Blog. 「久石譲&新日本フィルハーモニー交響楽団」(長野) コンサート・レポート

Posted on 2014/10/15

長野市芸術館 開館プレイベントとして開催された「久石譲&新日本フィルハーモニー交響楽団」 コンサート。

長野市では2015年の完成に向け、新たな文化芸術の拠点となる「長野市芸術館」の整備を進めています。それに伴い、長野市芸術館の運営の中心を担う一般財団法人長野市文化芸術復興財団が発足しました。この財団では、芸術監督・久石譲氏の監修のもと、豊かな文化に支えられた〈文化力あふれるまち 長野市〉をめざします。また、さまざまな文化芸術が身近に感じられるような機会を提供できるよう、開館に向けて準備を進めています。

(コンサートパンフレットより)

 

まずはセットリストから。

 

久石譲 x 新日本フィルハーモニー交響楽団

[公演期間]
2014/10/12

[公演回数]
1公演(長野・ホクト文化ホール)

[編成]
指揮・ピアノ:久石譲
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
バラライカ/マンドリン:青山忠
バヤン/アコーディオン:水野弘文
ギター:千代正行

[曲目]
<第一部>
久石譲:弦楽オーケストラのための「螺旋」
久石譲:バラライカ、バヤン、ギターと小オーケストラのための「風立ちぬ」第2組曲

—アンコール—
Summer

<第二部>
ベートーヴェン:交響曲第3番変ホ長調「英雄」作品55

—アンコール—
Kiki’s Delivery Service for Orchestra

 

当初予定されていたプログラムから一部変更になり、上記の演奏プログラムとなっています。

曲目ごとに。

  • 久石譲:弦楽オーケストラのための「螺旋」

2010年コンサート「久石譲 Classics Vol.2」にて世界初演されて以来、2011年コンサート「久石譲 Classics Vol.4」で二度目の演奏後、幻の曲として沈黙を守ってきた楽曲、14分に及ぶ大作です。

当初プログラムでは「ピアノと弦楽オーケストラのための新作」もしくは「螺旋」の披露予定、どちらを演奏されたにせよ貴重なプログラムだっただけに、これはレアな演目となりました。どういう曲か? は後述の久石譲本人による解説をご参考ください。

 

  • バラライカ、バヤン、ギターと小オーケストラのための「風立ちぬ」第2組曲

2014年のコンサート活動を象徴する楽曲です。曲詳細については過去コンサートレビューや、新作CD「WORKS IV」にて紹介しています。

 

  • Summer

第1部のアンコールとして。久石譲の代名詞的な名曲「Summer」をピアノ&オーケストラとの共演で。CD「メロディフォニー」が基調となるシンフォニー・バージョン。

 

  • 交響曲第3番変ホ長調「英雄」作品55

長野市芸術館のコンセプトにもあるように、さまざまな文化芸術が身近に感じてもらえるべく、久石譲作品以外から選曲されたベートーヴェンの「英雄」。第9、第5番「運命」が一般的にはポピュラーですが、「英雄」も引けをとりません。長野市芸術館の開館を前にプレイベントの演目として選ばれているだけに、「新しいなにかが始まる」、幕開け、ファンファーレのような意味合いだったかどうかは、定かではありませんが、そんな気もしています。

 

  • Kiki’s Delivery Service for Orchestra

こちらも新作「WORKS IV」に収録された、2014年今一番ホットな楽曲です。

 

Program Notes

久石譲:弦楽オーケストラのための「螺旋」

弦楽オーケストラのための「螺旋」は、2010年2月16日に行ったコンサート《久石譲 Classics Vol.2》のために書いた作品である。作曲は、2010年1月20日より2週間という短い期間で一気に書き上げ、その後直しを含めて時間の許す限り手を加えた。ミニマル・ミュージックの作家としてコンテンポラリーな作品を書きたいという思いが強かったのかもしれない。

曲は、8つの旋法的音列(セリー)と4つのドミナント和音の対比が全体を通して繰り返し現れる。もちろんミニマル・ミュージックの方法論で作曲したが、その素材として上記の12音的なセリーを導入しているため結果として不協和音が全体の響きを支配している。

