Blog. 「レコード芸術 2019年9月号」ベートーヴェン:交響曲全集 久石譲 FOC 特選盤・評

Posted on 2019/08/25

クラシック音楽誌「レコード芸術 2019年9月号 Vol.68 No.828」、新譜月報コーナーに『ベートーヴェン:交響曲全集 / 久石譲指揮 フューチャー・オーケストラ・クラシックス』が掲載されました。特選盤、全集で初収録となった第4番・第6番の評になっています。

 

 

新譜月評

THE RECORD GEIJUTSU 特選盤
ベートーヴェン:交響曲全集/久石譲指揮 フューチャー・オーケストラ・クラシックス(旧ナガノ・チェンバー・オーケストラ) 他

〔初出音源の第4,6番のみについて批評しています〕

 

推薦 金子建志
演奏が尖っているのは第4番のほう。両端楽章のスピード感と切れの良さは予想どおりだが、小編成モダン・オーケストラの先例、P・ヤルヴィ=ドイツ・カンマーフィルと較べると第1楽章のアレグロ主部(39小節~)はヤルヴィ [8分11秒]、久石 [8分18秒] 、第4楽章がヤルヴィ [6分08秒]、久石 [6分35秒] と、いずれも少し遅い。しかし、弦の刻みを引き締まった筋肉のように躍動させる久石のほうが室内楽的。そのぶん相対的にティンパニの強打が炸裂する。第3楽章で久石がタイムで上回るのは、トリオが速いから。隠れ変拍子のスケルツォ主部は、ヘミオラが喧嘩腰でロック風。第2楽章 [6分09秒~] のポリリズムの強調は作曲家らしい。

《田園》は、予想外にカンタービレ優先の叙情的な解釈。第1楽章は、立ち止まって景色を眺める [5分54秒~] の呼吸感はワルターを思わせるが、テンポの戻しかたは微妙に室内楽的だ。第2楽章は全ミュートの弦に木管が柔軟に絡み、歌うべき個所では存分に主張する。この心象絵画の域に達した自然描写と、フィナーレを聴くと、天性のメロディ・メイカーならではの感性が感じ取れる。弱音器付きのホルンが日没を表すコーダの余情も、たっぷり。ナガノ・チェンバー・オーケストラという名称で開始したこのツィクルス、何曲が聴いて拒絶・退避を決め込んでいた向きが、改めて暖簾をくぐる切っかけになるかもしれない。

 

推薦 諸石幸生
2016年7月にスタートした、久石譲率いる旧ナガノ・チェンバー・オーケストラによるベートーヴェンの交響曲が全集として完成された。2016年に開館した長野市芸術館の音楽監督となった久石譲が、1300名収容のホールに相応しいオーケストラとして創設したのである。この間にフューチャー・オーケストラ・クラシックスに変わることになったのは、市の予算の問題などがあり、久石譲が行っている「MUSIC FUTURE」の中で続けることになったからという。本誌では、それぞれ発売の度に演奏評を掲載してきたが、今回の全集登場で初めてCDリリースとなった第4番と第6番について記すことにしたい。演奏はいずれも、揺るぎない安定感をベースにした活力があり、とても完成度が高い。まず第4番だが久石は次のように語っている。「第4番はもっと評価されるべき作品。第3番と第5番の間に隠れ、両曲ほど強い個性もないので埋没されているが、優れた作品である。特に第4楽章は単独で頻繁に演奏されてもよいと思う」と。事実ここで久石は、大好きな作品を演奏するという喜びが溢れ出た指揮を見せているのである。第6番について「『田園』というタイトルがついた段階で文学的である」「第1楽章は、変化が乏しく感じて多くの指揮者はクレッシェンドをしたりするが、僕はミニマリストだから、そこで作為的なこと一切除いて演奏した」と言うように、久石譲の作品に対する信頼感をベースとした熱い演奏が聴かれる。

 

[録音評] 常磐清
演奏・録音ともにこのベートーヴェンは特殊な一例と捉えるべきだと思う。”これ見よがし”的に誇張された低音楽器やティンパニは”ベートーヴェンはロックだ!”との広告コピーに通じる。第6番では劇的な演奏スタイルが頭の中に映像描写をイメージしやすくしている感がある。全集として統一された録音ではないしポップス的で残響音量は総じて大きい。

(レコード芸術 2019年9月号 Vol.68 No.828)

 

 

なお前号「レコード芸術 2019年8月号」でも、「先取り!最新盤レヴュー」コーナーにて紹介されています。下記ご参照ください。

 

 

 

 

 

 

 

Disc. 久石譲 『映画 二ノ国 オリジナル・サウンドトラック』

2019年8月21日 CD発売 UMCK-1637

 

2019年公開映画『二ノ国』
製作総指揮/原案・脚本:日野晃博
監督:百瀬義行
音楽:久石譲
主演:山﨑賢人
主題歌:須田景凪「MOIL」

 

人気RPG『二ノ国』シリーズを長編アニメーション映画化!製作総指揮/原案・脚本:日野晃博(『レイトン』シリーズ )×監督:百瀬義行(『おもひでぽろぽろ』原画 )×音楽:久石譲という日本を代表するドリームメーカーが集結!オリジナルストーリーで描かれる劇場版の本作では、主人公“ユウ”の声を演じる山﨑賢人をはじめ、宮野真守、津田健次郎、坂本真綾、梶裕貴、山寺宏一といった声優ドリームチームの参加も決定!全世界が待望するアニメーション映画『二ノ国』が誕生する。

(メーカーインフォメーションより)

 

 

 

ー久石さんはゲーム『二ノ国』から楽曲を担当されていますが、今回映画『二ノ国』の音楽をつくるにあたって、最初にどんなことを考えましたか。

久石:
多くの映画音楽は基本的には状況か、あるいは登場人物の心情に音楽をつけるのですが、僕はあまりそういう方法は取っていないんですよ。それよりも、観客側から客観的に見て、観客の心情を表現する音楽を作っている。だけど映画『二ノ国』はエンターテインメントな映画。こういう映画は、やはり物語の状況や心情に寄り添わないといけない。僕としては久しぶりに、物語に沿った音楽を書きましたね。

ー一ノ国で流れる曲と、二ノ国で流れる曲。具体的にはどのような違いがありますか。

久石:
一ノ国というのは私たちが暮らすのと同じような、現実世界。そこで流れる音楽は、室内楽のような小編成での演奏にしています。一方、二ノ国はファンタジーな異世界。ベーシックに、フルオーケストラでの演奏です。一ノ国と二ノ国で流れる音楽をきっぱりと分けるというのが基本。一ノ国と二ノ国で同じメロディを使っている場合もありますが、その場合も違うアレンジをしています。

ー映画だからこそできたこと、チャレンジされたことはありますか。

久石:
見ている方がワクワクするようにできたらいいなと思って、全体的にはパーカッションを使ってリズミックにしています。そこは僕にとってのチャレンジでしたね。ゲーム版のテーマ曲もさりげなく出していますから、ゲームファンの方にも楽しんでいただけるんじゃないでしょうか。

ーレコーディングはいかがでしたか。

久石:
僕のレコーディングに参加する人たちは、オーケストラでは首席奏者クラスの人たちばかり。ミニマル・ミュージックに慣れている人たちもいて、非常に助かりました。日本のミュージシャンは本当にすばらしいですよ。ちゃんと音楽上でコミュニケーションを取れる人たちと取り組んだので、その場で生み出されたものもあった。楽しくレコーディングができました。

ー久石さんにとって映画音楽をつくるお仕事は、どういう意味合いがありますか。

久石:
エンターテインメントな作品に関わるとたくさんの人とコミュニケーションを取るので、新しい表現が生まれてくる。自分だけではやらないようなこともできたりする。そういう新しい発見があるから楽しいし、やめられないんですよね。映画音楽もコンサートもそれは一緒。僕にとって生きることと同じなんです。

