Disc. 久石譲 『(伊右衛門 新テーマ)CM音楽』 *Unreleased

2012年10月 TVCM放送

 

2004年サントリー伊右衛門発売と同時にTVCMでいろんなヴァージョンを聴かせてくれたテーマ曲『Oriental Wind』。2012年10月よりリバイタライズされて、新しいテーマ曲になる。

 

「宣言篇」で流れている15-30秒程度の楽曲は、ミニマルミュージックをベースとしていて、『Oriental Wind』と『新テーマ』をつなぐような役割を果たしている。

そして「師匠のために篇」から新しく流れはじめた『新テーマ』。1分弱くらいのもので、ピアノのメロディーからはじまり、次第にオーケストレーションで壮大に展開していく。新しい息吹、緑広がる空気、澄んだ水、古都京都を思わせる、清らかな楽曲。「宣言篇」で流れていたミニマルな旋律が、この『新テーマ』のなかではバックモチーフとして随所に小刻みに流れている。

2004年から8年間にわたって流れていた『Oriental Wind』は、月日の経過とCMストーリーに合わせて、四季折々、様々なヴァージョンを聴かせてくれた。こちらの『新テーマ』も、これからどんな変化をしていくのか楽しみである。そして、いつの日か、『Oriental Wind』も『新テーマ』も全CMヴァージョンを集めたCD作品を発表してほしいと祈っている。

 

「新テーマ曲」はOA開始から、「宣言 篇」「師匠のために 篇」「母のために 篇」「急須 篇」「青のれん 篇」「水出しを待つ贅沢 篇」「浴衣 篇」「秋の味覚 篇」とすでに8つの装いとバージョンがお披露目されている。

 

 

 

 

2014.4.1 追記

2014年4月1日 CM放送開始

「お茶の言葉 篇」

2012年秋からの久石譲による「新テーマ」が新たな装いとして新アレンジ。30秒CMのほかサントリー公式サイトCMギャラリーにて120秒特別篇も視聴可能。

 

 

Disc. 久石譲 『Shaking Anxiety and Dreamy Globe』 *Unreleased

hakujuギターフェスタ

2012年8月19日 世界初演

 

久石譲作曲による2台ギターのための委嘱作品『Shaking Anxiety and Dreamy Globe』。「第7回Hakujuギター・フェスタ2012」にて荘村清志さんと福田進一さんという2大ギタリストにより世界初演された。

2014年9月22日開催コンサート、久石譲プレゼンツ「ミュージック・フューチャー vol.1」にて、『Shaking Anxiety and Dreamy Globe for for 2 Marimbas』オリジナルの2台ギター編成を、2台のマリンバのための編成として世界初演。

2015年8月23日「第10回Hakujuギター・フェスタ2015」にて再演。2012年同様2大ギタリスト(荘村清志/福田進一)によるオリジナル版。

 

 

エモーショナルなミニマル・ミュージック。音の粒の細かさといい、変拍子かつミニマル・ミュージックの音のずれによる変化。演奏の難易度もとても高い1曲だと思う。ギターのアコースティックな響きと、規則性あるデジタルな音型とのギャップが、メロディアスなメロディーがないなかで、強烈なインパクトと余韻を与えている。

曲名 “Shaking anxiety and Dreamy Globe”は、アメリカのシュルレアリスムの詩人、ラッセル=エドソンの詩にある、[生命が生まれる瞬間」を表した一節を引用した造語。

当時ラジオなどではO.A.紹介されたが、CD化はされていない作品。下記追記でもCD作品は紹介しているが、久石譲のオリジナル版とは演奏表現が異なる。

 

 

 

2015.6.24 追記

 

 

《Shaking Anxiety and Dreamy Globe ―揺れ動く不安と夢の球体―》

ミニマルの手法とフラメンコギターのエッセンスを取り入れた作品。複雑な変拍子と躍動感あふれる久石ならではの技巧的な楽曲。

【楽曲解説】
特筆すべきなのが拍子の独創性で、4分の13拍子(3+3+3+4拍子)をとり、しかも2人の奏者は1小節たりとも同じ動きの拍子を共有しない。そのことが生み出す一種幻覚的な音空間の魅力を味わわれたい。

