Blog. 2017年「久石譲ファンサイト 響きはじめの部屋」アクセス・ランキング

Posted on 2018/01/05

2017年「久石譲ファンサイト 響きはじめの部屋」年間アクセス・ランキングです。

2017年も精力的活動を展開した久石譲、近年その軸は多種多彩なコンサート。海外公演も充実し、コンサートから派生したCD作品やTV放送などますます話題に事欠かない一年でした。コンサートを追いかけ、最新情報を追いかけ、その合間に資料整理や横道それて想いしるし。1年間をバイオグラフィから振り返ってみましょう。

 

2017  

  • コンサート:「久石譲 ナガノ・チェンバー・オーケストラ 第3回定期演奏会」開催 C D 1 2 3 4 5 6 7
  • コンサート:「久石譲 オーケストラ・コンサート with 九州交響楽団」開催 C 1
  • コンサート:「THE WORLD OF JOE HISAISHI」(プラハ)ゲスト開催 C 1 2
  • コンサート:「久石譲 & ミッシャ・マイスキー」(台北)開催 C 1 2
  • コンサート:「久石譲 シンフォニック・コンサート 宮崎駿作品演奏会」(パリ)開催 C 1 2 3 4 5
  • コンサート:「アートメントNAGANO 2017」開催 1 2 3 4 5 6 7
  • コンサート:「善光寺・奉納コンサート」開催 C 1 2
  • コンサート:「久石譲 ナガノ・チェンバー・オーケストラ 第4回定期演奏会」開催 C 1 2 3
  • コンサート:「久石譲 ナガノ・チェンバー・オーケストラ 第5回定期演奏会」開催 C 1 2
  • コンサート:「W.D.O. 久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2017」ツアー開催 C 1 2 3
  • コンサート:「久石譲プレゼンツ ミュジック・フューチャー vol.4」開催 C D 1 2 3 4
  • コンサート:「久石譲指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団特別演奏会」(三重)開催 C 1
  • コンサート:「久石譲 PREMIUM CONCERT 2017 in 仙台」開催 1 2
  • コンサート:「久石譲 ジルベスターコンサート 2017 in festival hall」開催 1
  • CD:ソロアルバム「Minima_Rhythm III  ミニマリズム 3」発売」 D
  • CD:ソロアルバム「久石譲 presents MUSIC FUTURE II」発売  D 1
  • CD:「家族はつらいよ 2 オリジナル・サウンドトラック」発売 D 
  • CD:「花戦さ オリジナル・サウンドトラック」発売 D
  • CD:「ベートーヴェン:交響曲第1番&第3番『英雄』」発売 D 1
  • 配信:「天音」/EXILE ATSUSHI & 久石譲 D
  • 映画:「たたら侍」(監督:錦織良成)※主題歌 「天音」/EXILE ATSUSHI & 久石譲 1 2
  • 映画:「家族はつらいよ 2」(監督:山田洋次) 1 2
  • 映画:「花戦さ」(監督:篠原哲雄) 1 2 3
  • 映画:「Our Time Will Come (明月几时有/明月幾時有)」(監督:アン・ホイ) D 1
  • TV:NHK WORLD「Direct Talk」出演 1 2
  • TV:NHK「NHKスペシャル ディープ オーシャン 第2集・第3集」音楽担当 D 1 2 3 4
  • TV:NHK「シリーズ ディープオーシャン 南極大潜航 幻の巨大イカと氷の楽園」音楽担当 D 1
  • TV:NHK「深海大スペシャル 驚異のモンスター大集合!」音楽担当 D 1
  • TV:NHK BSプレミアム「久石譲 in パリ「風の谷のナウシカ」から「風立ちぬ」まで 宮崎駿監督作品演奏会」放送 C 1 2 3 4
  • TV:スカパー!「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2017」放送 1
  • CM:東北電力「よりそう地域とともに篇」CM音楽 1
  • CM:ダンロップ「LE MANS V誕生篇/選べるダンロップ篇」CM音楽 D 1
  • CM:サントリー「サントリー緑茶 伊右衛門」「川下りの夏 編」「Oriental Wind」Newヴァージョン D 1
  • Topics:富山県ふるさとの歌「ふるさとの空」駅到着メロディー D 1 2
  • Topics:久石譲公式チャンネル開設 1
  • Topics:「平成29年度双葉郡中高生交流会 FUTABA 1DAY SUMMER SCHOOL」出演 1 2 3
  • Topisc:「NHK WORLD presents SONGS OF TOKYO」出演 C 1 2

Biography 2010- より)

 

 

眺めるだけでもすごい量と質です。気になった項目は各リンクを紐解いてみてください。さて、このなかからどんな活動がランキングに。一年を象徴するトピックに定番の人気ページも。今年2018年もさらなる久石譲活動に期待して、点と点をつなげるサイトとなるよう追いかけていきます。

 

 

2017年アクセス・ランキング -総合-

TOP 1

Info. 2016-2017 羽生結弦フリーFS楽曲 久石譲「Hope & Legacy」 について 【10/2 Update!!】

2016年の話題ながらその勢いはとまらず。大晦日「ジルベスターコンサート2016」から夏ツアー「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2017」で、オリジナル楽曲「View of Silence」「Asian Dream Song」の2曲が久石譲ピアノ&弦楽合奏でプログラムされたことも象徴的でした。

 

TOP 2

Info. 2017/06/09,10 「久石譲 シンフォニック・コンサート Music from スタジオジブリ」(パリ) コンサート決定!!