ー久石さんの音楽を楽しみにしている方々にメッセージを音楽します。

久石:
今年の2月にパリでコンサートを行った時、フランスメディアのインタビューを受けましたが、みんな『二ノ国』のことを知っていました。「今度映画化されるんですよね。音楽を担当するんでしょう」と質問された。日本国内のみではなく、海外でも認知されているタイトルが、『二ノ国』。それが映画化されるということで、みんな期待を持っているんだなと感じています。

日本のみならず海外にも、この音楽が映画とともにみんなに聞いてもらえたら、僕にとっては何よりの喜びです。

Blog. 「映画「二ノ国」公式アートブック」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

「今の自分のやり方ってどちらかと言うと非常にミニマル・ミュージック的なアプローチがすごく多いんです。ミニマル・ミュージックというのは、同じ音型を繰り返す。そういうやり方をしているから、今の自分のやり方だと、エンターテインメントの映画にはあまり合わないんですよね。普通ではお断りしちゃう仕事のひとつなんです。ですが、過去にゲームでいっぱい作ってきた音楽があったので、それとうまくバランスを取れれば、今までとは全く違う切り口・やり方の映画音楽になるかなと思って。その辺はちょっと意識しましたね」

本作の題材となったゲーム「二ノ国」シリーズの音楽も担当していた。その時々の楽曲制作に精一杯で過去のことはあまり考えないという久石は、10年前のゲーム音楽について聞くと「あの頃はこうやったんだなというのがわかります。今は同じやり方は全くしていないからね。頑張ってよく書いたなと思ったぐらいの感じですかね」とコメント。「(ゲーム版の)テーマはさりげなく出したりしています。そういうところは楽しんでもらえるのかなと思います」とゲームファンに向けて明かした。

Info. 2019/07/26 久石譲、音楽は「生きること」 映画『二ノ国』収録現場で語る (Webニュース2種より)より抜粋)

 

 

「まずゲームと映画はまったく違うものなので、やり方は変えています。ただ今回の映画はエンターテインメントな映画だったので、音楽のあり方も変えました。通常、映画音楽は映像を説明するような音楽、状況や登場人物の心情に音楽をつけるんですけど、僕は普段そういう方法を取ってないんです。観客側から客観的に見る方法を取ってるんですが、エンターテインメントな映画になればなるほど、状況や心情に寄り添わなければならないので、その意味で久しぶりに、そういう音楽を書きました。ただ、映画の製作側から、ゲームとはまったく違う音楽をつくってほしいと言われたんですが、それは根本的に間違っていると思ったのでそう答えました。ゲームであれ映画であれ『二ノ国』という世界観がひとたび出来上がると、ストーリーがどうであろうと、ベーシックな部分は一緒なんですよ。ある意味では、同じ曲を使ったほうがいいということもあります。だからこそ、そこは客観的に分析して、どこをどういう手法でやるか、それを考えました」

Blog. 「Men’s PREPPY 2019年9月号」映画『二ノ国』久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

 

【百瀬監督、製作総指揮/原案・脚本の日野氏からのコメント】

■監督 百瀬義行
壮大なオーケストレーションの中に、登場人物が揺れ動く繊細な心を汲み取った久石さんの音楽は、映画に新しい彩りを添えてくださいました。

■製作総指揮/原案・脚本 日野晃博
久石譲さんの音楽は、二ノ国の世界観を形成する最重要の要素です。
今回の音楽も、原作のゲームからさらに飛躍し、映画独自の世界観をカタチづくることに成功しています。二ノ国にいるときと一ノ国にいるときの、音楽性の違いなどにも注目ポイントです。
今回の映画二ノ国でもそうですが、久石さんのつくられる、感情に寄り添った音楽の流れは、映画音楽の神髄と言えると思います。

出典:映画『二ノ国』オフィシャルサイト|ニュース

 

 

 

予告編・特報・PV動画などに使用されていた楽曲は、「2. おだやかな日常」「4. 二ノ国へ」「13. 空のランデブー」「15. 姫の心」「16. 仕組まれた入場」「24. 命をかけた戦闘」「25. 届かぬ思い」「33. 決着の時」「34. 別れ」 *特報のみゲーム版サウンドトラックから使用

 

録音は2019年5月23、24日アバコスタジオにて。おそらくフルオーケストラ編成楽曲を中心に行われいると推測する。Bunkamuraスタジオでは、小編成楽曲が録音されたのか、部分録り(楽器ごと)に使われたのか、日付ふくめて不明。

CDライナーノーツ・クレジットより、フルオーケストラ編成と室内楽の編成表がはっきりとわかることもうれしい。既存のオーケストラ楽団ではなく招集型であり、久石譲の音楽活動の線でいうと、FOC(フューチャー・オーケストラ・クラシックス)の流れをくむ方法になっている。FOCメンバーとの重複割合は細かく照合していないけれど、もちろん周知のメンバーも参加している。

フルオーケストラ編成と室内楽の奏者は一致していない(ピアノ除く)。室内楽ヴァイオリンは、FOCコンサートマスターの近藤薫さん。このあたりは、奏者が違うことで演奏の質をも分離したかったというよりも、どのリーダーを起点として招集をかけたかではないかと推測している。

 

 

2019.8.27 update

映画観てサントラ聴いてレビュー。

全体をとおして。

「全体的にパーカッションを使ってリズミックにしている」(久石)とある、それは生楽器だけではなく打ち込みも含めた多彩なもの。新曲はもちろん、ゲーム版から使用された曲たちもパーカッションが強調・足されたもの多く、全体のトーンとしてうなずける。

CDクレジットでは室内楽のほうにシンセサイザーが明記されているけれど、フルオーケストラ楽曲でも使用されている。生楽器を基調としたなかで電子音のアクセントというつくり方になっている。また小編成は薄い、フルオーケストラは厚い、という凹凸感をあまり感じないことも特筆できる。小編成のカラフルな音色と、フルオーケストラの引き締まったソリッドな響きが、ふたつの対照的な編成をうまく均衡にしている。

映画本編106分、サウンドトラック盤52分とあるなか、実際には上映時間の2/3以上音楽が流れる印象がある。これは《収録曲のいくつかが複数回使用されている》《サントラ未収録の楽曲がある(新曲/既発ゲームサントラ)》がその理由。

「久しぶりに状況や心情に寄り添った音楽を書いた」(久石)とある、それは曲はもちろん音楽の当て込み方としても顕著で、この場面では・この状況では・この登場人物では・この組み合わせでは、というように、明快な音楽配置になっている。そのため、複数回登場する曲も多くなってくる。それが曲の一部を切り取った部分的なものであっても。

ゲーム版からの使用曲は、一曲のなかで2つ以上の原曲がつながったトラックも多い。映画の終わりエンドロールでメインテーマや主要テーマをメドレーのように組み立てて構成することは、久石譲の映画音楽にもあるけれど、本編のなかでここまで多用することは極めて珍しい。それゆえ『二ノ国』音楽にゲームから親しんできたファンにとっては、この曲もこの曲もとてんこ盛りなうれしさある、サービス旺盛な音楽構成になっている。

まとめると、エンターテインメント映画のためのエンターテインメント音楽、そんなアプローチに集約されている。

 

 

楽曲ごとに。

全35曲を細かくレビューはできないので、ピックアップして紹介していく。ゲーム版音楽から本作映画に使用されたものもあわせて紹介していく。理由はふたつ。映画版音楽を聴いて興味をもった人がゲーム版音楽にもふれて『二ノ国』音楽の世界を広げてほしいこと。もうひとつは、どのサウンドトラックから持ち出した曲が多いかを整理したかったこと。結果的には、『二ノ国 II レヴァナントキングダム オリジナル・サウンドトラック』が最も多く、それは映画とゲームの共通性というよりも、久石譲の作曲手法やスタンスが近しいため(2018年作品)違和感なく並べやすかったのかもしれない。

