Disc. 栗本薫 『魔境遊撃隊 SOUND NOVEL SERIES』

1985年11月21日 LP発売 C25G0400
1985年11月21日 CT発売 25P-7401

 

SOUND NOVEL SERIES
栗本 薫/魔境遊撃隊

南海の巨石島へ薫少年とサウンドトリップ!!

原作:栗本薫
音楽プロデューサー:久石譲
ジャケット:天野喜孝

セント・ジョゼフ島 地図付

 

魔境遊撃隊 / 栗本薫

この「魔境遊撃隊」は、実をいうと、やや失敗作であります。というのは、はじめ、私が書こうと思っていたのは、四百枚の短編で、しかも、たとえていえば、そう、ハガードの「洞窟の女王」とか、新青年にのってるような──何というか、古式ゆたかな、きわめて古式ゆたかな「秘境小説」の一編だったのでした。小栗虫太郎の「人外魔境」とか、うん、とにかく、丸帽とサファリ・スーツをきた探検家が、白いワニの住んでいる大河をイカダで下ると、やがてニューッと大蛇が木の上からおりてきたり、夜ともなると、ドン・タ・タ、ドン・タ・タ、と人食い☓☓(差別用語につき自主規制)のタイコがひびき、宣教師の娘とか人買いの商人とか、大魔術師とか、不死の女王とかが右往左往する。そういう話を夢みていたのに、どこでどう狂ったものか、できあがったのは、もう少し、モダンな印象のあるものでありました。きっと語り手が、栗本薫君だったのが、まちがいのもとだったのでしょう。枚数は八百枚にのびるし、どんどんイメージはかわるし……しかし、そういう意味で、はじめのイメージどおりにはちっともならなかったのですが、話そのものとしては、私はこの話がわりあい好きです。ことに”リ”ララ、という少女は好きで、もう少しじっくりとした環境(つまりもっと長いってこと)で書きこんでやりたかったと思う。その「魔境遊撃隊」が、こんど、イメージ・アルバムになるということで、楽しみにしています。だんだんわるいクセがついて、短い話が書きづらくなってきてしまい、このままでは千枚以下の短編は書けなくなりそうなので、このクセは何とか是正して、そのうちまた、もういっぺん、「新・魔境遊撃隊」も、こんどこそ「新青年」もろという古めかしさでもって書いてみたいものだと思っています。どうして、そういう古式ゆたかさにこだわるか、というと、それは、幼いころからの私の夢だったから、と云いましょうか。久石譲さんが、幻想と怪奇、モダンとクラシックのミックスしたこの話のエッセンスを、たくみにとらえてくれました。古式ゆたかの方のときには「冒険ダン吉」のテーマでもかけてもらうとして、この「魔境遊撃隊」の方はぜひ、このアルバムをかけつつ読んでみて下さい。

1985年10月 栗本 薫

(LPライナーノーツより)

 

 

ストーリィ展開の要旨……松浦典良

A-1 魔境遊撃隊のテーマ

A-2 サザンエクスプローラー号、南へ
友人石森に連れられ印南薫なる人物に会う。山中に立つ荒れはてた赤れんがの豪邸に住む当主はこの世のものとも思えぬ美少年。その物腰は16才の少年らしからぬ、歴史ある印南家の当主の風格。薫の依頼で奇妙なとりあわせの魔境探検隊コマンドは南へ向う。

謎の死をとげた父のもとに月十字教団なる秘密結社から送られて来た一通の手紙は南海の孤島で死んだ宣教師エリクソンについての報告書。エリクソンの名は死んだ父が握っていたメモに印されていた名。報告書には薫の魂を要求する請求書がつけられていた。父の死の謎、エリクソンの死にまつわる謎に迫りはっきりさせる為に島の調査をしたいと薫の説明。

 

A-3 巨石の島
20日后ひっそりと浮かぶ島に上陸。島民はガンボバ族。南の島らしいわきたつような生命の息吹、躍動感はまったくなく、崖にうちよせる波と梢をわたる風の音が聞こえるのみの荒涼たる島。牧師館の連中と対面。じっとみすえるガンボバたちのたくさんの目が不気味。とつぜん広がる巨石遺跡に息をのむ。林立する高層ビルのような墓場のような四角い巨石の乱立する奇蹟のごとき絶景、巨石のてっぺんに巨大な夕日を背にして立つあやしい魔物じみた影、くるりととびおりたのはクレアエリクソンの娘・メナ。ふさふさした金髪、夢みるような瞳の小さな妖精のような美少女。強烈な個性と一種独特の神秘的な雰囲気は薫に共通するもの。あなたはきれい。アダルパ(ガンボバの信じる精霊、光の幻の鳥)みたいと、大人の女のような微笑で薫をみつめる。メナは自分の父母のことや牧師館のオーガスタらのいかがわしさを薫に話す。聞いている薫はその肩に手をかけ、よりそう二人は小妖精のように美しい。

 

A-4 ン・チャーナの祝祭
遺跡の調査に出かけた一行の前にゼリー状の不気味な巨鳥ン・チャーナ・ガイが現れこつぜんと消える。その出現におびえあせるオーガスタ等は、ダイヤの鉱脈とエリクソンの日記のありかを迫る。息づまる緊張、どこからか絶叫、夜の浜辺にころがるひきちぎられた首と胴。一夜あけ牧師館はからっぽ、地下室にとじこめられていたメナ。ガンボバの輪にとりかこまれる。じりじりと迫る。やがてたき火が燃やされ、太鼓がうちならされ、叫び声をあげ、火のまわりをめぐる。次第に高鳴り、ふいに大地が鳴動し大音響がひびく。大地にひれふし哀訴するガンボバたち。いっせいにゲドポへ走る。大音響と鳴動の中あらわれた石の島、再び地鳴り、高まる太鼓と叫び。石の島の上にこつぜんとあらわれたン・チャーナ・ガイ。

大音響と共に青い壁となって津波のようにおしよせる。

 

A-5 石の街のゴララ
気づいたところは海底の石づくりの街チャムロラ。そのあやしげな景色。灰色の奇怪な兵士が見える。石の道を進む。牧師館から消えたオーガスタ等に出会う。再びダイヤのありかを銃口で迫る。逃げる、走る、追う!

