Score. 久石譲 「Asian X.T.C. -オリジナル・エディション-」 [ピアノ譜]

2006年10月4日 発行

久石譲による完全オリジナル版です。

美しく官能的でポップなASIAをテーマにしたソロ・アルバム「Asian X.T.C.」のオリジナルピアノ楽譜。カネボウシャンプー”いち髪”CM曲の「Venuses」、韓国映画『トンマッコルへようこそ』主題歌「Welcome to Dongmakgol」、中国映画『叔母さんのポストモダン生活』主題歌、NHK「世界遺産コンサート」テーマソングなど、全10曲を所収。

(メーカー・インフォメーションより)

 

 

昨年から「Welcome to Dongmakgol」(韓国映画)、「A Chinese Tall Story」(香港映画)、「The Post Modern Life of My Aunt」(中国映画)と、近隣諸国との仕事が立て続いたことから、『アジア』の中の日本を次第に意識するようになり、また自然な流れとして『アジア』が今回の新しいソロ・アルバム「Asian X.T.C.」のコンセプトになった。東洋と西洋の楽器が交じり合い、『アジア』のかっこよさ(官能的な部分)を表現したいという気持ちでこのアルバムを作った。

この楽譜は、楽曲のメロディーを引き立たせるようなアレンジを意識し、出来る限り多くの皆さんに弾いていただけるようにした。演奏することを通してアルバム「Asian X.T.C.」の世界観をより堪能していただけたら幸せだ。

2006年10月 久石譲

(「Asian X.T.C. -オリジナル・エディション-」 寄稿より)

 

 

Asian X.T.C.
亜細亜は矛盾する2つのものを受け入れる。それは僕たち一人一人の中にある2面性を肯定しているようだ。例えば善と悪、両方あるからこそ世界は成立する。そんな考え方が僕は好きだ。

●陽side (Pop side)

001. Asian X.T.C.
ヘルマン・ヘッセの「シッダールタ」を読んだ。西洋人のフィルターを通したとしてもそこに描かれている東洋思想の世界は官能的ですらある。悟りはエクスタシーかもしれない。それを探しに?僕は亜細亜に旅立った。

002. Welcome to Dongmakgol
ハングル文字の看板が立ち並ぶ路地裏の小さな店で50歳酒を飲んだ。焼酎の眞露と薬草酒の100歳酒を割ったものだが、これがいい。酩酊しながらふと考えた、ソウル(Seoul)というスペルはSoul(魂)ではないかと。

003. Venuses
バリ島の海岸を歩いていたとき乳房も露に波と戯れている若い女性たちを見た。夕日に照らされたそのシルエットは僕の脳裏に焼き付いた。

004. The Post Modern Life
紫禁城は大きすぎる。こんなところで暮らしたら寂しくて人恋しくなって死んでしまうと思いながら外の広場に出たら人、人、人で溢れていた。孤独なんて黄砂の中で霞んでしまった。

005. A Chinese Tall Story
香港の渡し船(フェリー)から見る夕日は美しい。九龍の島影が波間に揺れる。哀しい昨日と希望の明日が一瞬交差した。でもそんな想いは強い海風がビールの泡とともにデッキから吹き飛ばしてしまった。

006. Zai-Jian
上海は亜細亜そのものだ。運河を挟んでモダンな高層ビルと混沌の旧市街が対峙する。でもその両方があるからこそ街は活きている。運河を渡る風に乗せて僕はピアノを弾いた。

●陰side (Minimal side)

007. Asian Crisis
長い間封印していたことがある。青春の蹉跌の中で措いて来たものに立ち向かうほど僕は強くなれたのだろうか?

008. Hurly-Burly
台北の雑踏はエナジーに満ち溢れている。富と貧、老若、病と健康、喜びや悲しみ、笑い泣き、怒鳴り合う人々の顔は生命そのものだ。目の前を50ccのバイクが通り過ぎた。そこにはX’masツリーのように6人の子供を乗せたお父さんの逞しい姿があった。

009. Monkey Forest
モンキーフォレスト通りを歩いていたとき天が裂けたとしか思えないほどの雨が降り注いだ。軒先の濡れたみやげ品を何事もなかったかのように片付けている少女を見て僕は意味のない傘を捨てた。

010. Dawn of Asia
亜細亜の夜明けは神秘的だ。まるで山水画のようなモノトーンから赤や黄色や緑の剥き出しの陽中に変貌していく。その力の前に人間なんて小さいものだと気づく。いい日もあれば落ち込む日もある。善と悪もミジンコも宇宙もすべては僕の中にあり、外にある。また新しい夜明け(Dawn)が始まる。

注)アルバムでは昔のLPのようにA(陽)面、B(陰)面に分けてその2面性を表現した。

文・久石譲

(「Asian X.T.C. -オリジナル・エディション-」楽譜 より)

 

 

Joe Hisaishi ”Asian X.T.C.”
ORIGINAL EDITION

[収録曲]
Asian X.T.C.
Welcome to Dongmakgol (韓国映画「トンマッコルへようこそ」主題曲)
Venuses (カネボウ「いち髪」CMソング)
The Post Modern Life (中国映画「おばさんのポストモダン生活」主題曲)
A Chinese Tall Story (香港映画「A Chinese Tall Story」主題曲)
Zai-Jian
Asian Crisis (NHK「名曲の旅・世界遺産コンサート」書き下ろし曲)
Hurly-Burly
Monkey Forest
Dawn of Asia

監修:株式会社ワンダーシティ
菊倍判/96頁
定価:1,800円+税
発行:株式会社全音楽譜出版社

 

 

◎音源は久石譲『Asian X.T.C.』に収録されています。

久石譲 『 Asian X.T.C.』

 

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