Disc. 久石譲 『TBS系 日曜劇場 この世界の片隅に オリジナル・サウンドトラック』

2018年8月29日 CD発売

TBS系 日曜劇場 「この世界の片隅に」
原作:こうの史代
脚本:岡田惠和
演出:土井裕泰、吉田健
音楽:久石譲
出演:松本穂香、松坂桃李、村上虹郎、二階堂ふみ、尾野真千子、伊藤蘭、田口トモロヲ 宮本信子 他
放送期間:2018年7月15日 ~ 2018年9月16日(全9回)

 

ヒロイン・すずを演じる松本穂香が歌う「山の向こうへ」(作詞:岡田惠和 作曲:久石譲)を含むドラマを彩る音楽が収録されたオリジナル・サウンドトラック。

劇中歌「山の向こうへ」は8月12日先行配信リリースされる。

 

 

■ 久石譲コメント

このお話をいただいて原作を読み「あ、いい話だな」と思いました。監督やプロデューサーとの最初の打ち合わせでもありましたが、“すずのやさしさ”を感じられる音楽にしたいと思い、久しぶりにメロディを中心に作っていきました。昭和の時代ですから、ちょっと日本的なものとモダンなものがうまく組み合わされるといいなと思い、そのあたりも意識しました。呉や尾道、広島はよく行っていましたので、雰囲気はよくわかります。そういう点は少し影響があるかもしれませんね。自分としてはとても満足した仕上がりになっています。

私が音楽を提供して、その作品ができ上がって、うまく見てくれる人に伝わる、その手助けになればいいなと思います。

 

■ 松本穂香コメント

レコーディングは初体験なので、すごくドキドキしました。終わってほっとしました(笑)。

久石さんの曲と岡田さんの歌詞がとても合っていて、すずさんたちが暮らしている広島の江波や呉のちょっと昔の風景がふっと浮かぶような、優しい歌だなと思いました。

何度か歌わせていただいたのですが、最後のほうは、スタッフさんやみんなの顔を思い浮かべながら歌いました。歌っていて自分自身、優しい気持ちになれました。

久石さんが作ってくださった曲も、ドラマ全体の雰囲気も、とても優しく穏やかな時間が流れています。ぜひ、この歌を聞いて、ドラマもご家族そろって見ていただきたいです。

 

■ 佐野亜裕美プロデューサーコメント

子守唄のようにも、わらべ唄のようにも、労働歌のようにも聴こえる、ドラマオリジナルの劇中歌をつくりたい、その想いからスタートしました。

久石さんが素晴らしい曲をつくってくれ、岡田さんが素敵な詞をつけてくれました。松本穂香さんが一生懸命歌ってくれました。

この歌が皆さんの心に残って、いつまでも響いてくれるといいなと思います。

 

 

 

久石譲曰く「メロディを中心に作った」とあるとおり、とても親しみやすい聴いていて心おちつく楽曲が並んでいる。素朴なメロディを活かした素朴な音色たち。フルオーケストラではない小編成アンサンブル編成をとりながら、ティン・ホイッスルやリュートなど印象的な楽器が世界観をつくりあげる大きな効果になっている。また楽器そのものの音(音色ではなく楽器が音を出すためにうまれる音)がしっかり入っているものいい。呼吸感や空気感のようなもの音が生きている。ちゃんと存在している、だからこそリアルさが迫ってきてさらにせつない。

メロディを最大限活かすために、久石譲の持ち味のひとつ緻密な音楽構成がこの作品では極力おさえられている。メロディと複雑に絡み合う複数の対旋律を配置することなく、あくまでもメロディが浮き立つように構成されている。

また見逃してはいけないのが、通奏和音が少ないということ。わかりやすくいうとコード進行やコード展開をなるべく印象づけない方法がとられている。ストリングスでずっとハーモニーが鳴っている、ベース低音通奏と合わせて和音になる、これらを避けている。音楽としてはシンプルで余白のある聴き手がそのスペースにすっと入っていける心地よさがある(前のめりな音楽ではなく)。またメロディやひとつひとつの楽器を浮き立たせる効果もある。映像と音楽がうまく絡み合う効果もある。もっと突っ込んで考えてみると、テレビドラマ音楽に必要な切り取り使用つまり楽曲をあてる編集がしやすい。場合によっては数秒・数十秒しか使われないそのシーンにつけるドラマ楽曲。小節にしたら4小節から10小節程度ということもある。でも、この作品の楽曲たちはミニマル・ミュージックではなくメロディ中心。和音やコード進行といったハーモニー感を極力おさえることで、曲が展開している途中で楽曲が切り取られたという印象を与えない。このことに集中してドラマを見返してみたけれど、あれ、曲がぶつっと切れたなと思った箇所はほとんどない。

もっと言う。でもメロディがしっかりしているなら、メロディが途中で切れたっていう印象は受けるのでは? そう思って聴き返す。「この世界の片隅に」「すずのテーマ / 山の向こうへ」を例にとっても、なるほどすごい!メインテーマ「この世界の片隅に」は、ABCというシンプルなメロディ構成になっている。Aパートが1コーラスだけ流れることもある。Bももちろん。注目したのはメロディの最後の音、旋律の流れを追うと音が上がっていかない。音が駆け上がっていく旋律であれば、次に続いていく印象をうけるし、音が下がって終わっていれば一旦ここでひと呼吸、終われます着地できますとなる。挿入歌にもなっている「すずのテーマ / 山の向こうへ」は、ABというシンプルなメロディ構成で、これまたサビ(B)に行くまえのメロディの音は下がって終わっている。さあ、ここから盛り上がりますよ、という音が駆け上がってはいかないし膨らみを助長しない(伴奏もふくめて)。そんななか、二楽曲ともちゃんと盛り上がって終わりましたという印象を受けるのはCとサビ(B)がしっかり音域が高く広がって終わっているから。そう、どこを切り取られれても大丈夫なメロディ展開になっていたのは、パートごとに一旦ここでひと呼吸終われますよ着地できますよ、というかなり高度なテクニックがあったからではないか、そんな発見ができたならうれしい。

シンプルで素朴、高揚感をおさえる、聴き手に押し売りしない寄り添ってくれる音楽たち。この作品の音楽的世界観は、楽器や音楽設計によるものだけではない、メロディ一音一音に、パートごとの終止音となめらかなパートつながりによって成立している。

これはおそらく過去の久石譲テレビドラマ音楽とは一線を画する。24年ぶりのテレビドラマ音楽担当、その音楽的進化は計り知れない。なぜ今回この仕事を引き受けたのか。劇伴になりやすい(短い尺・効果音のような使われ方)、切り取られる編集に不満、そのくせ楽曲必要数が多い。以前なら頭をもたげていた懸念材料に自ら解決策を導きだしたという進化。ドラマ音楽につきまとう問題を払拭し見事クリアしてみせる技と自信があったから、テレビドラマ的使われ方をしたとしても”久石譲音楽”としてしっかりと世界観を演出できるという確信があったからだと思うと、末恐ろしくふるえる。ほかのテレビドラマ音楽にはない画期的な職人技。映画『かぐや姫の物語』やゲーム『二ノ国 II レヴァナントキングダム』などの音楽を経てその点と点がつないでいる線であるように思う。

 

「平和な日々」、軽快でコミカルな楽曲。重くなってしまう作品の世界を緩和するだけでなく、そこにはその時代活き活きと生活している人たちが確かにいた、ということを示してくれる。こういったサントラのなかでは味つけ的な楽曲も、場面やシーンの空気感や温度感によって、どの部分を切り取って使われてもいいように、楽器変え変奏まじえ、短いモチーフが効果的に展開している。

「愛しさ」、主要テーマ「すずのテーマ」の変奏版ともとれる双子性ともとれる楽曲。ドラマでどういった場面や人によく使われていたかあまり覚えていないが、すずに使われていただろうかリンに使われていただろうか。人物としての共通性や二面性、どちらがどちら側になってもおかしくなかったその時代の表裏一体。愛しさと哀しさが溢れてくる楽曲。

「不穏 ~忍び寄る影~」、とても重厚な楽曲だが、序盤の数小節だけ巧みに使われるなど、こちらもシーンによってうまく活用できる構成。また「不穏  <打楽器&弦バージョン>」は、打楽器パートだけを効果音のように使い良い意味での無機質・無表情な印象づけをしながら、緊迫感・緊張感・不穏な予感の演出に一役かっていた。映画『家族はつらいよ』シリーズ(山田洋次監督)の音楽でも随所に見られる、パーカッションを効果音のように使いながら旋律をもった楽曲として成立させる手法のひとつ。

「すずのテーテ / 山の向こうへ」、いろいろなバリエーションで聴くことができる主要曲。口ずさみたくなるような、鼻歌で歌いやすい音域で旋律流れるAメロと、感情をこめて歌いうたいあげたいBメロ(サビ)。このふたつの構成のみという潔いシンプルさながら、胸うつせつなさや印象に残るインパクトはすごい。誰が聴いても日本的、昭和の日本を感じるのはなぜだろう。ここあるのはザ・久石メロディと言われるもの、これこそが久石譲が長い年月培ってきたアイデンティティのひとつ。裏を返せば、「風のとおり道」も「Oriental Wind」も、久石譲が紡いできたメロディこそが日本人の涙腺にふれる日本的なものである、と言えてしまうことになる。またこの楽曲では、メロディとかけあう対旋律に五音音階的なフレーズを配置することで、モダンさを巧みに演出しているように思う。

 