(【楽曲解説】 CDライナーノーツより)

 

 

hakujuギターフェスタ

 

Disc. 久石譲 『Overture -序曲-』 *Unreleased

2012月7月21日 初演

 

大阪ひびきの街 スペシャル・コンサートにて初演。「大阪ひびきの街」誕生を記念して作曲され委嘱された「大阪ひびきの街テーマ曲 『Overture -序曲-』」。コンサートの演奏風景はCMとしても放送されている。

 

 

「街区をイメージする曲を依頼された時、単純に誰でも歌える曲、というわけにはいかないなと思いました。街区にはオーケストラも公演できる響きの良いホールがある。ぜひオーケストラ曲で仕上げたいと思った。」

「これから成長していく曲だと思います。気づいたらこの街にこの音楽が響いている、住んでいる人が親しんでいる、そんなふうになってくれたらいい。」

Blog. 「Overture -序曲-」 久石譲 新聞掲載インタビュー より抜粋)

 

 

6分に及ぶ壮大かつ高揚感あるフルオーケストラはまさに序曲。印象的なメロディーがいろいろなモチーフで展開していく。とても生き生きとした力強いメロディライン。16小節程度の短いメロディーラインをここまで壮大に発展させていく流れは圧巻。

そこに暮らす人々が、街に吹く風が、新緑の樹々たちが、エネルギー満ち溢れるすべての生命とそこでの生活を、息づく様を生き生きと表現した曲になっている。まさに街の「序曲」、これからどう成長発展し街が築かれていくか。そのスタートライン、誕生を祝う、記念作品のような品格ある高貴な楽曲。

その後の自身のコンサートでも演奏されているが未発売作品。

ぜひともCD化してほしい作品。

 

 

大阪ひびきの街

 

Disc. 久石譲 『二ノ国 白い聖灰の女王』 *Unreleased

久石譲 二ノ国 白き聖灰の女王

2011年11月17日 GAME発売

 

レベルファイブ×スタジオジブリ によるプレイステーション3用ゲームソフト「二ノ国 白い聖灰の女王」。先の2010年12月9日に発売された任天堂DS用ゲームソフト「二ノ国 漆黒の魔導士」からのシリーズ第2弾。単なるソフト移植ではない、新たなストーリー、新キャラクター、新マップの登場、とある。

 

メインテーマは、DS版よりもよりリズミカルなフルオーケストラになっている。あの壮大な冒険心をくすぐる響きに、躍動感がパワーアップした印象。

DS版サウンドトラックの『(14)バトル』も、より打楽器、パーカッション、管楽器が増え、スリリングな仕上がりになっているし、DS版サウンドトラックの『(6)シズク』は、お祭りの音頭を思わせる楽しい佳曲や、リコーダーをメインとした小編成、オルゴール風など、いろんなモチーフで登場する。

新録でいうと、おそらく麻衣であろう女声コーラスをフィーチャーした曲。女王のテーマなのか、妖しい魔法の世界が味わえる。その他、仲間や友情をテーマにしたような壮大なシンフォニー、ミニマルでより弦楽器の重厚な曲など、世界観に広がりと深みがプラスされている。

 

シンセサイザー制作、プログラミングされている曲も随所にあり、それは新曲もあれば、メインテーマのモチーフを編曲したものも登場する。おそらくこのあたりは久石譲ではない、別の方ではないか、と推測する。音楽に近藤嶺さんなど別の方のクレジットもある。

とりわけ、「天外魔境Ⅱ 卍MARU」のテーマを懐かしく思わせる、メインテーマと主題歌をモチーフに組み合わせたシンセサイザーアレンジには心が踊ったけれど。

 

DS版、PS3版とふたつ合わせて完結する作品だけに、音楽としてもサウンドトラックとしても、PS3版が発売されてほしいと熱望するが、久石譲名義の作品という前提からはしょうがないのかもしれない。新録・未発表曲、またその作曲・アレンジ、と複数のプロ職人が携わっていると思われる。

その証拠に、既発DS版サウンドトラック 「二ノ国 漆黒の魔導士 オリジナル・サウンドトラック」にもDS版ゲームで使用された全曲収録されていない。これもある意味では頷ける理由ではある。

