狂言師の野村萬斎と歌舞伎役者の市川猿之助が、鬼塚忠の歴史ドラマ小説(「花いくさ」)を映画化する『花戦さ』(2017年全国公開)で初共演することが明らかになった。萬斎は、時の天下人・豊臣秀吉に刃(やいば)ではなく「花」で戦いを挑む花僧・池坊専好(いけのぼう せんこう)を、猿之助が秀吉を演じる。日本の伝統芸能の継承者である萬斎と猿之助はテレビ番組で対談したことはあるものの、映画やドラマ作品で共演するのは初めて。また、織田信長役に中井貴一、前田利家役に佐々木蔵之介、千利休役にかつて父・三國連太郎さんも同役を務めた佐藤浩市を迎え、邦画界きっての実力派との競演も実現した。
本作は、1594年(文禄3年)に池坊専好が前田利家邸にて豊臣秀吉に披露したといわれる立花「大砂物」から生まれた伝説に着想を得て、新たな物語を作り上げた鬼塚忠の小説を基にした“痛快時代劇エンターテインメント”。戦国の京の都において生け花で平和を祈り、人々に希望を与えた池坊と呼ばれる僧侶たちの中で初代・専好にスポットを当て、共に美を追い求めた茶人・千利休との友情や、秀吉の乱心に花をもって仇討ちする姿を映し出す。脚本はドラマ「ごちそうさん」や「JIN-仁-」「天皇の料理番」などのヒットメーカー、森下佳子。監督は映画『小川の辺』『山桜』などで時代劇にも定評があり、『起終点駅 ターミナル』『スイートハート・チョコレート』の篠原哲雄が務める。音楽は、スタジオジブリ作品をはじめ日本映画音楽界の顔ともいえる久石譲が担当する。題字は、力強いタッチで世界的にファンを広げる金澤翔子。劇中絵画は、その作品が大英博物館に所蔵展示された小松美羽が担当する。
主演の萬斎は専好について「戦乱の時代の中で、花で世に語りかけ、花と共に生きた人」と語っており、「命あるものに更なる命を吹き込む、純粋(ピュア)な存在として演じたい」と意気込む。また、事前に2度にわたって生け花の所作の稽古を行ったといい「花鋏(はなばさみ)の使い方など華道の基本はもとより、ためる(枝などを曲げた状態にする)、葉の形を変える等の細かい技術や、力技を必要とする男性的な大作に至るまで、幅広く教わりました。生け花特有の所作に、私なりの動きを活かせればと思います」と演技プランも明かした。萬斎は“マイ鋏”を持っていて、自宅でも稽古を続けているという。
撮影は京都の大覚寺をはじめ妙心寺、鹿王院、仁和寺、南禅寺、梅宮大社、随心院などでも敢行。製作費は5億円超で、時代劇のメッカともいうべき京都太秦の映画人たちの手によって製作される。合戦シーンはなく、萬斎の演技によって台本のセリフ以上にユーモラスな専好が表現されるという。また、映画オリジナルのキャラクターでヒロインの絵師も登場する。来年は華道家元池坊が「花を生けた」という記録から555周年となり、配給の東映によると「生け花」にフォーカスした映画は過去に類をみないという。撮影は4月10日クランクイン、5月下旬クランクアップ予定。
■公開情報
『花戦さ』
2017年全国公開
原作:鬼塚忠「花いくさ」(KADOKAWA刊)
監督:篠原哲雄
脚本:森下佳子
音楽:久石譲
出演:野村萬斎、市川猿之助、中井貴一、佐々木蔵之介、佐藤浩市
■ストーリー
十六世紀。戦乱に荒れ果てた京の都に、花を生けることで世の平穏を祈り、人々に生きる希望を与えんとする、「池坊」と呼ばれる僧侶たちがいた。やがて織田信長による天下統一を前に、戦国の世も終わりを告げようとする頃、「池坊」の中でもその生ける花がひときわ異彩を放つ池坊専好は、信長の所望で、「大砂物」なる大がかりな生け花を披露するため、岐阜城へと向かう。そこで専好は、千宋易という不思議な男に出会うが、巨大な松を中央に据えた大砂物は思わぬ失態を招き、信長の怒りを買う。しかしそのとき、軽妙に事態を取り繕い、専好を救ったのは、信長に仕える若き武将、木下藤吉郎だった。
それから十二年。信長は本能寺の変によってすでにこの世を去り、天下はかつての木下藤吉郎、豊臣秀吉の手に委ねられていた。期せずして池坊の執行となった専好だが、その立場ゆえに、迷いながらも自らの奔放な「花」を封印していた。そんなある日、今は豊臣秀吉の茶頭として、利休を名乗る宋易と再会する。二人はしだいに心を通わせ、いつしか真の友として、互いが目指す「美」の世界を高め合う関係となっていく。専好は利休によって、自らが求める「花」の心をようやくつかみ始めるのだった。しかしやがて悲劇が訪れる。天下を握ってから人が変わったように驕り高ぶる秀吉に対し、諌めるように自らの茶を貫き通そうとした利休が、その頑なさゆえに、秀吉に命じられ、自害に至ったのだ。打ちのめされる専好。さらに悲劇は続いた。秀吉の乱心は嵩じ、罪もない街の者たちまでが、次々と命を奪われていく。ついに専好は立ち上がった。時の最高権力者太閤秀吉に戦いを挑む専好。かけがえのない友、利休の仇討のため、彼が手に取ったのは、刃(やいば)ではなく「花」だった。それこそが、専好にしか成しえない「戦さ」であった。
(Webニュース各種より 編集)