Posted on 2022/02/08
2021年コンサート「久石譲×日本センチュリー交響楽団 特別演奏会」より、「メンデルスゾーン:交響曲 第4番 から第4楽章」のライヴ動画が公開されました。ぜひご覧ください。 “Info 2022/02/08 久石譲×日本センチュリー交響楽団「メンデルスゾーン:交響曲第4番「イタリア」から第4楽章」動画公開” の続きを読む
Posted on 2022/02/08
2021年コンサート「久石譲×日本センチュリー交響楽団 特別演奏会」より、「メンデルスゾーン:交響曲 第4番 から第4楽章」のライヴ動画が公開されました。ぜひご覧ください。 “Info 2022/02/08 久石譲×日本センチュリー交響楽団「メンデルスゾーン:交響曲第4番「イタリア」から第4楽章」動画公開” の続きを読む
Posted on 2022/02/08
ジョン・ウィリアムズの90歳の誕生日を祝い、小澤征爾、久石譲らからお祝いコメント到着 『帝国のマーチ』など珠玉の演奏シーンを1回限りのプレミア公開 “Info. 2022/02/08 ジョン・ウィリアムズ、90歳の誕生日を祝い、小澤征爾、久石譲らからお祝いコメントが到着(Webニュースより)” の続きを読む
Posted on 2022/02/01
FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.4のライブ配信が決定しました!
日本国内だけでなく、世界各地(一部地域を除く)からも視聴できます。 “Info. 2022/02/09 「久石譲 FUTURE ORCHESTRA CLASSICS Vol.4」ライブ配信決定!! 【2/7 Update!!】” の続きを読む
Posted on 2022/01/26
音楽雑誌「Hundred ハンドレッド 1987年11月号」に掲載された久石譲インタビューです。その次号から「連載 久石譲の今月の気になるアイツ」(全何回/不明)もスタートしていきます。
INTERVIEW
「映画音楽で一番気を使うのは、監督のテンポ感。それが僕にとっては生命です」
久石譲
あるときはキーボード・プレーヤー、またあるときは作曲家、編曲家。映画音楽、CM音楽、アーティストのアレンジと八面六臂の仕掛人。やがて、映画『となりのトトロ』で新しい世界を聴かせてくれる人。
ー久石さんのお仕事は大変多岐にわたっているわけですが、まず、映像に関係したお仕事についてお聞きしたいと思います。久石さんとラピュタの宮崎駿監督とは今や珠玉のコンビといわれていますが、宮崎さんと仕事をする醍醐味のようなものをお聞かせください。
久石:
実はアニメーションは宮崎さんの作品以外はあまりやっていないんです。というのは、やっぱり宮崎作品は単にアニメーションということでなく、映像として非常に優れていると思うわけなんです。実写ものでもなかなかあそこまでは表現しきれないんじゃないですか。ラピュタはいま香港で大ヒットしてるんですよ。空前のヒットらしいです。あの時の『君をのせて』という歌を中国語と英語で吹き込みたいというオファーが来てるんです。香港といえば「アチョー!」の映画ですけど、それを超えるヒットだそうで、ラピュタなんかはもう国際的な広がりの中で十分やっていける作品だと思うんです。単にアニメだとか映画だとかそういう区別を抜きにして、大変なもんですよね。
宮崎さんとのやり方というのはけっこう特殊で、映像にかかる前に必ずイメージアルバムっていうのをつくるんですよ。音楽の打ち合わせっていうのは、どうしても抽象的になっちゃうでしょ。ここでキレイなメロディーをとかいっても、こちらの考えてるキレイと監督さんの考えるキレイとは違ったりするでしょ。それを極力避けるということで、イメージアルバムがあれば、あのテーマをこの部分のテーマにしたらどう、とか、このシーンにはあのメロディーのアレンジでどうですか、とか、非常に具体的なやり方でつっ込んで話すんですよ。だから、ナウシカにしてもラピュタにしても、とってもレベル高くできたんじゃないかと思うんです。
ー映像に関係したお仕事で最も気を使うのはどういうところでしょうか。
久石:
監督のテンポ感です。カット割りとか、画面の演出のテンポ、編集のテンポですね。それが僕にとっては生命です。僕の場合、台本を読んだ段階で60~70%はできていて、あとラッシュを見に行くのは、監督のテンポをつかむため。
『ドン松五郎の大冒険』っていう正月映画なんですけど、その監督が後藤秀司さん。すごくコミュニケーションうまくとてまして、台本を読んでからラッシュ見に行って、ああ後藤監督のテンポってこんな感じだなあ、で、自分なりに曲を書き出す。そうしたら、ほとんどのシーンがピタリピタリと合っていっちゃうんですよ。おもしろいもんですよ。例えばここからどっかに歩いていくだけのシーンだって、監督によって演出が全然変わるでしょ。だけど、その監督の全体を見ていくと、だいたいここではこういうカット割りになるとかって読めてくるんですよ。
それは『漂流教室』の大林監督の時もそうだし『この愛の物語』の舛田監督の時もそうだし『Wの悲劇』『早春物語』の澤井監督の時もそうですね。みんなそれぞれのテンポ感が違うし、それをつかまえるのがコツというか、一番大変なところですね。
ー今度の『となりのトトロ』という映画は、どういうイメージなんでしょうか。
久石:
全体に日本の古きよき時代というか、空気が汚れてなくて、山があって川があって、子供たちは目いっぱい遊んでいる、というイメージでしょうね。ただ、時代考証的に何年頃とかいうんじゃなくて、もう宮崎ワールドですから、時代とかいうものには僕はあんまりこだわらないようにしてるんです。トトロの歌のアルバムはすごくいいと思いますよ。ものすごく時間もかけましたしね。本当に素直に大きな声で歌える歌をつくってくれっていう宮崎さんの注文ですから、だからすごく大変でしたよね。まず、そういう歌手がいないんですよ、基本的には。そういう人を捜すことから始めましたからね。でも、これは楽しみにしてください。
