Disc. 久石譲 『illusion』

久石譲 『illusion』

1988年12月21日 LP発売 N28U-702
1988年12月21日 CD発売 N32C-702
1988年12月21日 CT発売 N28K-702
1992年11月21日 CD発売 NACL-1505

 

「都市生活者の孤独と幻想」をテーマに、メロディ、ボーカル、アレンジともにハイセンスな音世界を展開。

 

1988年8月21発売シングル「Night City」は同アルバムからの先行シングルとなっている。

久石譲 Night City シングル

 

 

1989年1月10日発売シングル「冬の旅人」は同アルバムからのシングル・カットである。ドラマ「華の別れ」主題歌起用によるもので、アルバム版とシングル版では歌詞が異なっている。

冬の旅人 LP corect

 

 

「前作の『ピアノ・ストーリーズ』なんかは、聴く側が勝手に心象風景を自分たちで投影しやすかった。こちらから押し付けがましいメッセージがない分ね。今までそうやって作ってきたんですけど、長年やってくると、もっと直接的にメッセージを訴えかけたくなる。それには歌の表現がいちばん適切なんです。僕は井上陽水さんとか中島みゆきさんとか、非常に歌のうまい人の仕事をいっぱいさせてもらっていたんで、中途半端に歌はやりたくなかった。で、今回いろいろやってみて、何とかいけそうじゃないかということで。アレンジャーだとかいろんな人が、サウンドの一部として歌を歌うみたいなのがありますけど、あのてのものはやりたくなかったんですよ。どうせ歌うなら、徹底して歌をやる」

「このアルバムに入る直前までの、僕の弦のスタイルというのは確率されていたんですね。いろんな人の歌のときのバックのスタイルとか、あるいは、フル・オーケストラで8-6-4-4とか(注1)6-4-2-2とかいう編成で歌用、オーケストラ用、映画用とか、自分なりの癖が確立されていた。ですから、またゼロから、全く弦が書けない状態に戻して、普通ならこうくる、というのを極力排除してアレンジしました。もう1回クラウス・オガーマンとか、あのへんの弦アレンジを聴いたりとか。そういうのを徹底しましたね」

Blog. 「キーボード・マガジン 1989年3月号」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

久石譲 『illusion』

1. Zin-Zin
2. Night City
3. 81/2の風景画
4. 風のHighway
5. 冬の旅人
6. オリエントへの曵航
7. ブレードランナーの彷徨
8. L’ étranger
9. 少年の日の夕暮れ
10. illusion

Guest Duet:Mai Fujisawa 9.

Musicians
Hideo Saitoh(E.Guitar)
Fujimaru Yoshino(E.Guitar)
Kenji Takamizu(Bass)
Motoya Hamaguchi(Percussion)
Masashi Shinozaki Group(Strings)
Asuka Kaneko Group(Strings)
Mai Fujisawa(Special Duet)
etc.

Recording:Wonder Station,Sound Inn Magnet Studio,Freedom Studio,Taihei Studio,MarineStudio,Studio Sky
April 1988~October 1988

 

Disc. 藤井郁弥 『Mother’s Touch』

1988年12月7日 CDS発売 S10A-0224
1988年12月7日 EP発売 7A0934
1988年12月7日 CT発売 10P-13315

 

久石譲が「Mother’s Touch」」の編曲を担当している。

チェッカーズのメイン・ボーカルとして活動中にソロ歌手として最初に出したシングルである。また当時は本名の「藤井郁弥」名義としての発売だった。製薬会社「ライフィックス・胃腸薬」のコマーシャル・イメージソングとしてもタイアップされた。

 

 

Mother's Touch 藤井郁弥 LP 2

(EPジャケット)

 

 

Mother's Touch 藤井郁弥 CD 1

(CDジャケット)

 

 

Mother's Touch 藤井郁弥 カセット

(カセット)

 

1.Mother’s Touch
作詞:松本隆 作曲:宇崎竜童 編曲:久石譲
2.悲しきトリッキー・ガール
作詞:売野雅勇 作曲:森マカオ 編曲:入江純

 

Disc. 新井満 『尋ね人の時間』

新井満 尋ね人の時間

1988年12月5日 CD発売 30CH-339
2007年4月25日 CD発売 TECG-28005

 

秋川雅史が歌うあの「千の風になって」の日本語詞、作曲家。彼の芥川賞作品と共に発表された同名アルバム。編曲/サウンド・プロデュースを全曲久石譲が担当。二人が織り成す美しいコラボレーションが堪能できる1枚。

1988年小説「尋ね人の時間」で第99回芥川賞受賞。同年受賞作をベースとしたアルバム「尋ね人の時間」を発表。文学と音楽との境界線上に新しいジャンルを切り開く、歌う小説家(シンガー・ソングライター&ノベリスト)となる。

