Blog. 映画『羊と鋼の森』公開記念「辻井伸行 特別コンサート」コンサート・レポート

Posted on 2018/06/15

6月13日「映画『羊と鋼の森』公開記念 辻井伸行 特別コンサート」がサントリーホールにて開催されました。映画エンディング・テーマは、日本を代表する世界的音楽家 久石譲と辻井伸行 夢のコラボレーションによる「The Dream of the Lambs」。久石譲が作曲・指揮、辻井伸行がピアノ演奏を務めたこの楽曲は映画公開前から話題になりました。そして、映画公開記念(公開日:6月8日)として開催された特別コンサートでは、映画のなかで印象的に使われるクラシックピアノ曲を中心に彩られ、さらに久石譲×辻井伸行の一夜限りの豪華コラボレーション!ステージ初共演がついに実現!オリジナル版指揮者・ピアニスト・管弦楽による堂々の世界初演!

映画ファン・音楽ファンからも熱い視線をあつめる音楽会は、コンサート終演後すぐにWebニュースを駆け巡りました。公演写真も含めた詳細なレポート、終演後の舞台裏まで垣間見ることができる貴重なトピックはエンタメ業界のプロたちだからこそ。十分に感じとることができる内容になっています。ぜひご覧ください。

 

 

 

ということで、まずは上のWebニュース内容をじっくり読んでください。以下は、補足のような個人的な感想コンサート・レポートです。

 

 

映画『羊と鋼の森』公開記念 辻井伸行 特別コンサート
スペシャル・ゲスト:久石譲

[公演期間]  
2018/06/13

[公演回数]
1公演
東京・サントリーホール

[編成]
ピアノ:辻井伸行

共演:「The Dream of the Lambs」
指揮:久石譲
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

[曲目]
第1部
辻井伸行 ピアノの名曲を弾く
ショパン:別れの曲 
ショパン:英雄ポロネーズ 
ドビュッシー:月の光 
ドビュッシー:2つのアラベスク 
リスト:愛の夢 
リスト:ラ・カンパネラ

—–intermission—-

第2部
映画『羊と鋼の森』公開記念 特別演奏
久石譲:The Dream of the Lambs ~映画『羊と鋼の森』エンディング・テーマ 
共演:久石譲 指揮、東京フィルハーモニー管弦楽団

久石譲×辻井伸行 スペシャル・トーク
*サプライズゲスト:山崎賢人

—-encore—-
久石譲:The Dream of the Lambs ~映画『羊と鋼の森』エンディング・テーマ 
共演:久石譲 指揮、東京フィルハーモニー管弦楽団

辻井伸行 映画『羊と鋼の森』に登場するピアノ曲を弾く 
ラヴェル:水の戯れ 
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ 
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番《熱情》

—-encore—-
辻井伸行:風の家

 

 

第1部・第2部 辻井伸行ピアノソロ
響きのいいサントリーホールに、優しく力強い辻井伸行さんのピアノが響きます。CDなどで端正で正確な演奏をする方だなと思っていたのですが、生演奏を聴いてまた新たな印象も持ちました。音が立つ、一音一音が一粒一粒とても凛として立っている、解き放たれるような音。時にダイナミックに時に繊細に、メロディやハーモニーのニュアンスがとても表現豊かで、その指先と一音一音に息をのむほど集中してしまいます。最後のペダル(ダンパー)があがる瞬間と音の切れ間まで聴こえる極上の音空間は、音楽好きピアノ好きにはたまらない。1曲ごとに感想もあるけれど、曲ごとはもちろん曲のなかでも緩急とニュアンスの表現が本当にすばらしかったです。ピアノにもいくつもの音があること、いくつもの世界をつくることができること、ひとりの演奏家によるピアノ・フルコースをたっぷり堪能できた贅沢な時間。

 

 

「The Dream of the Lambs」
この一曲だけでもコンサートに行こう!と決心させるには十分だったのかもしれない。そこへ辻井さんによる選りすぐりのピアノ・フルコースも味わえる。そんな胸躍る期待をさらに超えたところにあったのは、スペシャル・トーク企画に、2回も演奏してくれるというサプライズ舞うコンサート。その瞬間にしか聴くことができない一期一会の音楽。コンサートの醍醐味であるリアルな体感はこの楽曲も同じ、CD盤よりもエモーショナルなパフォーマンスだと感じました。

僕はこの楽曲、どうもつかみきれない思いがありました。冒頭何を表現しているのかな?森かな?羊かな?…メロディパートは主人公かな?……、ミニマルとメロディの交錯する楽曲構成に、それらを分離してとらえようとしていたんだと思います。

コンサートで聴いて思ったことを率直に記しておこう。間違っていても視点がずれていても、それは永遠に個人の主観であって正解はない、と開き直って。思った瞬間のことを大切にしたいから、言葉にすることは大切なプロセスだと思っているから。

聴き手の意識で無理にミニマルとメロディを融合させようとしたり溶け合わせようとしなくていいのかな、と。はじめから二面性として顕在化されている。そう思えたのは生演奏を聴いたからで、CD盤だと整然と行儀よく音が配置されバランスがきれいに取られていることからの裏返しかもしれません。CD盤の完璧なパフォーマンスはすでにすり減るくらい愛聴しています。それとは別のところ、生演奏ではじめて感じとれる何か、きっかけがあるとしたら。

音楽はすばらしい、音楽はきびしい。──「音楽」という言葉を「夢」におきかえても同じ。相反する二面性を堂々を据えおくことで、耳なじみよく聴きやすいだけの曲にはしたくなかったのかもしれない。