ねがえった日光、月光にはばまれる。こつぜんとあらわれるン・チャーナ・ガイ。灰色兵士にとりかこまれる。切りかかる日光の刀の一閃が灰色の首をとばす。首から胴から流れ出るゼリー状の粘液と眼だま。みる間に地面にとけこみひからびた皮と眼だまがころがる。そのおぞましさ灰色兵士に連行されて石の道を行くと突然床がエレベーターのように沈む。ついたところは緑なす草原、美しい神殿・モアイ像、さきみだれる白い花・きこえる小川のせせらぎ、これまでとはうってかわった人間的なたたずまい景色。

しかし頭上をおおうのはコハク色の不気味な物体、鍾乳洞のようにたれさがり皮膜の内部は巨大な何物かの腸の内部──地球のはらわたのよう。

暗緑色の森の間に首を出したのは太古の恐竜プロントザウルス。ゴララ。その巨体は不思議な威厳と悲哀をただよわせ、人間的な親しみを感じさせる。不思議な感動に金縛りになっているところへ、ン・チャーナ・ガイがゴララの上に降下しておしつつむ。苦悶にのたうつゴララ。

 

B-1 悪魔の侵触
うすぐらいひんやりとした神殿に連れこまれ牢につながれる。薫の父の死はゴララの悶絶と同じ姿だった。薫の魂を要求してきた月十字教団は自らを先史文明の生きのこりであると信じて現在の文明にとってかわろうとしている結社。薫を先史文明の生きのこりの末裔と信じて仲間になれと強要。船室にも上陸后のベッドにもダイイングメッセージが届いた。月十字が信ずるのは先史以前の神クトゥルーの古き神々。ン・チャーナ・ガイは古き者たちなのか?オーガスタらはその一味なのか?

牢から連れ出されて石の廊下をゆく。ずらりとつづく円柱にほどこされた彫刻や神殿のつくりから、古代のチャムロラの人々の典雅な生活や異常に高い文化がしのばれる。やがて略奪と戦火にさらされたと見られるがらんどうの部屋がつづく。そして壁画は不気味で暗い内容に変り、最后には四方の壁をぬりつぶす海と黙ってみおろす巨大なひとつの目。そそりたつ石の扉が開く、巨大なプールの中に言語を絶する生きものン・チャーナがうねうねとぬらぬらとうごめいて、凄惨な食事をしている。天井も壁もおおいつくしているコハク色のゼリー。恐怖のきわみの一行。狂気のクレアにつきとばされたハワードはン・チャーナにとりかこまれる。断末魔の絶叫がひびく。

 

B-2 白い女王
翌朝、打ち合せ通り脱走をはかる。いっせに走る。やられた灰色から流れ出たゼリーが大きなかたまりとなっておしよせてくる。神殿をとびだし、石の街並を走りぬけ草原をぬけ、恐竜の森へ入る。地ひびきをたてて通りすぎるプロントザウルスの見るものを魅了するその姿。突然現われたティラノザウルスの狂暴な赤い口がヘンリーをくわえこむ。金縛りの恐怖、更におそいかかるその一瞬ン・チャーナ・ガイがティラノザウルスをつつみ込み、再びン・チャーナ・ガイの形にもどると翼をひろげて一同をつつみ込み、空中高く浮びあがる。そこで見た信じられぬ光景、それはプロントザウルスにまたがり両手をさしのべているメナ。メナはン・チャーナ・ガイにのみこまわれたゴララの意識に命令して薫たちを安全なところへ運んだのだ。

メナは伝説の白い女王。かつてこの地に存在した大陸には長身、長頭の美しい人々が精神を基盤とした高度な文化をもって久しく栄えていた。テレパシーやテレキシネスを所有、ストーンヘンジやモアイやチャムロラの石の街をつくりあげた。代々、女王が君臨し平和に納められていたが予言者が大災厄が大陸を海底に没すると予見。生き残る方策のひとつとして街を石でとりかこみ要塞としたチャムロラはもちこたえた。地上が平和をとりもどすまで海底で眠りについた。氷河期を追われた恐竜たちもやって来た。そこへ地球外生物、ン・チャーナがチャムロラを侵略、その強烈な発展欲と種族保存の本能はすべてをとりこみ、この惑星すべてをゼリー状の物質でおおいつくそうと地上へもその触手をのばしてとりこむ。チャムロラをン・チャーナからとき放つために代々生きつづける女王たちの魂の念がこりかたまってメナが生まれた。

メナはチャムロラを永遠の休息につかせるためにン・チャーナと戦うためにチャムロラ自体の思念が生みだしたヴァルキューレ、危機をのがれた一行の前にほほえむ愛らしく幻想的な美少女メナ。

 

B-3 クレアの微笑
いまだにダイヤにこだわる月光の物欲を冷たくさげすむ薫、その異常なまでの反応は人間以外のものを想起させる。薫を人質にメナに自分を連れもどせとおどすオーガスタ。自分はCIA調査官だと名のる。そのオーガスタをねりこむン・チャーナ・ガイ、それはすでにゴララの意識は消えうせ狂悪そのものとなって薫に迫る。メナの制止もきかない、しがみつくメナ。メナをかばう薫、銃を発射する栗本、かばい合う内についに薫はひざまでのみこまれる。

しがみついて、死んじゃいや、あなたが好き、あたしが助けてあげると必死のメナの手が薫にピタリとふれるやふっと消え失せる薫。同時にメナの体から四方へす~~といくつものおぼろげな白い人型がぬけ出してゆく。メナが異性に心をうばわれ勝手に超能力をつかったことに怒りと失望にかられた女王たちの魂がはなれていったのだ。そこにはただのかよわい10才の少女がン・チャーナ・ガイのいけにえに身をさらしている。熱い思いに命をなげうってとびだす栗本、しがみつくメナ、もはやこれまでとだきしめる。メナ!とささやくような、しかし強くはげしい慈しみと自己犠牲に満ちた声、クレアが青白いゼリーにのみこまれてゆく、メナ、アイラブユーと聖母の限りない慈愛のほほえみ。ママ!と絶叫するメナ、彼女はクレアではなくメナの本当の母ヘレンエリクソン。クレアになりすましていたのだ。娘への思いは狂気をも圧倒して命をもってメナを救った。

 

B-4 リ・ララとアダルパ
メナにわきおこる激烈な怒り。不条理な運命に対する怒り、それをもたらした自分自身とン・チャーナ・ガイに対する怒り。

白い女王たちに懇願するメナ。憎いン・チャーナを倒すためにもう一度もどって来て!アダルパのことはあきらめる、二度と迷わない、帰って来てメナの中に!ほとばしるメナの叫び。ン・チャーナ・ガイめがけて突進する。その小さな体をすっぽりつつみこみ、やがて細かく身をふるわせ、次第にはげしい苦悶にのたうち内側からとけてゆく。悪臭とひからびた皮をのこして消える。吹きぬける風の中に呆然とたちつくす栗本と雷電。おーいと秋月の声、そのひざには突然空中からあらわれたという薫をだいて、薫の両脚から下はとかされ骨があらわに。見はるようにそそりたつプロントザウルス。ゴララおさがり、とメナの声、その姿には誇りと力強さと意地と冷静さと威厳。統治者であり支配者である者のふしぎな悲哀をさえ漂わせる。