ゲーム版から使用された曲は、すべて新アレンジ・新録音になっている。下記【○○と同曲/○○と○○をつなげた曲】としか書いていないものもある。もちろん既出音源をそのまま使用したのではなく、この映画のために新アレンジ・新録音されたもの。また、同じメロディをもった曲でもサウンドトラックにはタイトル違いアレンジ違いで複数収録されていることがある。気に入った曲があったら、もっとほかのバージョンもあるのかもしれないと、ゲームサントラにも手をのばしてみてほしい。

ゲームをしていない人が書いているので、ゲーム版から持ち出された音楽が、映画で使用されたシーンと関連性があるのか、もしくは裏設定があるのか、などはわからない。そんななかでも曲名や使用場所からうっすら推察できるものもある。ゲーム版から『二ノ国』を楽しんでいる人には、おっ!という新しい発見もあるのかもしれない。

 

 

[ゲーム版]

 

 

1. 不思議なお爺さん
19. 異世界への旅立ち
31. 受け継がれるもの
ガラス玉のような神秘的な音色と、3つの音符をつなげた短いモチーフが、楽器を替えながらゆっくりと交錯する曲。19. 31.も同じモチーフを使って展開していて、その上にたゆたうストリングスの調べが誘ってくれる。本作のなかでは客観的・俯瞰的な一歩引いた曲想、しっかりと今のスタンスも顔を出す。漂うようにずっと聴いていたい、主張しない音楽の好例といえる。映画では、数回使われていたり(どのトラックかの選別は難しい)、ループして長めに流れてもいたり。一ノ国と二ノ国の両方で使われていることからも、世界観を有機的につなぐ主要テーマ曲のひとつになっている。

 

2. おだやかな日常
ギターの弦をおさえて音程の出ないようにかき鳴らす、パーカッションのような使い方が風通しよい。後半は乾いた音色で小気味よく。この曲に限らず、ギターは一ノ国のコントラストや空気感を表現する大切な役割を果たしている。(この曲はこのあともう一度ふれている)

 

4. 二ノ国へ
26. 襲撃
4. 後半に聴くことができるのが、おなじみ『二ノ国』メインテーマ。(漆)(白)(レ) また26.でも聴かれる弦楽器とクラリネットのソリッドなかけ合いが、一種サクソフォーンの音色のようにも聴こえて新鮮。こういった組み合わせは、これまであまりなかったように思う。映画では、4.の前にサントラにはないバージョンが3-5分流れていた。かっこいいバージョンだったので収録されていないのがもったいない。

 

6. 酒場
アイルランドやケルトを思わせる賑わう街や人の光景。ティンホイッスル、ヴァイオリン、ギターにパーカッションと、まるで即興セッションのような躍動感と陽気さとちょっぴりの哀愁。とりわけベースがないことが素晴らしい。ベースがあることで曲としてきちっとした型ができあがる、土台のしっかりとした一曲ができあがる。だからここは、酒場の世界観につけたとも言えるし、酒場でたまたま演奏されていた状況内音楽、即興演奏のようなものをかたちにしたともとれる。もちろんそういった演奏シーンはない。音楽の位置づけ意味づけをふくらませることができる。ベースがないことがポイント。映画では、もっと長くループしていた。また、酒場のシーンではこの曲が流れるという設定、数回聴くことができる。

もうひとつ、「9. ネコ王国の城下町」(漆)でもティンホイッスルやパーカッションをベースにした曲があり、「25. ネズミ王国の城下町」(レ)はその変奏になっている。そして、「酒場」もまた同じメロディから派生、大きく変奏したバリエーションとみるととてもおもしろい。

”『二ノ国 レヴァナントキングダム』の主人公・エバンがエスタバニアをつくり、二ノ国にあった様々な国を統一する。それから数百年経過したのが映画『二ノ国』の世界、という裏設定がある”(公式情報より)…らしい。

 

7. 侵食する呪い
「5. The Horror of Manna」(白)と同曲。ゲーム版のほうが重厚にドラマティックに展開している。”昔とはやり方も違う”という久石譲の言葉を、音楽というかたちでしっかり体感できるかもしれない。使用される楽器、奏法やアクセントなど聴きくらべると、たとえそれが微細な違いであったとしても、言葉では抽象的になってしまうものをたしかに感じとれる。数回使われている。また、サントラ未収録ではあるが、「5. The Horror of Manna」(白)中盤の展開部を新アレンジしたものも映画には使われている。

 

8. エスタバニア城
16. 仕組まれた入場
今回、映画のために書き下ろされた新曲たちは、意外にもミニマル手法の曲がとても多い。そして、このような勇壮なミニマルを久石譲オリジナル作品として、1分や30秒ではなくたっぷりと聴いてみたい。これがもっと変化していったら、転調していったら、展開していったら、と想像するだけで高揚感が湧いてくる。

 

9. 疑惑
27. 悲しき過去
29. ガバラスとの戦い
33. 決着の時
同じモチーフで展開している。ここに記すのは33. 、冒頭に「7. 強大な魔法」(漆)が使われ、このモチーフが流れ、後半は『二ノ国』メインテーマ(漆)(白)(レ)をほぼ1コーラス聴くことができる。アレンジは(レ)をベースにしているけれど、合唱編成はないフルオーケストラ版、オーケストレーションも細かく異なる。数あるメインテーマのバリエーションがゲーム版からあるなか、新たなひとつ。

実は映画では、33. の『二ノ国』メインテーマはイントロ部分までしか流れない!映画には登場しないメインテーマ1コーラス。音楽収録ではフルサイズではないけれどメインテーマ単曲で録音されているはず。完成した映画の前後シーンからみたとき、当初通して使われる予定だったものがカットされたとは考えにくい。もしくは別の箇所で使う予定だったのか。いろいろ推察はできる…けれどここは! 『二ノ国』音楽ファンへ、しっかりメインテーマも収録してますよ、うれしいボーナストラック的ギフトとして楽しもう。(映画予告編で使用されたメインテーマは、この映画サントラバージョン)

 

10. 険悪なムード
この曲と「3. 忍び寄る危機」は同じ曲を基調としているのではないかと思っている。10.に聴かれるメロディを3. 頭のなかで当てはめるとぴたっとはまる。もちろん同じ一ノ国の世界につけられた曲ということもある。映画では、部分的ふくめて数回聴くことができる。

 

11. 募る思い
12. 思いがけない出会い
15. 姫の心
34. 別れ
今もってしてなお、こんなメロディを生みだしてしまうのか感嘆、と新旧すべての久石譲ファンうれしい一曲。メロディを奏でる楽器たち 11. ピアノ/12. フルート/15. 34. ヴァイオリン がスポットライトを浴びている。15. 34. サビのメロディと対旋律の流れも美しい。34.の終部には、「心のかけら」(漆)(白)のメロディが登場しゲームファンくすぐる演出になっている。映画では、11. 15. の1コーラスなども数回聴くことができる。

またこの曲の出だしメロディ2小節は、「2.おだやかな日常」のモチーフとしても使われている…と思っている。つまり、映画『二ノ国』にとっての主要テーマ曲であり、かつ、それは一ノ国(2.)と二ノ国(11. 12. 15. 34.)を有機的に結びつけている、かたちを変えてどちらの世界にも登場する曲。

 

13. 空のランデブー
「24. 果てしない空」(レ)と同曲。木管楽器の戯れが追加されただけでも気分はさらに飛躍する。テンポも違う、ピアノや打楽器の配置加減も違う。

 

14. 清めの舞
とりわけドビュッシーのような印象派的音楽を、ここまで大胆に自曲で表現したことはなかったかもしれない。映画というフィールドだからこそできた曲だと思うと、ついつい舞いのつづきを想像してしまう希少な一曲。