子羊たちの夢。──悩みもがき輝く成長の過程、決してまだ成熟することのないその瞬間、あえて不完全で不安定なリアリティを楽曲にとじ込めたのかもしれない。痛々しいほど鋭利に、もろいほど繊細に、踏み歩くほど力強く、拓けるほど輝かしく。

音楽はすばらしい。音楽はきびしい。ゆえに音楽は追い求める価値がある。

僕にはそういう聴こえかたがしてきた。まだまだこの曲に対して深い森の中。わからないし理解できていないことのほうが多いけれど、新しい感じ方ができたこと、ミニマルとメロディはそこにそのままいていいんだ、しっかりとふたつがそれぞれに存在していれば、そのバランスや濃淡は聴く人に聴く心境にそれぞれ委ねられていいものだ。今は、そう思っています。

 

 

久石譲×辻井伸行×山崎賢人 スペシャル・トーク
司会者の進行によって質問形式で進められました。笑いありの和やかな雰囲気で、お三方がコメントするたびに客席から大きなリアクションと大きな拍手が起こるほど会場の熱気と興奮はすごいものがありました。久石譲、辻井伸行ともにすでにコメント発表している(CDライナノーツ/劇場用パンフレット/コンサートパンフレット収載)同旨はもちろん、ここでしか聞けない話もふくめて10-15分間くらいゆっくり腰をすえて。

久石譲のコメントトークからうる覚えながら印象に残っているポイントだけ。言葉や言い回しは違うので正確ではないです。ふりしぼった記憶という注釈付きでお願いします。

「最初に映画の話をいただいたときに、調律師の話でもあったし、ピアニストこれはもう辻井さんしかいないとすぐにお願いして快く引き受けていただきました。彼を想定してつくった曲です。すばらしい演奏をしてくれて、こういう機会にめぐりあえて本当にラッキーでした。ありがとうございます。」

「音楽の世界をちゃんとやらなきゃいけない、そういうことでミニマルとメロディでいかに組みたれてるか、そういうアプローチをしました。」

「青春映画は多くのものを詰め込みがちになるけれど、この映画は調律師に絞っていてとてもよかった。ふつうはセリフで多くを説明しようとしてしまうけれど、この映画は映像で心理描写をする、地道でしっかりとした映画づくり。」

辻井伸行さんも、山崎賢人さんも、皆さん均等にお話していたのですが、そこまでは覚えきれずすいません。冒頭に紹介したWebニュース等をご覧ください。Webニュースの写真からはトークコーナーのあいだ「The Dream of the Lambs」の演奏を終えた東京フィルハーモニー交響楽団の皆さんがそのままステージに残っていることがわかります。あまりにもいろいろなことに興奮していたので、なんで残っていてくれているのかなんて考えもおよびませんでした。そして、2回目の「The Dream of the Lambs」へ。

 

 

アンコール
拍手のなか再び登場した辻井伸行さんはマイクなしに客席に向かって語りかけました。「今日は久石先生のすばらしい楽曲があってそれを演奏させていただいて恐れ多いのですが…」とちゃめっ気たっぷりに笑いを誘い、自作「風の家」の曲紹介へ。この曲はショパンが若い頃住んでいた家に実際に訪れたことがきっかけとなっているそうです。

そして「お知らせがあります!」と6月15日(金)テレビ朝日系「ミュージック・ステーション」に山崎賢人さんと一緒に出演することを告知すると、会場全体から大きなどよめきと大きな拍手。最後のご挨拶をしてアンコール曲「風の家」演奏でコンサートは幕をとじました。

映画公開に先がけて5月に行われた映画完成披露試写会などで「The Dream of the Lambs」ピアノソロ・ヴァージョンが披露されています。CD盤にもない、映画にも登場しないピアノソロによる「The Dream of the Lams」これは永久保存版です。

 

 

 

第1部は、ステージも客席も会場全体の照明を落とし、ピアノと辻井伸行だけが浮かびあがるような照明演出。ステージ左右上部に掲げられたスクリーンには休憩時間などに映画『羊と鋼の森』予告編が流れていました。第2部は、白熱色と緑の光に包まれたステージ、アンコール曲「風の家」は緑からブルーに変わり清々した雰囲気に。

 

from Twitter *開演前

 

 

会場ロビーには「本日の公演には客席に記録用カメラが入ります」掲示がありました。実際に翌14日TVエンタメ系番組のいくつかでコンサート風景が紹介されています。結構いろんなアングルから撮ってたんだなとびっくりした次第です。ステージに集音マイクや撮影カメラはそんなになかったと思うのですが…。気が早いけれど、映画『羊と鋼の森』がDVD/Blu-ray化される時には、ぜひ特典映像として本公演を収録してほしい!それほどの奇跡の一夜、夢のコラボレーション、最高の幸せを共有できたのが観客2000人だけというのはとてももったいない。ぜひ音楽を愛する多くの人へ届けてください。

 

さてこうなってくると、久石譲×辻井伸行 再演を熱望しないわけにはいきません。さらには、久石譲×辻井伸行「ピアノ協奏曲」という大きな夢をもみてしまいます。久石譲にしか書けない「ピアノ協奏曲」× 辻井伸行にしか表現できない「ピアノ協奏曲」、ふたりの世界屈指コラボレーションがさらなる音楽作品へと羽ばたき、過去にも未来にも誇れるものとして現在に高らかに響きわたってほしい。そんな幸せな夢がまたひとつ生まれました。

 

 

 

 

 

(コンサート・パンフレット:楽曲解説は「羊と鋼の森 オリジナル・サウンドトラック SPECIAL」収録曲は同内容で収載されています。久石譲・辻井伸行コメントも同旨です。)

 

 

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