久石譲:アルバム「アナザー・ピアノ・ストーリーズ」発表 「おくりびと」3曲再構成
◇組曲「ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド」が骨格、「生」のため「死」テーマに
アカデミー賞外国語映画賞を受賞した「おくりびと」の音楽を担当した久石譲がオリジナルアルバム「アナザー・ピアノ・ストーリーズ~ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド」(ユニバーサル)を発表し、注目を集めている。【川崎浩】
◇「おくりびと」の3曲も再構成
「おくりびと」の3曲を一つの組曲に再構成。書き下ろしの組曲「ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド」と同格に置き、アルバムの大きな骨格としている。そのほか映画「崖(がけ)の上のポニョ」「私は貝になりたい」やテレビドラマ「太王四神記」のテーマ曲、サントリー緑茶「伊右衛門」のCM曲など、なじみのメロディーがずらりそろっている。
演奏は久石のピアノに加え、12本のチェロやマリンバのアンサンブルを起用し、久石が想定した音楽世界を出現させている。
「このアルバムは、どちらかというと、自分のために作った。プロなので商業的視点も必要なんだが、ヒット作だけでまとめるのは苦痛を伴う」と久石。「『ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド』を入れようと決心した時から、この作品は『アナザー(別物)』にしようと思った」
「ジ・エンド~」では歌も披露する。アルバム全体を終末感が覆っている気がするが……。
「『おくりびと』はもとより『ポニョ』も、実は死を描いているんですよ。『死』は僕にとっても最も大きなテーマ。人間にとっても最大の問題だと思う。そこを見つめないと、生きるってことがわからない」
久石には、この問いに明解な回答が用意されているのだろうか。
「生きていること自体が煩悩なんですよ。僕の場合は、作曲している瞬間だけ欲が消える。回答というより実践なのかな」
久石はこれまでも「DEAD(死)」と題した曲を発表している。和音のDEADだけを使い、それを繰り返す手法の曲である。
「ジ・エンド~」は「9・11同時多発テロ」をテーマにしている。「9・11は、アメリカを追い続けていた日本の価値観の崩壊を象徴するものでもあった。人類は『危機』に、というより『死』に直面した形だ。僕らは一度それを受け入れなければならないのではないか。そのうえで、そこを越えていかなければならないだろう」
クラシックとポップスの両面からアプローチできるからこそ、久石はこのテーマを提示していけるようだ。
毎日新聞 2009年3月9日 東京夕刊
(毎日jp より)