 

17. コロシアムの戦い
「8. 苦闘」(レ)「20. 命運をかけた戦い」(レ)をつなげた曲。

 

18. 決死の賭け
「2. クーデター」(レ)と同曲。重低感のあるパーカッションは映画版のほうがパンチ効いて、曲全体にあたえる重心も深い。

 

20. ふたつの道
25. 届かぬ思い
緊迫感や緊張感といったものを、オーケストラで表現するとこうなる、パーカッションを主体にするとこうなる、短いながらとても綿密に計算されている。間違ってもただパーカッションを追加したということにはなっていない。

 

21. 命のゆくえ
「21. 切ない思い出」(レ)と同曲。 映画終盤にも部分的に使われている。

 

22. 黒の侵攻
「11. ボスバトル」(レ)と「5. 別れ」(レ)をつなげた曲。 

 

23. 激しい攻防
「20. 命運をかけた戦い」(レ)と「9. The Zodiarchs」(白)をつなげた曲。

 

24. 命をかけた戦闘
「11. 帝国行進曲」(漆)と同曲。

 

28. マリオネット
作品から飛び出すけれど、「2 Pieces for Strange Ensemble 1. Fast Moving Opposition」(『久石譲 presents MUSIC FUTURE II』2017・CD収録)を思い出してしまったほど、久石譲の旬がつまったスタイル。あと5分でも7分でも、ズレながら変化しながらどっぷりと堪能したい、そんな一曲。映画では、フレーズが鋭く飛び交う部分と、リズム刻みだけになる部分が、シーンの切り替わりとリンクしていて、そのあまりにおさまりいいスムーズさに、ただただ脱帽。あっ、映像とのこういうシンクロの仕方、マッチングの仕方もあるんだな、と新たな一面を目撃した瞬間だった。

 

30. 守る覚悟
「5. アリー ~追憶~」(漆)「20. 奇跡 ~再会~」(漆)と同曲。映画版は曲の途中で終わっている。優麗にドラマティックに展開し、きれいに着地しているゲーム版もぜひ。

 

32. 伝説の勇者
「26. 守護神」(レ)と「19. 最後の戦い」(漆)をつなげた曲。

 

35. 似た者同士
旋律が追っかけてくるような手法、歌い出しが小節頭か裏拍かという変化。幹があって枝葉が豊かなように、源流とたくさんの小川があるように、大きな時間と小さな時間があるように。すべてのもののつながり。近年の久石譲にみられる新しいたしかな手法。『NHKスペシャル シリーズ ディープ オーシャン』や『プラネタリアTOKYO To the Grand Universe 大宇宙へ』(未音源・2019年8月現在)、そして2019年映画『海獣の子供』サウンドトラックでも、いろいろ趣向を凝らし存分に楽しむことができる。映画では、部分的に使わている箇所がもうひとつある。

 

 

映画使用曲
「10. 砂漠の王国の町」(漆)の一部、既発音源をもとにしながらも一風変わったかたちで使われている。ゲームを楽しんだ人なら、あの曲!とわかるほどのアラビア風な曲。映画サントラ未収録。

「15. 漆黒の魔導士ジャボー」(漆)の新アレンジ版が使われている。映画サントラ未収録。

ほかにもあるが、上の各楽曲説明と重複するので割愛する。

 

 

このように、映画版音楽はゲーム版からも多くの音楽が使用され、『二ノ国』ファンにとってはてんこ盛りのうれしい充実となっている。一曲ごとの分数が短く、もっと先を聴きたい、このまま続いてほしい、と思ってしまうのは映画サウンドトラックのジレンマ。

ゲーム版は映像や時間の尺に左右されない音楽作品として構成されているものも多い。とりわけ、『二ノ国 漆黒の魔導士 オリジナル・サウンドトラック』『Ni No Kuni: Wrath of the White Witch - Original Soundtrack』は、曲ごとにしっかり起承転結で展開する作曲方法をとっている。映画サウンドトラックからゲームサウンドトラックへ好奇心を広げると、お気に入り曲との楽しい出会いもきっとある。

また、楽曲をフラットに並べてみたことで、映画のための新曲が決してエンターテインメントに寄りすぎていない、今の久石譲のスタイルを貫いたものも多い、そんなこともわかった。音楽制作にあたりすべてのゲーム版音楽を聴きなおし、映画への可能性を吟味し、10年前に書いたものと今書くものが並列する。『二ノ国』の世界観を継承し、新たな一面もみせる。

『二ノ国』という作品、2010年ゲームから2019年映画まで、それぞれに新しい世界観で音楽をつけている、あわせて4枚のCDリリースは、久石譲の音楽活動のなかでも稀なほど長期的に携わっている作品。いつかコンサートでも壮大な組曲を聴いてみたい。第2組曲、第3組曲、、夢は果てしない。

 

 

 

 

2020.1.8 追記

『二ノ国』ブルーレイ プレミアム・エディション、映像特典に「Making of Soundtrack by 久石譲」インタビューとレコーディング風景をまじえた約11分の映像が収録されている。

 

 

 

 

1. 不思議なお爺さん
2. おだやかな日常
3. 忍び寄る危機
4. 二ノ国へ
5. 未知なる異世界
6. 酒場
7. 侵食する呪い
8. エスタバニア城
9. 疑惑
10. 険悪なムード
11. 募る思い
12. 思いがけない出会い
13. 空のランデブー
14. 清めの舞
15. 姫の心
16. 仕組まれた入場
17. コロシアムの戦い
18. 決死の賭け
19. 異世界への旅立ち
20. ふたつの道
21. 命のゆくえ
22. 黒の侵攻
23. 激しい攻防
24. 命をかけた戦闘
25. 届かぬ思い
26. 襲撃
27. 悲しき過去
28. マリオネット
29. ガバラスとの戦い
30. 守る覚悟
31. 受け継がれるもの
32. 伝説の勇者
33. 決着の時
34. 別れ
35. 似た者同士

 

All Music Composed, Arranged and Produced by Joe Hisaishi

Conducted by Joe Hisaishi

Orchestration by Chad Cannon, Joe Hisaishi

Performed by
Except Track-1, 2, 3, 6, 9, 10, 11, 19, 26
Flute:Hirioshi Arakawa
    Misao Shimomura
Oboe:Ami Kaneko
    Masato Satake
Clarinet:Soushi Nakadate
      Kei Kusunoki
Bassoon:Mariko Fukushi
       Masashi Maeda
Horn:Yoshiyuki Uema
    Hirofumi Wada
    Kazune Fukae
Trumpet:Takaya Hattori
       Homare Onuki
Trombone:Shinsuke Torizuka
Bass Trombone:Koichi Nonoshita
Tuba:Nana Ishimaru
Timpani:Tadayuki Hisaichi
Percussion:Mitsuyo Wada
      Keiko Nishikawa
      Nanae Uehara
Harp:Yuko Taguchi
Piano/Celesta:Febian Reza Pane
Strings:Manabe Strings

Track-1, 2, 3, 6, 9, 10, 11, 19, 26
Clarinet:Hidehito Naka
Percussion:Akihiro Oba
Piano:Febian Reza Pane
Synthesizer:Naoko Imamura
Guitar:Go Tsukada
Violin:Kaoru Kondo
Cello:Sin-ichi Eguchi
Tin Whistle:Akio Noguchi (Track-6)

Recorded at Avaco Studio, Bunkamura Studio
Mixed at Bunkamura Studio
Recording & Mixing Enginner:Suminobu Hamada
Derector & Manipulator:Yasuhiro Maeda

and more…

 

 

Ni No Kuni The Movie (Original Motion Picture Soundtrack)

