Overtone.第14回 「交響曲第3番/マーラー」のポストホルン

Posted on 2017/12/26

ふらいすとーんです。

「好きになりませんように。」「趣味にあいませんように。」そんな気持ちでおそるおそるプレイボタンを押すことってありますか?

クラシックに疎いなかで、マーラーという作曲家は名前だけが先行していて実際にちゃんと聴いたことがない。一年間で好きな作家や長大な小説を読破するそんな目標を立てるように、マーラー交響曲全9作品をちゃんと聴いてみようとはじめました。案の定、作品ごとにいろいろなCD盤を聴き比べてお気に入りの1枚を探すこともまた楽しい行程、聴いて調べて横道にそれてゆっくり味わいながら。

この交響曲第3番は好きになりたくなかった。気に入ってしまったら毎回とおしで100分の時間を捧げなければいけない。それもそのはず、この作品はかつて「世界最長の交響曲」としてギネスブックにも認定されていたとのこと。長いはずです。マーラー交響曲は全9作品、すべてを気に入る必要もない……そんな不純な願いを一蹴するかのように見事にハマってしまいました。

映画『となりのトトロ』よりも長編。トトロに出会って、メイが迷子になって、ネコバスに乗って、お母さんにとうもろこし届けて、となりのトトロ歌って、”おわり”のエンドクレジットで幸せな気分になって。…その頃こちらの交響曲第3番はというと、やっと最終第6楽章のクライマックスにさしかかろうというところ。長いはずです。

映画一本分にも相当するこの作品、中盤なかだるみすることなく、最後に待ちうけるのは至福のカタルシス。ハッピーエンド・バッドエンドという物語の特性に左右されることのない、音楽だけの持ついかようなクライマックスをも潜めたエネルギーの解放、至極の満足感と解放感で胸いっぱいになります。

 

 

たまたま初めて食べたその料理のせいで完全シャットアウト、嫌いになってその後二度と口にすることのない食べ物のように。どうもやっぱり音楽にもそれがあるようです、残念ながら。最初に聴いた演奏でまったく自分のなかの音楽センサーが反応しない、こんなもんか、自分には合わない作品だなと終わってしまう。

でも少しずつクラシックを聴きなれていくと、演奏は合わなくともきっといい作品に違いない。本質的には好きかもしれない、もっといい盤を見つけることができたなら、相性よくお気に入りの愛聴盤になるかもしれない。そんな目利きならぬ耳利きが育っていくのかもしれません。

ご多分に漏れず、この作品もテンポや響き、管弦楽のバランスなどによってまったく印象がちがう。優劣をつけるのではなく、もうそれは「こうあってほしい」という聴き手のイメージと願望に近い選び方。そしてこの1枚に出会いたときには飛び跳ねるほど幸せでした。

マーラー交響曲第3番、名盤とっておきのオシ盤はこれです。

 

マーラー:交響曲第3番

1 Kraftig.Entscheiden 34:20
2 Tempo di minuetto. Sehr massig 9:08
3 Comodo. Scherzando. Ohne Hast 15:44
4 Sehr langsam. Misterioso. 4:41
5 Lustig im Tempo und keck im Ausdruck. 9:12
6 Langsam. Ruhevoll. Empfunden 20:07

指揮:ヴァーツラフ・ノイマン
演奏:チェコ・フィルハーモニー管弦楽団、マルタ・ヴェニャチコヴァ(アルト)、プラハ室内合唱団、ミロスラフ・ケイマル(ポストホルン)

録音:プラハ「芸術家の家」ドヴォルザーク・ホール(1994年)

オクタヴィアレコード/ハイブリッドSACD/2枚組

 

 

好きになった理由、より好きになった理由は、すべてCD情報に書かれています。

 

 

ノイマン(指揮)

マーラーと同郷ゆえにボヘミア様式の音楽づくり、素朴で民謡的なモチーフを多く含んだマーラー作品を自然体で豊かに表現しています。端整であり悠々と歌いあげ大きく広がりのある響き。ノイマンはドヴォルザークやベートーヴェン作品もたくさんいい録音があって、結局ノイマン指揮が愛聴盤にすっと落ち着いてしまうということも僕のなかではしばしば。

 