恋をすて再び女王たちの力を得たメナはン・チャーナ・ガイを倒した。そしてン・チャーナを倒してチャムロラに永遠の眠りをあげる、地上の人々を目に見えぬ侵略の危機から救ってあげる。私はひとりじゃない、人の思いはほろびない。みんなここにいる。心配しないでアダルパ、いつかあなたと会える、人の思いは死なないのだから、あなたがずっと好き、と風のようにほほえむ、女王たちの魂がやさしく守るようにつつみ込む。メナの首に自分のロザリオをかける薫。じっと大人の女のように無限の思いのまなざしでみつめる。さようなら大好きなアダルパ! メナの声がふいに遠くなり一陣の海の匂いの風がつつみ、胸の底からひらけてゆくような解放感に気がつくと、薫・秋月・雷電・栗本の4人はセントジョゼフ島の渚にたちつくしている。

尚も執拗に追ってくる月十字教団、それは執事の杢内とその仲間。薫の体をクトゥルーの神々に捧げクトゥルーの長い眠りをさまして戦いにかりたてようとしている。銃で強迫。銃声と同時にカミナリのような青白い閃光が杢内一味におちる。黒コゲの死体。その閃光は薫が両手をあげて呼びこんだように見えた。薫は消えた。薫は何者だったのか? アダルパ、精霊、人類よりも、チャムロラの人々よりももっと古くからいたもうひとつの種族。この惑星自体のもつ山や川や海や木々や時の流れそのものの生命、エッセンスがつくりあげた地球そのものともっとも近い生物。

地球の魂、地球のこころ。われわれ現代人が忘れきく耳を失ってしまった大自然の思いと魂、精霊たちの息吹をきき、うちよせる青い波と吹きすぎる風に身をまかせてたちつくす。

(LPライナーノーツより)

 

 

魔境遊撃隊 栗本薫 久石譲 LP sc1

魔境遊撃隊 栗本薫 久石譲 LP sc3

(LPジャケット)

 

魔境遊撃隊 栗本薫 久石譲 LP sc5

魔境遊撃隊 栗本薫 久石譲 LP sc7

魔境遊撃隊 栗本薫 久石譲 LP sc8

魔境遊撃隊 栗本薫 久石譲 LP sc9

(LP封入ライナーノーツ)

 

 

 

魔境遊撃隊 栗本薫 久石譲 LP sc1

SIDE-A
1. 魔境遊撃隊のテーマ
作曲:久石譲 編曲:福岡やすこ
2. サザンエクスプローラー号、南へ
作曲:久石譲 編曲:武市昌久
3. 巨石の島
作曲:久石譲 編曲:浜乃家霞
4. ン・チャーナの祝祭
作曲:久石譲 編曲:岡田健一、浜乃家霞
5. 石の街のゴララ
作曲:久石譲 編曲:武市昌久

SIDE-B
6. 悪魔の侵触
作曲:久石譲、ジャッカル岩崎 編曲:ジャッカル岩崎、浜乃家霞
7. 白い女王
作曲:久石譲 編曲:福岡やすこ
8. クレアの微笑
作曲:久石譲 編曲:岡田健一
9. リ・ララとアダルパ
作曲:久石譲 編曲:福岡やすこ

原作:栗本薫
音楽プロデューサー:久石譲
イラストレーター:天野喜孝
構成:松浦典良

 

Disc. 久石譲 『アリオン イメージアルバム -風・荒野-』

1985年10月25日 CD発売 32ATC-105
1985年10月25日 LP発売 25AGL-3013
1985年10月25日 CT発売 25AGC-2013

 

1986年公開 映画「アリオン」
監督:安彦良和 音楽:久石譲

 

久石さん-温い音の語り部

久石さんはサウンドで物語を描く天才だと思う。音痴の僕にはよく判らないが、ちょっと他にはないよという位の、そのくらい大変な人なのではないかと思う。

数年前、喘息の発作で死んでしまった学生時代からの友人がブラリと僕の家にやってきた時に、その奥さんが小意気にウォークマンで聴いていたのがヴァンゲリスのシンセ・ナンバーだった。ちょいと拝借して瞬間に「ギリシャ」を感じ、拙作の「アリオン」に音を乗せるなら”これだ!”と思った。ただし、そんな機会に実際に出会えるかどうかは、まったく意の外にあった。

久石譲さんという人に、最初にお会いしたのは確か2年前の初秋の頃である。「アリオン」の2枚目のアルバムをどうか…ということで、徳間の事業部の方々と御同道で、わざわざ所沢の僕の仕事場を訪ねてこられたのだった。この時はマズイ行きちがいがあって、僕には大体その気がなかったものだから、文字通りの御足労に報いることが出来ず、出会いもそれっきりになってしまった。

この時に久石さんが「ナウシカ」のイメージアルバムに着手されていることを聞いた。そして本編「ナウシカ」の曲世界が、同じ久石さんの作であることは、観劇の後で知った。

久石さんの印象は2年前も現在も、「らしくない音楽家さん」である。ふっくらとした優しい風貌も、手土産を下げて汚ないアニメスタジオを訪ねてくれる気さくさも、全く、僕などが持っていた「音楽作家(ミュージシャン)」のちょっぴり気どったイメージとはかけはなれている。多分久石さんは、あれこれ営業用の顔や所作のなんかを、もともと必要としない人なのだろう。ただひたすらに真摯な、「音の作家」そのものの人なのだろう。

失礼かなとは思いつつ、メインのイメージにはヴァンゲリスへのこだわりをサジェストした。素朴で、美しくて、物語性を感じさせるものを…と。僕の注文はいつもながら舌っ足らずな、つたないものだった。

出来あがった曲はキャンペーンの旅先で聞いた。僕は一ぺんに幸せになった。

出会いはちょっぴりマズかったけれど、久石譲という人をしることの出来た喜びを、僕は今、しみじみかみしめている。

原作・監督/安彦良和

(CDライナーノーツ より)

 

 

1. 前奏曲(プレリュード)
2. 風・荒野(メイン・テーマ)
3. セネカ
4. 海の軍団
5. 運命の糸
6. 魔宮
7. レスフィーナ
8. 輝く大地-土と祭り-
9. 輝く大地-オリンポスへ-
10. 風・荒野(エンディング・テーマ)

プロデューサー:久石譲
音楽・演奏:久石譲

歌唱:佐藤ひさら・杉野正隆

録音スタジオ:WONDER CITY STATION , SUNRISE STUDIO

 

Disc. V.A. 『機甲創世記モスピーダ ラヴ、ライヴ、アライヴ』

1985年9月21日 LP発売 JBX-25071
1985年9月21日 CT発売 VCK-6154
1985年9月21日 CD発売 VDR-1086

 

1983年 フジテレビ系アニメ放送 「機甲創世記モスピーダ」
音楽:久石譲

放送期間:1983年10月2日~1984年3月25日
放送時間:毎週日曜日9時30分~10時(関東地区)
放送局:フジテレビ系
放送話数:全25話

 

