Disc. 久石譲 『赤狐書生 (Soul Snatcher)』 *Unreleased

2020年12月4日 公開

映画『赤狐書生 (Soul Snatcher)』
公開日:2020年12月4日 *中国
監督:宋灝霖(ソン・ハオリン)伊力奇(イー・リーチー)
主演:陳立農(チェン・リーノン)李現(リー・シェン)哈妮克孜(ハニ・ケジー)裴魁山 (ペイ・クイシャン)姜超(ジアン・チャオ)張晨光(ジャン・チェングアン)

*日本公開未定

 

 

■メイキング動画について

映画予告映像、久石譲インタビュー、レコーディング風景で構成されたもの。

 

久石譲インタビュー 書き起こし

「今回の映画はとても素晴らしく出来ていると思います。ファンタジー・アクションといいますか、でもしっかりと二人の若者の友情みたいなものが、とてもしっかりと描かれていていたので。音楽的にも、通常よりもたくさん音楽を書いて。本当にエンターテインメントとして楽しめる、ダイナミックでありながら、やっぱりある程度こうきちんと知性もあるような。音楽が映像とマッチするように作ったと思っているので、音楽のあり方と映像のダイナミックさ。そういう音楽を目指したんですけれども、自分ではすごくよくできたと思って満足しています」

 

 

全体をとおして。

約2時間の上映時間に対して、約1時間半以上は音楽が配置されている。ファンタジー映画ということもあって、その世界観をつくりあげるための音楽配分は多めとなっている。39人編成オーケストラながら、乾いた重低感のあるパーカッションなどを巧みに盛りこむことで、土台のしっかりした足腰のつよい楽曲も存分にある。

音楽収録は2020年11月7日、ビクタースタジオにて、招集型オーケストラで行われている。新型コロナウィルスの影響によって、この規模のオーケストラへと予定変更を余儀なくされたのか、そもそもこの規模を予定していたのか。どちらかはわからない。いずれにしても、この39人編成オーケストラでありながら、ダイナミックに躍動感ある音楽には、打楽器群が大きく貢献している。

 

本作は、メインテーマやそのバリエーションといったメロディを展開する手法ではなく、ミニマルな手法をとっている。メインテーマに変わる、この映画のための第1主題・第2主題のような短いモチーフがあったとして、その短いモチーフたちを料理(交錯・分解・伸縮など)しながら、映像に対して一種の通奏低音のようにうまくなじませている。

映画鑑賞後に鼻歌で歌えるほどの、印象的なメロディはあまりないかもしれない。近年、久石譲の映画音楽に対する立ち位置の変化を現したような、かつ、クラシックの手法に重きを置いた音楽づくりになっている。映像と距離をとるための主張しすぎない音楽と、ファンタジー映画のために必要な音楽量とのバランス。

あえてイメージとして挙げるとするなら、映画『千と千尋の神隠し』のサウンドトラック「16.千の勇気」、千尋が油屋の階段を駆け下りるシーンなんかで使われていたと思う曲、こういったスリリングで緊迫感を演出する音楽テイストが多い。また、「3.誰もいない料理店」では、後半に「メインテーマ あの夏へ」の変奏旋律が登場するけれど、本作ではとにかくメロディにいかない。同曲前半のように、映像を補完する背景音楽のあり方で曲は流れていく。

ピッツィカートなどで奏される軽やかでコミカルな楽曲も、宴で艶やかに踊るような楽曲も、アジアン・ファンタジーらしく五音音階からなるものも多い。こういったことからも、無意識に『千と千尋の神隠し』を想起したのかもしれない。もちろん、似た曲があるかと言われたら、それはない。ハラハラドキドキ、危機的なシーン、戦う場面など、冒険ファンタジーなストーリー展開のなかで、ミニマル手法を駆使した楽曲が特徴といえる。

オーケストラサウンドに、エッセンスとしてシンセサイザー音もブレンドされている。シンセサイザーらしい音色の使い方や選び方をしている。生音のストリングスにシンセサイザーのストリングスを混ぜる手法(それもあるかもしれない、素人耳にはわからない)というよりも、『Deep Ocean』音楽のようにシンセサイザーにしか出せない音色をうまく組み合わせた楽曲たちが目立つ。

 

 

少し個別に。

プロローグから、ダイナミックな物語の展開を予感させる、緩急あるミニマル・モチーフが展開する。静謐な弦楽合奏によるミニマル旋律にはじまり、幾重にも交錯し、強弱と重厚の増減でうねりをともなっていく。パーカッションの鼓動やホイッスルの遠くへ伸びる旋律を織りまぜながら、ファンタジー感と神秘感を演出している物語のはじまり。プロローグからタイトルバックまでの約15分にわたってつづく音楽は、タイトルバックでピークを迎える弦楽器の精巧な音型もまた、ミニマルな旋律になっている。

主人公二人の友情のテーマ、こちらは大きな弧を描くようなメロディで、優しく温かい曲想。シンプルな旋律線と、エモーショナルになりすぎないハーモニー。二人の友情の交流を描いたシーンに、たびたびバリエーションで登場する。状況にあわせて短調な旋律で奏されることもある。

公式公開されていた映画ワンシーン動画(約1-2分)、そこでも聴くことができたホイッスルをメインとした楽曲は、ホイッスルが細かく精巧な節まわしを披露していて、伸びやかなに広がっていく。

愛のテーマ。主要キャラクターの一人、女性が登場するシーンで多く聴かれる楽曲。お香のような、ゆらゆらと、ふわっとした、無軌道な和音ですすむ。ゆるやかな独奏、メロディとアドリブのあいだのような、動きまわりすぎない加減の無軌道な旋律がのる。魅惑的で妖艶な曲想は、これまでの久石譲には珍しい。クラリネット、フルート、ピアノ、ストリングス、フリューゲルホルン。登場するたびにメロディを奏でる楽器たちを変え、まるで衣装替えに見惚れるように、つややかに彩る。

 

総じて、主要楽曲は、登場の多い順に、友情のテーマ、愛のテーマ、プロローグのテーマが、本作において印象的で重要な柱になっていると思われる。また、それらを合算したとしても30分前後としたときに、ほかの多くをミニマル手法の音楽によって、映像にうまくなじませている。ファンタジー世界に立体感をあたえている。メイキング動画からも、音楽割のMナンバー「M36」と、少なくとも36曲は書き下ろしていることもわかる。

 

 

映画エンドロールに流れる主題歌は、作曲・編曲ふくめて久石譲楽曲ではない。主演俳優が歌唱している。

未CD化作品。

 

 

 

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