Disc. 久石譲 『吉祥天女 イメージアルバム』

久石譲 吉祥天女 イメージアルバム

1984年12月21日 CD発売 32ATC-4
1984年12月21日 LP発売 ANL-1038
1984年12月21日 CT発売 25AN-38
2000年4月26日 CD発売 TKCA-71916
2018年2月23日 LP発売 LAGREC002

 

「吉祥天女」
原作:吉田秋生 音楽:久石譲

第29回小学館漫画賞を受賞した名作コミックに久石譲がオリジナル音楽を書き下ろしたイメージアルバムの先駆的作品。

 

 

吉祥天女 音楽解説

一、天女伝説
「七宝充満の宝を降らし、国土にこれを施し給ふ」という、能楽「羽衣」の引用から物語は始まる。「天女の羽衣」を代々受け継ぎ、地上に降りた天女の末裔であるヒロイン。物語のベースに流れる「天人女房伝説」からイメージした、このアルバムのメインテーマ。

二、叶 小夜子
春の嵐に散る桜とともに、麻井由似子の通う高校に転校してきた少女・叶小夜子。彼女の不思議な魅力が、学園に静かな波紋のように広がっていく。「気になる転校生」をめぐって、なにかがゆっくりと動きはじめる。

三、遠野 涼
「春日高の浮世雲」の異名をとる軟派中の軟派、遠野涼はクラスのなかに難なくとけこんでいる小夜子に、ただひとりなにか異質なものを感じとる。自分をとりまくすべてのことを呪っていると言い放つ小夜子。一見、軽薄で明るい学園生活を送る涼は、今まで目をそらしてきた自分の過去に、ふたたび対峙する。

四、天女飛翔
今井久子や暁の指図で、小夜子を襲う不良グループ。男の暴力に対して、翔ぶかのように危機を脱していく小夜子。羽衣を血に染めて飛翔する天女のイメージ。

五、遠野 暁
叶家の莫大な財を手に入れるため、小夜子に近づく涼の従兄、遠野暁。ワナをはり小夜子と婚約にまでもちこむが、彼女の魅力にひきこまれ、微妙に変化していく。スノップな現実を象徴するキャラクターとしてイメージした曲。

六、魔性の女
国語教師の根津、暁の手下の大沢真、伯母の浮子、そして暁の父と、次々と葬りさっていく小夜子。血が流れるごとに彼女の魅力は妖しく増していく。幼時に受けた暴行から「女性であることの屈辱」を味わった彼女は、すべての男性に報復するかのように、その魔性を超常的なまでに発揮していく。

七、血の抗争
小夜子の祖父、叶泰造の死により、叶家の財産をねらう暁をはじめとする遠野家の計略。私欲にくらむ魑魅魍魎(ちみもうりょう)の中で、秘かに刃をとぎすます小夜子。

八、小夜子と涼
小夜子の魔性を目のあたりにして、むしろ畏敬の念をもつ涼。最初に会ったときから、涼の中に自分と同じ「傷つきやすい魂」を感じた小夜子。ふたりの心はつかの間、通いあうかにみえるが、暁の死に至り、涼は小夜子を葬ろうと銃を手にする。破滅の色調を帯びた、小夜子と涼のラブソング。

九、予感
暁の死により彼女の報復は終った。が、その魔性は、唯一、わかりあえる存在かもしれなかった涼をも殺してしまう。女性としての業を一身に背負ったかのような小夜子の精神(こころ)が孤高の涙にゆれる。

十、転生
”天女を妻にした男は幸福だったと思う?それとも……”

(音楽解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

2018年Lag Recordsからアナログレコードが再発売されている。

2018年2月23日 LP発売 LAGREC002

吉祥天女 イメージアルバム (アナログレコード)
KISSHO TENNYO [LP] [Analog]

 

 

久石譲 吉祥天女 イメージアルバム

1. 天女伝説
2. 叶 小夜子
3. 遠野涼
4. 天女飛翔
5. 遠野暁
6. 魔性の女
7. 血の抗争
8. 小夜子と涼
9. 予感
10. 転生

プロデューサー:久石譲
作曲・編曲:久石譲
演奏:久石譲・福岡保子

録音スタジオ:
サンライズスタジオ
ジョーズステーション
59年9月10日~10月9日

使用楽器:
フェアライトCMI、プロフィット5、ヤマハDX7、リンドラム、ローランドMC-4、ハモンドオルガン、ローランドSH-101、ローランドTR-808

 

Disc. 久石譲 『Wの悲劇 オリジナル・サウンドトラック』

久石譲 『Wの悲劇 オリジナル・サウンドトラック』

1984年12月1日 LP発売 WTP-90308
1984年12月1日 CT発売 ZH28-1466
1984年12月21日 CD発売 CA35-1098
1998年7月25日 CD発売 CPC8-3006
2013年9月18日 CD発売 TOCT-11604

 

1984年公開 映画「Wの悲劇」
監督:澤井信一郎 音楽:久石譲 出演:薬師丸ひろ子 他

 

「あんた、いま、女優になるのよ」「顔ぶたないで、女優なんだから!」などの名言。役を得るためには、純潔も恋も犠牲にするドロドロの世界を見事に描いたバック・ステージものの傑作。そんな内容とは裏腹に久石譲による美しいピアノが流れる。大ヒット曲「Woman~Wの悲劇より~」も、もちろん収録。

(メーカーインフォメーションより)

 

 

今こそ見直すべき澤井信一郎と久石譲の出発点

夏樹静子の同名ベストセラー小説を下敷きにしたユニークな”バックステージ・ドラマ”『Wの悲劇』(1984)は、その絶妙な脚本の構成とアンサンブルのいい役者陣の演技、そして計算と感性の行き届いた演出によって、今も胸を打つ逸品となった。劇中の劇団研究員さながらに、アイドル女優という枠から徐々にはみだし、大人の香りを醸し出していく薬師丸ひろ子は『メイン・テーマ』(1984・森田芳光監督)に続いての好演。誠実なる不動産屋の青年役で世良公則がさわやかな風を吹かせば、三田佳子が劇団『海』の看板女優を貫禄たっぷりに見せつける。役者稼業にすれた感じを違和感なく出す先輩役の三田村邦彦、初々しさ漂う新人・高木美保、そして舞台演出家を地で行く蜷川幸雄と、脇の固めもスキがない。アーウィン・ショウの『愁いを含んで、ほのかに甘く』からのアイデア借用という事実があったにせよ、荒井晴彦による脚本(澤井信一郎と共同)の説得力は光を失うことなく、まして『野菊の墓』(1981)で松田聖子に輝きを与えた澤井信一郎の昇り竜のごとき充実の監督第2作である。後の『早春物語』(1985)、『めぞん一刻』(1986)、『恋人たちの時刻』(1987)などの実績を思えば、すべては当然の結果だったといえるだろう。

同時上映だった大林宣彦監督作品『天国にいちばん近い島』(1984)のニューカレドニアの南国ムードとともに、公開当時の麗しい記憶に包まれるファンも多いであろう同青春&人間ドラマには、しかし今こそ注目しなければならない人物がいた。当時、薬師丸ひろ子が歌う主題歌《Woman~Wの悲劇~より》ばかりが目立ち、その男の存在が何かと稀薄に扱われていた事実はひたすらに口惜しい。音楽担当の久石譲である。

1950年12月6日、長野県は信州中野に生まれた久石は、4歳からヴァイオリンを習い始め、高校時代より作曲を学んでいる。程なく現代音楽の作曲家になることを夢見て、国立音楽大学へ入学。在学中には前衛音楽の演奏会を数多く開き、卒業後はミニマル・ミュージックの世界へと没入していく。紆余曲折の末、やがて現代音楽の分野に限界を感じると、つぎに一転してポップスのフィールドへと身を投じていくわけだが、その際に「売れなければ正義ではない」と肝に銘じたという逸話は彼らしい性分の表れだろう。その辺りをインタビューの席で水を向けると、本人は笑ってうなずいていたものだが、そういった強い意志が結果となって大きく実を結んだのが、1984年という年だったのではないか。

そこからさかのぼること2年。1982年10月に久石は『インフォメーション』というオリジナル・アルバムを作った。その発売元であるジャパン・レコードが徳間グループの系列の会社であったことから、準備段階にあった『風の谷のナウシカ』(1984)のイメージ・アルバム制作への参加が決まったという。結局、それが宮崎駿、高畑勲両氏の納得のいく仕事となり、やがて映画本編の音楽も担当。周知の通り、大ヒットとなった。80年代の初頭から映画、TVの仕事をこなしてきた作曲者であったが、世間一般に広く名前が広まったのはこの作品の成功からである。久石自身も出発点としての認識が強いのだろう。これ以前の映像作品についての記載が作品リストから外れることが多いのも象徴的である。

『風の谷のナウシカ』の成功は、何より久石自身の自信を呼びさました。当然各方面から押し寄せた依頼を、作曲者は慎重に検討する段にはいっていった。成功を成功に、自信を自信に結び付けるためである。その辺りの意識については、自伝的エッセイ集『I am/遙かなる音楽の道へ』(1992・メディアファクトリー刊)に詳しい。いわく「下からコツコツ上がっていくのは面倒、やるからにはトップから仕事をしていきたい、僕はそう思っていた」。そして「薬師丸ひろ子の映画の仕事がやれたらいいな」と考えているところへ来たのが『Wの悲劇』だった。澤井信一郎との出会いである。