(メーカーインフォメーションより)

 

 

新井満 尋ね人の時間

1. 尋ね人の時間 -IN SEARCH FOR THE MISSING ONE-
2. レティシアの微笑
3. ずれ -OFF THE WALL-
4. パリソアールの女
5. 月の子供
6. 愛の翼
7. 夕陽海岸にて
8. さらば惑星
9. ラストワルツ

全編曲:久石譲 (収録中作曲は担当していない)

 

Disc. 久石譲 『The Passing Words』 *Unreleased

1988年 TV放送

 

TBS系 東芝日曜劇場
日本列島縦断スペシャル「伝言 メッセージ」

1988年11月20日 第1章 鳥は眠っていますか
1988年11月27日 第2章 風は呼んでいますか
1988年12月04日 第3章 土は泣いていますか
1988年12月11日 第4章 花は歌っていますか

 

1989年度JNNネットワーク協議会特別賞受賞作品。権利書を持ち主に返すため全国を歩く娘と中年男。30年間眠っていた土地の名義人は3人だった。日本列島縦断スペシャルとして放送された。「TBSを除く4局共同制作で4回シリーズ。1988年、青函トンネルが開通し、日本列島4島はすべて陸路で結ばれた。列島の北から南までの基幹局が揃って取り組めば、ユニークな企画ができるのではないか。脚本の市川森一と4局のプロデューサーが相談、列島を南北に縦断するストーリーができ上がった。北から南まで主人公(岩城滉一)が列島をさすらいながら、毎回4社がからむ複雑な構成。放送は1988年11月から12月にかけて4回。ちょうど「昭和」の最後の直前だった。

 

収蔵先:川崎市市民ミュージアム(神奈川県) にて視聴可能

 

 

久石譲がこのテレビドラマのテーマ曲を手がけている。オリジナルアルバム『I am』に収録の際にリアレンジしているため、TVオリジナル版は未音源化楽曲である。

印象的なピアノの旋律に、久石メロディを象徴するリズムパーカッションやシンセサイザー・バッキングを堪能することができる。「風のとおり道」(となりのトトロ)のあの感じといったらわかりやすいかもしれない。

 

 

 

 

Disc. 久石譲 『Night City』

1988年8月21日 EP発売
1988年8月21日 CDS発売 N10C-701

 

久石譲作曲はもちろん本人歌唱による楽曲である。

1988年12月21日発売、オリジナル・ソロアルバム「illision」にて同2曲ともに収録されている。同バージョンである。

 

久石譲 Night City シングル

(CDジャケット)

 

1. Night City
2. L’ étranger

 

Disc. 久石譲 『グリーン・レクイエム』 *Unreleased

1988年8月20日 劇場公開日

 

1988年公開 映画「グリーン・レクイエム」
原作:新井素子 監督:今関よしあき 音楽:久石譲 出演:鳥居かおり 坂上忍 他

 

1985年映画化、諸事情により公開は3年後の1988年公開作品。

 

 

-話はかわりますが、久石さんが音楽を担当されたもので長い間お蔵になっていた「グリーン・レクイエム」が公開されますが、あの音楽についてはどうですか。

久石:
「あの作品は、結構イメージ・ビデオっぽかったんですよ、イメージ映画というか、一種のファンタジーだったんで、どう取り組もうか悩みまして、「卒業」のサイモン&ガーファンクルのような感じで歌を効果的に使っていこうとなったんです。いわゆる映画音楽的なインストもあるんですが、重要な部分はほとんど歌になるように仕上げました。因みにこの『グリーン・レクイエム』映画自体はとても冬っぽいものなんですけど、テーマは常夏のモルジブで思い浮かんだんですよ。でもうまく合いましたね。」

Blog. 「キネマ旬報 1988年8月下旬号 No.991」 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

メイン・テーマ曲は「グリーン・レクイエム」。

オープニングでピアノ独奏にて流れるほか、本編中歌曲化されたヴォーカル・バージョンや、クライマックスのシンセサイザー・バージョンなどがある。エンドクレジットではピアノソロを基調に、バッグにシンセサイザーのコード伴奏(ストリングス系)が加わった、オープニングとも少し異なるバージョンが使用されている。

久石譲がこの映画のために書き下ろしたオリジナル歌曲は5楽曲。先の「グリーン・レクイエム」のボーカル版の他、「本当は帰りたくない」「ジェラシー・エフェクト」「どこかで見た風景」「戸惑いの扉」という楽曲である。どの楽曲も本編BGM的な扱いで随所に流れている。全5楽曲の作曲・編曲は久石譲である。エンドクレジットの文字からは字が潰れて読み取りにくいが、作詞には松井五郎他、歌には忍足敦子他、参加している。

