Score. 『久石譲 MY LOST CITY』

1992年2月20日 発行

久石譲監修によるピアノ曲集。編曲は他者によるもの。オリジナルアルバム『MY LOST CITY』のマッチング・ピアノ譜。

 

【補足】

当時は公式スコア[オリジナル・エディション]という位置づけがまだなかった。久石譲監修ではあるが他者の編曲による(当時はそれが主流だった)。ただし、CD作品のマッチングとして同時期に楽譜出版されたもの、また楽譜表紙(装丁)がCDジャケットデザインに準ずるもの、制作協力クレジットされ公式コンサートパンフレットや媒体でも紹介されていたもの、これらを監修・公認(準公式)楽譜として紹介している。

 

 

久石譲 / MY LOST CITY

1. PROLOGUE [プロローグ]
2. 漂流者 [DRIFTING IN THE CITY]
3. 1920 [AGE OF ILLUSION]
4. SOLITUDE [IN HER・‥]
5. TWO OF US
6. JEALOUSY
7. CAPE HOTEL
8. 狂気 [MADNESS]
9. 冬の夢 [WINTER DREAMS]
10. MY LOST CITY
11. TANGO X.T.C.

 

監修:久石譲
協力:株式会社ワンダーシティ/東芝EMI株式会社
編曲・採譜・解説:田中あさ子
定価:1,300円+税
発行:株式会社ドレミ楽譜出版社

 

Score. 『久石譲 スペシャル・セレクション II』

1992年2月20日 発行

久石譲監修によるピアノ曲集。編曲は他者によるもの。アルバム『I am』『あの夏、いちばん静かな海』またシングル「草の想い」からもセレクトされたピアノ譜。

 

【補足】

当時は公式スコア[オリジナル・エディション]という位置づけがまだなかった。久石譲監修ではあるが他者の編曲による(当時はそれが主流だった)。ただし、CD作品のマッチングとして同時期に楽譜出版されたもの、また楽譜表紙(装丁)がCDジャケットデザインに準ずるもの、制作協力クレジットされ公式コンサートパンフレットや媒体でも紹介されていたもの、これらを監修・公認(準公式)楽譜として紹介している。

 

 

久石譲 / スペシャル・セレクション II

■from Album 『I am』
Deer’s Wind (from Main Theme of“KOJIKA STORY”) (映画「仔鹿物語」)
On The Sunny Shore
Venus
Modern Strings
Dream
伝言
Echoes
Silencio de Parc Güell
White Island
Tasmania Story (from Main Theme of “TASMANIA STORY”) (映画「タスマニア物語」)

■from Album 『あの夏、いちばん静かな海」
Silent Love (Main Theme)
Clifside Waltz I
Silent Love (In Search Something)
Bus Stop
Clifside Waltz II
Melody of Love
Clifside Waltz III
Silent Love (Forever)

■from CD Single 『草の想い/風の時間』
草の想い (映画「ふたり」 愛のテーマ)
風の時間 (映画「ふたり」 オープニング・テーマ)

 

監修:久石譲
協力:株式会社ワンダーシティ/東芝EMI株式会社
編曲:青山しおり/田中あさ子
定価:1,600円+税
発行:株式会社ドレミ楽譜出版社

 

Disc. 久石譲 『My Lost City』

My Lost City

1992年2月12日 CD発売 TOCT-6414
2003年7月30日 CD発売 TOCT-25122

 

1920年代、アール・デコの時代にインスピレーションを抱いた会心作

ロンドンのストリングス、パリのバンドネオン、最高の音楽を求めて
久石譲のピアノは、1920年代を、そして世紀末を彷徨った。

 

 

Prologue
僕にとってのピアノとストリングス、それは永遠に彷徨う旅人の心を歌うには最も相応しい形態だ。
新しい旅の始まり。

漂流者 ~Drifting in the City
都市の漂流者。行く場所さえない心のさすらい人。
「彼は自分の身勝手さを重々承知しながらも芸術家になるための戦いから身を退くことができず、
そのせいで彼の人生は何処か悲劇的気高さを帯びるに至ったのである。」

1920 ~Age of Illusion
バリエーション、音の変奏、それはうつろいゆくもの。
映画のカメラで言えば、特徴を使って絶えず移動するようなもの。
交通機関と一緒で都市と都市の間を結ぶ、移動祝祭空間だ。
そしてテーマは、主役、立ち止り確認すること。音の都市なのだ。
テーマからテーマへ、人から人へ、絶えずうつろい行く、それがバリエーションだ。
そこには予想もつかない未来のように、スリリングな展開となる。