とにかく久石譲といえば、宮崎駿、北野武、大林宣彦という”御三家”との仕事が取り沙汰される。確かに、彼らとの共同作業によって、作曲者は映画音楽の可能性を切り開くことができ、同時にその成功によって名声を獲得してきた。だが、そればかりではない。そればかりで判断してはいけない。特に実写作品の仕事という点からいえば、北野武や大林宣彦よりも早く久石に映画的な目覚めを誘ったのは、澤井信一郎にほかならないのだ。

久石の登板の背景は明らかにされていない。無論『風の谷のナウシカ』の成功に事が起因していることは確かだろうが、恐らく角川春樹事務所、ないしは配給の東映サイドからの推薦によるものだろう。久石は澤井信一郎の第一印象を「小柄でやさしそうな印象」とし、映画については「オーソドックスな作品」「映画のイロハがちゃんとある」と前述の自伝に書いている。幼少のころより映画館通いを欠かさなかった作曲者は、てらいのない伝統的な手法の演出による作品を歓迎した。澤井のスタイルに敬意を払いつつ「僕の作曲も、オーソドックスな正統な姿勢」で臨むことにし、「奇を衒った入れ方をしたり、ファッション的なBGMにしたりするのではなく、きちんとドラマに参加した音楽にする」(自伝の記述より抜粋)と決める。作曲者なりの澤井とその作品への”正義”だろう。

久石のそんな方法は、まさに的確であった。ムダの少ない音楽の付け方だ。必要とされるべきところへ必要なだけ盛り込む。ことさらに音に厚みをつけない。ミニマル、エスニック、ロック、オーケストラ音楽など、さまざまなスタイルが並んだ『風の谷のナウシカ』と比べて、それはある種地味ではある。しかし、そんな宮崎作品の後だったからこそ、映画の基本に立ち返る澤井との仕事は、必要な”リハビリテーション”ではなかったか。大きな仕事を待っていた作曲者が『Wの悲劇』という題材に巡り合ったのは、偶然的な一方で、運命的にして必然的な事の次第だったと思わずにいられない。フェアライト(サンプリング・マシンの一種)によるサウンドをフィーチュアしながら、ストリングス、ハープ、ピアノ、それにいくらかの木管と打楽器を絡めた劇中の音楽が、やがてクライマックスのカーテンコール場面でダイナミックな感動の爆発を迎えるには、そういった久石の背景を思えば、なおのこと納得できる部分があろうというものだ。

また、フェアライトという”楽器”を得たという意味では、その後の久石の映画音楽作品の”原型”ともいうべき音色の数々が見受けられるのも興味深い。例えば、冒頭の三田静香(薬師丸ひろ子)と五代淳(三田村邦彦)の暗がりの会話場面で流れるヴォイス・サンプリングによるサウンドは、『ふたり』(1991)や『はるか、ノスタルジィ』(1992)といった大林作品に有名だろう。フェアライトを初めて使った『風の谷のナウシカ』と合わせて考えれば、やはり1984年という年は作曲者にとって重要な分岐点だったといえる。

自伝で久石は続ける。「澤井さんは非常に音楽に対してもこだわりのある人で、たとえば、劇中の喫茶店や舞台で流れる音楽と、映画音楽というのをはっきり分けて考える。そうしないと、差が出てこないという。ほとんどの人は、そういうことにはこだわらない。そういう意味でのこだわりを最初に教えてくれたのは、澤井さんなのだ」。現実音と劇中音楽の使い分けは、基本中の基本である。そういうことを現場で一から知ることになった経験は、作曲者にさらなる飛躍を約束したといっても過言ではない。何よりもそれは、その後の活動が物語っているだろう。良き信頼関係に結ばれた澤井と久石は、以後も『早春物語』(1985)、『めぞん一刻』(1986)、『恋人たちの時刻』(1987)、『福沢諭吉』(1991)へとコンビをつなげていった。ジャンルの差こそどうあれ、そのすべてが青春映画である。虚構の青春ドラマの中で、飽くことなき音楽的試行を繰り返してきた名手二人にとって、『Wの悲劇』はまさに輝ける旅立ちのモニュメントとなった。

1998年5月27日 賀来卓人

(1998年再販盤 CDライナーノーツより)

 

 

久石譲 『Wの悲劇 オリジナル・サウンドトラック』

(オリジナル・ジャケット)

 

Wの悲劇 再販

(1998年7月25日 CD再販 ジャケット)

 

※2013年再販盤はオリジナル・ジャケットが採用されている

 

1. プロローグ
2. 野外ステージ
3. 冬のバラ 歌:薬師丸ひろ子
4. 女優志願
5. 劇団「海」
6. Wの悲劇
7. Woman~Wの悲劇~より 歌:薬師丸ひろ子
8. 危険な台詞
9. 静香と摩子
10. ジムノペディ第1番~レクイエム~サンクトゥス~カーテンコール I
11. カーテンコール II

音楽:久石譲

「冬のバラ」
作詩:松本隆 作曲:呉田軽穂 編曲:松任谷正隆

「Woman~Wの悲劇~より」
作詩:松本隆 作曲:呉田軽穂 編曲:松任谷正隆

ジムノペディ第1番
作曲:エリック・サティ 編曲:久石譲
レクイエム
作曲:ヴェルディ 編曲:久石譲

 

Disc. 久石譲 『ふたり鷹 音楽編 1 MUSIC SELECTION 1』

1984年11月21日 LP発売 C25G0362
1984年11月21日 CT発売 25P-7351

 

フジテレビ系列アニメーション「ふたり鷹」
1984年9月27日~1985年7月12日 放送

原作:新谷かおる 音楽:久石譲

 

主題歌
オープニングテーマ – 『ハートブレイクCrossin’』
エンディングテーマ – 『サヨナラを言わないでくれ』

両曲
作詞 – 売野雅勇 / 作曲・編曲 – 芹澤廣明 / 歌 – 陣内孝則

 

 

(LPジャケット / LP盤)

 

 

A1. ハートブレイク Crossin’ Heartbreak Crossin’ (オープニング主題歌)
A2. サーキット・ライダー Circuit Rider
A3. 沢渡 鷹 イメージテーマ TAKA SAWATARI Image Theme
A4. 東条 鷹 イメージテーマ TAKA TOUJYOU Image Theme
A5. デッド・ヒート Dead Heat
A6. 流火 イメージテーマ RUI Image Theme
A7. トワイライト・フリーウェイ Twilight Freeway

B1. モーニング・タウン Morning Town
B2. 緋沙子 イメージテーマ HISAKO Image Theme
B3. 美亜 イメージテーマ MIA Image Theme
B4. コンクリート・ツーリング Concrete Touring
B5. テンション Tension
B6. ラスト・スパート Last Spurt
B7. サヨナラを言わないでくれ Don’t say good-bye (エンディング主題歌)

A2-A6. 作曲・編曲:久石譲
A1. 作詞:売野雅勇 作曲・編曲:芹澤廣明 歌:陣内孝則

B2-B6. 作曲・編曲:久石譲
B9. 作詞:売野雅勇 作曲・編曲:芹澤廣明 歌:陣内孝則

 

Disc. 久石譲 『バース BIRTH』

久石譲 バース birth

1984年作品

 

1984年 OVA作品 「バース BIRTH」
アニメーションディレクター:金田伊功 音楽:久石譲

 

 

「バース イメージアルバム」

1983年5月1日 LP発売 JBX-25014
1983年5月1日 CA発売 VCK-6069

バース LP 1

(LPジャケット)

 

1. バースのテーマ
2. 夢見草
3. イノガニック神殿
4. 聖剣
5. ラサの夢
6. 宇宙
7. フローター・バイク
8. 砂龍
9. アーリア
10. ザックスの戦士

 

 

「バース オリジナル・サウンドトラック ~音楽篇」

1984年7月21日 LP発売 JBX-25050
1984年7月21日 CA発売 VCK-6120

バース LP 2

(LPジャケット)

 

1. 風をあつめて
2. バースのテーマ (OVA Remix)
3. マイ・ロンゲスト・ロード
4. 未知なる光の
5. クライシス
6. フローター・バイク
7. ロマンチック・ベビー
8. ザッツ・ロマン
9. モノアイ・パニック
10. 熱き心に
11. イノガニック・タワー
12. ソウル・シャワー
13. いざない
14.ザックスの戦士

 

 

1994年3月24日 CD発売 VICL-23071

久石譲 バース birth

 

 

 

ビクター・アニメ『殿堂ツイン』シリーズ 17 「ウィンダリア/バース」
映像と音楽はここまでひとつになれる!