インストゥルメンタルとしての本編音楽もいくつか書き下ろしているが、場面音楽として必要な数カ所のみで、あとは上記のメイン・テーマおよびそのバリエーションが主軸であり、その他歌曲5楽曲が登場する。

 

本作品における音楽ならびにサウンドトラックは発売されていない。

久石譲作品のなかではオリジナル・ソロアルバム『Piano Stories』に久石譲自身によるピアノ・ソロ作品として収録されている。映画冒頭でも同様のピアノソロ・バージョンではあるが、映画版はよりクラシカルでカデンツァ的な速いパッセージのあるピアノ奏法であり、少しバージョンが異なる。おそらく映画版の演奏はクラシックを専門としたピアニストであると思われる。

またチェリスト藤原真理の作品『藤原真理 『風 -Winds ~ナウシカの思い出に捧げる』にも収録されている。この作品は久石譲プロデュース・アルバムとなっている。こちらでは、チェロが旋律を奏で、久石譲によるシンセサイザーアレンジがバックに使われている。

 

 

グリーン・レクイエム VHS sc

(VHS)

 

Disc. V.A. 『アニメ・ザ・ムービー』

1988年6月25日 CD発売 32ATC-167
1988年6月25日 LP発売 25AGL-3060
1988年6月25日 CT発売 25AGC-2060

 

映画「風の谷のナウシカ」から映画「となりのトトロ」まで。本作品は徳間書店が手がけた映画4作品の主題歌・挿入歌など主要楽曲をコンパイルした作品である。歌曲が中心となった構成である。徳間書店制作という企画ゆえ、スタジオジブリ作品以外の「アリオン」も含まれている。

 

 

アニメ・ザ・ムービー

映画「風の谷のナウシカ」より
01. 風の谷のナウシカ / 安田成美
02. 王蟲との交流 (インストゥルメンタル)
03. 風の妖精 / 安田成美

映画「アリオン」より
04. ペガサスの少女 / 後藤恭子

映画「天空の城ラピュタ」より
05. もしも空を飛べたら / 小幡洋子
06. 合唱 君をのせて / 杉並児童合唱団
07. 君をのせて / 井上あずみ

映画「となりのトトロ」より
08. となりのトトロ / 井上あずみ
09. さんぽ / 井上あずみ
10. おかあさん / 井上あずみ
11. まいご / 井上あずみ
12. 風のとおり道 / 杉並児童合唱団

作曲:久石譲 (except. 1,3,4,5)

 

Disc. 久石譲 『王家の紋章 イラスト・ストーリー・ビデオ・オリジナル・サウンドトラック』

久石譲 王家の紋章

1988年6月21日 CD発売 N20C-6
1988年6月21日 LP発売 N20U-6
1988年6月21日 CT発売 N20T-11
2004年9月25日 CD発売 ABCA-5067

 

「王家の紋章」
原作:細川智栄子 音楽:久石譲

 

原作コミックをもとにイラスト・ストーリー・ビデオ(約45分)が制作され、その音楽を久石譲が担当した作品。

シンセサイザーを基調としたさまざまなサンプリングされた民族楽器がその世界観を表現している。メインテーマである(1)は、エジプトを舞台とした作品だけに、音色的にはオリエントだが、その旋律は久石譲ならではの壮大かつ美しいメロディになっている。他アニメーション作品の「アリオン」や「ヴィナス戦記」に通じる、芯があり心を揺さぶられる久石メロディである。

その他軽快なポップス調の(2)や、ピアノとフェアライトの旋律がからみあう(4)など、この時代の久石譲の旋律美や音色美を感じさせる作品である。

とりわけメインテーマは、フルオーケストレーションされた、壮大な生のオーケストラサウンドで聴いてみたい。

 

 

久石譲 王家の紋章

1. 王家の紋章 ~メイン・テーマ~
2. キャロル ~きらめく瞳の中に~
3. 王者 ~蒼き獅子たち~
4. 愛のテーマ ~はるかなる時空を超えて~
5. キャロル ~想い~黄金の乙女の夢~

ALL TITLES MUSIC & ARRANGEMENT BY JOE HISAISHI

 

Disc. 久石譲 『となりのトトロ サウンドトラック集』

久石譲 『となりのトトロ サウンドトラック集』

1988年5月1日 CD発売 32ATC-165
1988年5月1日 LP発売 25AGL-3058
1988年5月1日 CT発売 25AGC-2058
1996年11月21日 CD発売 TKCA-71026
2004年8月25日 CD発売 TKCA-72725
2018年11月3日 LP発売 TJJA-10015

 

1988年公開 スタジオジブリ作品 映画「となりのトトロ」
監督:宮崎駿 音楽:久石譲

 