ー今度はもうひとつ別の仕事、アーティストのためのアレンジャーとしての意見をお聞かせください。
久石:
日本には優秀なアレンジャーって大勢いるんですよ。だから、わざわざそこで僕も頑張ることないなとか思ったりするんだけど、ただ、例えばちょっとマニアックな、ジェネシスっぽい音だとか、ああいったアプローチでアレンジできたらベストだなあ、と思いますね。あるいはホール&オーツのようなすごくスッキリしたアレンジだとか、あんまりゴチャゴチャしないでね、キッチリした仕事だったらやってもいいなと思ってますね。最近はだんだんそういう風にやれるようになってきたんで、それなりの成果が出せてるな、という気がちょっとしてます。ただ、自分でメロディー書いた時の方がいいものができますね。アレンジだけだと、そこで主張しちゃって、やりすぎるから、あまりよくない(笑)。
ー15秒の世界は、どうでしょう。
久石:
CMは瞬間瞬間を切りとっていく作業だから、メロディーで勝負ってことではないですよね。論理的に解釈するには時間が短かすぎるんです。映画ってある程度論理的に解釈できるんですね、このテーマはこう使ってとかね。CMは15秒、30秒ですからね。その短い時間に時代の先端の音を切りとって入れていかなければならない。そうすると、非常にサウンド主体にしていかなければいけなくなりますよね。切り売りですよね。
全体が15秒として、音楽を聞かせられるのは頭の7秒ですからね。7秒っていうと1小節か2小節しかないですからね。頭7秒で、エッ何これってふり返らせられるかどうかが勝負だと思ってるんですよ。おもしろいけど、大変ですね。
ーフェアライトという楽器について、お聞かせください。
久石:
とにかく民族音楽が死ぬほど好きなんですよ。フェアライトというのは、オーストラリア製のサンプリング・マシンなんですが、前だと民族楽器なんていうのはどこかまで行ってその楽器を手に入れてこないとその音は出せなかったわけですけど、これだとデジタルで記憶させて鍵盤でその音を弾けるわけです。機械合成音っていうのはあんまり好きじゃなくて、サンプリング・マシンというのを駆使していくことによって、新しいアコースティックな世界がつくれんじゃないかと思ってるわけです。音もすべて管理できているし、ニュアンスも出しやすいんですよね。意外と完全主義者でね、曖昧なものが入ってくるのは好きじゃなくて、そういう意味では今のスタイルが自分には一番あってると思ってます。
ーこれからの予定を聞かせてください。
久石:
去年から懸案のピアノのソロがありまして、去年の11月にロンドンで4曲録って来てそのままなんですよ。日本で残りを録ろうとしたら、音質が違いすぎてダメなんですよ。環境も違うし楽器の鳴りが違うし、しかたがないんで、11月か12月にまたあっちへ行って残りをやるつもりです。これは、僕がやってきた映画の音楽をできるだけシンプルに一人で弾くというやつなんですよ。もちろんナウシカも入ってるしラピュタも入ってるし『Wの悲劇』『早春物語』それから『漂流教室』まで全部入れて、久石譲メロディー集みたいなね、ものになると思うんですよ。どうしてもアレンジの仕事もしてますと、いろんな音を使って壮大なサウンドをつくるみたいなのが多いでしょ。それで、できるだけ原点に戻りたくて、ピアノ1本で、しかもメロディーをケバケバしく弾きまくらないで、サティのようにシンプルにしてアルバムをつくりたいということなんですね。そのためには、音質がね、飛びぬけて深い音のするところに行かないと。ロンドンのエアー・スタジオっていうところの1スタのピアノが世界で最高だと思うんですよ。どうしてもあそこで録りたいですね。
あと、藤原真理さんとう国際的なチェリストがいますが、この人と実は春先からLPつくってんです。これもすごいゼータクでね、ちょっと録っては2~3ヵ月おいてまた録って、で、ちょっと気に入らないから全部捨ててまた録り直ししてるというね、信じられないことしてんですけど、これはすごいですよ。ナウシカ組曲というチェロとピアノのためだけの作品をつくってる最中なんです。
やり始めるとね、すべて大変になっちゃいますね。
(「Hundred ハンドレッド 1987年11月号」より)

Posted on 2022/01/25
音楽雑誌「Jazz Life別冊 ピアノプレイブック No.10」(年4回発行/1990年10月31発行)に掲載された久石譲インタビューです。映画『タスマニア物語』のタイミングですが、これまでの経歴を掘り下げていくような内容になっています。
JOE HISAISHI INTERVIEW
『タスマニア物語』では、正統派の映画音楽をやりたかったんです。
久石譲
『タスマニア物語』を始め『風の谷のナウシカ』『魔女の宅急便』などの映画や、NHKテレビ『人体』の音楽を作曲した久石譲さん。いつも、とっても美しい音世界を感じさせてくれますが、実は学生時代から現代音楽を研究し、ミニマル・ミュージックをポップスの世界に導入した先駆者でもあるのです。そこで、久石さんの創作活動の一端を覗かせていただきました。その音楽のように、親しみやすくてピリッと辛口のスパイスが利いたインタヴューです。
特にアニメだからという意識はないんです
ー『風の谷のナウシカ』を始め、アニメの音楽をお書きになってらっしゃいますが、映像と結んだ音楽を始められたキッカケというのは?
久石:
やはり、小さい時から映画が好きだったということはありますね。非常に映画に親しい環境だった……たくさん見たということで。
ー印象に残っている映画というのは?
久石:
もう、すごい量を見ていますので特にこれと限定できないですよ。多すぎて…。高校とか大学の時に一番見ていましたので、その頃のというと、(フェデリコ)フェリーニとか(ミケランジェロ)アントニオーニとか、あの一連のヤツですね。『サテリコン』『王女メディア』、あのへんのは印象に残っていますね。
ー特にアニメについては?