テレビドラマに使われてサウンドトラック盤未収録の楽曲もある。「山の向こうへ  <インストゥルメンタル・バージョン>」に近いバージョンだが、ピアノとギターのみで2コーラス奏される。1コーラス目はピアノメロディ、2コーラス目も1オクターブ高くピアノメロディ。第4話中盤、第5話冒頭、第6話序盤、第7話終盤、第8話終盤、第9話序盤。短縮なしで一番たっぷり聴けるのは第6話。「山の向こうへ  <インストゥルメンタル・バージョン>」の冒頭部に近いけれど、譜面の上で他楽器を抜いてピアノとギターだけにしたというものではなく、メロディも伴奏も奏で方が異なる。短いシンプル曲だけど、サントラ完全収録してほしかった一曲。

 

この音楽作品をレビューするにあたって、聴いてうける感情や印象をどう分解できるのか、どう言葉で表現できるのか。少しマニアックに掘り下げたところもあるけれど、それはひとつの回答。頭で聴く音楽の楽しみ方もあるし新しい発見や聴こえ方もある。でも、純粋に心で聴いて素晴らしい音楽。

 

 

公式ピアノ楽譜集も発売される。

 

 

1. この世界の片隅に ~メインテーマ~
2. 平和な日々
3. 絆
4. すずのテーマ
5. 家族
6. この世界の片隅に ~時代の波~
7. 愛しさ
8. 不穏 ~忍び寄る影~
9. すずのテーマ ~望郷~
10. 愛しさ 2
11. 恐怖
12. 山の向こうへ  <インストゥルメンタル・バージョン>
13. 不穏  <打楽器&弦バージョン>
14. この世界の片隅に  <ピアノソロ・バージョン>
15. 山の向こうへ (唄:松本穂香)
ボーナストラック
16. 山の向こうへ  <カラオケ>

 

All Music Composed, Arranged and Produced by Joe Hisaishi

Conducted by Joe Hisaishi

Performed by
Flute:Mitsuharu Saito
Oboe & English Horn:Ami Kaneko
Clarinet:Hidehito Naka
Bassoon:Tetsuya Cho
Horn:Yoshiyuki Uema
Trumpet:Kenichi Tsujimoto
Trombone:Hikaru Koga
Timpani:Atsushi Muto
Percussion:Akihiro Oba
Harp:Kazuko Shinozaki
Piano, Celesta & Solo Piano:Febian Reza Pane
Lute:Hiroshi Kaneko
Tin Whistle:Akio Noguchi
Guitar:Go Tsukada (Track-15,16)
W.Bass:Yoshinobu Takeshita (Track-15,16)
Strings:Manabe Strings

Recorded at Victor Studio, Bunkamura Studio
Mixed at Bunkamura Studio
Recording & Mixing Engineer:Hiroyuki Akita

and more…

 

Disc. 久石譲 『二ノ国 II レヴァナントキングダム オリジナルサウンドトラック』

2018年6月6日 CD発売

2018年3月発売PS4 / PC ゲームソフト「ニノ国」シリーズ最新作のサウンドトラック。『二ノ国 漆黒の魔導士』(2010・Nintendo DS)、『ニノ国 白き聖灰の女王』(2011・PlayStation 3)にひきつづき本作も久石譲が音楽担当。

 

ゲーム音楽の枠を超えた最高傑作!!
久石譲が紡ぐ 王道ファンタジーRPGがここに!

(CD帯より)

 

Message
久石譲

「二ノ国 II レヴァナントキングダム」は前回につづき音楽を担当しました。日野さんとも気心が知れているし、すんなり作曲に入ることができたと思います。

ゲームの音楽は必要とされる曲数が非常に多く、繰り返し聴く性質のものなので、今回の楽曲をどうやってまとめるか考え、リズムを中心に全体を組み立てて作っていきました。

加えて今回は、前作に比べて音楽的なレベルを上げた知的なアプローチもしています。もちろんエンターテイメント性は大切にしたうえでのことです。東京フィルハーモニー交響楽団の熱演もあり良い録音ができました。

このサウンドトラックを聴いて、音楽と一緒に「二ノ国 II レヴァナントキングダム」の世界に浸ってもらえると嬉しいです。

(Message ~CDライナーノーツより)

 

 

ゲームプレイ音源よりも、広がりあるサウンドかつみずみずしい楽器の音色たち。さすがサウンドトラック用にマスタリングされた最高音質の仕上がりになっている。二ノ国II音楽はサウンドトラック盤でめでたく完結する。

それぞれの楽曲とも音の配置やバランスが見事に調整されている。「2.クーデター」はゲームプレイ音源ではループ用となっていたが、サウンドトラック盤は【1st トレーラー】音源で聴くことができた終部になっている。「8.苦闘」「27.滅びの王国」「28.闇の呪文歌」も終部が異なる。前提として繰り返し聴かれることを目的とした音楽づくりのため、どの曲も終部はフェードアウトや冒頭に自然に戻れるような接続的終部になっているなため、上の4曲はサウンドトラック盤ならではのはからい。

CDには”all composed by JOE HISAISHI”のクレジットはない。これについては下記の *at game release にてゲームソフト・エンドクレジットから詳細記している。

短い楽曲群ながら、ゲームには膨大な曲数を必要とするという久石譲の言葉とおり、実にクオリティ高くバリエーション豊かな全31曲がならぶ。今の久石譲だからこその曲想、音作り、ノンビブラートに近い奏法やソリッドなオーケストレーションなど、現代的な響きに溢れている。

ファンタジーというスタジオジブリ作品との共通点もあれば、戦いやフィールドがめまぐるしく変化していくというスタジオジブリ作品にはない世界感もある。そしてそれは音楽にも同じように言える。久石譲による二ノ国ワールドを音楽だけでも十分に楽しめる、渾身の作品になっている。

 

 

久石譲インタビュー、ゲーム音楽を聴いての各楽曲レビュー、印象的なエンディングテーマ、世界各国にゲーム本体特典として付属したCD盤やLP盤など。ゲームソフト発売後まもなく、サウンドトラック盤リリース情報のまえにまとめたもの。詳細はこちらに記した。

参考)

 

 

 

1. 二ノ国II メインテーマ
2. クーデター
3. 脱出
4. 戦闘開始
5. 別れ
6. 夢の中の少年
7. 広大な大地
8. 苦闘
9. フニャ
10. 危険な谷
11. ボスバトル
12. 勇ましき進軍
13. 神秘の森
14. 欲望の町
15. 希望
16. のどかな日常
17. 大海原
18. 水の都
19. 海底洞窟
20. 命運をかけた戦い
21. 切ない思い出
22. 進化の大都市
23. ファクトリー
24. 果てしない空
25. ネズミ王国の城下町
26. 守護神
27. 滅びの王国
28. 闇の呪文歌
29. ラストバトル
30. キングダム
31. 希望の未来

 

音楽:久石譲
オーケストレーション:チャド・キャノン 山下康介 久石譲
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
合唱:栗友会
指揮:久石譲

エンディングテーマ「希望の未来」
作・編曲:久石譲
リズム・アレンジ:ガブリエル・プロコフィエフ 松浦晃久 久石譲
ヴォイス:麻衣
コーラス:東京混声合唱団
パーカッション:和田光代
ケルティック・ティンホイッスル:野口明生
ハープ:堀米綾
ピアノ:鈴木慎崇
ストリングス:真部ストリングス

レコーディング&ミキシングエンジニア:小幡幹男
レコーディング・スタジオ:アバコクリエイティブスタジオ サウンドインスタジオ
ミキシング・スタジオ:サウンドインスタジオ
マスタリング・エンジニア:藤野成喜(ユニバーサルミュージック)
マスタリング・スタジオ:UNIVERSAL MUSIC STUDIOS TOKYO

 

初回封入特典:二ノ国II レヴァナントキングダム スペシャルステッカー ※全2種中1種ランダム封入

 

 

輸入盤同時発売

WORLDWIDE RELEASE JUNE 6TH 2018

Ni no Kuni II : Revenant Kingdom Original Soundtrack

1. Theme from Ni no Kuni II
2. The Toppled Throne
3. The Escape
4. Let Battle Commence
5. Leavetaking
6. The Curious Boy
7. The Great Outdoors
8. Into the Fray
9. Here Come the Higgledies!
10. Treacherous Valley
11. Boss Battle
12. To Arms!
13. Forest of Mysteries
14. City of Hunger
15. There is Hope
16. Carefree Days
17. The High Seas
18. Kingdom by the Sea
19. Deep Sea Cave
20. Fateful Encounter
21. Painful Memories
22. City of the Future
23. The Factory Floor
24. The Boundless Skies
25. In the Kingdom of the Mice
26. Kingmaker’s Theme
27. The Lost Kingdom
28. Dark Rite
29. The Final Showdown
30. Evan’s Kingdom
31. Happily Ever After

Performed by the Tokyo Philharmonic Orchestra 
Composed and arranged by Joe Hisaishi
Voice by Mai
31 tracks, 1 disc, 24-page booklet – English text

 

初回特典:二ノ国II 公式ミニ色紙 *先着限定

 

Info. 2018/06/06 「二ノ国 II レヴァナントキングダム オリジナル・サウンドトラック」CD発売決定!! 【5/26 Update!!】

 

Disc. 久石譲×辻井伸行 | 世武裕子 | 辻井伸行『羊と鋼の森 オリジナル・サウンドトラック SPECIAL』

2018年6月6日 CD2枚組発売

映画『羊と鋼の森』久石譲×辻井伸行によるエンディングテーマ「The Dream of the Lambs」を含むサウンドトラック+音楽集というCD2枚組。DISC1には久石譲×辻井伸行によるエンディング・テーマ「The Dream of the Lambs」、世武裕子による本編音楽を、DISC2には映画の中で主役の一部を務めるピアノ作品を、辻井伸行の演奏で完全収録した超豪華なスペシャル盤。

 

 

世界的作曲家で、映画音楽界の巨匠でもある久石譲がエンディング・テーマを書き下ろし、世界的ピアニストである辻井伸行がソロピアノを演奏!