 

『殿堂TWIN 17 ウインダリア/バース (2 CD)』

1999年6月23日 CD発売 VICL-60433~34

 

※ここでは久石譲音楽担当による「バース」、本作品DISC2のみ記載

 

バース/金田伊功(イメージアルバム)
1. バースのテーマ
2. 夢見草
3. イノガニック神殿
4. 聖剣
5. ラサの夢
6. 宇宙
7. フローター・バイク
8. 砂龍
9. アーリア
10. ザックスの戦士
オリジナル・ビデオ・アニメーション「バース」 音楽篇
11. 風をあつめて
12. バースのテーマ (OVA Remix)
13. マイ・ロンゲスト・ロード
14. 未知なる光の
15. クライシス
16. フローター・バイク
17. ロマンチック・ベビー
18. ザッツ・ロマン
19. モノアイ・パニック
20. 熱き心に
21. イノガニック・タワー
22. ソウル・シャワー
23. いざない

作・編曲:久石譲 (1~4, 6~9, 11~23)
作詞:冬杜花代子/作・編曲:久石譲 (5)
作詞:荒井まゆみ/作曲:謝花義哲/編曲:久石譲 (10)
歌:ちさ (5)/シャバナ (10)
演奏:ザ・バース (1~4, 6~9, 11~23)

※複数作品をオリジナル音源から復刻の為、DISC2-3,7とDISC2-21,16は同一音源を使用しています。また”バース 音楽篇”のオリジナルLPには「ザックスの戦士(DISC2-10と同一音源)」が収録されておりましたが、今回はCDの収録時間の限界を越えるため割愛しました。ご了承ください。

 

 

Disc. V.A. 『機甲創世記モスピーダ Vol.3 ライブ・アット・ピットイン』

1984年6月21日 LP発売 JBX-25047
1984年6月21日 CT発売 VCK-6113

 

1983年 フジテレビ系アニメ放送 「機甲創世記モスピーダ」
音楽:久石譲

放送期間:1983年10月2日~1984年3月25日
放送時間:毎週日曜日9時30分~10時(関東地区)
放送局:フジテレビ系
放送話数:全25話

 

 

久石譲 機甲創世記モスピーダ 1-3

 

 

 

機甲創世記モスピーダ ライブ・アット・ピットイン

(LPジャケット)

 

1.めざめ
2.Love Tonight
3.荒れ野へ
4.愛の小石
5.虹の彼方に
6.ロンリー・エラント
7.スターダスト
8.DREAM EATERS
9.プリテンド
10.ブルー・レイン

 

Disc. 久石譲 『風の谷のナウシカ ドラマ編 風の神さま』

1984年4月25日 LP発売 ANL-1901~2
1984年4月25日 CT発売 38AN-1
1989年2月25日 CD発売 24ATC-176~7
1993年7月21日 CD発売 TKCA-70135

 

1984年公開 スタジオジブリ作品 映画「風の谷のナウシカ」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

 

本作品は映画本編を映像なしの音声のみで聴く作品である。BGMはもちろんセリフや効果音などもそのまま収録されている。

 

 

不幸な時代でもナウシカは存在します 宮崎駿監督・談

この作品の音響監督を斯波重治さんにひき受けてもらって、よかったと思ってます。声優さんと話す時に、あれだけ言葉を持って意味を語る人はいないですよ。音響効果の人たちも遠距離マラソン・ダビングをよくやってくれました(笑)。また、久石譲さんが先行してイメージレコードを製作してくれたので、音楽を考えるのに非常に助かりました。

ナウシカって少女は変な子なんです。蟲と人間を区別しないんですよ。もうちょっとで蟲の世界へ行ってしまいそうで、だけどギリギリのところで人間世界にとどまっている人物です。髪の毛が赤いのは-クラリスや小山田マキの血統だと言われるんだけど(笑)。-黒はラナでやっちゃってるから。金髪なんかだと人種が確定されちゃうでしょ。赤なら日本人にもいるしね。ホントは肌の色も、もっと濃くしようという意見もあったけれど、これはやめました。

城の斬り合いでも人を殺してしまうんですよね。でも、幸いなことに、うれしそうな顔をしていないでしょ。でも、杖は使っても刀では斬ってないんです。刀は持たせたくなかった。ナウシカは刀を手にしたけど、ユパが割って入らなくとも、刀を使うことはなかったでしょう。そういう人だと思います。

……これは、むずかしい作品でした!(嘆息)

彼女は最終的には、世俗の幸福は得られない人です。たとえば、自分が死ぬ時に、気に入っている娘に、自分の愛する男の子どもを生んでくれと平気で頼んじゃうような、嫉妬とかいう感情が最終的には無くなってしまうタイプじゃないかと思う。

現実にナウシカのような少女がいたら、たしかに集団から疎外され迫害されるでしょう。だからと言って、なぜ、フィクションの世界のこういうキャラクターまで、みんなは躍起になって否定しようとするんでしょうね。こういう人間、みんなキライですか?

昔の物語の主人公は単純明快でした。でもそれを見ていた人々が単純明快だったわけではないですよ。やっかみやら、コンプレックスやら、イジイジしているのやら、色んな人間がいて、そうじゃない主人公を見て、こういう風にやれたらなあ、とか思ってたわけでしょ。

そんな冒険物語を読んでね、人をいじめてばっかりいたような奴が、いじめんのやめたかっていうと、それは嘘ですよ。それとは全然、別なことなんですよ。人間ってのは実に不思議なもんで、自分は悪役のほうに似てるとは思わないんだから(笑)。

いまは、そういう意味では、不幸な時代なんだと思います。時代のせいにはしたくないんですけど、自分の身のまわりにいるイヤな奴とかそんなのを登場させて、作品を作ってもしょうがないですよ。最後に必要なのは人生を肯定していく活力です。だから、僕の作品の主人公みたいな人間はいないと言われると、すごく腹が立ちますね(笑)。

構成 by 鳴海丈 59年3月12日

(CDライナーノーツより)

 

 

サウンド(秘)情報

★最初の腐海のシーンで、「王蟲の~」というナウシカのセリフが2回つづくが、アフレコに立ち会っていた宮崎監督は、これを聞いて、「これが本当のオーム返しだな」

★アテレコは2月下旬に赤坂の新坂スタジオで、中1日休んで、4日間にわたって行われた。総勢26名の声優さんが出演しているが、4日間通してスタジオに通ったのは、ナウシカ役の島本須美さんだけである。

★登場人物が防瘴マスクをつけているシーンでは、実際にマスクをつけてアテレコが行われた。これは1個13円の紙コップに50本100円の輪ゴムをつけたもの。底の部分に星形の切れこみがいれてあり、声が響きすぎないように中にガーゼが張ってある。これをつけた島本さんは、さかんに「まるでブタみたい!恥ずかしいっ!!」

★音響監督は「科学忍者隊ガッチャマン」「未来少年コナン」「うる星やつら」などのベテラン、斯波重治さん。俳優の経験がる斯波さんは、「うる星~」では時々、ガヤのシーンなどで声を入れているそうだ。なお、「ナウシカ」と同時上映の「名探偵ホームズ」も斯波さんが録音を担当している。

★風の谷の少年役で出演している鮎原久子ちゃんは、「ラジオアニメック」のレギュラー。自分の出番を待っている時に、出演者に挨拶をしてから「番組を聞いてくださいね」としっかり宣伝をしていった。

★宮崎監督と高畑勲プロデューサーは、4日間、アテレコに立ち会った。いつものクセで宮崎監督は、終始、椅子の上にアグラをかいたままだった。

★「ナウシカ」にはヒゲのある人物が多く登場し、口の動きが見えないので、アテレコがむずかしい。ユパ役のベテラン納谷悟朗さん、大型船墜落のシーンでセリフが合わず、「あの最後の口がパカッと開くのがおかしい」それは木の葉です、と教えられて、「口に見えたんだよ…あっ!そうか!ヒゲで最初から口は見えないんだ!!(笑)」ナウシカの父、族長ジル役の辻村真人さんは、城おじのニガもアテしている。また、トエトと少女C役の吉田理保子さんは、宇宙船に避難する村人の中の老婆もアテた。

★少女時代のナウシカの演技を宮崎監督は絶賛している。父親を殺されて逆上、立ち回りになった時の気合もすごいが、斯波さんは島本さんに「獣になってください」と指導したそうだ。

★宮崎監督は好きなマンガ映画のひとつにソ連の「雪の女王」をあげているが、これを公民館で1回しか観ていないという。「映画を2回観ると、自分のイメージがふくらみすぎていて、なんか、ガッカリすることがあるでしょ?でもね、自分の心の中でふくらんだイメージというのは、明らかに最初に見た時の感動にもとづているわけ。だから、僕はそのイメージを大切にして、何度も同じ映画を観たりしません」そのかわり、公民館で録音してきたテープは飽きるほど聞いたそうだ。「ナウシカ」を劇場で1回しか観なかった人も、このCDは何回も聞いてください。

END

(CDライナーノーツより)

 

 

《LP盤初回特典》
・島本須美ポートレイト
・B2ポスター
・AR台本
・4頁カラーグラフ

風の谷のナウシカ ドラマ編 LP

(LPジャケット)

 

風の谷のナウシカ ドラマ編

DISC 1
・風使いの娘
・風の谷

DISC 2
・風と人々
・風の神さま

 

Disc. 久石譲 『シンデレラ迷宮 イメージアルバム』

1984年3月 LP発売 CX-7155
1984年3月 CT発売 CAY-670

 

原作:氷室冴子 音楽:久石譲
ジャケットイラスト:藤田和子

 

氷室ファン待望のイメージアルバム

ミント・エージのシンデレラたちに贈る氷室ファンタジーのオリジナルサウンドトラック!

