Blog. 「キネマ旬報 1988年8月下旬号 No.991」 久石譲インタビュー内容

Posted on 2018/01/04

映画誌「キネマ旬報 1988年8月下旬号 No.991」に掲載された久石譲インタビュー内容です。

 

SPECIAL INTERVIEW
久石譲

「風の谷のナウシカ」やこの春公開された「となりのトトロ」の宮崎駿作品、「Wの悲劇」等の澤井信一郎作品の音楽で映画ファンにも馴染み深い久石譲氏が、自分のレーベルを作った。その第一弾が「ピアノ・ストーリーズ」だ。このアルバムは今まで書いた映画音楽をピアノで再演奏したもので、素晴らしいものになっている。写真ではサングラスをしていてわからないがとても綺麗な目をした素敵な人で、それが音楽にもよく現れている。このインタビューでは、レーベルを中心に、今の映画状況やビデオの事について聞いてみた。

-今まで書かれた映画の曲を改めてピアノで演奏しなおそうと思った理由は。

久石:
「この前に出したアルバム『カーブド・ミュージック』(ポリドール)がCMの曲を集めたものだったんです。僕はどちらかというとCMの場合、自分の中の先鋭的な部分をメインにほとんど生楽器を使わないで作ってきたんですよ。そういったものをまとめてアルバムにした時、自分の中でちょっと原点に帰りたいな、と思いまして次に何をやろうかと考えた時、それがピアノだったんです。やはりサウンドではなく、あくまでメロディにこだわってものを作りたい。そう考えた時にピアノが一番良かったんです。」

-この中の曲もオリジナル(ナウシカ、Wの悲劇、恋人たちの時刻 etc)がピアノがメインになっているものが多いですね。

久石:
「やはりピアノというのが、自分にとってそれだけ身近なんでしょうね。」

-選曲の基準はどうされたんですか。

久石:
「実は全部オリジナルでやろうかなとも思ったんです。だけど、あえてオリジナルである必要はないんじゃないかと、それは今までの曲をピアノで弾きなおす、という事自体が自分の過去、現在、未来を含めて一体何なのかという問いかけになる訳だから、過去のものでも心をこめて演奏すればいいんじゃないかと。これはほとんど偶然だったんですけど曲を選んでいったとき、映画が一番多くなったんです。だったらいっその事、映画だけに絞ってしまおうと思ったんです。」

-この『ピアノ・ストーリーズ』というタイトルの由来は。

久石:
「映画のテーマを集めてはいるんですけど、その映画を見た人がああこの音楽はあの映画で見た時が懐かしかったね、と思うために作っているのではなくて、逆に映画で扱われた事を全然無視して、聞いた人が新たにストーリーを再構成するといいますか、新たに架空のサウンド・トラックみたいな感じでとらえて欲しい、ということで『Piano Stories』としたんです。」

-このアルバムを聞いて自分の中でストーリーを作り上げて欲しいと。

久石:
「そうですね。」

-新しいレーベル、IXIAレーベルについてお聞きしたいのですが、これはどういうきっかけで。

久石:
「やはり作家というのは、誰でもそうだと思うんだけど自分のソロ・アルバムを作るだけじゃなくて、自分のレーベルを持つという事が一生の夢なんですよ。レーベルってレコード会社の中にあるもう一つのレコード会社みたいなもんでしょ、そうするとレーベル・カラーというのも打ち出せるし、自分のやってきた仕事の集大成も出来るし。僕もずっとレーベル持ちたくて、本当は一番やりたいのはボブ・スケア・レーベルのようにブライアン・イーノ的なものをやりたいんだけど、日本でそんな事やったら二枚もださない内につぶれちゃうから。で、今一番みんなが要求しているのは、ポップ・ミュージックだと思うんですよ。日本の音楽産業が、アイドル中心で作られているから、大人が安心して聞ける音楽って少ないでしょ。レコード店へ入っても何買っていいかわからない。そうするとみんなどんどん聞かなくなってしまいますよね。みんなカラオケやなんかで歌ってはいるけど、同時に自分も聞きたい音楽があるはずなんですよ。特にビートルズ・エイジだった人たちが四十代に突入してってる訳だから、そういう人たちは、やはりカラオケで演歌っていうだけでは物足りないと思うんですよ。」