映画『羊と鋼の森』(2018年6月公開)の世武裕子によるサウンドトラックに加え、映画に登場する主要なピアノ曲を辻井伸行の演奏で収録した超豪華オフィシャル・アルバム!

(CD帯より)

 

2018公開映画『羊と鋼の森』
監督:橋本光二郎
脚本:金子ありさ
音楽:世武裕子
出演:山崎賢人、鈴木亮平、三浦友和 他

 

 

映画『羊と鋼の森』エンディング・テーマ
久石譲 × 辻井伸行 The Dream of the Lambs

久石譲 | 作曲

ピアニストはいろいろなピアノに出会わなければならない。ピアノによってタッチがそれぞれすごく違います。調律師は求める音を表現してくれる、本当に大事な存在で、音は出さないけど立派な音楽家だと思います。そんな調律師を描いた原作を、オファーをいただく前に読ませていただきました。成長譚の美しくてとても良い話。だからこそ、綺麗なだけで終わらないように、映画の奥行を出せるように、シビアなミニマル的な部分とメロディアスな部分の交差する曲を作るように意識しました。

その曲を辻井くんと一緒に作ることができて嬉しく思います。古典的なスタイルをとりつつ、現代的な曲を作ったのですが、見事に弾いてくれました。辻井くんは本当に素晴らしいピアニストで、特にリズム感が凄いです。無駄なものが無いきちんとしたリズム。これを活かしたいと思って指揮をしました。演奏をしていて、とても楽しかったです。辻井くんとはまたぜひ一緒に演奏させていただきたいですね。

 

辻井伸行 | ピアノ

オファーをいただく前に原作を点字の本にしてもらって読んでいましたが、ピアノをやっている人なら皆さん興味のある話だと思います。曲にもたくさんのイメージがあったり、ピアノには壮大でカッコいいところがあったり、いろいろな面白いことが分かる素晴らしい物語です。そんな映画の演奏を、久石さんとご一緒させていただけたのは本当に光栄でした。久石さんの大ファンで、素晴らしい曲をずっと聴いていたので、本当に嬉しかったです。

久石さんに楽譜をいただいた時に、どのような気持ちで作曲されたのか想像し、また映画のイメージを自分の中で膨らませて、できる限りのことをしようと思って練習し、本番に挑みました。お会いするまでは緊張しましたが、本当にお優しい方で、合わせやすく、またいろいろと勉強させていただきました。この曲は感動的で、美しく、弾いていて本当に楽しかったですし、収録があっという間でした。また是非ご一緒させていただきたいです。

ピアノの調律師さんは僕にとってなくてはならない存在です。ピアニストは演奏するときは一人ですが、調律師さん、観客の皆さんと一緒にコンサートを作り上げていると思っています。

国内外のさまざまな場所で調律師さんと出会うのですが、いろいろなタイプの調律師さん、そして会場のピアノと出会えるのは楽しいですね。

(久石譲・辻井伸行コメント ~CDライナーノーツより)

 

DISC 2 ピアノ作品 曲目解説:
ラヴェル、モーツァルト:道下京子
ベートーヴェン:柴田克彦
ショパン:伊熊よし子

(CDライナーノーツ収載)

 

 

from
Info. 2018/06/08 映画『羊と鋼の森』エンディング曲「The Dream of the Lambs」 久石譲&辻井伸行 初タッグ

 

 

「The Dream of the Lambs」、久石譲曰く「綺麗なだけで終わらないように、映画の奥行を出せるように、シビアなミニマル的な部分とメロディアスな部分の交差する曲を作るように意識しました」とあるとおり、とても作り込まれた楽曲であり強く印象に残る楽曲である。エンターテインメントならがここまで音楽的にも表現した楽曲は稀有。古典クラシックにも通じるオーケストラ編成ながら、モチーフやリズムは現代的で、ソリッドなオーケストレーションもまた現代的な響き。辻井伸行が弾くことを想定して書かれたピアノパートはとても難易度が高く、見事に表現した演奏は何度聴いても聴き惚れてしまう。コンチェルト風ともとれる構成は、ピアノとオーケストラが対等に呼応する。

映画公開に先がけて5月に行われた映画完成披露試写会や、6月放送TV番組「ミュージック・ステーション」では、ピアノソロ・ヴァージョン(約2分)もお披露目されている。

またこの豪華コラボレーションは、映画公開記念コンサートとして、一夜限りの共演も実現している。そのコンサートの模様とコンサートレポートは記した。

 

 

サウンドトラックも、シンプルであり映像を邪魔することのない主張しすぎない音楽になっている。またクラシック曲を映画用に編曲した数曲も、原曲を尊重した上品なものになっている。

DISC2に収録されたピアノ作品集は、映画で登場するピアノ曲を、辻井伸行の演奏でコンパイルしたもの。収録曲はすべて既出CD作品からのものではあるけれど、ピアノ入門・クラシック入門としても、聴き馴染みのものから本格的な作品まで最適である。辻井伸行という日本が誇る世界的ピアニストを知る機会、聴くきっかけとしても、ここからまた新しいピアノの世界が広がる一枚。

 

 

 

DISC 1
映画『羊と鋼の森』 エンディング・テーマ
久石譲×辻井伸行
1. The Dream of the lambs
久石譲(指揮) 東京交響楽団 ピアノ:辻井伸行

映画『羊と鋼の森』のための音楽 (オリジナル・サウンドトラック) 
2. 『羊と鋼の森』メインテーマ
3. ピアノスケッチ
4. たまご
5. モーツァルト:きらきら星(連弾) 『羊と鋼の森』サウンドトラック Version
6. 明るく静かに澄んで懐かしい
7. 思い出
8. ショパン:小犬のワルツ 『羊と鋼の森』サウンドトラック Version
9. 移りゆく季節
10. 家族の肖像
11. 外村の戸惑い
12. 森のお葬式
13. いつも、そうやって
14. 森の音がする
15. みたことのない世界
16. 好きって気持ち
17. ピアノを弾くひと
18. メンデルスゾーン:結婚行進曲 『羊と鋼の森』サウンドトラック Version
19. シューベルト:楽に寄す 『羊と鋼の森』サウンドトラック Version
20. 夢のように美しい

世武裕子 作曲:2-4, 6, 7, 9-17, 20 編曲:5, 8, 18, 19

 

DISC 2
辻井伸行 『羊と鋼の森』のためのピアノ作品集
1. ラヴェル:水の戯れ
2. ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
3. モーツァルト:きらきら星変奏曲
4. ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第23番 ヘ短調 作品57《熱情》 第1楽章
5. ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第23番 ヘ短調 作品57《熱情》 第2楽章
6. ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第23番 ヘ短調 作品57《熱情》 第3楽章
7. ショパン:ピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調 作品58  第1楽章
8. ショパン:ピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調 作品58  第2楽章
9. ショパン:ピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調 作品58  第3楽章
10. ショパン:ピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調 作品58  第4楽章

ピアノ:辻井伸行

 

DISC 1
エンディング・テーマ「The Dream of the Lambs」
Music:久石譲
Conductor:久石譲
Piano:辻井伸行
Orchestra:東京交響楽団

Engineers:浜田純伸 (Sound Inn) 村松健 (Octavia Records)
Recorded at 武蔵野市民文化会館
Mixed at Bunkamura Studio

サウンドトラック
Music:世武裕子
Producer:北原京子 (東宝ミュージック)
Engineer:田中信一
Recorded & Mixed at Onkyo Studio, sound inn
Piano recorded at Sound City Setagaya (Tr.5,8,18,19)
Piano:世武裕子 (Tr.8 & other) 石橋愛 (Tr.5,18,19) 内田野乃夏 (Tr.5) 松村優吾 (Tr.8)

DISC 2
Recorded at Teldex Studio Berlin (Tr.1, 3-10)
Recording producer & editing:Friedemann Engelbrecht (Teldex Studio Berlin)
Recorded at Salamanca Hall (Tr.2)
Recording producer & editing:Tak Sakurai (Pau)

and more…

 

Disc. 久石譲 『妻よ薔薇のように 家族はつらいよ III オリジナル・サウンドトラック』

2018年5月23日 CD発売

山田洋次監督「家族はつらいよ」シリーズ最新作『妻よ薔薇のように 家族はつらいよ III』のオリジナル・サウンドトラック。前2作に続いて本作も久石譲が音楽担当。

 

2018年公開 映画「妻よ薔薇のように 家族はつらいよ III」
監督:山田洋次
脚本:山田洋次 平松恵美子
音楽:久石譲
出演:橋爪功 吉行和子 西村まさ彦 夏川結衣 中嶋朋子 林家正蔵 妻夫木聡 蒼井優 他

 

 