Solitude ~in her・‥
それは不可能な試みだった。芸術行為とは自我の放出だ。
発生する自我と放出される自我のバランスを常に一定に保つことなど不可能なのだ。
実現不可能な目標に向けてなされる超人的努力の行き着く先は、精神と肉体の崩壊だ。

Two of Us
幸せの時は流れて・‥Floating

Jealousy
人はえてして合い反する感情のなかに自分の身を置く。
優しさ────傲慢さ センチメンタリズム────シニシズム
楽天性────自己破壊への欲望 上昇志向────降下感覚
そんな合い反する感情の向かう先は…

Cape Hotel
リビエラ、ジェラルド・マーフィとセーラ・マーフィの夫婦は何を考えていたのだろうか?
サティの作品は文学的に縛られていたのだろうか?
表層的な都市で育つ音楽はその資源的な根を絶たれる。
明快で表面のみからなる音楽は文学的な表現とは違う土壌にある。

狂気
目標を達成することで自分を駆り立てていた悪霊を統御できるはず。
自己を証明することによって平安を得られる。

冬の夢
魂の孤独な旅、寒い「氷の宮殿」を抜けて何処へ行くのか?
人は様々な感情のなかで成功と失敗を繰り返して、何処へ行くのか?
シューベルトの「冬の旅」から「白鳥の歌」には深い人生への慈愛と悲しみに満ちている。

Tango X.T.C.
なぜ1920年代のタンゴはセンチメンタルなのか?
ブエノスアイレスは。世紀末から都市化されたのであり、ニューヨークとほとんど同じなのだ。
とすれば20年代に置いてこの都市は
大自然の平原から引き抜かれた根なし草の悲哀を味わっていた
パンパ────ブエノスアイレス────パリ、これはタンゴの道そのものだ。
20年代のタンゴには草原から切り離されて、
再び戻ることのできない都市生活者の悲しみが響いている。

My Lost City
彼を描くのが目的ではない。
彼を通して自分を見つめるのが目的なのだ。
それはあたかも意志を持った鏡のように(彼と僕が同じだということ、又は似ている事ではなく)
そこで乱反射されたものを受けとることなのだ。
つまり僕が彼という鏡を通して写る姿を見たときまで見えなかった自分が
写しだされるかも知れないのだ。
そこは何処までも果てしなく続くビルの谷間ではなかった。
そこには限りがあった。
想像の世界に営々と築き上げてきた光り輝く宮殿は、脆くも地上に崩れ落ちた。

久石譲

 

 

アビーロード・スタジオでの録音、深い絆で結ばれたマイク・ジャレット(エンジニア)、チェロ版ナウシカ組曲などでも有名な藤原真理(チェロ)による「Two of Us」「冬の夢」、リチャード・ガリアーノ(バンドネオン)による「Jealousy」「Tango X.T.C.」、そして久石譲の決意表明にして渾身の名曲「漂流者 -Drifting in the City」。最高の音楽を求めて、当時できうるすべてを注ぎこんだ作品。

当時の久石譲が純度高く封じ込まれている本作品は、当時の著書にも詳しく書かれている。1920年代という時代について、MY LOST CITY・漂流者というキーワードやコンセプトについて、バンドネオンやタンゴへのこだわりについて。

「漂流者—Drifting in the City」の出だしの音型を決めるのに10日以上悩んだとあるとおり、人に受けようとするのではなく、自分が納得するものを追い求めた決意表明のようなもの渾身の楽曲。非常にシンプルなメロディで8分も展開していくための厳選されたメロディ、出たしからその世界観が広がるような強いメロディ。

当時久石譲はこのように語っている。「華やかでなくて、でも優しくて、それで寂しくて、乾いていて、激しくて、劇的で、人間の強さと脆さ、優しさと哀しさ、すべてを持っていて、すべてから距離を保っている、そういうメロディに行き着きたいという思いが、ずっとあった。いろんな人にいろんな感情を抱いてもらう。そのためには、こちら側は自分の感情をぶつけないことだ。ぎりぎりまでテンションを盛り上げたところで作れば、聴く人にいろんなインスピレーションを持ってもらえる。」

 

 

 

My Lost City

MY LOST CITY
HOMMAGE A Mr. SCOTT FITZGERALD

1. PROLOGUE
2. 漂流者~DRIFTING IN THE CITY
3. 1920〜AGE OF ILLUSION
4. SOLITUDE〜IN HER・‥
5. TWO OF US
6. JEALOUSY
7. CAPE HOTEL
8. 狂気 MADNESS
9. 冬の夢 WINTER DREAMS
10. TANGO X.T.C.
11. MY LOST CITY

Recorded at Abbey Road Studio, London etc
Recording Engineer:Mike Jarratt (Abbey Road Studio)
Mixing Engineer: Mike Jarratt(Abbey Road Studio)

Musicians are
Piano:Joe Hisaishi
Strings:Gavyn Wright Londons Strings (14Vioins,4Violas,2Cello,2Bass)
Flute:Andy Findon 3. 8.
Bandonéon:Richard Galliano 6. 10.
Cello:Mari Fujiwara 5. 9.