第1楽章は力強いホルンの響きと多彩な主題が絡み合う壮大な行進曲のリズム、第2楽章は軽やかで優しく弾むメヌエット、第3楽章は素朴で神秘的なポストホルンによる旋律、第4楽章はニーチェの言葉にのせてゆったりとアルト独唱、第5楽章はアルトと女声合唱・児童合唱による天使と鐘の響き、第6合唱は弦楽合奏による美しい感動的な境地。

構想の段階では、全体のタイトルとして「真夏の昼の夢」などの言葉が頭にあって、第1楽章「牧神が目覚める、夏が行進してやって来る(バッカスの行進)」、第2楽章「野の花たちが私に語ること」、第3楽章「森の動物たちが私に語ること」、第4楽章「人間が私に語ること」、第5楽章「天使が私に語ること」、第6楽章「愛が私に語ること」というタイトルが付けられていました。出版の際に誤解を与えかねないとしてこれらの標題はすべて削除されることになりました。が、作品の本質に迫るための鍵としてきわめて重要なものです。交響曲第3番は、自然と人間の存在について、自然観や宇宙観といった壮大な世界が表現されています。

世界観も壮大ならば、音楽構成も多種多彩。それを見事にひとつの大きなかたちとして巨大に構築したマーラーと、収拾つかなくなりそうな音楽的素材たちを縫い目よくまとめあげるノイマンの指揮。第6楽章はクライマックスに向けて最高潮に達しながら終わりそうで終わらない。クセになるほどたたみかけるハイライトの巨渦。大きく起伏する重厚なストリングスの波は怒涛のごとくおし迫り。壮絶な解放感と同時に、このまま終わってほしくないと思わせてしまうほど。これほどまでに名残惜しい残響はない。本当に巨大な宇宙のような作品なんです。

 

 

ポストホルン

ポストホルン? 18世紀から19世紀ヨーロッパで使われていた郵便ラッパのことで、バルブを持たない円柱状の金管楽器、ホルンの仲間とあります。オーケストラのトランペット奏者が演奏するのが一般的で、この楽器は現代では珍しくなったため、トランペットやフリューゲルホルンで代用されることもあるそうです。素朴な音が特徴でモーツァルトもこの楽器のための協奏曲を残しています。

 

ホルン

ポストホルン

 

 

ミロスラフ・ケイマル

交響曲第3番のポストホルンならびにトランペット奏者、ミロスラフ・ケイマル。チェコフィル前首席奏者、ノイマン指揮×チェコフィルとして他マーラー作品でもケイマルさんのトランペットは健在です。第3楽章のトランペットのソロ録音に、ノイマンが聴き惚れ涙を流したというエピソードもあるほどです。ケイマルさんのスケジュールに合わせてマーラー交響作品録音スケジュールの作品順番を入れ替えたというエピソードも。絶大なる信頼とトランペット奏者として存在の大きさがわかります。

 

 

さて。

この辺りからぼちぼちつなげていきます。

 

久石譲 × ケイマル

すぐにピンときた人はすごい!映画『ハウルの動く城』公開に先がけて制作されたイメージアルバム。「イメージ交響組曲 ハウルの動く城」そのなかに「Cave of Mind」というトランペット旋律の美しい楽曲があります。この奏者こそミロスラフ・ケイマルさんです。

久石さんは当時このように語っています。

「実際に演奏してもらい、“こんなにいい曲だったんだ”と驚かされることってあるんだよね。いい演奏者というのは、そうやって曲の持っている力を引き出してくれる。『ケイヴ』はまさにそういう曲だった」

 

久石譲 × チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

イメージアルバムの枠を超えたフルオーケストラによるひとつの完成されたハウルの世界。100%音楽だけでその世界観を表現しようと、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団と本拠地プラハ「芸術の家」ドヴォルザークホールで録音し、ロンドン アビーロードスタジオで仕上げた渾身の作品です。

 

 

 

ケイマルさんの響きはここで終わりません。

イメージアルバム制作後、ハウルの音楽は二転三転します。宮崎駿監督の「映画をひとつのメインテーマでいきたい」という希望から、イメージアルバムにはなかった一曲が新たに書き下ろされます。そう「人生のメリーゴーランド」、このメインテーマと変幻自在なバリエーション(変奏)によってハウルの世界観は統一されました。

そんななか宮崎監督がイメージアルバムを聴いて気に入っていたのが「Cave of Mind」。この楽曲を本編でも使うことはもちろん「本編もこの音がいい」とケイマルさんのトランペット・ソロを強く望みました。

