Blog. 文春ジブリ文庫 「ジブリの教科書 5 魔女の宅急便」 読書

Posted on 2014/2/24

2013年4月から創刊された文春文庫 x スタジオジブリによる文春ジブリ文庫シリーズです。第1弾『風の谷のナウシカ』から始まって、第5弾は『魔女の宅急便』です。

毎回楽しみにしているこのシリーズですが、各界からの豪華執筆陣がその作品を独自の視点から読み解いていたり、当時の製作陣インタビューなど貴重な記録が満載です。当時出版された様々な書籍からの再編集も多いですが、ある意味作品ごとに、その内容がまとめられて収められているのはうれしいところ。

また今回のための書き下ろしや語り下ろしインタビューなどもあり、過去と現在の時間を超えて『魔女の宅急便』の世界を楽しむことができます。多彩な執筆陣から、原作者角野栄子、内田樹、上野千鶴子、青山七恵、氷室冴子、松任谷由実、C.W.ニコル、などいろいろなインタビューや対談満載です。

 

読んで知ったことなど、書きたいことたくさんあるのですが。

目からウロコだったのは

  • 映画『魔女の宅急便』の表テーマと裏テーマの存在
  • どうしてキキは飛べなくなったのか?
  • どうしてキキは黒猫ジジと言葉が通じなくなったのか?

このあたりのことが、宮崎駿監督や鈴木敏夫プロデューサーの口から語られていてとても興味深いです。

ほかにも上の3点などの主要な問題に対して、豪華執筆陣たちが、それぞれの解釈で、あらゆる角度から解説しているのも、なるほどとうなずけます。どれが正解というよりも、いろいろな考え方や捉え方が自由にあるんだな、ということがすごくよくわかります。

“思春期の女の子の物語”でありながら、そこには、「成長」「才能」「働くということ」がしっかりと描かれていたんだなと、改めて奥が深い作品であることがわかりました。

 

宮﨑駿監督は、この作品にふれて「才能」のことを語っています。

平気に無意識にできていたことが、ある日突然できなくなる。
なぜできなくなったのかわからない。
そして無意識のうちに成長していくことはできない。

ちょっと漫画を描けるだけ、単に空を飛べるだけ、それで食っていけるのか?

 

このように「才能を職業にするということ」「働くこと」「おカネをもらって生活していくこと」つまりは、『自分でおカネを稼いで自立する』ということがどういうことなのか、その過程で起こる不安や葛藤、つまずきや成長を、見事に描いています。

キキは空を飛ぶだけの才能、監督は漫画が描けるだけの才能、その小さい頃から無意識にできていたことを意識的に成長させていく物語、そう両者を捉えると、この作品の見どころや台詞の重さも変わってくるのかもしれません。

 

また”思春期”に対する洞察力がすごい。確かに「思春期の頃ってこういう感情だったかな」と誰もが思うような、思春期特有の言動・葛藤・自分を守ること・避難場所 など宮崎駿監督の語りはそれだけでも読む価値が十分にあります。

そんな”思春期”特有のディティールを、映画のなかに散りばめてあって「なるほど、このシーンはこういうことだったのか」と唸ってしまいます。

 

冒頭に、制作当時のインタビューなどを再編集、と書きましたが、そのおかげて、いろいろな製作陣の話が、とてもリアルです。当時の時間をそのまま切り取ったような鮮明さと具体的な話が満載です。美術ボードなどのカラースケッチも多数収録してあり、キャラクター設定のスケッチもあり、絵としても見どころ満点でした。「西洋と東洋の魔女、その歴史」なんかもかなり深く掘り下げてあって、より専門的な話、歴史観や宗教観も学ぶことができます。

 

そしてあのヨーロッパ的な雰囲気のする舞台ですが、モデルとなったスウェーデンのストックホルム、ゴッドランド島のヴィズビーの他、インタビューのなかからいろいろな街の名前が登場してきます。そんなごっちゃまぜにしたヨーロッパ的な舞台だからこそ、モデル地はありながらも「架空の場所」という設定になっているんですね。

ヴィズビーの街です。

魔女の宅急便 ヴィズビー

素敵ですね!ほかにも「ヴィズビー」や「ストックホルム」などで検索をすると、『魔女の宅急便』的雰囲気をもった街写真がたくさんHitすると思います。

 

さて、肝心の音楽:久石譲のことに触れていませんが、もちろん久石譲の当時制作インタビューも収録されています。ここまで網羅してしまいますと、膨大になってしまいますので、それはまた別の機会にご紹介します。

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