久石:
う~ん、実はね、特にアニメというものを意識したことはないんですよ。僕にとっては、映像の延長というか…。
ー久石さんの創作活動の一部という位置づけで?
久石:
まったくそうです。たとえば、宮崎駿さん(『風の谷のナウシカ』などの監督)は、特にアニメの人とは思っていないんです。日本の有数な映画監督のひとりと捉えているんです。彼にとっての手段がアニメかもしれませんけど、僕にとっては実写のものと同じようにしかやっていない。当然アニメの方が現実の動きと違うから、その分だけ音楽が少し多めにしゃべる、ということはあっても、アニメだから…ということは思っていないですね。
学生時代は過激なことばかりやって
ー大学は国立音楽大学の作曲科ですよね?
久石:
ええ。
ーやはり小さい頃から音楽を?
久石:
4歳からヴァイオリンをやっていました。よく言われるんですけど、一番幸せなのは一回も他の職業を考えたことがない、ということ。
ーそんなに早く、音楽の道に進もうと思ったんですか?
久石:
4歳の時に音楽家になるって決めて、そのまんま来ていますから…。全然悩んだことがない(笑)。
ー学生時代はどんな音楽を聴いていましたか?
久石:
高校時代くらいからは現代音楽。ジョン・ケージとかシュトック・ハウゼンなど、そういうのばかり聴いていました。そのまま、超アヴァンギャルドの方に走って行ってしまいましたから…。ナウシカとはずいぶん違いますけどね(笑)。
ーアヴァンギャルドというと?
久石:
僕が学生時代やっていたのは、舞台に出て椅子をバーンと放り投げて帰って来るとか、ピアノの中にシンバルとか入れて、弾いてもまともな音にならないとか、過激なことばかりやっていました。
ー久石さんの作品には、ミニマル・ミュージックの手法などを取り入れられたものも多いですが、ミニマルはいつ頃から?
久石:
大学2年くらいかな? ある時に、テリー・ライリーの「ア・レインボウ・イン・カーヴド・エアー」というのに出会って、3日くらい寝込むくらいにショックだったんです。それまで、僕らはオーケストラのスコアをね、60段80段1個1個書いて緻密に作ってた時に、あの単純な「ア・レインボー~」を聴いて…。一瞬ロックかな?って思ったんだけど、後で最先端のアメリカの現代音楽だということがわかった瞬間に、雷に打たれたようなショックを受けたんです。
自分はジャンルに拘ることはない
ー今まで緻密なスコアを書いていたのが、ミニマルに変わるというと、かなりのご苦労が?
久石:
大変でした。4年くらいかかりましたね。ミニマルをやるためには、譜面を緻密に書いて”これが僕の作曲です”というんじゃ意味がないんですよ。環境から全部作って行かなければならない。それで、バンドを組んだりとか、みんなで練習して…。同じパターン延々とやるわけですから、1曲40分くらいかかる。ひとつのコンサート3曲で終わったり(笑)。そういう活動をしばらく続けていたら、僕は現代音楽の方から登って行ったんだけど、ロックの方から登って来て同じフィールドでやっている人もいっぱいいる、ということに気がついたんです。そのひとりが、マイク・オールドフィールド、あの「エクソシスト」の。それから、クラフトワークだとか、タンジェリン・ドリームだとかね。彼等もミニマル・ミュージックとテクノ…、エレクトロニクスをドッキングさせた音楽ですよね。その中でも一番ショックだったのがブライアン・イーノだったんです。
ー現代音楽とロックの両方からアプローチがあって…。
久石:
そう、それでその境がなくなっちゃったんです。僕は、その時ムクワジュというパーカッション・グループを作ったんです。高田みどりとか、日本の若手の打楽器奏者の主だった人を集めてね。そのバンドでコロムビアから『MKWAJU』というレコードを出したんです。アフリカの素材をそのまま使ってパターンを作ったものなんですけど、日本初のミニマル・ミュージックのアルバムなんですよ。ところが、それがフュージョンのジャンルで売れちゃったんです(笑)。
ーフュージョンのジャンルで!?
久石:
そう(笑)。その段階で僕が思ったことは、これ以上クラシック(の世界)っでやっていても意味がない、ということ。何故なら、リズムが違う。硬いんですね。そうした時にブライアン・イーノなどを聴いて、自分はジャンルに拘ることはないと思いました。それで、クラシックの活動をいっさいやめて、ポップスというフィールドに出て行ったんです。それまでもテレビ(の音楽)とかもやっていましたけど、基本的には現代音楽の作曲家がメインでしたから。
ーポップスの世界に出て来ていかがでしたか?
久石:
むしろ、ポップスというフィールドの方がアヴァンギャルドがいっぱいできましたね。最初に『インフォメーション』というアルバムを作ったんです。これは糸井重里さんの「おいしい生活」とドッキングして、”おいしい生活にはおいしい音楽を”というキャッチフレーズで、知的ポップスという形で出したんです。それをやった後が「ナウシカ」などの作品ですね。
僕のベースにはアヴァンギャルドが
ーミニマル・ミュージックは、ある意味ではリズムのおもしろさみたいなものもあると思うのですが?
久石:
そうですね。リズムにはすごく興味がありますね。ある時期はリズムしかなかった、みたいな…。僕はアフリカの音楽がすごく好きで研究して、結局ミニマルの人ってアフリカの音楽を研究しているんですよ。イーノも行ったし、スティーヴ・ライヒもそうですね。アフリカといってもガーナ。ガーナの音楽が一番複雑なんですよ。リズム構造が。
ーポリ・リズムみたいな?
久石:
ものすごいですよ。2/4と3/8、16/8とかいうリズムが同時進行…。
ーどっか一カ所で合って、あとはズレていくような?