映画で使用されたBGMを収録したサントラ盤。「ナウシカ」「ラピュタ」とはひと味違った、ほのぼのとした温かさをもつ久石の音楽が心ゆくまで楽しめる。オープニング主題歌「さんぽ」、エンディング主題歌「となりのトトロ」収録。録音は1988年2~3月。

LPと同時発売されたCDのジャケットは、絵柄は同じだがデザインが多少異なっている。 ※下部ジャケット写真はCDデザイン

 

 

宮崎作品はぼくの修行の場

-久石さんは10代から20代にかけては超前衛の現代音楽に属していたしたとお聞きしましたが。

久石 「10代の頃にミニマル・ミュージックを始めてね、テリー=ライリーとか、フィリップ=グラスとか、スティーブ=ライヒとか、それにシュトックハウゼンとか、ジョン=ケージとか、ほとんど現代音楽の人から影響を受けていました。あと学生時代は、勉強として、日本の人でいうと、武満徹さんや三善晃さんであったり──そういう人たちの譜面の分析とかをやっていましたから。」

-もともとはクラシックから出発されたんですね。

久石 「そうですね。もっと最初から言うと、4歳の時からヴァイオリンをやっていた蓄積になっちゃうんでしょうね。クラシックって短期間に身につけようとしても、なかなかむずかしいんです。例えば、ピアニストにしても、みんな4歳や5歳の頃からレッスンを始めているでしょ。ヴァイオリンもそうだし。そうして、ずっとやっていても、なかなか芽の出ない世界ですから(笑)。わりと時間がかかる世界なんですよ。」

-それとは逆に、映画音楽はいかに時間をかけずに仕上げるかが勝負なんじゃないかと思うんですけど。

久石 「あ、それは分かります。ただぼくの場合は吉野家の牛丼みたいな、”早い、安い、うまい”仕事は一切断る。つまり1日で音楽を収録してしまうような仕事はやらずに、フェアライト(生の弦音やヴォーカルを加工して使うコンピューターによるサンプリング・キーボード)など、いろんな機械を使いますから、そのための時間がすごくかかるんですよ。当然それに付随して、費用もかかるし、スタジオにも何日間かカンヅメにならなくちゃいけない。それで最後の仕上げにフルオーケストラも使うから、大変なんですよ。

ただ20代のかけ出しの頃は、そんな仕事なんて来ないし、それこそ、3日で70曲近く書くような仕事もやりましたから、早く書くこと自体は、そんなに問題じゃないんですが、あんまり”早い、安い、うまい”仕事ばかりやっていくと、どんどん状況が悪くなっていきますから。だから、例えば、制作期間に2週間、それに、その期間を支えるだけの予算、そういう条件をクリアできない仕事は、今、全部お断りしている状況なんです。」

-宮崎さんの映画の場合、イメージアルバムから、ひっくるめると、相当な時間が……。

久石 「かかりますよ。もう……大変ですね(笑)。ただ、宮崎さんの仕事は内容的にも非常に素晴らしいものだし、共感できますから、ぼくはとても大切にしているし。宮崎さんの映画をやる場合は、それを優先的にしてスケジュールを空けて、そこからやるしかないと思ってます。」

 

直感的に入ってゆきたい「トトロ」の世界

-前回の「天空の城ラピュタ」は、アイルランド民謡を頭において作曲されたそうですが、「となりのトトロ」で、ベースに考えていらっしゃるのは、どんな音楽ですか?

久石 「いやぁ……。むずかしいんですよね。実は「ラピュタ」をやる時は、すごく悩んだんです。あの映画にある、愛と夢と冒険というのは、ぼくとは全然相容れないから(笑)。どちらかというと、ぼくは不純だからね。例えば、マイナーのアダルトなメロディを書く方が楽なんですよ。ところが、メロディ自体が非常に夢を持っていて、優しくて包容力があるものとなると、すごくむずかしいんです。制作中は、えらい騒ぎだった。困ったなと思っていたら、今度はもっと可愛らしい話になって(笑)、「うわぁ、どうしよう」というのが正直な話。しかも「となりのトトロ」のイメージアルバムを作りながら同時進行していたのがセゾン劇場(東京銀座)で上演した、沢田研二さんや役所広司さん出演の「楽劇ANZUCHI」の音楽。かたや、えらくおどろおどろしい悪魔の世界ですからね。それと、あの清純な世界が同時進行していたんだから、ちょっと気が狂いそうだった(笑)。でも、それはある意味で試練であるわけです。」

-ラッシュはご覧になったんですか?

久石 「部分ごとにできたものを、全然脈略なしにつないだフィルムを、先日一度観せていただきました。」

-かなり、手がかりに?