久石:
(「家族はつらいよ」)「東京家族」と出演メンバーも同じで、最初1回かなあと思ってたらどんどんシリーズ化されて。喜劇というのはすごく難しいんですよね。喜劇の音楽の書き方は大変難しいんです。どちらかというと色の濃い映画のほうが書きやすいんです。ラブストーリーとか戦争ものとか超悲劇とかね。そうするとこれは音楽も非常に色のはっきりしたものが書けるんだけど、普通の家族をテーマにすると、色をできるだけ薄めなきゃいけないんですよ。でないと音楽が浮いちゃうからね。なので喜劇は映画として撮るほうもすごく難しいんですよ。音楽も非常に難しい、なぜなら陳腐になりやすい。映画のほうでいうと、喜劇と悲劇は同じなんです。たとえば悲劇は、目の前で起こっている大変なことを大変だねって撮れば悲劇になる。ところがこれを喜劇にするときは、同じことを俯瞰で見て、バカな人間どもがああだこうだやってるねって笑い飛ばす方法をとって作らないと、本当の喜劇ってできないんですよ。喜劇って笑わせるんじゃないんですよ。悲劇と同じぐらいなものすごい深いものを抱えてるのを、笑い飛ばして見せるんだけども、観る人は感じさせるっていうね。だから喜劇は最も技術と能力がいる分野じゃないでしょうかね。その意味では山田監督はもう傑出している。今年86歳になられるんですが、考え方がどんどん若くなってて、しかももっと精鋭化してるというかどんどん変化してますね、素晴らしいです。そのエネルギーにつられて、こっちが作ってるって感じかな。(中略)オープニングのタイトルバックを作っているのが横尾忠則さん、毎回アーティスティックなとても素晴らしいオープニングを作ってますよね。

Blog. NHK FM 「今日は一日”久石譲”三昧」 番組内容 -トーク編- より抜粋)

 

 

 

「家族はつらいよ」シリーズ一貫してのメインテーマ、シリーズ第3作では華麗なワルツに変身している。喜劇のコミカルさ、踊るような軽やかさ、弦楽の流れるような優美さとの対比に、ティンパニなどパーカッション群や低音金管楽器など、これから始まる家族のドタバタ劇を予感させるところもおもしろい。

本作のもうひとつの主要テーマ曲となっている”妻のモチーフ”も新たに書き下ろされ、随所に散りばめられている。「3.溜息」「4.創作教室」「7.この狭い家の中で」「8.史枝の日常」「10.妻の覚悟」「17.ごめんね」「18.夫の覚悟」「19.薔薇のスカーフ」「21.雨降って地固まる」「23.妻よ薔薇のように」、こう並べてみるといかに重要な役割になっていることか。情感たっぷりの切なくも温まるメロディは美しい。映画エンドロールに流れる楽曲もメインテーマではなくこちらが採用されている。このことからも本作を彩る象徴的な楽曲。”妻のテーマ”の対となっているともとれる「14.可哀想な幸之助」の旋律、そういう聴き方をするとおもしろい。

細かい話だけれど「4.自転車に乗って」、映像での自転車に乗る速度、気持ちの抑揚の変化に合わせて音楽もテンポ感に変化をもたせている。こういった繊細な配慮はさすがである。

リアリティのある物語ということもあって、シリーズ一貫して本作も音楽の入る場所はそう多くない。シンプルな小編成アンサンブルになっているのも、過剰な音楽効果をおさえたものだろう。それだけに旋律のひとつひとつが、楽器の音色がとても鮮度高く、身近で生音を聴いているような音楽の呼吸をも感じとることができる上品さがある。

「家族はつらいよ」シリーズも第3作をむかえ、久石譲によるメインテーマもシリーズごとにカラーを打ち出している。本作ではワルツ(3拍子)となり、それはさながら輪舞曲(ロンド)である。音楽におけるロンド形式とは、異なる旋律を挟みながら、同じ旋律(ロンド主題)を何度も繰り返す形式のこと。「家族はつらいよ」の物語もまた、おなじみの家族・主人公たちによる日常の喜劇と家族愛のくりかえし。

シリーズを重ねてストーリーや役者のアンサンブルは円熟味を増し、同じように音楽もアンサンブルが変化している。もし次回作を期待できるなら、新しいアンサンブルたちが楽しみな作品。

 

 

1. メインテーマ
2. 平和な朝
3. 溜息
4. 自転車に乗って
5. 創作教室
6. ミセス憲子
7. この狭い家の中で
8. 史枝の日常
9. 泥棒
10. 妻の覚悟
11. お兄ちゃん!
12. ダメおやじ
13. 二人のなれそめ
14. 可哀想な幸之助
15. 故郷
16. ボヤ騒ぎ
17. ごめんね
18. 夫の覚悟
19. 薔薇のスカーフ
20. おかえり
21. 雨降って地固まる
22. 憲子の想い
23. 妻よ薔薇のように

 

All Music Composed, Arranged and Produced by Joe Hisaishi
Conducted by Joe Hisaishi

Performed by
Flute & Piccolo:Hideyo Takakuwa
Oboe:Satoshi Shoji
Clarinet & Bass Clarinet:Hidehito Naka
Bassoon:Tetsuya Cho
Horn:Yuta Ono, Jo Kishigami
Trumpet:Hitomi Niida
Trombone:Nobuhide Handa
Trombone & Bass Trombone:Takahiro Suzuki
Percussion:Tomohiro Nishikubo
Timpani & Percussion:Akihiro Oba
Percussion:Mitsuyo Wada
Harp:Kazuko Shinozaki
Piano & Celesta:Febian Reza Pane
Strings:Manabe Strings

Recorded at Victor Studio
Mixed at Bunkamura Studio

Recording & Mixing Engineer:Suminobu Hamada (Sound Inn)

and more…

 

Disc. 久石譲 『花戦さ オリジナル・サウンドトラック』

2017年5月31日 CD発売

2017年公開 映画「花戦さ」
監督:篠原哲雄 音楽:久石譲 出演:野村萬斎、市川猿之助、中井貴一、佐藤浩市 他

 

 

久石譲コメント

花に命を懸けた池坊専水さんという人の気持ちが、観客に伝わるようにするにはどうしたら良いかを一番に考えました。結果的に琴を使うというイメージが核になりましたが、ただ和風なものを取り入れるだけでは底が浅いものになる。琴とオーケストラを融合した、新しい世界が出来ないかと考えました。そして脚本では、花が題材でもあるので、アート的にも仕上げられるとワクワクしましたね。篠原監督、プロデューサーとも、今までやったことないことをやろうと話して、お二人とも何度かご一緒したことがあったのでその点では安心感がありました。僕は映画音楽も書きますが、ミニマル・ミュージック(音の動きを最小限に抑えて同じパターンで反復させる音楽の手法)も作っています。映画ではあまりアプローチされない手法ですが、『花戦さ』では、琴を使った日本独特のミニマル・ミュージックにチャレンジできるんじゃないかと、作曲家としての野望を抱いてしまいまして。こちらのやりたいことを、エンタテインメントの世界でどうやってやるかを気を付けながらチャレンジさせていただきました。

今回の音楽は「静と動」という捉え方をしています。映像とは距離を取り、通常だと音楽が入りそうなところを外したり、台詞の邪魔にならないように、いるか分からないくらいに馴染むものと、はっきり琴を使うところに分けて作りました。琴を2本使っていますが、1本だといかにも「和風に入れました」となってしまう。効果音のようになるのは寂しいので、伴奏もメロディも主体的に琴を使って、そこに弦などが入ってくる作り方をしています。映画音楽はすごく難しくて、音が入ると音楽が鳴ってるよね、となってしまうんです。芝居の台詞の間合いと、そこに音楽が入っても崩れないフォームをずっと研究していて、特に静のほうは自分でも納得する感じに仕上がっているかなと思います。

音楽は流行りのサウンドを使うと、今はウケるのですが、今の時代だけにフィットさせると10年後には古くなってしまうんです。流行りのやり方に寄り添いすぎると、本物になりきれなくなる。今の時代であることは大切ですが、その中に普遍的なテーマを見つけることが大事なんだと思います。

(映画「花戦さ」劇場パンフレットより)

 

 

以下レビュー

A.メインテーマ・モチーフ
映画「花戦さ」のメインテーマで何が画期的かといえば使われているモチーフ。Aメロ・Bメロと展開するわけでもない、たった数小節たらずの短いモチーフ(基本音型としては2小節!)。これがありとあらゆる手法で変幻自在に奏でられている。通常であればどんどん曲想が展開し旋律がうたい盛り上がりへと向かう、それとはまったく正反対のことを堂々とやってのけ、当たり前のように高い完成度をもって成立しているところがすごい。

「2. 花僧・専好登場!」「4. 野花の囁き」「6. 京の町、花の町」「12. れんと専好」「14. こらまた…」「19. 当然の報い」などの楽曲でモチーフを聴くことができる。

変幻自在その一、琴はもちろんピアノ・弦楽・ハープといったバリエーション豊かな楽器で奏でられている。変幻自在その二、休符が巧みに奏でられている。《音と沈黙、躍動と静止、継続と断絶》というように、モチーフが流れ沈黙がおとずれまた流れる。基本的には変拍子になっている箇所は少なく、一般的な4拍子のなかで巧みに音を配置することで音と沈黙を実現している。違和感がないどころか余白の心地よさをおぼえるほどに。

確信犯なメインテーマ・モチーフ。それは8分音符で書かれ数小節たらずであること。琴という楽器は音が持続しない、弦をはじいて音が減衰していく。8分音符という粒の細かい音符を刻むことで効果的に奏でることができる。同じ効果を発揮できる楽器がピアノ、弦楽ピッチカート、ハープなどとなる。《琴とオーケストラの融合》を実現するのに大きく貢献しているのがピッチカートとハープ。「弦をはじく楽器および奏法」を絶妙に配置しブレンドすることにより、琴の音色がうまく溶け込み調和しているように思う。とりわけ、ハープを通常よりも強くはじく奏法をしているように聴こえ、ハープにしては尖った響きになる一方、琴が少し丸みを帯びたような響きにも聴こえてくる。そこにピッチカートも加わり、よくよく聴かないかぎり何の楽器か区別が難しくなるほどに「弦をはじく楽器」たちが共鳴し、結果融合と調和を実現させているように思う。ここにグロッケンなどの打楽器を混ぜあわせ、管楽器もふくめて音粒の細かい響きを飛び交わせている。(ここまでが変幻自在その一補足)