久石:
そうそう。そういう音楽にのめりこんでいまして、その時は『アルファベット・シティ』というアルバムを出しました。これはすごかった。大アヴァンギャルド。メロディなしのリズムの洪水なんです。ニューヨークでトラックダウンしたんですけど、A&Mとセルロイド・レーベルの2社から契約したいと言ってきましたね。
ー久石さんのベースには、アヴァンギャルドの世界があるんですね?
久石:
ええ。おもしろい話がありまして、そのアルバム作っている時に、某レコード会社のアイドルをプロデュースすることになって、『アルファベット・シティ』を聴かせたんです。そうしたら、その仕事がなくなっちゃった(笑)。うちの〇〇が壊されるって(笑)。そのくらいアヴァンギャルドだったんです。
ーこれは、オフレコにしておきましょうね(笑)。
久石:
ハッハッハッ(笑)。もう時効ですよ(笑)。
もう1回やろうと思ってもできないですね
ーリズムという面では、たとえばナウシカの音楽にしてもかなり凝っているという印象を受けるのですが、映像とのドッキングという自由度の少ない分野でお作りになる難しさはありますか?
久石:
作曲家というのは、基本的に自分のアイデンティティというか、自分の個性とかスタイルをどう築いていくか、というのが使命なんです。しかし、それを無理やり作って行くというのは不自然ですよね。僕の場合は、学生時代からミニマル・ミュージックというものにどっぷり浸かっていたわけです。それを否定しようとするとウソになってしまうんです。だから、ポップスのフィールドでも、それが自分のベーシックにあって構わないと思うんです。
ーミニマルとかが?
久石:
そう。ただ、ポップスのフィールドで一番必要なのはメロディなんです。ミニマルやってた頃は、逆にメロディは必要なかったんですよ。ポップスの場合、そのメロディがキチッとしていれば、バックでどんなアヴァンギャルドやっても平気だし、という捉え方もあるわけです。それが、今の僕のスタイルなんですよ。映画音楽らしいものを作ろうとするより、自分なりの映画音楽を確立しようと思ってやればいいんです。
ーそういう意味でも、ナウシカの音楽というのは、印象的な美しいメロディと凝ったリズムの対比が素晴らしく、今までにない映画音楽という感じがしますが…。
久石:
そう感じていただければうれしいですね。作っている最中は、自由な音楽表現をしたつもりなんですけど、後で聴いてみると映画音楽としてオリジナリティがあるんじゃないかな? という気がしています。ある意味では、僕の中でメロディというものの存在が大きくなったのはナウシカからですね。
ーナウシカは、今まで持っていたリズムの鋭さとメロディが融合した作品?
久石:
そうかもしれませんねえ。ただ、具体的に言うとナウシカの段階では、映画音楽としてのバランスは決してよくないんですよ。つまり、打ち込みものでやった明確な部分と、ミニマルとオーケストラの部分が渾然一体していなくて、はっきり別れながら存在しているように自分では感じるんです。だから、まとまりという面では『ラピュタ』の方が好きなんです。
ーしかし、そういう部分を超えたエネルギーみたいなものを私は感じるのですが?
久石:
そういうエネルギーはあるかもしれませんね。もう1回やろうと思ってもできないですね。狙ってやれるものではないですから…。やはり、あの時期、あの時でしかできなかったことでしょうね。
今、ピアノに魅力を感じているんです
ーやはり、監督とのコミュニケーションも大切ですよね。
久石:
打ち合わせ徹夜が2日とか3日続いたり…。凄まじかったですよ。
ー場面場面の細かい部分まで?
久石:
やりますよ。こちらも折れないし。あそこまで緻密に(打ち合わせを)やる映画音楽はないかもしれないですね。
ー何秒と何コマ目まで音が入るとか?
久石:
ナウシカの時はそこまでやっていないですけど、ラピュタ以降はやってますね。今度の『タスマニア物語』などは、もっともっと凄まじいですよ。1秒の何十分の位置まで合わせてますので、時間がかかりました。実質半年はかかってますね。
ー『タスマニア物語』を作る時に考えたことは?
久石:
プロデューサーからの注文は、日本中が口ずさめるもの。僕が考えたのは、基本的にはやさしさと広がりですね。すごく贅沢な作り方をした音楽ですよ。シンセサイザーですむ部分をわざわざその上にオーケストラをかぶせたり。ちょっと聴いただけではわからないですけど、かなり凝っていますね。そういう意味で贅沢な作り方といえますよ。
ーそれでは最後に、今後の活動などを。
久石:
今、ピアノにすごく魅力を感じているんです。学生時代はあまり好きでなかったんですけど(笑)。最近ではハノンをまたさらったり(笑)。
ーホントに!?
久石:
45分以上はやりますね。珍しいでしょ?(笑)好きなんですよ。
ーまた、ピアノ・アルバムを出されるとか?
久石:
実は、その予定があるんです。まだプリプロダクションの段階なんですけど、これからイギリスで録音します。
ー発売は?