 

 

録音を終えて 久石譲・談

Q.原作を読んで、どんな印象をうけました?

Joe:
すごく変った物語だと思いましたね。ああいう設定ってあまりないでしょう。だから自分の持っている音楽性の中でどの方向からアプローチしようかと考えた時には、現実じゃない、という所から絞っていきましたね。非現実的なものをシンプルにやる、そしてそれをこの小説の読者である若い女の子たちの感性に最もフィットするようにやるにはどうしたらいいかと考えました。

Q.非現実的なものを表現する上で、具体的にはどういう方法をとったのですか?

Joe:
これは夢の中の物語で、見方によっては非常にビョーキしてる世界だよね。だから、ミニマル・ミュージックという、小さなパターンを繰り返して作っていく手法を使って、一種不訶思議な時間感覚を創り出そうと思ったわけです。もうひとつのポイントは、全体にオルガン・サウンドを中心にしたことかな。

Q.原作には、白鳥の湖とか白雪姫とかのパロディがいっぱいでてきますが、そのあたりはどのように考えたのですか?

Joe:
白雪姫、白鳥の湖、オーロラ姫、ジェイン・エア、そういったテーマが全部有名だったら、それをうまくパロディにして全く違った風に作っていく方法もあったかもしれません。実は《緋と黒の舞姫》では白鳥の湖のモチーフをちょっと出してるんだけど、全部のメロディをキチンと使えるんでなければ、パロディにする意味が無いですからね。それに個々のキャラクターを音楽的に表現する段になると、この小説はそれぞれの人物が実はこんなに暗かった、実はこんなに悲惨だったっていう話だから、単純なパロディでは描ききれなかったですね。

Q.登場人物の中で特に好きなキャラクターは?

Joe:
好きというか、やりやすかったのは、《待ち続ける女》のジェイン・エアでした。ヨーロピアン、それも戦前のドイツの暗い酒場、みたいなイメージが最初からあって、デカダンス、のような感じでやってみようということで一番最初にメロディが出来上りました。

Q.全曲を録音し終って、一番印象に残っているのはどの曲ですか?

Joe:
勿論みんな気に入っているけれど、《シーラカンスの夢》は中でも一番満足していますね。あの曲ではテープ・ループという方法を使いました。アーと歌った声をテープに録音し、それをぐるっと回して秒数の異なる何本かのエンドレス・テープを作り、それを重ねあわせると非常に微妙な色合いがでる、という手法なんですけどね。

Q.アルバムが完成しての感想をひとつ。

Joe:
かなり常識からはずれたような音作りをした気がする、あまり意図はしなかったんだけれど。例えば、1コーラスがあって2コーラスがある、すると普通はその間に間奏という部分があって間奏のメロディがあるんだけど、このアルバムではあまりそういうことはしていない。ごく自然にやったことが、世間で言う、ビョーキしてますね、という音に近かった、しかしそれも決して暗くならなかったのが救いなんじゃないか、と本人は自負しているわけです。

(LPライナーノーツより)

 

 

楽曲解説

SIDE 1

シンデレラ迷宮
《シンデレラ迷宮》のテーマ曲。印象的なイントロと共に、このイメージ・アルバムの幕が上る。コンピューターを使ったシンプルなデジタル・リズムの上に、美しいメロディが静かに奏でられてゆく。クラシカルな音楽を”いま”の感覚で捉えなおした佳曲といえよう。この物語全体に漂う一種不訶思議なファンタジーを強く感じさせてくれる。

リネの夢
この物語そのものであるところの《リネの夢》のテーマ。現代音楽の手法であり、クラフトワーク、YMO等、近年のテクノ・ポップ・グループに大きな影響を与えた〈ミニマル・ミュージック〉(パターン・ミュージック)-最小単位の音のパターンを繰り返す音楽手法-を使い、”夢”の不思議な時間感覚を捉えている。この手法はアルバム全体を通して、非現実を象徴する音型として、何ヶ所かで使われている。

王妃の孤独
白雪姫の継母たる王妃のテーマ。バロック音楽の大聖堂のオルガンを思わせる重厚な響きに、単音のピアノが重なっていく。王妃の高貴さ、その運命のかなしさを淡淡と綴る。

緋と黒の舞姫
《リネの夢》の音型を使ったイントロの中から突然強烈なリズムが踊り出る。〈蒼ざめた湖〉のほとりに住む緋と黒の舞姫オディールのテーマ。途中、ストリングスの音色で、どこかエキゾチックな妖しいオブリガートがメロディに絡み合う。オディールは、舞姫というより、緋と黒のディスコ・クィーン、くらいの強烈なイメージで捉えられている。藤田和子氏描くところのオディールのイラストも、可愛く、かなしみに満ちたディスコ・クィーンというった方がイメージに合っているのではないだろうか。(中間部で二度出てくる白鳥の湖のパロディ、分かりますか?)

シーラカンスの夢
舞台一転、オディールの部屋。深い湖の底-テープ・ループを利用した人声の、不気味な、そして何処か荘厳な響き、そしてオルガンの静かな響きの上に、ダルシマがメロディを奏でる。婚礼の祝宴のシーンに出てくる箱琴のイメージを、このダルシマの音色にダブらせて聞くのも面白いだろう。オディール編のこの二曲、緋と黒の舞姫の妖しい情熱と、深い悲しみの眠りを見事に描き分けている。

SIDE 2

シンデレラ・シンドローム
カルメン、ジュリエット、輝子-皆、自分を絶望の淵から救ってくれる王子が現われるのを、ただ身をすくませて待っているだけのシンデレラ症候群(シンドローム)患者だ。ここでは個々の人物のイメージは追わず、不気味さ、ビョーキっぽさを前面に出し、〈ハーレム・ディスコ〉とでも言った印象の曲になっている。

オーロラ姫の嘆き
暁の国の姫君ゼランディーヌのテーマ。作曲者久石譲のイメージの中では、このオーロラ姫のセクションが最もビョーキっぽい感じがあったようだ。変拍子のミニマル・ミュージックによるベーシックな音作りの上に、高音の美しいメロディがゆるやかに絡み合い、その一種の不均衡さが、オーロラ姫の精神のアンバランスを暗示するかのようだ。

待ち続ける女
決して来ることのない自分自身を永遠に待ち続ける狂気の女、ジェイン。世紀末、頽廃、デカダンスをキーワードにして、けだるいスキャット・ボーカルと何処かヨーロッパ風のアコーディオンが、ジェインの憂愁を映し出す。

ソーンフィールド館の炎上
ジェインのつけた火によって、ソーンフィールド館は次第に炎に包まれてゆく。激しいデジタル・リズムの上に、オルガンのアドリブが繰り広げられる。途中、前曲のジェインのモチーフがはさまり、女性の叫び声とともに、吸いこまれるようにして曲は幕を閉じる。

シンデレラ迷宮 (クロージング)
物語は大団円をむかえ、真暗になった画面にゆっくりとクレジット・タイトルがせり上ってゆく。《シンデレラ迷宮》のメロディが静かに流れ出す。ピアノとストリングスの音色が、やわらかくクロージング・テーマを歌い出す……

(楽曲解説 ~LPライナーノーツより)

 

 

LPライナーノーツにはその他に下記も掲載されている。

・シンデレラ迷宮のことなど 氷室冴子
・氷室さんのこと 藤田和子
・小説と音楽と 石原秋彦 (集英社コバルトシリーズ編集長)

 

シンデレラ迷宮 久石譲 sc 6

シンデレラ迷宮 久石譲 sc 3

シンデレラ迷宮 久石譲 sc 7

シンデレラ迷宮 久石譲 sc 4

 

 

シンデレラ迷宮 久石譲 sc

Side 1
1.シンデレラ迷宮
2.リネの夢
3.王妃の孤独
4.緋と黒の舞姫
5.シーラカンスの夢

Side 2
1.シンデレラ・シンドローム
2.オーロラ姫の嘆き
3.待ち続ける女
4.ソーンフィールド館の炎上
5.シンデレラ迷宮 [クロージング]

原作:氷室冴子
作・編曲:久石譲
演奏:Wonder City Orchestra
ジャケットイラストレーション:藤田和子

All Composed & Arranged by Joe Hisaishi
Performed by Wonder City Orchestra

Guest:
Keiji Azami (dulcimer)
Kimie Kanai (scat)
Masumi Sasaki (voice)

Recorded at Columbia Studio & Arcadia Studio , Tokyo  Jan. – Feb. 1984

 

Disc. 久石譲 『風の谷のナウシカ サウントドラック はるかな地へ…』

久石譲 『風の谷のナウシカ サウンドトラック』

1984年3月25日 LP発売 ANL-1020
1984年3月25日 CT発売 25AN-20
1984年6月25日 CD発売 35ATC-3
1993年7月21日 CD発売 TKCA-70133
2004年8月25日 CD発売 TKCA-72717
2018年11月3日 LP発売 TJJA-10009

 

1984年公開 スタジオジブリ作品 映画「風の谷のナウシカ」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

久石譲による、宮崎駿監督作品最初のサウンドトラック盤。イメージアルバム「鳥の人…」、シンフォニー「風の伝説」を基に新たに録音された映画用BGMを収録。収録は1984年2月。「ナウシカ・レクイエム」のヴォーカルは当時4歳の麻衣が担当している。

このアルバムも、CDについてはしばらく経ってから新ジャケットで発売された。 ※下部ジャケット写真はCDデザイン

 

 

美しい自然とナウシカ

美しい自然がまだ残っているから「自然を大切にしよう!」「自然破壊を食いとめよう!」と人々は声を大にして叫んでいる。美しい自然が完全に破壊されてしまったとき、人々は何と叫ぶのか?

