1989年2月25日 CD発売 24ATC-174~5
1992年11月25日 CT発売 TKTA-20265
1996年11月21日 CD発売 TKCA-71028
1988年公開 スタジオジブリ作品 映画「となりのトトロ」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲
本作品は映画本編を映像なしの音声のみで聴く作品である。BGMはもちろんセリフや効果音などもそのまま収録されている。
解説
『となりのトトロ』は、’88年4月、全国東宝系で公開され、大好評を博した、宮崎駿、原作・脚本・監督による劇場用長編アニメーションです。(同時上映「火垂るの墓」製作/新潮社。監督/高畑勲)
昭和30年代のはじめ、まだ自然や四季の美しさにあふれていた頃の日本の都市郊外を舞台に、11歳と4歳の姉妹と大自然の精霊・トトロとの心あたたまる交流を描いたファンタジックな内容は、それこそ大人から小さい子どもにいたるまで幅広く観客の心をとらえました。
「いま、ダサイ、クサイといわれるものの中にこそ、新しいもの、現代人が渇望していながら見失ってしまったものがある」と断言した宮崎監督のみごとな勝利といえるものでしょう。
さらにいえば「もっともナショナルなものこそ、インターナショナルになり得るのだ」という監督の言葉も、’88年8月現在香港における上映の大成功が裏付けしています。(ちなみに、香港における歴代邦画興行成績第1位は『天空の城ラピュタ』第2位が『風の谷のナウシカ』第3位は『子猫物語』。『トトロ』の最終興行成績予想では、ほぼ『ラピュタ』とならぶ。何と、これでBEST3はすべて宮崎作品となる!)
宮崎監督は東映動画を振り出しに、様々なスタジオで傑作を作ってきており、随分前からアニメーション界では伝説的に語られてきた人です。特に『ルパン三世カリオストロの城』(’79年・脚本・監督)はアニメ・アクション映画の最高峰として、いまだ人気を保っていますが、何といっても、その名がアニメーション界にとどまらず映画ファン、一般大衆にまで広く知られるようになったのは『風の谷のナウシカ』(’84年。原作・脚本・監督)においてでしょう。巨大産業文明崩壊後1000年の地球から、するどく現代における自然と人間の在り方を照射したこのSFヒロイックファンタジーは、’84年度、数多くの映画賞を獲得しました。
さらに2年後『天空の城ラピュタ』(’86年。原作・脚本・監督)でも、その並々ならぬ映画作りの腕を見せ、ついに映画界に「宮崎ブランド」を確立させました。そのいうところは、作品の質が高く、なおかつエンターテイメントであるということです。
ところで、一貫して「宮崎作品」の質が高いのは、その製作体制に秘密があります。
ふつうのテレビアニメの場合、制作費や時間的制約のため、分業が極度にすすんでおり、メインスタッフすら、別々のスタジオにいることは珍しくありません。宮崎作品の場合、メインスタッフ、原画、動画、背景、メインの仕上げにいたるまで、同じスタジオに集まります。監督と同じ土俵で、同じ目的意識を持ち、意志の疎通を計ります。なお、それぞれのスタッフが超一流であることはいうまでもありません。
さらにもうひとつ。監督の作画チェックです。自身が超一流のアニメーターだったこともあり、表情、動作、タイミングに実にきびしい、綿密なチェックが入ります。週1本制作したテレビシリーズ『未来少年コナン』でも同じだったと伝えられていますから、1年かける劇場用の場合のきびしさは、想像以上のものです。制作中、アニメーターはつらい思いをしますが、終わって聞いてみると、もてる才能のすべてを燃焼した満足感を語るアニメーターが多くいます。
ところで、『となりのトトロ』は『ナウシカ』『ラピュタ』の後、作られたわけですが、じつは、監督のもともとの発想は10年も前のことです。そのときの仮題は『所沢のオバケ』。『アルプスの少女ハイジ』や『母をたずねて三千里』などのメインスタッフとして活躍していたころのことです。「なぜいつも、外国を舞台に、外国の子どもを主人公にしなければならないんだろう」という素朴な疑問がその出発点だったといいます。
そうして数多くのイメージボードを自ら描いたもですが、一見ジミに見えるこの企画は、とても通らなかったのです。あるいは時期が早かったのかもしれません。しかし、その後、10年間ひそかに温めつづけ、そして10年前よりさらにウデの上がった監督自身によって作られたこの作品は、むしろ幸運だったかもしれません。
(徳間書店「アニメージュ」編集部 亀山)
(解説 ~CDライナーノーツより)
DISC 1
1.さんぽ
2.五月の村
DISC 2
1.風のとおり道
2.となりのトトロ