「久石譲 in パリ」コンサート開催情報をキャッチしたのは2016年11月。ジブリコンサートというだけでも注目度は絶大でした。

 

TOP 3

Blog. 「かぐや姫の物語」 わらべ唄 / 天女の歌 / いのちの記憶 歌詞紹介

ファンサイト4年連続でのトップ3君臨。いつか映画「かぐや姫の物語」の音楽についていろいろな角度から記してみたいと思っています。

 

TOP 4

Info. 2017/03/20 「久石譲 オーケストラ・コンサート with 九州交響楽団」(宮崎) 開催決定!! 【3/10 Update!!】

国内外問わずその地域のオーケストラと初共演も多い一年でした。ツアーでは回れない土地でコンサートすることも、その土地で愛されるオーケストラと久石譲のコラボレーションも。足を運ぶ観客の期待と満足感はSNSなどでたくさん見ることができました。

 

TOP 5

Info. 2016/04/16 [CM] 三井ホームCM「TOP OF DESIGN」 久石譲音楽担当

本格的なミニマル音楽で話題となったCM音楽。他CM音楽やTV音楽でもミニマル・ミュージックを全面におしだした音楽を聴く機会がふえ。新しい楽曲がエンターテインメントメディアで流れるたびに「かっこいい」という声。こういった反応や言葉に芸術性×大衆性の新しい久石譲が凝縮されています。

 

TOP 6

Blog. 「ふたたび」「アシタカとサン」歌詞 久石譲 in 武道館 より

「W.D.O.2016」にてジブリ交響作品化第2弾「交響組曲 もののけ姫」が世界初演されたことも記憶に新しいところ。そして「久石譲 in パリ」公演での「ふたたび」歌唱。これからまたコンサートやCD/DVD化などで触れる機会に恵まれたい名曲たち。

 

TOP 7

Info. 2017/09/06 [TV] NHK BSプレミアム「久石譲 in パリ」放送決定!! 【9/4 Update!!】

コンサート開催から3ヶ月後早くもTV放送、待ち焦がれたファンのボルテージは最高潮、TV放送当日はファンサイトもアクセスが集中してしまいちょっとパンク状態に。素晴らしいコンサートプログラムと映像美・音響美に酔いしれました。

 

TOP 8

Info. 2017/12/31 「久石譲 ジルベスターコンサート 2017 in festival hall」開催決定!!

上位常連の「ジルベスターコンサート」インフォメーション。大晦日にスペシャルなコンサート、年間コンサートのなかでも関心の高さと恒例行事としての定着感があります。最高の音楽で一年を締めくくることができるのはチケットを手にした人に贈られる最高のご褒美です。

 

TOP 9

Info. 2017/06/11 《速報》「久石譲 シンフォニック・コンサート Music from スタジオジブリ宮崎アニメ」(パリ) プログラム 【6/12 Update!!】

トップ10に「久石譲 in パリ」関連が3つも。なんだかパリな1年と錯覚してしまいそうでうれしいやらなにやら。今後の開催地は? これからもワールドツアー旋風を巻き起こす予感。

 

TOP 10

Info. 2017/Aug. Oct.「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ2017」「ミュージック・フューチャーVol.4」コンサート開催決定!! 【7/10 Update!!】

2大コンサートとして近年大きな軸となっているコンサート。ツアーで都市をまわるW.D.O.は各会場で大盛況、海をわたって海外公演も大熱狂。久石譲の新作とジブリ交響作品シリーズが世界初演される場としても注目度が年々あがっています。そして現代の音楽を届けるコンサートも定着しながらますますどんどん濃く進化しています。

 

TOP 11

特集》 久石譲 「ナウシカ」から「かぐや姫」まで ジブリ全11作品 インタビュー まとめ -2014年版-

久石譲の音楽が作られる過程に興味をもってくれる人がふえとてもうれしいです。聴いて楽しむ音楽、知って楽しむ音楽、なにか新しい発見や新しい聴こえかたがする。そうやって日常の音楽が豊かになっていくなら、作曲家や演奏家だけでなく聴き手にも”いい音楽”を育てていくことができるのかもしれませんね。

 

TOP 12

SCORE

久石譲監修、オフィシャル・スコア、オリジナル・エディションの楽譜を紹介したページです。ピアノ譜、室内楽、オーケストラスコアなど。

 

TOP 13

Info. 2017/12/20 「久石譲 PREMIUM CONCERT 2017 in 仙台」開催決定!!

地元オーケストラとの初共演となったひとつ。クラシック音楽「カルミナ・ブラーナ」と自作「風の谷のナウシカ」という作曲家としては並べて易しいプログラムではないなか、甲乙つけがたい対等な感想が多かったこと、指揮者としての充実ぶりをも象徴しているようでした。

 

TOP 14

Disc. 久石譲 『明日の翼』 *Unreleased

根強い人気と関心のある楽曲です。2011年に発表されてから今現在、未CD化であり、コンサートでも披露されたことのない幻の作品です。

 

TOP 15

特集》 久石譲 「Oriental Wind」 CD/DVD/楽譜 特集

久石譲の代名詞ともいえる曲のひとつ。2017年は長い沈黙を破ってNewヴァージョンのCMオンエアには驚きました。海外に発信するコンサート「NHK WORLD presents SONGS OF TOKYO」でも披露され、今ではもう日本の代名詞ともいえる曲のひとつ。

 

TOP 16

Info. 2016-2018 「久石譲 ナガノ・チェンバー・オーケストラ」 全7回定期演奏会 ラインナップ発表

長野市芸術館オープンから3年かけてのベートーヴェン全交響曲演奏会。いよいよ2公演を残すのみとなっています。久石譲作品もプログラムされたり、久石譲が今注目している古典/現代作品も意欲的に盛り込まれ、何と言っても久石譲が今追求している音が響きわたる演奏会です。