久石:
来年早々くらいじゃないかな? まだ、どの雑誌にも言っていない(笑)。
ー貴重な情報ありがとうございます(笑)。また、その時にお話を伺いたいと思っています。
(「Jazz Life別冊 ピアノプレイブック No.10」より)

Posted on 2022/01/24
久石譲の最新ロングインタビューが海外ウェブサイトにて公開されました。2021年に行われた取材のようです。インタビューの経緯など詳細はわかりません。動画発信に向けてというよりも取材風景をそのまま公開するに至った、そんな雰囲気を感じます。117分に及ぶロングインタビューです。どうぞご覧ください。 “Info. 2022/01/24 「JOE HISAISHI: LA LECCIÓN DE CINE」久石譲 ロングインタビュー動画公開” の続きを読む
Posted on 2022/01/24
CM情報誌「CM NOW 1988年 冬号」に掲載された久石譲インタビューです。放映中のCMや出演俳優・アイドルにスポットを当てた雑誌らしい、当時CM音楽を数多く手がけ『α-BET-CITY』や『CURVED MUSIC』にその楽曲たちが収録された久石譲です。CM音楽にフォーカスした貴重な内容になっています。
ただし、話題に上がっている多くのCM楽曲は音源化されていないものもあります。
最初に画面を見た時のインパクトで音楽全体の70%が決まる
久石譲
リズムにこだわった、音楽作りをしています。
久石さんの手掛けたCM音楽は多く、カネボウ「ザナックス」シリーズ、ゴクミの「スコッチEG」シリーズ、日本生命「ジャスト&ビッグユー(菊池桃子)」、エスノラップの大韓航空、桂三枝がシリアスに決める「ミツカン味ぽん」など、いずれも話題になったものばかり。他にも「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」「Wの悲劇」「漂流教室」「この愛の物語」他の話題の映画音楽や、菊池桃子・井上陽水らの曲のアレンジ等活動範囲は広い。
ー久石さんの音楽、特にCM音楽は、リズムに、特徴がありますね。
久石
「僕はずっと「ミニマル・ミュージック」をやっていた関係で、作曲法も自然にリズムにこだわるようになっていて、普通によくあるリズムでなく、特にCM音楽では「かつて誰も考えつかなかった」新しいリズムパターンを作ってやろうと思い、流行のリズムなどは、できるだけ意識して、使わないようにしてます。
ーCM音楽はどうやって作りますか?
久石
「できあがってきたフィルムを見て、そこに音楽をつけていくやり方が多いです。僕の場合は、画面を見た時のインパクトで、音も70%ぐらい決まります。最初見た時にこのCMは何を伝えようとしているのかということを読みとり、どういう音楽をつければ、それが見ているほうにうまく伝わるかを大事に考えます。
スタジオへ入ると大体5~6時間ぐらいで完成しますね。長くて30秒か60秒の短い時間の音楽を、長い時間試行錯誤して作っても良いものができるとは思わない。特に僕の場合、見る人を画面に引きつけるための、インパクトを大事にしています。インパクトという一瞬の力は、一瞬の集中力で作るべきだと、僕は思いますね。」
ーシンセサイザーをよく使われていますね。
久石
「そうですね。僕は今、フェアライトII、IIIという2台のサンプリング楽器を使ってますが、しょせん音素材にすぎないと思っています。自分の頭の中にある音をうまく伝えることができるので、シンセをよく使っているだけで、例えば自分のイメージにオーケストラが合うと思うと、そちらを使います。とにかく自分が頭の中に描いた音のイメージが最も重要な事だと思います。」
ーアイドルCMも、かなり手掛けてますね。
久石
「そうですね。後藤久美子さんは、最初見た時、すでに彼女が独特の世界を持っていることに驚きましたね。スコッチEGは、白い服と黒い服を着た2種類のCMがあって、普通音楽をつける時トーンと色の関係で、白い服には高いトーンのヴァイオリン、黒い服には低いトーンのチェロを組み合わせるんですが、彼女の持つ異質な雰囲気に合わせて、楽器を逆にしてみたら、成功しました。その時、普通のアイドルとは違うなあと感じました。
菊池桃子さんの場合は、また違ったキャラクターの持ち主で、遠くを見る眼差が印象的でした。その視点もニューヨークなどの大都会じゃなく、遠くのエスニックな世界を見ているようなイメージを受けました。それで、あのエスニックな感覚の音楽を作りました。」
過激に時代を超越するような音楽を作りたい。
ー一番印象深いCM音楽はなんでしょう。
久石
「カネボウの「ザナックス」のCMですね。これは、今までに3本シリーズで作っていて、全部メロディーは同じなんですけどアレンジを商品に応じて少しずつ変えています。最初にゆっくりとした部分があって、途中から、ティンパニが鋭角的なリズムを刻んでゆくという展開になっています。
このCM音楽の発想は、郷ひろみさんのかっこよさが、まずインパクトとしてあって、あとザナックスのロゴは、角張った文字で構成されてるんだけれど「その角張ったイメージを音で表現できないか」というディレクターの注文の2つの要素でできています。」
ーこれからの活動の予定は
久石
「実は夏頃からCMの仕事は減っています。映画等の大作モノを何本か並行して受けてしまって、時間がなかったのと、もう一つは、今のCMがあまりおもしろい状況ではなかったということです。
休みたいという理由は、現在のCM音楽の傾向は保守化してて商品も高級化志向が強く、車でも「ビッグオーナーカー」と呼ばれるものが出てきた。そういう商品に、過激な時代を超越するような音楽は必要なくてクラシックやきれいな音の方が好まれるんです。僕はそういう音楽は作りたくないので休んでいましたが、また少しずつ時代の流れも変わってきたという感じなので、11月から再び積極的にCMの仕事もやりだしています。
あと、チェリストの藤原真理さんと、「風の谷のナウシカ」の映画音楽をチェロとピアノ用に編曲した「ナウシカ組曲」やパブロ・カルザス作曲「鳥の歌」のピアノパートを作曲し直した作品を収めたレコードをリリースする予定です。クラシックのスタンダードを作ろうとする試みの第一弾です。」
(「CM NOW ’88 WINTER」より)

Posted on 2020/03/22
2020年5月10日、山形県合唱連盟創立70周年事業「合唱の祭典」コンサートが開催されます。
世界で活躍する若手屈指の指揮者・山田和樹と東京混声合唱団を迎え、山形のアマチュア合唱団・オーケストラとともにつくりあげる合唱祭。東京混声合唱団の演奏のほか、この日のために久石譲が新たに制作した作品と組曲「蔵王」を出演者合同で演奏します。 “Info. 2022/04/30 「山形県合唱連盟創立70周年事業 合唱の祭典」久石譲委嘱作品 初演予定 【振替 1/23 Update!!】” の続きを読む
Posted on 2022/01/23
雑誌「月刊 ログイン LOGiN 1985年5月号」に掲載された久石譲インタビューです。フェアライトCMIの話から『α-BET-CITY 』まで、当時の仕事環境がよくわかる内容になっています。
ミニマルからアニメ・映画音楽へ
180度方向転換
久石譲
日本には今、フェアライトCMIが15台あるらしい。その数少ないユーザーである作・編曲家、久石譲さん。そして可愛い声優、高橋美紀ちゃん。今月はこの2人にインタビューしました。
現代音楽+映画音楽=フェアライトCMI !?