サウンドトラックは新日本フィルで録音するため、「Cave of Mind」だけチェコフィルの録音をそのまま使うことは難しい。なんとケイマルさんをたった1曲のためだけにチェコから呼んだ。新日本フィルハーモニー交響楽団と一緒に再度あの美しい旋律を甦らせたのが「星をのんだ少年」です。付け加えるなら、本編映像に音楽をあわせたときに「最後にメインテーマに戻りたい。これはハウルとソフィーの物語だから」という録音当日の宮崎監督の要望をうけて、その場で修正を加え「星をのんだ少年」には「Cave of Mind」になかった「人生のメリーゴーランド」の旋律が終盤に追加されることになりました。ケイマルさんを呼んだからこそ、この追加パートでもメインテーマの旋律と絡み合うトランペットの美しい音色を聴くことができる、そんな贅沢な一期一会が記録されることになりました。

いろんなエピソードがあるんですね。幾多の奇跡の連続で音楽は誕生しているんですね。

 

ハウルの動く城 サウンドトラック

 

 

今では、「SYMPHONIC VARIATION “MERRY-GO-ROUND”」として演奏会用に音楽再構築された「シンフォニック・バリエーション メリーゴーランド」がコンサートで演奏される機会に恵まれています。「SYMPHONIC VARIATION “MERRY-GO-ROUND + CAVE OF MIND”」版は、その名のとおり「ケイヴ・オブ・マインド」を加えた作品です。こちらはジブリコンサートなどでも披露されています。オフィシャル・オーケストラ・スコアも出版されています。

 

 

 

「交響曲第3番/マーラー」(1994録音)と「イメージ交響組曲 ハウルの動く城」(2004録音)の共通点は、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団、ミロスラフ・ケイマル(トランペット)、芸術の家 ドヴォルザーク・ホール録音でした。

これだけでもすごい共鳴なんですけれども、1994年と2004年の間にもうひとつあります。

 

映画「もののけ姫」の世界を、全8楽章から構成された交響作品へ昇華した「交響組曲 もののけ姫」(1998年録音)。この作品こそチェコ・フィルハーモニー管弦楽団との初共演。当時のコンサートツアーパンフレットにもレコーディング日誌が掲載されています、ドヴォルザークホールでの録音風景も紹介されています。今この写真を見返すだけでも、なんだか深い感慨をおぼえます。

 

 

久石譲 『交響組曲 もののけ姫』

 

 

オクタヴィアレコードよりハイブリッドSACDとして発売された「交響曲第3番/マーラー」は音質クオリティの高さにも注目です。迫力や臨場感はもちろん繊細な音も逃すことのない自然で豊かな響きです。ハイブリッドSACDは、通常のプレーヤーでも聴くことができてSACD専用プレーヤーならばさらに最高音質で聴くことのできる規格です。僕は通常のプレーヤーで聴いてますけれど…それでも文句なし素晴らしい。

このクラシック音楽専門レーベル オクタヴィアレコードと久石譲といえば。近年の活動を象徴するコンサート企画の録音が刻まれはじめています。ひとつは”現代の音楽”をナビゲートする「MUSIC FUTRE」、もうひとつは”現代の解釈”を堂々と提起する「ベートーヴェン・ツィクルス」。いずれもコンサート・シリーズ継続中で、現代ゆえの貴重な発信(コンサート)と記録(CD盤)が両輪で着実に生み残されていることは、きっと未来への宝物になります。

 

Disc. 久石譲 『久石譲 presents MUSIC FUTURE 2015』

 

Disc. 久石譲 『久石譲 presents MUSIC FUTURE II』

 

Disc. 久石譲指揮 ナガノ・チェンバー・オーケストラ 『ベートーヴェン:交響曲 第1番&第3番「英雄」』

 

 

結び。

「交響曲第3番/マーラー」この作品にはじまり、愛聴盤を探す過程で出逢えた名盤とつながる点と線。「交響組曲 もののけ姫」発売当時、チェコフィルってすごいの?なにか違うの? と子どもよろしく素朴な疑問。「イメージ交響組曲 ハウルの動く城」発売当時、ケイマルっていう人がいるんだ、たしかにきれいな音だけど、だって曲がいいし、くらいのふてぶてしい感覚……。