 

TOP 17

Overtone.第3回 羽生結弦×久石譲 「Hope&Legacy」に想う

TOP1にひっぱられるように見ていただいてありがとうございます。このコーナーは、直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと始めました。いろいろな角度から眺めていきたいと思っています。

 

TOP 18

Info. 2017/11/25 「久石譲指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団特別演奏会」(三重) 開催決定!! 【6/2 Update!!】

W.D.O.2017にもプログラムされた「TRI-AD」「天空の城ラピュタ」に、久石譲が指揮者として最も振っているクラシック作品のひとつ「悲愴/チャイコフスキー」。三重でしか聴けない特別なプログラムというキャッチコピーは、まさにそのとおり。

 

TOP 19

久石譲 最新コンサート情報

トップページバナーの「Concert」、開催予定の久石譲コンサート情報をまとめています。

 

TOP 20

久石譲 最新スケジュール情報

トップページバナーの「Joe Hisaishi Recent Schedule」、冒頭にも掲載しているスケジュールリストです。最新情報にあわせて随時更新しています。

 

 

 

ファンサイト例年以上に重い腰をあげた一年だったかもしれません。やりたかったこと、課題となっていたことに多く手をつけて結実することができました。「Overtone スタート」(1月)、「Works -Official ver. / Fansite ver. 掲載」(1,4月)、「サイトリニューアル」(3月)、「チャット/アンケート 企画開催」(8月)、サイトSSL化(12月)など。

常に最新情報を追いながら、コンサートに足を運びながら、新しい楽曲にレビューしながら、いろいろな資料を整理しながら。とてもパワルフに充実して動けた一年となったことに感謝しています。そして、新しい久石さんファンとの一期一会な出会いもたくさんありました。コンタクトいただき、そこからいろいろな久石さんへの愛を感じることは喜びであり、今後も交流がつづいていけるなら、ファンサイトの大きなエネルギーになります。

今年はなにか新しいことできるかな? 新しい出会いやつがなりをつくれるかな? ぜひ気軽に部屋をノックしてください♪気軽に話しかけてください♪

どうぞこれからもよろしくお願いします。

 

Related Page

 

 

Blog. 「キネマ旬報 1988年8月下旬号 No.991」 久石譲 インタビュー内容

Posted on 2018/01/04

映画誌「キネマ旬報 1988年8月下旬号 No.991」に掲載された久石譲インタビューです。

 

 

SPECIAL INTERVIEW
久石譲

「風の谷のナウシカ」やこの春公開された「となりのトトロ」の宮崎駿作品、「Wの悲劇」等の澤井信一郎作品の音楽で映画ファンにも馴染み深い久石譲氏が、自分のレーベルを作った。その第一弾が「ピアノ・ストーリーズ」だ。このアルバムは今まで書いた映画音楽をピアノで再演奏したもので、素晴らしいものになっている。写真ではサングラスをしていてわからないがとても綺麗な目をした素敵な人で、それが音楽にもよく現れている。このインタビューでは、レーベルを中心に、今の映画状況やビデオの事について聞いてみた。

 

-今まで書かれた映画の曲を改めてピアノで演奏しなおそうと思った理由は。

久石:
「この前に出したアルバム『カーブド・ミュージック』(ポリドール)がCMの曲を集めたものだったんです。僕はどちらかというとCMの場合、自分の中の先鋭的な部分をメインにほとんど生楽器を使わないで作ってきたんですよ。そういったものをまとめてアルバムにした時、自分の中でちょっと原点に帰りたいな、と思いまして次に何をやろうかと考えた時、それがピアノだったんです。やはりサウンドではなく、あくまでメロディにこだわってものを作りたい。そう考えた時にピアノが一番良かったんです。」

 

-この中の曲もオリジナル(ナウシカ、Wの悲劇、恋人たちの時刻 etc)がピアノがメインになっているものが多いですね。

久石:
「やはりピアノというのが、自分にとってそれだけ身近なんでしょうね。」

 

-選曲の基準はどうされたんですか。

久石:
「実は全部オリジナルでやろうかなとも思ったんです。だけど、あえてオリジナルである必要はないんじゃないかと、それは今までの曲をピアノで弾きなおす、という事自体が自分の過去、現在、未来を含めて一体何なのかという問いかけになる訳だから、過去のものでも心をこめて演奏すればいいんじゃないかと。これはほとんど偶然だったんですけど曲を選んでいったとき、映画が一番多くなったんです。だったらいっその事、映画だけに絞ってしまおうと思ったんです。」

 

-この『ピアノ・ストーリーズ』というタイトルの由来は。

久石:
「映画のテーマを集めてはいるんですけど、その映画を見た人がああこの音楽はあの映画で見た時が懐かしかったね、と思うために作っているのではなくて、逆に映画で扱われた事を全然無視して、聞いた人が新たにストーリーを再構成するといいますか、新たに架空のサウンド・トラックみたいな感じでとらえて欲しい、ということで『Piano Stories』としたんです。」

 

-このアルバムを聞いて自分の中でストーリーを作り上げて欲しいと。

久石:
「そうですね。」

 