久石 「なりましたね。やはり、また素晴らしい作品になりそう。かなりメロディラインを重要視して、何かとっかかりができるんじゃないだろうかって気がしたんです。いわゆるストーリーらしいストーリーの展開をしていないでしょう。」

-そうですね。「ナウシカ」や「ラピュラ」は、物語のメリハリで見せるというか、緩急自在な展開の映画でしたからね。

久石 「そう。ハッキリと、ストーリーがあったでしょう。でも今度は、田舎の一日というか、ちょっとしたシークエンスが、つながっていく種類のもので、ストーリーが大きく展開するものじゃないからね。その分だけ、こちらも従来のやり方とは、スタンスを変えなきゃいけないという気がするんですよ。まだ具体的には言えないけど、非常に直感的に今回は仕事に入りたいなという気がしてるんです。」

-3本続けて組まれてみて、宮崎さんの映画作りについての印象を。

久石 「宮崎さんは、生きる姿勢というものと、アニメーションを通して表現していくこととが、全部一致してるんですね。映画のための映画、アニメのためのアニメではなくて、自分が生きるという姿勢の中に、ちゃんとアニメーション──アニメーションじゃなくてもいいんですけど、そういう自分の創造物がありますから。非常に姿勢が明確というか、個人的にすごく尊敬しています。

仕事自体は中途半端なことはできないから、メチャクチャ苦しいんですよ。ただ、それをやることによって、こちらも一回りも二回りも大きくなれる。試練の場でもあるし、修行の場でもある。と同時に、自分のアイデンティティを確認できる場でもあるから、とても大切にしています。

ぼくらの場合は、年間にかなりの量の仕事をこなしますでしょう。すると、その中にはビジネスのための仕事があったり、いろいろあるわけですよ。だけど、その中でやっぱり、自分がこれは、という仕事って、年間に何本かあるんです。宮崎さんの映画は、その中でも、ぼくにとっては、特に一番大きな仕事ですね。」

●’88年4月号「月刊アニメージュ」の「野村正昭のジブリ制作レポート・音楽監督から見た〈トトロ〉&〈火垂るの墓〉」より転載。

(CDライナーノーツより)

 

 

解説

88年4月16日より全国東宝系で公開された宮崎駿監督のアニメ映画「となりのトトロ」。監督の前作「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」に引き続き、音楽を担当したのは久石譲氏。

物語の舞台は昭和30年代の自然と四季の美しい日本、とある田舎に越してきた、小学校6年のサツキと5歳のメイのふたりの女の子と、昔からそこに住むオバケ達(トトロ)との心暖まるふれあいが、日常のエピソードを積み重ねながら、のどかに描かれる。

音楽の制作にあたって、まず10曲のイメージソングが制作された。(イメージソング集として87年11月25日LP、CD、TAPE 発売) これをもとにした宮崎駿監督と久石譲氏、録音演出の斯波重治氏らのディスカッションののち2月25日から3月26日まで、東京・六本木のワンダーステーションスタジオ、にっかつスタジオセンターにおいて録音された。

このアルバムでは映画に使用された曲のほか、メロディが使用されているイメージ曲から「まいご」「風のとおり道(インストゥルメンタル)」の2曲を、リミックス(楽器の音のバランスを変えること)した上で収録した。「さんぽ(合唱入り)」もこのアルバムのために楽器を追加、リミックスしたもの。なお、「メイとすすわたり」「メイがいない」の前半部分、「オバケやしき!」「ずぶぬれオバケ」の後半部分は、映画では演出のため使用されていないが、このアルバムでは完全に収録している。

「ナウシカ」「ラピュタ」とはひと味違ったほのぼのとした暖かさをもつ久石譲氏の音楽を、心ゆくまでお楽しみいただきたい。

(解説 ~CDライナーノーツより)

 

 

「それはこういう物語のあり方とも関わってくるんだけれど、この作品は中編でしょう? ちょっといい方が難しいけれど、普通のオーケストラだけの曲を書くと、ごくあたりまえの幼児映画になってしまうんですよ。だから『トトロのテーマ』はミニマル・ミュージック的な、ちょっとエスニックなふんい気を持たせています。子どもたちが家の中を駆けまわるシーンでは、メロディー自体がリズミックな感じの曲にして、リズム感を出したり。そういうことはかなり意識的にやったし、BGMの曲数もかなり多く作りましたしね、あとで抜いてもいいようにと思って。

エスニックなものと普通のオーケストラの曲を両方使うということでは『ナウシカ』以来一貫しているんですよ。ただ今回は、『さんぽ』 『となりのトトロ』という歌をメインテーマにして、僕らが”裏テーマ”と呼んでいた『風のとおり道』を木の出てくるシーンに使った。そのへんの構造がうまくいったのでよかったんじゃないかな」