この無知で未熟なままの音楽思考が、マーラー作品の1枚のCDをとおして、やっとやっと巡り巡って周回遅れでたどり着いた感慨。名前やネームバリューといったもので音楽を聴くわけではないけれど、たしかに知って豊かになること、新しい聴こえかたがしてくる瞬間ってある。

その感動を運んできてくれたのが「交響曲第3番/マーラー」(ノイマン指揮)の名盤でした。今振り返ると、きっと久石さんもチェコ・フィルと共演すること、歴史と伝統あるドヴォルザーク・ホールで録音すること、とても感慨深く特別な想いがあったんだろうなあと、巡り巡ってやっと今とてつもない感慨におそわれます。

時間が経過しないとわからない価値もあるでしょう、時代の変化で価値がかわることもあるでしょう。そして価値を見いだせる聴き手、見いだせない聴き手(僕のこと)もいるんだということ学ばせてもらいました。反省というよりも、そのくらい久石さんは「今いいと思うこと、自分がこうだと思うこと」を妥協なく本気でやっている。いつの時代も全力で走りつづけてきた、その数々がきちんと残されている。そのことにその本質にいつ気づき共感共鳴することができるかは、聴き手に大きく託されている。そんなこわさを感じたというほうが正しいかもしれません。

 

今回なにを記したかったかというと、純粋に「交響曲第3番/マーラー」の作品のすばらしさを伝えたかったんです。聴く人それぞれに満足感を堪能できる作品です。ケイマルさんも第3楽章はもちろん各楽章で美しい旋律を奏でています。個人的にはマーラー交響作品 奇数番号ものに好きな作品が多い。マーラーが世俗的であったり民謡的なものを作品に込めたように、久石さんも日本作曲家として現代作曲家として「THE EAST LAND SYMPHONY」で世俗観や民謡的音階をのぞかせています。いろんな角度から眺められるようになると、ほんと音楽って面白い。まだまだ新しい発見や新しい聴こえかたがきっとある。

久石さんが作曲のためにクラシック音楽の指揮をしていると言うならば。僕は久石さんの音楽を広く深く愛するためにクラシック音楽を聴いている。結果そうなってきている、そんな気がしますね。

それではまた。

 

reverb.
この年末年始、ぜひ第6楽章だけでも聴いてみてほしい!心おだやかに心洗われます。あなたの今年一年を包みこんでくれますように♪

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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Info. 2018/01/02 [TV]「NHK WORLD presents SONGS OF TOKYO」久石譲出演 【12/22 Update!!】

Posted on 2017/10/30

「NHK WORLD presents SONGS OF TOKYO」に、久石譲の出演が決定しました。

NHK WORLD presents SONGS OF TOKYO
2020年の東京オリンピック・パラリンピックで、日本への注目が高まっています。 “Info. 2018/01/02 [TV]「NHK WORLD presents SONGS OF TOKYO」久石譲出演 【12/22 Update!!】” の続きを読む

Info. 2017/12/20 「久石譲 PREMIUM CONCERT 2017 in 仙台」仙台フィル公式ツイッター

12月20日開催「久石譲 PREMIUM CONCERT 2017 in 仙台」久石譲と仙台フィル初共演のコンサートです。仙台フィルハーモニー管弦楽団【公式】Twitterにて、18日から2日間行われたリハーサル風景、公演当日の様子など写真つきで余すところなく紹介されています。普段お目にかかることのできない貴重な舞台裏や、会場に足を運んだ観客たちのリツートまで。これを見れば大盛況を飾ったコンサートはもちろん、リハーサル準備から公演後まで最高潮へむかう時系列、こまやかに記録され一体感のあるコンサートイベントを感じとることができます。ぜひご覧ください。 “Info. 2017/12/20 「久石譲 PREMIUM CONCERT 2017 in 仙台」仙台フィル公式ツイッター” の続きを読む

Info. 2017/12/18 [ゲーム] 「二ノ国II レヴァナントキングダム」特別インタビュー映像 第1弾「アニメーション編」公開

レベルファイブは、PS4/PC用ソフト『二ノ国II レヴァナントキングダム』の公式サイトで、コアスタッフによる特別インタビュー映像を公開しました。

今回公開されたのは第1弾「アニメーション編」。今後第2弾「キャラクター編」、第3弾「音楽編」、第4弾「ゲームシステム編」、第5弾「アート編」の公開が予定されています。 “Info. 2017/12/18 [ゲーム] 「二ノ国II レヴァナントキングダム」特別インタビュー映像 第1弾「アニメーション編」公開” の続きを読む