久石譲という名前を知ったのは、アニメ映画『風の谷のナウシカ』のイメージアルバムだった。アニメビデオ『バース』にもその名前がクレジットされていた。その後、何かの雑誌を読んで、彼がフェアライトCMIの所有者であることを知った。
正直言って、そのときまで久石なる作曲家に大した興味があったわけじゃない。”きちんとしたアレンジをする人だな”、”またフェアライトの所有者がひとり増えたのか”、その程度にしか考えていなかったのだ。
ところが、4月号で紹介したイメージアルバム『吉祥天女』を聴いて、彼に対するイメージがすっかり変わってしまった。実にハードなサウンドなのだ。この手のLPにしては珍しいくらい、いたるところで”新しい音”が聴ける。たんに職業的アレンジャーなら、こんなことまでするはずがない。なにしろ、ふだんはイギシルのニュー・ウェイブにしか興味を示さない白川巴里子嬢まで「一度、会ってみたい」と騒ぎ出す始末。
とまあ、こんな経過を経て、久石さんと会うことになった。で、会う前に経歴ぐらい知っておかなくちゃ失礼だと思い、彼の事務所で用意してくれたプロフィールを読んで……ビックリ。5歳の頃からバイオリンを学び、国立音楽大学作曲科卒。大学在学中から現代音楽、それにミニマル・ミュージックの作曲・演奏活動を始め、1981年までその道一筋。
ところが1982年に大変身、アニメや映画音楽、歌謡曲を作曲するわ、フェアライトCMIを買うわ、挙げ句の果てに24チャンネル・マルチトラック・レコーダーまで買ってしまったらしい。
とても興味深いのだけれど、なんだか会うのがとてもコワイ……一番苦手なタイプの人間かもしれない。ミニマル対アニメ・映画音楽、歌謡曲、どう考えたって水と油。さらに『吉祥天女』のニュー・ウェイブっぽいサウンド…イメージがひとつに結びつかない。
「今、2枚目のソロアルバムを制作しています。昨日の夕方、録音し始めて、ついさっき終わったところなんですよ」
徹夜明けだというのに、嫌な顔もせずニコヤカに応対してくれた久石さん。まずは、ホッとひと安心だ。
超アバンギャルドはポップになる!?
5月に、徳間ジャパンから発売される2枚目のおソロアルバムのタイトルは”だまし絵”。そのなかの1曲を聴かせてもらった。
ムムム……、衝撃的!『吉祥天女』とも全く違う。今まで聴いた久石サウンドのなかでは一番過激だ。さまざまな音がひとかたまりになって、激しく突っ込んでくる──そんな感じなのだ。
「ほとんどノイズだらけで、まともな音はひとつも使ってないんですよ。アバンギャルドも行きすぎると、逆にポップになり得るんじゃないかと思っているんです」
だから中途半端に妥協するつもりはない。あくまでも過激に、しかもポップに、なのだ。一定のリズムを刻むのがドラム、という概念さえなくしてしまった曲もあるらしい。とにかく、最終的にどんなアルバムになるのか、今のところ久石さん自身も深く考えていないようだ。
「僕はもともとクラシックというか、現代音楽から来てるでしょ。するとどうしても、LPのコンセプトとか理論的なことを考えてしまう。それに対して自分がどこまでやれるか、ヘタをするとプログラムされた旅に出るみたいで面白くない。今回はアルバムの構成をいっさい考えずに、とにかく面白ければいいということで、まず14~15曲作り、最終的に10曲くらいにしぼろうと思ってます」
こうした録音の進め方自体、久石さんにとっては新しい試みなのだ。それにしても、現代音楽からいわゆるポップ・ミュージックに移ったのは何故だろう。
「現代音楽をやっていた頃、途中からミニマル・ミュージックをやるようになっていた。パターン音楽だから、ひとりで30~40分間、平気で弾いてるわけですよ。ところが当時のシンセサイザーは単音で、音色のプログラミングもできない。必然的にセットした音のままいじらない。シーケンサーも同じ。最初に組んだフレーズを最後まで使うしかない。タンジェリン・ドリームなんかと同じです。つまり、当時の最先端のロックとミニマルはものすごく近かったわけです」
で、どんどんロックの方へ近づき、リズム中心のサウンドでおしていたら、いつの間にかニュー・ウェイブの位置にいた、というわけらしい。リズム中心では、必然的に現代音楽の世界にはいられない。完全に現代音楽をやめてしまったのだ。とはいうものの、とてもクラシカルな面も久石さんは合わせ持っていて、その要素までを捨ててしまったわけではない。それが強く出たのが、『風の谷のナウシカ』のイメージアルバムだ。同時に、作家としていいメロディを書きたいという気持ちも常に持っている。
断片的に見たときにはそれぞれの仕事がバラバラに思えたが、こうして話を聞いてみると、ちゃんんとひとつにまとまった。「ストリングスのアレンジが好きだ」と言うのも、今はよくわかる。
頼まれたから引き受けるというのでは、決してない。”遊べない仕事”は、基本的に断るそうだ。遊べそうだと引き受けた仕事は、今年もかなりある。去年このスタジオで作ったレコードは、イメージアルバムや井上陽水のLPまで含めると14~15枚。今年はそれ以上の枚数になりそうだ。そのほかに、テレビドラマの音楽、CMなどもある。昼間は(株)ワンダーシティー社長としての事務処理もしなければならない。
「今、けっこう規則正しい生活をしてるんですよ。お昼ごろここにきて、5時まで事務、5時から夜中までがミュージシャンです(笑)」
今、自分から頼んででもやってみたい仕事があるという。大友克洋の『アキラ』のレコード化だ。久石さんをこれ以上忙しくさせるのはよくないかもしれないが、できることなら是非、実現してもらいたいと思う。
(「月刊 ログイン LOGiN 1985年5月号」より)

Posted on 2022/01/22
雑誌「月刊 イメージフォーラム 1986年10月号 No.73」に掲載された久石譲インタビューです。映画『天空の城ラピュタ』公開直後にあたります。アニメ特集が組まれ、宮崎駿監督のインタビューも9ページにわたって収められています。またラピュタにまるわる専門家らによる考察や、当時のTVアニメ事情など時代を切り取った深い内容になっています。
特集●アニメ爆発!