-新しいレーベル、IXIAレーベルについてお聞きしたいのですが、これはどういうきっかけで。

久石:
「やはり作家というのは、誰でもそうだと思うんだけど自分のソロ・アルバムを作るだけじゃなくて、自分のレーベルを持つという事が一生の夢なんですよ。レーベルってレコード会社の中にあるもう一つのレコード会社みたいなもんでしょ、そうするとレーベル・カラーというのも打ち出せるし、自分のやってきた仕事の集大成も出来るし。僕もずっとレーベル持ちたくて、本当は一番やりたいのはボブ・スケア・レーベルのようにブライアン・イーノ的なものをやりたいんだけど、日本でそんな事やったら二枚もださない内につぶれちゃうから。で、今一番みんなが要求しているのは、ポップ・ミュージックだと思うんですよ。日本の音楽産業が、アイドル中心で作られているから、大人が安心して聞ける音楽って少ないでしょ。レコード店へ入っても何買っていいかわからない。そうするとみんなどんどん聞かなくなってしまいますよね。みんなカラオケやなんかで歌ってはいるけど、同時に自分も聞きたい音楽があるはずなんですよ。特にビートルズ・エイジだった人たちが四十代に突入してってる訳だから、そういう人たちは、やはりカラオケで演歌っていうだけでは物足りないと思うんですよ。」

 

-特に邦楽の場合はそれはありますね、洋楽はまだ数が揃ってますからね。

久石:
「洋楽の感性で聞けて、アダルトまでを対象とした日本のポップ・ミュージックが、あってもいい時期だと思うんですよね。ですからこのレーベルではその辺にターゲットを絞ったものをやりたいですね。僕の中にあるクラシックからポップスまでの中から良質なものを提供できるんじゃないかと思ってるんですけどね。」

 

-そういったポリシーで他のアーティストもプロデュースされる。

久石:
「そうですね。第一弾が7月22日に発売された『Piano Stories』、8月が『Night City』というCDシングルで、なんと僕が歌を唄ってるんですよ、それも日本語で。やんなっちゃいますけどね(笑)。9月にそれを含んだアルバムを出します。7、8、9月と連続で出すんで、とんでもなく忙しくてヘトヘトですね。」

 

-歌を唄われるという事はお好きなんですか。

久石:
「いや、あんまり好きじゃないです(笑)。やっぱり最後はメロディアスなものを書きたくて、メロディにこだわりだすと、じゃあそれをピアノではなくて何で表現するかと考えたときにやっぱり歌だったんです。しかも日本語で唄うという事が一番コミュニケーションしやすいですよね。だから今回は歌までやってしまったんです。それで、やる以上は、素人っぽくてはしょうがないんで、徹底してやりました。結構大変でしたね。」

 

-話はかわりますが、久石さんが音楽を担当されたもので長い間お蔵になっていた「グリーン・レクイエム」が公開されますが、あの音楽についてはどうですか。

久石:
「あの作品は、結構イメージ・ビデオっぽかったんですよ、イメージ映画というか、一種のファンタジーだったんで、どう取り組もうか悩みまして、「卒業」のサイモン&ガーファンクルのような感じで歌を効果的に使っていこうとなったんです。いわゆる映画音楽的なインストもあるんですが、重要な部分はほとんど歌になるように仕上げました。因みにこの『グリーン・レクイエム』映画自体はとても冬っぽいものなんですけど、テーマは常夏のモルジブで思い浮かんだんですよ。でもうまく合いましたね。」

 

-昨年は随分映画の仕事をされてましたが、今年はどうですか。

久石:
「自分のレーベルを作ってしまいましたので、ソロ・アルバムや他のアーティストのプロデュースをしなければならないので、今年は映画や他の仕事はあまり出来ないでしょうね。」

 

-それは残念ですね。当分映画の中で久石さんの音楽は聞けない訳ですね。

久石:
「去年は映画音楽の位置を高めようと頑張ったんですけど、やはり難しい所はありましたね。その原因としてレンタル・ビデオがあると思いますね。昔は映画を思い出す手段としてサントラ盤があったんですけど、今はビデオで映画そのものが楽しめますからね。よほどの事がないかぎりレコードは買いませんよね。」

 

~中略~

 

-今まで御覧になった映画で、これは絶対というのはありますか。

久石:
「色々ありますけど「ブレードランナー」ですね。もしああいう映画が日本で作られるとしたら、他の仕事を後回しにしても音楽つけたいですね。それともう一つやってみたいのがオカルト映画なんですよ。ところが日本映画にはあまりないでしょ。」

 

-「エクソシスト」みたいな。

久石:
「「エクソシスト」は是非やってみたいタイプですね。」

 

-マイク・オールドフィールドの音楽が印象的でしたね。

久石:
「あの曲がやはりミニマル・ミュージックなんですよ。当時は「サスペリア」とか、結構ミニマル的な音楽がそういったホラー映画によく使われていましたね。ミニマル・ミュージックは自分がよくやっていた音楽なんで、一回昔に戻った気分でやってみたいですね。」

 

-久石さんの書くホラー映画の音楽というのは聞いてみたいですね。

久石:
「是非やりたいですね。これは相当強力なものがありますよ。やりたくてしょうがないですね。」

 

(「キネマ旬報 1988年8月下旬号 No.991」より)

 

 

Blog. 「久石譲 ジルベスターコンサート 2017 in festival hall」 コンサート・パンフレットより

Posted on 2018/01/04

毎年恒例!大晦日に開催される特別なコンサート「久石譲 ジルベスターコンサート 2017 in festival hall」。2014年から続く今年は「風の谷のナウシカ」と「カルミナ・ブラーナ」というプログラム。また先立って20日には同プラグラムを引き下げ仙台フィルと初共演。なぜカルミナ・ブラーナだったのか? そんな想いのつまった久石譲プログラムノートです。

 

 

久石譲 ジルベスターコンサート 2017 in festival hall

[公演期間]  
2017/12/31

[公演回数]
1公演
大阪・フェスティバルホール

[編成]
指揮:久石 譲
管弦楽:日本センチュリー交響楽団
ソリスト:安井陽子(ソプラノ)、鈴木 准(テノール)、萩原 潤(バリトン)
合唱:大阪センチュリー合唱団、ザ・カレッジ・オペラハウス合唱団、Chor.Draft
児童合唱:岸和田市少年少女合唱団

[曲目] 
久石譲:Symphonic Poem Nausicaä 2015

—-intermission—-

カール・オルフ:世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」

—-encore—-
One Summer’s Day (Pf.solo)

 

 

久石譲のプログラムノート

「カルミナ・ブラーナ」は「第9」に取って代われるか?

