王子は改めて王女に求婚。2人は火の鳥や乙女たちから祝福を受ける。火の鳥は幸福そうな人々をその場に残し、いずこもなく飛び去って行く。

 

ラヴェル/亡き王女のためのパヴァーヌ

ラヴェルは「管弦楽の魔術師」、「オーケストレーションの天才」という異名を持つほど管弦楽法にとても優れた作曲家である。彼は若くして自分のスタイルを確立した作曲家であり、パリ音楽院在学中から個性的な作品を次々に発表した。

「亡き王女のためのパヴァーヌ」は、「グロテスクなセレナード」、「古風なメヌエット」に続いて3番目に出版されたピアノ作品で、パリ音楽院在学中に作曲した初期を代表する傑作であり、彼の代表作の1つと言える。1899年にピアノ曲として作曲し、1910年に自身が管弦楽曲に編曲した。この曲は出版されるやフランス中で大人気となり、一躍ラヴェルは人気作曲家の仲間入りを果たした。ルーヴル美術館を訪ねた時にあった、17世紀スペインの宮殿画家ディエゴ・ベラスケスが描いたマルガリータ王女の肖像画からインスピレーションを得て作曲したとされる。ラヴェルによるとこの題名は、「亡くなった王女の葬送の哀歌」ではなく、「昔、スペインの宮殿で小さな王女が踊ったようなパヴァーヌ」だとしている。パヴァーヌとは、16世紀から17世紀にかけてヨーロッパの宮廷で普及していた舞踏のこと。歴史上の特定の王女に捧げて作られたものではなく、スペインにおける風習や情緒に対するノスタルジアを表現したものであり、こうした表現はラヴェルによる他の作品(例えば『スペイン狂詩曲』や『ボレロ』)、あるいはドビュッシーやアルベニスといった同年代の作曲家の作品にも見られる。

初期のラヴェルは他の作曲家の影響が明確である場合が多く、この作品はその典型である。ラヴェルはサティを尊敬しており、またシャブリエも好んでいた。後にラヴェル自らこの曲に対し、「シャブリエの影響があまりにも明らかであるし、形式もかなり貧弱である」という評価を下している。

ラヴェルは和音はかなり独創的なことをしていたにも関わらず、なぜか形式はきちっとしている。この曲はとてもわかりやすいロンド形式を取った明確なト長調である。当時は音楽がまだシンプルであり、その絶妙な和音の中にもすごくわかりやすい旋律を持っている。

それが今でもなお絶大な人気を博す理由の1つであろう。特に若い女声に人気を博し、100年経った今も女性受けの良い曲とされている。

晩年、記憶障害に悩まされたラヴェルはこの曲を聴いて、「とても美しい曲だ。しかしいったい誰が作ったのだろう。」と語っていたそうである。これこそ作曲者自身がこの曲に下した真の評価ということではないだろうか。

(楽曲解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

 

久石譲 『JOE HISAISHI CLASSICS 3 』

Rossini William Tell Overture
1.ロッシーニ / 歌劇 『ウィリアム・テル』 序曲
Tchaikovsky The Nutcracker, op.71a
チャイコフスキー / バレエ組曲 『くるみ割り人形』 作品71a
2.Overture Miniature 小序曲
3.March 行進曲
4.Dance of the Sugar Plum Fairy こんぺい糖の精の踊り
5.Russian Dance (Trepak) ロシア舞曲(トレパーク)
6.Arabian Dance アラビアの踊り
7.Chinese Dance 中国の踊り
8.Dance of the Mirlitons あし笛の踊り
9.Waltz of the Flowers 花のワルツ
Stravinsky The Fire Bird (1919 Version)
ストラヴィンスキー / バレエ組曲 『火の鳥』 1919年版
10.Introduction 序奏
11.The Firebird and Its Dance 火の鳥とその踊り
Variation Of The Firebird 火の鳥のヴァリアシオン
12.The Princesses’ Rondo 王女たちのロンド(ホロヴォード)
13.Infernal Dance Of King Kashchei 魔王カスチェイの凶暴な踊り
14.Lullaby 子守歌
15.Finale 終曲
Ravel Pavane for a Dead Princess
16.ラヴェル / 亡き王女のためのパヴァーヌ

指揮:久石譲
演奏:新日本フィルフィルハーモニー交響楽団
録音:
2010年1月7日 東京・サントリーホール
2010年1月9日 東京・オーチャードホール
2010年8月7日 東京・すみだトリフォニーホール

 

Disc. 東京ブラススタイル 『アニジャズジブリ Final Note』

東京ブラススタイル アニジャズジブリ final

2011年7月27日 CD発売 HMCH-1040

 