映画「風の谷のナウシカ」で宮崎駿が設定した未来の地球の自然-腐海は美しさのかけらも残っていない世界だ。それどころか、有毒の瘴気を発する菌類の広大な森として描かれ、人々が立ち入ることすら許されない。おまけにそこには美しい小鳥のさえずりのかわりに、王蟲とかウシアブという気持ちの悪い巨大な蟲たちを棲まわせている。この蟲たちを、そして腐海を、この時代に生きる人々は、当然のことだが忌み嫌い「自然を大切にしよう!」などとは叫ばない。

だが、野心からこの腐海を焼き払い世界をわがものにしようと企む愚者がこの時代にも登場する。自然を征服し科学文明で繁栄をきわめようという現代人に通じるタイプである。ただ、現代とちがうのは、この時代に於いて腐海を焼き払うことは人類の絶滅を意味していたことである。

-ナウシカは人々の無謀なもくろみに絶望する。彼女だけがそのことに直感で気づいていた。ナウシカは身を躍らせ、メーヴェに飛び乗る。そのとき、奇跡が起こる。そして、人々の忌み嫌う、この腐海という名の自然と調和して生きていかない限り、人類の未来はないことをナウシカは人々に指し示す。もしかしたらその未来は、人類が生き永らえるのは、ほんの短い期間だけなのかもしれないというのに。

人間が生きてゆけるのはほんの少しだけなのか、それとも未来永劫につづくものなのかこの映画は語らない。作者自身、まだその答がわかっていないのだ。やがて再開されるだろう連載のなかで、作者自身、その答をさがすのだろう。

それはともかく、前半がかなりたのしげな映画だっただけに、この映画のラスト、宮崎駿の叫びは悲痛である。

(CDライナーノーツ より)

 

 

NAUSICAÄ STUDIO MEMO

●2月7日、TAMCOスタジオ入り。17日間、全60曲以上にのぼるサントラのレコーディングの始まりだ。映画公開は3月11日だからギリギリのスケジュール。ディレクターの荒川さんの顔もヒキつろうというもの。

●すでに監督の宮崎駿さん、プロデューサーの高畑勲さんとの打ちあわせは終了。基本コンセプトは、前作のイメージアルバム「鳥の人…」でいこうと決定している。このレコードに付属している楽譜をはじめとする、いくつかの主題を、シーンごとに割りふっていく。

●作業はビデオになったラッシュフィルムを観ながら行なわれる。まず曲を入れるシーンの長さをはかり、曲の秒数を決定。これをMC-4というコンピューターに入力すると、秒数にあわせて、「キッコッコッ、カッコッコッ」というリズムガイドが打ち出される。これに合わせて、シーンのイメージを曲にしていくという手順。久石さんの演奏が24チャンネルのマルチレコーダーによって、ひとつずつ重ねられていく。仕上がったところで、ビデオを再生しながら曲のチェック、スタッフどうしで意見を出し、手なおしを加えて完成。

●「たとえ、ラッシュフィルムでも、画面があると、曲作りにすごくプラスになるね」と久石さん。アニメに限らず、現在のサントラの曲づくりでは、画面なしで、シナリオと秒数だけで作曲してしまうケースが多い。ラッシュフィルムのおかげで、メーヴェの飛翔にあわせて曲想を換えていくといった、きめ細かい作業を行うことができた。

●後半の「王蟲との交流」「ナウシカ・レクイエム」に聞かれる女の子の声は、久石さんのお嬢さん、麻衣ちゃん(4歳)。幼年時代のナウシカと王蟲との交流あたたかく表現しようというわけ。電子楽器を中心とした、とかく無機質になりがちなスタジオワークでの曲作りに、ライブな響きが加わった。

●2月15日、C・A・Cスタジオにて、フェアライトCMIを使ってレコーディング。これはコンピューターをフルに活用した万能電子楽器とでもいうべきもの。価格1200万円ナリ。「王蟲との交流」での、コーラスとストリングス系の音がこれ。ウクツシイ!

●2月20日、久石さんの演奏による録音はすべて終了し、にっかつスタジオにてオーケストラ録り。ビデオの画面に合わせて、久石さんから指揮者に細かい指示が送られる。シンフォニー編アルバム「風の伝説」とは、また違った生の迫力をもった曲が仕上がった。

●2月21日から24日まで、一口坂スタジオでミックスダウン。24チャンネルの音を2チャンネルの音に組み上げていく。そして完成!

●久石さんは語る。「ナウシカとは、イメージアルバムから数えると3枚の作品、約8か月間にわたる長いつき合いでした。一つの作品に対して、ここまでじっくり取り組めたことは大変満足しています。しかも、「ナウシカ」という作品のすばらしさ!これは映画を観ていただければ充分に分かっていただけるでしょう。本当に充実した仕事でした」。

(CDライナーノーツ より)

 

 

「音楽のつけ方が普通の映画とは違う場所で入れているんですよね。感情の起伏につけるのではなく、状況的なものにつける。ユパが谷へ降りてくるシーンなんかで突然音楽が盛り上がっているでしょ?ああいうところで目いっぱい音楽を使って、そのかわりセリフの入るところや効果音の生きるところにはなるべくBGMを入れないというポリシーですね。

つまり、音楽をナウシカの目を通して入れているんです。ナウシカの感情につけるのではなく、ナウシカが見て感じるものに入れていったわけで、そうやってアニメの虚構の状況というものを浮き出させようとしたんです。わりと成功したんじゃないかと思いますよ」

Blog. 久石譲 「風の谷のナウシカ」 インタビュー ロマンアルバムより 抜粋)

 

 

「当時、宮崎さんはもう40歳を超えていたんですが、仕事のことをこんなに夢中になって話せるおじさんがいたんだった驚いたのを覚えています(笑)。例えばセル画のことをひとつ取っても、イスに飛び乗って説明したりしているんですよ。ただ、僕は当時、全くアニメについて知識がなかったので、宮崎さんがカリスマ的な存在ということすら知らなかった(笑)。もうその時点で、あの有名な「ルパン三世 カリオストロの城」を作っていたのに……。でも、結果的にはそれが良かったのかもしれないですね。気負わずに済みましたから(笑)」

久石さんの手掛けたイメージ・アルバムを高く評価した宮崎監督は、当時まだ新人だった久石さんを本編のサウンドトラックにも起用、ここから今や切っても切れない関係となった両者のコラボレーションが始まった。

「自分の中で、初めて明確に映画音楽というものを意識したのは「風の谷のナウシカ」だったんです。映画音楽と自分のソロ・アルバムなどとの最も大きな違いは、映画というのはあくまで監督の世界だということだと思います。ですから、音楽を作るときも、自分の思いだけではなく、監督がどういう世界を作りたいのかということがフィルターとして必ず入ってくるのですが、そのフィルターがすごい人であればあるほど刺激を受けて、そこから新しい自分を発見できるんですよ」

ちょうどそのころ、音楽制作の面でも大きな転機が訪れた。サンプラーとの出会いである。

「「ナウシカ」をやってきたときに、知り合いの人が持っていたFAIRLIGHT CMIを初めて使ったんです。「人間の声みたいな音が出るんだ」って聞かされていたんですが、”そんなワケない”って思っていた。ところが、実際に使ったら本当だったので驚きましたね。そして、「ナウシカ・レクイエム」という曲の歌の部分のバッグを全部FAIRLIGHTで作ったんです。その後、これからはきっとこういう機材がメインになると思って、千数百万円を出してFAIRLIGHTを購入しました。清水の舞台から10回くらい飛び降りるような気持ちでしたね(笑)」

Blog. 「キーボードマガジン Keyboard Magazine 1999年8月号」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

久石譲の初参加

音楽の久石譲は、当初イメージアルバム「鳥の人…」限定の担当であった。当時久石は、テレビシリーズのアニメーション用音楽を量産していた。それらは一様に、軽快なシンセサイザー音楽がメインであった。それは、久石の本業であったミニマル・ミュージックの傍らで取り組んだアルバイト的余技と言ってもよい。

当時、アニメーション化されていない人気漫画を題材としたイメージ音楽や音だけのドラマをアルバムとして発売する企画が流行していた。徳間も「アニメージュ・レコード」を立ち上げ、久石は様々な形で起用された。久石は徳間系列のジャパン・レコードからアルバムをリリースしており、近しい関係にあった。徳間発の人気漫画『アリオン』『バース』『ナウシカ』のイメージアルバムはいずれも久石に打診され、後二作が実現した。83年夏、宮崎は打ち合わせに訪れた久石に作品を熱心に解説し、請われて後日「腐海」「メーヴェ」など15個のキーワードを手渡した。久石の宮崎に対する第一印象は「素朴な手造りの人間性」であった。

