Disc. 久石譲 『NHKスペシャル 驚異の小宇宙・人体III~遺伝子・DNA サウンドトラック Vol.1 Gene-遺伝子-』

1999年4月28日 CD発売

1999年放送 NHKスペシャル「驚異の小宇宙 人体III 遺伝子DNA」
音楽:久石譲

 

寄稿

NHKスペシャル「驚異の小宇宙・人体」パートIIIのメインタイトルが変った。”遺伝子”から”遺伝子・DNA”へと。久石譲さんとの最初の打合せの時、「遺伝子だけでは面白くない。DNAという言葉を入れないとNOWくない」という助言をいただいたのだ。

言うまでもなく、20世紀最大の生物学上の発見はDNA構造の解明である。研究の結果、生命の基本構造は地球上のあらゆる生物に共通しており、数の多さと働きが違うだけであることがわかってきた。ヒトの場合、生命の暗号は60億文字分に相当し、科学者たちはその全てを2003年までに解読しようとしている。「マンハッタン計画(原爆製造)」「アポロ計画(人類の月面着陸)」に次ぐビッグサイエンス、「ヒューマンゲノム計画」である。一方で最近は新聞を広げると毎日のように”遺伝子”の活字が躍る。「アルツハイマーや肥満遺伝子発見」「がんや難病の遺伝子治療始まる」「イヴ・モンタンの墓を掘り起こし、親子関係を調べるDNA鑑定」といった具合である。今や遺伝子・DNAは一般の人達の間でも知的関心事となっているのだ。

私が「人体」プロジェクトのプロデューサーを命じられたのが1986年。以来ずっと久石さんとのおつき合いが続いている。国際共同制作の大型NHKスペシャルで14年間もプロジェクトが続いているのは初めての事で、さらにシリーズ18本を全て一人の作曲家が手がけるのも極めて珍しいことになる。なぜ、それ程までに久石さんに惚れ込んでいるのか。最初の出会いは1989年の「人体」制作中、各レコード会社が推薦する作曲家の音楽を聴いていた時のこと、「風の谷のナウシカ」の音楽を耳にしたとき「これだ!」と直感した。私たちの番組はミクロの細胞にこだわり、その健気な働きを描いたが、60兆細胞トータルとしての人体、”いのち”も又素晴らしい存在であることを訴えたかったからだ。さらに「人体 II 脳と心」では番組に新風を吹きこんでくれた。

私たちは今、番組完成を目前に生みの苦しみの最中にいる。久石さんの、歴史に残るような音楽が番組に息を吹きこんでくれることを大いに期待している。

林勝彦 (エグゼクティブ・プロデューサー)

(CDライナーノーツより)

 

 

ドキュメンタリーの仕事はすごく好きなんです。このシリーズも3作目ですね。ただ、今回はテーマが遺伝子ということで非常に抽象的ですから、映像が浮かばなくて苦しみました。Iは「内臓」がテーマでしたし、IIは「脳と心」がテーマでしたから、割とイメージが膨らんだんですが、「細胞」と言われてもピンと来ないじゃないですか? そういった、最初のイメージ作りで苦しみましたね。でも、遺伝子についていろいろ調べるうち、利己的遺伝子(セルフィッシュ・ジーン)という言葉に出会ったんです。「人間は遺伝子の乗り物でしかない、生命が誕生して以来、人間という器は単なる乗り物でしかない」という内容なんですが、そういうことを考えていると、太古の時代と未来がつながっていて、それは音楽も同じだと思えるようになったんです。そこで、エスニックな要素をたくさん入れたりしました。

この作品では、打ち込みと生の弦を組み合わせています。こういう世界観だと、アコースティックが絶対にいいということはあり得ないんです。あまりにも具象音過ぎますからね。そうすると、もう少し神秘的な世界を出すにはやはりシンセサイザーがよくて、結果的に生と打ち込みの比率は50/50くらいになりました。ただ、今までのシリーズはもっとシンセサイザーが多かったので、今回は割とアコースティック楽器が増えていると言えますね。

このシリーズに関しては、映像に合わせて音楽を作っているわけではありません。「何月何日に映像をお渡しします」って言われても、その日に来ることは絶対にないですから(笑)。2、3ヵ月はズレます。これは映画もそうなんですが、CGを使うとその部分が圧倒的に時間を食うんです。特に、この番組は内容的にCGのウェイトがすごく大きいですから大変だと思います。でも、真剣に作ったら遅れるのはしょうがないですよ。

そんなわけで、基本的にはこのシリーズに関しては、こちらの方である程度世界観を作って大体12~13曲ほど仕上げ、さらに幾つかバリエーションを付けたものをお渡しして、そこから選曲してもらうというスタイルでやることにしているんです。僕の手掛けているサウンドトラックの中で、選曲のスタイルはこの番組だけです。

Blog. 「キーボードマガジン Keyboard Magazine 1999年8月号」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

久石譲 『NHKスペシャル 驚異の小宇宙 人体III〜遺伝子・DNA サウンドトラックVol.1 Gene』

1. Gene
2. 遥かなる時を超えて
3. Mysterious Operation
4. History
5. Micro Cosmos
6. Cell Division
7. Children’s Whisper
8. Wonderful Life
9. A Gift From Parents
10. Choral For Gene

Producer:Joe Hisaishi
Compose & Arrangement:Joe Hisaishi

Recording Studio:
Wonder Station
AVACO CREATIVE STUDIO

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