「そうですね。それと、一ヵ所ね、三分五十秒ぐらいの曲をオケでやった部分があります。それは、メイがオタマジャクシをみつけて、それから小トトロを発見して、不思議な森の迷路をぬけて、トトロに出会うというシーンなんだけど、この間、五十何ヵ所か、絵とタイミングをピッタリ合わせるという離れ技をやったんです。ゼロコンマ何秒かというタイミングでキッカケ出して。単純になっちゃいけないからというので、倍速にしてリズムをきざんだりとか、いままでのなかでいちばん時間かかったんじゃないですかね。ただ、ダビングの音量レベルが低かったみたい。だからスクリーンで見てもバシッと決まる音が小さいから、いまひとつしまらないというか……」

Blog. 久石譲 「となりのトトロ」 インタビュー ロマンアルバムより 抜粋)

 

 

「となりのトトロ」は、映画に先駆けて制作されるイメージアルバムのデモ作りから参加させてもらいました。主題歌はわたしが歌うことになっていたのですが、当初「さんぽ」は杉並児童合唱団が歌うことになっていました。でも、「井上あずみの声が入った方がしんがあっていいのでは」とうことになり、児童合唱団用に歌ったわたしのデモがそのまま映画に使われたんです。こんな経験は後にも先にもこの一曲だけです。その曲が、20年たった今でも子どもたちが歌ってくれるわたしの代表曲になったのですから、出会いや縁は大切なものだなってつくづく思いましたね。

Blog. 「別冊カドカワ 総力特集 崖の上のポニョ featuring スタジオジブリ」(2008) 久石譲インタビュー内容 より抜粋)

 

 

音楽と声の出演について

宮崎監督はこの映画に使われる歌について、当初からはっきりとした意向を持っていた。前述の企画書には、「追記 音楽について」として次のように書かれている。

「この作品には二つの歌が必要です。オープニングにふさわしい快活でシンプルな歌と、口ずさめる心にしみる歌の二つです。(中略) せいいっぱい口を開き、声を張りあげて歌える歌こそ、子供達が望んでいる歌です。快活に合唱できる歌こそ、この映画にふさわしいと思います。(後略)」

音楽は『ナウシカ』『ラピュタ』に引き続き、今回も久石譲に決定。そして、これまでの二作と同様に、まずイメージアルバムが作られることになった。映画に実際に使うサントラの音楽を制作する前に、イメージを膨らまし具体化するために生み出される様々な曲をアルバム化したものがイメージアルバムだが、今回は宮崎のこうした意向を受けて、イメージアルバムは歌集として制作されることに。そして歌詞を児童文学作家の中川李枝子に依頼することになった。中川の『いやいやえん』を読んで大きな衝撃を受け、以来ファンとなった宮崎たっての希望であり、中川はこれを承諾。最終的にアルバムは中川作詞の六曲、宮崎他の作詞による四曲のボーカル曲全十曲とインストゥルメンタル一曲の全十一曲の「イメージ・ソング集」として完成した。その中から中川作詞の「さんぽ」が映画のオープニングに、宮崎作詞の「となりのトトロ」がエンディングに使用され、いずれも子供達に広く歌われるスタンダードナンバーとなった。特に「さんぽ」は全国の保育園・幼稚園ではほぼ必ず歌われる歌となり、日本で生まれ育った現在二十歳以下のほとんどすべての人が、この歌を歌ったことがあるのではないだろうか。

サントラ音楽は、久石得意のミニマル・ミュージックの要素を随所に取り入れて制作され、いたずらに神秘的ではなく、不思議でありながら親しみもあるという感じをうまく醸し出し、映画の世界に見事にマッチしていた。また、イメージソング集に入っていたインスト曲の「風のとおり道」はBGMとして劇中のいくつかの場面で使用され、『トトロ』のいわばもう一つのテーマ曲として大変強い印象を残した。なお、前二作は高畑監督がプロデューサーとして音楽の打ち合わせも行ってきたが、『トトロ』は宮崎監督が前面に出て久石と打ち合わせを行った初の作品でもある。

(ジブリの教科書 3 となりのトトロ より抜粋)

 

 

宮崎:
「(中略) 久石さんと話してて、音楽のことなんかも随分悩んだけど、つまり神秘性をやたら強調しちゃうと違うしね。かといって、ムジナが隣に出てきましたっていうふうに、やたら親近感を持って作っちゃうと、これも違う。だから、久石さんのミニマル・ミュージックの無性格な感じが、あれが一番よかったですね。あれよりもっと神秘的になっちゃうと、神秘になっちゃうし、どっかで聞いたような音が入ったりして、そこら辺がわかってるけどちょっと違うっていう、そういう感じがちょうどよかったんじゃないかなと思うんです。