「当時、作曲で苦労したことはない」と記す久石は、1カ月半でレコーディングまで終えてしまった。実質的には百数時間、スタジオに籠もって仕上げた。メイン・テーマであるピアノ曲「風の伝説」は、わずか30分で書き上げたという。久石が心がけたのは、シンセサイザーでありながら、「アコースティックで広がりのある音」に仕上げることであった。このため、民族音楽で用いられるダルシマ、ケーナなども使われている。

出来上がったアルバムは、静かなピアノ曲「風の伝説」、少女のハーモニー(当時4歳の久石の娘が歌唱)がかぶる「ナウシカ」のテーマ「はるかな地へ…」「遠い日々」、アップテンポのデジタル曲「メーヴェ」(本編未使用)「土鬼軍の逆襲」(本編の戦車シーンで使用)、エスニックな民族音楽風の「王蟲」(王蟲登場シーンで使用)など多彩な要素を備えていた。この段階で既に、ピアノによる主題曲、エスニ ック調、デジタルという後の久石・宮崎コンビ作の三大要素は出揃っていた。高畑と宮崎は久石のメロディを褒め称えた。二人の感想により、それまでサウンド中心に発想して来た久石は、初めてメロディ・メーカーとしての自分に才能に気づいたという。

本編音楽は既に別人に決まっていた。しかし、久石のアルバムを聴きながら制作を続けていた宮崎は、本編音楽に久石を強く推し、高畑もこれを尊重して関係者を説得。音楽の人選は大もめとなったが、84年早々最終的に久石に決定した。久石は、イメージアルバムの各曲を1月の2週間で「交響曲」に仕立て直し、再度アルバム 「風の伝説」をレコーディングした。おそらく本編には一段とスケールアップした音楽が欲しいという高畑・宮崎の意図があったのだろう。久石はオーケストラ50名の現場録音を初体験した。本編には、イメージアルバムとシンフォニーの双方が生かされた。

ほとんどのアニメーション作品は、完成画面が白紙の状態でシナリオと秒数に合わせて作曲が行われ、あとは編集で適宜各曲を切り刻まれて使用される。久石もそうした経験が多々あったが、今回は違った。多くはラッシュの未完成画面だったが、極力シーンに秒数を合わせて繊細に一曲一曲を仕上げた。17日間で全60曲以上を録音、2月24日に音楽は完成した。

久石は各シーンの選曲にもこだわりを見せた。冒頭部でナウシカが滑走し、メーヴェで谷へ帰るシーンにメインテーマが大音響でかぶる。これは久石が提案し、周囲を説得して実現したものだ。メインテーマの同様の使い方は、傷ついたウシアブと共にナウシカがメーヴェで空へ舞い上がるシーンでも見られる。しかし、こうした努力にもかかわらず、完成させた楽曲が「一部のシーンで切り刻まれて、とてもがっかりした」という。久石は、この苦い教訓を経て、さらに成長を遂げることになる。

久石は、『ナウシカ』のために約8カ月で3枚のアルバムを制作し計80曲以上を作曲した。「イメージアルバム」「シンフォニー」「サントラ」という連作によって、本編音楽を完成度の高いものに仕上げていくという贅沢な行程は、以降の宮崎作品の定形となっていく。これは、制作母体の徳間書店が音楽部門・徳間ジャパンを有していたこととも深く関わっている。とはいえ、売れもしない同類商品を販売ルートに出すことは許されない。『ナウシカ』の各アルバムは長期間ヒットチャートにランクインし続けた。長寿商品を生み出すほどの作品の生命力があって初めて連作が成立したとも言える。

(書籍「宮崎駿全書」より)

 

なお上の書籍には、主題歌に関する経緯について、使用したかった楽曲のこと、オリジナル主題歌制作を試みたこと、最終的にインストゥルメンタル「風の伝説」メインテーマが使われたことなどの詳細も記されている。

 

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やっぱり「ナウシカ・レクイエム」ですね。すごく楽しかった。バレンタイン近くのすごく寒い日で、当時の私は中耳炎がすごかったので、鼻もあんまり調子が良くなくて。歌えるのかな…と思いながら恐る恐る、なんとか歌いました。1人でレコーディングブースに入ったら、怖くて泣いてしまって…きっと周りの大人はドキドキしていたと思います。それで母に隣に入ってもらって、そしたら怖かったのがだんだんとものすごく楽しくなってきました。歌った後にブースから出て、これはこういう場面で使われるものなんだよ、と教えてもらったんですが、その場面のナウシカが悲しそうで…私、すごく楽しく歌ったけど大丈夫なのかな?と思ったのを覚えています。それが私のルーツというか、音楽に関する最初の記憶ですね。歌が凄く楽しかったこと、そして楽しくないシーンにも音楽があるということ。そういうことを感じて、また歌いたいな、と思いました。その年の暮れに、NHK児童合唱団のコンサートを聴きに行って、入りたいと思ったんです。

出典:【インタビュー】麻衣 with リトルキャロル Beautiful Harmony|クラシックのチケット ローチケ[ローソンチケット] より一部抜粋 2023.04.06
https://l-tike.com/classic/mevent/?mid=687602

 

 

鈴木:
イメージアルバムというのは高畑さんの発案。当時の日本映画って映像が出来てから慌てて音楽をやる。しかも期間にして1日か2日、それで映画音楽をつけなきゃいけない。つまり音楽を重視してこなかったんですよ。それを高畑勲という人は、その歴史を変えようと。音楽にたっぷり時間を作ろうと。最初自由にイメージして音楽を作ってもらう。それで図々しいこと考えたんですよ。作ってもらったなかに作品に合う良いものと悪いものがある。そうすると映画音楽を当てはめるまでに2回チャンスがある、音楽が充実する。それが高畑さんの考えだった。

数多くいる候補の中から「久石さんがいい」って高畑さんが言い出した。高畑さんの決め手は「久石さんは教養がある。要するにクラシック音楽の勉強をしてる。その基礎があると、映像に音楽を合わせてもらう映画音楽をつくるのにその教養が役に立つに違いない。それがないと注文しにくい。」って言ったんですよ。音楽を聴いて高畑さんはそれを発見するんですよ。周りの人たちがみんな反対するなか、そこが高畑勲のすごさ。ここで決まっちゃうんですもん、宮崎・久石コンビ。

イメージアルバムを作るときに、高畑さんが宮崎に頼んだのが、タイトルとイメージを文章にして渡すこと。こんな感じの曲があるといいというのを10個くらい書いた。だからこれも高畑さんが考えたこと。イメージアルバムを最初に聴いたのは僕と高畑さん。高畑さんは「いける」って言ったんですよ。その後宮崎に聴いてもらって一発で気に入った。当時はカセットテープ、宮崎はそれを一日中大音量で聴くわけですよ。しかも朝9時から午前4時まで同じテープを延々鳴りっぱなしなんですよ、周りは静かに作業してるなか。

久石:
当時はあまり時間がなくてスタジオにこもって作ってたんだけど、実は原作難しくて理解できなかった。今考えると逆に素晴らしいことなんだけど、いい映画ってそうなんだけど、説明を結構省いているから。これは何なんだろうと思ったことを徳間の関係者の人がその都度、これはこうです、これはこうです、って説明もらって。それで一応かたちになったっていう。

鈴木:
忘れちゃいけないのが、高畑さんは「オーケストラでやりたい」と。当時、日本の映画音楽でオーケストラなんてなかったですよ、編成小さかったですもん。結局、イメージアルバムと本編のサントラ、加わった楽曲もあるけれど基本は変わらなかったですもんね。それでいうと、最初からもう気に入っちゃったんですよ。

久石:
イメージアルバムの時が、当時流行りの打ち込みの音で作ってた曲もいっぱいあった。高畑さんはそこから、これがオーケストラに変わればもっといいというのを見抜かれたんですね。

Blog. NHK FM 「今日は一日”久石譲”三昧」 番組内容 -トーク編- 2018 より抜粋)

 

 

 

 

風の谷のナウシカ LP復刻

(LPジャケット)

 

久石譲 『風の谷のナウシカ サウンドトラック』

1. 「風の谷のナウシカ」〜オープニング〜
2. 王蟲の暴走
3. 風の谷
4. 虫愛ずる姫
5. クシャナの侵略
6. 戦闘
7. 王蟲との交流
8. 腐海にて
9. ペジテの全滅
10. メーヴェとコルベットの戦い
11. 蘇る巨神兵
12. ナウシカ・レクイエム
13. 「鳥の人」〜エンディング〜

 

EXECUTIVE PRODUCER: KOKI MIURA
ASSOCIATE PRODUCER: HISAO HIRATA
PRODUCED by JOE HISAISHI
DIRECTED by MASARU ARAKAWA
MUSIC COMPOSED AND ORCHESTRATION by JOE HISAISHI
RECORDING AND MIXING ENGINEER: MASAYUKI HAYASHI, TAKEO SUZUKI
RECORDING at TAMCO st. HITOKUTHI ZAKA ST. NIKKATSU at C.A.C st
TECHNICAL ASSISTANT: KAORU NASHIMOTO