1.The Mysterious Old Man
2.Carefree Days
3.A Darkness Draws Near
4.The Other World
5.An Unknown Land
6.At the Tavern
7.The Curse
8.Evermore Castle
9.Shadows of Doubt
10.A Somber Mood
11.Falling Deeper
12.An Unexpected Encounter
13.The Boundless Skies
14.Purification
15.From the Heart
16.No Turning Back
17.To Arms!
18.A Leap of Faith
19.Memories of Youth
20.Separate Ways
21.A Solemn Vow
22.The Invasion Begins
23.All Out War
24.To the Death
25.On Deaf Ears
26.In Danger
27.A Painful Past
28.Marionette
29.Facing Galeroth
30.Always by Your Side
31.Passing on the Torch
32.Hero of Legend
33.End of the Line
34.Farewell
35.Soul Mates

 

Blog. 「映画「二ノ国」公式アートブック」 久石譲インタビュー内容

Posted on 2019/08/20

2019年夏公開映画『二ノ国』関連書籍、映画「二ノ国」公式アートブックより久石譲インタビューです。

 

 

インタビュー 音楽 久石譲

ゲーム版のテーマ曲もさりげなく出しています。ゲームファンの方にも楽しんでほしい。

ゲーム「二ノ国」から引き続いて、映画『二ノ国』でも音楽を担当する久石氏。音楽を通して並々ならぬ想いを本作に込める。

 

ー久石さんはゲーム『二ノ国』から楽曲を担当されていますが、今回映画『二ノ国』の音楽をつくるにあたって、最初にどんなことを考えましたか。

久石:
多くの映画音楽は基本的には状況か、あるいは登場人物の心情に音楽をつけるのですが、僕はあまりそういう方法は取っていないんですよ。それよりも、観客側から客観的に見て、観客の心情を表現する音楽を作っている。だけど映画『二ノ国』はエンターテインメントな映画。こういう映画は、やはり物語の状況や心情に寄り添わないといけない。僕としては久しぶりに、物語に沿った音楽を書きましたね。

 

ーどのようなプロセスでつくっていったのでしょうか。

久石:
つくるにあたって考えたのは、『二ノ国』の世界観。一ノ国と二ノ国の人間は、命がつながっているというのがこの作品のポイントです。ストーリーにかかわらず、一ノ国と二ノ国で流れる音楽の根っこは一緒。時には同じ曲を両方で使ったほうがいいケースもあるわけですね。まずはできるだけ客観的に分析して、どのシーンにどんな曲を使うかとても考えました。

 

ー一ノ国で流れる曲と、二ノ国で流れる曲。具体的にはどのような違いがありますか。

久石:
一ノ国というのは私たちが暮らすのと同じような、現実世界。そこで流れる音楽は、室内楽のような小編成での演奏にしています。一方、二ノ国はファンタジーな異世界。ベーシックに、フルオーケストラでの演奏です。一ノ国と二ノ国で流れる音楽をきっぱりと分けるというのが基本。一ノ国と二ノ国で同じメロディを使っている場合もありますが、その場合も違うアレンジをしています。

 

ー映画だからこそできたこと、チャレンジされたことはありますか。

久石:
見ている方がワクワクするようにできたらいいなと思って、全体的にはパーカッションを使ってリズミックにしています。そこは僕にとってのチャレンジでしたね。ゲーム版のテーマ曲もさりげなく出していますから、ゲームファンの方にも楽しんでいただけるんじゃないでしょうか。

 

ーレコーディングはいかがでしたか。

久石:
僕のレコーディングに参加する人たちは、オーケストラでは首席奏者クラスの人たちばかり。ミニマル・ミュージックに慣れている人たちもいて、非常に助かりました。日本のミュージシャンは本当にすばらしいですよ。ちゃんと音楽上でコミュニケーションを取れる人たちと取り組んだので、その場で生み出されたものもあった。楽しくレコーディングができました。

 

ー久石さんにとって映画音楽をつくるお仕事は、どういう意味合いがありますか。

久石:
エンターテインメントな作品に関わるとたくさんの人とコミュニケーションを取るので、新しい表現が生まれてくる。自分だけではやらないようなこともできたりする。そういう新しい発見があるから楽しいし、やめられないんですよね。映画音楽もコンサートもそれは一緒。僕にとって生きることと同じなんです。

 

ー久石さんの音楽を楽しみにしている方々にメッセージを音楽します。

久石:
今年の2月にパリでコンサートを行った時、フランスメディアのインタビューを受けましたが、みんな『二ノ国』のことを知っていました。「今度映画化されるんですよね。音楽を担当するんでしょう」と質問された。日本国内のみではなく、海外でも認知されているタイトルが、『二ノ国』。それが映画化されるということで、みんな期待を持っているんだなと感じています。

日本のみならず海外にも、この音楽が映画とともにみんなに聞いてもらえたら、僕にとっては何よりの喜びです。

(映画「二ノ国」公式アートブック より)

 

 

補足)

映画『二ノ国』の久石譲インタビューは、雑誌・Webなどいくつかの媒体で発信されています。大枠は同じです。おそらくは、音楽レコーディング時の同一取材をベースにしています。どこを取り上げるか、どういった構成で書くか、という違いによる詳細やニュアンスの差異はあります。ぜひ読み比べてみてください。

 

追記
「劇場用パンフレット」も久石譲インタビュー掲載。内容はこれらと同旨。「オリジナル・サウンドトラック」CDライナーノーツには掲載なし。

 

 

 

また映画制作エピソードとして久石譲に関連するものを抜粋してご紹介します。

 

インタビュー 製作総指揮/原案・脚本 日野晃博

二ノ国はあたたかみがあって柔らかいひなたぼっこみたいで癒やされる世界であってほしいと思っています。

ゲーム『二ノ国』から、本作をけん引し続けてきた日野氏。当初から想定していたという本作品の映画化に何を思うのか。

ゲームとアニメーションによるストーリーテリングの違い

~中略~

久石譲氏のアドバイスによって大幅に変更されたシナリオ

ー映画用のストーリーをつくるうえでは、どのような点にこだわりましたか?

日野:
最初に書いたシナリオは、いまとはかなり違ったものでした。

ーそれはどういった内容でしたか?

日野:
ほとんど二ノ国だけでストーリーが展開していました。ゲームの「1」(『漆黒の魔道士』『白き聖灰の女王』)のときは一ノ国と二ノ国を行ったり来たりする話を書いたんですけど、「2」の『レヴァナントキングダム』では二ノ国だけのストーリーになっていて、最初はこの映画用のシナリオも同様に、一ノ国がなくてもいいくらいの内容でした。

ー二ノ国のにの、完全なファンタジー作品ですか?

日野:
そうです。僕はファンタジーが大好きで、ジブリ作品にしてもほかの映画作品にしても、もちろんゲームも、架空の世界のお話ならなんでも好きですから、無意識にファンタジーに寄っていったんでしょうね。もちろん、そのシナリオの段階でもワーナー・ブラザーズさんの各部門からはOKをもらっていたんですけど、久石譲さんにお見せしたときに、「一ノ国と二ノ国を行き来するのが『二ノ国』の楽しさなのに、それがなくていいの?」と、ちょっとした挑戦状を突きつけられたんですよ(笑)。

でも、たしかにそのとおりだったのでショックを受けました。『二ノ国』で最初につくったコンセプトのおもしろみは、2つの世界があって、それがつながっているということなんです。いくらファンタジーが好きだからといっても、この企画の本質的な部分が欠落していてはいけない。久石さんからの指摘を受けて、脚本をイチから書き直しました。

ー久石さんからは音楽面のみならず、そういった関わり方もあったんですね。

日野:
そういう大事なことを、いつも最初に久石さんが気づかせてくれるんです。だから久石さんの言うことは聞かなきゃ……と思わされますね(笑)。特に今回の映画のストーリーでは、命のやりとりがあって、2人の男の子が親友同士なのに戦うことになります。「自分の愛する人のために他人を殺せますか?」とか「大切なものを守るためになんでもできますか?」といったショッキングなメッセージを含んでいるので、脚本にも殺伐としたセリフが多かったんです。久石さんはあたたかい作品をつくりたい人だから、あんまり物騒な言葉は使ってほしくない、といった趣旨のことも言われました。だからセリフもだいぶ変更しましたよ(笑)。

『二ノ国』の世界観だからこそ生まれた独自のストーリー展開

~中略~

あたたかくて柔らかい二ノ国

~中略~

ファンタジーとして楽しんでもらいたい『二ノ国』

~中略~

(映画「二ノ国」公式アートブックより 一部抜粋)

 

 

補足)

日野氏はセリフの変更についてのエピソードをこのようにも語っています。

 

―リテイクして出来上がったものは久石さんもいいねと言っていただけたんですか?