Blog. 「FMファン 1991年 3.18-3.31 VOL.7」 久石譲 インタビュー内容

Posted on 2017/12/17

雑誌「FMファン 1991年 3.18-3.31 VOL.7」に掲載された久石譲インタビューです。

 

 

Joe Hisaishi
久石譲

柔軟な思考と確かな哲学を持つメロディ・メイカー

彼のニュー・アルバム『I am』を聴いていると、彼が数多くの映画音楽(TVも)を手がけているにもかかわらず、映画音楽を作っていないのがよく分かる。映像に従属した音楽を作っていない、という意味である。これから想像して、気位の高い気難しい人かもしれないと思っていたのだが……。

「生ピアノと弦楽オーケストラで作り上げたわけですけれど、必ずしもアコースティックがいいという意味ではないんです。ピアノの微妙なニュアンスは、打ち込みではどうしても出てこない。打ち込みでやって、微妙なニュアンスを修正していくと、ワン・フレーズに半日かかってしまう。だったら、初めから生ピアノでやったほうがいいでしょ(笑)。いまは、深いニュアンスを要求する時代だと思うんです」

柔和な笑顔で、アルバムについて語りだした彼は、想像に反して気難しい人ではなかった。むしろ、柔軟な思考と確かな哲学を持っている人のようだった。僕たちは、日本の音楽状況について話し始める。

「日本で一番足りないのは、エンターテインメントだと思うんです。これが充実して、初めていろんなことがやれるんじゃないですか」

簡単に言えそうで、なかなか言えない言葉。

「僕の好きな音楽は、幹みたいな音楽。それ自体はきれいじゃないけれど、幹がなければ枝もきれいな葉も出てこない。音楽を変えていくようなパワーのあるものがやりたいですね。たとえばこのアルバムを作ったのも、日本では、音楽でリリカルな精神世界に入っていけるものがないからなんです。どうしてもムード・ミュージックになりがちなんです。人のやっていないことをやりたい、という気持ちは、どこかにありますね」

「人は、一生に1冊の小説を書ける」という言葉と同じ意味で、ひとつの歌を書ける。最近、どうもそんな歌が多いような気がする。その後が問題。そんな人とそんな音楽状況に彼のこんな言葉はどうだろうか。

「1ヵ月に1個、新しい技術を覚えると、1年で12、3年で36。もしかしたら、1週間で1個も可能かもしれない。上昇思考、そういう発想が、自分の糧になっている。やっぱり、音楽を尊敬していますからね。そのための苦労はいとわない」

彼は、体はやわらかくエンターテインメント(ポップス)、心は、クラシカル(正統的、古典的)という人だと思った。こういう人が、もっともっと必要な時代ではないか。

インタビュー・分 こすぎじゅんいち

(FMファン 1991年 3.18-3.31 VOL.7 より)

 

 

Info. 2018/01/05,12 [TV] 金曜ロードSHOW! 2週連続 冬もジブリ「魔女の宅急便」「ゲド戦記」放送決定

新春の「金曜ロードSHOW!」は「魔女の宅急便」と「ゲド戦記」が放送されます。ジブリ作品を2週に亘ってお届けする「冬のジブリ」。合言葉は「みんなで観よう!」ジブリ作品と初めて出会う小さなお子様から、何度も繰り返し観てきたジブリファンの方まで、皆さまそろってお楽しみ頂ければと思います。

(スタジオジブリ公式サイト より) “Info. 2018/01/05,12 [TV] 金曜ロードSHOW! 2週連続 冬もジブリ「魔女の宅急便」「ゲド戦記」放送決定” の続きを読む

Info. 2018/03/23 [ゲーム] 「二ノ国II レヴァナントキングダム」発売日変更 & 5thトレーラー公開

レベルファイブは、PS4/PC用ソフト『二ノ国II レヴァナントキングダム』の日本語版キャストを発表しました。また、発売日を2018年1月19日から2018年3月23日に変更しています。

前作『二ノ国』は、スタジオジブリによる制作協力のもと、レベルファイブが開発をし、音楽は久石譲さんが手がけたRPG作品です。『二ノ国II レヴァナントキングダム』でも、百瀬義行さん(元スタジオジブリ)と久石譲さんが参加しています。