心がけたことは、感性に頼らず決めたシステムに即して音を選んでいくことだった。もちろんそのシステムを構築する土台は(それが良いと決めたこと自体)個人的な感性である。

曲の構成は日本の序・破・急(※)の形をとり、第1部は遅めのテンポの中で様々なリズムが交差し、第2部では同じセリーのスケルツォ的躍動感を表現している。第3部の前には、もう一度基本セリーによる静かな神秘的な部分があり、その後、急としての激しい空間のうねりが展開される。

曲のタイトルとして Spiral という言葉を最初考えていたが、この急の部分を作曲したときに「螺旋」という日本語が最もふさわしいと確信した。

(※)序・破・急 = 音楽・舞踊などの形式上の三区分。序と破と急と。舞楽から出て、能その他の芸術にも用いる。

(2011年9月7日《久石譲 Classics Vol.4》 曲目解説より一部補筆し転用)

– コンサートパンフレットより –

 

この久石譲本人による楽曲解説を見ても、ハテナが頭に浮かぶだけですが、キーワードとしては「ミニマル」「空間のうねり」「序・破・急」、すなわち《螺旋》です。

”不協和音が全体の響きを支配している”とありますが、とはいえミニマル・ミュージック特有のリズムがそこにはあり、躍動感と神秘性をかねそなえた弦の響きがまさにスパイラルしている楽曲。

コンサートで聴いても、その渦を巻いた弦楽オーケストラの響きに圧倒されます。今回3度目の貴重なお披露目となったわけですが、久石譲の現代音楽作品として後世に残るべき重要な作品だと思います。ぜひこれからのコンサートや、またCD作品としても聴きたい大作です。

 

余談。当初予定されていた「ピアノと弦楽オーケストラのための新作」。こちらもいつか聴ける日が来ることを切望していることは、言うまでもありません。

 

長野芸術館の芸術監督を務める久石譲は、「日常の中に音楽が入ってくるための魅力的なプログラムをつくりたい」「出身県でもあり、自分の年齢も考え、少しは世の中に貢献しようと思った」「善光寺での野外コンサートを含んだコンサート週間を柱にし、長野だけでなく全国に発信したい」、自身も毎年コンサートを開催していきたいと語っていて、2015年の開館イベントやその以降、長野から発信される久石譲音楽に期待です。

 

2014年、いろいろな企画・編成・形式でのコンサート活動が行われてきましたが、その最後を飾るファイナルは、「久石譲 ジルベスターコンサート 2014 in festival hall」です。12月31日大晦日のこの日、久石譲の2014年集大成、総決算です。と同時に2015年の何かを予感させてくれるコンサートとなるのでしょうか。

久石譲コンサートの歴史はひとつひとつと刻まれています。
こちら ⇒ 久石譲 Concert 2010-

 

最後に、今コンサート終演後のメディア情報より。

指揮者久石さん躍動 長野市芸術館開館プレイベント

建設中の長野市芸術館(新市民会館)の開館記念プレイベントとして同館芸術監督の作曲家久石譲さん(63)=中野市出身=が指揮する新日本フィルハーモニー交響楽団(東京)の特別公演が12日、長野市若里のホクト文化ホール(県民文化会館)であった。久石さんの県内公演は4年半ぶり。オーケストラの重厚な演奏が、大ホールを埋めた幅広い世代の約2200人を魅了した。

約2時間の公演で、ともに久石さん作の「弦楽オーケストラのための『螺旋(らせん)』」、昨夏公開の宮崎駿監督のアニメ映画「風立ちぬ」の曲を再構成した組曲のほか、ベートーベンの交響曲第3番「英雄」を演奏。久石さんは全身を躍動させて力強い指揮を披露した。「風立ちぬ」では、指揮の合間にピアノを弾く場面もあった。曲が終わるごとに笑顔で両手を広げ、聴衆の拍手に応えた。

久石さんは公演後、「話ができないほど精いっぱい出し切り、お客さんの反応もすごく良かったので、やってよかったなあと思う」と話した。

(信濃毎日新聞[信毎日web] より一部抜粋 転載)

久石譲 2014長野 コンサートレポート

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