Musicians
Gavyn Wright London Strings
(Strings Conductor:Mick Ingman)
Andy Findon(Flute)
Mari Fujisawa(Cello)
Masatsugu Shinozaki(Violin)
Gavyn Wright(Violin)
Wilf Gibson(Violin)
George Robertson(Viola)
Anthony Pleeth(Cello)
Chris Laurence(Dble Bass)
Richard Galliano(Bandoneon)
Phil Todd(Sax)
Frank Ricotti(Vib.)

Recorded at:
Abbey Road Studio,London
Studio Guillame Tell,Paris
Wonder Station,Tokyo
Onkio Haus,Tokyo
Sedie Studio,Tokyo
Marine Studio,Kannon-zaki

 

Disc. 久石譲 『天外魔境II 卍MARU / FAR EAST OF EDEN MANJI MARU』

久石譲 天外魔境2

1992年2月1日 CD発売 NACL-1047

 

1992年 PCエンジン SUPER CD-ROM用ゲームソフト
「天外魔境 II 卍MARU」
音楽:久石譲 福田裕彦

 

 

寄稿

僕は、映像と関わった仕事も多いですが、
これは今までに抱いていたコンピューターゲームのイメージより、
はるかにクオリティーが高いのに驚いたと同時に、
自分で作り上げる一編の壮大なドラマであると思いました。
音楽は従来のマップ上のゲーム音楽とは違いますし、
メインテーマはいわゆる久石メロディーと呼ばれているものなので、
それだけでも存分に楽しんでもらえるものと思います。
そして、ゲームを通して僕の音楽と楽しんで下さい。

音楽監督:久石譲

(CDライナーノーツより)

 

 

久石譲 天外魔境2

1. タイトル
2. オープニング (宇宙空間)
3. 卍丸のテーマ
4. 極楽のテーマ
5. カブキのテーマ
6. 絹のテーマ
7. Lマップ(通常)
8. 破滅への確実な歩み
9. 根の進撃
10. 鋼鉄城のテーマ
11. 殺意
12. ボスバトル
13. Lマップ (聖剣有り)
14. 機械獣デデベ
15. 魔獣
16. 神への挑戦
17. エンディング
18. のどかな村
19. 活気あふれる城下町
20. 根の一族に殺された者たちへのレクイエム
21. 盆と正月のテーマ
22. 世捨て人のテーマ
23. 桃源郷
24. 知的静寂
25. 霊験あらたか
26. 神聖な空間
27. 激闘
28. 死闘
29. 果てなき戦い
30. 静寂の中を進む
31. 闇に潜む魔物
32. 邪神崇拝
33. 生き物の腹の中へ
34. 死闘の予感
35. 悪の楽園
36. ワタシのんきな宣教師
37. 金,それが人生
38. ナルシストのテーマ
39. ナルシストの剣舞
40. 大いなる馬鹿
41. 高速飛行する乗り物
42. 地上軽量級の乗り物
43. 地上中量級の乗り物
44. 地上重量級の乗り物
45. 潜水鑑
46. 間抜けな乗り物
47. 聖剣はわが手に
48. 暗黒の歴史
49. したたかな女たち
50. 商店街
51. 巨大な味方登場
52. 仲間の死を越えて
53. 神との別れ
54. 武装
55. 魔物の潜む洞窟
56. EXTRA 1
57. EXTRA 2

Composed & Arranged by Joe Hisaishi 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 13. 17.
Another Composed & Arranged by Hirohiko Fukuda

 

Disc. V.A. 『ANIMAGE SINGLES』

1991年12月21日 CD発売 TKCA-30488
1991年12月21日 CT発売 TKTA-20208

 

スタジオジブリ作品 映画「風の谷のナウシカ」から「魔女の宅急便」まで。主題歌やイメージソングを集めたコンピレーション・アルバム。

 

映画『風の谷のナウシカ』より2曲は本編には使用されていないイメージソングである。また同2曲のみ作曲も久石譲作品ではない。

 

 

アニメージュ シングルズ

映画『風の谷のナウシカ』より
1.風の谷のナウシカ 安田成美
2.風の妖精 安田成美
映画『天空の城ラピュタ』より
3.君をのせて 井上あずみ
4.合唱 君をのせて 杉並児童合唱団
映画『となりのトトロ』より
5.となりのトトロ 井上あずみ
6.さんぽ 杉並児童合唱団
映画『魔女の宅急便』より
7.めぐる季節 井上杏美
8.魔法のぬくもり 井上杏美