 

(LPジャケット)

 

1.マインドツリー
2.ミッドナイト・ライダー
3.クラップ・クラップ・クラップ
4.デビルズ・アイ
5.ブルー・レイン
6.やっつけろ!
7.愛・夢中
8.クリスタル・モーメント
9.ハート・ウェイヴ
10.心の星
11.荒れ野へ

 

Lyrics: Asa Akane (1 to 4, 6, 7, 9 to 11), Jin Haneoka (10)

Composed: Joe Hisaishi (1 to 4, 6 to 10), Yukihide Takekawa (5), Hiroshi Ogasawara (11)

Arranged: Joe Hisasihi

Performed: WHILE ROCK BAND (1 to 4, 6, 8-11), Mine Matsuki (7), Jin Haneoka (10)

 

Disc. 久石譲 『早春物語 オリジナル・サウンドトラック』

久石譲 『早春物語 オリジナル・サウンドトラック』

1985年9月1日 CD発売 32DH-205
1985年9月1日 LP発売 28AH-2005
1985年9月1日 CT発売 28KH-2005
1985年7月25日 CD発売 CPC8-3007

 

1985年公開 映画「早春物語」
監督:澤井信一郎 音楽:久石譲 出演:原田知世 他

 

17歳の少女が中年サラリーマンに寄せるほのかな想い…。
少女が大人のふりをすればする程、なんだか滑稽に写る。少女の揺れ動く心を久石譲が、オープニングで叙情的なメロディーを聴かせてくれる。原田知世が歌う『早春物語』『星のデジャ・ヴ』も収録。

(CD帯解説より)

 

 

有意義な成果を残した澤井信一郎&久石譲のコンビ第2作

赤川次郎が原田知世のために書きおろした小説を映画化した『早春物語』(1985)は、中年の商社マンに惹かれて揺れる17歳の女子高生を描いた青春映画だ。監督デビュー作『野菊の墓』(1981)で松田聖子の、『Wの悲劇』(1984)で薬師丸ひろ子の新たな魅力を引き出した澤井信一郎が、全幅の信頼の下、演出を任された。初公開時の同時上映作品は、つかこうへい原作&脚本による『二代目はクリスチャン』(1985・井筒和幸監督)だった。

鎌倉に住む沖野瞳(原田知世)は写真部に所属する17歳の女子高生。春をテーマに写真を撮り歩いていた彼女は、ある寺の桜の木の前で商社マンの梶川(林隆三)と知り合い、好意を抱く。ところが、彼はかつて今は亡き母親と付き合っていた男であった。母親の旧友から「母は捨てられた」と聞いた瞳は、梶川をわざと母親との思い出の地へ連れて回る。だが、憎しみの一方で、瞳の心は梶川への熱い想いにも揺れていた…。

思春期の少女を追うカメラはゆるやかな動きの長回しに終始し、その長いワンカットの中に物語の空気を的確に刻んでいく。一見淡々と展開するドラマも、やがて独特のリズムを生み、さりげなくも情熱的な高まりをほとばしらせる。原田知世のアイドル性とドラマの厚みを一体化させた澤井の演出は見事の一言に尽き、あらゆる方面からの高い評価も文句のない一本となった。朴訥とした田中邦衛や初々しい仙道敦子に加え、前作『Wの悲劇』でデビューした高木美保が商社の受付嬢でチョイ役出演。さらにうれしく映るのは、スタッフ陣に撮影担当の仙元誠三共々、久石譲が音楽担当に呼ばれていることだろう。

澤井と久石は『Wの悲劇』で初めて顔を合わせた。すっかり意気投合した二人は、続く『早春物語』を経て『めぞん一刻』(1986)、『恋人たちの時刻』(1987)、そして『福沢諭吉』(1991)へと共同作業を進めるに至る。監督第1作『野菊の墓』では菊池俊輔と組んでいる澤井だが、以後の関連を見るだけでも、いかに久石とのコンビが居心地のよいものだったかが知れようか。クレジットだけを頼りにしても、『Wの悲劇』では単なる音楽担当の名前だった久石が、この『早春物語』では音楽監督とうたわれている。より良い環境が作曲者に設定させたという点で、その信頼の幅がうかがわれるというものだ。

『早春物語』について、久石は自伝的エッセイ『I am/遙かなる音楽の道へ』(1992・メディアファクトリー刊)で、まず以下のように述べている。

「高校生ぐらいの年頃というのは(中略)自分がもつべき価値基準を手探りで体験していく時期なのだ。これは好き、あれは嫌い、これは許せる、あれは許せない、今までの無垢な自分というものが通じない世界が、彼に、あるいは彼女に突き付けられる。こういう初めて価値観に目ざめる時というのは、とてもドラマチックだと思う」。

前作『Wの悲劇』よりも主人公の年齢が下がったことへの感想を交え、作品の方向を論じる久石は、少女の心の揺れ、移ろいについて前向きなアプローチを考えていたと見ていい。つまり、より青春映画としての核心に迫る音楽を構想していたのではないか。

「傷ついた自分を大切にして、これからもずっと闘っていこうとする姿勢、それが僕はとても好きなのだ。そういう姿の人たちに出会うと、応援したくなってしまう。すべての人にとって、いちばん美しい部分なのだから」(前述自伝より抜粋)。

そうして生まれたメロディー群は、ある種のセンチメンタルを抱えながら、時に叙情性と軽妙なリズムも兼ね備えて、作品に清涼感を与えることになった。すなわち、それらは主人公、沖野瞳のもう一つの姿でもある。ストリングスや木管、ピアノ、ハープによるアコースティック音もあるが、基本的には久石が『風の谷のナウシカ』(1984)で使い始め、それ以後、彼の映画音楽の仕事で最強の手兵となっているサンプリング・マシン、フェアライトの音色がほとんどを占めているといっていい。

特に印象的に聴こえてくるのはオープニングだ。鎌倉の海から主人公の通う高校へと俯瞰図で追う映像に、螺旋を描くような効果音ともとれるサウンドが響く。自伝によると、メロディーに納得しつつも「何かが足りない」という澤井監督に、それでは「鷗(カモメ)の飛び立つような音を入れようと思った」結果できたのがそのメインテーマの冒頭部だという。その正体は「拍子木とかシンセサイザーの高音とか、さまざまな音をサンプリングしたものを、ランダムに打ち込んで一斉に鳴らしてみた」ものだと続けている。「澤井さんという人は新しいものが大好きで、これにはとても喜んでくれた」とも記されている。興味深いエピソードだ。