琴にしろピアノ、ピッチカート、ハープにしろ、音が持続しない楽器ということは、《音と沈黙、躍動と静止、継続と断絶》といった音楽構成を築くことにも効果を発揮する。もっというと楽器本来の響きがそうなのだから、沈黙がおとずれたとしても違和感がない。あれ、急に止まったという感覚にさせないので、結果音と沈黙が心地よさをもたらす。(ここまでが変幻自在その二補足)──だから確信犯なメインテーマ・モチーフなのである。このモチーフ基本音型が書き下ろされた時点で久石譲の勝ち(勝負ごとではないけれど)、数小節たらずの旋律で映画「花戦さ」の映画音楽はほぼ完成されていると言っても過言ではない。

 

B.天下人と対峙するモチーフ
物語のなかで天下人と対峙するおよび象徴するシーンで流れるモチーフ。「5. 織田信長」「13. 太閤殿下の大茶会」「15. 花、笑う」「22. 花をもって」。映画も鑑賞しサウンドトラックをくり返し聴きながら、なんでここであのモチーフなんだろう?と思って書き出すと意味あいがわかることもある。ということで、ここでは便宜上”天下人”というキーワードでくくっている。ここでも久石譲の映画音楽設計の職人技をみることができる。あとは映画を鑑賞して糸がつながっていただければ。

 

C.利休のモチーフ
映画「花戦さ」において重要な登場人物である利休、こう整理してみるとモチーフの登場は少ない。「9. 利休と専好」ピアノとハープによるつつましいミニマル・ミュージックのあと静謐な弦楽へと流れていく。この楽曲はとても重要で、メインテーマ・モチーフの変奏もしくはそこから派生したバリエーションと聴くこともできる。特殊拍子(5拍子と6拍子)によって奏でられるミニマル音型。主人公と利休に相通じるものがある、また互いに心通い合い感情や人物そのものが交錯するようである。利休のモチーフとしているが、楽曲タイトルとおりの「利休と専好」を巧みに描きだしている。

 

D.メインテーマ「花戦さ」エンドクレジット
結論からいうと、この楽曲は上に述べてきたA-B-C-Aで構成されている。短いメインテーマモチーフがたたみかけ織り重なるような冒頭から度肝を抜かれる(A)。そして天下人とのやりとりを象徴した(B)へと進み、利休への想いをはせ(C)、ふたたびメインテーマへ(A)。つまり約4分半の楽曲で映画本編をフラッシュバックし、もう一度振り返りながらストーリーを凝縮したもの、それが「23. 花戦さ」である。久石譲の凄みとしかいいようがない。映画音楽設計の極みであり、論理性の結晶ともいえる。そしてまたそれを理屈っぽくなくエンタテインメント性として成立させていること。ひとつの楽曲として心躍らせ、また聴きたいしっかり聴いてみたいと思わせる音楽。普段あまり耳馴染みのない強烈なモチーフ、やみつきになるほどのインパクトと余韻で貫禄の響き。久石譲がやりたいことと観客の高揚感が見事にフィットし結実したことは、各媒体映画レビューや感想での観客の映画音楽への反応、コメント、人気からもうかがえる。

 

少しひとり言、どうもこの映画の音楽は似た空気や雰囲気をもつ楽曲が多く(当然といえばそう)なかなか掌握ができず結構な時間対峙することになった。楽曲をそれぞれ整理しモチーフをセグメントした過程が(A)~(C)であり、それによって(D)に辿り着けたときには、そういうことか!とちょっとうれしい気分にもなった。特に(C)は曲想が大きく異なるのですぐには気づけなかった…。利休の想い・利休への想いが万感に奏でられている。私の推測があっていたらの場合ではあるけれど……。分析してわかった気になりたいのではなく、分析してその音楽に向き合って新たな発見ができることはとてもおもしろい。

 

E.静謐なミニマル・ミュージック
全編をとおしてミニマル要素が盛り込まれた本作品であるが、そのなかでも明確かつ際立つのが「3. 天に昇る龍の如く」。静謐なミニマル音楽が包みこむ。ミニマルとは相反するはずの情緒を感じさせるのはズレを念頭においた緻密なハーモニーの構成ゆえだろうか。日本の美・和の心を感じさせてくれる佇まい。

映画本編でも印象的なシーンで使われるこの音楽、「18. 梅の花」でピアノやハープを主軸として再登場する。これはストーリーにおける伏線の演出だと思うが、一見結びつかないシーンでこの音楽が使われているというところに、久石譲の映画音楽設計の緻密さと配慮を感じる。言葉では語らない、説明はしないけれど、音楽がそれを示唆している。それはそのときの登場人物の感情なのかもしれないし、これから起こるであろう展開を予感させるものかもしれない。映像やストーリーにおける音楽の重要性を感じさせる。

 

F.静の音楽
久石譲コメントにあった映画音楽における「静と動」について。サントラ盤を聴きながら思ったのは、それは”空気のような音楽”や”表情のような音楽”なのかもしれないということ。映像を補間するもしくは盛り上げるための映画音楽でもなく、感情を表現するための音楽でもない。ちょっとした空気の動き、ちょっとした表情の動き、それをふと音にしたらそう奏でられたというような音楽ではないだろうか(と勝手に推察している)。旋律としての音楽と散在する音の狭間のようなもの。「7. れんの瞳に」「10.一輪にて」などを聴いて。楽曲として成り立たせたいならばメロディを奏でたほうがもっともでありらしくもなる。正反対に位置しているのが「静の音楽」とするならば、これはなかなか難易度が高い。浅いところでやれば陳腐な効果音のようなものになるし、なくてもいい・いらないものともなりかねない。ある(鳴っている)ことを主張しないけれど、ある(鳴っている)ことが重要な音楽。

よくよく耳をすますと、「10.一輪にて」はメインテーマ・モチーフの限りなく音をぬいた音運びと聴くこともできる。もしそのように映画の核となるモチーフを素材としているならば、それは”なくてもいい・いらないもの”とはなるはずもなく、ある(鳴っている)ことが重要な静の音楽となる。

注)久石譲が意図する「静の音楽」が、どの楽曲・手法・範囲を示唆しているのかは定かではないので、ここで挙げた2楽曲はひとつの解釈として。

 

G.華道・茶道 ~時間と空間~
日本伝統の美しさを感じるこの映画は、花も茶も絵もその道の精神を注ぎこんだような作品になっている。花も茶も「つかのまのひととき」である。いけばなも生けては枯れ、お茶も淹れては呑む。音楽もまた奏でては終わる。

映画インタビューで主演の野村萬斎さんが「花は時間と空間を映す」と言われているのをみて、なるほどそうかと思った。華道には生けて朽ちるまでの時間軸と表現し景観となる空間軸。茶道には淹れて呑むまでの時間軸と作法と間を共有する空間軸。そういった捉え方をしてみると、音楽には旋律が流れる時間軸と響く空間軸がある。久石譲も常々「音楽は時間軸と空間軸で成立する」という格言をのぞかせる。見方や捉え方は道により人によりそれぞれだろうが、なにかしらの共鳴を感じる。

華道・茶道・音楽などアートの世界に共通するもの、日本伝統の奥ゆかしさに共通するもの、それが”諸行無常”。そうであるならば、「つかのまのひととき」であるからこそその瞬間がかけがえのないもの、美しいものである。諸行無常の心をさとすような「16. 最期のもてなし」「21. 赦し」。そっと手をさしのべられるような、言葉少なにそっと寄り添ってくれるような、慈愛に包まれた楽曲。悠々と感情たっぷりに歌うのではなく、弦楽の弦のすすりが聴こえる涙腺の解放。

 

映画作品としてはもちろん映画音楽としてもあらゆる賞の受賞を予感させる。

 

 

【2017.8 追記】

「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2017」にて「ASIAN SYMPHONY」の一楽章として「赦し」(Track-21)が組み込まれ世界初演。

ASIAN SYMPHONY
1. Dawn of Asia
2. Hurly-Burly
3. Monkey Forest
4. Absolution
5. Asian Crisis

久石譲コメント

「ASIAN SYMPHONY」は2006年におこなったアジアツアーのときに初演した「アジア組曲」をもとに再構成したものです。新たに2017年公開の映画『花戦さ』のために書いた楽曲を加えて、全5楽章からなる約28分の作品になりました。一言でいうと「メロディアスなミニマル」ということになります。作曲時の上昇カーブを描くアジアのエネルギーへの憧れとロマンは、今回のリコンポーズで多少シリアスな現実として生まれ変わりました。その辺りは意図的ではないのですが、リアルな社会とリンクしています。

 

レビュー

2006年初演から長い沈黙をまもってきた大作、ついにその封印がとけた瞬間でした。久石譲解説に「メロディアスなミニマル」とあります。当時の言葉を補足引用すると「僕の作曲家としての原点はミニマルであり、一方で僕を有名にしてくれた映画音楽では叙情的なメロディー作家であることを基本にした。ただそのいずれも決して新しい方法論ではない。全く別物の両者を融合することで、本当の意味でも久石独自の音楽を確立できると思う。ミニマル的な、わずか数小節の短いフレーズの中で、人の心を捉える旋律を表現できないか…」(CD「Asian X.T.C.」ライナーノーツより)、久石譲が現代の作曲家として強い意志をもって創作した作品「アジア組曲」改め「ASIAN SYMPHONY」です。

めまぐるしいアジアの成長と魅惑を時代の風でかたちにした2006年版「アジア組曲」、それはまさに天井知らずのエネルギーの解放であり同時に先進国が辿ってきた発展後にある危機(Crisis)を警鐘したものとなっていました。それから11年、現代社会におけるアジア、世界におけるアジアは、今私たちがそれぞれ感じとっているすぐ隣にある現実です。