 

Disc. 久石譲 『あの夏、いちばん静かな海 』

久石譲 『あの夏、いちばん静かな海。』

1991年10月9日 CD発売 TOCP-6907
2001年6月28日 CD発売 WRCT-1002

 

1991年公開 映画「あの夏、いちばん静かな海。」
監督:北野武 音楽:久石譲 出演:真木蔵人 他

 

 

映画「あの夏、いちばん静かな海」 プロデューサー 森昌行

「物事の決め事を、一度ははずして考える」-これは、映画に限らずタレント・ビートたけし、そして北野武の活動において、一環した姿勢の一つです。従って、「映画に音楽はつきもの」という常識は北野作品には通用せず、それが全く音楽のない前作「3-4X10月」を生み出しました。このことは逆に言えば、映像と音楽の関係について、その必然性においても、クオリティーにおいても、音楽のもつ力を大変重要視しているということです。

今回の作品については、その企画の段階から、音楽をつけることを前提としてスタートしました。というのは、セリフのない主人公にニュアンスをつけていくのは、数々の具体的なエピソードを映像でつみ重ねていくのではなく、音楽によって表現しようという意図を、明確に演出的な手法として導入したかったからです。ただ、実際、どんな音楽かということについては、漠然としたイメージはあったものの、正直言って久石さんに作っていただくまで、確信を持てずにいました。そういう意味では、今回の作品は久石さんの音楽に随分と助けていただいたと思います。あらためて、その才能に感謝したいと思います。

北野映画の中における音楽の位置づけというのは、今後作ってゆく作品にあっても、常に大きなテーマでありつづけると思います。それは、久石さんにとっても、同じだと思いますが、それにつけても今回の出逢いは素晴らしかったと思います。

(CDライナーノーツ より)

 

 

〈episode 1〉
この作品に関しては、監督自身も認めているように、もともと主人公の2人(生まれながらの聴覚障害者)に台詞がないところへもってきて、後半は台詞も何もなく、この作品そのものをふり返るように、主人公たちの思い出が日記帳のごとく滔々と連ねられているわけですが、あそこはどう考えても音楽がないと成立しない部分といいますか、音楽にあれこれ語ってもらったカットなんですね。

つまり最初から音楽を入れ込むことを想定して意識的に撮ったシーンなんです。武さんが自らの映像にあれほど音楽を求めたことは珍しいんじゃないですかね。久石さんとのコラボレーションはこの作品が最初だったわけですけど、登場人物の台詞が極端に少ないぶん、音楽がもたらす効用への期待感は、ほかのどの作品よりも高かったと思いますし、それだけに久石さんは苦労されたんじゃないでしょうか。結果的に、言葉(台詞)以上に主人公の感情や作品自体の情感を雄弁に物語るかのような音楽をつけていただいて、作品のクォリティや価値を随分高めていただいたような気がします。

〈サウンドトラック制作進行ノート〉
1991年7月 ワンダーステーション六本木にてレコーディング。

(「joe hisaishi meets kitano films」CDライナーノーツより)

 

 

「あのときは、ニューヨークでレコーディングをしていたときにプロデューサーから電話がかかってきて。「ビートたけしさんの映画をお願いしたいんですが」って言われて、「あ、なにかの間違いです」って思わず言っちゃったという(笑)。基本的には好きな監督だったんですよ。ただ、『その男、凶暴につき』とか『3-4×10月』をみると、僕のところに話が来ると思わなかったんですね。でも帰国してから、『あの夏、いちばん静かな海。』のラッシュをみたら、「これなら分かる」と。もっときちんとみていたら見落とさずに済んだんだけど、北野さんの作品というのはすごくピュアなんですよ。表面的には暴力があったりとかいろいろあるんだけれども、その奥の精神とか出てくる人間たちって、中途半端な屈折をしていないんですね。だからその一点で考えると、自分の音楽がなぜ必要とされるかというのがよく分かったんです。

ただ、やっぱり最初はね、台詞が極端に少ないし、劇的な要素もないし、どうしようかなと思ったんです。そしたら、北野さんが、「通常、音楽が入る場面から全部、音楽を抜きましょうか」というので、「そうですね。面白いですね」って僕も答えちゃって(笑)。それで通常音楽が入るところを極力音楽を抜いたんですよ。それがすごくうまくいったと思うんですよね。あとね、「朗々とした大きな感じじゃなくて、シンプルな、寄せてはかえすようなメロディ」と言われていて、僕としては「それはミニマルの精神と同じだから」と理解しましたね。」