澤井が新しいものに対して敏感であることは、例えば『めぞん一刻』を見ても瞭然だ。エスニックな音楽がちりばめられた中、いきなり始まるミュージカル・シーンは感覚の新しい人、もしくは音楽に対して柔軟な対応をとれる人でなければ撮れない。それゆえの青春映画の名手という逆説も成り立つのだろう。学生時代より音楽の実験にいそしんできた久石にとって、オーソドックスな作風ながら”遊び”を任せてくれる澤井信一郎という監督の存在は、やはり大きかったといえる。後に、大林宣彦、北野武といった実写畑の監督たちの作品でブレイクしていく作曲者の素地は、澤井作品にできあがっていたのではないか。その意味で恩人ともいえる澤井を、久石は自伝で「いちばん上の兄貴のような感じだ。いかにも毅然とした、なにもかも仕切る長男風で、それでいて弟思いの優しさがある」と評している。大林宣彦はすぐ上の兄さんという感じらしい。なるほどである。

実はハーモニカの名手でもあったりする澤井は、現在のところ”弟”との”遊び”を控えている。80年代に比べ、長野パラリンピックの総合プロデューサーを務めるなど、ぐっと有名人になってしまった感のある久石にはどこか照れでもあるのか。有意義なコンビ第2作『早春物語』の成果を見るにつけ、そろそろ新しい共同作業が見たいところだ。

久石譲は1950年12月6日、長野県は信州中野生まれ。4歳のころからヴァイオリンを、高校で作曲を学び、現代音楽の道を極めるべく国立音楽大学へ入学。在学中に数多くの前衛音楽の演奏会を開き、卒業後はより実験性の高いミニマル・ミュージックの方向へ手を伸ばしていった。やがて現代音楽の分野で行き詰まりを感じると、ポップスのフィールドへ転身。1982年に発表したオリジナル・アルバム『インフォメーション』がきっかけとなり、宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』の音楽を担当し、一躍時の人となる。以後、宮崎作品を全てこなすほか、実写作品では大林宣彦監督との『ふたり』(1991)、『はるか、ノスタルジィ』(1992)、『水の旅人/侍KIDS』(1993)、北野武監督との『あの夏、いちばん静かな海。』(1991)、『ソナチネ』(1993)、『キッズ・リターン』(1996)、『HANA-BI』(1998)などの音楽を担当する。ほかに『アリオン』(1986・安彦良和監督)、『この愛の物語』(1987・舛田利雄監督)、『カンバック』(1990・ガッツ石松監督)、『タスマニア物語』(1990・降旗康男監督)、『パラサイト・イヴ』(1997・落合正幸監督)など。

1998年5月28日 賀来卓人

(1998年再販 CDライナーノーツより)

 

久石譲 『早春物語 オリジナル・サウンドトラック』

(オリジナル・ジャケット)

 

早春物語 再販

(1998年7月25日 CD再販 ジャケット)

 

1. プロローグ
2. 早春紀行
3. 星のデジャ・ヴ 歌:原田知世
4. 扉の向う
5. ショック
6. 揺れる心
7. 早春物語 歌:原田知世
8. 走馬燈
9. 恋だと思う
10. SPRING WALTZ
11. 潮騒
12. エピローグ

音楽:久石譲

「星のデジャ・ヴ」
作詩:康珍化 作曲:来生たかお 編曲:大村雅朗

「早春物語」
作詩:康珍化 作曲:中崎英也 編曲:大村雅朗

 

Disc. 久石譲 『炎のアルペンローゼ Vol.3 メルヘン・ドラマ編』

1985年8月25日 LP発売 25AGL-3009
1985年8月25日 CT発売 25AGC-2009

 

「炎のアルペンローゼ Vol.3 メルヘン・ドラマ編」
(声優フリートークのおまけ付き)

カラーグラフ4頁付き
初回特典/B6サイズ・キャラクターシール

 

(LPジャケット)

 

(カラーグラフ 1部)

 

(初回特典/B6サイズ・キャラクターシール)

 

 

A面
夢のつばさ (メモリー)
トラヴェルソ
ランディのテーマ
ジュディのテーマ
白い雲
権力者のテーマ
グールモンのテーマ
眠りなさい
レオンのテーマ
オーストリア交響曲 (第一楽章)

B面
戦火の歌
グールモンのテーマ
天使のテーマ
オーストリア交響曲 (第二楽章)
アルペンローゼの歌 (ジュディ)
夢のつばさ (1番)
夢のつばさ (ロマンス)
夢のつばさ (2番)
幼な心
若草の願い
やんちゃなエンジェル

音楽:久石譲、藤澤文女

 

Disc. 久石譲 『炎のアルペンローゼ Vol.2 シンフォニー編』

久石譲 炎のアルペンローゼ シンフォニー編

1985年7月25日 LP発売 25AGL-3008
1985年7月25日 CT発売 25AGC-2008
1987年6月25日 CD発売 30ATC-152
2000年4月26日 CD発売 TKCA-71918

 

1985年放送 TVアニメ「炎のアルペンローゼ」
原作:赤石路代 音楽:久石譲

 

久石譲が音楽を担当した名作少女アニメ・サントラ盤よりオーケストラアレンジされた楽曲を収録したシンフォニーアルバム。

 

 

「アルペンローゼ」シンフォニー編解説

最近にしては珍しい本格的なドラマ・ヒロイン”ジュディ”は、あくまで純粋、かわいくてけなげ(今時いるか?そんなオンナ!)そのうえ記憶喪失で思いっきり星目がち、思わず音楽を引き受けてしまった。

ヨーロッパ調の物語である為か、クラシックにこだわってみたかった。そこでできたのがこのアルバム、学生時代を懐しみつつ、格調高くできました。

A面のシンフォニーは、三楽章よりできていて、ピアノをフィーチャーした、ややピアノ協奏曲スタイルになっている。第三楽章は、かのベートーヴェンかブラームスか…とまではいかなくとも、「歓喜のうた」「民衆のうた」となっております。これは物語の展開上、この曲が演奏されている時にジュディたちがドイツ軍の手を逃れてスイスに逃亡するというほとんど「サウンドオブミュージック」みたいな場面に流れるのです。やった!

