Blog. 「久石譲 サマースペシャル2010」 コンサート・パンフレットより

Posted on 2015/2/8

2010年8月に開催された久石譲コンサート「久石譲 サマースペシャル2010 ~子供たちとかつて子供であった大人のコンサート~」

聴き馴染みのあるクラシック音楽と、久石譲ジブリ音楽を中心に、親しみやすいオーケストラ・コンサートとして企画された構成です。楽曲解説を見てもわかりますが、ちょうどこの年の9月に最新オリジナル・アルバム「メロディフォニー」が発売されています。

その発売記念と先行のお披露目ふくむ、久石シンフォニーとなっています。「KIKI’S DELIVERY SERIVE」「Oriental Wind」、そしてアンコールで演奏された「One Summer’s Day」。日本初演、改訂初演を多く盛り込んだ、まさにひと夏のスペシャルなコンサートプログラム。

 

 

久石譲 サマースペシャル2010 〜子供たちとかつて子供であった大人のコンサート〜

[公演期間]
2010/08/06,07

[公演回数]
2公演
8/6 長岡・長岡市立劇場大ホール
8/7 東京・すみだトリフォニーホール

[編成]
指揮・ピアノ:久石譲
語り:志茂田景樹
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
コーラス:リトルキャロル

[曲目]
歌劇 「ウィリアム・テル」 序曲 (夜明け~嵐~牧歌~スイス独立軍の行進)
天空の城ラピュタ (トランペット:David Herzog)
バレエ組曲 「くるみ割り人形」 より
(小序曲~行進曲~こんぺい糖の踊り~トレバック~アラビアの踊り~中国の踊り~あし笛の踊り~花のワルツ)

オーケストラストーリーズ となりのトトロ (語り:志茂田景樹 コーラス:リトルキャロル)
亡き王女のためのパヴァーヌ
Kiki’s Delivery Service
Oriental Wind

—アンコール—
One Summer’s day (for Piano and Orchestra)
崖の上のポニョ (コーラス:リトルキャロル 英語詞)

 

 

 

当日配布されたコンサート・プログラムより、各楽曲解説をご紹介します。

 

天空の城ラピュタ

1986年のスタジオジブリ制作、宮崎駿監督作品「天空の城ラピュタ」より。
「天空の城ラピュタ シンフォニー編~大樹」に収録されている「プロローグ~出会い」をベースに、ワールド・ドリーム・オーケストラのために書き下ろしたアレンジ。サウンドトラックよりもさらにスケールアップされ、シンフォニーの壮大な響きとともに、トランペット・ソロが大きな聴きどころのひとつとなっている。冒頭から高らかに奏でられるトランペット・ソロの「ハトと少年」と、おなじみのメイン・テーマ「君をのせて」の、2つのテーマから成る。トランペットとオーケストラの掛け合いは、ときには勇ましく、ときには懐かしく哀しく、血湧き肉躍る冒険活劇の世界を十二分に楽しませてくれる。

 

オーケストラストーリーズ となりのトトロ

初めてオーケストラに接する子供たちと大人たちのために、オーケストラの入門編としてつくられた作品。宮崎駿監督作品「となりのトトロ」を素材にした、親しみやすいシンプルなメロディと、ストーリー性に富んだ展開は、オーケストラ組曲としても高い完成度を誇り、2002年に作曲されて以降、人気を博している。導入部の「さんぽ」では、オーケストラに登場する各楽器の音色や特徴をわかりやすくナレーションで解説。そのほか、「五月の村」「ススワタリ~お母さん」「トトロがいた!」「風のとおり道」「まいご」「ネコバス」「となりのトトロ」と、8つの小曲から構成されている。今回、3管編成としてアレンジされた楽曲に、「となりのトトロ イメージ・ソング集」に収められていた宮崎駿監督と中川李枝子さんの歌詞を新たに加え、一層魅力溢れるものに生まれ変わった。また、「風のとおり道」も、本コンサート用に、コーラスとピアノをフィーチャーした曲として再構成してお届けする。

 

KIKI’S DELIVERY SERVICE

1989年制作、宮崎駿監督作品「魔女の宅急便」より。
秋に発売が予定されている久石のソロアルバム「メロディフォニー(仮題)」のために書き下ろされた「KIKI’S DELIVERY SERVICE (海の見える街)」を日本初演する。愛くるしさいっぱいの軽やかなリズムと、可憐なメロディ、そして中間部の大人びたジャジーな洗練された香りは、大人へと成長していく、映画の主人公・魔女のキキそのもののように、様々な表情を魅せてくれる。ピアノとヴァイオリン、弦楽オーケストラを主体に贈る本楽曲は、小編成ながらも魅力満載である。

 

歌劇 「ウィリアム・テル」 序曲

イタリアの作曲家ロッシーニは主にオペラの作曲家として有名で、生涯で39作のオペラを残した。オペラ全曲も数多く上演されるが、序曲はそれ以上にコンサートで演奏されている。「ウィリアム・テル」はロッシーニのオペラでは最後の作品であり、1826年にパリで書かれている。内容は13世紀スイスの独立運動におけるひとりの勇者を描いたもので全曲上演すると5時間はかかる長大な作品だが、全体の雰囲気は〈夜明け~嵐~牧歌~スイス独立軍の行進〉という4部構成のこの序曲で感じることができる。

 

バレエ組曲 「くるみ割り人形」 より

ロシアの代表的作曲家チャイコフスキーがバレエのために1891年から1982年にかけて書いた作品で、原作はホフマンの「くるみ割り人形と二十日間」である。本日演奏するコンサート用組曲はバレエの初演に先駆けて演奏されたもので、「小序曲」「行進曲」「こんぺい糖の踊り」「トレパック」「アラビアの踊り」「中国の踊り」「あし笛の踊り」「花のワルツ」で構成されている。どれをとってもメロディ・メーカーのチャイコフスキーの面目躍如といったところで、現在世界中で愛され続けているのもうなずける。

 

亡き王女のためのパヴァーヌ

「ボレロ」や「マ・メール・ロワ」などで有名なフランスの作曲家モーリス・ラヴェルが1899年にもともとはピアノのために書いた作品であるが、本人の手により管弦楽用に編曲された。編曲されたのは今からちょうど100年前の1910年のこと。「パヴァーヌ」というのは16世紀イタリアを起源とする宮廷舞曲である。ホルンのソロによる愛しく、哀愁漂うメロディーが印象深く、現在でも頻繁に演奏されている。

 

Oriental Wind

2004年より放映中のサントリー・京都福寿園「伊右衛門」CM曲より。
こちらも新作ソロアルバム「メロディフォニー(仮題)」用に書き下ろされたオーケストラ・ヴァージョンをお披露目する。今や、お茶の間のおなじみとなった美しい旋律は、黄河の悠々とした流れをイメージしてつくられたとも。しかし、朗々とした格調高い優雅なメロディの裏には、繊細なリズムや激しいパッセージの連続があり、とても複雑な内声部によって支えられている。オーケストラ泣かせとも言えるほどの難易度の高い曲でもあるが、それ故、聴く者の心に刻み込まれ、何度も聴きたくなるのである。

(「久石譲 サマースペシャル2010」 コンサート・パンフレット より)

 

 

久石譲 サマースペシャル 2010

 

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