JAZZ初心者はもちろんのこと、吹奏楽部の子供たち
さらにはお母さんとお子様たちまで幅広く楽しめる
ジブリミュージック JAZZアレンジアルバム

 

2006年ジブリカヴァーの先駆けとして大ヒットを記録した「アニジャズジブリ」、次の「ブラスタジブリ」からのベストテイクに加えて新録4曲とスタジオライブ録音2曲を収録したベスト盤的作品。M-11「あの夏へ」では総勢47名の“チームブラスタ”のメンバーが参加。

 

軽快な疾走感と炸裂するブラスセッション、迫力あるサウンド。新鮮かつ大胆、多様性のあるジャズアレンジながらジブリファン・ジャズファンのいずれも満足させるジャズバンドとしてすべての曲が昇華した上質なジャズサウンド。

ホーンセッションをはじめとした鳴り響くサウンドも、各楽器がめまぐるしく入れ替わりかけ合うソロパートも、力強いリズムセッションも、時にはスウィングしながら揺れるビート。1曲1曲が完成度の高いそれぞれの世界観、華やかなアンサンブル・セッション。

 

 

東京ブラススタイル アニジャズジブリ final

1. さんぽ 『となりのトトロ』より (ブラスタジブリ)
2. ねこバス 『となりのトトロ』より (新録)
3. 人生のメリーゴーランド 『ハウルの動く城』より (ブラスタジブリ)
4. 君をのせて 『天空の城ラピュタ』より (アニジャズジブリ)
5. もののけ姫 『もののけ姫』より (ブラスタジブリより)
6. となりのトトロ 『となりのトトロ』より (アニジャズジブリ)
7. 風の谷のナウシカ 『風の谷のナウシカ』より (アニジャズジブリ)
8. 鳩と少年 『天空の城ラピュタ』より (ブラスタジブリ)
9. 風のとおり道 『となりのトトロ』より (新録)
10. 風になる 『猫の恩返し』より (新録)
11. あの夏へ 『千と千尋の神隠し』より (新録)
12. ルージュの伝言 『魔女の宅急便』より ( スタジオライブテイク)
13. となりのトトロ 『 となりのトトロ』より ( スタジオライブテイク)

 

Disc. Kazumi Tateishi Trio 『GHIBLI meets JAZZ ~Memorable Songs~』

GHIBLI meets JAZZ ~Memorable Songs~

2011年7月13日 CD発売 VICL-63758

 

Kazumi Tateishi TrioによるJAZZトリオによるスタジオジブリ作品カバーアルバム第2弾。

 

 

GHIBLI meets JAZZ ~Memorable Songs~

1. 旅立ち(魔女の宅急便)
2. 晴れた日に(魔女の宅急便)
3. いのちの名前(千と千尋の神隠し)
4. 時には昔の話を(紅の豚)
5. さんぽ(となりのトトロ)
6. 風の谷のナウシカ(風の谷のナウシカ)
7. もののけ姫(もののけ姫)
8. 人生のメリーゴーランド(ハウルの動く城)
9. 時の歌(ゲド戦記)
10. やさしさに包まれたなら(魔女の宅急便)
11. ふたたび(千と千尋の神隠し)
12. ねこバス(となりのトトロ)
13. 世界の約束(ハウルの動く城)
14. 丘の町~バロンのうた(耳をすませば)
15. ミミちゃんとパンダコパンダ(パンダコパンダ)
16. はにゅうの宿(火垂るの墓)

 

Disc. 久石譲 『肩の上の蝶 / Rest on Your Shoulder』 *Unreleased

2011年7月8日 中国公開

 

2011年 中国映画 「肩の上の蝶 (Rest on Your Shoulder)」
監督:張之亮(ジェイコブ・チャン) 音楽:久石譲 出演:陳坤(チェン・クン) 他

日本未公開作品

 

録音:2011年3月8日、9日 アバコスタジオ
演奏:東京ニューシティ管弦楽団

 

 

同映画は恋愛ファンタジーで3Dを駆使し、完成までに8年を費やした意欲作。中国国内のみならず東京や北海道富良野でも撮影を行った大人の童話となっている。

「海洋天堂」以来、2作目の中国映画の音楽担当。実は「肩の上の蝶」の音楽の制作しているときに東日本大震災が発生。だが久石譲はジェイコブ・チャン監督の期待に応えるため、7月8日の中国公開に間に合わせるため作業を中断することなく制作を続けたという。

監督の熱烈なラブコールによって実現した久石譲の音楽だけあり、随所に音楽が登場する曲数の多い作品。これは作品の「ファンタジー 恋愛 ロマンス」という設定からくるものでもあると思う。