年の暮れに「カルミナ・ブラーナ」を演奏する、というアイデアは数年前からありました。隔年で僕もベートーヴェンの「第9」を演奏させていただいていましたが、「暮れって第9だけ?」という素朴な疑問があったからです。もちろん「第9」はとても好きですし、来年の夏!に演奏(初めてベーレンライター版で臨みます)も決まっています。しかしこの小さな列島から12月に放出される「第9」の熱量は全世界の1年分の熱量をはるかに超えていると思われます。

なぜこれほど日本人は「第9」が好きなのか?これを語りだすと本が一冊書けるくらいなので、ここでは触れずに強の本題『「カルミナ・ブラーナ」は「第9」に取って代われるか?』について書きます。つまり「第9」以外に年の暮れに演奏して聴衆が納得できる楽曲を探した結果が「カルミナ・ブラーナ」だったわけです。

 

「第9」は全4楽章からなり「苦悩から歓喜へ」という構造です。対して「カルミナ」は全25曲(冒頭とラストは同じ曲)で「春に」とか「酒場で」や「愛の法廷」とか大きな塊はありますが、止めどなく続きます。

かたやフロイデ(歓喜)と人類愛を歌い上げるのに対してこちらは「春が来てうれしい」という歌や「振られた女への思い」「紅を買って男の子にモテたい」はたまた「丸焼きにされた元白鳥の嘆き」「イングランドの女王を抱きしめたい」などもう何でもあり!もちろん美しいソプラノのラブソングもありますが、高邁さに関しては形勢不利です。これはテキストをドイツのバイエルン地方の修道院で寄せ書き帳から取っているからです。訪れた老若男女のそれぞれの勝手な思い(今でいうところのツイッターみたいなものですかね)から作曲者のカール・オルフが選んだわけなのでそれは当然シラーの詩(第9)とは訳が違います。

両曲とも1時間を越すくらいの演奏時間で、合唱を使っているのは同じですが「第9」の合唱は第4楽章のみに入り、その3分の1の約10分強の長さを歌うだけと効率がいいのですが(それなのに存在感が大きい)、「カルミナ」の方はほぼ全編にコーラスや歌が入ります。おまけにラテン語や古いドイツ語の歌詞なので意味を調べるだけで一苦労、しかも超早口言葉のところもあって合唱団の人たちはかなり大変です。

あれ、「カルミナ」の良さをアピールするつもりが逆を書いてますね、まずい。気を取り直して今度はソリストについて。「第9」は4人なのに対してこちらは3人、これはコストパフォーマンスが良い(オーケストラのコンサートは大人数なのでこういうことは大事です)のですが、テノールは1曲のみ、しかもカウンターテナー(とても高い音で歌う)の音域で先ほどの「丸焼き元白鳥」の心情を歌うだけ。そのうえ児童コーラスが入りオーケストラの編成も大きい。バリトンは「第9」に負けず活躍しているのですが、はたして効率が良いのか悪いのか?

こう書いていると失点ばかりくり返しているようなのですが、実は違います。

この1曲しか歌わないテノールだからこそ、その存在は大きいし聴く人にインパクトを与えます。演出が入る場合もあり、まるで違う世界に連れて行ってくれます。またラテン語や古いドイツ語であることは言葉の内容とは関係なく、発音の面白さや響きが楽しめます。「第9」ほど高邁な言葉ではないですが、人々の日常の悩み、願望、怒りや希望がストレートに表現されています。

そう、これは「世俗カンタータ」です。宗教的なものではなく、一般庶民の日常のエネルギー、下世話なバイタリティーを表現したたくましい曲なのです。そして実は構成も巧みにできていて、お定まりな方法を捨てているのでわかりやすいのに今なお実験的であり、前衛的でもあります。カール・オルフの面目躍如です。

日本人(僕だけかもしれませんが)は暮れに1年を振り返りあれこれ考えますが、年が明けたら気分も新たに出直します。そういう暮れに「いろいろあったけどさー、飲んで騒いで、まあ明日(新年)頑張ろう」というポジティブな人間賛歌である「カルミナ・ブラーナ」は「第9」とともに演奏されていくべき楽曲だとつくづく思います。

 

「Symphonic Poem Nausicaä 2015」は1984年に公開された映画『風の谷のナウシカ』をもとにして新たに交響組曲としてつくった楽曲です。またこれは宮崎さんのために最初に書いた音楽でもあるので、人一倍思い入れがあります。

よく宮崎さんとの映画でどれが一番好きですか?と聞かれます。僕は「全部好きですが、あえて選ぶなら『風の谷のナウシカ』です、ここから始まったんですから」と答えます。

あれから33年が経ち宮崎さんは新作を作り出した。挑戦はまだまだ続きます。

以上のプログラムです。明るい元気な暮れの一夜になりますように、一同張り切って演奏します。楽しんでいただければ幸いです。

2017年12月16日
久石譲

(「久石譲 ジルベスターコンサート 2017 in festival hall」コンサート・パンフレット より)

 