インタビュー────『天空の城ラピュタ』『めぞん一刻』の音楽 久石譲
日本映画は、音の遅れを取り戻さなければならない。
ー久石さんは七〇年代頃から作曲、編曲、プロデュース等の音楽活動を始められて、映画音楽は宮崎(駿)さんの『風の谷のナウシカ』から最近の『天空の城ラピュタ』、澤井(信一郎)さんの『めぞん一刻』まで九本の作品を手がけられていますが、映画音楽をやるようになったのはいつ頃どういうきっかけからですか。
久石:
映画は実は若い時からやっていたんです。うちの学校(国立音楽大学作曲科)に佐藤勝さんという黒澤明さんの映画音楽をずっと手がけていらっしゃる大先輩がいまして、僕は大学を出た当時佐藤さんのお手伝いをしていたんです。新藤兼人さんの映画とか、ドキュメンタリー、公害問題を扱った映画など、いろいろなものをやりました。それからテレビも少しやったんですけど、どうしても限られた二、三時間とか四、五時間で何十曲と録らなければならないので、だんだん辛くなっていったんですね。テレビはかため録りが多くて、しかもモノラル録音ですから、よりいい音楽を作るというよりは、商売的に技術的にやらないとできない。つまりかため録りして1クールなり2クールなりの間で処理していくから、悲しい曲、明るい曲、走っていく曲……とゴチャゴチャ作らなければならなくて、あれをやっていると、基本的に絶対クリエイティブな感じはしないですよね。それでもう少し時間をかけてよりクオリティの高いものを作りたいということで、テレビの仕事は少しずつ減らしてレコードのほうへ移していったんです。そうして久しぶりに本格的に手がけた映画が八四年の『風の谷のナウシカ』なんです。映画はシーン一つに音楽が一つ付いているわけですから、クオリティ高く作れるんです。
ー『──ナウシカ』と『──ラピュタ』では対象年齢が違う。そういう点で音楽を作る時の違いはありましたか。
久石:
ありましたよ。これはとても辛かったんです。大人向け、子供向けというわけではないですけど、自分の音楽は結構大人びたものだったんんです。それが今度のようにテーマが愛と夢と冒険というようなものだと、メロディが暖かいということが一番重要になる。それを表現するのに苦しみました。大人が聴いた瞬間にいいな、懐かしいなと思う曲を作りたくて、イメージ・アルバムを書くのに死ぬほど苦しみました。
ー『──ナウシカ』のほうが、取り組みやすかったですか。
久石:
ええ。この間、テレビでオン・エアされた時に見ていて思ったのですが、僕はもともとミニマル・ミュージック、現代音楽をやっていたんですけれど、『──ナウシカ』の中でもかなりその要素が強くて、あらためてびっくりしたんです。とてもストレートに自分の音楽をやっていたな、と感じましたね。それと澤井さんの『早春物語』なんかは基本的に青春映画で、蔵原(惟繕)さんの『春の鐘』は文芸大作なんですけど、それぞれ好きなんです。いわゆる大人向けの難しい作品がやりたいというわけではないんですが、意外と『春の鐘』のような作品で自分が出しきれたな、と思います。
ーそして『──ナウシカ』の次が『Wの悲劇』でしたね。宮崎さんと澤井さんでは音の付け方はまったく違いますでしょうか。
久石:
ええ。宮崎さんと澤井さんというよりは、アニメーションと実写の映画では音の付け方が全然違うんですよ。アニメーションは実写に比べて、どうしても表情豊かじゃないので、よりダイナミックに、より表情オーバーに雄弁に語る必要があるんです。音楽もかなり情報量が要求される。実写は逆に映像と同じ様にオーバーにすると絵空事になっちゃうから、音楽は極力少なく表現を抑えるというか、日常の音の感じに近いように作らなければならない。根本的な違いがあるんです。それから実写の場合は画面が変わって、三分とか四分位連続して音楽を流していても、そう異和感はないんですよ。ところがアニメーションはカット割りも激しいし、動きがチョコマカしているせいか、画面を無視して音楽をドーンと流すのは不可能なんです。特に宮崎さんのように細かい絵を描かれる人は、気持ちよく音楽が抜けていってしまうと、細かく表現した絵が見てもらえなくなってしまうということがあるんです。
ー今回の『──ラピュタ』もかなり精密な音楽だという印象を受けました。
久石:
そうなんです。『──ラピュタ』ではコンピューターを駆使して各場面を一秒何コマまで計って、ピタッと合わせていったんですよ。これは日本映画ではかなり画期的な試みだったんじゃないでしょうか。
ーあまりにも合いすぎていて、びっくりしたぐらいです。
久石:
例えば敵方と味方が交互に現れても、それぞれの音楽がピタッピタッと合う。この方法は昔ディズニーもやっているんですけど、冒頭の殴り合いのシーンではボカッと殴る時にオーケストラの音が合っているんですね。かなり時間がかかりましたが、『──ラピュタ』のように映画音楽で、あくまでも音楽を画面に連動させるのは日本映画で初めてできたことだと思うんです。
ーしかし、逆に映像に音を合わせるということで、制約というようには思われませんでしたか。
久石:
制約があるということは、セオリーさえ技術的な形でふめれば、曲を作る時逆によりどころになるんです。今回楽だったのは先に『──ラピュタ』のイメージアルバムという形で、メインテーマができていたんです。プロデューサーの高畑(勲)さんが大変音楽に詳しい方で、宮崎さんと僕とでどこにどの曲を使うかという、非常に突っ込んだ話ができていたので、今年の二月の段階でシナリオを読んだだけのイメージでどんどん作っていったんです。