Blog. 「キネマ旬報増刊 1998年2月3日号 No.1247」北野武映画 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

この映画の音楽制作にあたっては、当時コンサートツアーとスケジュールが重なっていた久石譲は一旦断ったという経緯がある。その時北野武監督はコンサートツアーが終わるまで一ヶ月間待つという決断をした。一般的にはあり得ない画期的なことで、音楽家のスケジュールのために映画スタッフをその間拘束することになり膨大な出費にもつながる。そこまでしての強いオファーだったことがうかがえるエピソードである。

当初想定していたメインテーマはサティ風のものだったが、「サイレントラブ」を聴いた北野武監督はこの曲をメインテーマにすえることを強く希望。結果こちらが採用され、サティ風の楽曲は映画のサブテーマにまわることになった。北野武監督は前作『その男、凶暴につき』でサティの楽曲を使用していて、そういう背景と監督の判断によるところも大きかったようだ。

 

 

久石譲 『あの夏、いちばん静かな海。』

1. Silent Love (Main Theme)
2. Clifside Waltz I
3. Island Song
4. Silent Love (In Search Of Something)
5. Bus Stop
6. While At Work
7. Clifside Waltz II
8. Solitude
9. Melody Of Love
10. Silent Love (Forever)
11. Alone
12. Next Is My Turn
13. Wave Cruising
14. Clifside Waltz III

All Composed by Joe Hisaishi
Produced by Joe Hisaishi
Arranged by Joe Hisaishi

Recorded at Wonder Station

Musicians:
Piano / Joe Hisaishi
Guitar / Hiroki Miyano
Bass / Makoto Saito
Violin / Masatsugu Shinozaki
Cello / Masami Horisawa
Vocal / Junko Hirotani
Fairlight Programming / Joe Hisaishi

 

 

なお発売後の経過により一度廃盤となった本作品は、2001年にワンダーランド・レコードより復刻・再販させることとなった。ジャケットが一新され、リマスター音源として復刻されている。収録内容はオリジナル盤と同一である。

 

2001年6月28日 CD発売 WRCT-1002

あの夏、いちばん静かな海 リマスター

 

 

Disc. 東京佼成ウインドオーケストラ 『ニュー・サウンズ・イン・ブラス・ベスト・セレクション Vol.9』

1991年9月20日 CD発売

 

”ニュー・サウンズ・イン・ブラス”シリーズの中から特別によりすぐった名演奏の数々…。ダイナミックで一味違ったポップな演奏をお楽しみください。

指揮:岩井直溥
演奏:東京佼成ウィンドオーケストラ

ゲスト・ミュージシャン:
Drums 猪俣猛
Bass 荒川康男
Trumpet 数原晋 他

 

 

久石譲が編曲を手がけた「哀愁のアダージョ」が収録されている。オリジナルLP発売時(1978年 第6集)は本名名義となっているため、久石譲ではなく藤沢守名義となっている。

 

 

曲目解説

1.レッツ・ダンス
1819年、カール・マリア・フォン・ウェーバーの手によって作曲されたこの曲は、1934年、米国NBCの広告放送出演の為に作られた楽団のテーマ曲として使用された。もちろん使用に際しては当時のアメリカを反映させジャズ風にアレンジされた事は言うまでもない。この曲とは、ウェーバーの「舞踏への勧誘」op.65であり、この楽団こそ「スウィングの王様」として世界に知れ渡った、ベニー・グッドマン率いるベニー・グッドマン楽団であった。そして、この後もこの曲は、当楽団のテーマ曲として親しまれてきたのである。1909年生まれのベニー・グッドマン、テレビのコマーシャルに出演していたのを覚えている人も多いのではないだろうか。クラリネットをフューチュアーした、スムーズなサックス群のソリとメカニックなブラス群のアタック、リズムリフ等、グッドマン・サウンズをブラスに再現させたアレンジの見事さは、アレンジャー岩井直溥の独壇場である。又演奏においても、ドラム猪俣猛、ベース荒川康男、ギター中牟礼貞則というメンバーに、クラリネット佐野正明、トランペット数原晋、T.Sax宮沢昭という顔ぶれは、今日考えられる中でも最高のアーティストぞろい、という事になりそうだ。猪俣のドライブするドラミングを中心に、それぞれのセクションがトップのリードで一丸となりドライブする。佼成ウィンド・オーケストラの多才な一面がうかがえる。吹奏楽がこんなに活き活きしていると、聞いていて嬉しくなってしまう。スウィングの醍醐味を充分味わう事のできるレパートリーである。

