Posted 2015/9/17
久石譲の過去のコンサートから。「PIANO STORIES ’97 CINEMA WORKS JOE HISAISHI -Ensemble Night-」1997年に開催されたアンサンブル構成の全国ツアーです。1997年という年が、久石譲の音楽活動においてどういう1年だったか。それはコンサートパンフレット冒頭に寄せた、久石譲のメッセージからわかります。
”「パラサイト・イヴ」にはじまり、「もののけ姫」、「HANA-BI」まで、とにかく今年は映画に明け暮れた。
うれしいことに、宮崎駿監督の「もののけ姫」は空前のヒットとなり、北野武監督の「HANA-BI」は、このほどベネチア国際映画祭で金獅子賞(グランプリ)を獲得した。
すばらしい作品と出会え、かけがえのない1年になった。映画にかけてきた情熱とエッセンスを今夜は生の音楽で表現してみたい。”
久石譲
PIANO STORIES ’97 CINEMA WORKS JOE HISAISHI -Ensemble Night-
[公演期間]
1997/10/02 – 1997/11/01
[公演回数]
10公演
10/2 長野・長野県県民文化会館中ホール
10/6 新潟・新潟テルサ
10/15 横浜・関内ホール
10/17 島根・島根県民ホール
10/19 広島・広島国際会議場フェニックスホール
10/24 栃木・鹿沼市民文化ホール
10/25 東京・ゆうぽうと簡易保険ホール
10/29 大阪・シアター・ドラマシティ
10/31 名古屋・名古屋市民会館中ホール
11/1 兵庫・神戸新聞松方ホール
[編成]
ピアノ:久石譲
ヴァイオリン:後藤勇一郎
ヴァイオリン:杉浦清美
ヴィオラ:桑野聖
チェロ:近藤浩志
コントラバス:斉藤順
木管:吉田治
パーカッション:福島優美
[曲目]
MKWAJU
TIRA-RIN
Modern Strings
アシタカせっ記 (映画『もののけ姫』より)
もののけ姫
アシタカとサン
Two of Us (映画『ふたり』より)
Tango X.T.C (映画『はるか、ノスタルジィ』より)
Sonatine (映画『ソナチネ』より)
Silent Love (映画『あの夏、いちばん静かな海。』より)
HANA-BI (映画『HANA-BI』より)
Kids Return (映画『キッズ・リターン』より)
794BDH
Les Aventuriers
Asian Dream Song
—–アンコール—–
風のとおり道(Piano & Violin) (映画『となりのトトロ』より)
Parasite EVE (映画『パラサイト・イヴ』より)
Madness
【楽曲解説】 Ensemble Night Program
MKWAJUより
I. MKWAJU
IV. TIRA-RIN
Modern Strings
オープニングはアルバム「MKWAJU」(ムクワジュ)からの2曲。アフリカの多重的なリズムを取り入れ、その構造を”見せる”かのような仕上がりが特徴的だ。ミニマル・ミュージックの面白さも味わえるのが聴きどころ。ストリングスのカッティングが耳に残る「Modern Strings」はソロ・アルバム『I am』(1991)から。
アシタカせっ記
もののけ姫
アシタカとサン
ここでは、今年7月に公開され空前の大ヒットとなった宮崎駿監督の『もののけ姫』から3曲を演奏する。日本を舞台に繰り広げられる”一大冒険時代活劇”を彩るサウンド・トラックは、広大なスケールとその深いメロディ・ラインが印象的。冒頭で響くメロディはメインテーマの「アシタカせっ記」。おなじみの挿入歌「もののけ姫」、そしてラストシーンでは「アシタカとサン」のピアノの音色が感動的なストーリーをしめくくる。今回のスタイルでは、コンサート初演。
Two of Us
Tango X.T.C.
この2曲は、大林宣彦監督作品からの選曲。「Tango X.T.C.(エクスタシー)」(映画『はるか、ノスタルジィ』より)、「Two of Us」(映画『ふたり』より)は、いずれもソロ・アルバム『My Lost City』(1992)に収録されている。
Silent Love
Sonatine
HABNA-BI
Kids Return
『あの夏、いちばん静かな海。』『Sonatine』『Kids Return』そして来年公開の『HANA-BI』と、久石さんは北野武監督作品の話題作も担当した。「Silent Love」は、『あの夏、いちばん静かな海。』の主人公ふたりの”無音の世界”を包みこむような神秘的なサウンドが印象深い。コンサートでは「Kids Return」とともにストリングスなどで演奏され、人気が高いナンバーでもある。スリリングなメロディラインが耳に残る「Sonatine」は、今回のアンサンブルのスタイルでは初演。今年9月に開催されたベネチア国際映画祭でのグランプリ受賞作品「HANA-BI」は、来年の映画公開とサントラ発売に先がけてのタイムリーな初演。
794BDH
Les Aventuriers
Asian Dream Song
「Les Aventuriers」は昨年リリースのソロ・アルバム『PIANO STORIES II ~ The Wind of Life』から。ストリングス、木管、パーカッションによるアンサンブルが斬新なサウンドを聴かせてくれる。アコースティク・インストの魅力を充分に堪能できる構成。
「Asian Dream Song」は来年の長野パラリンピック冬季競技大会のテーマソングのインスト・バージョン。
(【楽曲解説】 ~コンサート・パンフレットより)
コンサート会場で販売されたこの公式パンフレットには、楽曲解説のほか小池聰行(オリコン社長)寄贈文なども収録されています。さらには映画『もののけ姫』の音楽レコーディング記が、レコーディング・スタジオの写真風景とともに記されています。
このあたりの記録は、『もののけ姫は、こうして生まれた。』(DVD)にも収録されています。
もうひとつの特集は、『WORKS I』のロンドン・レコーディング日誌です。
Blog. 久石譲 「WORKS・I」 レコーディング日誌 (1997 コンサート・パンフレットより)
この時期の久石譲コンサートのスタイルは、ピアノ・ソロ、アンサンブル、オーケストラ、バンドなど、とてもバラエティに富んだ構成を循環していました。あらためてパンフレットを振り返って、「Silent Love」「Sonatine」の本公演構成での、アコースティック・アンサンブルは今となっては貴重ですね。
シンセサイザー基調のオリジナル版、オーケストラ・シンフォニーとして昇華した「WORKS・I」、そしてコンサートのみで披露されていたアンサンブル・バージョン。
楽曲解説を見ても、「HANA-BI」が当時公開前でのお披露目だったんです。とても新鮮な感覚で聴いていたということになります。1990年代後半を象徴するコンサートスタイルとその内容です。
パンフレットをパラパラめくっていたら、アンコールで披露された楽曲をメモしていました。懐かしい。でも、どの会場で聴いたんだろう、と思いながら。