*なおコンサート・パンフレットには「カルミナ・ブラーナ」の全歌詞(原語詞/日本語詞)も掲載されています。

 

 

Info. 2017/12/25 「NHK WORLD presents SONGS OF TOKYO」 久石譲メッセージ動画公開 【12/29 Update!!】

Posted on 2017/12/25

「NHK WORLD presents SONGS OF TOKYO」、久石譲のメッセージ動画が公開されました。ぜひご覧ください。

 

Songs of Tokyo: Message from Joe Hisaishi|NHK WORLD 約1分半
NHK WORLD公式チャンネルより “Info. 2017/12/25 「NHK WORLD presents SONGS OF TOKYO」 久石譲メッセージ動画公開 【12/29 Update!!】” の続きを読む

Info. 2018/01/02 [ラジオ] NHK FM「真冬の夜の偉人たち」久石譲パーソナリティ 【12/29 Update!!】

Posted on 2017/12/15

久石譲がパーソナリティーを担当するNHK-FMの『真冬の夜の偉人たち』が2018年1月2日放送されます。

各界の著名人たちが自分が敬愛する音楽家について語り尽くすスペシャル音楽番組。久石がとりあげる偉人は、「ベートーヴェン」。久石自身が選曲したベートーヴェンの交響曲の聴きどころなどたっぷりお届けいたします。新春の夜のひとときを、音楽とともにお楽しみください。 “Info. 2018/01/02 [ラジオ] NHK FM「真冬の夜の偉人たち」久石譲パーソナリティ 【12/29 Update!!】” の続きを読む

Overtone.第14回 「交響曲第3番/マーラー」のポストホルン

Posted on 2017/12/26

ふらいすとーんです。

「好きになりませんように。」「趣味にあいませんように。」そんな気持ちでおそるおそるプレイボタンを押すことってありますか?

クラシックに疎いなかで、マーラーという作曲家は名前だけが先行していて実際にちゃんと聴いたことがない。一年間で好きな作家や長大な小説を読破するそんな目標を立てるように、マーラー交響曲全9作品をちゃんと聴いてみようとはじめました。案の定、作品ごとにいろいろなCD盤を聴き比べてお気に入りの1枚を探すこともまた楽しい行程、聴いて調べて横道にそれてゆっくり味わいながら。

この交響曲第3番は好きになりたくなかった。気に入ってしまったら毎回とおしで100分の時間を捧げなければいけない。それもそのはず、この作品はかつて「世界最長の交響曲」としてギネスブックにも認定されていたとのこと。長いはずです。マーラー交響曲は全9作品、すべてを気に入る必要もない……そんな不純な願いを一蹴するかのように見事にハマってしまいました。

映画『となりのトトロ』よりも長編。トトロに出会って、メイが迷子になって、ネコバスに乗って、お母さんにとうもろこし届けて、となりのトトロ歌って、”おわり”のエンドクレジットで幸せな気分になって。…その頃こちらの交響曲第3番はというと、やっと最終第6楽章のクライマックスにさしかかろうというところ。長いはずです。

映画一本分にも相当するこの作品、中盤なかだるみすることなく、最後に待ちうけるのは至福のカタルシス。ハッピーエンド・バッドエンドという物語の特性に左右されることのない、音楽だけの持ついかようなクライマックスをも潜めたエネルギーの解放、至極の満足感と解放感で胸いっぱいになります。

 

 

たまたま初めて食べたその料理のせいで完全シャットアウト、嫌いになってその後二度と口にすることのない食べ物のように。どうもやっぱり音楽にもそれがあるようです、残念ながら。最初に聴いた演奏でまったく自分のなかの音楽センサーが反応しない、こんなもんか、自分には合わない作品だなと終わってしまう。

でも少しずつクラシックを聴きなれていくと、演奏は合わなくともきっといい作品に違いない。本質的には好きかもしれない、もっといい盤を見つけることができたなら、相性よくお気に入りの愛聴盤になるかもしれない。そんな目利きならぬ耳利きが育っていくのかもしれません。

ご多分に漏れず、この作品もテンポや響き、管弦楽のバランスなどによってまったく印象がちがう。優劣をつけるのではなく、もうそれは「こうあってほしい」という聴き手のイメージと願望に近い選び方。そしてこの1枚に出会いたときには飛び跳ねるほど幸せでした。

マーラー交響曲第3番、名盤とっておきのオシ盤はこれです。

 

マーラー:交響曲第3番

1 Kraftig.Entscheiden 34:20
2 Tempo di minuetto. Sehr massig 9:08
3 Comodo. Scherzando. Ohne Hast 15:44
4 Sehr langsam. Misterioso. 4:41
5 Lustig im Tempo und keck im Ausdruck. 9:12
6 Langsam. Ruhevoll. Empfunden 20:07

指揮:ヴァーツラフ・ノイマン
演奏:チェコ・フィルハーモニー管弦楽団、マルタ・ヴェニャチコヴァ(アルト)、プラハ室内合唱団、ミロスラフ・ケイマル(ポストホルン)

録音:プラハ「芸術家の家」ドヴォルザーク・ホール(1994年)

オクタヴィアレコード/ハイブリッドSACD/2枚組

 

 

好きになった理由、より好きになった理由は、すべてCD情報に書かれています。

 

 

ノイマン(指揮)

マーラーと同郷ゆえにボヘミア様式の音楽づくり、素朴で民謡的なモチーフを多く含んだマーラー作品を自然体で豊かに表現しています。端整であり悠々と歌いあげ大きく広がりのある響き。ノイマンはドヴォルザークやベートーヴェン作品もたくさんいい録音があって、結局ノイマン指揮が愛聴盤にすっと落ち着いてしまうということも僕のなかではしばしば。