 

2.ストレンジャー・イン・パラダイス
ミュージカル「キスメット」の主題曲として発表された曲だが、原曲のボロディン作、歌劇「イゴール公」のテーマからの編曲と言った方が正確である。吹奏楽コンクールでもしばしば「イゴール公、ダッタン人の踊り」は演奏されるが、この様な軽い編曲、気楽なスタイルも良いもので、全般に音の厚みがないので、プログラムの中間部で演奏すると良い。

 

3.インテルメッツォ・ナンバーワン
スウェーデンの人気ロックグループ、”アバ”が演奏しヒットした古典調の曲。ベニー・アンダーソンが作曲となっているが、大変クラシカルな和声と形式ながら、原曲が何んであるのか不明である。アバのレパートリーとしては珍しく楽器演奏中心の曲で、ポピュラーに不馴れなバンドでも入門曲として演奏できそうだし、編曲も吹奏楽向きで優れている。

 

4.サンバでミネルバ
ミネルバは武芸の女神のこと。作曲者の土井慶子はヤマハ音楽教育システムで勉強、「自ら創り、自ら演奏する」教育理念の中で育った若いエレクトーン奏者である。サンバ特有の細かく速いリズムに乗って、木管と金管群の掛合いで全編小気味よいテーマが流れる。技術的にも難しい曲でなく、又この様に単に演奏するだけでなく、自らが作曲しそれを演奏する姿勢は、今の吹奏楽界にはまだ例もなく、今後バンドメンバーの中から、この様な自作自演者が生まれて来ることを期待したいものである。

 

5.ボイジャー
ヤマハ音楽教育システムでは、沢山の小・中学生が音楽の総合力を身につける便局をしているが、この曲は13歳の少女(中学生)の作品である。題名の通り、宇宙の壮大さを表すようなスケールの大きな作品だ。既成曲を演奏するだけでなく、自らも音楽を作ると言う意味は何か、同世代の皆さんに是非演奏していただきたい曲です。

 

6.ドント・セイ・ザット・アゲイン
人気絶頂のイギリスのジャズ/ファンク・バンド、「シャカタク」が演奏した軽快なサンバ。にぎやかなラテン・パーカッションの連打が続く中、あくまで都会的に洗練されたセンスが、上品さを保つ軽快なサンバだ。

 

7.松田聖子ヒット・メドレー
なんとナント!、ニュー・サウンズに流行歌の登場、いや驚きました。それも問答無用の聖子ちゃんメドレーとは!!しかし面白い。ハートのイアリング、赤いスイートピー、Rock’n Rouge、それにペンギンとビールのコマーシャルで大ヒットのSweet Memories。これは編曲者の力量勝ち。皆んなで楽しもうよ。

 

8.ケアレス・ウィスパー
イギリス出身のジョージ・マイケルとアンドリュー・レッジレー組の作品。まるで日本の歌謡曲を思わせるような作風で、サックスを中心にウィットに歌い上げる。短調、スローロック調は日本調と言うのか、ヨーロッパ風と言うのか……。本編唯一のしっとりとした作品、聴衆にほのぼのとした感じを与えること受け合いだ。

 

9.ダンシング・クィーン
若者の間にファンの多い、スウェーデン出身グループ、”アバ”の演奏で大ヒットしたナウな曲。小気味より軽快なリズムに流れる構成の簡単な小品だが、メロディー、ハーモニーの味も上品で、木管と金管セクション掛け合いが見事。フルート、クラリネット等高音木管に細かな運指はあるが、うまくリズムに乗れれば、演奏も楽しくなるだろう。

 

10.燃える想い
恒例の世界歌謡祭の入賞曲(第8回、1977年度)。コーラスグループ、ラッグスの演奏で登場、見事入賞しましたが、歌謡祭当日よりむしろその後に評価が高まり、数ヶ月にわたりヒットパレード曲としておなじみとなった。いわゆる歌の編曲だがら、全編を通じて同テンポで快調に飛ばされているが、後半には転調もあり、アンコール曲などによい。

 

11.哀愁のアダージョ
スペインの作曲家ミカエル・バケスのクラシック曲をムード調ポップスに編曲したもの。まるでメロドラマを思わせる甘くせつないテーマだが、編曲は3/4拍子を少し速目のモデラートと快調なアレグロに交互に置きかえ、変化を求めている。リズム形に少しややっこしさもあるが、馴れてしまえば問題ない。全体のパートのバランスが鍵となるだろう。

 