久石譲が「ASIAN SYMPHONY」への進化でリコンポーズしたもの。既出4楽曲は大きな音楽構成の変化はありません。それでも当時の「アジア組曲」の印象とは変わった空気を感じる。溢れ出るエネルギーのなかに無機質な表情で鼓動する怒涛のパーカッション群、パンチの効いた鋭利な管楽器群。躍動的で快活なのに決して手放しで笑ってはいない。そんなシリアスな変化を感じとったような気がします。

そしてもうひとつ注目すべきは、映画『花戦さ』のために書かれた音楽から「4. Absolution」として組み込まれた楽曲。映画サウンドトラック盤では「赦し」(Track-21)として収録されています。そっと手をさしのべられるような、言葉少なにそっと寄り添ってくれるような、慈愛に包まれた楽曲。悠々と感情たっぷりに歌うのではなく、弦楽の弦のすすりが聴こえる涙腺の解放。”罪を赦す”というように、過去の過ちをも包みこみ苦しまなくていい安らかな気持ちで生きていきなさい、そんな意味あいになるのかなあと思います。”相手を赦す・自らを赦す”、そして前向きに未来へ歩んでいく。映画音楽のために書き下ろされた、誤解をおそれずにいえば「エンターテインメントのための楽曲」がこうやって「久石譲オリジナル作品の一部」として組み込まれる。これはこれまでにはなかったことで、とても重要なポイントなのかもしれません。それだけに「4. Absolution / 赦し」という楽曲に対する久石譲の納得と確信を感じます。見方をかえれば、映画音楽の一楽曲としては時とともに流れてしまう可能性のあるものが、オリジナル作品の一楽章として新しい命を吹きまれた、そして未来へとつながっていくもうひとつの機会を得ることのできた楽曲。そう思いめぐらてみるとこの楽曲が加えられたことに深い感慨をおぼえます。

そして、赦しのあとの警鐘。同じ過ちをくり返す危機(Crisis)、今までになかった新しい危機(Crisis)。そんな現実を僕たちは力強く生きていかなければいけない。久石さんは、当時のインタビューで「危機(Crisis)の中の希望」というフレーズを口にしています。危機を警鐘するだけではない、その中から希望をつかんで切り拓いていく、そんなエネルギーを強く打ち響かせる作品です。

壮大な大作「ASIAN SYMPHONY」の「アジア組曲」からの変遷は、時系列でまとめていますので、ぜひ紐解いてみてください。どんな音楽が気になった人はCD作品「Asian X.T.C.」でアンサンブル版を聴いてみてください。2016年「THE EAST LAND SYMPHONY」につづき2017年「ASIAN SYMPHONY」。こうやって久石さんの”シンフォニー”がひとつでも多く着実に結晶化している喜びをひしひしとかみしめながら聴きいっていました。そして1年後には…CD化が実現してくれることを強く願っています。

Blog. 「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2017」 コンサート・レポート より抜粋)

 

 

【2018.8.1 追記】

2017年国内5都市と韓国ソウルにて開催された「久石譲&ワールド・ドリーム・オーケストラ 2017」コンサートツアーで初演された、2大作品が待望のCD化。「Symphonic Suite “Castle in the Sky”」「ASIAN SYMPHONY」収録。

 

 

 

 

1. 戦国ラプソディー
2. 花僧・専好登場!
3. 天に昇る龍の如く
4. 野花の囁き
5. 織田信長
6. 京の町、花の町
7. れんの瞳に
8. 花の力や
9. 利休と専好
10. 一輪にて
11. 黄金の茶室
12. れんと専好
13. 太閤殿下の大茶会
14. こらまた…
15. 花、笑う
16. 最期のもてなし
17. どないならはるんやろ
18. 梅の花
19. 当然の報い
20. 吉右衛門の最期
21. 赦し
22. 花をもって
23. 花戦さ

 

All Music Composed, Arranged and Produced by Joe Hisaishi
Conducted by Joe Hisaishi

Performed by
Flute & Piccolo:Hiroshi Arakawa
Oboe:Ami Kaneko
Clarinet:Yusuke Noda
Clarinet & Bass Clarinet:Yurie Honda
Bassoon:Takaaki Tsuboi
Horn:Jonathan Hammill, Yuta Ohno
Trumpet:Kenichi Tsujimoto
Trombone:Shinsuke Torizuka
Bass Trombone:Ryota Fujii
Timpani:Akihiro Oba
Percussion:Harumi Furuya, Shinya Matsushita
Harp:Ayano Kaji
Piano & Celesta:Takehiko Yamada
Koto:Akemi Yamada, Miho Jogasaki
Strings:E”K”S Masters Orchestra

Recorded at Victor Studio
Mixed at SOUND INN

Recording & Mixing Engineer:Suminobu Hamada(Sound Inn)
Manipulator:Yasuhiro Maeda

and more…

 

Disc. 久石譲 『家族はつらいよ2 オリジナル・サウンドトラック』

2017年5月31日 CD発売

2017年公開 映画「家族はつらいよ2」
監督:山田洋次 音楽:久石譲 出演:橋爪功 吉行和子 他

 

 

オープニングから喜劇舞台の幕開け、まるで舞台の緞帳があがっていくようなどっしりとこぶしの効いた「はじまり はじまり 2」。観客たちを呼び集めはじまりを告げ、どんな物語がくり広げられるのか期待を膨らませるメインテーマのモチーフ。

前作ではホンキートンク・ピアノが効果的に使われていたメインテーマ、今作ではその役割がイリアン・パイプスという楽器になっている。アイルランドの民俗音楽などに使われるこの楽器が、今作では強烈なアクセントとなり、新しいカラーとしてメインテーマを新調している。

バグパイプの一種であるイリアン・パイプス。調べてみると、一般的なバグパイプに比べて音量が小さく室内での演奏や他楽器との合奏もしやすい楽器とある。また他のバグパイプは音を止めることができないのに対し、イリアン・パイプスは音を止めることができるため、スタッカートや休符など音楽表現の幅も広いという特徴をもっている。

メインテーマのバリエーションも多彩に収録され、ここまで広がりのある旋律であったことに感嘆してしまう。前作が管楽器やパーカッションを巧みに使用していたのに対し、今作では弦楽器・ハープ・チェレスタといった楽器が表情を豊かにしている。

前作主要テーマ曲のひとつ(前作:「ためらい」「孫」「周造の告白」のモチーフ)は、今作でも引きつがれ装い新たに奏でられている(今作:「憲子と周造」「とちった」「若い二人」)。

映画音楽としては本編の約3分の1につけられた音楽ということで少なめではあるが、その分鳴ったときの相乗効果も高い。またフィクションでありながらファンタジーやラブストーリーとは趣の異なる、リアリティのある喜劇であり起こりうる日常。このあたりも考慮して音楽をあえて減らしていると思われる。物語のリアリティ追求と、音楽によるドラマティックな効果(それによる非現実的効果)を意図的に排除することがこの映画における映像と音楽の合意形成のように。逆説的に考えると、それだけにピンポイントに求められる音楽への要求も高いということになり、それが山田洋次監督の久石譲への確固たる信頼の現れと見ることもできる。

また前作にひきつづきオーケストラ・サウンドではない、アンサンブル・サウンドとなっている点も上に書いた音楽の役割を具現化したときの音楽構成なのだと思う。そんななかでも、前作のホンキートンク・ピアノや管楽器・パーカッションをメインとした編成よりも、今作はより一層の多重奏、多彩なアンサンブルを奏でている。主要役者8名のアンサンブルが前作以上に絡み合い、絶妙なブレンドをみせるように、音楽においても。

ひとつ付け加えておきたいこと。「家族はつらいよ」「家族はつらいよ2」において、久石譲の凄みを感じるのは、映画音楽と効果音の一体化である。映像にマッチングした音楽、動きにシンクロした音楽というものから進化したところ。音楽であり効果音でもあるという映像に必要な音の境界線をとっぱらったような音楽構成。これは旋律というよりも、音そのものや楽器奏法によるところが大きく、またそこにどの楽器を選んでいるかというのが久石譲の凄みである。前作でなぜあそこまで管楽器やパーカッションにこだわった音楽づくりだったのか、それが今作ではどのようにバリエーション豊かに変化しているのか。サンプラーの音も効果的なアクセントとなっている楽曲もある。

最後に。古き良き時代、往年の名作映画を思わせるようなメインテーマ。シンプルでありながら変幻自在な顔をもち、1作目・2作目それぞれ本編にあった表現をしている。役者のアンサンブルと音楽のアンサンブル、シリーズごとの変化を楽しめるのはそう多くないこと。そんな佇まいをもったメロディがこれからパート3以降など新たな装いで聴くことができるなら、まだまだ楽しみのつきない音楽である。

 

追記
CD盤には実際にクレジットにないトラック21が収録されている。これはボーナストラックやシークレットトラックの類と思われる。映画予告編で使われていた音楽をボーナストラックとして収録したのではないかと推測している。トラック20「家族はつらいよ2」の曲のあと約8秒間無音があり、トラック21へとつづいていく(CD盤:トラック20 [3:50]/トラック21 [0:58])。配信版には収録されておらずトラック20も無音時間がないためタイムが異なっている。公式発表は今のところ確認できないが、トラック21は「予告編用音楽」をボーナスとして収録してくれたものでCD盤のみの特典である。ちなみに、メインテーマと主要テーマをあわせた構成でアレンジとしてもどの楽曲とも同一のものではない。

 

 

1. はじまり はじまり 2
2. 日常の朝
3. 夫婦の生き甲斐
4. 車買うの?
5. 父さん怒った
6. 憲子と周造
7. 崩壊!
8. 独身貴族
9. ダンプカー
10. とちった
11. お出掛け
12. 若い二人
13. 旧友
14. 丸田の死
15. 取り調べ
16. 大騒動終了
17. 丸田の部屋
18. 出発
19. 丸田くん、さいなら
20. 家族はつらいよ2
21.