 

第1楽章は力強いホルンの響きと多彩な主題が絡み合う壮大な行進曲のリズム、第2楽章は軽やかで優しく弾むメヌエット、第3楽章は素朴で神秘的なポストホルンによる旋律、第4楽章はニーチェの言葉にのせてゆったりとアルト独唱、第5楽章はアルトと女声合唱・児童合唱による天使と鐘の響き、第6合唱は弦楽合奏による美しい感動的な境地。

構想の段階では、全体のタイトルとして「真夏の昼の夢」などの言葉が頭にあって、第1楽章「牧神が目覚める、夏が行進してやって来る(バッカスの行進)」、第2楽章「野の花たちが私に語ること」、第3楽章「森の動物たちが私に語ること」、第4楽章「人間が私に語ること」、第5楽章「天使が私に語ること」、第6楽章「愛が私に語ること」というタイトルが付けられていました。出版の際に誤解を与えかねないとしてこれらの標題はすべて削除されることになりました。が、作品の本質に迫るための鍵としてきわめて重要なものです。交響曲第3番は、自然と人間の存在について、自然観や宇宙観といった壮大な世界が表現されています。

世界観も壮大ならば、音楽構成も多種多彩。それを見事にひとつの大きなかたちとして巨大に構築したマーラーと、収拾つかなくなりそうな音楽的素材たちを縫い目よくまとめあげるノイマンの指揮。第6楽章はクライマックスに向けて最高潮に達しながら終わりそうで終わらない。クセになるほどたたみかけるハイライトの巨渦。大きく起伏する重厚なストリングスの波は怒涛のごとくおし迫り。壮絶な解放感と同時に、このまま終わってほしくないと思わせてしまうほど。これほどまでに名残惜しい残響はない。本当に巨大な宇宙のような作品なんです。

 

 

ポストホルン

ポストホルン? 18世紀から19世紀ヨーロッパで使われていた郵便ラッパのことで、バルブを持たない円柱状の金管楽器、ホルンの仲間とあります。オーケストラのトランペット奏者が演奏するのが一般的で、この楽器は現代では珍しくなったため、トランペットやフリューゲルホルンで代用されることもあるそうです。素朴な音が特徴でモーツァルトもこの楽器のための協奏曲を残しています。

 

ホルン

ポストホルン

 

 

ミロスラフ・ケイマル

交響曲第3番のポストホルンならびにトランペット奏者、ミロスラフ・ケイマル。チェコフィル前首席奏者、ノイマン指揮×チェコフィルとして他マーラー作品でもケイマルさんのトランペットは健在です。第3楽章のトランペットのソロ録音に、ノイマンが聴き惚れ涙を流したというエピソードもあるほどです。ケイマルさんのスケジュールに合わせてマーラー交響作品録音スケジュールの作品順番を入れ替えたというエピソードも。絶大なる信頼とトランペット奏者として存在の大きさがわかります。

 

 

さて。

この辺りからぼちぼちつなげていきます。

 

久石譲 × ケイマル

すぐにピンときた人はすごい!映画『ハウルの動く城』公開に先がけて制作されたイメージアルバム。「イメージ交響組曲 ハウルの動く城」そのなかに「Cave of Mind」というトランペット旋律の美しい楽曲があります。この奏者こそミロスラフ・ケイマルさんです。

久石さんは当時このように語っています。

「実際に演奏してもらい、“こんなにいい曲だったんだ”と驚かされることってあるんだよね。いい演奏者というのは、そうやって曲の持っている力を引き出してくれる。『ケイヴ』はまさにそういう曲だった」

 

久石譲 × チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

イメージアルバムの枠を超えたフルオーケストラによるひとつの完成されたハウルの世界。100%音楽だけでその世界観を表現しようと、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団と本拠地プラハ「芸術の家」ドヴォルザークホールで録音し、ロンドン アビーロードスタジオで仕上げた渾身の作品です。

 

 

 

ケイマルさんの響きはここで終わりません。

イメージアルバム制作後、ハウルの音楽は二転三転します。宮崎駿監督の「映画をひとつのメインテーマでいきたい」という希望から、イメージアルバムにはなかった一曲が新たに書き下ろされます。そう「人生のメリーゴーランド」、このメインテーマと変幻自在なバリエーション(変奏)によってハウルの世界観は統一されました。

そんななか宮崎監督がイメージアルバムを聴いて気に入っていたのが「Cave of Mind」。この楽曲を本編でも使うことはもちろん「本編もこの音がいい」とケイマルさんのトランペット・ソロを強く望みました。

サウンドトラックは新日本フィルで録音するため、「Cave of Mind」だけチェコフィルの録音をそのまま使うことは難しい。なんとケイマルさんをたった1曲のためだけにチェコから呼んだ。新日本フィルハーモニー交響楽団と一緒に再度あの美しい旋律を甦らせたのが「星をのんだ少年」です。付け加えるなら、本編映像に音楽をあわせたときに「最後にメインテーマに戻りたい。これはハウルとソフィーの物語だから」という録音当日の宮崎監督の要望をうけて、その場で修正を加え「星をのんだ少年」には「Cave of Mind」になかった「人生のメリーゴーランド」の旋律が終盤に追加されることになりました。ケイマルさんを呼んだからこそ、この追加パートでもメインテーマの旋律と絡み合うトランペットの美しい音色を聴くことができる、そんな贅沢な一期一会が記録されることになりました。

いろんなエピソードがあるんですね。幾多の奇跡の連続で音楽は誕生しているんですね。

 