なにはともあれ、誰がどんな役割分担であろうと、違和感なく見事に完成している世界観はすごい。もちろん主軸となる久石譲作曲のメインテーマや主要テーマ曲が素晴らしいからこそどんなアレンジが施されても、芯のあるぶれない世界観があるわけだけれども。そういった意味でも、垣根を越えて、この2作品の全曲を聴いてその世界に浸ってみたい。

「ファンタジー・冒険」というキーワードにおいては、ジブリ作品とはひと味違う遊び心やスリリング感、ハリーポッターのようなハリウッド大作にも負けない、音楽世界を堪能することができる。ジブリ作品の新作に触れたような、それであってジブリの枠から自由に飛び出したような、ファンとしてはこの上ないオイシイ思いを味わえる渾身の作品だと思う。

 

 

追記

久石譲名義のフルオーケストラによるサウンドトラック盤『Ni No Kuni: Wrath of the White Witch OST Original Soundtrack』は輸入盤のみで発売されている。DS版からバージョンアップした楽曲や新たに書き下ろした楽曲もほぼすべて収録されている。なお、シンセサイザー音源は収録されていない。いずれにしても、シンセサイザー楽曲は、久石譲のオリジナル版(オーケストラ)をモチーフにしたものが多いので、同サウンドトラックでその世界観は存分に味わうことができる。

 

 

 

久石譲 二ノ国 白き聖灰の女王

 

Disc. 久石譲 『交響曲 第1番 (第1楽章)』 *Unreleased

2011年9月7日 世界初演

 

「久石譲 Classics vol.4」コンサートにて世界初演された。久石譲(藤澤守名義)による現代音楽の交響曲第1番。第1楽章のみの未完作品となっている。

同公演前の久石譲曰く、「当初、全3楽章20-25分ほどの曲を考えていたが、第3楽章のスケッチに入った途端、第4楽章まで必要と感じ」時間的なこともあり、第1楽章のみの初演となった。

 

冒頭からミニマル要素を取り入れた変拍子の第1楽章。パッカーションも鳴り響く大編成の楽曲。メロディーや旋律を聴かせるモティーフよりも、実験的要素を盛り込んだ前衛的な作品。

交響曲 第1番 第1楽章は、コンサート1回のみの演奏。また全楽章は未完である。さらに全楽章完成後、この第1楽章も書き直される予定から、コンサートでのこの演奏は最初で最後の演奏となっている。

 

藤澤守名義では、さきに「久石譲 Classics vo.3」でも披露された「5th Dimension」という作品がある。ベートーヴェンの第5番『運命』をベースに11分に及ぶミニマル・ミュージックが展開される現代音楽である。それ以降、もしくは同時期に書かれたであろう交響曲第1番は、これもまた同じく東日本大震災後、3.11の影響を色濃く受けた作品であろう。「Fifth Dimension」は、『JOE HISAISHI CLASSICS 4』CD作品に収録されている。

 

 

 

2016.7. 追記

2016年7月29日「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2016」にて、「THE EAST LAND SYMPHONY」という作品に発展する。すでに発表していた「交響曲第1番第1楽章」が、大作「THE EAST LAND SYMPHONY」の第1楽章:1. The East Land に改作される。

 

2017.8 追記

そのライブ音源はミニマリズム・シリーズ第3弾としてCD化され収録される。

 

 

Disc. 久石譲 『肩の上の蝶 / Rest on Your Shoulder』 *Unreleased

2011年7月8日 中国公開

 

2011年 中国映画 「肩の上の蝶 (Rest on Your Shoulder)」
監督:張之亮(ジェイコブ・チャン) 音楽:久石譲 出演:陳坤(チェン・クン) 他

日本未公開作品

 

録音:2011年3月8日、9日 アバコスタジオ
演奏:東京ニューシティ管弦楽団

 

 

同映画は恋愛ファンタジーで3Dを駆使し、完成までに8年を費やした意欲作。中国国内のみならず東京や北海道富良野でも撮影を行った大人の童話となっている。

「海洋天堂」以来、2作目の中国映画の音楽担当。実は「肩の上の蝶」の音楽の制作しているときに東日本大震災が発生。だが久石譲はジェイコブ・チャン監督の期待に応えるため、7月8日の中国公開に間に合わせるため作業を中断することなく制作を続けたという。