不思議だったのは、サツキの横に現われて立っている時にかかってる音楽はね、一回できた音楽を──七拍子の基調のリズムがあるのを──それがずーっと入ってたのを少し多すぎるから抜いてくれっていったんですよ。

それで、一回ごとに久石さんがミキシングの中で抜いたんですよ。”一、二、三、四、五、六、七。フッ”と数を数えて抜いてね。また数を数えて入れたり。そしたら、とてもよくなったんです。それを映画にひょいとあてたらぴったり合ってたんです。不思議なくらいにうまく合っちゃったんです。

サツキが見上げる時にはリズムがなくて、トトロが出てくるとそのリズムがガガンとかかってね。まあ、こんなことも世の中あるんだなって思いました(笑)。あそこの音楽はよかったですねえ。邪魔しないで、性格を決めないで、なおかつ妙な、不思議な感じが出てきて、でもやたらに不思議じゃなくて、妙に親しくて……音つけて、音楽つけて、あのシーンは本当によくなりました。

音楽の制作に関しては、久石さんもずいぶん悩んでましたね。つまり、明るくしなくてはいけないんだと彼は思ってたわけです。でも、明るくしなくてもいいんだってことが、僕自身もはっきりいいきれたのは、映画が終わってからです。途中では、久石さんにはそんなに明るくする必要はない、アッケラカンと音楽を全部につけちゃうとよくないといって、やり直した所もあります。しまった、音楽は僕がもう少し歌舞音曲にくわしければ、こんなことにはならなかったと思う箇所がいくつかあります。音楽というのは、本当にあててみないとわからないというところがあるんですねえ」(後略)

(ジブリの教科書 3 となりのトトロ より)

Blog. 久石譲 「となりのトトロ」 インタビュー ロマンアルバムより 抜粋)

 

 

鈴木:
ぼく、忘れもしないのがね、トトロとサツキとメイが、雨のバス停で出会うシーン。あそこは、すごい大事なシーンでしょ。なのに、宮さんは久石さんに言ってるんですよ、「音楽はいらない」って。でね、しょうがないんで、宮さんには内緒で、『火垂る』を作ってる高畑さんに相談に行ったんです(笑)。そしたら、高畑さんって決断が早いから、「いや、あそこは、音楽があったほうがいいですよ」って。「ミニマルでいくべきだ。久石さんだから、絶対できる」って言った。

久石:
だから、いわゆるメロディーでいくんじゃなくて、ミニマル・ミュージック的な……

鈴木:
そう。で、曲ができました。で、宮さんっていう人は面白いんですよ。聴いた瞬間、「これはいい曲だ!」って(笑)。「あそこは音楽いらない」って言ったのは、かけらも覚えてないわけ。

一同:
あははは(笑)。

鈴木:
とにかく、あの映画の一番のポイントはね、バス停でのトトロとの出会い。子供は、それを信じてくれますよ。だけど、大人が果たして信じてくれるのか。それを、あの曲によって実現した、とぼくは思ってるんですよ。大人も、トトロの存在を信じることができた。そういう意味でね、あの音楽は、本当に大事な曲だったと思います。

鈴木:
いや、だからね、さっきの、バス停での出会い──やっぱりあそこに音楽がなかったら、あの映画がほんとに名作になったのかなって思う。そのぐらいの力を、音楽は持っている。トトロの存在を大人の観客に信じさせるためには、あの音楽は必須でしたね。

Blog. 「鈴木敏夫のジブリ汗まみれ 3」久石譲登場回(2008)「ジブリアニメとの25年」内容 より抜粋)

 

 

 

となりのトトロ LP 復刻

(LPジャケット)

 

 

「となりのトトロ」/井上あずみ

1987年10月25日 EP発売 7AGS-12

となりのトトロ LP 2

(EPジャケット)

 

1.となりのトトロ
2.君をのせて

 

 

「となりのトトロ」/井上あずみ

1988年3月25日 EP発売  7AGS-14
1988年3月25日 CDS発売 10ATC-163

(EPジャケット)

 

1.となりのトトロ
2.さんぽ

 

 

(CDSジャケット)

 

 

「となりのトトロ」CD MINI ALBUM

1988年8月25日 CDS発売 15ATC-170

(CDSジャケット)

 

1.さんぽ /井上あずみ
2.風のとおり道 /杉並児童合唱団
3.まいご /井上あずみ
4.となりのトトロ /井上あずみ

 

 

なお、2000年再発盤にはTrack.3,4に(カラオケ)が追加収録されている。

2000年4月26日 CDS発売 TKDA-71926

(CDSジャケット/ CDS盤)

 

1.となりのトトロ
2.さんぽ
3.となりのトトロ(カラオケ)
4.さんぽ(カラオケ)

 

 