日野:はい、新しいコンセプトで作ったものに関しては。ただ、そのあともいろいろとアドバイスを受けました。

今回のテーマ上、命のやり取りがあるので、殺伐とした言葉も多かったんです。久石さんは温かい作品を作りたかったこともあって、「“殺す”っていう言葉が多すぎる!」と言われ、「うーん……」と悩みましたね。

言葉を極力シナリオから減らしていったりと、そういうところを久石さんには気づかせてもらえました。久石さんの言うことは聞かなきゃいけないかなって思っています(笑)。

出典:アニメイトタイムズ|映画『二ノ国』製作総指揮/原案・脚本日野晃博さんインタビュー|夢の『二ノ国』映画化には様々な試練が……! 梶裕貴さんのキャスティング秘話も!? より抜粋

 

同旨インタビュー

出典:ライブドアニュース|重要なのは「原動力」と「子供心」。『二ノ国』誕生秘話から紐解く、日野晃博の思考術

 

 

 

映画「二ノ国」公式アートブック
映画「二ノ国」製作委員会

【目次】

イントロダクション
映画『二ノ国』ビジュアルストーリー
美術ボード&設定画
キャラクター設定
百瀬義行アートワークス
インタビュー 製作総指揮/原案・脚本 日野晃博
インタビュー 監督 百瀬義行
インタビュー 魔法宰相・ヨキ役 宮野真守
インタビュー 音楽 久石譲
絵コンテ集
映画『二ノ国』を読み解く8つの視点
ゲーム「二ノ国」の世界

定価:本体2,700円+税
発売日:2019年08月16日
ページ数:160ページ
判型・造本・装丁:A4判 軽装 並製カバー装

 

 

 

 

Info. 2018/03/16 [CM] 「サントリー緑茶 伊右衛門 こころの茶屋 篇」「Oriental Wind -2018 New Version」CM O.A.スタート 【8/20 Update!!】

Posted on 2018/03/16

3月16日より、サントリー緑茶 伊右衛門『こころの茶屋 ティザー』篇がWEB限定公開しました。「Oriental Wind」の新しいヴァージョンを聴くことができます。 “Info. 2018/03/16 [CM] 「サントリー緑茶 伊右衛門 こころの茶屋 篇」「Oriental Wind -2018 New Version」CM O.A.スタート 【8/20 Update!!】” の続きを読む

Info. 2019/11/13,14,16 「Joe Hisaishi Concert」(台北・高雄)開催決定!! 【8/19 Update!!】

Posted on 2019/06/30

2019年11月、久石譲コンサートが台湾の台北・高雄で開催されます。昨年は映画「となりのトトロ」公開30周年記念として「オーケストラストーリーズ となりのトトロ」などを同楽団と共演しています。今年は「千と千尋の神隠し 組曲」です。 “Info. 2019/11/13,14,16 「Joe Hisaishi Concert」(台北・高雄)開催決定!! 【8/19 Update!!】” の続きを読む

Info. 2019/08/21 『映画 二ノ国 オリジナル・サウンドトラック』久石譲 CD発売決定!! 【8/17 Update!!】

人気RPG「二ノ国」シリーズを長編アニメーション映画化!

製作総指揮/原案・脚本:日野晃博(「レイトン」シリーズ)×監督:百瀬義行(『おもひでぽろぽろ』原画)×音楽:久石 譲という日本を代表するドリームメーカーが集結!

オリジナルストーリーで描かれる劇場版の本作では、主人公“ユウ”の声を演じる山﨑賢人をはじめ、宮野真守、津田健次郎、坂本真綾、梶裕貴、山寺宏一といった声優ドリームチームの参加も決定! “Info. 2019/08/21 『映画 二ノ国 オリジナル・サウンドトラック』久石譲 CD発売決定!! 【8/17 Update!!】” の続きを読む

Info. 2019/08/16 映画「二ノ国」 公式アートブック 発売

レベルファイブの人気ゲームシリーズ「二ノ国」の世界観をもとにしたアニメーション映画『二ノ国』が、今夏公開となります。製作総指揮/原案・脚本を日野晃博(「レイトン教授」シリーズ)、監督に百瀬義行(『おもひでぽろぽろ』原画)、音楽が久石譲(『千と千尋の神隠し』)と日本を代表するドリームメーカーが集結! “Info. 2019/08/16 映画「二ノ国」 公式アートブック 発売” の続きを読む

Blog. 「Men’s PREPPY 2019年9月号」映画『二ノ国』久石譲インタビュー内容

Posted on 2019/08/16

雑誌「Men’s PREPPY メンズプレッピー 2019年9月号」(8月1日発売)に掲載された久石譲インタビューです。劇場公開をひかえた映画『二ノ国』について語られています。

 

 

日本屈指のトップクリエイター集結!
今夏、再注目のエンターテインメントファンタジー!

『妖怪ウォッチ』『レイトン』シリーズなど数多くのヒット作を生み出した、日野晃博さんが製作総指揮/原案・脚本を担当し、監督は『おもひでぽろぽろ』などの原画を手掛けた百瀬義行さん、そして世界にその名を轟かせる映画音楽界の巨匠・久石譲さんが音楽を担当するという、夢の共演が実現!

 

CREATOR INTERVIEW
音楽監督 久石譲さん

各分野のトップクリエイターが集った今回の作品。ゲーム『二ノ国』からずっと音楽に携わり、誰もが一度は耳にしたことがあるジブリ作品をはじめ、数多くの映画音楽を手掛け、さらに指揮者・ピアニストとしても活躍されている久石譲さんが、今作について語ってくださいました。

-ゲーム版と映画版との違い、またあえて踏襲したところはありますか?

久石:
「まずゲームと映画はまったく違うものなので、やり方は変えています。ただ今回の映画はエンターテインメントな映画だったので、音楽のあり方も変えました。通常、映画音楽は映像を説明するような音楽、状況や登場人物の心情に音楽をつけるんですけど、僕は普段そういう方法を取ってないんです。観客側から客観的に見る方法を取ってるんですが、エンターテインメントな映画になればなるほど、状況や心情に寄り添わなければならないので、その意味で久しぶりに、そういう音楽を書きました。ただ、映画の製作側から、ゲームとはまったく違う音楽をつくってほしいと言われたんですが、それは根本的に間違っていると思ったのでそう答えました。ゲームであれ映画であれ『二ノ国』という世界観がひとたび出来上がると、ストーリーがどうであろうと、ベーシックな部分は一緒なんですよ。ある意味では、同じ曲を使ったほうがいいということもあります。だからこそ、そこは客観的に分析して、どこをどういう手法でやるか、それを考えました」

-”一ノ国”と”二ノ国”、それぞれでの変化は?

久石:
「一ノ国はリアルワールドで、二ノ国はファンタジーという別世界なので、一ノ国は室内楽というか小さな編成にして、二ノ国に行ったらフルオーケストラ。そういう形でかなりはっきり分けました」

-同じメロディラインで編成だけ違うというものもありますか?