12.ミュージカル”ソフィスティケイテッド・レディーズ”メドレー
1981年以来、ブロードウェイで大ヒットの作品だが、普通のミュージカルではない。バンドの演奏が主役なのだ。今は亡きジャズの巨匠デューク・エリントンの作品を抜萃したもので、この編曲もなつかしい”パーディド”ほか5曲のスイングから構成されたスケールの大きなもの。エリントンならではのピアノ、バリトン・サックスのソロ等、ジャズの片鱗に触れられる。演奏も見事、大編成の吹奏楽は腕達者揃、本家のビッグ・バンドも真青と言ったところだ。

[石上禮男]

※解説は発売当初のものを転用しました。

(曲目解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

ニュー・サウンズ・イン・ブラス・ベスト・セレクション Vol.9

1.レッツ・ダンス Let’s Dance
2.ストレンジャー・イン・パラダイス Stranger in Paradise
3.インテルメッツォ・ナンバーワン Intermezzo No.1
4.サンバでミネルバ Samba de Minerva
5.ボイジャー Voyager
6.ドント・セイ・ザット・アゲイン Don’t Say That Again
7.松田聖子ヒット・メドレー
ハートのイアリング~赤いスイートピー~Rock’n Rouge~Sweet Memories
8.ケアレス・ウィスパー Careless Whisper
9.ダンシング・クィーン Dancing Queen
10.燃える想い Can’t Hide My Love
11.哀愁のアダージョ Adagio Cardinal
12.ミュージカル”ソフィスティケイテッド・レディーズ”メドレー
オーヴァチュア~昔はよかったね~ソフィスティケイテッド・レディーズ~パーディド~スイングがなければ意味がない~ロッキン・リズム
Overture~Things Ain’t What They Used to Be~Sophisticated Ladies~Perdido~It Don’t Mean a Thing~Rockin’ In Rhythm

編曲:
岩井直溥 1,3,4,6,7,8,9
小野崎孝輔 2,10
梶谷修 5
藤沢守 11
中川賢二 12

 

Disc. 久石譲 『NASA 未来から落ちてきた男』 *Unreleased

1991年8月23日 TV放送

 

フジテレビ系ドラマ
「金曜ドラマシアター 終戦記念スペシャル NASA ~未来から落ちてきた男~」
脚本:鎌田敏夫 音楽:久石譲 出演:三上博史、中井貴一 他

放送日:1991年8月23日 21:03~23:07

 

 

久石譲の映画・TV未発表テーマ曲を集めたアルバム『B+1 Original Movie’s Sound Track Themes』に、メインテーマ「As time passes」は収録されている。

本編ではほかにも、メインテーマ曲のリズムなし/スローテンポver.なども聴くことができる。ここではメロディの旋律もピアノではなくシンセサイザーのパンフルート系の音色になっている。またシーンのための短い場面音楽など、この作品のために書き下ろされたBGMがふんだんに使われている。

おもしろいのは、北野武監督映画「Sonatine ソナチネ」のメインテーマを彷彿とさせるモチーフを聴くことができる。時系列に見たときに、このモチーフがその後「ソナチネ」として発展していった可能性はあるのかもしれない。

 

1992年7月17日VHSにて発売されたが、その後DVD化もされていない作品。

 

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Disc. 久石譲 『NHKスペシャル 驚異の小宇宙・人体 SPECIAL ISSUE / THE UNIVERSE WITHIN』

久石譲 『驚異の小宇宙・人体 SPECIAL ISSUE~THE UNIVERSE WITHIN』

1991年7月1日 CD発売 NACL-1038
1994年3月21日 CD発売 NACL-1513

 

1989年放送 NHKスペシャル 「驚異の小宇宙 人体」
音楽:久石譲

 

~三次元 音が飛びかう 包み込む~
久石譲のファンタジック・インナースペースへの航海 スペシャル・ヴァージョン

 

 

楽曲解説

1.THE INNERS Opening Theme – Synthesizer Version
初めてCDをお聞きになった時、「おや?」と思われる方があるかもしれません。「一体どこが空間的な立体音響なのだろう?」でも他のCD(できれば”THE UNIVERSE WITHIN”に入っている同じ曲)と聞きくらべてみてください。こちらの方が格段に広がり感があるのがお分かりいただけるでしょう。つまり、3次元的な広がりがこのミックスのテーマです。

2.VOICE OF SILENCE
ヴォイスによって作られた大きな音空間の中でサックスが自由に動き回り遊んでいます。シンプルですが広い音場がよくわかる曲です。

4.TOUR IN CELL
この曲では、パーカッションのリヴァーブやピアノのリヴァーブを後方に飛ばして前進する感じを出してみたつもりです。ただ、音の世界では、前後の関係はよく間違えられる(普段は視覚のおかげで前後はほとんど間違えない)ので、あまりよく分からない時があるかもしれません。そんな時は、目をとじてリラックスした状態で聞いてみて下さい。ほら、あなたの回りを音が通りすぎてゆくでしょう。