ハウルの動く城 サウンドトラック

 

 

今では、「SYMPHONIC VARIATION “MERRY-GO-ROUND”」として演奏会用に音楽再構築された「シンフォニック・バリエーション メリーゴーランド」がコンサートで演奏される機会に恵まれています。「SYMPHONIC VARIATION “MERRY-GO-ROUND + CAVE OF MIND”」版は、その名のとおり「ケイヴ・オブ・マインド」を加えた作品です。こちらはジブリコンサートなどでも披露されています。オフィシャル・オーケストラ・スコアも出版されています。

 

 

 

「交響曲第3番/マーラー」(1994録音)と「イメージ交響組曲 ハウルの動く城」(2004録音)の共通点は、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団、ミロスラフ・ケイマル(トランペット)、芸術の家 ドヴォルザーク・ホール録音でした。

これだけでもすごい共鳴なんですけれども、1994年と2004年の間にもうひとつあります。

 

映画「もののけ姫」の世界を、全8楽章から構成された交響作品へ昇華した「交響組曲 もののけ姫」(1998年録音)。この作品こそチェコ・フィルハーモニー管弦楽団との初共演。当時のコンサートツアーパンフレットにもレコーディング日誌が掲載されています、ドヴォルザークホールでの録音風景も紹介されています。今この写真を見返すだけでも、なんだか深い感慨をおぼえます。

 

 

久石譲 『交響組曲 もののけ姫』

 

 

オクタヴィアレコードよりハイブリッドSACDとして発売された「交響曲第3番/マーラー」は音質クオリティの高さにも注目です。迫力や臨場感はもちろん繊細な音も逃すことのない自然で豊かな響きです。ハイブリッドSACDは、通常のプレーヤーでも聴くことができてSACD専用プレーヤーならばさらに最高音質で聴くことのできる規格です。僕は通常のプレーヤーで聴いてますけれど…それでも文句なし素晴らしい。

このクラシック音楽専門レーベル オクタヴィアレコードと久石譲といえば。近年の活動を象徴するコンサート企画の録音が刻まれはじめています。ひとつは”現代の音楽”をナビゲートする「MUSIC FUTRE」、もうひとつは”現代の解釈”を堂々と提起する「ベートーヴェン・ツィクルス」。いずれもコンサート・シリーズ継続中で、現代ゆえの貴重な発信(コンサート)と記録(CD盤)が両輪で着実に生み残されていることは、きっと未来への宝物になります。

 

Disc. 久石譲 『久石譲 presents MUSIC FUTURE 2015』

 

Disc. 久石譲 『久石譲 presents MUSIC FUTURE II』

 

Disc. 久石譲指揮 ナガノ・チェンバー・オーケストラ 『ベートーヴェン:交響曲 第1番&第3番「英雄」』

 

 

結び。

「交響曲第3番/マーラー」この作品にはじまり、愛聴盤を探す過程で出逢えた名盤とつながる点と線。「交響組曲 もののけ姫」発売当時、チェコフィルってすごいの?なにか違うの? と子どもよろしく素朴な疑問。「イメージ交響組曲 ハウルの動く城」発売当時、ケイマルっていう人がいるんだ、たしかにきれいな音だけど、だって曲がいいし、くらいのふてぶてしい感覚……。

この無知で未熟なままの音楽思考が、マーラー作品の1枚のCDをとおして、やっとやっと巡り巡って周回遅れでたどり着いた感慨。名前やネームバリューといったもので音楽を聴くわけではないけれど、たしかに知って豊かになること、新しい聴こえかたがしてくる瞬間ってある。

その感動を運んできてくれたのが「交響曲第3番/マーラー」(ノイマン指揮)の名盤でした。今振り返ると、きっと久石さんもチェコ・フィルと共演すること、歴史と伝統あるドヴォルザーク・ホールで録音すること、とても感慨深く特別な想いがあったんだろうなあと、巡り巡ってやっと今とてつもない感慨におそわれます。

時間が経過しないとわからない価値もあるでしょう、時代の変化で価値がかわることもあるでしょう。そして価値を見いだせる聴き手、見いだせない聴き手(僕のこと)もいるんだということ学ばせてもらいました。反省というよりも、そのくらい久石さんは「今いいと思うこと、自分がこうだと思うこと」を妥協なく本気でやっている。いつの時代も全力で走りつづけてきた、その数々がきちんと残されている。そのことにその本質にいつ気づき共感共鳴することができるかは、聴き手に大きく託されている。そんなこわさを感じたというほうが正しいかもしれません。

 

今回なにを記したかったかというと、純粋に「交響曲第3番/マーラー」の作品のすばらしさを伝えたかったんです。聴く人それぞれに満足感を堪能できる作品です。ケイマルさんも第3楽章はもちろん各楽章で美しい旋律を奏でています。個人的にはマーラー交響作品 奇数番号ものに好きな作品が多い。マーラーが世俗的であったり民謡的なものを作品に込めたように、久石さんも日本作曲家として現代作曲家として「THE EAST LAND SYMPHONY」で世俗観や民謡的音階をのぞかせています。いろんな角度から眺められるようになると、ほんと音楽って面白い。まだまだ新しい発見や新しい聴こえかたがきっとある。

久石さんが作曲のためにクラシック音楽の指揮をしていると言うならば。僕は久石さんの音楽を広く深く愛するためにクラシック音楽を聴いている。結果そうなってきている、そんな気がしますね。

それではまた。

 

reverb.
この年末年始、ぜひ第6楽章だけでも聴いてみてほしい!心おだやかに心洗われます。あなたの今年一年を包みこんでくれますように♪

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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