2002年11月20日 発行
久石譲による完全オリジナルスコアです。
2002年東北と東京で開催された『久石譲シンフォニックスペシャル(金洪才:指揮/新日フィル)』で大反響を呼んだオーケストラ作品。そのオリジナルスコアです。久石譲・オーケストラ作品のオリジナル楽譜出版は今回が初めてです。映画「となりのトトロ」のストーリーの語りが含まれる8つの組曲。オーケストラの楽器紹介も盛り込まれていてとても楽しい構成です。
既に発売されているCD「オーケストラストーリーズ となりのトトロ」のレコーディング後に、大幅に加筆・改訂しています。
(メーカー・インフォメーションより)
この組曲は、『となりのトトロ』の初めてのオーケストラ演奏版です。今まで僕のコンサートは、どちらかというと大人向けのスタンスでやって来たので、『トトロ』の曲を演奏したことはなかったんです。『トトロ』は誰でも分かるくらいキャッチーなメロディで出来ているので、コンサートで演奏してしまうと、一気に小さい子向けになってしまうんです。
随分前から、親と子のためのコンサートも開催してほしいという希望がたくさんあって、『トトロ』を作ってからだいぶ時間も経っているし、今だったら新たな気持ちでオーケストラに書き直せると思ったんです。どういう形態のものを作ろうかなと考えた時、頭に浮かんできたのは、ブリテンの『青少年のための管弦楽入門』とかプロコフィエフの『ピーターと狼』などの、ナレーション入りのオーケストラ作品でした。あのような、ある種啓蒙的な、今までにあまりオーケストラを聴いたことがない人に、オーケストラっていいなぁと教えてあげられるような作品を、『トトロ』で作りたい。そこから『トトロ』を素材とした、オーケストラ・ストーリーズという発想が生まれたんです。
僕自身、今でも元気がなくなった時は『トトロ』のビデオを観て、元気をもらっています。何度観ても、本当にすごい作品だと思います。だから、僕の作品として作る時も、中途半端なものは作れない。『トトロ』のフィルムやビデオと同じように、ずっと語り継がれるくらいのスタンダードな作品を作らなければいけない、自分の手を離れて、ファンの皆さんのものになってしまった楽曲なので、自分の一存で好き勝手にはいじれないな、というプレッシャーを感じながら作りました。
そもそも『トトロ』の音楽は、14年前のイメージソング集から始まりました。『風の谷のナウシカ』も『天空の城ラピュタ』も、サントラに取りかかる前にまず、イメージアルバムをインストゥルメンタルで作ったのですが、『トトロ』は歌でいこうと思って。宮崎監督もちょうど、児童文学者の中川李枝子さんとのコラボレーションを考えていて、イメージアルバムの作詞はお二人に担当していただきました。それが功を奏したと思います。どの曲も完結した親しみやすいメロディになっているんです。しかしその分、最初に作った時にインストゥルメンタルのシンフォニックという捉え方を全くしていないので、今回のオーケストラ版は、アレンジが大変でした。どの曲もシンプルなメロディで個性を出すという、簡単に見えて実は難しいことをやっているので。
フルオーケストラで100人近い人間が楽器を演奏しているぬくもりみたいなものを、『トトロ』の親しみやすいメロディとともに、感じ取っていただきたいですね。
尚、CDのレコーディングの後に、このオーケストラスコアの出版にあたり、大幅に加筆・改訂をしています。
久石譲
(スコア 寄稿より)
オーケストラ ストーリーズ
となりのトトロ
original edition
[収録曲]
さんぽ
五月の村
ススワタリ 〜 お母さん
トトロがいた!
風のとおり道
まいご
ネコバス
となりのトトロ
(ナレーション原稿付き)
菊倍判/112ページ
定価:2,800円+税
発行:株式会社全音楽譜出版社
◎音源は久石譲『オーケストラストーリーズ となりのトトロ』に収録されています。