Disc. ミュージッククリエイション 『混声合唱によるニューミュージックの世界 ポピュラー合唱シリーズVol.2 – Sachiko』

1980年 LP発売 TP-60378

 

このレコードに収録したものと同じ楽譜が㈱東亜音楽社発行、㈱音楽之友社発売で出版された。
(『ニュー・ミュージックの世界 1-3』)

 

編曲のおと~~II 久石譲

ポピュラー合唱シリーズもいよいよ第二集に入りました。今回は、今、巷でよく聞かれている、ニュー・ミュージック(?)とフォークソングの特集です。まあ、ニュー・ミュージックという言葉が、何をもって言っているのかは、よくわからないのですが、その流れの詮索は、一先ず置いといて、編曲にあたって、気のついた点を少々…~~。

まず言葉の事からですが、全体に長いのです。もう、大変な位長い。しかも韻を踏んでないので、1コーラス、2コーラスとそれぞれ、メロディーも微妙に違っています。それは昔の歌の言葉があくまで~詩~であろうとしたのに対して、今は、より直接訴えかける事のできる口語体で、しかも日常のテンポで話しかける事の方に留意しているからではないでしょうか。その点、歌われる方は(音楽之友社より楽譜が出版されてます。)普段着のままの気持ちで、歌ってみると良いと思います。

次に声の事ですが、ポピュラー音楽を歌う時は、ナチュラルな発声(ベルカントやドイツ的発声などのいわゆるクラシック的発声ではなく)の方が、向いていると思います。その為、普通の合唱曲よりは、keyをやや下げてあります。

録音を終了して、プレイバックを聞きながら思った事は、このアルバムの中の何曲かは、必ず日本のスタンダード曲として、いつの世にも歌われていくだろうと言う事でした。

 

SACHIKO
ばんばひろふみの歌でヒットしました。ピアノのイントロや、間奏が印象的です。「サチコ、思い通りに生きてごらん。そして傷ついたなら、僕の所に帰っておいで…。」何とやさしい歌ではありませんか。80年代は、やさしさの時代なんでしょうか?

アメリカン・フィーリング
サーカスの歌った曲です。サーカスは女性2人と男性2人の4人グループで、兄妹、従妹で構成されているため、声の質が似ているので、大変きれいなハーモニーが特徴です。アレンジにあたって、曲の持っている、シャレた雰囲気を出せるように留意しました。

遠くへ行きたい
誰の心にもある郷愁を呼びさますような、この曲は、日本のオリジナル曲としても、最もポピュラーな曲の一つです。哀愁ただようピアノのイントロに続き、バリトンのソロで歌われます。1コーラスが終わったあと、美しいピアノのソロの間奏が入りますが、バックのハーモニーは、あたかもオルガントーンのような効果をねらっています。

WAKE UP
チューリップの財津和夫の歌で、コマーシャル等を含めて、巷によく流れました。冒頭、この曲の有名な「wake up、wake up」と歌う部分から、ア・カペラで歌いだします。そしてややリズミックになり、アルトで、テーマの部分が歌いだされます。ソプラノのオブリガートが、印象的です。

ぼうやおねむり
この曲の持つ、静けさ、哀しさは、一体何なんだろう?まるで、(母の)胎内に引きこまれて行くような、不思議な、やすらぎ。先程、哀しさと書いたけれど、決して感情的な意味での「悲しさ」ではなく、人が生まれ、そして死んで行くはかなさ、それでも、懸命に生きていく人間の強さ、弱さ、それらを含めた存在としての「哀しさ」の事です。小椋佳のレクイエムであり又、代表作と言っても過言ではありません。

チャンピオン
アリスの歌った曲で大変ヒットしました。男の哀愁が漂う、なかなかシブイ曲です。詩は、年老いた一人のボクサーの、おそらく最後になるであろう試合の場面を描写していますが、何かに懸ける男の執念、生き様のようなものが、よく表現されています。男性(声)のコーラスが中心になっていますのでグリークラブのような男声合唱団でも歌うことは可能です。

いとしのエリー
この曲はおそらく日本のポピュラー・ソングとして、画期的な作品になると思います。サザン・オールスターズの桑田佳祐の作詩・作曲・歌によるこの曲は、まずその、フレーズの長さ(息の長さ)において、日本の今までの作品にみられない大きな特徴があります。又、言葉のあつかいにおいても、大変ユニークです。余談になりますが、ドイツのロック・グループも、ドイツ語の持つ言葉のさから、ほとんど英語で歌っているそうです。日本語も同じ事で、母音ばかりで、ロックのリズムには非常にノりにくい。その点で、サザン・オールスターズは、あの独特の歌い方で、見事にそれを克服しています。アレンジにあたって、原曲のマネをしても無理なので、むしろアメリカのスタンダード・ソングのように、味付けしてみました。