又、B面はシンプルにピアノソロとまさにクラシックのウタ、それもソプラノ、いいですねー。一曲目の「夢のつばさ」(メンデルスゾーンの歌のつばさではありませんよー)は、ショパンのワルツ風にアレンジされて、華麗に仕上がっている。2曲目のレオンのテーマは、この物語に登場する天才作曲家のためのもので、ほとんどリチャード・クレイダーマンの如き世界に入りこんでました、ロマンチックに泣かせます。(これから僕のことをレオン久石と呼んで下さい。アハハ…)。3、4曲目は久石さんちの子供のお母さんが学生時代に作った曲です。日頃午前サマの毎日の埋め合わせか、はたまた……。「いえ、純粋に曲で選んだのです。ハイ。」5曲目は「アルペンローゼの歌」、ソプラノの佐藤ひさらさんのすばらしい歌声が、心にしみこんでくるようですね。ほとんど名曲の味わいと、作曲者は浮かれています。

最後にこのアルバムすべてのピアノを弾いた中川理映子、若冠22才の新進ピアニストで、久石譲の秘蔵っ子的存在。レコーディングの時も、スタジオ内で賞讃の声が上がった訳で、そのむしろ男性的な弾き方は、やや荒っぽいが大変ダイナミックであると言えます。

以上様々な話題を提供しつつ(どこがだ!?)このアルバムもめでたく完成しました。

おめでとう

1985.5 プロデューサー久石譲

(CDライナーノーツ より)

 

 

炎のアルペンローゼ シンフォニー編 LP

(LPジャケット)

 

 

久石譲 炎のアルペンローゼ シンフォニー編

1. オーストリア交響曲第1楽章
作曲:藤澤文女 編曲:平部やよい
2. オーストリア交響曲第2楽章
作曲:久石譲 編曲:梶谷脩
3. オーストリア交響曲第3楽章
作曲:久石譲 編曲:梶谷脩
4. 夢のつばさ (メモリー)
作曲:久石譲 編曲:福岡保子
5. 夢のつばさ (ロマンス)
作曲:久石譲 編曲:平部やよい
6. 追憶の薔薇 (レオンハルト=アッシェンバッハ)
作曲:久石譲 編曲:福岡保子
7. 幼な心
作曲:藤澤文女 編曲:藤澤文女
8. 若草の願い
作曲:藤澤文女 編曲:藤澤文女
9. アルペンローゼの歌 (歌:佐藤ひさら)
作詞:赤石路代 作曲:久石譲 編曲:福岡保子

音楽制作クレジット表記なし

 

Disc. 久石譲 『炎のアルペンローゼ 音楽編』

久石譲 炎のアルペンローゼ 音楽編

1985年5月25日 LP発売 25AGL-3007
1985年5月25日 CT発売 25AGC-2007
1987年6月25日 CD発売 30ATC-151
2000年4月26日 CD発売 TKCA-71917

 

1985年放送 TVアニメ「炎のアルペンローゼ」
原作:赤石路代 音楽:久石譲

 

「夢のつばさ ~アルペンローゼ~」

1985年4月25日 EP発売 7AGS-2

夢のつばさ アルペンローゼ LP

夢のつばさ アルペンローゼ LP 2

(EPジャケット / EP盤)

 

 

久石譲 炎のアルペンローゼ 音楽編

1. 夢のつばさ~アルペンローゼ~ (オープニング・テーマ) (コニー)
2. 少女 (ジディのテーマ)
3. どんなときにも… (ランディのテーマ)
4. 追跡者
5. 変らぬ愛に (アルペンローゼの歌)
6. 過去をさがして
7. ひそかな不・思・議たち (夢のつばさ~アルペンローゼ~インストゥルメンタル)
8. レオンハルト=アッシェンバッハ
9. ハーケンクロイツ
10. 今はおやすみ
11. 僕がみた天使は…
12. 夢見心地で (やんちゃなエンジェル・インストゥルメンタル)
13. やんちゃなエンジェル (エンディング・テーマ) (コニー)

「夢のつばさ~アルペンローゼ~」
作詞:及川恒平 作曲・編曲:久石譲 歌:CONY

「やんちゃなエンジェル」
作詞:及川恒平 作曲:長沢ヒロ 編曲:久石譲

音楽制作クレジット表記なし

 

Disc. 久石譲 『ふたり鷹 音楽編 2 MUSIC SELECTION 2』

1985年2月5日 LP発売 C25G0376
1985年2月5日 CT発売 25P-7366

 

フジテレビ系列アニメーション「ふたり鷹」
1984年9月27日~1985年7月12日 放送

原作:新谷かおる 音楽:久石譲

 

主題歌
オープニングテーマ – 『ハートブレイクCrossin’』
エンディングテーマ – 『サヨナラを言わないでくれ』

両曲
作詞 – 売野雅勇 / 作曲・編曲 – 芹澤廣明 / 歌 – 陣内孝則

 

 

(LPジャケット / LP盤)

 

 

A1. レッドゾーン ダンシング Red Zone Dancing (挿入歌)
A2. コンクリート トライアル Concrete Trial
A3. 母子ゲンカ Family Conflict
A4. カントリー ロード Country Road
A5. 特訓 Special Training
A6. ディスコ フィーバー Disco Fever
A7. アクシデント Accident
A8. ロンリネス Loneliness
A9. ハートブレイク Crossin’(ショートバージョン) Heartbreak Crossin’ (Short Version) (主題歌)

B1. ロッカバラードに針を Listen for a Rock-a-ballad (挿入歌)
B2. レセプション Reception
B3. 沢渡鷹イメージテーマ 2 TAKA SAWATARI Image Theme 2
B4. ワンウェイ ラブ One-way Love
B5. 緋沙子の涙 HISAKO in Tears
B6. 固い決意 Firm Resolution
B7. ファイト Fight
B8.ウイリー フィニッシュ Wheelie Finish
B9. サヨナラを言わないでくれ(ショートバージョン) Don’t say good-bye (Short Version) (主題歌)

A2-A8. 作曲・編曲:久石譲
A1. 作詞:四辻たかお 補作詞:荒井まゆみ 作曲:芹澤廣明 編曲・歌:Medical Soap
A9. 作詞:売野雅勇 作曲・編曲:芹澤廣明 歌:陣内孝則

B2-B8. 作曲・編曲:久石譲
B1. 作詞:四辻たかお 作曲:芹澤廣明 編曲・歌:Medical Soap
B9. 作詞:売野雅勇 作曲・編曲:芹澤廣明 歌:陣内孝則

 

Disc. 久石譲 『吉祥天女 イメージアルバム』

久石譲 吉祥天女 イメージアルバム

1984年12月21日 CD発売 32ATC-4
1984年12月21日 LP発売 ANL-1038
1984年12月21日 CT発売 25AN-38
2000年4月26日 CD発売 TKCA-71916
2018年2月23日 LP発売 LAGREC002

 

「吉祥天女」
原作:吉田秋生 音楽:久石譲

第29回小学館漫画賞を受賞した名作コミックに久石譲がオリジナル音楽を書き下ろしたイメージアルバムの先駆的作品。

 

 

吉祥天女 音楽解説

一、天女伝説
「七宝充満の宝を降らし、国土にこれを施し給ふ」という、能楽「羽衣」の引用から物語は始まる。「天女の羽衣」を代々受け継ぎ、地上に降りた天女の末裔であるヒロイン。物語のベースに流れる「天人女房伝説」からイメージした、このアルバムのメインテーマ。

二、叶 小夜子
春の嵐に散る桜とともに、麻井由似子の通う高校に転校してきた少女・叶小夜子。彼女の不思議な魅力が、学園に静かな波紋のように広がっていく。「気になる転校生」をめぐって、なにかがゆっくりと動きはじめる。

