Posted on 2015/6/7
クラシックプレミアム第37巻はワーグナーです。
【収録曲】
歌劇 《さまよえるオランダ人》 序曲
歌劇 《タンホイザー》 序曲
ダニエル・バレンボイム指揮
シカゴ交響楽団
録音/1994年
歌劇 《ローエングリン》 第3幕前奏曲 - 〈婚礼の合唱〉
ダニエル・バレンボイム指揮
ベルリン国立歌劇場管弦楽団・合唱団
録音/1998年
楽劇 《ニュルンベルクのマイスタージンガー》 第1幕前奏曲
ダニエル・バレンボイム指揮
シカゴ交響楽団
録音/1992年
楽劇 《ニーベルングの指環》
第1夜 《ワルキューレ》 より 〈ワルキューレの騎行〉
第3夜 《神々の黄昏》 より 〈夜明けとジークフリートのラインの旅〉 〈ジークフリートの死と葬送行進曲〉
ダニエル・バレンボイム指揮
シカゴ交響楽団
録音/1991年(ライヴ)
「久石譲の音楽的日乗」第36回は、
イタリアで自作のコンサート
前号では、今注目の若手指揮者ドゥダメルの演奏会に行っての感想などが、久石譲ならではの視点(指揮者/作曲家)で興味深く語られていました。今号では、日本ではあまり情報が少なかった久石譲コンサート、4月にイタリアで開催された映画祭でのスペシャル・コンサートについて。
この演奏会の情報は、各媒体を探しに探して少しまとめています。演奏プログラム、写真紹介、記者会見内容など。
こちら ⇒ Info. 2015/04/25 《速報》久石譲 伊映画祭コンサート 演奏プログラム&写真紹介
こちら ⇒ Info. 2015/04/26 《速報》続報 久石譲 イタリア・コンサート 記者会見内容など
そして今号ではご本人による貴重な情報と記録!ということで見逃せません。
一部抜粋してご紹介します。
「昨日、イタリアから帰ってきた。ヴェネツィアから北に車で1時間半くらいのところにウディネという人口約10万人の町がある。そこでファーイースト・フィルムフェスティヴァルという映画祭が行われている。イタリアでアジアの映画にスポットを当てた催しとして今年で17回目だから歴史はある。そのオープニングのコンサートとなんとか功労賞というものをいただけるということで出かけていった。本当は前回に続いてグスターボ・ドゥダメル☓ロサンゼルス・フィルのことを書こうと思っていたのだが、状況変転、今関心があることから書いていくことにする。」
「まずは内容だが、コンサートは約1時間半、映画祭なので僕の作曲した映画音楽(もちろんミニマル曲も演奏した)を中心に構成した。およそ1200席のチケットは発売3時間で完売、ヨーロッパ中から観客が訪れたということはやはりネットのおかげだろう。」
「演奏はRTVスロベニア交響楽団が担当した。ウディネの地元のオーケストラは編成が小さいらしく、隣国から呼んできたわけだ。そのためリハーサルの2日間はスロベニアの首都、リュブリャナで行われ、当日のゲネプロ(最後の全体リハーサル)、本番がウディネということになる。短期間での移動が多いのは負担になると思われたが、何故かスロベニアに惹かれ都合5泊7日間の日程で旅に出た。本当はヴェネツィアが近いので久しぶりに立ち寄りたかったが、翌週から小難しい現代曲などのコンサートが控えているため、できるだけコンパクトな日程にした。何だか指揮者みたいなスケジュールだ(笑)。」
「海外のオケの場合はいつもそうだが、打ち合わせどおりには行かない。今回も対向配置(弦楽器の配置で、第2ヴァイオリンが舞台に向かって右に位置する)のはずが普通の並びだったり、マリンバが2台無かったり、アルト・フルートが練習の始めに間に合わなかったりで大変なのだが、指揮者たるものがそんなことで動じてはならない。本来あるべき状況に戻しつつ、何事もなかったかのように(順調のように)進めていった。」
「またいつもどおり初日は音も合わず、間違える人も多いのだが、日を追うごとにうまくなり、フレーズも大きく歌い音楽的に向上していく。日本のオケは初日からうまく、かなりのレヴェルなのだが、日を追うごとに目に見えるような向上はあまり感じられない。国民性なのか?」
「そしてウディネに我々は移動してコンサートに臨んだ。北イタリアのこの小さな町はそれでもサッカー・セリエAのウディネーゼを持つくらいだから、まあ知られた町ではある。ホールも舞台上の汚さはあったが(オペラやバレエも行われている)、壁のポスターを見るとアバド、チョン・ミュンフン、シャルル・デュトワ、あのドゥダメルから辻井伸行さんまで来ているので、ちゃんとしたクラシックのホールなのだろう。ただ音はドライで舞台上はあまり響かない。この場合は音楽全体のテンポを速めに設定し、ソリッドに仕上げるほうがうまく行く、本番は夜の8時半から。昼夜の温度差が激しく、楽屋で寝ていた時、寒気がして激しい頭痛に襲われた。そんな中で舞台に立ったが、膨大な汗をかくことで風邪を退散させ、無事に終了した。観客はおおよその楽曲は知っていて熱狂的に受け入れてくれた。特にアンコールの《ナウシカ》ではどよめきすら起こった。一緒に来た日本人の関係者は目を丸くし異口同音に「久石さん有名なんだね~」。」
「このところクラシックがらみのコンサートしか行っていなかったが、久しぶりの自作のみ、は意外に新鮮で、早く新アルバムを作って日本でツアーを行ってもいいと思えたのは収穫だった。」
海外での公演、そして海外オケとの共演の苦労と収穫、そんな舞台裏が垣間見れました。このコンサートではオール久石譲作品、そして映画音楽から自作現代音楽までと、昨今の日本国内コンサートではまあお目にかかることのできないセットリスト。贅沢な演奏プログラムです。
そしてエッセイ最後の結びがやはり気になりますよね!「早く新アルバムを作って日本でツアー」ぜひっ!と読みながら強い合いの手を入れてしまいます。「行ってもいいと思えた……」ではなく「行いたいと思った!」と言い切ってほしかったくらいです(笑)。
それでも異国の地で特別功労賞を受賞し、国内とはまた違った気候・環境・オケで久石譲音楽を響かせ、観客の反応をダイレクトに感じ。そんななかから「早く新アルバムを作って日本でツアーを行ってもいい」と思っていただけたのなら、ファンの一人としても、このコンサートが大きな収穫となりこれから先につながることを期待してやみません。