発売日の変更理由は、さらなるクオリティアップと、すべてのユーザーに安心して遊んでもらうためとのことです。

(Webニュース各種より) “Info. 2018/03/23 [ゲーム] 「二ノ国II レヴァナントキングダム」発売日変更 & 5thトレーラー公開” の続きを読む

Blog. 「TITLE タイトル 2005年8月号」久石譲 スター・ウォーズ ジョン・ウィリアムズ音楽 コメント内容

Posted on 2017/12/15

雑誌「TITLE タイトル 2005年8月号 特集 スター・ウォーズは終わらない。」に掲載された、スター・ウォーズ音楽への久石譲コメントです。

 

 

ジョン・ウィリアムズの音楽で映画の格が上がった。

第1作(『EP4』)の当時、僕はシンセサイザーとオーケストラの音を混ぜたスタイルをとっていました。その時代にフルオーケストラを、しかもあれだけ派手に鳴らしたのは相当オールドスタイルに感じましたね。でも、今は僕もオーケストラの指揮もするようになって、クリックに縛られない、映像のエモーショナルによってテンポも変わる、揺れの音楽の良さを再認識しているんです。

ジョン・ウィリアムズの音楽がないと、もしかしたらお子様向け映画に見えてしまったかもしれない。映像の格、画格を上げる音楽だと思います。去年『スター・ウォーズ』や『E.T.』の曲を指揮させてもらったんです。それで改めて思ったのは彼のスコアがすごく良く書けているということ。とくに『スター・ウォーズ』は、あれだけすごい音がするので、相当大きい編成だと思っていた。でも本当はスタンダードな三管の編成。これでこういう音鳴らすの? と驚きました。各パートが几帳面に書いてあって、学ぶことが多いんです。

よく「日本のジョン・ウィリアムズ!」なんて製作発表の時に紹介されたりするんですけど(笑)、違うんですよ。僕はやっぱり東洋人なのでファとシを抜いた5音階をベースに作るんですけど、彼の場合は逆にその2音に特徴がある。違うからこそ逆に彼の良さがよくわかる気がします。

(TITLE タイトル 2005年8月号 より)

 

 

あわせて、「スター・ウォーズ」はじめ作曲家ジョン・ウィリアムズに関する過去の興味深いインタビュー内容もご紹介します。いろんな角度から見るとおもしろく、その真意が深く紐解けるかもしれません。作曲家同士だからこそわかる作家性やリスペクトが見え隠れするようです。読めば読むほどに深い内容です。

 

 

「何なに風に書いてください、と頼まれると、すぐお断りしますね。たとえば、ジョン・ウィリアムズ風に勇壮なオーケストラ……じゃジョン・ウィリアムズに頼めば……となっちゃうわけですよ。僕がやることじゃない。余談になりますけど、ジョン・ウィリアムズの曲はどれを聞いても同じだ、という風に良く言われますけど、それはまったくナンセンスな話なんですね。つまり、彼ほど音楽的な教養も、程度も高い人になると、あれ風、これ風に書こうと思えば簡単なんですよ。だけど、あれほどあからさまに『スター・ウォーズ』と『スーパーマン』のテーマが似ちゃうのは、あれが彼の突き詰めたスタイルだから変えられないわけですよ。次元さえ下げればどんなものでも書けるんです。だけど、自分が世界で認知されている音というものは、一つしかないんです。大作であればあるほど、自分を出しきれば出しきるほど、似てくるもんなんです」

Blog. 「キネマ旬報 1987年12月上旬号 No.963」 久石譲 インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「作品によってあえて違うものを書こうという考えはないんです。前の作品に似ていようと、その映画に合っていると思った自分の正しいメロディを正しい形で書くということに徹したんですよ。ジョン・ウィリアムズも、けっこう何を書いても同じでしょ。すごい技量があって何でもやれるハズの彼が、何故ワンパターンと言われながらもやっているのか。自分に忠実に一所懸命書いたら、同じタイプになっていいと思うんですよ。オリジナリティっていうのは、そういうものでいいんですね」