久石:
「1曲やりましたね。でももともと異なる世界なので、できるだけ違うようにはしました。音楽でも一ノ国にいるのか二ノ国に行ったのか、わかるようになったと思います」

-映画だからこそ表現できたこと、チャレンジしたことは?

久石:
「今回はパーカッション系など、打楽器をかなり増やして全体にリズミックに仕上げました。ワクワクするようにもっていけたらいいなと、チャレンジしてみました」

-難しいと思うのですが、久石さん自身の好きな部分、聞いてほしい部分を教えてください。

久石:
「それはもう全部ですね。ある意味で、僕の今のやり方はミニマル・ミュージックなやり方が多いんです。ミニマル・ミュージックというのはパターン化された同じメロディを繰り返す方法なんですけど。でもそればっかりだと、エンターテインメントな映画には合わないんですよ。だから、普段ならお断りする可能性もあるお仕事だったのですが、今までゲームで作ってきた音楽があったので、それとうまくバランスがとれれば、今までとは違った切り口の映画音楽ができるかなと思って、そこは意識しましたね」

-ということは、10年前のゲームファンが観ても、メロディラインに気づくような部分もありますか?

久石:
「テーマはさりげなく出したりしているので、そこは楽しんでもらえるかなと思います」

-映画音楽をつくるとは、久石さんにとってどういうことでしょう?

久石:
「エンターテインメントな仕事は嫌いじゃないし、それをつくることで、例えば今回は日野さんとコミュニケーションを取ることで、新しい表現とか自分ではやらない表現に挑戦したりするので、新しい発見があるっていうことは楽しいですよね。もちろんこれは映画だけに限らずですが」

-ではファンの方へメッセージをお願いします。

久石:
「今年2月にパリでコンサートをやっていたときもインタビューを受けたんですけど、みんな『二ノ国』は知ってるんですよ。つまり、国内のみではなく、海外でも広く認知されているゲームなんです。それが映画化されるということで、世界中が期待しているので、希望としては海外も含めて、自分の音楽が映画と共に届いて、聞いてもらえると嬉しいです」

(Men’s PREPPY 2019年9月号 より)

 

 

 

 

 

Info. 2019/08/16 久石譲が語り明かす 映画『二ノ国』楽曲秘話公開(ぴあ より)

久石譲が語り明かす 映画『二ノ国』楽曲秘話公開

製作総指揮・原案・脚本に日野晃博(『レイトン』シリーズ)、監督に百瀬義行(『おもひでぽろぽろ』原画)、音楽に久石譲(『千と千尋の神隠し』)と、日本を代表するドリームメーカーが贈るアニメーション超大作『二ノ国』が8月23日(金)より公開される。この度、音楽を担当した久石による楽曲秘話が公開された。 “Info. 2019/08/16 久石譲が語り明かす 映画『二ノ国』楽曲秘話公開(ぴあ より)” の続きを読む

Overtone.第24回 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2019」コンサート・レポート by ふじかさん

Posted on 2019/08/13

ふらいすとーんです。

8月1日静岡を皮切りに国内8公演で開催された「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2019」コンサートツアー。各会場ともにスタンディングオベーションの大盛況!

今回ご紹介するのは、久石譲ファンの一人、ふじかさんのコンサート・レポートです。初日公演、まさに世界初演幕開けの瞬間、とても臨場感あふれる詳細レポートです。

 

 

久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2019

[公演期間]  
2019/08/01 – 2019/08/12

[公演回数]
8公演
8/1 静岡・静岡市民文化会館 大ホール A
8/2 愛知・愛知県芸術劇場 コンサートホール A
8/5 広島・ふくやま芸術文化ホール リーデンローズ B
8/6 長崎・長崎ブリックホール B
8/8 東京・サントリーホール A
8/9 東京・サントリーホール B
8/11 京都・京都コンサートホール 大ホール B
8/12 兵庫・兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール A

[編成]
指揮・ピアノ:久石譲
管弦楽:新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラ
コンサートマスター:豊嶋泰嗣

[曲目]
【PROGRAM A】 All Music by Joe Hisaishi
組曲「World Dreams」  *世界初演
1.World Dreams
2.Driving to Future
3.Diary

ad Universum *世界初演
1.Voyage
2.Beyond the Air
3.Milky Way
4.Spacewalk
5.Darkness
6.Faraway
7.Night’s Globe
8.ad Terra

—-intermission—-

[Woman] for Piano, Harp, Percussion and Strings *改訂初演
Woman
Ponyo on the Cliff by the Sea
Les Aventuriers

Kiki’s Delivery Service Suite *世界初演

—-encore—-
Il Porco Rosso (Pf.solo)
Merry-Go-Round

 

【PROGRAM B】 All Music by Joe Hisaishi
組曲「World Dreams」 *世界初演
1.World Dreams
2.Driving to Future
3.Diary

Deep Ocean
1.the deep ocean
2.mystic zone
3.trieste
4.radiation
5.evolution
6.accession
7.the origin of life
8.the deep ocean again
9.innumerable stars in the ocean

—-intermission—-

[Woman] for Piano, Harp, Percussion and Strings *改訂初演
Woman
Ponyo on the Cliff by the Sea
Les Aventuriers

Kiki’s Delivery Service Suite *世界初演

—-encore—-
Summer (Pf.solo)(広島・長崎・東京)
あの夏へ (Pf.solo)(京都)
Merry-Go-Round

 

 

昨年に引き続き、WDO2019静岡公演の模様をレポートさせて頂きます。

2019年8月1日 静岡市民文化会館 18:30開演

ここ数年での久石さんと新日本フィルによるWDOツアー、静岡市内では初めての開催となりました。

早速会場に入ると、楽団の方がステージで練習をしており、いつものオーケストラの楽器はもちろん、今回はオカリナの音色も聴こえました。

開演時間を過ぎると楽団の全員がステージに集結し、チューニングが終わると束の間静寂。その後割れんばかりの拍手の中、笑顔の久石さんが登場しました。

 

組曲「World Dreams」
ⅰ.World Dreams
例年のコンサートだとアンコールでの演奏機会が多かった一楽章の「World Dreams」ですが、今回は1曲目。組曲化ということでしたが、この楽曲に関しては大きな変更等はなかったと思います。いつもよりメロディの抑揚が感じられ、最初からグッと心を掴まれてしまいました。

ⅱ.Driving to Future
某企業への書き下ろし曲がまさかの組曲の構成曲になるとは思いませんでした。楽曲自体も初めて聴くことなりました。マリンバの刻みに合わせて、メロディのような持続音のような音がチェロから紡ぎだされ、その後弦全体へと広がっていきました。ミニマルとメロディの融合を目指したようなこの楽曲は、近年の『二ノ国Ⅱ』や『海獣の子供』でも実践しており、今の久石さんを凝縮したような作品に仕上がっていました。

Ⅲ.Diary
皇室日記のテーマ曲へと書き下ろされたこの楽曲も組曲への衝撃参入でした。「ラーレー、レーミラー」とゆったりと奏でられるメロディは厳かな雰囲気もありつつ、一楽章と似た要素もあり三楽章にピッタリな楽曲となりました。中盤では一楽章を連想させるようなシーンもあり、終盤ではチューブラーベルズも響きわたり、組曲としての統一性も感じられました。

トータルで聴いてみると、この組曲は2016年WDOのテーマ「再生」の延長線上にある印象を受けました。「再生」から「希望・夢・日常」へ。今回がWDO二期の〆とパンフレットに書いてありましたが、テーマも集結へ向かった気がしました。