ファンタジックで夢の世界へと誘う音楽。フルオーケストラ構成でありながら、とてもメルヘンチックな印象を受けるのはそのメロディーによるところが大きい。

メインテーマはワルツで書かれた音楽になっていて、優雅に流れるようでもあり、飛び跳ねるようでもあり、いろいろなモチーフで登場する。弦楽器や管楽器をつかったフルオーケストラ編成に加えて、コーラスもフィーチャーしたアレンジがエンドクレジットなどでも聴くことができる。混声合唱が伸びやかに歌うその音楽は、愛とロマンスの象徴。

その他シーン音楽も、心温まる、ファミリー映画のような旋律が特徴になっている。そして、管楽器とりわけピッコロなどの高音楽器を使用することで、コンセプトともなっているファンタジーや蝶のイメージを見事に表現している。ファゴットなどの低音楽器もシーンごとのコミカルさやファンタジックな世界の表現に一役かっている。

とても丁寧に作り上げられた映画音楽。映画本編の日本公開のみならず、映画音楽としてのサウンドトラックの発売も期待する作品。

 

JASRAC登録 M1~M45

 

 

肩の上の蝶1 

肩の上の蝶2

 

Disc. 久石譲 『MAZDA BGM 〜Heart of Mazda〜』 *Unreleased

2011年6月1日~2012年5月31日 CM放送

 

MAZDAグローバルブランドキャンペーン
オリジナルCM音楽ならびにオリジナルムービー用音楽

MAZDA「SKYACTIVE TECHNOLOGY」ショート・フィルム音楽
監督:李相日
音楽:久石譲

レコーディング:2011年4月、Bunkamuraスタジオ

 

 

CM音楽は30秒程度、ピアノの軽快かつ綺麗なメロディーにストリングやマリンバなどが小刻みにリズムを刻んでいる。開発者、関係者、技術者のインタビュー・エピソードからなるオリジナルムービーは社内用・販促用だろうか。

オリジナルムービー内のBGMでは同曲をモチーフに展開されている。メロディーがチェロ、フルート、オーボエ、ピッチカートなどいろんなバリエーションで登場し、そしてピアノもCM版とは異なるしっとりと美しい調べとなっている。

一方でCM版よりもリズミカルなストリングの軽快なバリエーションもある。またテーマ曲に沿った別のBGMを聴くことができる。

CD化されていない未発売曲。

 

JASRAC登録 M1~M14

 

 

mazda heart of mazda マツダ

 

Disc. 久石譲 『明日の翼』 *Unreleased

久石譲 JALテーマ曲 『明日の翼』

2011年5月 TVCM放送

 

JALのテーマ曲として書かれた『明日(あした)の翼』。「明日の空へ、日本の翼」というキャッチコピーのもとTVCMでも流れる。JAL航空機の「ご搭乗時ウェルカムビデオ」という機内映像など、JAL機内でのBGMとして聴くことができる。

 

フルオーケストラ編成の壮大なアレンジとなっているヴァージョン(3分16秒)と、「ご搭乗時ウエルカムビデオ」BGMなどに使われている小編成ヴァージョン(3分30秒)がある。後者はピアノなどを基調としたヴァイオリンやフルートがメロディーを展開していくもので、ギターやエスニックパーカッションも加えられている。レコーディングもオーケストラ版とは分けて期間をあけて追加制作されている(2011年12月17日)。

 

こちらはJAL公式ホームページでも映像作品として視聴できる。 (※2013年5月現在)
こちら ⇒ JAL – 明日の空へ、日本の翼 (※2016年10月終了)

 

こちらはピアノを基調とした「ご搭乗時ウェルカムビデオ ver.」(※公開終了)

 

 

ワールド・ドリーム・オーケストラの『World Dreams』、NHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」のメインテーマ『Stand Alone』、日清カップヌードルCM曲『Adventure of Dreams』などにも通じる、壮大な、格式高い、序曲のような、とても美しいメロディーの楽曲。

ぜひどのヴァージョンもふくめCD化してほしい作品。

 

 

2024.01.24 update

JAL国内線・国際線の全路線で降機時に上映する「降機用ビデオ」が12年ぶりにリニューアル!

新しいビデオには、日本各地で活躍する文化や技術の担い手を中心に起用。繊細な技術や所作といった“人”を核として捉えた構成で、日本らしさやJALらしさを表現したという。音楽は作曲家の久石譲さん作曲「明日の翼」をこれまでと同じく採用した。

 

images from JAL’s now 【公式】 X

 

 

久石譲 JALテーマ曲 『明日の翼』