監督の熱烈なラブコールによって実現した久石譲の音楽だけあり、随所に音楽が登場する曲数の多い作品。これは作品の「ファンタジー 恋愛 ロマンス」という設定からくるものでもあると思う。

ファンタジックで夢の世界へと誘う音楽。フルオーケストラ構成でありながら、とてもメルヘンチックな印象を受けるのはそのメロディーによるところが大きい。

メインテーマはワルツで書かれた音楽になっていて、優雅に流れるようでもあり、飛び跳ねるようでもあり、いろいろなモチーフで登場する。弦楽器や管楽器をつかったフルオーケストラ編成に加えて、コーラスもフィーチャーしたアレンジがエンドクレジットなどでも聴くことができる。混声合唱が伸びやかに歌うその音楽は、愛とロマンスの象徴。

その他シーン音楽も、心温まる、ファミリー映画のような旋律が特徴になっている。そして、管楽器とりわけピッコロなどの高音楽器を使用することで、コンセプトともなっているファンタジーや蝶のイメージを見事に表現している。ファゴットなどの低音楽器もシーンごとのコミカルさやファンタジックな世界の表現に一役かっている。

とても丁寧に作り上げられた映画音楽。映画本編の日本公開のみならず、映画音楽としてのサウンドトラックの発売も期待する作品。

 

JASRAC登録 M1~M45

 

 

肩の上の蝶1 

肩の上の蝶2

 

Disc. 久石譲 『MAZDA BGM 〜Heart of Mazda〜』 *Unreleased

2011年6月1日~2012年5月31日 CM放送

 

MAZDAグローバルブランドキャンペーン
オリジナルCM音楽ならびにオリジナルムービー用音楽

MAZDA「SKYACTIVE TECHNOLOGY」ショート・フィルム音楽
監督:李相日
音楽:久石譲

レコーディング:2011年4月、Bunkamuraスタジオ

 

 

CM音楽は30秒程度、ピアノの軽快かつ綺麗なメロディーにストリングやマリンバなどが小刻みにリズムを刻んでいる。開発者、関係者、技術者のインタビュー・エピソードからなるオリジナルムービーは社内用・販促用だろうか。

オリジナルムービー内のBGMでは同曲をモチーフに展開されている。メロディーがチェロ、フルート、オーボエ、ピッチカートなどいろんなバリエーションで登場し、そしてピアノもCM版とは異なるしっとりと美しい調べとなっている。

一方でCM版よりもリズミカルなストリングの軽快なバリエーションもある。またテーマ曲に沿った別のBGMを聴くことができる。

CD化されていない未発売曲。

 

JASRAC登録 M1~M14

 

 

mazda heart of mazda マツダ

 

Disc. 久石譲 『明日の翼』 *Unreleased

久石譲 JALテーマ曲 『明日の翼』

2011年5月 TVCM放送

 

JALのテーマ曲として書かれた『明日(あした)の翼』。「明日の空へ、日本の翼」というキャッチコピーのもとTVCMでも流れる。JAL航空機の「ご搭乗時ウェルカムビデオ」という機内映像など、JAL機内でのBGMとして聴くことができる。

 

フルオーケストラ編成の壮大なアレンジとなっているヴァージョン(3分16秒)と、「ご搭乗時ウエルカムビデオ」BGMなどに使われている小編成ヴァージョン(3分30秒)がある。後者はピアノなどを基調としたヴァイオリンやフルートがメロディーを展開していくもので、ギターやエスニックパーカッションも加えられている。レコーディングもオーケストラ版とは分けて期間をあけて追加制作されている(2011年12月17日)。

 

こちらはJAL公式ホームページでも映像作品として視聴できる。 (※2013年5月現在)
こちら ⇒ JAL – 明日の空へ、日本の翼 (※2016年10月終了)

 

こちらはピアノを基調とした「ご搭乗時ウェルカムビデオ ver.」(※公開終了)

 

 

ワールド・ドリーム・オーケストラの『World Dreams』、NHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」のメインテーマ『Stand Alone』、日清カップヌードルCM曲『Adventure of Dreams』などにも通じる、壮大な、格式高い、序曲のような、とても美しいメロディーの楽曲。

ぜひどのヴァージョンもふくめCD化してほしい作品。

 

 

2024.01.24 update

JAL国内線・国際線の全路線で降機時に上映する「降機用ビデオ」が12年ぶりにリニューアル!