 

ad Universum
プラネタリウムの為に書き下ろされた楽曲達が再構成されて、コンサートで披露されました。ミニマルミュージックを軸に構成されており、反復で表現されていく様子はまさしく音のプラネタリウムでした。8曲から構成され、プラネタリウムで使用された楽曲はほとんど使用されていたのはないでしょうか? 絶え間なく演奏され、1曲ずつの感想は書けませんが、印象に残ったことを書いていきます。

冒頭(1.Voyage)では、ゆったりとしたストリングの調べから、突如マリンバのソロが入ります。そこから繰り広げられていくミニマルの刻み。『D.E.A.D』組曲の三楽章『死の巡礼』のように迫りくるリズムが続きます。

2.Beyond the Airでは『The East Land Symphony』の二楽章『Air』のような浮遊する雰囲気を感じられます。全体としてメロディの要素は少ないですが、途中で現れる「ラレド♯ー」のような特徴的なメロディの欠片からは流れ星の煌めきを連想させます。低音から高音へ、波の揺らぎのような部分からは『Deep Ocean』のような雰囲気も。

終盤(8.ad Terra)からは大迫力のミニマルワールド。ひたすら繰り返されるリズムの刻みに終始圧倒されました。大迫力のフィナーレのあと、マリンバのソロで静かに終わるのが印象的でした。

 

ここで前半終了です。

通常だと舞台替えでピアノがステージ中央に設置されますが、今回は設置されませんでした。

 

[Woman] for Piano, Harp, Percussion and Strings
今回のストリングスとピアノのコーナーは久石さんは指揮に専念する形となりました。2008年のツアー以来演奏されて来なかった『Another Piano Stories』の楽曲がドレスアップして披露されました。ピアノパートの高橋ドレミさんが力強い演奏をしておりました。

Woman
レリアンのCM曲で、軽やかなリズムと優雅なメロディが特徴的な1曲。弦の伴奏に合わせて、ピアノから紡がれるメロディが聴いていてとても心地よかったです。演奏終了後、拍手が途切れてしまって、久石さんが客席に拍手をあおる場面も笑

Ponyo on the Cliff by the Sea
『崖の上のポニョ』のメインテーマで、公開から10年以上もたちますが、久石さんのポニョマジックは健在でした。ピアノがポニョのテーマを奏でるとともに、会場からはクスクスと笑い声が。非常にキャッチ-なメロディのこの楽曲ですが、演奏風景を見ていると伴奏隊は非常に複雑な動きをしているのを改めて実感しました。

Les Aventuriers
5拍子が特徴的で、スリリングなカッコよさがあるこの楽曲はファンの中でも人気曲なのでしょうか? マリンバが5拍子の刻みに輪郭をハッキリとして、近年の久石さんの表現の仕方と相まって、非常にキレのあるかっこいい演奏に進化していました。終盤にはピアノのグリッサンドも追加され、ズチャッという最後の〆も進化していました。

 

ここで再度舞台替えがあり、ピアノが指揮台横に設置され、マンドリンとアコーディオン用の音の返しスピーカーも設置されました。

 

Kiki’s Delivery Service Suite
宮崎駿監督作品の交響組曲化の第五弾は魔女の宅急便。

構成曲は
1.晴れた日に…
2.海の見える街
3.パン屋の手伝い
4.仕事はじめ
5.身代わりジジ
6.ジェフ
7.大忙しのキキ
8.パーティーに間に合わない
9.プロペラ自転車
10.とべない!~傷心のキキ
11.神秘なる絵
12.暴飛行の自由の冒険号
13.おじいさんのデッキブラシ
14.デッキブラシでランデブー
15.かあさんのほうき

会場でメモ書きしながら聴きましたが、抜けている可能性もあります…

全体的にヨーロピアンテイストを感じられる楽曲が多い作品で、サントラの雰囲気はそのままに壮大なシンフォニーに生まれ変わっていました。マンドリン、アコーディオン奏者も加わり、よりサントラの世界観に沿った形となりました。

1.晴れた日に…での「ファー、ソー、ラー♭」と一気にオケの音色が花開くところは圧倒されてしまいました。

2.海の見える街では、コンサートでの定番となっている『Kiki’s Delivery Service 2018』等でのアレンジがあまり継承されずに、サントラに沿った形になっていました。そのため後半のスパニッシュワルツのパートは若干短くなっていました。

5.身代わりジジでは、クラリネット、トロンボーン、トランペットのソロ奏者が立ち上がって演奏する場面も。

9.プロペラ自転車では、シンセサイザーメインの楽曲が見事にオーケストレーションされ、まったく違和感なく構成されていました。

10.傷心のキキでは、アコーディオンがキキの心を表現するようにしっとりと演奏されているのが印象的です。

11.神秘なる絵ではシンセの部分にオカリナが登場し、柔らかい音色が会場を温かく包み込みます。

13.おじいさんのデッキブラシは、オケの力強い迫力がピッタリの楽曲。映画終盤でのスリリングなシーンを彷彿とさせてくれました。

15.かあさんのほうきでは、久石さんもピアノ演奏も加わり、豊嶋さんの美しいヴァイオリンソロが会場を包み込みました。アレンジとしては武道館で披露されてものが近く、組曲の最後にふさわしい極上の仕上がりでした。

 

拍手喝采のなか、アンコールへと進みます。

 

il Porco Rosso (Pf.solo)
演奏前に久石さんが、さあ弾こうか!という感じでピアノに向かったのが印象的でした。今回は久石さんによるピアノ演奏が少ないコンサートでしたが、まさかのアンコールでたっぷり堪能できました。しかも今回は国内では初披露となるil Porco Rossoのピアノソロバージョン。左足でリズムを刻みながら、ジャジーな演奏に終始うっとりしてしまいました。

この演奏が終わると、数名が久石さんに花束を渡すシーンも伊右衛門を渡され、会場に笑いが起きる場面も。

Merry-Go-Round
コンサート最後の曲は、ハープから始まる人生のメリーゴーランド、長野チェンバーオーケストラの演奏会でのアンコールとして披露されていたアレンジがWDOでも組み込まれました。終盤の転調後は、オーケストラの迫力に会場も圧倒されて、会場も熱気で包まれました。

 

演奏終了後、割れんばかり拍手の中、次々と観客が立ち上がり、スタンディングオベーションに!楽団のみなさんも帰りはじめても鳴りやまない拍手と声援に久石さんも何度もステージに登場していました。

初日の静岡公演、最高潮の熱気のまま幕を閉じました。

今回のレポートは以上です。

会場での雰囲気を少しでも感じ取ってもらえれば幸いです! 

 

ふじか

 

後日談) by ふじかさん

後日プラネタリウムをまた見ますので、楽曲聴いて改めて加筆あるかもしれないです。

 

 

8月1日 静岡公演風景

from 久石譲コンサート 2019-2020 公式ツイッター
https://twitter.com/joehisaishi2019

 

 

「行った人の数だけ、感想があり感動がある」。会場ごとにプログラムはもちろん、演奏や雰囲気も違う。公演を重ねるごとに修正やバージョンアップをくり返して磨きをかけていく。そう、CDのように全く同じ演奏ってないんですよね。

初日公演だからこその緊張感や集中力ってきっとあります。そんなところ気づかなかった、なるほどそういう見方もあるよなあ、そこが印象的だったんだ。自分にはなかった新しい発見があってうれしいです。そしていつもふじかさんのレポートや着眼点はとても具体的!

ふじかさんとは2018年7月にツイッターでつながりました。全国各地の久石譲ファンとSNSをとおしてつながれる。それをきっかけにコンサート会場でお会いすることもできました。いい時代です。

2年連続のコンサートレポート、ほんとうにありがとうございます!

 

 

 

 

reverb.
コンサートのときは、拍手のメモの交互に忙しいです(^^;)

 

 

*「Overtone」は直接的には久石譲情報ではないけれど、《関連する・つながる》かもしれない、もっと広い範囲のお話をしたいと、別部屋で掲載しています。Overtone [back number] 

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