2004年にはマキシシングルとして再発売されている。

2004年10月27日発売 CDS発売 TKCA-72756

(CDSジャケット / CDS盤)

 

1.となりのトトロ
2.さんぽ
3.となりのトトロ(カラオケ)
4.さんぽ(カラオケ)

 

 

なお、同主題歌をふくめたジブリ映画歌曲集やカラオケ版収録CDも発売されている。

 

 

久石譲 『となりのトトロ サウンドトラック集』

1. さんぽ -オープニング主題歌-
2. 五月の村
3. オバケやしき!
4. メイとすすわたり
5. 夕暮れの風
6. こわくない
7. おみまいにいこう
8. おかあさん
9. 小さなオバケ
10. トトロ
11. 塚森の大樹
12. まいご
13. 風のとおり道 (インストゥルメンタル)
14. ずぶぬれオバケ
15. 月夜の飛行
16. メイがいない
17. ねこバス
18. よかったね
19. となりのトトロ -エンディング主題歌-
20. さんぽ (合唱つき)

歌唱:井上あずみ、杉並児童合唱団
作曲:久石譲
作詞:中川李枝子、宮崎駿
編曲:
久石譲
平部やよい (2、10後半、15後半、4、5、6)
武市昌久 (20)

プロデューサー:久石譲

スタジオ:ワンダーステーション、にっかつスタジオセンター

 

My Neighbor Totoro (Original Soundtrack)

1.Hey Let’s Go – Opening Theme Song
2.The Village in May
3.A Haunted House!
4.Mei and the Dust Bunnies
5.Evening Wind
6.Not Afraid
7.Let’s Go to the Hospital
8.Mother
9.A Little Monster
10.Totoro
11.A Huge Tree in the Tsukamori Forest
12.A Lost Child
13.The Path of the Wind (Instrumental)
14.A Soaking Wet Monster
15.Moonlight Flight
16.Mei is Missing
17.Cat Bus
18.I’m So Glad
19.My Neighbor Totoro – Ending Theme Song
20.Hey Let’s Go – With Chorus

 

Mon Voisin Totoro
(France, 1999) LBS A99011-2

1.La ballade / Thème d’ouverture
2.Le village au mois de mai
3.La maison hantée
4.Mei et les boules de suie
5.Le vent du matin
6.Même pas peur
7.Allons à l’hôpital
8.Maman
9.Le petit monstre
10.Totoro
11L’arbre de la forêt de Tukamori
12L’enfant perdu
13.Le chemin du vent
14.Le monstre tout mouillé
15.L’envol au clair de lune
16.Mei a disparu
17.Nekobus
18.Je suis triste

 

이웃집 토토로 Original Soundtrack
(South Korea, 2004) PCKD-20166

1.산책 (오프닝 테마송) 
2.오월의 마을
3.도깨비집!
4.메이와 숯검댕이
5.해질 무렵의 바람
6.무섭지 않아
7.문병 가자
8.엄마 
9.작은 도깨비
10.토토로
11.츠카모리의 큰 나무
12.미아
13.바람이 지나는 길 (Instrumental)
14.흠뻑 젖은 도깨비
15.달밤의 비행
16.메이가 없다
17.고양이 버스
18.다행이야
19.이웃집 토토로 (엔딩 테마송) 
20.산책 (합창)

 

Disc. 中島みゆき 『中島みゆき』

1988年3月16日 LP発売 C28A-0625
1988年3月16日 CT発売 28P-6783
1988年3月16日 CD発売 D32A-0351

 

中島みゆき15枚目のオリジナルアルバム。椎名和夫がアルバムプロデュースを手がけ、久石譲は「泥は降りしきる」「クレンジング クリーム」の2楽曲で編曲を担当している。なお両曲ともにシンセサイザーで参加している。

 

中島みゆき LP

(LPジャケット)

 

中島みゆき カセット 1

中島みゆき カセット 2

中島みゆき カセット 3

(カセットテープ)

 

中島みゆき 中島みゆき

1.湾岸24時
作詞:中島みゆき 作曲・編曲:椎名和夫
2.御機嫌如何
作詞・作曲:中島みゆき 編曲:椎名和夫
3.土用波
作詞・作曲:中島みゆき 編曲:椎名和夫
4.泥は降りしきる
作詞・作曲:中島みゆき 編曲:久石譲
5.ミュージシャン
作詞・作曲:中島みゆき 編曲:椎名和夫
6.黄色い犬
作詞・作曲:中島みゆき 編曲:椎名和夫
7.仮面
作詞:中島みゆき 作曲:甲斐よしひろ 編曲:椎名和夫
8.クレンジング クリーム
作詞・作曲:中島みゆき 編曲:久石譲
9.ローリング
作詞・作曲:中島みゆき 編曲:椎名和夫