想い出して下さい
小椋佳の作詞・作曲・歌で、TV映画「野麦峠」のテーマ曲としても使われています。冒頭、ア・カペラのハミングによる静かな雰囲気で始まり、やや up tempo のリズムに乗って、メロディーが歌い出されます。いかにも、小椋佳らしい、叙情的な曲です。

出発の歌
小室等の作曲で、上條恒彦と、六文銭によって歌われたこの曲は、フォーク・ソング、ニュー・ミュージックという系譜の中でも、草分け的な曲です。このアルバム中、最もスケールの大きな曲です。最初静かな歌い出しと、だんだん盛り上げていくこの曲は、コンサートのアンコールなどには、最も適しているのではないでしょうか。

いい日旅立ち
アリスの谷村新司の作曲で、歌は山口百恵。この曲も大変ヒットしました。この曲がニュー・ミュージックに入るかどうかは、異論もあるでしょうが、谷村新司の作曲でもあることだし又、百恵ちゃんが引退することでもあるし、編曲者の独断で入れさせてもらいました。

ビューティフル・ネーム
ゴダイゴのタケカワ・ユキヒデが、国際児童年にあたって作曲した曲で、広く子供から大人まで親しまれました。メロディー自体は、単純で誰にでも、すぐおぼえられますが、アレンジは、他のゴダイゴの曲と同じく、大変凝っています。例えば、イントロがFのkeyでメロディーがB♭のkeyと言うぐあいに、それが、自然に流れて聞こえる所など、さすがゴダイゴと言えるでしょう。

さよなら
オフコースの歌です。最近の歌の傾向として、歌うkeyが非常に高い事が上げられます。クリスタルキング、ゴダイゴ、チューリップなど、従来より、2~3度、音程が上がっています。が、このオフコースは、その中でも最もハイトーンを誇っています。もちろん今回はコーラス用に3度下げていますが、原曲の持つフィーリングは、生かされていると思います。アルバムのエンディング曲としてタイトルもオフコース(もちろん)ぴったりです。

(LPライナーノーツ より)

 

 

なお、『ポピュラー合唱シリーズ Vol.1』も、レコード・楽譜共に発売されていた。

「イエスタデイ/たのしいポップスの世界」
トライ・トゥ・リメンバー/シェルブールの雨傘/アクエリアス/ドンナ・ドンナ/スカボロー・フェア/イエスタデイ/夢のカリフォルニア/ブルーレディに紅いバラ/コンドルは飛んで行く/ロミオとジュリエット/マイ・ウェイ/ミッシェル 全12曲

合唱:ミュージッククリエイション 指揮:熊谷弘 編曲:久石譲 TP-60351

Disc. ミュージッククリエイション 『混声合唱による楽しいポップスの世界 ポピュラー合唱シリーズ Vol.1 イエスタデイ』

 

 

混声合唱によるニューミュージックの世界 ポピュラー合唱シリーズVol.2 - Sachiko 1

混声合唱によるニューミュージックの世界 ポピュラー合唱シリーズVol.2 - Sachiko 3

(LPジャケット / LP盤)

 

Side A
1.SACHIKO
作詞:小泉長一郎 作曲:馬場章幸
2.アメリカン・フィーリング
作詞:竜真知子 作曲:小田裕一郎
3.遠くへ行きたい
作詞:永六輔 作曲:中村八大
4.WAKE UP
作詞:財津和夫 作曲:財津和夫
5.ぼうやおねむり
作詞:小椋佳 作曲:小椋佳
6.チャンピオン
作詞:谷村新司 作曲:谷村新司

Side B
1.いとしのエリー
作詞:桑田佳祐 作曲:桑田佳祐
2.想い出して下さい
作詞:小椋佳 作曲:小椋佳
3.出発の歌
作詞:及川恒平 作曲:小室等
4.いい日旅立ち
作詞:谷村新司 作曲:谷村新司
5.ビューティフル・ネーム
作詞:奈良橋陽子 作曲:タケカワユキヒデ
6.さよなら
作詞:小田和正 作曲:小田和正

編曲・指揮:久石譲
合唱:ミュージック クリエイション

ミュージッククリエイション
(ソプラノ1,2/アルト1,2/テノール1,2/バリトン/バス)

演奏:
ピアノ:江草啓介
ギター:中牟礼貞則
ベース:寺川正興
ドラムス:石川晶

 

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