三、遠野 涼
「春日高の浮世雲」の異名をとる軟派中の軟派、遠野涼はクラスのなかに難なくとけこんでいる小夜子に、ただひとりなにか異質なものを感じとる。自分をとりまくすべてのことを呪っていると言い放つ小夜子。一見、軽薄で明るい学園生活を送る涼は、今まで目をそらしてきた自分の過去に、ふたたび対峙する。

四、天女飛翔
今井久子や暁の指図で、小夜子を襲う不良グループ。男の暴力に対して、翔ぶかのように危機を脱していく小夜子。羽衣を血に染めて飛翔する天女のイメージ。

五、遠野 暁
叶家の莫大な財を手に入れるため、小夜子に近づく涼の従兄、遠野暁。ワナをはり小夜子と婚約にまでもちこむが、彼女の魅力にひきこまれ、微妙に変化していく。スノップな現実を象徴するキャラクターとしてイメージした曲。

六、魔性の女
国語教師の根津、暁の手下の大沢真、伯母の浮子、そして暁の父と、次々と葬りさっていく小夜子。血が流れるごとに彼女の魅力は妖しく増していく。幼時に受けた暴行から「女性であることの屈辱」を味わった彼女は、すべての男性に報復するかのように、その魔性を超常的なまでに発揮していく。

七、血の抗争
小夜子の祖父、叶泰造の死により、叶家の財産をねらう暁をはじめとする遠野家の計略。私欲にくらむ魑魅魍魎(ちみもうりょう)の中で、秘かに刃をとぎすます小夜子。

八、小夜子と涼
小夜子の魔性を目のあたりにして、むしろ畏敬の念をもつ涼。最初に会ったときから、涼の中に自分と同じ「傷つきやすい魂」を感じた小夜子。ふたりの心はつかの間、通いあうかにみえるが、暁の死に至り、涼は小夜子を葬ろうと銃を手にする。破滅の色調を帯びた、小夜子と涼のラブソング。

九、予感
暁の死により彼女の報復は終った。が、その魔性は、唯一、わかりあえる存在かもしれなかった涼をも殺してしまう。女性としての業を一身に背負ったかのような小夜子の精神(こころ)が孤高の涙にゆれる。

十、転生
”天女を妻にした男は幸福だったと思う?それとも……”

(音楽解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

2018年Lag Recordsからアナログレコードが再発売されている。

2018年2月23日 LP発売 LAGREC002

吉祥天女 イメージアルバム (アナログレコード)
KISSHO TENNYO [LP] [Analog]

 

 

久石譲 吉祥天女 イメージアルバム

1. 天女伝説
2. 叶 小夜子
3. 遠野涼
4. 天女飛翔
5. 遠野暁
6. 魔性の女
7. 血の抗争
8. 小夜子と涼
9. 予感
10. 転生

プロデューサー:久石譲
作曲・編曲:久石譲
演奏:久石譲・福岡保子

録音スタジオ:
サンライズスタジオ
ジョーズステーション
59年9月10日~10月9日

使用楽器:
フェアライトCMI、プロフィット5、ヤマハDX7、リンドラム、ローランドMC-4、ハモンドオルガン、ローランドSH-101、ローランドTR-808

 

Disc. 久石譲 『Wの悲劇 オリジナル・サウンドトラック』

久石譲 『Wの悲劇 オリジナル・サウンドトラック』

1984年12月1日 LP発売 WTP-90308
1984年12月1日 CT発売 ZH28-1466
1984年12月21日 CD発売 CA35-1098
1998年7月25日 CD発売 CPC8-3006
2013年9月18日 CD発売 TOCT-11604

 

1984年公開 映画「Wの悲劇」
監督:澤井信一郎 音楽:久石譲 出演:薬師丸ひろ子 他

 

「あんた、いま、女優になるのよ」「顔ぶたないで、女優なんだから!」などの名言。役を得るためには、純潔も恋も犠牲にするドロドロの世界を見事に描いたバック・ステージものの傑作。そんな内容とは裏腹に久石譲による美しいピアノが流れる。大ヒット曲「Woman~Wの悲劇より~」も、もちろん収録。

(メーカーインフォメーションより)

 

 

今こそ見直すべき澤井信一郎と久石譲の出発点

夏樹静子の同名ベストセラー小説を下敷きにしたユニークな”バックステージ・ドラマ”『Wの悲劇』(1984)は、その絶妙な脚本の構成とアンサンブルのいい役者陣の演技、そして計算と感性の行き届いた演出によって、今も胸を打つ逸品となった。劇中の劇団研究員さながらに、アイドル女優という枠から徐々にはみだし、大人の香りを醸し出していく薬師丸ひろ子は『メイン・テーマ』(1984・森田芳光監督)に続いての好演。誠実なる不動産屋の青年役で世良公則がさわやかな風を吹かせば、三田佳子が劇団『海』の看板女優を貫禄たっぷりに見せつける。役者稼業にすれた感じを違和感なく出す先輩役の三田村邦彦、初々しさ漂う新人・高木美保、そして舞台演出家を地で行く蜷川幸雄と、脇の固めもスキがない。アーウィン・ショウの『愁いを含んで、ほのかに甘く』からのアイデア借用という事実があったにせよ、荒井晴彦による脚本(澤井信一郎と共同)の説得力は光を失うことなく、まして『野菊の墓』(1981)で松田聖子に輝きを与えた澤井信一郎の昇り竜のごとき充実の監督第2作である。後の『早春物語』(1985)、『めぞん一刻』(1986)、『恋人たちの時刻』(1987)などの実績を思えば、すべては当然の結果だったといえるだろう。

同時上映だった大林宣彦監督作品『天国にいちばん近い島』(1984)のニューカレドニアの南国ムードとともに、公開当時の麗しい記憶に包まれるファンも多いであろう同青春&人間ドラマには、しかし今こそ注目しなければならない人物がいた。当時、薬師丸ひろ子が歌う主題歌《Woman~Wの悲劇~より》ばかりが目立ち、その男の存在が何かと稀薄に扱われていた事実はひたすらに口惜しい。音楽担当の久石譲である。

1950年12月6日、長野県は信州中野に生まれた久石は、4歳からヴァイオリンを習い始め、高校時代より作曲を学んでいる。程なく現代音楽の作曲家になることを夢見て、国立音楽大学へ入学。在学中には前衛音楽の演奏会を数多く開き、卒業後はミニマル・ミュージックの世界へと没入していく。紆余曲折の末、やがて現代音楽の分野に限界を感じると、つぎに一転してポップスのフィールドへと身を投じていくわけだが、その際に「売れなければ正義ではない」と肝に銘じたという逸話は彼らしい性分の表れだろう。その辺りをインタビューの席で水を向けると、本人は笑ってうなずいていたものだが、そういった強い意志が結果となって大きく実を結んだのが、1984年という年だったのではないか。