 

All Music Composed, Arranged and Produced by Joe Hisaishi
Conducted by Joe Hisaishi

Performed by
Flute & Piccolo:Jiro Yoshioka
Oboe:Satoshi Shoji
Clarinet:Hidehito Naka
Clarinet & Bass Clarinet:Yuki Sudo
Bassoon:Takaaki Tsuboi
Horn:Chie Matsushima
Trumpet:Masato Sawada
Trombone:Hisato Yamaguchi
Percussion:Tomohiro Nishikubo
Percussion:Mitsuyo Wada
Percussion:Akihiro Oba
Harp:Ayano Kaji
Piano:Febian Reza Pane
Celesta & Sampler:Fuyuka Kusa
Uilleann Pipes:Akio Noguchi
Strings:WATARU MUKAI with friends strings

Recorded at Victor Studio
Mixed at Bunkamura Studio

Recording & Mixing Engineer:Suminobu Hamada(Sound Inn)

and more…

 

Disc. 久石譲 『家族はつらいよ オリジナル・サウンドトラック』

2016年3月9日 CD発売

2016年公開 映画「家族はつらいよ」
監督:山田洋次 音楽:久石譲 出演:橋爪功 吉行和子 他

 

国民的映画 『男はつらいよ』から『家族はつらいよ』

「男はつらいよ」シリーズは、1969年から1995年まで計48作品にわたって公開された、国民的シリーズ映画。観客動員数はのべ8000万人以上、時代が変わっても色あせない永遠の喜劇として、現在も多くの人に愛され続けています。本作は、その「男はつらいよ」の生みの親である山田洋次監督が、新たに取り組んだ喜劇作品。日本中に笑顔と感動を届け続けた”寅さん”に通じる家族の物語が、ついに到来します!

 

映画「東京家族」(2013)のキャスト8人が再結集。「この最高のアンサンブルで、今度は現代の家族を”喜劇”で描きたい」という山田洋次監督の強い想いの下に、新たに豪華キャストも加わり、このメンバーでしか紡ぎ出せない最高の喜劇が完成。

 

コメント

今までコミカルな場面の音楽を作曲することは多々ありましたが、本格的な喜劇は初めてでした。喜劇映画の音楽は、どうしても伴奏音楽になりがちです。テーマ曲やその他の旋律がしっかりと劇に絡み、単なる伴奏ではなくきちんと映画と融合する音楽を目指しました。ホンキートンク・ピアノ(※)を使ったところ、山田監督も気に入られ、結果、その音が本作の色にもなったのがとても嬉しかったです。喜劇というのは、ある意味、悲劇の裏返しだと思います。ドタバタの中でも人間の哀しみが滲み出るような、俯瞰で見る神のような視点も必要。その点でもうまくいったと思います。

※1930~40年代頃のジャズの前身の頃によく使われ、少しチューニングが狂ったような調子っぱずれの音色を出す。

(コメント ~映画「家族はつらいよ」劇場用パンフレット内 久石譲コメントより)

家族はつらいよ パンフレット

 

 

山田洋次☓久石譲のタッグは、「東京家族」(2013)、「小さいおうち」(2014)に続いての3作目。山田洋次監督の20年ぶりの喜劇に対して、久石譲にとっても本格的な喜劇映画の音楽担当は初となる。

楽器編成のクレジットにもあるとおり、ホンキートンク・ピアノやパーカッションを効果的に使用した、小編成かつ短いモチーフの楽曲構成となっている。

 

 

家族はつらいよ オリジナル・サウンドトラック 久石譲

1. はじまり はじまり
2. 家族はつらいよ オープニング
3. なんだこれ
4. 憲子さん
5. 八つ当たり
6. ご帰宅
7. ラブ・ストーリー
8. ヒガイシャ
9. 夫婦になりたい
10. 探偵事務所
11. 心配
12. こりゃどうも
13. 哀れな父さん
14. 潜入調査
15. ま・さ・かの再会
16. 級友
17. 本気なのよ
18. やけ酒
19. 家族会議
20. 富子の告白
21. サラリーマン
22. 髪結いの亭主
23. これが目に入らぬか!
24. ためらい
25. もしものとき
26. 孫
27. 「ハーイ」
28. 空っぽの部屋
29. 義父へ
30. 周造の告白
31. 家族はつらいよ

All Music Composed, Arranged and Produced by Joe Hisaishi

Conducted by Joe Hisaishi

Performed by
Flute & Piccolo:Yuna Okubo
Clarinet:Masashi Togame
Bassoon:Mina Higashi
Trumpet:Sho Okumura
Trombone:Kanade Shishiuchi
Percussion:Marie Oishi
Guitar:Akira Okubo
Bass & Contrabass:Jun Saito
Drums:Yuichi Togashiki
Piano & Honky Tonk Piano:Febian Reza Pane
Strings:Manabe Strings

Recorded at Victor Studio
Mixed at Bunkamura Studio

 

Disc. オムニバス 『スタジオジブリの歌 増補盤』

2015年11月25日 CD発売

スタジオジブリ設立30周年記念!
これ一枚でスタジオジブリの全てが分かる!

スタジオジブリ設立から30年を記念して、
ジブリ映画の楽曲を網羅した究極のアニバーサリー盤が登場!

2008年リリース、「崖の上のポニョ」までのスタジオジブリ代表作の主題歌・挿入歌を網羅したオムニバス「スタジオジブリの歌」。このアルバムに「借りぐらしのアリエッティ」「コクリコ坂から」「風立ちぬ」「かぐや姫の物語」「思い出のマーニー」の5作品を追加した、ファンには嬉しいアニバーサリー盤が高音質のHQCDとして登場。全ての世代に愛されるスタジオジブリの永久保存版として一家に一枚。

全楽曲同内容のオルゴール盤『スタジオジブリの歌オルゴール -増補盤-』も同時発売された。

 

早期購入特典:スタジオジブリ特製ポスター (全作品を1枚ポスターとして特製)

スタジオジブリの歌 特典 1

 

早期同時購入特典:スタジオジブリ復刻チラシ21枚セット(全作品劇場公開時)
(『スタジオジブリの歌-増補盤-』+『スタジオジブリの歌オルゴール -増補盤』同時購入)

24作品中「On Your Mark」のチラシは制作されておらず、「となりのトトロ」と「火垂るの墓」、「猫の恩返し」と「ギブリーズ episode2」 は公開時にそれぞれ2本立てだったため2作を1枚で制作のため、21枚セットとなっている。

スタジオジブリの歌 特典 2

 

 

スタジオジブリの歌 増補版

[DISC.1]
01. 風の谷のナウシカ(風の谷のナウシカ) 安田成美
02. 君をのせて(天空の城ラピュタ) 井上あずみ
03. さんぽ(となりのトトロ) 井上あずみ
04. となりのトトロ(となりのトトロ) 井上あずみ
05. はにゅうの宿(火垂るの墓) アメリータ・ガリ=クルチ
06. ルージュの伝言(魔女の宅急便) 荒井由実
07. やさしさに包まれたなら(魔女の宅急便) 荒井由実
08. 愛は花、君はその種子(おもひでぽろぽろ) 都はるみ
09. さくらんぼの実る頃(紅の豚) 加藤登紀子
10. 時には昔の話を(紅の豚) 加藤登紀子
11. 海になれたら(海がきこえる) 坂本洋子
12. アジアのこの街で(平成狸合戦ぽんぽこ) 上々颱風
13. いつでも誰かが(平成狸合戦ぽんぽこ) 上々颱風
14. カントリー・ロード(耳をすませば) 本名陽子
15. On Your Mark (On Your Mark) CHAGE and ASKA
16. もののけ姫(もののけ姫) 米良美一
17. ケ・セラ・セラ(ホーホケキョとなりの山田くん)山田家の人々ほか
18. ひとりぼっちはやめた(ホーホケキョとなりの山田くん) 矢野顕子

[DISC.2]
01. いつも何度でも(千と千尋の神隠し) 木村弓
02. 風になる(猫の恩返し) つじあやの
03. No.Woman, No Cry (ギブリーズepisode2) Tina
04. 世界の約束(ハウルの動く城) 倍賞千恵子
05. テルーの唄(ゲド戦記) 手嶌葵
06. 時の歌(ゲド戦記) 手嶌葵
07. 海のおかあさん(崖の上のポニョ) 林昌子
08. 崖の上のポニョ(崖の上のポニョ) 藤岡藤巻と大橋のぞみ
09. The Neglected Garden [荒れた庭](借りぐらしのアリエッティ) セシル・コルベル
10. Arrietty’s Song (借りぐらしのアリエッティ) セシル・コルベル
11. 夜明け~朝ごはんの歌(コクリコ坂から) 手嶌葵
12. 上を向いて歩こう(コクリコ坂から) 坂本九
13. さよならの夏~コクリコ坂から~ (コクリコ坂から) 手嶌葵
14. ひこうき雲(風立ちぬ) 荒井由実
15. いのちの記憶(かぐや姫の物語) 二階堂和美
16. わらべ唄(かぐや姫の物語)
17. 天女の歌(かぐや姫の物語)
18. Fine On The Outside (思い出のマーニー) プリシラ・アーン

HQCDリマスター音源

全56ページオールカラーブックレットつき
<ブックレット内容>全映画の●作品データ●公開当時ポスター絵柄●全曲歌詞

 