Blog. 「CDジャーナル 1991年4月号」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「ハリウッドでも、「何でこんな付け方をしたんだ?」というのもありますね。たとえば、スピルバーグなんかが、これは大林さんが言っていたんですけど、音を消してスピルバーグがつないだ絵を見ると、余りよくないんですよ。シーンのつなぎがぎくしゃくしている。でもスピルバーグはやろうと思えば完璧にできるんですよ、すごいテクニックがあるから。なぜそういうことをしているかというと、そのところにジョン・ウィリアムズのオーケストラの音楽がガーンと流れるんですよ。それでつないじゃうんです。逆にきれいにつながった絵にあの太い音楽をつけると流れちゃうんですよ。音楽がガーンと行くから、シーンは少しごつごつのつなぎをした方が、見る側に衝撃が来る。そこまで計算して、わざと荒くつなぐ。音楽を信じている。だからスピルバーグは絶対ジョン・ウィリアムズとしかやらない。あれは正しいやり方です。だから僕らが音楽を頼まれて、監督さんが期待したものを出したら、もうだめですね。えっ、こういうふうにもなるんだな、となるように。監督は音楽のプロじゃないから、その人が想像した範囲内のものを出したら、それは予定調和でしかないから、何もそこからはドラマが生まれないんですよ。」

Blog. 「ダカーポ 422号 1999.6.2 号」鈴木光司 × 久石譲 対談内容 より抜粋)

 

 

「音楽をやっていても、毎回リセットしてゼロから作ってるつもりなんですけど、やはり覚え慣れた方法論というのがいくつかある。それだと大量に作れるのがわかるんですけど、ゼロにしてまだ開けたことのないドアを開けようとする、そこまでが大変ですよね。一番近いドアを開け続けるとやっぱり枯渇していくし、悪いほうへ向かっちゃいますね。昔ジョン・ウィリアムズがやった『スターウォーズ』と『スーパーマン』と『E.T.』は全部同じメロディーじゃないかと言われてたのね。ほとんどの人はそう言った。でも僕はその時擁護したんです。なぜかと言うと、ジョン・ウィリアムズは自分の音楽を突き詰めて、突き詰めて、その結果自分の音楽はこうだと言い切ったんです。自分をきちんと突き詰めていない人間だと、ジャズ風、クラシック風、ロック風と簡単に書き分けることができる。それはオリジナリティがないということです。でも最後まで自分を突き詰めた人は、似ていてもいいんです。そうしないと、彼も音楽家としてのアイデンティティがなくなってしまう。彼は自分の曲がどれも似ているというのを誰よりもよく知っているはずだし、でもそうせざるを得なかったというところに作家性を感じる。毎回違うことをやろうとした結果、同じような音が生まれたとしても、それは次に発展することだからオーケーなんだと思う。」

Blog. 「秋元康大全 97%」(SWITCH/2000)秋元康×久石譲 対談内容 より抜粋)

 

 

「やっぱりオーケストラを扱って映画音楽をやってるから比べられるのはしょうがないと思うし、昨年、ワールド・ドリームでスター・ウォーズのテーマを自分で振ってみてよくわかったんだけど、あれだけのクオリティと内容のオーケストレーションをやれる人はいないですよ。すごく尊敬してるし、僕なんかまだまだだな、と思います。でもね、実際の音楽でいうと、僕と彼の作るものはまるで違うんですよ。僕は東洋人なので、5音階に近いところでモダンにアレンジしてやったりするものが多いんです。でもJ・ウィリアムズはファとシに非常に特徴がある。正反対のことをやってるんです。それはすごくおもしろいなあと思いますね。音楽の内容も方法論も違うけど、僕もあれくらいのクオリティを保って作品を発表し続けたいですね」

Blog. 「月刊ピアノ 2005年9月号」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

 

Info. 2017/12/20 [雑誌] 「LATINA ラティーナ 2018年1月号」久石譲×三浦一馬 対談掲載

世界の音楽情報誌『LATINA(ラティーナ)』2018年1月号に
バンドネオン奏者・三浦一馬さんとの対談が掲載されます。
10月に共演した「MUSIC FUTURE Vol.4」での貴重なエピソードなども満載です。
どうぞお楽しみに。

月刊『ラティーナ LATINA』(2018年1月号)
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Info. 2017/12/11 [TV] NHK シリーズディープオーシャン「南極大潜航 幻の巨大イカと氷の楽園」放送

NHK シリーズ ディープオーシャン「南極大潜航 幻の巨大イカと氷の楽園」

NHK BSプレミアム
2017年12月11日(月) 20:00~20:59

再放送
2017年12月18日(月) 8:00~8:59
2018年2月23日(金)15:00~15:59
2019年3月12日(火)16:00~16:59

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