そこからさかのぼること2年。1982年10月に久石は『インフォメーション』というオリジナル・アルバムを作った。その発売元であるジャパン・レコードが徳間グループの系列の会社であったことから、準備段階にあった『風の谷のナウシカ』(1984)のイメージ・アルバム制作への参加が決まったという。結局、それが宮崎駿、高畑勲両氏の納得のいく仕事となり、やがて映画本編の音楽も担当。周知の通り、大ヒットとなった。80年代の初頭から映画、TVの仕事をこなしてきた作曲者であったが、世間一般に広く名前が広まったのはこの作品の成功からである。久石自身も出発点としての認識が強いのだろう。これ以前の映像作品についての記載が作品リストから外れることが多いのも象徴的である。

『風の谷のナウシカ』の成功は、何より久石自身の自信を呼びさました。当然各方面から押し寄せた依頼を、作曲者は慎重に検討する段にはいっていった。成功を成功に、自信を自信に結び付けるためである。その辺りの意識については、自伝的エッセイ集『I am/遙かなる音楽の道へ』(1992・メディアファクトリー刊)に詳しい。いわく「下からコツコツ上がっていくのは面倒、やるからにはトップから仕事をしていきたい、僕はそう思っていた」。そして「薬師丸ひろ子の映画の仕事がやれたらいいな」と考えているところへ来たのが『Wの悲劇』だった。澤井信一郎との出会いである。

とにかく久石譲といえば、宮崎駿、北野武、大林宣彦という”御三家”との仕事が取り沙汰される。確かに、彼らとの共同作業によって、作曲者は映画音楽の可能性を切り開くことができ、同時にその成功によって名声を獲得してきた。だが、そればかりではない。そればかりで判断してはいけない。特に実写作品の仕事という点からいえば、北野武や大林宣彦よりも早く久石に映画的な目覚めを誘ったのは、澤井信一郎にほかならないのだ。

久石の登板の背景は明らかにされていない。無論『風の谷のナウシカ』の成功に事が起因していることは確かだろうが、恐らく角川春樹事務所、ないしは配給の東映サイドからの推薦によるものだろう。久石は澤井信一郎の第一印象を「小柄でやさしそうな印象」とし、映画については「オーソドックスな作品」「映画のイロハがちゃんとある」と前述の自伝に書いている。幼少のころより映画館通いを欠かさなかった作曲者は、てらいのない伝統的な手法の演出による作品を歓迎した。澤井のスタイルに敬意を払いつつ「僕の作曲も、オーソドックスな正統な姿勢」で臨むことにし、「奇を衒った入れ方をしたり、ファッション的なBGMにしたりするのではなく、きちんとドラマに参加した音楽にする」(自伝の記述より抜粋)と決める。作曲者なりの澤井とその作品への”正義”だろう。

久石のそんな方法は、まさに的確であった。ムダの少ない音楽の付け方だ。必要とされるべきところへ必要なだけ盛り込む。ことさらに音に厚みをつけない。ミニマル、エスニック、ロック、オーケストラ音楽など、さまざまなスタイルが並んだ『風の谷のナウシカ』と比べて、それはある種地味ではある。しかし、そんな宮崎作品の後だったからこそ、映画の基本に立ち返る澤井との仕事は、必要な”リハビリテーション”ではなかったか。大きな仕事を待っていた作曲者が『Wの悲劇』という題材に巡り合ったのは、偶然的な一方で、運命的にして必然的な事の次第だったと思わずにいられない。フェアライト(サンプリング・マシンの一種)によるサウンドをフィーチュアしながら、ストリングス、ハープ、ピアノ、それにいくらかの木管と打楽器を絡めた劇中の音楽が、やがてクライマックスのカーテンコール場面でダイナミックな感動の爆発を迎えるには、そういった久石の背景を思えば、なおのこと納得できる部分があろうというものだ。

また、フェアライトという”楽器”を得たという意味では、その後の久石の映画音楽作品の”原型”ともいうべき音色の数々が見受けられるのも興味深い。例えば、冒頭の三田静香(薬師丸ひろ子)と五代淳(三田村邦彦)の暗がりの会話場面で流れるヴォイス・サンプリングによるサウンドは、『ふたり』(1991)や『はるか、ノスタルジィ』(1992)といった大林作品に有名だろう。フェアライトを初めて使った『風の谷のナウシカ』と合わせて考えれば、やはり1984年という年は作曲者にとって重要な分岐点だったといえる。

自伝で久石は続ける。「澤井さんは非常に音楽に対してもこだわりのある人で、たとえば、劇中の喫茶店や舞台で流れる音楽と、映画音楽というのをはっきり分けて考える。そうしないと、差が出てこないという。ほとんどの人は、そういうことにはこだわらない。そういう意味でのこだわりを最初に教えてくれたのは、澤井さんなのだ」。現実音と劇中音楽の使い分けは、基本中の基本である。そういうことを現場で一から知ることになった経験は、作曲者にさらなる飛躍を約束したといっても過言ではない。何よりもそれは、その後の活動が物語っているだろう。良き信頼関係に結ばれた澤井と久石は、以後も『早春物語』(1985)、『めぞん一刻』(1986)、『恋人たちの時刻』(1987)、『福沢諭吉』(1991)へとコンビをつなげていった。ジャンルの差こそどうあれ、そのすべてが青春映画である。虚構の青春ドラマの中で、飽くことなき音楽的試行を繰り返してきた名手二人にとって、『Wの悲劇』はまさに輝ける旅立ちのモニュメントとなった。

1998年5月27日 賀来卓人

(1998年再販盤 CDライナーノーツより)

 

 

久石譲 『Wの悲劇 オリジナル・サウンドトラック』

(オリジナル・ジャケット)

 

Wの悲劇 再販

(1998年7月25日 CD再販 ジャケット)

 

※2013年再販盤はオリジナル・ジャケットが採用されている

 

1. プロローグ
2. 野外ステージ
3. 冬のバラ 歌:薬師丸ひろ子
4. 女優志願
5. 劇団「海」
6. Wの悲劇
7. Woman~Wの悲劇~より 歌:薬師丸ひろ子
8. 危険な台詞
9. 静香と摩子
10. ジムノペディ第1番~レクイエム~サンクトゥス~カーテンコール I
11. カーテンコール II

音楽:久石譲

「冬のバラ」
作詩:松本隆 作曲:呉田軽穂 編曲:松任谷正隆

「Woman~Wの悲劇~より」
作詩:松本隆 作曲:呉田軽穂 編曲:松任谷正隆

ジムノペディ第1番
作曲:エリック・サティ 編曲:久石譲
レクイエム
作曲:ヴェルディ 編曲:久石譲