5.MICROWORLD
この曲では、ベーシックなパートを担当するオルガンが空間的に配置され、その中をいろんな楽器が自在に動いています。ミクロの世界での分子の動きをイメージしてみました。

6.HUMAN WAVE
この曲では、ハープをダイナミックに動かしてみました。まるで竜巻のように、あなたの周りをぐるぐる回りながら、上昇下降をくりかえしているのがよくわかると思います。

7.ANIMA PORTRAIT
この曲では音につつみ込まれる感じ(囲にょう感といいます)を出してみました。ピアノとシンセの金属音だけのシンプルな曲ですが、これだけでも十分に音につつみ込まれる感じがします。

8.BIRTH
この曲も、特に奇をてらわず空間的な広がり感を追求してみました。

9.DÉJÁVU
この曲では、ドライな音場を基本として、シンセのメロの部分で急に音場がウェットになるようにしてみました。こうすることにより、後方に広がる大きな音場がよく知覚できるようになったと思います。

10.ONE NIGHT DREAM
この曲は、ドライな音場を基本とし、そこにヴォイスの「ハーッ」という音を空間的に配置しました。大きなひろがりはありませんが、ヴォイスがあなたの頭上を通り越して、反対側に消えてゆくのがよく分かるでしょう。

11.MIND SPACE
この曲では、小宇宙「人体」の広大な空間をイメージしました。イントロから出てくるカリンバの作り出す音場と、ヴォイス及びストリングスの作り出す空間の対比を聞いて下さい。

12.THE INNERS Ending Theme – Orchestra Version
この曲は、このアルバムで唯一の生オケの曲です。ここでは、特に奇をてらわず、2000人程度のコンサートホールの音場をシュミレートしてみました。つまり反射音の到来方向を空間的に配置してみたわけです。目をとじると、あたかもホールの中央にいて、ステージ上の演奏を聞いているかのようです。

(楽曲解説 ~CDライナーノーツより)

※3.INNER VOYAGEは楽曲解説掲載なし

 

 

久石譲 『驚異の小宇宙・人体 SPECIAL ISSUE~THE UNIVERSE WITHIN』

1. THE INNERS Opening Theme – Synthesizer Version ~遙かなる時間(とき)の彼方へ~
2. VOICE OF SILENCE ~静寂の中の初声~
3. INNER VOYAGE ~内なる宇宙への航海(たびだち)~
4. TOUR IN CELL ~ミクロの戦士たち~
5. MICROWORLD ~10数ミクロンの遠景~
6. HUMAN WAVE ~60兆のさざなみ~
7. ANIMA PORTRAIT ~魂の肖像~
8. BIRTH ~生命の歓び~
9. DÉJÁVU ~わればかりかく思うにや~
10. ONE NIGHT DREAM ~千億光年の夢物語~
11. MIND SPACE ~永遠の亜空間物語~
12. THE INNERS Ending Theme – Orchestra Version ~遙かなる時間(とき)の彼方へ~

COMPOSE & ARRANGEMENT by JOE HISAISHI
PIANO:JOE HISAISHI

PRODUCED by JOE HISAISHI

RECORDED at WONDER STATION, NIKKATSU STUDIO CENTER
MIXED at FREEDOM STUDIO

 

Disc. 神保彰 『GATHERING WELCOME TO ANIMATION WORLD』

神保彰 GATHERING

1991年6月25日 CD発売 TKCA-30301

 

カシオペア 神保彰のプロデュースによるジブリ・カバーアルバム
全曲英語詞、歌も外国人というヴォーカル・アルバム
オリジナルの久石譲編曲とは趣向の違う大人な企画盤

 

 

神保彰 GATHERING

1. MAUSICAÄ 〈風の谷のナウシカ〉 (風の谷のナウシカ)
2. GAZNIG ON 〈魔法のぬくもり〉 (魔女の宅急便)
3. LOST PARADISE 〈失われた楽園〉 (天空の城ラピュタ)
4. TOTORO 〈となりのトトロ〉 (となりのトトロ)
5. FRUITFUL LAND 〈遠い日々〉 (風の谷のナウシカ)
6. LAPUTA 〈君をのせて〉 (天空の城ラピュタ)
7. LITTLE LOST 〈まいご〉 (となりのトトロ)
8. SEASONS 〈めぐる季節〉 (魔女の宅急便)

プロデュース:神保彰
編曲:デクレ・ナカモト
訳詞:メアリー・スティックルス

全作曲:久石譲