Disc. 久石譲・高畑勲 『かぐや姫の物語 ~女声三部合唱のための~』

2015年1月21日 CD Single 発売

2013年公開 映画『かぐや姫の物語』
監督:高畑勲 音楽:久石譲

スタジオジブリ作品において、高畑勲と久石譲の初タッグとなった作品。その劇中歌「わらべ唄」と「天女の歌」が女声三部合唱曲として映画の世界を超えて新たに誕生した。

さらに映画本編における主要テーマ曲のひとつ「なよたけのテーマ」に、高畑勲が新たに詞を書き下ろし、「なよたけのかぐや姫」として、インストゥルメンタル楽曲からこちらも女声三部合唱曲として生まれ変わる。

 

久石譲作曲「なよたけのテーマ」は主要テーマ曲であり、高畑勲作曲「わらべ唄」は映画本編の核となる曲であった。映画冒頭でもこのふたつのメロディは久石譲の絶妙なオーケストレーションにより互いに織り重なりかけ合うように流れていたのが印象的。

そんな日本美を感じる旋律と日本語歌詞の楽曲たちが、日本古来の童謡というよりも、さらにおしすすめた未来へ歌い継がれる、現代の合唱曲として緻密につくりこまれた作品となっている。

「なよたけのかぐや姫」は7分に及ぶ合唱曲大曲に仕上がっている。日本語の美しい歌詞とその響きが、女声三部合唱の優美なハーモニーで。複雑に絡み合う旋律と日本語歌詞。ミニマル的な要素や複雑なハーモニーもあって、神秘的で叙情的な調べ。まさに日本語による”ミニマル合唱” “ミニマルコーラス” “ミニマルクワイア”という新しい息吹きが吹きこまれた楽曲である。

今回の女声三部合唱をベースとして、今後「弦楽四重奏版」や「弦楽オーケストラ版」が誕生してもおかしくない、そんな憶測さえ醸しだす、単なる合唱曲ではない、力作かつ意欲作となっている。

 

「わらべ唄」は、映画本編でもおなじみの楽曲である。こちらも女声三部合唱として、メロディーである主旋律を大切にしつつも、三声が追っかけ、かけあい、織りなすハーモニー。4分半の楽曲のなかに「天女の歌」も中盤に盛り込まれるかたちとなっている。

 

 

かぐや姫の物語 ~女声三部合唱のための~

1. なよたけのかぐや姫
作詞:高畑勲 作・編曲:久石譲
2.わらべ唄
作詞:高畑勲・坂口理子 作曲:高畑勲 編曲:久石譲

プロデュース:久石譲
合唱:東京混声合唱団
指揮:山田茂
ソプラノ・ソロ:佐藤祐子 (なよたけのかぐや姫)

音楽収録:すみだトリフォニーホール 2014年12月17日

 

 

「なよたけのかぐや姫」

なよたけの かぐや姫
なぜに こころ ふさぐ
風になり 野をかけた
あの夏の日の におい
うすれてゆく 遠くなる
いつか 帰るゆめをみる
いつか 帰るゆめをみる
あの山をこえ

なよたけの かぐや姫
なぜに こころ さわぐ
さよならも せぬままの
あの秋の日の わかれ
置きわすれた 籠のなか
だれが 食べてくれたやら
だれが 食べてくれたやら
あの山ぶどう

 

「わらべ唄」

まわれ まわれ まわれよ 水車まわれ
まわって お日さん 呼んでこい
まわって お日さん 呼んでこい
鳥 虫 けもの 草 木 花
春 夏 秋 冬 連れてこい
春 夏 秋 冬 連れてこい

まわれ まわれ まわれよ 水車まわれ
まわって お日さん 呼んでこい
まわって お日さん 呼んでこい
鳥 虫 けもの 草 木 花
咲いて 実って 散ったとて
生まれて 育って 死んだとて
風が吹き 雨が降り 水車まわり
せんぐり いのちが よみがえる
せんぐり いのちが よみがえる

 

「天女の歌」

まわれ めぐれ めぐれよ 遥かなときよ
めぐって 心を 呼びかえせ
めぐって 心を 呼びかえせ
鳥 虫 けもの 草 木 花
人の情けを はぐくみて
まつとしきかば 今かへりこむ

 

ちなみに、「わらべ唄」の歌詞にある「せんぐり」とは、
京ことばで【次々に 順番に 順繰り】という意味。

「天女の歌」の歌詞にある「まつとしきかば 今かへりこむ」は、
百人一首 中納言行平の句にも登場する。
映画本編でも台詞として
【本当にあなたが待っていてくれるなら、すぐにでもここへ帰ってきます】と。

 

<タイアップ楽譜>
Score. 久石譲・高畑勲 「かぐや姫の物語~女声三部合唱のための~」 [声楽]

プリント

 

Disc. 久石譲 『柘榴坂の仇討 オリジナル・サウンドトラック』

2014年9月17日 CD発売

2014公開 映画『柘榴坂の仇討』
監督:若松節朗 音楽:久石譲 出演:中井貴一・阿部寛 他

 

 

『柘榴坂の仇討』への想い

脚本を読んで最も心に残ったのは”武士としての矜持”、即ち、何があっても揺るぐことのない武士の魂でした。「メインテーマ」ではその”潔さ”を音楽でも表現しようと心を砕きました。そして仇討を表す「宿命のテーマ」と金吾とセツの「夫婦のテーマ」を含めた三つのテーマをできるだけ立体的に、観る人に広がりを感じてもらえるように構成しました。若松監督は登場人物の心の流れを丁寧に撮られていたので、音楽は芝居から一歩引いて、それぞれの気持ちに寄り添うような形で組み立てたつもりです。映像と距離をとろうと心がけたことが、ささやかな”音楽家としての矜持”だったと言えるかもしれません。
冒頭の曲が書けたときに、今までにない時代劇の音楽の形を作れるのではないかという予感がありました。映像と音楽が一体となって、観客の皆さんの心に届いてくれるならば、とても嬉しく思います。

(久石譲インタビュー CDライナーノーツより)

 

 

上記インタビューにもあるとおり、一言で言えば”押しころした”音楽となっている。

”寄り添う音楽” ”立体的な広がり” ”映像と距離をとる” という言葉のとおり、決してインパクトのある旋律たちではないけれども、その分観る人、聴く人の受け止め方や感じ方に委ねる音楽といえる。

小編成なオーケストラサウンドを基調とし、ひかえめながらも、そこには緊迫感や緊張感という糸がぴんと張っている。一定に刻むストリングスをはじめとして、そこには脈を打つ鼓動のような、息をころす、気配をころすといった、そして激動の瞬間を生きた登場人物たちの宿命や覚悟のようなものが感じられる。

時代の脈打ちともいえるこの一定のリズムが、ただならぬ物語の、そして歴史の1ページを浮き上がらせているよう。”今までにない時代劇の音楽” という言葉にあるとおり、まさにその時代を生きた、それぞれの武士たちの、それぞれの信念や正義、全体をとおして聴いてみると、その鎮魂曲のような響きがしてくる。

 

 

2015年4月3日発売DVD 『柘榴坂の仇討 -特装限定版-』
特典DISCにて「監督・若松節朗×音楽・久石 譲 対談」が収録されている。

約30分にも及ぶスペシャル対談において、本映画の音楽について、随所にそして具体的に語られている。

 

【「雪」を音楽にする】

若松:
最初にオーダーしたのは、「雪」を音楽にするということ。いろいろな雪がイメージできるが、久石さんがどのような雪の音楽を作ってくるのか楽しみだった。

最初に聴いた本編冒頭のM1で驚いた。夢の中で起こる事件の話だったが、サスペンス的な音楽かなと想像していたら、久石さんの楽曲は、とても温かい音楽でまさに雪の音楽だった。

久石:
メインテーマは別にもあるが、この映画ではM1がすごく重要だったかもしれない。

いわゆる時代劇のような音楽ではないほうがこの映画にはいいと思った。時代劇とするよりは、たまたま設定が時代劇で、現在の自分たちととても近いものとしたほうが。

【秋元邸で金吾が涙を流すシーン】

若松:
音楽の止める場所とかものすごく学ぶことが多かった。

久石:
構成の問題もあって、あのあと最後の決闘シーンが控えている。登場人物たちの心情を表現するとしても、音楽はそこにとっておく必要がある。なのでこの場面はあえて突き放して音がないほうがいいと思った。

【映画音楽の作り方】

久石:
今ハリウッドでやっている映画音楽は「効果音楽」。そのシーンごとに切り取ったらぴたっとはまるけれど、全体としては残らない。そこには全体の構成がないから。

これはあまりにもデジタル技術が発達したため、つまりシュミレーションが簡単にできるようになったために起こっている現象だと思っている。

【俯瞰した音楽をつくる】

久石:
映画音楽は一般的に「状況に音楽をつける」「登場人物の心情に音楽をつける」という大きく二つの方法がある。最近はそのどちらでもなく、もう一歩引いたところから、「俯瞰して音楽をつける」ということをしている。そうすることによって作品が言いたいことがより伝わりやすくなったり、より立体的になるように思っている。

以上、インタビュー内容を一部抜粋書き起こし。

 

 

柘榴坂の仇討 サウンドトラック

1. 悪夢
2. 夫婦
3. 敬愛
4. 予兆
5. 宿命
6. 悲愴
7. 決意
8. 本懐
9. 呵責
10. 本分
11. 安息
12. 時代
13. 前夜
14. 永遠
15. 悔恨
16. 寒椿
17. 邂逅
18. 逡巡
19. 覚悟
20. 出発

指揮:久石譲
演奏:東京ニューシティ管弦楽団

All Music Composed, Arranged and Produced by Joe Hisaishi

Recorded at Victor Studio
Mixed at Bunkamura Studio