 

Nausicaä of the Valley of the Wind (Original Soundtrack)

1.Nausicaä of the Valley of Wind – Opening theme
2.Stampede of the Ohmu
3.The Valley of the Wind
4.The Princess Who Loves Insects
5.The Invasion of Kushana
6.Battle
7.Contact with the Ohmu
8.In the Sea of Corruption
9.Annihilation of Pejite
10.The Battle Between Mehve and Corvette
11.The Resurrection of the Giant Warrior
12.Nausicaä Requiem 
13.The Bird Man – Ending theme

 

바람계곡의 나우시카 Original Soundtrack
(South Korea, 2007 CD) PCKD-20201

1.바람계곡의 나우시카
2.오무의 폭주
3.바람계곡
4.곤충을 사랑한 공주
5.크샤니의 침략
6.전투
7.오무와의 교류
8.부해에서
9.페지테의 전멸
10.부활한 거신병
11메베와 콜베트의 전투
12.나우시카 진혼곡
13.하늘을 나는 사람

 

Disc. 久石譲 『風の谷のナウシカ シンフォニー編 風の伝説』

久石譲 『風の谷のナウシカ シンフォニー編 風の伝説』

1984年2月25日 LP発売 ANL-1017
1984年2月25日 CT発売 25AN-17
1984年5月25日 CD発売 35ATC-2
1993年7月21日 CD発売 TKCA-70132
2004年8月25日 CD発売 TKCA-72718
2018年11月3日 LP発売 TJJA-10010

 

1984年公開 スタジオジブリ作品 映画「風の谷のナウシカ」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

 

「ナウシカ」の名曲の数々を、約50名のオーケストラで再現したシンフォニー編。シンフォニー・バージョンの制作は通常はサントラの後だが、「ナウシカ」のみはサントラ録音前の1983年11~12月に、主にイメージアルバムの曲をベースにして制作された。

このアルバムも、CDについてはしばらく経ってから新ジャケットで発売された。 ※下部ジャケット写真はCDデザイン

 

 

解説

人類の最終戦争があって1000年、地球には高度に発達した産業文明の遺産と歪んだ自然、そしてひとにぎりの人類が生き残った。そのような世界で、人類はどのように生きながらえ、どのような思想を持とうとするのか。再びなぞらえる人類の前史、そして繰り広げられる戦闘。人類は窮極的な最後の地球絶滅の危機を前にしてもみにくく争おうとする。そこに登場する木々を愛で虫と語り風をまねく伝説の少女ナウシカ。彼女は生きることの素朴な喜びを最も敏感に感じとれる少女として登場し、たったひとりの力でこの未来の地球を救おうとする-。

原作は「未来少年コナン」「ルパン三世・カリオストロの城」のアニメーション演出家・宮崎駿がアニメ雑誌「アニメージュ」(徳間書店)に好評連載中の(現在は中断)人気オリジナル・コミック。娯楽大作として、日常性に支配された昨今のマンガでは味わうことのできないダイナミックな世界を描き、テーマ的にも環境汚染・自然破壊・エネルギー消費など現代社会の抱える大問題とまともに対応したことで評判を呼んだ話題作である。

今回のこのCDは、「さすがの猿飛」「愛してナイト」の作曲家久石譲がその原作および宮崎駿の伝えるメッセージをもとに作ったイメージ・レコード集のシンフォニー盤である。

なおこのアニメ映画が、㈱徳間書店・㈱博報堂の製作、配給/東映㈱で’84春休みに公開され、大好評を博した。また、原作者の宮崎駿自身が脚本・監督を担当してこの映画化に取り組んだことでも注目を集めた。

(解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

ナウシカへのクラい日々・遠い日々… 久石譲

ナウシカ- 妙になつかしさを感じさせる響き。その名前の少女が活躍する物語は、未来の出来事であるはずなのに、ギリシア時代よりずっと前から育んだ人間のいわば手造りの歴史を感じさせます。「風のイメージなのです。ドッと吹くのではなくて山あいをスーッと抜けるような…」前作の時お会いした原作者の宮崎駿氏自身にもそういう素朴な手造りの人間性を感じました。

前作のシンセサイザーバージョンでは、約百数十時間スタジオにこもって、プロフィットリンドラム等を使って制作したが、その過程で一番注意した事は、いかにアコースティックで広がりのある音創りをするか、でした。そのために、ダルシマ、ケーナ、等の素朴なニュアンスを出せる楽器をブレンドしてみた。もともと民族音楽が大好き人間としては、それなりに納得ができた。

が、今回のオーケストラバージョンの話があったとき、はっきり言って悩みましたよ。それはシンセサイザーを使っていかにアコースティックで広がり…というコンセプトで作った楽曲をオーケストラを使ってそれをやれば、もろ当たり前の事になってしまうではりませんか!それはオモシロくないし、だいいちオーケストラなんてもう何年も書いていないから、あの恐怖の30段スコアを目の前にしたら卒倒するのではないか等々、色々言い訳を考えつつ、約2週間ピアノの前で、クラーイ生活が続きました。

んで終わって我想うに「やってよかった、コンビニエンス」 シンセのレコーディングと違ってオーケストラは、一曲一時間、約50名のメンバーはダビングなしの全員集合、どんどん録っていくのです。もうそれは大きなスタジオが小さく見えて肘を張れば隣りのバイオリンにぶつかるわ、トロンボーンのスライドをカッコよく延ばせば灰皿は飛ぶわ、ティンパニ叩けば珈琲はこぼれるわ、マイクは倒れるわ、はっきり言ってお祭りなのです。普段の一人コツコツ多重どんぶりとはエラく違うのです。興奮しましたよ。

今はトラックダウンも終わり、かなり良い音の仕上がりに満足しています。それはミキサーの大川氏を始めスタッフの皆さんの協力によるものです。

とにかく聞いてみてください。

(CDライナーノーツより)

 

 

音楽解説

〈風の伝説〉
一陣の風が静かに砂漠を渡っていく……。地球のたそがれの時代に生きたひとりの少女があった。美しく、やさしく、熱い闘志を心に秘め、蟲とすら語りあった鳥の人、ナウシカ。ピアノの旋律がナウシカのメイン・イメージを語っていく。その心を表わすボリュームあるオーケストレーション。風は語る。彼女の物語を。そして、風は聞く人の耳に、一筋の涼感を残して吹きずさっていく。ナウシカは、まさに風のような人であったというプロローグ。この曲が全アルバムのメイン・テーマとなっていく。

〈戦闘〉
進撃する軍団や巨大なメカニック、集団のイメージ。雄々しいだけでなく、哀しみ、苦戦、その中から立ちあがっていく戦隊と情感のあふれるダイナミックな曲が続いていく。その中で押しよせる打楽器の激しいリズムが戦闘のイメージをもりあげる。曲は静かなリズム感へ進み、勝利と平安の予感が。進撃の高まりをリズミカルにもう一度くりかえし、戦いは終局へ向かう。

〈はるかな地へ〉
静かに砂漠を歩く旅人…やがて、その旅人の心の中にわきあがる人々が群れつどい、平和と笑いがうずまく村のイメージ。民族歌的なメロディが広がっていくその心と、さらに大空を静かに飛翔していくナウシカのイメージがだぶっていく。戦うナウシカや人々の心のよりどころである、人々の住む村を予感させ、曲はもりあがっていく。曲全体のバックに、進む旅人の心の躍動が感じられ待ちうける見知らぬ土地への想いがあふれていく。ラストは、眼前にその土地が現われ、まるで朝焼けの中にうかびあがるような鐘のイメージでしめくくられる。

〈腐海〉
りん光発する腐海、ふきだす胞子、異形の者の住む世界-そのオドロオドロしたイメージ、蟲たちのリズム感のイメージが続く。次第に力強く広がっていく生命力のイメージ。リズムの中に、チカチカと光るりん光の処理が印象的。しかし、やがて異形のメロディーの中に、次第に清浄な、汚染された地球を清浄化する生命力があふれていることを、曲が変わり印象づけてゆく。この腐海と人間の折りあいをどうつけていくのか。このキーワードがナウシカであることは言うまでもないだろう。曲は明るさの予感を感じさせ、クロージングしていく。

〈メーヴェ〉
大空を駆けるメーヴェ。雲海をぬけ、視界が一気に広がっていく解放感。メーヴェに乗るナウシカのはずむ表情が手に取るように判るオープニングである。小気味よいメーヴェの飛翔ぶりのイメージが浮かびあがってくる。飛べ!ナウシカ。その自由な心のままに! 前から後ろから上から下から、アップに、ロングに大空を飛ぶメーヴェを空中撮影でとらえるようなリズミカルなビートが印象的。大空をかける主人公の飛翔に、人間の自由をオーバーラップさせる宮崎アニメならではのイメージ曲。