新しいビデオには、日本各地で活躍する文化や技術の担い手を中心に起用。繊細な技術や所作といった“人”を核として捉えた構成で、日本らしさやJALらしさを表現したという。音楽は作曲家の久石譲さん作曲「明日の翼」をこれまでと同じく採用した。

 

images from JAL’s now 【公式】 X

 

 

久石譲 JALテーマ曲 『明日の翼』

 

Disc. 久石譲 『Prime of Youth』 *Unreleased

2010年 委嘱

 

2010年11月5日~2011年1月16日開催「久石譲アジアツアー2010」にて初演(東京/大阪/韓国のみプログラム)。

■Prime of Youth
2010年、大阪青年会議所のピース・カンファレンス・オブ・ユース事業のテーマソングとして書き下ろされた。ファンファーレのように高らかに鳴り響く冒頭と、それに続く8分の11拍子の変拍子のリズムから紡ぎだされるミニマル・ミュージックとシンフォニックな響きが特徴的な作品。

 

 

2015.11. 追記

2015年12月11日開催「久石譲 第九スペシャル 2015」にて、「Orbis ~混声合唱、オルガンとオーケストラのための~」の第3楽章に組み込まれる。合唱編成をともなう加筆と修正によって新たに改作されている。

 

 

Disc. 久石譲 『海洋天堂 / Ocean Heaven』 *Unreleased

2010年 中国公開

 

2010年公開 映画 「海洋天堂」
監督:シュエ・シャオルー 音楽:久石譲 出演:ジェット・リー ウェン・ジャン 他

日本公開日:2011年7月9日

2012年DVD化
サウンドトラック未発売 未CD化作品

 

父と子の絆を描く感動のヒューマンストーリー。また親子愛のみならず男女愛、隣人愛、友情までと様々な愛情を映し出す作品。

リアリティさと海や水中を描く映像のコントラストが美しい。そして映像に共鳴するかのような音楽の寄り添いもまた美しい。主張しすぎず、涙腺に訴えかけすぎない配慮のされた奥深い音楽。それはクラシックの印象派のような表現。

ピアノやハープの細かい音の粒が母なる生命=海を感じさせる。そしてそれはあらゆる生き物の力強い生命力や息吹までも感じることができる。

劇中音楽はさほど多いほうではないが、それが作品のリアリティさを増し、海や水中を表現しているシーンに、効果的にこのメインテーマが響いている。ピアノやハープが旋律を織りなし、いつしかストリングスに旋律が移るなか、ピアノの細かい粒たちは、そのバックグランドとして奏でつづける。フルートやオーボエなどの木管楽器も絡み合いながら、フルオーケストラの広がりと深み、あらゆる生命体が共鳴し光り輝くようである。

メインテーマはまさに海を象徴しているものであり、同じく生命の尊さ、愛おしさを美しく表現した名曲。一度聴いただけではメロディーを覚えられそうにないところにこの楽曲の肝があり、主張しすぎない、印象派のような、1枚の絵画のように、楽曲全体として聴けば聴くほどに深く心に入ってくる。

作品全体をとおしても、悠々としたピアノやストリングスの旋律が美しく寄り添っている。緻密で繊細なオーケストレーションが、生命の愛おしさを感じさせてくれる。愛に溢れた音楽、ぜひともCD化してほしい作品である。

 

 

またメインテーマ曲に歌詞をつけたボーカルバージョンも存在する。

《海洋天堂 (「海洋天堂」电影插曲) 》
作词:许朔
作曲:久石让Joe Hisaishi
演唱:桂纶镁

原曲のイメージを崩していないオーケストラによる伴奏だが、久石譲が編曲も担当したかどうかは不明。

 

 

海洋天堂 DVD

 

海洋天堂 ポスター