ーということは先に音楽があったわけですか。
久石:
映像に音を合わせるというのは技術上の問題で、もっと大きなコンセプトが重要なんです。実は『──ナウシカ』の時に、宮崎さんと高畑さん、高畑さんは『──ナウシカ』でもプロデューサーだったんですけど、僕と三人で闘ったんですよ。一日十八時間くらいの話し合いを何日もやった。宮崎さんと高畑さんがこの曲をこのシーンに付けるというのを僕がことごとく否定したんです。「どうしてそこにその音を付ける必要があるんだよ」みたいな会話をし尽くしたんです。だから今回の『──ラピュタ』ではお互いの姿勢がわかり合った上で、しかもメインテーマはできてたわけだから非常に楽だったですね。
でも、いくつか使えない音楽もあったんです。例えばフラップターという飛行機の音楽は普通に考えると、パタパタッと飛んでいかにも明るいイメージなんですけど、映画の中でフラップターが出てくるところは、ほとんど危機一髪、助かるか助からないかというシーンですからイメージアルバムのフラップターのテーマは使えなくなってしまうわけです。そうした場合はイメージアルバムと映画の音は違うんです。ただし天空の城の音楽とか根本的なところはほとんど変わりませんでした。いきなり作曲家がメロディを書くのであれば、お互い抽象的な話しかできないでしょう。それが、例えばパズーのテーマを決める時に、「この曲の頭に、もっとインパクトの強い音があった方がパズーの気持ちがもっと雄大になるんじゃないか」と、そこまで話した上で録音に入っているんで、日本映画の音楽ではかなり緻細な仕事をしたと思います。
ーこれまで九本手がけられて、日本映画の音楽について何か言いたいことがありますか。
久石:
そうですね。ひとつ僕が言いたいのはアニメーションはすごく音に関して遅れていると思うんです。テレビのアニメの影響かもしれないんですけど、音楽が細切れになりすぎて効果音に頼りすぎちゃうんです。はっきり言って品が無いですね。擬音だとか音楽もME(ミュージック・エフェクト)なんです。三秒、五秒、一〇秒……長くて一分、それぞれを選曲家が選んでくっつけていくという形でやっていますよね。あれをやってる限りは日本のアニメーションは絶対良くならない。僕は断言しちゃいますね。録音やってる連中にはそういう傾向があって、それは闘っていくしかない。だから僕は「アニメを請け負ったのではなく映画を請け負った、映画としてこれをやらせていただきます」と宣言したんです。すべて三分、四分の長い音楽で、そのかわり徹底的に技術を駆使して、画面が変わった時には音楽も全部変えた。『──ラピュタ』を見て、僕は八〇%満足がいきました。
それと、とにかく早いうちにドルビーにして欲しいということですね。音の遅れを取り戻すのが急務だと思います。
ーそれは映画館の問題も含まれますね。
久石:
CDプレーヤーで聴いている時代なんですよ。みんなよりいい音で、ノイズもない状態で音楽を聴いているのに、このままだと映画の音の遅れはもっと拡がっていってしまう。こんなに音の便が発達しているにもかかわらず、映画だけ遅れているのは許されないでしょう。それで何十億かけた映画といっても通用しないと思います。この問題を解決して欲しいですね。『──ナウシカ』はモノラルだったんですが、『──ラピュタ』はドルビーにして宮崎さんも高畑さんもこんなに違うものかと驚いていました。宮崎さんがそのことを発見したのは収穫だったと思います。宮崎さんの作品はモノラルには戻らないですよ。そうやって一つ一つ監督さんが会社に対して、ドルビーでなければ絶対だめだと主張していってくれれば、必然的に映画館を改良していかざるを得ないでしょう。昔から女優さんの衣裳一枚と、音楽にかける予算が同じだったりするんですから。日本人の悪い体質で、目に見える物にはお金をかけるけれど、見えないものにはかけない。これは音楽をやっている者としてずっと言い続けようと思っています。自分の関わった映画では内容的には、いい監督さんたちに恵まれたので、あとはもっともっとこちらが変身して大胆な表現ができるようになりたい。昨年ぐらいまでは、できるだけ映画を壊さないように音楽を付けていたところがあるんですが、今年からは『熱海殺人事件』にしろ、『めぞん一刻』にしろ、前衛的な手法を取り入れているんです。
(七月三十一日、ワンダーシティ)
(月刊 イメージフォーラム 1986年10月号 No.73 より)
目次より(抜粋)
特集 アニメ爆発!
インタビュー 宮崎駿
視点の定め方で、見慣れた世界も変わるはずだ
『天空の城ラピュタ』映画的構造 暉峻創三
宮崎駿は天地の存在を忘れるなかれと語り続ける教祖である
音と映像のアニメ史 森卓也
前衛的、感覚的な娯楽
インタビュー 久石譲
日本映画は、音の遅れを取り戻さなければならない
映画の創造、アニメの原点 古川タク
動く絵にロマンを
アニメブームと日本映画のアニメ化 おかだえみこ
ロボットの敵はファミコンだった
アンケート 石坂裕一+植木吾一+編集部
アニメの観客は今……
アジアのアニメーション事情 小野耕世
文化の衝突はどんな作品を生み出すのだろうか
カナダ 西嶋憲生
アニメーションのパラドックス