〈巨神兵〉
不気味な導入部-何か異形の、巨大な存在がそこにいる実感。それは次第に力を取り戻そうとしている。不気味なもりあがり。メカニカルな、あくまでも非人間的な作動のイメージ。巨神兵は、その作動を開始する。悪魔の心臓に炎が戻り、目が光をおび、腕が静かに上がり始める。起き上がり、動き始める巨神兵-いかなる者も止めることができない悪魔の復活を感じさせるパワフルなメロディーが続く。かつて地球を7日間で破壊しつくした悪魔の兵器、巨神兵-その破壊のリズム感は再び世界をのみこんでいくのか!? 『動』のイメージの後は、巨神兵の『静』のイメージ曲が続く。それは、腐海の中に残骸となって立ちつくす巨神兵のムクロのイメージか。もうこの悪魔の牙も地球には届かない。巨神兵でさえ悠久の時の流れの前には無力なのか。今はただ腐海の景色の一部として、眠るだけである……。眠る兵士の魂をかなでるメロディーで終幕となる。

〈風の谷のナウシカ〉
風の伝説の導入部から、「風の谷のナウシカ」のメロディーへと入ってゆく。弦楽器と木管楽器の情感あふれるメロディーがナウシカのすがすがしさとその心情をあますことなく伝えていく。

〈遠い日々〉
A面の”はるかな地へ”と同じリズムが静かにかなでられていく。その”はるかな地へ”とは、”平安なる地、理想郷”であることは明らかで、その平和のリズム感が、牧歌的な民族歌調のメロディーの中でくりかえしくりかえし、大きくなっていく。いよいよ、シンフォニー「風の谷のナウシカ」も終幕まぢかである。

〈谷への道〉
弦楽器のメドレーが、終曲を形作り、人間の、人々の、私たちの物語を伝える。風の谷とは、明日の人類の姿であると同時に、永遠に生きる”人間”の住み家である。あらゆる人々に門を開く風の谷。そこには暴力ではなく、やさしさが、生きていく力強さがあり、あふれる人々の喜びと哀しみ、人生がある。これこそナウシカの、我々の住む場所である。第1曲の”風の伝説”をくりかえし、ここにシンフォニー「風の谷のナウシカ」は終っていく。

解説/池田憲章

(音楽解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

風の谷のナウシカ シンフォニー編 LP

(LPジャケット)

 

久石譲 『風の谷のナウシカ シンフォニー編 風の伝説』

1. 風の伝説
2. 戦闘
3. はるかな地へ…
4. 腐海
5. メーヴェ
6. 巨神兵〜トルメキア軍〜クシャナ殿下
7. 風の谷のナウシカ
8. 遠い日々
9. 谷への道

 

Nausicaä of the Valley of the Wind – Symphony

1.The Legend of the Wind
2.Battle
3.To the Land of Faraway…
4.The Sea of Corruption
5.Mehve
6.The Giant Warrior – The Tolmekian Army – Her Highness Kushana
7.Nausicaä of the Valley of the Wind
8.The Distant Days
9.The Road to the Valley

 

EXECUTIVE PRODUCER
KOKI MURA
PRODUCED BY MASARU ARAKAWA, JOE HISASHI
COMPOSED AND ORCHESTRATION BY JOE HISAISHI
SONG BY
JOE HISAISHI
HARUOMI HOSONO(M-7)
MUSIC PERFORMED BY T.J.C ORCHESTRA
RECORDING AND MIXING ENGINEER
MASAYOSHI OKAWA
TAKEO SUZUKI(B-3)
RECORDING AT HITOKUCHI ZAKA STUDIO
ALBUM COORDINATION BY WONDER CITY I.N.C
A&R
AKIRA SHIMABUKURO

 

Disc. 久石譲 『機甲創世記モスピーダ Vol.2』

久石譲 機甲創世記モスピーダ2

1984年2月21日 LP発売 JBX-25032
1984年2月21日 CT発売 VCK-6097
1994年2月23日 CD発売 VICL-23064

 

1983年 フジテレビ系アニメ放送 「機甲創世記モスピーダ」
音楽:久石譲

放送期間:1983年10月2日~1984年3月25日
放送時間:毎週日曜日9時30分~10時(関東地区)
放送局:フジテレビ系
放送話数:全25話

 

 

機甲創世記モスピーダ LP 3

機甲創世記モスピーダ LP 4

(LPジャケット)

 

 

ビクター・アニメ・ミュージック”殿堂”シリーズ 8
さすらい戦い行くヒーロー達に明日はあるのか!?
久石譲のモスピーダ・ミュージック第2弾!

 

『機甲創世記モスピーダ Vol.II』

1994年2月23日 CD発売 VICL-23064

 

星目がちなヒーローへ愛をこめて
作曲家 久石譲

最初から申し訳ないことだが、正直なところテレビ・アニメーション(以下”アニメ”という)を、ほとんど見ていない。というよりも、テレビそのものを見る時間がない。僕の担当した番組も第1回目の放送は必ず見るが、その後は見ることが少ない。それは僕だけでなく、レコード会社のディレクター、現場のアニメーターの皆さんにしても同じではないだろうか?(と、勝手に思ってなぐさめている) したがってアニメについて語れることはあまりないのである。おわり、ジャン!……

お、まあ、いつもながら強引に終末を迎えるのだが、今回は違う。なにせ注文(御用聞きみたいだが)が、二枚目的に、だからネ、二枚目的にネ。(どういう原稿依頼の仕方ジャ)(編集部注、久石氏の二枚目とアルバムの2枚目をかけたのだが、氏は200字詰2枚のつもり)。で、さっきの話に戻るけど、はやい話が、夜の比較的早い時間帯(編集部注、「モスピーダ」は日曜日朝9時30分からの放映だが)に家にいて、テレビを見ているということは、仕事をしていないということだからネ。もう、仕事人間、ひいては日本の社会のりっぱな成人としては終わりなわけヨ。特に僕のようなフリーの人間にとっては、言うのもおぞましいが、暇=仕事がない=食べられないということだからネ。

それでさぁ、僕は見てないけどね、くどいけどホントに見てないけどネ、他のディレクターの人達はさぁ、ヤッパシ自分の番組は見てるといわないと、まずいんじゃあないの、立場あるからさぁ。(その割には…○○たりして!)

とにかく実際のところ、アニメの持っているパワーには驚いている。専門的にいうと昨今のレコード業界全体的には伸び悩みであるといわれているが、アニメだけは上昇カーブをえがいてるんですネ。(他には演歌とカラオケ・テープが好調) 最近のヒット・チャートを見てもアニメ作品が上位にランクされていたりして、これは以前には見られなかった傾向といえるんですヨ。

そして感心するのはアニメ作品の多さと複雑さ。これだけ多くの”星目がち”なヒーロー、ヒロインがいれば、名前を覚えきれないではないか、合体ロボット等にいたっては、何と何が組み合わせってどんな物になるのかパズルなみの複雑さになっていると、僕の頭はこんがらがっているのが、そこはそれ、ファンの皆さんが、それぞれご自分の感性で作品を選んで応援してくれるのでうれしくなっちゃう。

そこで、我が「モスピーダ」だが、またまた驚きました。Vol.Iはこの原稿を書いている12月20日現在、「オリコン」チャート(注、コンフィデンス誌TOP LP100)で第33位なのである。はっきりいって売れているのである。笑いがとまらないのである。アハハハ……。

この「モスピーダ」Vol.IIの音楽制作にあたっては内容的なことでの問題はほとんどなかった。タケカワ氏のテーマも番組にふさわしく、ダイナミックな曲で、アレンジも気に入っている。制作者側からの注文も「あまり子供っぽくなく、若者を中心に考えてもらって良い」ということで、気が楽だった。それからひとことでいえば、スタッフの音楽理解力が大変高いのである。(御世辞ぬきで) 我々が作った音楽をもとにストーリーを作ってしまうほどなのである。スタッフは、あの「マクロス」を制作したメンバーとほとんど同じといえば、皆さんも納得してくれるでしょう。

余談になるけれども、制作会社の竜の子プロダクションのあるところが、むかし僕が学生時代に住んでいたところで、打ち合せに時も非常にローカルな話題で盛り上がってしまった。角の喫茶店、駅前のケーキ屋さん、色っぽいおかみさんのいる料理店。赤ちょうちん……、青春してました。

ついでにもう一つ余談。しばらく前に某レコード会社を通じて、一通のファン・レターをいただいた。内容がすごい。「テクノポリス」「さすがの猿飛」から、僕のソロ・アルバムまで、ほとんど学術的といっていいような研究レポートなのである。アニメ・ファンらしい大学生からなのだが、返事を出そうと思いつつ、今だにビビって持ち歩いている次第である。

ああ、二枚目の予定あ、十枚目(編集部注、200字詰原稿10枚分)になってしまった!!

レコードをよろしく。

(CDライナーノーツより) ※当時のオリジナルLPと同一掲載

 

 

久石譲 機甲創世記モスピーダ2

1. ザ・ベトレイヤー
2. 若き戦士
3. 大地の風
4. 荒れ野へ
5. ドリーミー・シティー
6. SASURAI
7. 愛の涙
8. フレンズ
9. ロンリー・エラント
10. エンジェル
11. モスパダの歌
12. 軍靴の響

作詩:阿佐茜 (4,11)
作曲:久石譲 (1~3,5~12) 小笠原寛 (4)
編曲:久石譲
歌:松本美音 (4,11)
演奏:WHILE ROCK BAND (1~3,5~10,12)