-特に邦楽の場合はそれはありますね、洋楽はまだ数が揃ってますからね。

久石:
「洋楽の感性で聞けて、アダルトまでを対象とした日本のポップ・ミュージックが、あってもいい時期だと思うんですよね。ですからこのレーベルではその辺にターゲットを絞ったものをやりたいですね。僕の中にあるクラシックからポップスまでの中から良質なものを提供できるんじゃないかと思ってるんですけどね。」

-そういったポリシーで他のアーティストもプロデュースされる。

久石:
「そうですね。第一弾が7月22日に発売された『Piano Stories』、8月が『Night City』というCDシングルで、なんと僕が歌を唄ってるんですよ、それも日本語で。やんなっちゃいますけどね(笑)。9月にそれを含んだアルバムを出します。7、8、9月と連続で出すんで、とんでもなく忙しくてヘトヘトですね。」

-歌を唄われるという事はお好きなんですか。

久石:
「いや、あんまり好きじゃないです(笑)。やっぱり最後はメロディアスなものを書きたくて、メロディにこだわりだすと、じゃあそれをピアノではなくて何で表現するかと考えたときにやっぱり歌だったんです。しかも日本語で唄うという事が一番コミュニケーションしやすいですよね。だから今回は歌までやってしまったんです。それで、やる以上は、素人っぽくてはしょうがないんで、徹底してやりました。結構大変でしたね。」

-話はかわりますが、久石さんが音楽を担当されたもので長い間お蔵になっていた「グリーン・レクイエム」が公開されますが、あの音楽についてはどうですか。

久石:
「あの作品は、結構イメージ・ビデオっぽかったんですよ、イメージ映画というか、一種のファンタジーだったんで、どう取り組もうか悩みまして、「卒業」のサイモン&ガーファンクルのような感じで歌を効果的に使っていこうとなったんです。いわゆる映画音楽的なインストもあるんですが、重要な部分はほとんど歌になるように仕上げました。因みにこの『グリーン・レクイエム』映画自体はとても冬っぽいものなんですけど、テーマは常夏のモルジブで思い浮かんだんですよ。でもうまく合いましたね。」

-昨年は随分映画の仕事をされてましたが、今年はどうですか。

久石:
「自分のレーベルを作ってしまいましたので、ソロ・アルバムや他のアーティストのプロデュースをしなければならないので、今年は映画や他の仕事はあまり出来ないでしょうね。」

-それは残念ですね。当分映画の中で久石さんの音楽は聞けない訳ですね。

久石:
「去年は映画音楽の位置を高めようと頑張ったんですけど、やはり難しい所はありましたね。その原因としてレンタル・ビデオがあると思いますね。昔は映画を思い出す手段としてサントラ盤があったんですけど、今はビデオで映画そのものが楽しめますからね。よほどの事がないかぎりレコードは買いませんよね。」

~中略~

-今まで御覧になった映画で、これは絶対というのはありますか。

久石:
「色々ありますけど「ブレードランナー」ですね。もしああいう映画が日本で作られるとしたら、他の仕事を後回しにしても音楽つけたいですね。それともう一つやってみたいのがオカルト映画なんですよ。ところが日本映画にはあまりないでしょ。」

-「エクソシスト」みたいな。

久石:
「「エクソシスト」は是非やってみたいタイプですね。」

-マイク・オールドフィールドの音楽が印象的でしたね。

久石:
「あの曲がやはりミニマル・ミュージックなんですよ。当時は「サスペリア」とか、結構ミニマル的な音楽がそういったホラー映画によく使われていましたね。ミニマル・ミュージックは自分がよくやっていた音楽なんで、一回昔に戻った気分でやってみたいですね。」

-久石さんの書くホラー映画の音楽というのは聞いてみたいですね。

久石:
「是非やりたいですね。これは相当強力なものがありますよ。やりたくてしょうがないですね。」

(「キネマ旬報 1988年8月下旬号 No.991」より)

 

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